(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ヒートポンプシステムを備えたタンブル乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/02 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
D06F58/02 F
(21)【出願番号】P 2020529128
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017080655
(87)【国際公開番号】W WO2019105524
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】520045608
【氏名又は名称】エレクトロラックス プロフェッショナル アクティエボラーグ(パブリーク)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス ボンデソン
(72)【発明者】
【氏名】グンナル インゲマル パーション
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ニルソン
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】村上 聡
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106592182(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第3118365(EP,A1)
【文献】米国特許第4621438(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102016200308(DE,A1)
【文献】実開昭59-184014(JP,U)
【文献】特開2017-483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプシステム(22)と、空気流を循環させるための空気流回路(21)と、を備えていて、前記空気流回路(21)が、凝縮器(19)、乾燥ドラム(11)、ファン装置(13)、空気流ダクト(18)、及び蒸発器(15)を備える、タンブル乾燥機(1)であって、前記空気流ダクト(18)が、前記蒸発器(15)の上流に配置されていて複数の開口(23)を備えた狭窄器(16)を備え、
前記狭窄器(16)は、前記空気流ダクト(18)の断面にわたって
、従って前記蒸発器(15)の表面にわたって、分布した複数の開口(23)が設けられていて、空気が前記狭窄器(16)
の第一側(A)から前記狭窄器(16)の第二側(B)へ流れるときに前記空気流ダクト(18)内を循環する前記空気流の圧力低下を生じさせるように適合されており、前記狭窄器(16)の開口(23)が前記蒸発器(15)の表面にわたって前記空気流を分布するように適合されており、
前記狭窄器(23)が、板金又は金属メッシュである穿孔板である、
タンブル乾燥機。
【請求項2】
前記開口(23)が前記狭窄器(16)の表面の少なくとも1/3を構成する、請求項1に記載のタンブル乾燥機(1)。
【請求項3】
前記狭窄器(16)と前記蒸発器(15)の表面との間の距離(d)が、0~300mm、請求項1又は2に記載のタンブル乾燥機(1)。
【請求項4】
回転可能な前記ドラム(11)が、空気入口開口を備えた円形後方壁と、空気出口開口を備えたラジアル円筒壁と、を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンブル乾燥機。
【請求項5】
前記ドラム(11)の円筒外周の外側の空間がフィルタ(12)に通じるダクトとして構成されている、請求項4に記載のタンブル乾燥機。
【請求項6】
フィルタ(12)が
前記ドラム(11)の下方に配置されている、請求項4又は5に記載のタンブル乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンブル乾燥機に関し、特にヒートポンプシステムを備えるタンブル乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
斯かるタンブル乾燥機は例えば欧州特許出願公開第3118365号明細書に示されており、斯かるタンブル乾燥機に関連する一つの課題はそれらのエネルギ効率を如何にしてさらに改善するかである。
【発明の概要】
【0003】
改善された性能を有するヒートポンプシステムを備えたタンブル乾燥機を得ることが目的である。
【0004】
これは、ヒートポンプシステムと、空気流を循環させるための空気流回路と、を備えるタンブル乾燥機によって少なくとも部分的に実現される。空気流回路は、凝縮器、乾燥ドラム、ファン装置、空気流ダクト、及び蒸発器を備える。空気流ダクトは蒸発器の上流に配置された狭窄器/拡散器を備える。狭窄器には空気流ダクトの断面にわたって分布した複数の開口が設けられており、狭窄器は空気流が狭窄器の第一側から狭窄器の第二側へ流れるときに空気流ダクト内を循環する空気流の圧力降下を生じさせる。狭窄器の開口は空気流ダクトの断面にわたって空気流を分布するように適合されている。
【0005】
開口を備えた狭窄器を蒸発器の上流の空気流ダクト内に配置することにより、空気流を蒸発器の表面の大部分でより均等に配分することが可能になる。これは、蒸発器で得られる空気流のより効果的な除湿と、乾燥ドラム内のより短い乾燥時間と、ヒートポンプシステムのより高い性能及びエネルギ節約と、に繋がる。
【0006】
開口は狭窄器の表面の少なくとも1/3を構成するとよい。
【0007】
蒸発器の表面にわたって所望の空気流分布を得るために、開口の割合は空気流ダクトのサイズ、従って洗濯乾燥機のサイズに依存する可能性がある。但し、それは狭窄器の少なくとも1/3が所望の空気流分布を有する開口から構成され得る場合に有利になるであろう。狭窄器と蒸発器の表面との間の距離は、0~300mm、好ましくは10mm~40mmである。
【0008】
狭窄器は穿孔板であるとよい。例えば、穿孔板は板金でよく、又は金属メッシュが空気流ダクト内に配置されて狭窄器を提供するとよい。これら解決策は製造が簡単で安価である。
【0009】
タンブル乾燥機の回転可能なドラムは、空気入口開口を備えた円形後方壁と、空気出口開口を備えたラジアル円筒壁と、を備えている。ドラムの円筒外周の外側の空間はドラムの下方に配置されたフィルタに通じるダクトとして構成されるとよい。これにより、空気流の制限が軽減され、ドラムの直径とほぼ同じ幅の大型フィルタを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上記に加え、本発明の更なる目的、特徴、及び利点は、同一の参照符号を類似の要素に使用した添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態の以下の例示的且つ非限定的な詳細な説明を通じて良好に理解されるであろう。
【0011】
【
図2】内部部品が露出した、ヒートポンプシステムを備えるタンブル乾燥機の概略側断面図を示す。
【
図5】本開示による別の狭窄器の一例の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は平行六面体形状のハウジング2を備えるタンブル乾燥機1を概略的に示している。ドア5は乾燥すべき湿った洗濯物の投入と乾燥した洗濯物の排出のためにヒンジ7によってハウジング2の前壁3に取付けられている。
【0013】
図2はヒートポンプシステム22及び空気流回路21を備えるタンブル乾燥機1の断面図を示している。空気流回路21は、乾燥ドラム11、ファン装置13、空気流ダクト18、蒸発器15、及び凝縮器19を備えている。
【0014】
乾燥すべき湿った洗濯物はタンブル乾燥機1の前側3に配置されたドア5を介して乾燥ドラム11の中に供給される。湿った洗濯物から水分を取除くために温かくて乾燥した空気を使用するとよい。空気流は、空気流回路21内で循環し、ファン装置13によって回路21を通って移動するとよい。図示した実施形態では、ファン装置13が乾燥ドラム11の下方であるが蒸発器15の前方に位置している。或いは、ファン装置13が凝縮器19と乾燥ドラム11との間に配置されているとよい。図示した実施形態における空間の考慮により、ファン装置13の配置は乾燥ドラム11の下方に選択されている。
【0015】
湿った洗濯物が回転する乾燥ドラム11内で乾燥すると、湿った洗濯物から乾燥ドラム11内を循環する空気流へ水分が移動する。温かく加湿された空気は乾燥ドラム11を出て空気流ダクト18を通って蒸発器15に循環される。表示した空気流ダクト18は空気流の方向に関して蒸発器15の前方で直接その上流に配置されている。言うまでもなく空気流回路21は幾つかのダクト及び通路を含んで閉回路を形成している。
【0016】
空気流はそれが蒸発器15に入る前に空気流から粒子又は糸くずを分離するためのフィルタ12を通過するとよい。図示した実施形態では、フィルタ12が乾燥ドラム13の下方であるがファン装置15の上方に配置されているが、他の位置も可能である。
【0017】
図示した例では、主に業務用又は共用洗濯設備での使用を意図した高容量タンブル乾燥機が示されている。斯かるタンブル乾燥機は、ドラムを通る処理空気流を提供するために、その円形後方壁に空気入口開口と、そのラジアル円筒壁、特にその前部に空気出口開口と、を備えたドラム11を備えるとよい。これは、前壁ドア5に関連して配置されたフィルタ付き出口ではなく、ドラムの下方に配置された糸くず除去フィルタと結合されるとよい。ドラム11の円筒外周の外側の空間はドラム11の下方のフィルタ12に通じるダクトとして構成されるとよい。但し大部分については、本明細書に記載した改善を、週に数回の使用を意図した一般的な家庭用タンブル乾燥機に関連して使用してもよい。
【0018】
温かく加湿された空気は空気流ダクト18を通ってダクト(図示せず)で構成される蒸発器15に送られ、温かく加湿された空気と冷媒がダクト内で交互に導かれ、空気流が冷却されて冷媒との熱交換により除湿される。
【0019】
その後、冷却され除湿された空気は蒸発器15から凝縮器19に循環され、空気流が冷媒との熱交換によって再び加熱される。
【0020】
温かい空気流は次いで乾燥ドラム11の中に再び吹込まれる。矢印21は空気流回路における空気流の循環を示している。
【0021】
冷媒は冷媒回路を通って導かれ、圧縮機17が冷媒を圧縮し、冷媒は凝縮器19で凝縮され、膨張弁(図示せず)を通過した後に蒸発器15で気化される。
【0022】
蒸発器、圧縮機17、及び凝縮器19並びに膨張弁を備えるヒートポンプシステム22は、タンブル乾燥機1の後側9に沿って乾燥ドラム11及びファン装置13の後ろに配置されているとよく、空気が出入りする開口を備えた断熱シェル23で封入されているとよい。
【0023】
図2及び
図3で分かるように、狭窄器/拡散器16は空気流ダクト18内の蒸発器15の上流に配置されている。狭窄器16には、空気流ダクト18の断面にわたって、従って蒸発器15の表面にわたって分布する複数の開口23(
図4及び
図5参照)が設けられている。
【0024】
狭窄器16は空気流が狭窄器16の第一側Aから狭窄器16の第二側Bに流れるときに空気流ダクト18内を循環する空気流に圧力降下を生じさせる。空気流ダクト18内に開口を備えた狭窄器16を蒸発器15の上流に配置することにより、蒸発器15の表面のより大部分に空気流を割当てることが可能になる。
【0025】
これは蒸発器15の表面にわたって流入する空気のより均一な分布をもたらし、即ち遮られていない空気流ダクト18を使用する場合と比べて蒸発器の表面にわたる空気流の差異が低減されるようになる。これは次いで、蒸発器15で得られる空気流のより効果的な除湿と、乾燥ドラム11内のより短い乾燥時間と、ヒートポンプシステム22のより高い性能及びエネルギ節約と、に繋がる。狭窄器16の領域は空気流ダクト18の全断面を占めているとよい。
【0026】
斯かる狭窄器の無い開いたダクトでは、空気流が殆どの場合にダクトの中央の領域に集中し、その結果、乱流によって蒸発器の対応する中央領域に集中する。これは蒸発器の非効率的な使用に繋がり、従ってより少ない水が空気流から抽出されるであろう。加えて、蒸発器に幾つかの並列回路管がある場合、一部の管内の冷媒流体は、液体の冷媒が蒸発器を出るような不十分な度合いに加熱される可能性があり、望ましくない。斯かる問題は本明細書に記載された狭窄器でかなりの程度まで回避できる。
【0027】
蒸発器15の表面にわたる空気流の分布は狭窄器16と蒸発器15の表面との間の距離dに依存する。所望の分布を得るために、距離dは0~300mmであるとよい。好ましくは、10mm~40mmの距離dが使用される。
【0028】
さらに、狭窄器16の表面の開口23の割合は蒸発器15の表面にわたる空気流の分布に影響を与える。蒸発器の表面にわたって所望の空気流分布を得るために、開口の割合は、空気流ダクト18のサイズ、従ってタンブル乾燥機1のサイズに依存する。但し、狭窄器16の表面の少なくとも1/3は所望の空気流分布を提供するために開口23で構成されるとよい。一例として、小型のタンブル乾燥機については狭窄器16の表面の35%が開口23であるとよく、大型のタンブル乾燥機については狭窄器16の表面の50%が開口23であるとよい。個々の開口は一般に約3mmである。
【0029】
複数の開口23を備えた狭窄器16は異なる方法で設計されるとよい。狭窄器16の形状は空気流ダクト18に嵌るように長方形板の形状を有するとよい。空気流ダクト18の対応する設計に合うように他の代替実施形態が可能である。
【0030】
図4は狭窄器16の一実施形態を示しており、狭窄器16は、一片の板金、例えば穿孔を備えたステンレス鋼等である。穿孔は板金の表面にわたって均一に分布する。穿孔は板金を打抜くことによって作製できる。一般に、板金片の厚さは、0.5~3mmの範囲、好ましくは約1mmであるとよい。穿孔は、例えば直径約3mmの円形又はほぼ円形の開口であるとよい。開口は例えば三角形構成で隣接する開口の間に5mm立方センチメートル(cc)の距離を備えた三角形間隔を有しているとよい。このようにして板金片全体に開口が設けられているとよい。
【0031】
図5は狭窄器16の別の実施形態を示しており、狭窄器16が金属メッシュであり、金属ワイヤがグリッドの表面にわたって等間隔の開口を備えたグリッドを形成するように配置されている。
【0032】
本発明は主に幾つかの実施形態を参照して上述されてきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上に開示されたもの以外の他の実施形態が添付の特許請求の範囲によって規定されるように本発明の範囲内で同様に可能である。