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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20240426BHJP
   F02M 37/18 20060101ALI20240426BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F02M37/00 331Z
F02M37/18 Z
F02M37/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020145832
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040901
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 亮二
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-045488(JP,A)
【文献】特開2008-255868(JP,A)
【文献】特開2004-340086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/18
B63B 25/16
B63H 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給源から供給される燃料を吸込んで第1管路へと吐出する1次ポンプと、
前記第1管路を介して前記1次ポンプと直列接続され、前記1次ポンプから前記第1管路を経て供給される燃料を吸込んで第2管路を経てエンジン側に供給する2次ポンプと、
燃料を貯留可能に構成され、内部に前記2次ポンプが収容されたタンクと、
前記タンク内において前記第1管路から前記2次ポンプを経て前記第2管路へと流通する燃料の一部を前記タンク内に流出させる流出部と、
前記タンク内と前記1次ポンプの吸込側とを接続し、前記流出部から流出した燃料の気化により前記タンク内で生成された気液混合燃料を前記1次ポンプの吸込側に戻す第3管路と、
前記第1管路及び前記第3管路により前記1次ポンプと前記タンクとの間に形成された還流路の何れかの箇所に設けられ、前記還流路を還流する燃料を予圧する予圧部と、を備え、
前記2次ポンプは、前記1次ポンプにより吐出され前記第1管路を経た燃料を前記タンクを介することなく吸込み、燃料を昇圧して前記第2管路に燃料を吐出し、
前記流出部は、前記第1管路から前記2次ポンプを経て前記第2管路へと流通する燃料の一部を前記タンク内に流出させて、前記タンク内に燃料を貯留する
ことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記予圧部は、前記第3管路に設けられた圧力調整バルブである
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記予圧部は、前記第1管路と前記第3管路とを接続する第4管路に介装された圧力調整バルブである
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項4】
前記流出部は、前記タンク内において前記第1管路に設けられて、前記第1管路を流通する燃料の一部を制限しながら前記タンク内に流出させるオリフィスである
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項5】
前記流出部は、前記タンク内において前記第2管路に接続されて、設定圧に基づき開閉して前記2次ポンプの吐出圧を調整すると共に、開弁時に前記2次ポンプから吐出される燃料を前記タンク内に流出させる圧力調整バルブである
ことを特徴とする請求項3に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項6】
前記第3管路は、前記タンク内の上部と前記1次ポンプの吸込側とを接続する
ことを特徴とする請求項3または5に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項7】
前記タンクは、内部に冷却管が配設され、
前記冷却管は、前記タンクに貯留された燃料と熱交換して冷却する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されたエンジンの燃料供給装置は、主燃料タンク内に貯留された燃料を密閉式の副燃料タンクを介してエンジンの各気筒の燃料噴射弁に供給している。主燃料タンクと副燃料タンクとは燃料管路を介して接続され、副燃料タンク内の燃料が燃料ポンプにより吸い上げられてエンジン側に供給されると共に、このとき副燃料タンク内に発生する負圧を利用して主燃料タンク内の燃料が副燃料タンクに導かれる。副燃料タンク内では燃料が気化して気体燃料が生成されるため、この気体燃料を処理すべく、副燃料タンク内から液体燃料を吸い上げる際に気体燃料が混合され、この気液混合燃料が燃料ポンプ内で昇圧されて液化した上でエンジン側に供給される。
【0003】
このように特許文献1の燃料供給装置は単一の燃料ポンプを備えるが、主燃料タンクから副燃料タンクに燃料を供給する専用の燃料ポンプを備える場合もある。例えば図3には船舶101用の燃料供給装置102が示され、船舶101の後部に連結される船外機103にエンジン104と共に燃料供給装置102が搭載される。燃料供給装置102の1次ポンプ105の吸込側は、ホース106及びサプライ管路107を介して船舶101側の主燃料タンク108と接続されている。1次ポンプ105の吐出側はチェックバルブ109及び低圧管路110を介して密閉式の副燃料タンク111と接続され、1次ポンプ105から吐出された燃料はリリーフバルブ121により調圧され、低圧管路110を経て副燃料タンク111に供給される。
【0004】
副燃料タンク111内には2次ポンプ112が収容され、その吸込側には吸込管路113の一端が接続されている。吸込管路113の他端は副燃料タンク111内の下部で開放され、吸込管路113の中間箇所は一対のオリフィス114を介して副燃料タンク111内の上部で開放されている。2次ポンプ112の吐出側にはチェックバルブ115を介して高圧管路116が接続され、高圧管路116は副燃料タンク111内から外部に引き出され、デリバリパイプ117を介してエンジン104の各気筒の燃料噴射弁118に接続されている。副燃料タンク111内には冷却管119が配設され、その内部には船舶101が航行する海の海水等が循環している。1次ポンプ105からの燃料は副燃料タンク111内に貯留され、この燃料を媒体として、作動に伴って発熱した2次ポンプ112が冷却管119により冷却される。
【0005】
2次ポンプ112を冷却する際に燃料の一部は気化し、副燃料タンク111内の上部に気体燃料として滞留する。2次ポンプ112の作動により、副燃料タンク111内の下部に貯留された液体燃料が吸込管路113に吸い上げられ、その際にタンク111内の上部の気体燃料がオリフィス114を介して吸込管路113内で液体燃料と混合され、気液混合燃料として2次ポンプ112に吸込まれる。2次ポンプ112内で気液混合燃料は昇圧されて液化し、高圧管路116を経てエンジン104側に案内されて各気筒の筒内での燃焼に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-37939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に示すエンジン104の燃料供給装置102は、2次ポンプ112からの吐出圧の制御性、即ち、燃圧制御性に関して、使用環境によっては、不安定な状態となってしまう場合があった。
【0008】
その主たる要因は、2次ポンプ112に供給される燃料に含まれる気体燃料と液体燃料との比率を表す気液混合比が変動することにある。このような変動現象は、副燃料タンク111内での気体燃料の発生量の格差、及び吸込管路113に吸込まれる燃料の気液混合比の格差等により引き起こされる。
【0009】
例えば副燃料タンク111内での液体燃料の気化は、揮発性が高い燃料性状ほど進行し、エンジン停止からの経過時間によっても進行する。また、タンク内の温度が高いほど進行し、振動によるタンク内での液体燃料の撹拌が激しいほど進行する。従って、これらの環境外乱に起因して、副燃料タンク111内での気体燃料の発生量に格差が生じる。
【0010】
また、振動により副燃料タンク111内で燃料が撹拌されるため、タンク上部のオリフィス114を介して吸込管路113には気体燃料のみならず液体燃料も吸込まれる。そしてタンク内での燃料の撹拌状態に応じて、オリフィス114から吸込まれる燃料の気液混合比に格差が生じるため、タンク下部から吸込管路113に吸込まれる液体燃料を合わせた全体的な気液混合比にも格差が生じる。
【0011】
結果として、2次ポンプ112に供給される燃料の気液混合比が変動し、2次ポンプ112内で昇圧されたときの気体燃料の液化状態も変動する。即ち、如何なる気液混合比の燃料であっても2次ポンプ112内での昇圧により液化される点は相違ないが、気体燃料を多く含む燃料ほど液化後の容積が縮小するため、2次ポンプ112の吐出量が低下傾向となる。例えば、2次ポンプ112の吐出圧は図3に示す圧力センサ120により検出され、予め設定された目標値に保つべく2次ポンプ112がデューティ制御されるが、過渡的な制御遅れが避けられない。このため、燃料噴射弁118の開弁時間と噴射量との相関性を崩す要因になり、結果として適切な燃料噴射制御が望めずに、エンジン性能を低下させてしまうという問題があった。
【0012】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、2次ポンプに供給される燃料の気液混合比の変動を抑制して燃圧制御性を向上でき、これにより適切な燃料噴射制御を実現してエンジン性能を向上することができるエンジンの燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンの燃料供給装置は、燃料供給源から供給される燃料を吸込んで第1管路へと吐出する1次ポンプと、第1管路を介して1次ポンプと直列接続され、1次ポンプから第1管路を経て供給される燃料を吸込んで第2管路を経てエンジン側に供給する2次ポンプと、燃料を貯留可能に構成され、内部に2次ポンプが収容されたタンクと、タンク内において第1管路から2次ポンプを経て第2管路へと流通する燃料の一部をタンク内に流出させる流出部と、タンク内と1次ポンプの吸込側とを接続し、流出部から流出した燃料の気化によりタンク内で生成された気液混合燃料を1次ポンプの吸込側に戻す第3管路と、第1管路及び第3管路により1次ポンプとタンクとの間に形成された還流路の何れかの箇所に設けられ、還流路を還流する燃料を予圧する予圧部と、を備え、2次ポンプが、1次ポンプにより吐出され第1管路を経た燃料をタンクを介することなく吸込み、燃料を昇圧して第2管路に燃料を吐出し、流出部が、第1管路から2次ポンプを経て第2管路へと流通する燃料の一部をタンク内に流出させて、タンク内に燃料を貯留することを特徴とする。
【0014】
その他の態様として、予圧部を、第3管路に設けられた圧力調整バルブとしてもよい(請求項2)。
【0015】
その他の態様として、予圧部を、第1管路と第3管路とを接続する第4管路に介装された圧力調整バルブとしてもよい(請求項3)。
【0016】
その他の態様として、流出部を、タンク内において第1管路に設けられて、第1管路を流通する燃料の一部を制限しながらタンク内に流出させるオリフィスとしてもよい(請求項4)。
【0017】
その他の態様として、流出部を、タンク内において第2管路に接続されて、設定圧に基づき開閉して2次ポンプの吐出圧を調整すると共に、開弁時に2次ポンプから吐出される燃料をタンク内に流出させる圧力調整バルブとしてもよい(請求項5)。
【0018】
その他の態様として、第3管路が、タンク内の上部と1次ポンプの吸込側とを接続してもよい(請求項6)。
その他の態様として、タンクが、内部に冷却管が配設され、冷却管が、タンクに貯留された燃料と熱交換して冷却するようにしてもよい(請求項7)。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエンジンの燃料供給装置によれば、2次ポンプに供給される燃料の気液混合比の変動を抑制して燃圧制御性を向上でき、これにより適切な燃料噴射制御を実現してエンジン性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態のエンジンの燃料供給装置を示すシステム構成図である。
図2】第2実施形態のエンジンの燃料供給装置を示すシステム構成図である。
図3】従来技術のエンジンの燃料供給装置を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明を船舶の船外機に搭載されるエンジンの燃料供給装置に具体化した第1実施形態を図1に基づき説明する。
【0022】
船外機1は船舶2の後部に連結され、動力源であるエンジン3と共に燃料供給装置4が搭載されている。船舶2には、本発明の燃料供給源に相当する主燃料タンク5が搭載され、主燃料タンク5には可撓性を有する管路、例えばホース6が接続されて船外機1へと引き込まれている。船外機1内においてホース6はサプライ管路7を介して1次ポンプ8の吸込側に接続され、1次ポンプ8の吐出側はチェックバルブ9及び低圧管路10を介して密閉式の副燃料タンク11内に引き込まれている。チェックバルブ9は、1次ポンプ8から副燃料タンク11への燃料の流通を許容し、逆方向の流通を阻止する。
【0023】
副燃料タンク11内には2次ポンプ12が収容され、その吸込側に低圧管路10が接続され、結果として、低圧管路10を介して1次ポンプ8と2次ポンプ12とが直列接続されている。2次ポンプ12の吸込側の近傍で低圧管路10は分岐し、オリフィス13を介して副燃料タンク11内に開放されている。2次ポンプ12の吐出側にはチェックバルブ14を介して高圧管路15が接続され、高圧管路15は副燃料タンク11内から外部に引き出され、デリバリパイプ16を介してエンジン3の各気筒の燃料噴射弁17に接続されている。チェックバルブ14は、2次ポンプ12からエンジン3側への燃料の流通を許容し、逆方向の流通を阻止する。高圧管路15には圧力センサ18が接続され、当該センサ18により2次ポンプ12の吐出圧が検出される。
本実施形態では、低圧管路10が本発明の第1管路に相当し、高圧管路15が本発明の第2管路に相当し、オリフィス13が本発明の流出部に相当する。
【0024】
副燃料タンク11の上部にはリリーフバルブ19及びオリフィス20を介して戻り管路21の一端が接続され、戻り管路21の他端はサプライ管路7、換言すると1次ポンプ8の吸込側と接続されている。リリーフバルブ19は常閉型として構成され、その設定圧よりも副燃料タンク11内の圧力が低いときには閉弁し、副燃料タンク11内の圧力が設定圧を越えると開弁する。副燃料タンク11内には冷却管22が配設され、その内部には船外機1を連結された船舶2が航行する海の海水等が循環している。1次ポンプ8からの燃料は副燃料タンク11内に貯留され、作動に伴って発熱した2次ポンプ12が燃料により冷却されると共に、温度上昇した燃料が冷却管22との熱交換により冷却され、これにより2次ポンプ12の過熱防止がなされる。
本実施形態では、リリーフバルブ19が本発明の予圧部または圧力調整バルブに相当し、戻り管路21が本発明の第3管路に相当する。
【0025】
燃料供給装置4及びエンジン3は、船外機1に搭載されたECU(電子制御ユニット)23により制御される。ECU23は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等から構成される。ECU23の入力側には、エンジン制御に必要な情報を検出するためのセンサ類、例えば図示しないエンジン回転速度センサや吸気負圧センサ等が接続されると共に、燃料供給装置4の圧力センサ18が接続されている。ECU23の出力側には、エンジン3を運転するためのデバイス類、例えば燃料噴射弁17や図示しない点火装置等が接続されると共に、燃料供給装置4の1次ポンプ8及び2次ポンプ12が接続されている。
【0026】
ECU23は、図示しないバッテリからの電力を1次ポンプ8及び2次ポンプ12に供給して作動させ、これにより主燃料タンク5からの燃料が燃料供給装置4を経てエンジン3の各燃料噴射弁17に供給される。2次ポンプ12については予め吐出圧の目標値、例えば300kPaが設定されており、この目標値に吐出圧を保つべくECU23により2次ポンプ12がデューティ制御される。このような燃料供給装置4の制御と並行して、ECU23はセンサ類からの検出情報に基づき燃料噴射弁17及び点火装置を駆動制御してエンジン3を運転する。図示はしないが、エンジン3の駆動力は船外機1のスクリューに伝達されて回転させ、これにより船舶2を航行させるための推進力が発生する。
【0027】
以上のようなエンジン3の運転中において、本実施形態の燃料供給装置4では燃料に含まれる気体燃料の液化が促進されると共に、液化の促進に伴って気液混合比の変動が抑制され、これにより良好な燃圧制御性を実現しており、その詳細を以下に説明する。
【0028】
船舶2側の主燃料タンク5からの燃料はサプライ管路7を経て1次ポンプ8に吸込まれ、1次ポンプ8から吐出されて低圧管路10を経て2次ポンプ12に吸込まれる。さらに燃料は2次ポンプ12から吐出されて高圧管路15を経てエンジン3の各燃料噴射弁17に供給され、所定タイミングで噴射されて各気筒の筒内での燃焼に供される。1次ポンプ8から吐出されて低圧管路10を流通する燃料の一部は、2次ポンプ12に吸込まれることなく余剰燃料としてオリフィス13から副燃料タンク11内に流出して貯留される。このときの燃料の流出はオリフィス13により適度に制限されるため、2次ポンプ12に供給される燃料は所期の燃圧に保たれる。
【0029】
一方、上記のように副燃料タンク11内では、2次ポンプ12が燃料を媒体として冷却管22により冷却されており、2次ポンプ12と接した燃料の一部が気化して気体燃料が発生する。副燃料タンク11内には1次ポンプ8の吐出圧が作用しており、それに加えて気体燃料が発生するため、リリーフバルブ19の閉弁中には副燃料タンク11内の圧力が次第に上昇する。そして、リリーフバルブ19が設定圧を越えて開弁すると、副燃料タンク11内で生成された気液混合燃料が戻り管路21側に案内される。
【0030】
結果として、副燃料タンク11内は常にリリーフバルブ19の設定圧、例えば120kPa程度に予圧される。この圧力下では燃料の液化が促進されるため、副燃料タンク11内に含まれる気体燃料の大半が液化されると共に、液体燃料の割合が増加することで燃料の気液混合比がほぼ一定に保たれる。
【0031】
なお、以下に述べるように、リリーフバルブ19を経た気液混合燃料は戻り管路21から1次ポンプ8の吸込側に戻され、その際に戻り管路21に戻される燃料量がオリフィス20により適度に制限される。しかしながら、オリフィス20は必ずしも設ける必要はなく、これを省略してもよい。
【0032】
図3に示す従来技術では、例えば燃料性状、エンジン停止時間、タンク内温度、タンク内での液体燃料の撹拌等の環境外乱に起因して、副燃料タンク111内での気体燃料の発生量に格差が生じ、この現象が2次ポンプ112に供給される燃料の気液混合比を変動させる要因の1つであった。このような環境外乱による影響が本実施形態では軽減され、副燃料タンク11の予圧により気液混合比の変動が抑制されるだけでなく、燃料に含まれる大部分が液体燃料となる。
【0033】
一方、開弁中のリリーフバルブ19を経た気液混合燃料は戻り管路21から1次ポンプ8の吸込側に戻され、再び低圧管路10を経て2次ポンプ12に吸込まれると共に、一部が余剰燃料としてオリフィス13を介して副燃料タンク11内に流出する。結果として1次ポンプ8と副燃料タンク11との間には、低圧管路10及び戻り管路21により還流路が形成され、この還流路を還流中の燃料が2次ポンプ12の作動に応じて順次吸込まれる。
【0034】
図3に示す従来技術では、振動により副燃料タンク111内の燃料が撹拌されて、吸込管路113に吸込まれる燃料の気液混合比に格差が生じ、この現象が2次ポンプ112に供給される燃料の気液混合比を変動させる要因の1つであった。これに対して本実施形態では、2次ポンプ12に副燃料タンク11内の燃料を直接供給することなく、還流路を還流中の燃料、即ち、副燃料タンク11内で予圧されて液体燃料の割合が高くなり、且つほぼ一定の気液混合比に保たれた燃料が連続的に2次ポンプ12に供給される。
【0035】
このように2次ポンプ12に供給される燃料の気液混合比がほぼ一定に保たれるため、2次ポンプ12内で昇圧されたときの気体燃料の液化状態の変動が抑制され、液化後の燃料の容積についても変動が抑制される。このため2次ポンプ12の吐出圧、換言するとエンジン3側に供給される燃圧が安定するため、燃圧制御性を向上することができる。これによりエンジン3側では適切な燃料噴射制御を実現できることから、エンジン性能を向上することができる。
【0036】
加えて、2次ポンプ12に供給される燃料中の液体燃料の割合が高いことから、2次ポンプ12内での昇圧により液化を要する気体燃料はごく僅かとなる。このため、2次ポンプ12は低負荷且つ一定負荷で作動し、ポンプ効率の向上に伴って消費電力が低減することから、発電負荷を軽減して燃費向上を達成できるという別の利点も得られる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明を別のエンジン3の燃料供給装置に具体化した第2実施形態を図2に基づき説明する。第1実施形態との相違点は燃料供給装置31にあり、特に副燃料タンク11の予圧に代えて本実施形態では低圧管路10を予圧する点、及び2次ポンプ12のデューティ制御に代えて本実施形態ではレギュレータバルブ33を用いている点にある。そこで、共通部分については同一の部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に述べる。
【0038】
主燃料タンク5からのホース6は船外機1内でサプライ管路7を介して1次ポンプ8の吸込側に接続され、1次ポンプ8の吐出側はチェックバルブ9及び低圧管路10を介して、副燃料タンク11内に収容された2次ポンプ12の吸込側に接続されている。副燃料タンク11内において、2次ポンプ12の吐出側にはレギュレータ管路32を介してレギュレータバルブ33が接続されている。
【0039】
レギュレータバルブ33は常閉型として構成され、その設定圧よりもレギュレータ管路32を経て作用する2次ポンプ12の吐出圧が低いときには閉弁し、2次ポンプ12の吐出圧が設定圧を越えると開弁する。レギュレータバルブ33は吸気管圧、または大気圧との差圧で制御され、タンク11内に圧力変動が生じても、2次ポンプ12の吐出圧はギュレータバルブ33の設定圧、例えば300kPa程度に保たれる。本実施形態では、レギュレータバルブ33が本発明の流出部または圧力調整バルブに相当する。
【0040】
副燃料タンク11内の上部には戻り管路34の一端が挿入されて、オリフィス35を介してタンク11内に開放されており、戻り管路34の他端は1次ポンプ8の吸込側と接続されている。低圧管路10と戻り管路34とはリリーフ管路36を介して接続され、リリーフ管路36にはリリーフバルブ37が介装されている。リリーフバルブ37は常閉型として構成され、その設定圧よりも低圧管路10内の圧力が低いときには閉弁し、低圧管路10内の圧力が設定圧を越えると開弁する。結果として低圧管路10内の圧力は、リリーフバルブ37の設定圧、例えば120kPa程度に調整される。本実施形態では、リリーフ管路36が本発明の第4管路に相当し、リリーフバルブ37が本発明の予圧部または圧力調整バルブに相当する。
【0041】
次いで、エンジン3の運転中における燃料供給装置31の作動状態を説明する。
主燃料タンク5からの燃料が1次ポンプ8から吐出され、低圧管路10を経て2次ポンプ12に吸込まれて高圧管路15を経てエンジン3側へと吐出される。レギュレータバルブ33は設定圧に基づき開閉して2次ポンプ12の吐出圧を調整し、その開弁時には2次ポンプ12から吐出された燃料が副燃料タンク11内に流出し、副燃料タンク11内で減圧沸騰して気化する。また第1実施形態と同じく2次ポンプ12を冷却する際に燃料の一部が気化し、結果として副燃料タンク11内では気体燃料が発生して、液体燃料と共に気液混合燃料として貯留される。
【0042】
1次ポンプ8の吸込側には負圧が発生しているため、副燃料タンク11内の気液混合燃料はオリフィス35から戻り管路34を経て1次ポンプ8の吸込側に戻される。そして、リリーフバルブ37の調圧機能により1次ポンプ8の吐出圧、ひいては低圧管路10内の燃圧がリリーフバルブ37の設定圧に保たれる。このため低圧管路10を流通する際に、燃料はリリーフバルブ37の設定圧、例えば120kPa程度に予圧されて液化が促進される。従って、気液混合比を変動させる要因である環境外乱の影響が軽減され、燃料中の気体燃料の大半が液化されると共に、液体燃料の割合が増加することで燃料の気液混合比がほぼ一定に保たれる。このような燃料が、低圧管路10及び戻り管路34により1次ポンプ8と副燃料タンク11との間に形成された還流路を還流しながら、2次ポンプ12の作動に応じて順次吸込まれる。
【0043】
戻り管路34の一端を副燃料タンク11内の上部に接続しているのは、気体燃料の効率的な液化を目的とした対策である。即ち、気体燃料は副燃料タンク11内の上部に滞留しているため、上部に接続した戻り管路34を経て気体燃料を多く含む燃料が1次ポンプ8側に戻される。このため低圧管路10内での予圧により気体燃料をより効率的に液化でき、燃料中に含まれる液体燃料の割合を一層増加させることができる。
【0044】
そして、このようして還流路を還流中の燃料、即ち、低圧管路10内で予圧されて液体燃料の割合が高くなり、且つほぼ一定の気液混合比に保たれた燃料が連続的に2次ポンプ12に供給される。従って、重複する説明はしないが第1実施形態と同様に、2次ポンプ12に供給される燃料の気液混合比がほぼ一定に保たれ、その吐出圧が安定して燃圧制御性を向上できる。また、2次ポンプ12に供給される燃料中の液体燃料の割合が高いことから、2次ポンプ12を低負荷且つ一定負荷で作動させてポンプ効率を向上することができる。
【0045】
本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、船舶2の船外機1に搭載されるエンジン3の燃料供給装置4,31に具体化したが、対象となるエンジンはこれに限るものではない。例えば船外機1ではなく、船舶2自体に動力源として搭載されたエンジンを対象とする燃料供給装置に具体化してもよい。
また上記第1実施形態では、副燃料タンク11と戻り配管21との間にリリーフバルブ19を設けて副燃料タンク11内を予圧し、第2実施形態では、低圧管路10と戻り管路34とを接続するリリーフ管路36にリリーフバルブ37を介装して低圧管路10を予圧した。しかしながら、還流路を還流する燃料を予圧可能であれば、各リリーフバルブ19,37の設置位置はこれに限るものではなく、例えば図1において、サプライ管路7と戻り管路21との接続箇所にリリーフバルブ19を設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
4,31 燃料供給装置
5 主燃料タンク(燃料供給源)
8 1次ポンプ
10 低圧管路(第1管路)
11 副燃料タンク(タンク)
12 2次ポンプ
13 オリフィス(流出部)
15 高圧管路(第2管路)
19,37 リリーフバルブ(予圧部、圧力調整バルブ)
21,34 戻り管路(第3管路)
33 レギュレータバルブ(流出部、圧力調整バルブ)
36 リリーフ管路(第4管路)
図1
図2
図3