(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】バキュームポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20240426BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240426BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F04C29/12 D
F04C29/00 B
F04B37/16 E
(21)【出願番号】P 2020156990
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】小田 信禎
(72)【発明者】
【氏名】對馬 雅範
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 浩史
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-092504(JP,A)
【文献】特開2004-332697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 29/00
F04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に潤滑油の入口が形成され、他端部に前記潤滑油の出口が形成された給油パイプと、
前記給油パイプの前記他端部が挿入される凹部が形成されたシャフト部を含むロータと、
前記シャフト部に係合するカップリングと、
前記カップリングを押えるとともに前記凹部の内周面に嵌合し、前記給油パイプの前記他端部の前記凹部からの離脱を規制するように構成されたブッシュと、
を備え
、
前記ブッシュは、
前記カップリングを押えるカップリング押え部と、
前記内周面に嵌合する筒状部分と、
を含み、
前記ブッシュの前記筒状部分は、
前記カップリング押え部に接続し、前記内周面に嵌合する筒状の第1部分と、
前記第1部分における前記カップリング押え部と反対側に接続し、前記第1部分から離れるにつれて前記ロータの径方向における内側に向かうように延在する第2部分と、
を含み、
前記ブッシュは、前記給油パイプの前記他端部の前記凹部からの離脱を前記第2部分によって規制するように構成された、バキュームポンプ。
【請求項2】
前記給油パイプの前記他端部の外周面は、前記第2部分よりも前記凹部の深い位置に凸部を含み、
前記径方向における前記第2部分の内側端と前記給油パイプの前記他端部の前記外周面と間の距離は、前記径方向における前記凸部の前記外周面からの高さよりも小さい、請求項
1に記載のバキュームポンプ。
【請求項3】
前記第2部分よりも前記凹部の深い位置に、前記給油パイプの前記他端部の外周面に保持された弾性体を更に備え、
前記ロータの径方向における前記第2部分の内側端と前記給油パイプの前記他端部の前記外周面との間の距離は、前記弾性体が圧縮されていない自然状態にあるときの前記径方向における前記弾性体の大きさよりも小さ
く、前記バキュームポンプをエンジンから取り外す際、前記給油パイプの前記他端部の前記外周面に保持された前記弾性体が前記第2部分に引っ掛かるように構成された、請求項
1に記載のバキュームポンプ。
【請求項4】
一端部に潤滑油の入口が形成され、他端部に前記潤滑油の出口が形成された給油パイプと、
前記給油パイプの前記他端部が挿入される凹部が形成されたシャフト部を含むロータと、
前記シャフト部に係合するカップリングと、
前記カップリングを押えるとともに前記凹部の内周面に嵌合し、前記給油パイプの前記他端部の前記凹部からの離脱を規制するように構成されたブッシュと、
を備え、
前記ブッシュは、
前記カップリングを押えるカップリング押え部と、
前記内周面に嵌合する筒状部分と、
を含み、
前記ブッシュよりも前記凹部の深い位置に、前記ブッシュの前記筒状部分の内径よりも大きな外径を有する環状部材を更に備え、
前記ブッシュは、前記給油パイプの前記他端部の前記凹部からの離脱を前記環状部材を介して規制するように構成された
、バキュームポンプ。
【請求項5】
前記凹部の前記内周面は、段差部を含み、
前記環状部材は、前記ブッシュと前記段差部との間に配置された、請求項
4に記載のバキュームポンプ。
【請求項6】
前記給油パイプの前記他端部の外周面は、前記環状部材よりも前記凹部の深い位置に凸部を含み、
前記ロータの径方向における前記環状部材の内側端と前記給油パイプの前記他端部の前記外周面と間の距離は、前記径方向における前記凸部の前記外周面からの高さよりも小さい、請求項
4又は5に記載のバキュームポンプ。
【請求項7】
前記環状部材よりも前記凹部の深い位置に、前記給油パイプの前記他端部の外周面に保持された弾性体を更に備え、
前記ロータの径方向における前記環状部材の内側端と前記給油パイプの前記他端部の前記外周面との間の距離は、前記弾性体が圧縮されていない自然状態にあるときの前記径方向における前記弾性体の大きさよりも小さ
く、前記バキュームポンプをエンジンから取り外す際、前記給油パイプの前記他端部の前記外周面に保持された前記弾性体が前記環状部材に係合するように構成された、請求項
4又は5に記載のバキュームポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用のバキュームポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のバキュームポンプは、外部から潤滑油が供給されるように、エンジンに取り付けられていることがある。特許文献1に記載のバキュームポンプは、エンジンのカムシャフトに連結されるロータのシャフト部と、一端がシャフト部の凹部にポンプ側のOリングを介して嵌合され、他端がカムシャフトの凹部にエンジン側のOリングを介して嵌合される給油パイプと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、エンジンに取り付けられているバキュームポンプをエンジンから取り外す際に、給油パイプがシャフト部から抜けて、カムシャフトによって保持されたままとなる虞がある。つまり、給油パイプがエンジン側に残ってしまう虞がある。給油パイプがエンジン側に残ってしまうと、バキュームポンプをエンジンに再び取り付ける(再組立)際の作業性が悪化する。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、エンジンから取り外す際に、給油パイプがエンジン側に残ることを抑制できるバキュームポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るバキュームポンプは、一端部に潤滑油の入口が形成され、他端部に潤滑油の出口が形成された給油パイプと、給油パイプの他端部が挿入される凹部が形成されたシャフト部を含むロータと、シャフト部に係合するカップリングと、カップリングを押えるとともに凹部の内周面に嵌合し、給油パイプの他端部の凹部からの離脱を規制するように構成されたブッシュと、を備える。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、ブッシュは、カップリングを押えるカップリング押え部と、内周面に嵌合する筒状部分と、を含んでもよい。
【0008】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、ブッシュの筒状部分は、カップリング押え部に接続し、内周面に嵌合する筒状の第1部分と、第1部分におけるカップリング押え部と反対側に接続し、第1部分から離れるにつれてロータの径方向における内側に向かうように延在する第2部分と、を含み、ブッシュは、給油パイプの他端部の凹部からの離脱を第2部分によって規制するように構成されてもよい。
【0009】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の構成において、給油パイプの他端部の外周面は、第2部分よりも凹部の深い位置に凸部を含み、径方向における第2部分の内側端と給油パイプの他端部の外周面との間の距離は、径方向における凸部の外周面からの高さよりも小さくてもよい。
【0010】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の構成において、第2部分よりも凹部の深い位置に、給油パイプの他端部の外周面に保持された弾性体を更に備え、ロータの径方向における第2部分の内側端と給油パイプの他端部の外周面との間の距離は、弾性体が圧縮されていない自然状態にあるときの径方向における弾性体の大きさよりも小さくてもよい。
【0011】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、ブッシュよりも凹部の深い位置に、ブッシュの筒状部分の内径よりも大きな外径を有する環状部材を更に備え、ブッシュは、給油パイプの他端部の凹部からの離脱を環状部材を介して規制するように構成されてもよい。
【0012】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の構成において、凹部の内周面は、段差部を含み、環状部材は、ブッシュと段差部との間に配置されてもよい。
【0013】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)に記載の構成において、給油パイプの他端部の外周面は、環状部材よりも凹部の深い位置に凸部を含み、ロータの径方向における環状部材の内側端と給油パイプの他端部の外周面との間の距離は、径方向における凸部の外周面からの高さよりも小さくてもよい。
【0014】
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)に記載の構成において、環状部材よりも凹部の深い位置に、給油パイプの他端部の外周面に保持された弾性体を更に備え、ロータの径方向における環状部材の内側端と給油パイプの他端部の外周面との間の距離は、弾性体が圧縮されていない自然状態にあるときの径方向における弾性体の大きさよりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示のバキュームポンプによれば、エンジンから取り外す際に、給油パイプがエンジン側に残ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るバキュームポンプの構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るバキュームポンプの斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るブッシュ及び給油パイプの構成を示す図であって、
図1の一部を拡大した断面図である。
【
図4】本開示の第1実施形態の変形例に係る給油パイプの構成を示す断面図である。
【
図5】本開示の第2実施形態に係るバキュームポンプの構成を示す断面図である。
【
図6】本開示の第2実施形態の変形例に係る給油パイプの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0018】
本開示の一実施形態に係るバキュームポンプは、例えば、自動車等の車両におけるブレーキブースター(マスターバック)の負圧室内を負圧にするためのポンプである。このようなバキュームポンプは、例えば、エンジンの駆動力でバキュームポンプのロータを回転させるようになっている。また、このようなバキュームポンプは、例えば、バキュームポンプのロータを滑らかに回転させるために、エンジンからバキュームポンプの給油パイプを介して潤滑油が供給されるようになっている。
【0019】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係るバキュームポンプ1の構成について説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係るバキュームポンプ1の構成を示す断面図である。
図1には、エンジン100にバキュームポンプ1が取り付けられている状態が図示されている。
図1に示すように、バキュームポンプ1は、給油パイプ2と、ロータ4と、カップリング6と、ブッシュ8と、を含む。
【0020】
以下において、バキュームポンプ1におけるロータ4の回転軸線Oが延びる方向を単に「軸方向」とし、ロータ4の周方向を単に「周方向」とし、ロータ4の径方向を単に「径方向」とする。
【0021】
給油パイプ2は、筒形状を有し、内部に潤滑油が流れる給油通路7が形成されている。給油パイプ2の一端部10には、潤滑油が流れる給油通路7の入口12が形成されている。この給油パイプ2の一端部10は、エンジン100のカムシャフト102の内部に形成される潤滑油が流れる流路104の出口を形成する出口部106に挿入されている。つまり、給油パイプ2の給油通路7は、カムシャフト102の流路104と連通している。
【0022】
図1に例示する形態では、給油パイプ2の一端部10は、潤滑油の漏れを防止するため、外周面14にOリング16を保持している。より具体的には、給油パイプ2の一端部10の外周面14には環状の溝17が形成されており、Oリング16はこの溝17に装着されている。
【0023】
他方、給油パイプ2の他端部18には、潤滑油が流れる給油通路7の出口20が形成されている。出口20を通過した潤滑油は、ロータ4の内部に形成された潤滑油流路25を通って、不図示のバキュームポンプ1のポンプ室内に供給される。
【0024】
図1に例示する形態では、給油パイプ2の他端部18は、潤滑油の漏れを防止するため、Oリング24を保持している。より具体的には、給油パイプ2の他端部18は、第1筒状部33と、第1筒状部33より肉厚に構成される第2筒状部35と、を含む。この肉厚の差の分だけ、第2筒状部35は第1筒状部33の外周面37aよりも径方向の外側に向かって突出している。給油パイプ2の第2筒状部35は、第1筒状部33よりも軸方向のロータ4側に位置している。給油パイプ2の第2筒状部35の軸方向のロータ4側の端面には、上述した出口20が形成されている。給油パイプ2の第2筒状部35の外周面37bには環状の溝27が形成されており、Oリング24はこの溝27に装着されている。尚、給油パイプ2の第2筒状部35は、軸方向において、他端部18の任意の位置に設けられる。つまり、給油パイプ2の第2筒状部35は、給油パイプ2のロータ4側の先端を構成することに限定されない。
【0025】
ロータ4は、ロータ4を駆動させるエンジン100のカムシャフト102に連結されるシャフト部28を含む。
図1に例示する形態では、シャフト部28は、カップリング6を介して、カムシャフト102に連結されているが、この具体的な説明は後述する。尚、
図1には、ロータ4の一部であるシャフト部28が図示されているが、残りの一部は不図示である。
【0026】
シャフト部28には、給油パイプ2の他端部18が挿入される凹部26が形成されている。
図1に例示する形態では、シャフト部28は、バキュームポンプ1のハウジング31内に配置される基部34、及び基部34の軸方向の一端36から突出する係合部38を含む。シャフト部28の凹部26の開口端40は、係合部38の突出面42に形成されている。シャフト部28の凹部26は、この開口端40から軸方向に沿ってシャフト部28の基部34まで延在している。
【0027】
図1に例示する形態では、シャフト部28の凹部26の内周面30は、大径部46と、小径部48と、傾斜部50と、を含む。大径部46及び小径部48のそれぞれは、軸方向に沿ってストレート状に延在している。大径部46は、シャフト部28の凹部26の開口端40を形成している。小径部48は、大径部46よりもシャフト部28の凹部26の深い位置に形成され、大径部46よりも直径が小さい。傾斜部50は、大径部46と小径部48との間に位置し、小径部48に近づくにつれて直径が小さくなるように傾斜している。このような構成によれば、シャフト部28の凹部26は、シャフト部28の凹部26の深さが浅い位置から順に大径部46、傾斜部50、及び小径部48を含むので、給油パイプ2をシャフト部28の凹部26の奥まで簡単に挿入することができる。
【0028】
カップリング6は、シャフト部28に係合している。
図1に例示する形態では、カップリング6は、筒形状を有しており、カップリング6内にシャフト部28の係合部38が位置するように、シャフト部28の係合部38に嵌合している。シャフト部28は、このカップリング6を介してエンジン100のカムシャフト102に連結されている。つまり、ロータ4を駆動する駆動力は、エンジン100のカムシャフト102からカップリング6を介してロータ4のシャフト部28に伝達されるようになっている。
【0029】
ブッシュ8は、カップリング6を押えるとともにシャフト部28の凹部26の内周面30に嵌合し、給油パイプ2の他端部18のシャフト部28の凹部26からの離脱を規制するように構成されている。このようなブッシュ8は、金属材料から形成されてもよい。
【0030】
本開示の第1実施形態に係るバキュームポンプ1の作用・効果について説明する。
図1に例示する形態によれば、ブッシュ8はシャフト部28に係合するカップリング6を押さえるように構成されている。さらに、ブッシュ8は給油パイプ2の他端部18がシャフト部28の凹部26から離脱することを規制するように構成されている。このため、エンジン100に取り付けられているバキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、シャフト部28とともに給油パイプ2をエンジン100から抜き取ることができる。よって、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2がエンジン100側に残ることを抑制できる。
【0031】
給油パイプ2の他端部18がシャフト部28の凹部26から離脱することを規制するブッシュ8の構成の一例について説明する。
図2は、本開示の第1実施形態に係るバキュームポンプ1の斜視図である。
図3は、本開示の第1実施形態に係るブッシュ8及び給油パイプ2の構成を示す図であって、
図1の一部を拡大した断面図である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、ブッシュ8は、カップリング6を押えるカップリング押え部47と、カップリング押え部47に接続し、シャフト部28の凹部26の内周面30に嵌合する筒状の筒状部分45と、を含む。
図2に例示する形態では、カップリング押え部47の一部47aは係合部38よりも径方向外側に位置しており、筒形状を有するカップリング6の抜け止めとして機能するようになっている。
【0033】
このような構成によれば、ブッシュ8がカップリング押え部47と筒状部分45とを含むという簡単な構成で、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2がエンジン100側に残ることを抑制できる。
【0034】
図3に例示する形態では、ブッシュ8の筒状部分45は、カップリング押え部47に接続し、シャフト部28の凹部26の内周面30に嵌合する筒状の第1部分49と、第1部分49におけるカップリング押え部47と反対側に接続し、第1部分49から離れるにつれてロータ4の径方向における内側に向かうように延在する第2部分56と、を含む。第1部分49は、大径部46に嵌合している。言い換えると、第1部分49は傾斜部50まで延在していない。第2部分56は、第2部分56が形成される前のブッシュ8の筒状部分45の軸方向のロータ4側の端部を加圧することで変形させた部分である(いわゆるカシメと呼ばれる)。尚、この加圧は、ブッシュ8をシャフト部28の凹部26の内周面30に嵌合すると同時に行われてもよいし、ブッシュ8をシャフト部28の凹部26の内周面30に嵌合する前に予め行われてもよい。
【0035】
図3に例示する形態では、給油パイプ2の第2筒状部35(凸部)は、第2部分56よりもシャフト部28の凹部26の深い位置に設けられている。そして、径方向における第2部分56の内側端58と給油パイプ2の他端部18の第1筒状部33の外周面37aと間の距離d1は、径方向における第1筒状部33の外周面37aから第2筒状部35の外周面37bまでの長さh(径方向における凸部の外周面からの高さ)よりも小さい。つまり、エンジン100からバキュームポンプ1を抜き取る際に、ブッシュ8の第2部分56に給油パイプ2の第2筒状部35が引っ掛かるようになっている、あるいは当接するようになっている。このように、ブッシュ8は、第2部分56が給油パイプ2の第2筒状部35に引っ掛かる、あるいは当接するように構成されており、給油パイプ2の他端部18がシャフト部28の凹部26から離脱することを第2部分56によって規制するように構成されている。つまり、ブッシュ8は、給油パイプ2の抜け止めとして機能している。
【0036】
このような構成によれば、エンジン100に取り付けられているバキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2の第2筒状部35(凸部)をブッシュ8の第2部分56に係合させ(引っ掛けて、あるいは当接させて)、シャフト部28とともに給油パイプ2を抜き取ることができる。このため、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2がエンジン100側に残ることを抑制できる。
【0037】
尚、
図3に例示する形態では、ブッシュ8の第2部分56が、給油パイプ2の第2筒状部35に係合することで、給油パイプ2の他端部18がシャフト部28の凹部26から離脱することを規制していたが、本開示はこの形態に限定されない。
【0038】
例えば、
図4に示すように、給油パイプ2は、第2部分56よりもシャフト部28の凹部26の深い位置に、給油パイプ2の他端部18の第1筒状部33の外周面37aに保持された弾性体60を更に備える。弾性体60は、例えば、環状に構成されるOリングであり、給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aに嵌合している。より具体的には、給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aには環状の溝61が形成されており、弾性体60はこの溝61に装着されている。そして、ロータ4の径方向におけるブッシュ8の第2部分56の内側端58と給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aとの間の距離d1は、弾性体60が圧縮されていない自然状態にあるときの径方向における弾性体60の大きさx1よりも小さい。
【0039】
このような構成によれば、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2の他端部18の第1筒状部33の外周面37aに保持されている弾性体60をブッシュ8の第2部分56に引っ掛けて、シャフト部28とともに給油パイプ2を抜き取ることができる。このため、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2がエンジン100側に残ることを抑制できる。
【0040】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態に係るバキュームポンプ1について説明する。第2実施形態は、ブッシュ8が、第2部分56ではなく、ブッシュ8とは別に設けられる環状部材62を介して、給油パイプ2の他端部18がロータ4のシャフト部28の凹部26から離脱することを規制するように構成されている点で第1実施形態と異なるが、それ以外の構成は第1実施形態で説明した構成と同じである。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図5は、本開示の第2実施形態に係るバキュームポンプ1の構成を示す断面図である。
図5に示すように、バキュームポンプ1は、ブッシュ8の筒状部分45が第1実施形態で説明した第1部分49を含むが、第2部分56(カシメ)を含まないように構成されている。このようなバキュームポンプ1は、ブッシュ8よりもシャフト部28の凹部26の深い位置に、ブッシュ8の筒状部分45の第1部分49の内径r1よりも大きな外径r2を有する環状部材62を更に備える。
【0042】
図5に例示する形態では、環状部材62は、環状に構成されており、周方向全体に亘って延在している。このような環状部材62は、例えばワッシャである。尚、本開示は、環状部材62が周方向全体に亘って延在していること(環状であること)に限定されない。例えば、環状部材62は、軸方向視において、C形状を有していてもよい。
【0043】
図5に例示する形態では、シャフト部28の凹部26の内周面30は、大径部46と傾斜部50とを接続する段差部64を含む。この段差部64は軸方向と直交する面を有している。そして、環状部材62は、ブッシュ8と段差部64との間に配置されている。より具体的には、環状部材62は、ブッシュ8の第1部分49と段差部64との間に挟持されている。このような構成によれば、環状部材62の軸方向のエンジン100側への移動を抑止することができる。尚、
図5に例示する形態では、段差部64は軸方向と直交する面を有していたが、ブッシュ8との間に環状部材62を配置可能であるならば、軸方向と直交する断面に対して傾斜する面を有してもよい。
【0044】
図5に例示する形態では、給油パイプ2の第2筒状部35(凸部)は、環状部材62よりもシャフト部28の凹部26の深い位置に設けられている。そして、径方向における環状部材62の内側端66と給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aとの間の距離d2は、径方向における第1筒状部33の外周面37aから第2筒状部35の外周面37bまでの長さh(径方向における凸部の外周面からの高さ)よりも小さい。つまり、エンジン100からバキュームポンプ1を抜き取る際に、環状部材62に給油パイプ2の第2筒状部35が引っ掛かるようになっている、あるいは当接するようになっている。このように、ブッシュ8は、環状部材62を介して、給油パイプ2の第2筒状部35に係合し、給油パイプ2の他端部18がシャフト部28の凹部26から離脱することを規制するように構成されている。つまり、ブッシュ8は、環状部材62(ワッシャ)を介して、給油パイプ2の抜け止めとして機能している。
【0045】
このような構成によれば、エンジン100に取り付けられているバキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2の第2筒状部35を、環状部材62を介して、ブッシュ8に係合させ、シャフト部28とともに給油パイプ2を抜き取ることができる。このため、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2がエンジン100側に残ることを抑制できる。
【0046】
尚、
図5に例示する形態では、ブッシュ8が、環状部材62を介して、給油パイプ2の第2筒状部35に係合することで、給油パイプ2の他端部18がシャフト部28の凹部26から離脱することを規制していたが、本開示はこの形態に限定されない。
【0047】
例えば、
図6に示すように、給油パイプ2は、環状部材62よりもシャフト部28の凹部26の深い位置に、給油パイプ2の他端部18の第1筒状部33の外周面37aに保持された弾性体70を更に備える。弾性体70は、例えば、環状に構成されるOリングであり、給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aに嵌合している。より具体的には、給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aには環状の溝71が形成されており、弾性体70はこの溝71に装着されている。そして、径方向における環状部材62の内側端66と給油パイプ2の第1筒状部33の外周面37aとの間の距離d2は、弾性体70が圧縮されていない自然状態にあるときの径方向における弾性体70の大きさx2よりも小さい。
【0048】
このような構成によれば、エンジン100に取り付けられているバキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2の他端部18の第1筒状部33の外周面37aに保持されている弾性体70を環状部材62に係合させ、シャフト部28とともに給油パイプ2を抜き取ることができる。このため、バキュームポンプ1をエンジン100から取り外す際に、給油パイプ2がエンジン100側に残ることを抑制できる。
【0049】
以上、本開示の第1実施形態及び第2実施形態に係るバキュームポンプについて説明したが、本開示は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 バキュームポンプ
2 給油パイプ
4 ロータ
6 カップリング
8 ブッシュ
10 給油パイプの一端部
12 入口
18 給油パイプの他端部
20 出口
26 凹部
28 シャフト部
30 凹部の内周面
35 第2筒状部(凸部)
37 第2筒状部の外周面(凸部の外周面)
45 筒状部分
47 カップリング押え部
49 筒状部分の第1部分
56 筒状部分の第2部分
58 第2部分の内側端
60 弾性体
62 環状部材
64 内周面の段差部
66 環状部材の内側端
70 弾性体
O 回転軸線