(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】経路確認装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240426BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240426BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20240426BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20240426BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W60/00
B60W50/08
B60W30/095
(21)【出願番号】P 2020117904
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】篠田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大澤 弘幸
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151207(JP,A)
【文献】特開2009-046039(JP,A)
【文献】特開2010-079698(JP,A)
【文献】特開2018-158684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された前記走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、
生成された前記走行プランを実行したときに、設定された前記安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、前記安全距離を確保して走行できないときは、生成された前記走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、
デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
前記判断部は、前記判断部の判断結果を含む判断情報を、前記デッドロック検出部に出力し、
前記デッドロック検出部は、
前記判断情報の時系列の変化を解析して、前記走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、
前記経路生成部が前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できるように、前記経路生成部へ情報を出力
し、
前記走行プランが承認される状態を1、前記走行プランが棄却される状態を0とした場合の時系列波形における予め設定された時間での移動平均に基づき、前記周期的デッドロック状態を判断する経路確認装置。
【請求項2】
自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された前記走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、
生成された前記走行プランを実行したときに、設定された前記安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、前記安全距離を確保して走行できないときは、生成された前記走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、
デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
前記判断部は、前記判断部の判断結果を含む判断情報を、前記デッドロック検出部に出力し、
前記デッドロック検出部は、
前記判断情報の時系列の変化を解析して、前記走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、
前記経路生成部が前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できるように、前記経路生成部へ情報を出力
し、
前記走行プランが承認される状態を1、前記走行プランが棄却される状態を0とした場合の時系列波形の高速フーリエ変換による周波数解析に基づき、前記周期的デッドロック状態を判断する経路確認装置。
【請求項3】
自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された前記走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、
生成された前記走行プランを実行したときに、設定された前記安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、前記安全距離を確保して走行できないときは、生成された前記走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、
デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
前記判断部は、前記判断部の判断結果を含む判断情報を、前記デッドロック検出部に出力し、
前記デッドロック検出部は、
前記判断情報の時系列の変化を解析して、前記走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、
前記経路生成部が前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できるように、前記経路生成部へ情報を出力
し、
前記走行プランが承認される状態を1、前記走行プランが棄却される状態を0とした場合の時系列波形の機械学習を用いたパターン認識に基づき、前記周期的デッドロック状態を判断する経路確認装置。
【請求項4】
前記デッドロック検出部は、自車が移動不能となる定常的デッドロック状態をさらに検出する請求項1~
3のいずれか1つに記載の経路確認装置。
【請求項5】
運転モードを、自動運転が行われる自動運転モードと、手動運転が行われる手動運転モードとの間で切り替える運転切替部(30)をさらに備えた車両に用いられ、
前記経路生成部は、
前記デッドロック検出部から取得した情報を用いて、前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できるか否かを判断し、
前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できない場合、前記手動運転モードに切り替えるように前記運転切替部を制御する請求項1~
4のいずれか1つに記載の経路確認装置。
【請求項6】
運転モードを、自動運転が行われる自動運転モードと、手動運転が行われる手動運転モードとの間で切り替える運転切替部(30)と、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された前記走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、
生成された前記走行プランを実行したときに、設定された前記安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、前記安全距離を確保して走行できないときは、生成された前記走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、
デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
前記判断部は、前記判断部の判断結果を含む判断情報を、前記デッドロック検出部に出力し、
前記デッドロック検出部は、
前記判断情報の時系列の変化を解析して、前記走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、
前記経路生成部が前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できる
か否かを判断して前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できない場合、前記手動運転モードに切り替えるように前記運転切替部を制御するように、前記経路生成部へ情報を出力する経路確認装置。
【請求項7】
運転モードを、自動運転が行われる自動運転モードと、手動運転が行われる手動運転モードとの間で切り替える運転切替部(30)と、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された前記走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられるコンピュータによって読取可能なプログラムであって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する処理と、
生成された前記走行プランを実行したときに、設定された前記安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、前記安全距離を確保して走行できないときは、生成された前記走行プランの実行を禁止する処理と、
デッドロック状態を検出する処理と、を実行するように構成され、
前記走行できるか否かを判断する処理において、判断結果を含む判断情報を、前記デッドロック状態を検出する処理に渡し、
前記デッドロック状態を検出する処理において、
前記判断情報の時系列の変化を解析して、前記走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、
前記経路生成部が前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できる
か否かを判断して前記周期的デッドロック状態を解消できる前記走行プランを生成できない場合、前記手動運転モードに切り替えるように前記運転切替部を制御するように、前記経路生成部へ情報を出力するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、自動運転のために生成される走行プランの安全性を判断する経路確認装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転において、安全性を評価するための基準となる安全距離を算出し、他車および歩行者との間で最低限、安全距離を保つようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、安全距離を確保するために、生成した走行プランの安全性を評価し、安全距離を確保できない場合は走行プランの実行を停止している。したがって自らが動かないと危険状態が解消されない状況に対応できないという問題がある。たとえば、車線区切りのない狭い道での入れ違い状況の場合、走行プランの実行が停止され続けるので、自車は動くことができず、相手車両も同様にこちらが動くことを期待するので解決しないことがある。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、自ら動かないと危険状態を解消されない状況に対応することができる経路確認装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された経路確認装置は、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、生成された走行プランを実行したときに、設定された安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、安全距離を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
判断部は、判断部の判断結果を含む判断情報を、デッドロック検出部に出力し、
デッドロック検出部は、判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、経路生成部が周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できるように、経路生成部へ情報を出力し、
走行プランが承認される状態を1、走行プランが棄却される状態を0とした場合の時系列波形における予め設定された時間での移動平均に基づき、周期的デッドロック状態を判断する経路確認装置である。
また、開示された経路確認装置は、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、生成された走行プランを実行したときに、設定された安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、安全距離を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
判断部は、判断部の判断結果を含む判断情報を、デッドロック検出部に出力し、
デッドロック検出部は、判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、経路生成部が周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できるように、経路生成部へ情報を出力し、
走行プランが承認される状態を1、走行プランが棄却される状態を0とした場合の時系列波形の高速フーリエ変換による周波数解析に基づき、周期的デッドロック状態を判断する経路確認装置である。
また、開示された経路確認装置は、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、生成された走行プランを実行したときに、設定された安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、安全距離を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
判断部は、判断部の判断結果を含む判断情報を、デッドロック検出部に出力し、
デッドロック検出部は、判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、経路生成部が周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できるように、経路生成部へ情報を出力し、
走行プランが承認される状態を1、走行プランが棄却される状態を0とした場合の時系列波形の機械学習を用いたパターン認識に基づき、周期的デッドロック状態を判断する経路確認装置である。
また、開示された経路確認装置は、運転モードを、自動運転が行われる自動運転モードと、手動運転が行われる手動運転モードとの間で切り替える運転切替部(30)と、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられる経路確認装置(28)であって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する安全距離設定部(281)と、生成された走行プランを実行したときに、設定された安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、安全距離を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止する判断部(282)と、デッドロック状態を検出するデッドロック検出部(45)と、を含み、
判断部は、判断部の判断結果を含む判断情報を、デッドロック検出部に出力し、
デッドロック検出部は、判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、経路生成部が周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できるか否かを判断して周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できない場合、手動運転モードに切り替えるように運転切替部を制御するように、経路生成部へ情報を出力する経路確認装置である。
また、開示されたプログラムは、運転モードを、自動運転が行われる自動運転モードと、手動運転が行われる手動運転モードとの間で切り替える運転切替部(30)と、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する経路生成部(27)と、生成された走行プランに従って車両の走行を制御する走行制御部(31)と、を備えた車両に用いられるコンピュータによって読取可能なプログラムであって、
自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を設定する処理と、
生成された走行プランを実行したときに、設定された安全距離を確保して走行できるか否かを判断し、安全距離を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止する処理と、
デッドロック状態を検出する処理と、を実行するように構成され、
走行できるか否かを判断する処理において、判断結果を含む判断情報を、デッドロック状態を検出する処理に渡し、
デッドロック状態を検出する処理において、
判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランの実行を禁止する制御が周期的に繰り替えされ、自車が停止と移動を繰り返す膠着状態となる周期的デッドロック状態を検出し、
経路生成部が周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できるか否かを判断して周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できない場合、手動運転モードに切り替えるように運転切替部を制御するように、経路生成部へ情報を出力するプログラムである。
【0008】
このような経路確認装置及びプログラムに従えば、生成された走行プランを実行すると安全距離を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止するように判断部によって制御される。したがって安全距離を確保することができる。また判断部は、判断部の判断結果を含む判断情報を事前に設定した設定装置に出力する。これによって判断情報が与えられた設定装置は、判断情報を用いて、判断結果を認識することができる。たとえばユーザに情報を通知する通知装置が設定装置の場合は、通知装置に判断情報を出力される。これによって車線区切りのない狭い道での入れ違い状況の場合など、走行プランを実行しない理由をユーザは認識することができる。また、たとえば設定装置が経路生成部の場合は、経路生成部に判断情報を出力される。これによって車線区切りのない狭い道での入れ違い状況の場合など、走行プランを実行しない理由を経路生成部は認識することができるので、異なる走行プランの生成のための参考情報とすることができる。したがって走行制御部による車両走行制御時に安全距離を確保しつつ、自ら動かないと危険状態を解消されない状況に対応することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の車両用システム20を示すブロック図。
【
図5】経路生成部27と経路確認部28の処理を示すフローチャート。
【
図6】経路生成部27と経路確認部28の他の処理を示すフローチャート。
【
図7】経路生成部27の処理を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態の車両制御装置21の制御ブロック図。
【
図11】定常的デッドロック状態を説明するグラフ。
【
図12】周期的デッドロック状態を説明するグラフ。
【
図13】デッドロック検出部45の処理を説明するフローチャート。
【
図14】経路生成部27の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、
図1~
図7を用いて説明する。
図1に示す車両用システム20は、自動運転が可能な自動運転車両で用いられる。車両用システム20は、
図1に示すように、車両制御装置21、走行制御電子制御装置(Electronic Control Unit:略称ECU)31、ロケータ33、地図データベース34、周辺監視センサ35、通信モジュール37、車両状態センサ38、手動操作部32および運転切替部30を含んでいる。車両用システム20を用いる車両40は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0013】
まず、自動運転車両40に関して説明する。自動運転車両40は、前述したように自動運転が可能な車両であればよい。自動運転の度合いである自動化レベルとしては、例えばSAEが定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えばSAEの定義では、以下のようにレベルに区分される。
【0014】
レベル0は、システムが介入せずに運転者が全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクは、例えば操舵及び加減速とする。レベル0は、いわゆる手動操作部32を用いた手動運転に相当する。レベル1は、システムが操舵と加減速とのいずれかを支援するレベルである。レベル2は、システムが操舵と加減速とのいずれをも支援するレベルである。レベル1およびレベル2は、いわゆる運転支援に相当する。
【0015】
レベル3は、高速道路等の特定の場所ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転者が運転操作を行うレベルである。レベル3では、システムから運転交代の要求があった場合に、運転手が迅速に対応可能であることが求められる。レベル3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。レベル4は、対応不可能な道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル4は、いわゆる高度自動運転に相当する。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、いわゆる完全自動運転に相当する。レベル3~5は、いわゆる自動運転に相当する。
【0016】
本実施形態の自動運転車両40は、例えば自動化レベルがレベル3の自動運転車両であってもよいし、自動化レベルがレベル4以上の自動運転車両であってもよい。また、自動化レベルは切り替え可能であってもよい。本実施形態は、自動化レベル3以上の自動運転と、レベル0の手動運転とに切り替え可能である。
【0017】
次に、各部の構成に関して説明する。ロケータ33は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサを備えている。GNSS受信機は、複数の測位衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを備える。ロケータ33は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、自車の車両位置を逐次測位する。車両位置は、例えば緯度経度の座標で表されるものとする。なお、車両位置の測位には、車両40に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離を用いる構成としてもよい。
【0018】
地図データベース34は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状、構造物等の地図データを格納している。リンクデータは、リンクを特定するリンクID、リンクの長さを示すリンク長、リンク方位、リンク旅行時間、リンク形状、リンクの始端と終端とのノード座標、及び道路属性等の各データから構成される。一例として、リンク形状は、リンクの両端とその間の形状を表す形状補間点の座標位置を示す座標列からなるものとすればよい。道路属性としては、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数を表す車線数情報、速度規制値等がある。ノードデータは、地図上のノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノード種別、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID等の各データから構成される。リンクデータは、道路区間別に加え、車線つまり、レーン別にまで細分化されている構成としてもよい。
【0019】
車線数情報及び/又は道路種別からは、道路区間つまり、リンクが、片側複数車線、片側一車線、中央線がない対面通行の道路等のいずれに該当するか判別可能とすればよい。中央線がない対面通行の道路には、一方通行の道路は含まないことになる。なお、中央線はセンターラインと言い換えることもできる。ここで言うところの中央線がない対面通行の道路は、高速道路、自動車専用道路を除く一般道路のうちの、中央線がない対面通行の道路を示す。
【0020】
地図データは、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる3次元地図も含んでいてもよい。地図データとして、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる3次元地図を用いる場合、ロケータ33は、GNSS受信機を用いずに、この3次元地図と、道路形状及び構造物の特徴点の点群を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)若しくは周辺監視カメラ等の周辺監視センサ35での検出結果とを用いて、自車位置を特定する構成としてもよい。なお、3次元地図は、REM(Road Experience Management)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。
【0021】
周辺監視センサ35は、自車の周辺を監視する自律センサである。一例として、周辺監視センサ35は、歩行者、人間以外の動物、自車以外の車両等の移動する移動体、及びガードレール、縁石、樹木、路上落下物等の静止している静止物体といった自車周辺の物体を検出する。他にも、自車周辺の走行区画線等の路面標示も検出する。周辺監視センサ35としては、例えば、自車周囲の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周囲の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の測距センサがある。
【0022】
車両状態センサ38は、自車の各種状態を検出するためのセンサ群である。車両状態センサ38としては、車速センサ、操舵センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等がある。車速センサは、自車の車速を検出する。操舵センサは、自車の操舵角を検出する。加速度センサは、自車の前後加速度、横加速度等の加速度を検出する。加速度センサは負方向の加速度である減速度も検出するものとすればよい。ヨーレートセンサは、自車の角速度を検出する。
【0023】
通信モジュール37は、自車の周辺車両に搭載された車両用システム20の通信モジュール37との間で、無線通信を介して情報の送受信である車車間通信を行う。また通信モジュール37は、路側に設置された路側機との間で、無線通信を介して情報の送受信である路車間通信を行ってもよい。この場合、通信モジュール37は、路側機を介して、自車の周辺車両に搭載された車両用システム20の通信モジュール37から送信されるその周辺車両の情報を受信してもよい。
【0024】
また、通信モジュール37は、自車の外部のセンタとの間で、無線通信を介して情報の送受信である広域通信を行ってもよい。広域通信によってセンタを介して車両同士が情報を送受信する場合には、車両位置を含んだ情報を送受信することで、センタにおいてこの車両位置をもとに、一定範囲内の車両同士で車両40の情報が送受信されるように調整すればよい。以降では、通信モジュール37は、車車間通信、路車間通信、及び広域通信の少なくともいずれかによって、自車の周辺車両の情報を受信する場合を例に挙げて説明を行う。
【0025】
他にも、通信モジュール37は、地図データを配信する外部サーバから配信される地図データを例えば広域通信で受信し、地図データベース34に格納してもよい。この場合、地図データベース34を揮発性メモリとし、通信モジュール37が自車位置に応じた領域の地図データを逐次取得する構成としてもよい。
【0026】
手動操作部32は、運転手が自車を運転するために操作する部分であって、ハンドル、アクセルペダル、およびブレーキペダルを含む。手動操作部32は、運転手が操作した操作量を運転切替部30に出力する。操作量は、アクセル操作量、ブレーキ操作量およびステアリング操作量である。車両制御装置21は、自動運転モードの場合は、自動運転を実行するための指示値を出力する。
【0027】
運転切替部30は、運転モードを、自動運転が行われる自動運転モードと、手動運転が行われる手動運転モードとの間で切り替える。換言すると、運転切替部30は、自車両40を運転操作する権限を、車両制御装置21とするか、運転手とするかを切り替える。運転切替部30は、自車両40を運転操作する権限を車両制御装置21とする場合には、車両制御装置21から出力される指示値を走行制御ECU31に伝達する。運転切替部30は、自車両40を運転操作する権限を運転手とする場合には、操作量を走行制御ECU31に伝達する。
【0028】
運転切替部30は、モード切替要求に従って、運転モードを自動運転モードか手動運転モードに切り替える。モード切替要求は、運転モードを自動運転モードから手動運転モードにする手動運転モード切替要求、および、運転モードを手動運転モードから自動運転モードにする自動運転モード切替要求の2種類がある。モード切替要求は、たとえば、運転手のスイッチ操作により発生して、運転切替部30に入力される。またモード切替要求は、たとえば車両制御装置21の判断によ発生して、運転切替部30に入力される。運転切替部30は、モード切替要求に応じて、運転モードを切替える。
【0029】
走行制御ECU31は、走行制御部であって、自車両40の走行制御を行う電子制御装置である。走行制御としては、加減速制御及び/又は操舵制御が挙げられる。走行制御ECU31としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。走行制御ECU31は、自車に搭載された電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力することで走行制御を行う。
【0030】
車両制御装置21は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。
【0031】
続いて、
図1を用いて、車両制御装置21の概略構成を説明する。
図1に示すように、車両制御装置21は、自車位置取得部19、センシング情報取得部22、地図データ取得部23、通信情報取得部24、走行環境取得部25、および自動運転部26を機能ブロックとして備えている。なお、車両制御装置21が実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、車両制御装置21が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この車両制御装置21が車載装置に相当する。
【0032】
自車位置取得部19は、ロケータ33で逐次測位する自車の車両位置を取得する。センシング情報取得部22は、周辺監視センサ35で逐次検出する検出結果であるセンシング情報を取得する。またセンシング情報取得部22は、車両状態センサ38で逐次検出する検出結果である車両状態情報を取得する。
【0033】
地図データ取得部23は、地図データベース34に格納されている地図データを取得する。地図データ取得部23は、自車位置取得部19で取得する自車の車両位置に応じて、自車周辺の地図データを取得してもよい。地図データ取得部23は、周辺監視センサ35の検出範囲よりも広い範囲についての地図データを取得することが好ましい。
【0034】
通信情報取得部24は、通信モジュール37で自車の周辺車両の情報を取得する。周辺車両の情報としては、例えば周辺車両の識別情報、速度の情報、加速度の情報、ヨーレートの情報、位置情報等が挙げられる。識別情報は、個々の車両を識別するための情報である。識別情報には、例えば自車が該当する車種、車格等の所定の区分を示す分類情報を含んでいてもよい。
【0035】
走行環境取得部25は、自車の走行環境を取得して、自動運転部26に取得した走行環境を模擬した仮想空間を生成する。走行環境取得部25は、具体的には、自車位置取得部19で取得する自車の車両位置、センシング情報取得部22で取得するセンシング情報と車両状態情報、地図データ取得部23で取得する地図データ、通信情報取得部24で取得する周辺車両の情報等から、自車の走行環境を認識する。一例として、走行環境取得部25は、これらの情報を用いて、自車の周辺物体の位置、形状、移動状態等であったり、自車の周辺の路面標示の位置等であったりを認識し、実際の走行環境を再現した仮想空間を生成する。
【0036】
走行環境取得部25では、センシング情報取得部22で取得したセンシング情報から、自車の周辺物体との距離、自車に対する周辺物体の相対速度、周辺物体の形状及びサイズ等も走行環境として認識するものとすればよい。また、走行環境取得部25は、通信情報取得部24によって周辺車両の情報を取得できる場合には、この周辺車両の情報を用いて走行環境を認識する構成としてもよい。例えば、周辺車両の位置、速度、加速度、ヨーレート等の情報から、周辺車両の位置、速度、加速度、ヨーレート等を認識すればよい。また、周辺車両の識別情報から、周辺車両の最大減速度、最大加速度等の性能情報を認識してもよい。一例として、車両制御装置21の不揮発性メモリに識別情報と性能情報との対応関係を予め格納しておくことで、この対応関係を参照して識別情報から性能情報を認識する構成とすればよい。なお、識別情報として前述の分類情報を用いてもよい。
【0037】
走行環境取得部25は、周辺監視センサ35で検出する周辺物体が移動体であるか静止物体であるかを区別して認識することが好ましい。また、周辺物体の種別も区別して認識することが好ましい。周辺物体の種別については、例えば周辺監視カメラの撮像画像にパターンマッチングを行うことで種別を区別して認識すればよい。種別については、例えばガードレール等の構造物、路上落下物、歩行者、自転車、自動二輪車、自動車等を区別して認識すればよい。周辺物体の種別は、周辺物体が自動車の場合には、車格、車種等とすればよい。周辺物体が移動体であるか静止物体であるかについては、周辺物体の種別に応じて認識すればよい。例えば、周辺物体の種別が構造物、路上落下物の場合は静止物体と認識すればよい。周辺物体の種別が歩行者、自転車、自動二輪車、自動車の場合は移動体と認識すればよい。なお、駐車車両のように直ちに移動する可能性の低い物体は、静止物体として認識してもよい。駐車車両については、停止しており、且つ、画像認識によってブレーキランプが点灯していないことが認識できること等から認識すればよい。
【0038】
自動運転部26は、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26は、
図1に示すように、経路生成部27、経路確認部28、および自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。
【0039】
経路生成部27は、走行環境取得部25で取得した走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行プランを生成する。例えば、中長期の走行プランとして、経路探索処理を行って、自車位置から目的地へ向かわせるための推奨経路を生成する。また、中長期の走行プランに沿った走行を行うための短期の走行プランとして、車線変更の走行プラン、レーン中心を走行する走行プラン、先行車に追従する走行プラン、及び障害物回避の走行プラン等が生成される。
【0040】
経路生成部27では、例えば、認識した走行区画線から一定距離又は中央となる経路を走行プランとして生成したり、認識した先行車の挙動又は走行軌跡に沿う経路を走行プランとして生成したりすればよい。また、経路生成部27は、同一進行方向の隣接車線の空いた領域に自車を車線変更させる経路を走行プランとして生成すればよい。経路生成部27は、障害物を回避して走行を維持する経路を走行プランとして生成したり、障害物の手前で停車する減速を走行プランとして生成したりすればよい。経路生成部27は、機械学習等によって最適と判断される走行プランを生成する構成としてもよい。経路生成部27は、短期の走行プランとして、例えば1以上の経路を算出する。例えば、経路生成部27は、短期の走行プランとして、算出した経路における速度調整のための加減速の情報も含む構成とすればよい。
【0041】
一例として、経路生成部27は、走行環境取得部25で認識した前方障害物が、自車の走行を妨げる走行阻害物である場合に、後述する経路確認部28で安全性を評価しつつ、状況に応じた走行プランを生成すればよい。以下では、走行阻害物を認識して特定した場合を例に挙げて説明を続ける。なお、走行阻害物とは、自車の走行車線内の路上落下物、駐車車両であってもよいし、自車の走行車線内の先行車であってもよい。走行阻害物に該当する先行車とは、渋滞路でないのにもかかわらず、平均車速が走行路の速度規制値と比較して大幅に低い先行車等とすればよい。なお、狭路については、徐行が必要な場合も多いため、先行車を走行阻害物としない構成とすることが好ましい。以下では、自車の走行路が中央線のない対面通行の道路に該当する場合には、先行車といった移動体を走行阻害物と特定せず、駐車車両等の静止物体を走行阻害物と特定するものとして説明を行う。
【0042】
例えば、経路生成部27は、走行環境取得部25で走行阻害物を認識して特定した場合に、自車の走行路に応じた処理を行う。例えば、経路生成部27は、自車の走行路が中央線のない対面通行の道路に該当する場合には、走行阻害物との間に閾値以上の左右方向の距離を確保して、自車の走行車線内を走行できるか否かを判断すればよい。ここで言うところの閾値とは、後述する安全距離として設定可能な下限値とすればよい。下限値は、例えば自車の速度を最低限度に低く抑えて走行する際に設定される安全距離の値等とすればよい。言い換えると、経路生成部27は、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して、自車の走行車線内を走行できるか否かを判断する。なお、閾値は予め設定される固定値としてもよいし、走行阻害物が移動体の場合にはその移動体の挙動に応じて変化する値としてもよい。
【0043】
一例として、経路生成部27は、自車の走行車線の車線幅のうちの走行阻害物で塞がれていない部分の幅が、自車の車幅に前述の閾値を加算した値よりも大きい場合に、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できると判断すればよい。走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できると判断した場合には、自車の走行車線を維持して対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行プランを生成すればよい。
【0044】
一方、自車の走行車線の車線幅のうちの走行阻害物で塞がれていない部分の幅が、自車の車幅に前述の閾値を加算した値以下の場合に、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断すればよい。自車の車幅の値については、車両制御装置21の不揮発性メモリに予め格納しておいた値を用いる構成とすればよい。走行車線の車線幅については、地図データ取得部23で取得する地図データから特定する構成とすればよい。走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断した場合には、停車する走行プランを生成すればよい。これは、自車の走行路が中央線のない対面通行の道路に該当する場合において、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断する場合には、通行が可能でないためである。この場合、例えば車両制御装置21が自動運転から手動運転へ運転交代させる構成とすればよい。なお、自動運転から手動運転に切り替える場合には、運転交代を要求する通知を事前に行った上で手動運転に移行する構成とすればよい。
【0045】
経路生成部27は、自車の走行路が片側複数車線の道路に該当する場合には、自車の走行車線と同方向の隣接車線に車線変更する走行プランを生成すればよい。経路生成部27は、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合には、前述したのと同様にして、走行阻害物との間に閾値以上の左右方向の距離を確保して、自車の走行車線内を走行できるか否かを判断すればよい。走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できると判断した場合には、自車の走行車線を維持しつつ走行阻害物の側方を通過する走行プランを生成すればよい。一方、経路生成部27は、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合であって、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断した場合には、自車の走行車線をはみ出して対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行プランを生成すればよい。
【0046】
経路確認部28は、経路生成部27で生成する走行プランの安全性を評価する。一例として、経路確認部28は、走行プランの安全性の評価をより容易にするために、安全運転の概念を数式化した数学的公式モデルを用いて、走行プランの安全性を評価すればよい。経路確認部28は、自車と周辺物体との対象間の距離である対象間距離が、予め設定された数学的公式モデルによって算出される、対象間の安全性を評価するための基準となる安全距離以上か否かで安全性を評価すればよい。対象間距離は、一例として、自車の前後方向及び左右方向の距離とすればよい。
【0047】
なお、数学的公式モデルは、事故が完全に生じないことを担保するものではなく、安全距離未満となった場合に衝突回避のための適切な行動を取りさえすれば事故の責任を負う側にならないことを担保するためのものである。ここで言うところの衝突回避のための適切な行動の一例としては、合理的な力での制動が挙げられる。合理的な力での制動とは、例えば、自車にとって可能な最大減速度での制動等が挙げられる。数学的公式モデルによって算出される安全距離は、自車と障害物との近接を避けるために自車が障害物との間に最低限空けるべき距離と言い換えることができる。
【0048】
経路確認部28は、安全距離設定部281および判断部282をサブ機能ブロックとして備える。安全距離設定部281は、前述した数学的公式モデルを用いて安全距離を算出し、算出した安全距離を、安全距離として設定する。安全距離設定部281は、少なくとも車両40の挙動の情報を用いて安全距離を算出して設定するものとする。安全距離設定部281は、数学的公式モデルとしては、例えばRSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルを用いればよい。
【0049】
安全距離設定部281は、自車と障害物41との近接を避けるために自車が障害物41との間に最低限空けるべき安全距離42を設定する。安全距離設定部281は、例えば自車の前方及び左右方向の安全距離42を設定する。安全距離設定部281は、基準として、
図2に示すように、自車の前方については、自車の挙動の情報から、例えば自車が最短で停止できる距離を安全距離42と算出すればよい。具体例として、自車の速度、最大加速度、最大減速度、応答時間から、自車が現在の車速から応答時間の間に最大加速度で前方に走行した後、最大減速度で減速して停止できる距離を前方の安全距離42と算出すればよい。ここでの自車の速度、最大加速度、最大減速度は、自車の前後方向についてのものとする。ここでの応答時間は、自動運転によって自車を停止させる際の、制動装置への動作の指示から動作開始までの時間とすればよい。一例として、自車の最大加速度、最大減速度、応答時間については、車両制御装置21の不揮発性メモリに予め格納しておくことで特定可能とすればよい。安全距離設定部281は、自車の前方に移動体は認識していないが静止物体を認識している場合も、この基準としての前方の安全距離42を設定すればよい。
【0050】
安全距離設定部281は、自車の前方に移動体を認識している場合は、自車とこの前方移動体との挙動の情報から、自車と前方移動体とが接触せずに停止できる距離を前方の安全距離42と算出すればよい。ここでは、移動体が自動車である場合を例に挙げて説明を行う。前方移動体としては、先行車、対向車等が挙げられる。具体例として、自車と前方移動体との移動方向が逆方向の場合には、自車と前方移動体との速度、最大加速度、最大減速度、応答時間から、自車と前方移動体とがそれぞれ現在の速度から応答時間の間に最大加速度でそれぞれの前方に走行した後、最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を前方の安全距離42と算出すればよい。一方、自車と前方移動体との移動方向が順方向の場合には、前方移動体が現在の速度から最大減速度で減速するのに対して、自車が現在の速度から応答時間の間に最大加速度で前方に走行した後に最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を前方の安全距離42と算出すればよい。
【0051】
移動体の速度、最大加速度、最大減速度、応答時間は、通信情報取得部24によって取得できる場合には、通信情報取得部24によって取得した情報を安全距離設定部281が用いる構成とすればよい。また、走行環境取得部25で認識できる情報については、走行環境取得部25で認識した情報を用いればよい。他にも、移動体の最大加速度、最大減速度、応答時間について、一般的な車両の値を車両制御装置21の不揮発性メモリに予め格納しておくことで、この一般的な車両の値を安全距離設定部281が用いる構成としてもよい。
【0052】
また、安全距離設定部281は、自車の後方に移動体を認識している場合は、自車とこの後方移動体との挙動の情報から、自車と後方移動体とが接触せずに停止できる距離を後方の安全距離42と算出してもよい。後方移動体としては、後続車、自車より後方の隣接車線の後側方車が挙げられる。安全距離設定部281は、例えば前方の安全距離42を算出するのと同様にして、後方移動体にとっての安全距離42を推算することで、自車の後方の安全距離42を設定すればよい。
【0053】
安全距離設定部281は、基準として、自車の左右方向については、自車の挙動情報から、自車が左右方向の速度を最短で0にできるまでに左右方向に移動する距離を安全距離42として算出すればよい。例えば、自車の左右方向の速度、最大加速度、最大減速度、応答時間から、自車が現在の左右方向の速度から応答時間の間に最大加速度で左右方向に移動した後、最大減速度で減速して左右方向の速度が0にできるまでに自車が左右方向に移動する距離を、左右方向の安全距離42と算出すればよい。ここでの応答時間は、自動運転によって自車を操舵させる際の、操舵装置への動作の指示から動作開始までの時間とすればよい。安全距離設定部281は、自車の左右方向に移動体は認識していないが静止物体を認識している場合も、この基準としての左右方向の安全距離42を設定すればよい。
【0054】
安全距離設定部281は、自車の左右方向に移動体を認識している場合は、移動体が存在する方向については、自車と移動体との挙動の情報から、自車と移動体とが接触せずにお互いの左右方向の速度が0にできるまでに左右方向に移動する距離をその方向の安全距離42と算出すればよい。具体例として、自車と移動体との速度、最大加速度、最大減速度、応答時間から、自車と移動体とがそれぞれ現在の速度から応答時間の間に最大加速度で左右方向それぞれに走行した後、最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を左右方向の安全距離42と算出すればよい。
【0055】
判断部282は、生成された走行プランを実行したときに、設定された安全距離42を確保して走行できるか否かを判断する。判断部282は、安全距離42を確保して走行できないときは、生成された走行プランを走行制御ECU31が実行しないように制御する。判断部282は、安全距離42を確保して走行できないときは、生成された走行プランを自動運転機能部29に送信せず削除する。
【0056】
換言すると、判断部282は、対象間距離が、安全距離設定部281で設定された安全距離42以上の場合に、経路生成部27で生成する走行プランの安全性有りと評価する。一方、判断部282は、対象間距離が、この安全距離42未満の場合に、経路生成部27で生成する走行プランの安全性無しと評価する。判断部282は、安全性有りと評価したことをもとに、走行プランを自動運転機能部29に出力する。一方、判断部282は、安全性無しと評価した走行プランについては、自動運転機能部29に出力しない。判断部282は、経路生成部27で複数の走行プランが生成される場合に、より安全距離42を満たす経路を選択する等してもよい。
【0057】
自動運転機能部29は、経路確認部28から出力される走行プランに従い、自車の加減速及び/又は操舵を走行制御ECU31に自動で行わせることで、運転者による運転操作の代行、つまり、自動運転を行わせればよい。自動運転機能部29は、経路確認部28で自動運転に用いると評価された走行プランに沿った自動運転を行わせる。走行プランが経路の走行の場合には、この経路に沿った自動運転を行わせる。走行プランが停車、減速の場合には、停車、減速を自動で行わせる。自動運転機能部29は、経路確認部28から出力される走行プランに従い自動運転を行わせることで、自車と周辺物体との近接を避けつつ自動運転を行わせる。
【0058】
次に、経路生成部27と経路確認部28のさらに具体的な制御に関して説明する。
図3は、車両制御装置21の制御フロー図の一部を示す。経路生成部27は、経路確認部28と双方向に通信している。経路生成部27は、
図3に示すように、経路確認部28が出力した情報を受け取り、走行環境取得部25から出力される情報とともに走行プランを作成する。
【0059】
判断部282は、判断部282の判断結果を含む判断情報を走行制御ECU31以外の装置に出力する。判断部282は、具体的には、判断情報を経路生成部27に出力する。判断部282は、たとえば走行プランを実行しなかったときに、実行しなかった走行プランを経路生成部27に出力する。
【0060】
経路生成部27は、走行環境取得部25が出力する情報と、判断部282が出力した判断情報とを用いて走行プランを生成する。経路生成部27は、安全性有りと評価されるように、安全距離設定部281で設定する安全距離42に応じて走行プランを修正する。
【0061】
たとえば
図4に示すように、車線区切りのない狭い道での入れ違い状況では、安全距離42内に相手車両43がいる場合がある。この場合、相手車両43も同様にこちらが動くことを期待するので、このままでは状況を解決することができない。
【0062】
経路生成部27が生成した走行プランは、たとえば左側を抜けるように移動する走行プランの場合でも、安全距離42を常に確保することができない。したがって判断部282は、安全距離42を確保して走行できないとして、生成された左側が抜けるように移動する走行プランを実行しない。仮に、このまま走行プランが実行されないと、経路生成部27は判断部282に走行プランを拒絶され続けるので、停止状態を脱出できない状態、いわゆるデッドロック状態となる。
【0063】
そこで本実施形態では、判断部282は判断結果を経路生成部27にフィードバックするように制御する。経路生成部27は、フィードバックされた判断情報に基づいて、たとえば一旦バックして脇を抜ける経路を生成する。
【0064】
次に、このような車両制御装置21の処理に関して、
図5~
図7のフローチャートを用いて説明する。各フローチャートは、車両制御装置21が電源投入状態において、短時間に繰り返し実行される処理である。たとえば判断部282の安全判断周期と同じか、それよりも短い時間に、これらの処理は繰り返し実行される。
【0065】
図5に示すフローチャートが開始されると、ステップS1では、経路生成部27は走行環境取得部25および判断部282から出力された情報に基づいて、走行プランを生成し、ステップS2に移る。ステップS2では、安全距離設定部281は生成した走行プランにおける安全距離42を設定し、ステップS3に移る。
【0066】
ステップS3では、判断部282は安全距離42を確保して走行プランを実行できるか否かを判断し、実行できる場合は、ステップS4に移り、実行できない場合は、ステップS5に移る。
【0067】
ステップS4では、安全距離42を確保して走行プランを実行できるので、自動運転機能部29に走行プランを出力し、本フローを終了する。ステップS5では、安全距離42を確保できないので、実行を禁止する走行プランを含む判断情報を経路生成部27にフィードバックして、本フローを終了する。
【0068】
このように安全距離42を確保できない場合は、判断情報は経路生成部27にフィードバックされて、他の走行プランを生成するように促される。
【0069】
次に、
図6に示すフローチャートが開始されると、ステップS21では、経路生成部27は走行環境取得部25および判断部282から出力された情報に基づいて、走行プランを生成し、ステップS22に移る。ステップS22では、安全距離設定部281は生成した走行プランにおける安全距離42を設定し、ステップS23に移る。
【0070】
ステップS23では、判断部282は安全距離42を確保して走行プランを実行できるか否かを判断し、実行できる場合は、ステップS24に移り、実行できない場合は、ステップS25に移る。ステップS24では、安全距離42を確保して走行プランを実行できるので、自動運転機能部29に走行プランを出力し、本フローを終了する。
【0071】
ステップS25では、安全距離42を確保できないので、安全距離設定部281は、現在の走行状況から安全な上限制御値を算出し、ステップS26に移る。上限制御値は、安全距離42を確保して走行できる制御範囲の上限値である。ステップS25では、算出した上限制御値および実行を禁止する走行プランを含む判断情報を経路生成部27にフィードバックして、本フローを終了する。
【0072】
判断部282は、走行プランを安全と判定する基準は、たとえば自車両40がρ秒間、a[m/s^2]で加速したときに、車間距離が安全距離42を下回ることがないと判断できることである。したがって安全距離42が現在の車間距離と等しくなるような加速度が上限制御値となるので、経路生成部27は安全距離設定部281からフィードバックされた上限制御値以下となる制約範囲を満たす走行プランを考えれば良い。
【0073】
このように安全距離42を確保できない場合は、禁止された走行プランだけでなく上限制御値を経路生成部27にフィードバックしてもよい。これによって経路生成部27、判断部282の安全基準を抵触しない速度パターンを持つ走行プランを生成することができる。
【0074】
次に、
図7に示すフローチャートが開始されると、ステップS31では、経路生成部27は、上限制御値を取得したか否かを判断し、取得した場合は、ステップS32に移り、取得していない場合は、本フローを終了する。
【0075】
ステップS32では、経路生成部27は、取得した上限制御値を用いて、走行プランを生成可能か否か判断し、生成可能な場合は、ステップS33に移り、生成可能でない場合は、ステップS34に移る。
【0076】
ステップS33では、走行プランを生成可能であるので、経路生成部27は、取得した上限制御値を用いて走行プランを生成し、本フローを終了する。ステップS34では、走行プランを生成できないので、経路生成部27は、手動運転モードへ切替る手動運転モード切替要求を運転切替部30に出力し、本フローを終了する。
【0077】
このように
図6で算出した、入力制御値を満足する走行プランが作れない場合は、手動操縦に移行する。これによってデッドロック状態が継続することを阻止することができる。
【0078】
以上説明したように本実施形態の車両制御装置21に従えば、生成された走行プランを実行すると安全距離42を確保して走行できないときは、生成された走行プランの実行を禁止するように判断部282によって制御される。したがって安全距離42を確保することができる。また判断部282は、判断部282の判断結果を含む判断情報を走行制御ECU31以外の他の設定装置に出力する。これによって判断情報が与えられた設定装置は、判断情報を用いて、判断結果を認識することができる。たとえばユーザが認識できる表示装置などに判断情報を出力した場合は、車線区切りのない狭い道での入れ違い状況の場合など、走行プランを実行しない理由を認識することができる。また、たとえば経路生成部27に判断情報を出力した場合は、車線区切りのない狭い道での入れ違い状況の場合など、走行プランを実行しない理由を経路生成部27は認識することができるので、異なる走行プランの生成のための参考情報とすることができる。これによって自動走行制御時に安全距離42を確保しつつ、自ら動かないと危険状態を解消されない状況に対応することができる。
【0079】
また本実施形態では、判断部282は、走行プランの実行を禁止したときに、禁止した走行プランを経路生成部27に出力する。これによって経路生成部27は、実行できない走行プランを認識することができ、同じ走行プランを生成することを防ぐことができる。したがって同じ走行プランを生成することによって生じるデッドロック状態の発生を阻止することができる。
【0080】
先行技術の判断部の構成では、判断部の役割は走行プランの選定および停止判断なので、前段の経路生成部は後段でなぜ停止したのか、停止の原因は判断部なのか走行制御ECUなのかを判断することができない。したがって先行文献の経路生成部は、ひたすら同じ走行プランを判断部に提示しては却下され続けるデッドロック状態が生まれる。この場合、車両の動きは停止状態に収束する。これに対して、本実施形態では、判断部282が経路生成部27に判断情報をフィードバックすることで解消することができる。
【0081】
さらに本実施形態では、判断部282は、設定された安全距離42を確保して走行できないときは、設定された安全距離42を確保できる車速に関する制御値の上限を算出し、制御値を含んだ判断情報を経路生成部27に出力する。車速に関する制御値は、たとえば車速および加速度に関する情報である。判断部282は、安全距離42を確保できる車速および加速度の上限を上限制御値として算出し、経路生成部27は、上限制御値を満たすように走行プランを生成する。これによって判断部282の要求を満足する走行プランを生成することができる。
【0082】
また本実施形態では、経路生成部27は、制御値の上限を超えない走行プランを生成不可の場合、手動運転モードに切り替えるように運転切替部30を制御する。これによって走行プランによってデッドロック状態が解消されない場合に、運転手の運転によって解消するように促すことができる。したがって利便性を向上することができる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に関して、
図8~
図14を用いて説明する。本実施形態では、経路確認部28がフィードバックする先がデッドロック検出部45である点に特徴を有する。デッドロック検出部45は、自動運転部26にサブ機能ブロックとして設けられる。デッドロック検出部45は、経路確認部28が出力した判断情報に基づいて、現在の状況がデッドロック状態であるか否かを判断し、その判断結果を経路生成部27に出力する。デッドロック検出部45は、検出部として機能する。
【0084】
前述の第1実施形態では、経路確認部28が出力した判断情報に、停止判断によって走行プランを実施しなかった情報が含まれるが、これが一時的な停止判断なのか周期的に発生している停止判断なのかが不明である。また瞬間的なノイズなどによって判断部282が停止判断をした場合もある。そこで判断情報の内容を時系列で分析することで、本当にデッドロック状態であるか否か、またどのようなデッドロック状態であるかを判断することができる。したがって本実施形態では、どのようなデッドロック状態かを検出するデッドロック検出部45を含む。
【0085】
デッドロック検出部45は、デッドロック状態を検出し、さらにデッドロック状態が定常的デッドロック状態か周期的デッドロック状態であるかを判断する。定常的デッドロック状態とは、判断部282の停止判断から抜け出せず、移動不能となる状態である。定常的デッドロック状態は、経路生成部27が生成する走行プランを判断部282が棄却し停止する状況で発生しうる。この定常的デッドロック状態の一例は、前述の第1実施形態における
図4に示す状況である。すなわち経路生成部27が生成した走行プランを、判断部282が安全距離42を確保できないとして、拒否をし続ける状態である。
【0086】
周期的デッドロック状態は、停止状態に収束するだけでなく、停止と移動を繰り返す膠着状態になる状況である。周期的デッドロック状態は、ライブロック状態とも言われる。この周期的デッドロック状態の一例は、
図9および
図10に示す状況である。具体的には、
図9では、狭い道路でのすれ違い状況において、判断部282の停止判断後、対向する相手車両43が後ろに退避したために、停止判断が解除される。すると、自車が走行プランに従って前進すると、再び
図9の状況となり、判断部282が停止判断するので、お見合い状況は解決されない。
【0087】
また
図10では、狭い道路でのすれ違い状況において、判断部282の停止判断後、自車が後ろに退避したために、停止判断が解除される。すると、自車が走行プランに従って再び前進すると、再び
図10の状況となり、判断部282が停止判断するので、お見合い状況は解決されない。
【0088】
デッドロック検出部45は、判断部282から判断情報を取得し、判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランの実行を禁止する禁止制御が短時間に繰り返されている場合は、周期的デッドロック状態と判断する。
図11に示すグラフは、定常的デッドロック状態の波形であり、
図12に示すグラフは、周期的デッドロック状態の波形である。縦軸に判断部282で走行プランが承認されたか棄却されたか示し、承認の場合は値を1として、棄却の場合は値を0としている。横軸は、時間経過である。
【0089】
デッドロック検出部45は、
図8に示すように、さらに機能ブロックとして定常検出器46と周期検出器47とを備える。定常検出器46は、定常的デッドロック状態であるか否かを検出する。周期検出器47は、周期的デッドロック状態であるか否かを検出する。
【0090】
定常検出器46は、
図11に示すように、縦軸の移動平均を求めて、定常的デッドロック状態であるか否かを判断する。移動平均は、Ns秒間の判断部282の判断結果の棄却率である。この移動平均が所定の閾値pd[%]以上であるなら定常的デッドロック状態である判定する。移動平均を用いることで、セインノイズなどで一瞬だけ承認状態となるような状況を排除することができる。
【0091】
本実施形態では、移動平均を用いているが、移動平均に限るものではない。たとえば棄却される時間、すなわち値が0の時間を用いて、定常的デッドロック状態であるかを判断してもよい。また移動平均でなく、指数平滑などのローパス性があるフィルタリング手法であればよい。
【0092】
周期検出器47は、
図12に示すように、
図11のNs秒間よりも長いNl間で移動平均を求めて、周期的デッドロック状態であるか否かを判断する。これによって判断部282による停止判断が周期的に繰り返される、いわゆる千日手状態を回避する。したがって生成した走行プランが棄却される頻度を見て周期的デッドロック状態であるか否かを判定する。その他の判断方法、たとえば高速フーリエ変換などの周波数解析手法および機械学習を用いたパターン認識の方法で、周期的デッドロック状態であるか否かを判断してもよい。
【0093】
次に、本実施形態の車両制御装置21の処理に関して、
図13および
図14のフローチャートを用いて説明する。各フローチャートは、車両制御装置21が電源投入状態において、短時間に繰り返し実行される処理である。
【0094】
図13に示すフローチャートが開始されると、ステップS41では、デッドロック検出部45は、判断情報を取得したか否かを判断し、判断情報を取得した場合はステップS42に移り、判断情報を取得していない場合は本フローを終了する。
【0095】
ステップS42では、デッドロック検出部45は取得した判断情報を解析して、ステップS42に移る。デッドロック検出部45は、定常検出器46および周期検出器47を用いて、判断情報を解析する。
【0096】
ステップS43では、デッドロック検出部45は、周期的デッドロック状態であるか否かを判断し、周期的デッドロック状態である場合はステップS44に移り、周期的デッドロック状態でない場合は本フローを終了する。
【0097】
ステップS44では、周期的デッドロック状態であるので、リピート情報を経路生成部27に出力するように制御し、本フローを終了する。このように周期的デッドロック状態である場合には、リピート情報が経路生成部27に出力される。
【0098】
次に、
図14に示すフローチャートが開始されると、経路生成部27はリピート情報を取得した否かを判断し、リピート情報を取得した場合はステップS52に移り、リピート情報を取得していない場合は本フローを終了する。
【0099】
ステップS52では、経路生成部27は、取得したリピート情報を用いて、走行プランを生成可能か否か判断し、生成可能な場合は、ステップS53に移り、生成可能でない場合は、ステップS54に移る。換言すると、ステップS52では、周期的デッドロック状態を解消できる走行プランを生成できるか否かを判定する。
【0100】
ステップS53では、走行プランを生成可能であるので、経路生成部27は、取得したリピート情報を考慮して走行プランを生成し、本フローを終了する。ステップS54では、走行プランを生成できないので、経路生成部27は、手動運転モードへ切替る手動運転モード切替要求を運転切替部30に出力し、本フローを終了する。
【0101】
このように周期的デッドロック状態である場合には、周期的デッドロック状態を解消する走行プランが作れない場合、手動操縦に移行する。これによって周期的デッドロック状態が継続することを阻止することができる。
【0102】
このように本実施形態では、判断部282から判断情報を取得し、判断情報の時系列の変化を解析して、走行プランを実行しない停止制御が短時間に繰り返されている場合には、経路生成部27に短時間に繰り返されていることを示すリピート情報を出力する。経路生成部27は、リピート情報をさらに用いて走行プランを生成する。これによって周期的デッドロック状態が継続する走行プランを生成することを防ぐことができる。
【0103】
そして経路生成部27は、走行プランを生成できない場合は、手動運転モードに切り替えるように運転切替部30を制御する。これによって走行プランによって周期的デッドロック状態が解消されない場合に、運転手の運転によって解消するように促すことができる。したがって利便性を向上することができる。
【0104】
本実施形態では、定常検出器46と周期検出器47は、直列に接続しているが、このような構成に限るものではない。定常検出器46と周期検出器47とは、並列に並べて、経路確認部28からそれぞれに同時に出力されるような構成であってもよい。
【0105】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0106】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0107】
前述の第1実施形態では、経路確認装置は、自動運転部26の機能ブロックの1つである経路確認部28として実現されているがこのような構成に限るものではない。経路確認装置は、自動運転部26とは異なる制御装置によって実現してもよい。
【0108】
前述の第1実施形態では、デフォルトの安全距離42を数学的公式モデルによって算出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、デフォルトの安全距離42を数学的公式モデル以外で算出する構成としてもよい。例えばTTC(Time To Collision)等の他の指標によって自車及び自車周辺の移動体の挙動の情報を用いて安全距離設定部281が安全距離42を算出する構成としてもよい。
【0109】
前述の第1実施形態において、車両制御装置21によって実現されていた機能は、前述のものとは異なるハードウェアおよびソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実現してもよい。車両制御装置21は、たとえば他の制御装置と通信し、他の制御装置が処理の一部または全部を実行してもよい。車両制御装置21が電子回路によって実現される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって実現することができる。
【符号の説明】
【0110】
19…自車位置取得部 20…車両用システム 21…車両制御装置 22…センシング情報取得部 23…地図データ取得部 24…通信情報取得部 25…走行環境取得部
26…自動運転部 27…経路生成部 28…経路確認部 29…自動運転機能部 30…運転切替部 31…走行制御ECU 32…手動操作部 33…ロケータ 34…地図データベース 35…周辺監視センサ 37…通信モジュール 38…車両状態センサ 40…車両 41…障害物 42…安全距離 43…相手車両 45…デッドロック検出部(検出部) 46…定常検出器 47…周期検出器 281…安全距離設定部 282…判断部