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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】純水製造装置及び純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/76 20230101AFI20240426BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240426BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20240426BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20240426BHJP
   C02F 3/10 20230101ALI20240426BHJP
   C02F 3/34 20230101ALI20240426BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20240426BHJP
【FI】
C02F1/76 Z
C02F1/32
C02F1/70 Z
C02F1/72 101
C02F3/10 Z
C02F3/34 101A
C02F3/34 101B
C02F3/34 101D
C02F3/34 101Z
C02F9/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020133742
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030031
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】油井 啓徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
(72)【発明者】
【氏名】桃谷 尚憲
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157262(JP,A)
【文献】特開平09-094585(JP,A)
【文献】特開2011-031146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/32、70-78、3/00-34、9/00-20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理水に生物処理を行う生物処理手段と、
前記生物処理手段の下流に位置し、生物処理が行われた前記被処理水に次亜ハロゲン酸を添加する次亜ハロゲン酸添加手段と、
前記次亜ハロゲン酸添加手段の下流に位置し、前記次亜ハロゲン酸が添加された前記被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置と、
前記紫外線照射装置が設置された配管と、
前記配管に設けられ、前記次亜ハロゲン酸が添加される添加点と、を有し、
前記添加点と前記紫外線照射装置は前記配管のみで接続されている、純水製造装置。
【請求項2】
前記生物処理手段は微生物が担持された生物活性炭を有する、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記生物処理手段は、微生物が担持された生物活性炭が充填された複数の活性炭塔を有し、前記複数の活性炭塔は並列に配置されている、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記次亜ハロゲン酸は次亜臭素酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記有機物は尿素を含み、
前記生物処理手段と前記次亜ハロゲン酸添加手段の間に被処理水の尿素濃度を測定する尿素検出手段を有し、前記次亜ハロゲン酸添加手段の次亜ハロゲン酸添加量は、前記尿素検出手段で測定された尿素濃度と正の相関関係にある、請求項1から4のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項6】
前記紫外線照射装置の下流に位置する他の紫外線照射装置を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項7】
前記紫外線照射装置の下流に位置する次亜ハロゲン酸除去手段を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項8】
有機物を含む被処理水に生物処理を行い前記有機物の一部を除去することと、
前記生物処理が行われた前記被処理水に次亜ハロゲン酸を添加することと、
前記次亜ハロゲン酸が添加された前記被処理水に紫外線照射装置によって紫外線を照射すること、を有し、
前記次亜ハロゲン酸の添加点は前記紫外線照射装置が設置された配管に設けられ、前記添加点と前記紫外線照射装置は前記配管のみで接続されている純水製造方法。
【請求項9】
前記被処理水は尿素を含む、請求項8に記載の純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造装置及び純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程や液晶表示装置の製造工程における洗浄水等の用途として、有機物、イオン成分、微粒子、細菌等が高度に除去された超純水等の純水が使用されている。特に、半導体装置を含む電子部品を製造する際には、その洗浄工程において多量の純水が使用されており、その水質に対する要求も年々高まっている。電子部品製造の洗浄工程等において使用される純水では、純水中に含まれる有機物がその後の熱処理工程において炭化して絶縁不良等を引き起こすことを防止するため、水質管理項目の一つである全有機炭素(TOC)を極めて低いレベルとすることが求められるようになってきている。
【0003】
このため、尿素などの難分解性有機物についても、高い効率で除去することが求められている。特許文献1には、生物処理を用いて被処理水から尿素を除去する方法が開示されている。生物処理は微生物を利用するため、微生物の活性度が被処理水の水質に影響され、生物処理の効率が低下することがある。このため、微生物を活性化するために、生物処理を行う前に被処理水にアンモニア性の窒素源が添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-230093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
純水製造装置で処理される原水は、市水、地下水、工業用水、工場からの回収水等様々な水源に由来し、その尿素濃度も数μg/L~数百μg/Lまで変動幅が大きい場合がある。尿素濃度が低い状態が続くと微生物の活性度が低下し、尿素濃度が高くなったときに尿素が残留する可能性がある。特許文献1に開示されているように、アンモニア性の窒素源を添加することは微生物の活性化には有効である。しかし、特許文献1に開示された方法においても、生物処理工程の後に被処理水に残存した尿素などの難分解性有機物を除去する手段がない。
【0006】
本発明は尿素などの難分解性有機物を効果的に且つ安定して除去することのできる純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の純水製造装置は、有機物を含む被処理水に生物処理を行う生物処理手段と、生物処理手段の下流に位置し、生物処理が行われた被処理水に次亜ハロゲン酸を添加する次亜ハロゲン酸添加手段と、次亜ハロゲン酸添加手段の下流に位置し、次亜ハロゲン酸が添加された被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置と、紫外線照射装置が設置された配管と、当該配管に設けられ、次亜ハロゲン酸が添加される添加点と、を有し、添加点と紫外線照射装置は当該配管のみで接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、尿素などの難分解性有機物を効果的に且つ安定して除去することのできる純水製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図2】第2の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図3】第3の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図4】第4の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図5】原水と処理水の尿素濃度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の純水製造装置と純水製造方法の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る純水製造装置1Aの概略構成を示している。純水製造装置1(1次システム)は上流側の前処理システムと下流側のサブシステム(2次システム)とともに超純水製造装置を構成する。前処理システムで製造された原水(以下、被処理水という)は尿素を含む有機物を含有している。
【0011】
純水製造装置1Aは、ろ過器11、生物活性炭塔(生物処理手段)12、第1のイオン交換装置13、逆浸透膜装置14、紫外線照射装置(紫外線酸化装置)15、第2のイオン交換装置16、脱気装置17と、を有し、これらは被処理水の流通方向Dに関し上流から下流に向かって、母管L1に沿って直列に配置されている。被処理水は原水ポンプ(図示せず)で昇圧された後、ろ過器11で比較的粒径の大きな塵埃等が除去され、生物活性炭塔12で尿素や高分子有機物などの不純物が除去される。第1のイオン交換装置13は、カチオン交換樹脂が充填されたカチオン塔(図示せず)と、脱炭酸塔(図示せず)と、アニオン交換樹脂が充填されたアニオン塔(図示せず)と、を有し、これらは上流から下流に向けてこの順で直列に配置されている。被処理水はカチオン塔でカチオン成分を、脱炭酸塔で炭酸を、アニオン塔でアニオン成分をそれぞれ除去され、逆浸透膜装置14でイオン成分をさらに除去される。
【0012】
生物活性炭塔12についてさらに詳細に説明する。生物活性炭塔12には、微生物が担持された担体が充填されている。微生物は塔内を流動していてもよいが、微生物の流出を抑えるため、生物保持担体に担持されていることが望ましく、特に担体保持量が多い固定床式を用いることが望ましい。担体の種類としては、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体、ゼオライト、イオン交換樹脂、活性炭等が挙げられるが、安価で、比表面積が大きく、保持量がより多い活性炭が望ましい。生物活性炭塔12には微生物の流出が少ない下降流で被処理水が通水されるが、上向流で被処理水が通水されてもよい。生物活性炭塔12への通水速度は4~20hr-1が望ましい。被処理水の水温は15~35℃であることが望ましく、水温がこの範囲から外れる場には、生物活性炭塔12の前段に熱交換機(図示せず)を設けることが望ましい。
【0013】
微生物は、尿素を分解する酵素であるウレアーゼを有する限り限定されず、独立栄養細菌と従属栄養細菌のいずれも用いることができる。従属栄養細菌は有機物を栄養物として与える必要があるため、水質への影響の観点からは独立栄養細菌がより好ましい。独立栄養細菌の好ましい例として硝化菌が挙げられる。有機態窒素である尿素は、硝化菌の分解酵素(ウレアーゼ)によってアンモニアと二酸化炭素に分解され、アンモニアが更に亜硝酸や硝酸に分解される。従属栄養細菌を用いた場合、硝化菌と同様に分解酵素(ウレアーゼ)によって尿素がアンモニアに分解され、生成されたアンモニアは有機物を分解する過程で菌体合成に利用される。微生物は市販のものを用いてもよいが、例えば下水処理場の汚泥(種汚泥)に含まれる微生物を利用してよい。
【0014】
固定床式の場合、担体中もしくは担体間で微生物が増殖することで流路が閉塞し、それによって、微生物と被処理水との接触効率が低下し、処理性能が低下する可能性がある。そうした閉塞を防ぐために逆洗を行うことが好ましい。逆洗水としては、純水製造装置1に供給される原水や、純水製造装置1で製造された処理水(純水)が用いられる。逆洗水を被処理水の通水方向と逆方向に通水することによって、担体中もしくは担体間で増殖した微生物を水流により剥離し、閉塞を防ぐことができる。通常、逆洗は1週間に1~2回程度実施するが、閉塞が改善されない場合は頻度を増やして1日に1回程度実施してもよい。
【0015】
生物活性炭塔12と第1のイオン交換装置13との間に被処理水中の尿素濃度を測定する尿素検出手段18が設けられている。次亜ハロゲン酸の添加量は尿素検出手段18で測定された尿素濃度と正の相関関係(例えば、比例関係)にあることが望ましい。これによって、次亜ハロゲン酸の添加量が尿素処理に必要且つ十分な量に制限され、次亜ハロゲン酸の過剰添加を防ぐことができる。尿素の定量法としては、ジアセチルモノオキシムを用いた比色法に基づく定量法(例えば、衛生試験法(日本薬学会)参照)が知られている。ジアセチルモノオキシムを用いる比色法では、反応を促進するなどの目的で他の試薬(例えば、アンチピリン+硫酸溶液、塩酸セミカルバジド水溶液、塩化マンガン+硝酸カリウムの水溶液、リン酸二水素ナトリウム+硫酸溶液など)を併用することができる。アンチピリンを併用する場合には、ジアセチルモノオキシムを酢酸溶液に溶解させてジアセチルモノオキシム酢酸溶液を調製し、アンチピリン(1,5-ジメチル-2-フェニル-3-ピラゾロン)を例えば硫酸に溶解させてアンチピリン含有試薬液を調製する。そして、試料水に対してジアセチルモノオキシム酢酸溶液とアンリピリン含有試薬液とを順次混合し、波長460nm付近での吸光度を測定し、標準液との対照によって定量を行うことができる。代替案として、オンラインで測定するための機器を使用してもよい(例えばORUREA(オルガノ製)等)。この場合、尿素検出手段18は制御装置19に接続されていることが望ましい。制御装置19は尿素検出手段18で測定した尿素濃度を受け取り、その値に応じて後述する移送ポンプ20dの吐出流量を制御する。これによって、次亜ハロゲン酸添加手段20の次亜ハロゲン酸添加量が制御される。
【0016】
純水製造装置1Aは、被処理水に次亜ハロゲン酸を添加する次亜ハロゲン酸添加手段20を有している。本実施形態では、次亜ハロゲン酸は次亜臭素酸であるが、次亜塩素酸または次亜ヨウ素酸であってもよい。次亜ハロゲン酸添加手段20は、臭化ナトリウム(NaBr)の貯蔵タンク20a(臭化ナトリウムの供給手段)と、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の貯蔵タンク20b(次亜塩素酸ナトリウムの供給手段)と、臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムの攪拌槽20c(臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムの混合手段)と、移送ポンプ20dと、を有する。次亜臭素酸は長期間の保存が困難であるため、使用するタイミングに合わせて臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムを混合して生成する。攪拌槽20c(混合手段)で生成された次亜臭素酸は、移送ポンプ20dで昇圧され、逆浸透膜装置14と紫外線照射装置15との間で母管L1を通る被処理水に添加される。臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムを直接母管L1に供給し、母管L1内の被処理水の流れによってこれらを攪拌して、次亜臭素酸を生成してもよい。
【0017】
次亜ハロゲン酸添加手段20の下流に位置する紫外線照射装置15は、次亜ハロゲン酸が添加された被処理水に紫外線を照射する。紫外線照射装置15はステンレス製の反応槽と、反応槽内に設置された管状の紫外線ランプと、を備える。紫外線ランプとしては例えば、254nmと185nmの少なくとも一方の波長を含む紫外線を発生する紫外線ランプ、254nmと194nmと185nmの各波長を有する紫外線を発生する低圧紫外線ランプが使用される。紫外線照射によって次亜臭素酸による有機物(尿素)の分解促進効果が得られる。すなわち、次亜ハロゲン酸に185nmまたは254nmの波長の紫外線が照射されると、次亜ハロゲン酸ラジカルが生成され、このラジカルにより、尿素などの難分解性有機物の分解が促進される。
【0018】
従来、有機物を除去するために、被処理水に過酸化水素を添加する方法が知られている。紫外線を照射することで過酸化水素からヒドロキシラジカルが発生し、ヒドロキシラジカルによって有機物の酸化分解が促進される。しかし、尿素などの難分解性有機物を除去する場合、過酸化水素よりも次亜ハロゲン酸のほうがはるかに効果的である。従って、本実施形態によれば、ユースポイントに供給される超純水における尿素などの難分解性有機物の濃度を低下させることができる。
【0019】
紫外線照射装置15の下流に位置する第2のイオン交換装置16は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが充填された再生式イオン交換樹脂塔である。紫外線照射によって被処理水中に発生する有機物の分解生成物(二酸化炭素や有機酸)は、第2のイオン交換装置16によって除去される。その後、被処理水中の溶存酸素が脱気装置17によって除去される。
【0020】
生物処理と次亜ハロゲン酸の添加と紫外線照射を組み合わせることで以下の効果が得られる。まず、尿素の除去性能が向上する。生物処理によって被処理水中の尿素を粗取りし、その後次亜ハロゲン酸の添加と紫外線照射によって残った尿素を分解除去するため、尿素を2段階で除去することができる。次に、生物処理における尿素除去効率の変動に容易に対処することができる。生物処理の活性度は尿素濃度が高いときは高いが、尿素濃度が低くなると低下する。また、低下した活性度が回復するには数日から数十日単位の時間がかかる。従って、被処理水の尿素濃度が低下し微生物の活性度が低下した状態で被処理水中の尿素濃度が高まると、尿素の処理が追い付かず尿素の除去効率が低下する。この場合、本実施形態では後段で添加される次亜ハロゲン酸の添加量を増やすことによって残存した尿素を除去することができる。つまり、次亜ハロゲン酸添加手段20と紫外線照射装置15は生物活性炭塔12のバックアップとしての機能を有し、一時的に生物活性炭塔12の微生物の活性度が低下しても、処理水の尿素濃度が急激に悪化することを防止することができる。
【0021】
さらに、紫外線ランプは非常に高価であるが、使用期間の経過とともに紫外線強度が低下するため、例えば1年に1回程度の交換が必要となる。本実施形態では、予め尿素を生物処理によって粗取りするため、紫外線の照射量を抑えることができ、紫外線ランプの寿命を伸ばし交換頻度を長くすることができる。あるいは、紫外線ランプの小型化が可能となる。また、同様の理由から次亜ハロゲン酸の使用量を抑えることができる。従って、純水製造装置1Aのランニングコストを抑制することができる。
【0022】
図2は本発明の第2の実施形態に係る純水製造装置1Bの概略構成を示している。本実施形態では、紫外線照射装置15の後段、具体的には紫外線照射装置15と第2のイオン交換装置16との間に、他の紫外線照射装置15aが直列で設置されており、それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。後段の紫外線照射装置15aは被処理水中に残存した次亜ハロゲン酸を光分解によって除去する。従って、第2のイオン交換装置16の負荷を低減するとともに、第2のイオン交換装置16の樹脂の酸化劣化を抑制することができる。他の紫外線照射装置15aとしては、紫外線照射装置15と同様の装置を用いることができ、例えば254nmまたは185nmの少なくとも一方の波長を含む紫外線ランプを用いることができる。
【0023】
図3は本発明の第3の実施形態に係る純水製造装置1Cの概略構成を示している。本実施形態では、紫外線照射装置15の後段に還元剤添加手段21が設置されており、さらに還元剤添加手段21の後段且つ第2のイオン交換装置16の前段に逆浸透膜装置22が設けられている。それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。還元剤添加手段21は被処理水中に残存した次亜ハロゲン酸を除去する。還元剤としては過酸化水素、亜硫酸ナトリウム等を用いることができる。還元剤添加手段21は還元剤の貯蔵タンク21aと、移送ポンプ21bと、を有している。還元剤は、移送ポンプ21bで昇圧され、紫外線照射装置15と逆浸透膜装置22との間で母管L1を通る被処理水に添加される。逆浸透膜装置22は余剰の還元剤を除去する。還元剤の除去手段は、イオン交換樹脂、電気式脱イオン装置などであってもよい。あるいは、これらの還元剤除去手段を直列で組み合わせてもよい。
【0024】
次亜ハロゲン酸の除去手段は第2及び第3の実施形態に限定されず、他の紫外線照射装置15aや還元剤添加手段21と同様の効果を有する次亜ハロゲン酸除去手段(酸化剤除去手段)、例えばパラジウム(Pd)等の白金族触媒、活性炭などであってもよい。あるいは、これらの次亜ハロゲン酸の除去手段を直列で組み合わせてもよい。
【0025】
図4は本発明の第4の実施形態に係る純水製造装置1Dの概略構成を示している。本実施形態では、複数の生物活性炭塔12a~12cが並列に配置されており、その他の構成は第1の実施形態と同様である。生物活性炭塔の塔数は限定されない。生物活性炭塔12a~12cは定期的に活性炭の交換が必要であり、微生物も活性炭の交換に合わせて再担持される。実施例で述べるように、微生物が活性化し尿素の効率的な除去が可能となるためには数十日の時間を要する。複数の生物活性炭塔12a~12cに対して、活性炭の交換と微生物の再担持を交代で順次行うことで、生物活性炭塔12a~12cの全体的な尿素除去率を一定のレベルに維持することができる。すなわち、いずれかの生物活性炭塔の尿素除去率が低くても、他の生物活性炭塔の尿素除去率が高く維持されているので、処理水の尿素濃度は一定のレベルに抑えられる。または、活性炭の交換と微生物の再担持を実施する生物活性炭塔を純水製造装置1Dから隔離して、尿素除去率が所定のレベルに達したときに純水製造装置1Dに接続してもよい。いずれの方法を採用する場合も、純水製造装置1Dの連続運転が可能となる。
【0026】
(実施例)
純水に試薬尿素と生物処理に必要な微量元素とを添加し、尿素濃度100μg/Lの模擬原水を作成した。また、容積1.5Lの円筒カラムに嵩体積1.0Lの粒状活性炭(オルビーズQHG(オルガノ製))を充填して、固定床式の生物処理槽を準備した。生物処理槽に硝化脱窒汚泥を200mg/Lの割合で添加し、原水に浸漬させた。その後、原水を通水量SV12hr-1(通水流量÷活性炭充填量)で、下降流にて生物処理槽に通水し、96日間の連続通水試験を実施した。試験期間中、原水の水温は18~20℃、pHは7.3~7.5に維持した。逆洗は3日に1回の頻度で、1回当たり10分間実施した。具体的には、処理水を、線速度LV25m/h(通水流量÷円筒カラム断面積)で、上向流にて通水した。尿素濃度は、ORUREA(オルガノ製)で測定した。
【0027】
図5に原水と処理水の尿素濃度の時間変化を示す。原水中の尿素濃度の変動に対する生物処理の活性度を把握するため、原水尿素濃度は、63日目まで100μg/Lとし、64~79日目は10μg/Lに低下させ、80日以降は再び100μg/Lとした。生物処理が安定するまで時間を要するため、処理水の尿素濃度は徐々にしか低下しないが、55日目に約2μg/Lとなり、その後は原水の尿素濃度を10μg/Lに下げた期間においても2μg/L程度が維持された。一方、原水の尿素濃度を再び100μg/Lに上げると、処理水の尿素濃度は81日目に47μg/Lに悪化し、その後処理性能が回復するまで12日間必要だった。これより、生物処理は原水の尿素濃度が増加したときの追従性に課題のあることがわかる。
【0028】
81日目の生物活性炭処理水(尿素濃度47μg/L)を対象として次亜ハロゲン酸と紫外線による処理を行った。生物活性炭処理水を孔径0.45μmのフィルターでろ過して微生物を除去し、希釈塩酸を用いて反応pHを5.0に調整した。次亜ハロゲン酸としては次亜臭素酸を用いた。次亜臭素酸はNaBrとNaClOを混合し、生成して添加した。次亜臭素酸濃度は、試料水にグリシンを添加し、遊離塩素を結合塩素に変化させた後、遊離塩素試薬にて、残塩濃度計(HANNA製)を用いて測定した。紫外線ランプは波長254nmのものを用い、紫外線強度はトプコン製UVRADIOMETER UVR-2を用いて測定した。反応時間は10分とした。
【0029】
対象水100mLに対し、次亜臭素酸を未添加(比較例1)、3.2mg/L添加(実施例1)、6.4mg/L添加(実施例2)、9.6mg/L添加(実施例3)の4つのケースについて処理水の尿素濃度を測定した。次亜臭素酸を6.4mg/L添加し、紫外線を照射しないケース(比較例2)についても同様の測定を行った。表1に反応時間経過後の処理水の尿素濃度を示す。実施例1~3では次亜臭素酸を添加し、紫外線で処理することで効率的に尿素を処理することが可能であった。実施例1~3より、次亜臭素酸の添加量を増加させることで尿素除去率が向上することがわかる。これより、被処理水の残存尿素濃度に基づき次亜ハロゲン酸添加量を決定する方法の有効性が確認された。実施例2と比較例2の比較からは、紫外線照射を行わなくても尿素を相当量除去できるが、紫外線照射によって尿素の除去効率が大幅に向上することが分かる。
【0030】
【表1】
【符号の説明】
【0031】
1A~1C 純水製造装置
12,12a~12c 生物活性炭塔(生物処理手段)
15 紫外線照射装置
16 イオン交換装置
18 尿素検出手段
20 次亜ハロゲン酸添加手段
21 還元剤添加手段
図1
図2
図3
図4
図5