(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】自転車用車輪用のタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20240426BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240426BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240426BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20240426BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240426BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B60C9/18 A
B60C1/00 A
B60C9/00 A
B60C9/00 B
B60C9/00 C
B60C9/00 D
B60C9/00 E
B60C9/00 G
B60C9/18 B
B60C9/18 K
B60C9/20 D
B60C13/00 G
B60C15/06 N
(21)【出願番号】P 2020560243
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2019054185
(87)【国際公開番号】W WO2019224714
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】102018000005602
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エルビッゾーニ,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ダル ベッロ リンド,ヴィニシウス アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】ミサニ,ピエランジェロ
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-247203(JP,A)
【文献】特開昭63-232003(JP,A)
【文献】特開平11-139109(JP,A)
【文献】特開昭59-199305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- カーカス構造体(2);及び
- 前記カーカス構造体(2)に対して半径方向外側の位置に配置されるトレッドバンド(7);
を含む、自転車用車輪用のタイヤ(100)であって、
前記トレッドバンド(7)は、マイクロメートル寸法のフィブリル化ポリマー繊維を含む加硫性エラストマー化合物を加硫することによって作製され、少なくとも1つの保護層(6、11)が、前記カーカス構造体(2)と前記トレッドバンド(7)との間に挿入され、前記保護層(6、11)は、(i)前記タイヤの赤道面に対して30°を上回る角度に向けられた、20TPI以上、300TPI以下のコード密度を有するテキスタイル材料の複数の補強コード、(ii)前記タイヤの前記赤道面に対して20°を上回る角度に向けられたテキスタイル材料の横糸及び縦糸を備える方形織柄ファブリック、又は(iii)ランダムな向きのテキスタイル材料の繊維を備える不織ファブリックを含み、
少なくとも1つのさらなる保護層(12)が、前記トレッドバンドに対して半径方向内側の位置に配置されることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記保護層(6、11、12)は、前記タイヤの前記赤道面に対して35°を上回る角度に向けられたテキスタイル材料の複数の補強コードを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項3】
前記保護層(6、11、12)は、前記タイヤの前記赤道面に対して25°を上回る角度に向けられたテキスタイル材料の横糸及び縦糸を備える方形織柄ファブリックを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項4】
前記保護層(6、11、12)は、複数の層に配置されるか又は交差されたランダムな
向きのテキスタイル材料の繊維を備える不織ファブリックを含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項5】
前記保護層(6、11、12)は、前記タイヤの前記赤道面に対して対称的に延在することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項6】
前記保護層(6、11、12)は、アラミド繊維、リヨセル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、綿繊維、ポリエステル繊維(PET、PEN繊維など)及びビニル繊維(PVA)のうちの1種以上からなる群から選択されるテキスタイル材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項7】
前記保護層(6、11、12)は、高弾性係数繊維を含むテキスタイル材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項8】
前記保護層(6、11、12)は、前記テキスタイル材料の複数の補強コードを含む場合、30TPI以上のコード密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項9】
前記保護層(6、11、12)は、前記テキスタイル材料の複数の補強コードを含む場合、250TPI以下のコード密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項10】
前記フィブリル化ポリマー繊維は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ミクロフィブリル化セルロース繊維、及び植物繊維からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項11】
前記フィブリル化ポリマー繊維は、100μm未満の直径、及び0.05~8mmの長さを有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項12】
前記フィブリル化ポリマー繊維は、30:1を上回る長さと直径とのアスペクト比を示すことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項13】
前記フィブリル化ポリマー繊維は、0.5~60m2/gに及ぶ表面積を示すことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項14】
前記加硫性エラストマー化合物は:
(a) 100phrの前記少なくとも1種のジエン弾性重合体;
(b) 0.1phr~20phrの前記フィブリル化ポリマー繊維、及び
(c) 1~120phrの補強充填材
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項15】
前記フィブリル化ポリマー繊維は、前記エラストマー化合物中に、0.5phr~10phrの量で存在することを特徴とする、請求項14に記載のタイヤ(100)。
【請求項16】
前期少なくとも1つのさらなる保護層(12)が、前記カーカス構造体内に、又は前記カーカス構造体に関して半径方向内側の位置に挿入されることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ(100)。
【請求項17】
前記不織ファブリックは、機械的若しくは熱プロセスによって、又は接着剤を使用して作製されている、請求項4に記載のタイヤ(100)。
【請求項18】
前記高弾性係数繊維は、アラミド繊維及び/又はリヨセル繊維を含む、請求項7に記載のタイヤ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
発明の分野
本発明は、耐パンク性を改善した、自転車の車輪用のタイヤに関する。
【0002】
特に、本発明は、トレッドバンドと、異物の侵入に対して高い抵抗力をもたらすことができる保護層とを含む耐パンクシステムを含む、自転車の車輪用のタイヤに関する。
【0003】
本発明のタイヤは、競技用自転車、オフロード自転車の車輪で、及び街乗り用自転車の車輪において、使用され得る。
【背景技術】
【0004】
従来技術
自転車の車輪用のタイヤは、一般に、ビードにある一対のビードコアの周りで折り返されるカーカス構造体と、カーカス構造体に対して半径方向外側の位置に配置されたトレッドバンドとを含む。
【0005】
カーカス構造体は、タイヤ圧に耐え、且つ自転車とサイクリストの重量を支えることを目的としている。カーカス構造体は1つ以上のカーカスプライを含み、各カーカスプライは、好適な向きにされた複数の補強コードを含んでいる。複数のカーカスプライの場合、カーカスプライは、互いに対して傾斜して、交差した構造を形成している。
【0006】
ビードコアは、タイヤが確実にホイールリムに固定されるようにする役目をこなす。
【0007】
カーカス構造体の半径方向内側の位置には、加圧空気が導入される気室が設けられ得る。マウンテンバイク(MTB)の分野だけでなく、最近では、競技用バイクにおいても、「チューブレス」と呼ばれる、すなわち内筒体のないタイプのタイヤが、益々広がってきている。これらのタイヤでは、加圧空気は、カーカス構造体に直接作用する。後者及びホイールリムは、それらの相互の固定によって気密性を保証するような形状にされている。
【0008】
トレッドバンドは、アスファルト又は地面(又は、概して、走行すなわち転がり面)に対するタイヤのグリップを保証するように設計されている。
【0009】
トレッドバンド及び他のタイヤ部品の製造を対象としたエラストマー化合物は、一般的に、弾性重合体と、その機械的特徴、特に剛性を向上させるのに有用な、カーボンブラック及び/又はシリカに基づく1種以上の補強充填材とが存在することによって、特徴づけられる。前記エラストマー化合物は、化合物が対象とする特定用途に基づいて選択される、他の一般的に使用されている添加剤を含み得る。例えば、前記化合物は:抗酸化物質、老化防止剤、可塑剤、接着剤、抗オゾン剤(anti-ozone agents)、改質樹脂(modifying resins)、繊維(例えばKevlar(登録商標)パルプ)又はそれらの混合物と混合され得る。
【0010】
欧州特許第0329589号には、例えば、構成要素のうちの少なくとも1つが、アラミドのKevlar(登録商標)パルプ繊維を含む補強充填材を含むエラストマー化合物製である、車両の車輪用のタイヤが説明されている。
【0011】
自転車の車輪用のタイヤに所望の特徴の中で、耐パンク性は、使用者から益々必要とされている。
【0012】
特に自転車の車輪用のタイヤにおける、耐パンク性の問題は、当該技術分野において対応されてきており、様々な解決法が提案されてきている。
【0013】
米国特許第8474499号には、例えば、耐穴あき性の金属積層を、トレッドバンドとカーカスプライとの間に入れることが提案されている。
【0014】
米国特許第9016341号には、この場合もトレッドバンドとカーカスプライとの間に挿入される、ブレーカー、すなわち耐穴あき性のテキスタイル補強材について説明されている。この解決法は、当該技術分野で公知の様々な他の文献において提案されており、及びタイヤ製造者で最も一般的に使用されているものである。
【0015】
米国特許第8833416号には、穴あき後の空気漏れに抵抗できる、修正された気室の使用について説明されている。
【0016】
欧州特許第1384601号には、トレッドバンドとカーカスプライとの間への、高弾性の化合物で構成された追加的な保護層の挿入が説明されており、追加的な保護層は、耐パンク性を高めると同時に、導入された構成要素の高弾性によって、転がり抵抗を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
発明の概要
本出願人は、競技用自転車専用のより軽量なものから、オフロードバイク用のより重量のあるものまで、街乗り用自転車用車輪を含め、全てのタイプの自転車用車輪タイヤに高いパンク防止性を与えることができる材料を含むエラストマー化合物による、トレッドバンドの製造の問題を提起した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本出願人は、トレッドバンドの生産を対象とした化合物中でのフィブリル化ポリマー繊維の使用が、標準的な生産のトレッドバンドに使用されている材料のものと比較して、前記化合物に対して耐パンク性の上昇を与えたことを見出した。
【0019】
しかしながら、本出願人はまた、フィブリル化ポリマー繊維を含む前記化合物で作製されたトレッドバンドによって与えられた保護が、特に棘や破片や尖った石などの非常に細かくて鋭い要素に起因するさらなるパンクを回避するためには完全に十分であったわけではないことも見出した。
【0020】
しかしながら、本出願人は、驚くことに、フィブリル化ポリマー繊維を含む化合物で作製されたトレッドバンドを、カーカス構造体とトレッドバンドとの間に挿入された、タイヤの赤道面に対して30°を上回る角度に向けられたテキスタイル繊維製の補強コードで補強された半径方向内側保護層と組み合わせて使用することによって、全てのタイプの使用に対して、改良されて十分な耐パンク性を得ることができることを見出した。
【0021】
引き続いて、以下のさらなる実験では、本出願人はまた、驚くことに、この組み合わせにおいて、タイヤの赤道面に対して20°を上回る角度に向けられた横糸若しくは縦糸のテキスタイル繊維を備える方形織柄ファブリック(square fabric)製の保護層を使用すること、又はランダムな向きのテキスタイル繊維を備える不織ファブリック製の保護層を使用することによって、同様の結果も得られることを見出した。
【0022】
さらに、本出願人はまた、カーカス構造体に関して半径方向内側の位置に、又は同じカーカス構造体内の、カーカスプライのフラップ間に、上記と同じテキスタイル材料で作製されたさらなる保護層を追加することによって、さらに良好な結果が得られ得ることを確認した。
【0023】
この結果は、決定的な説明を見出していないが、本出願人は、パンクの原因となり得る物体(デブリ、棘、破片など)と、フィブリル化ポリマー繊維を含むトレッド化合物との間の相互作用が、この物体の侵入端部のある種の屈曲の原因となって、その鋭さを低減させて丸みをつけ、それにより、その侵入力を、本発明によって作製された保護層をもはや通過できない点まで低下させているのではないかと考えている。
【0024】
それゆえ、第1の態様では、本発明は、カーカス構造体と、カーカス構造体に対して半径方向外側の位置に配置されたトレッドバンドとを含む自転車の車輪用のタイヤであって、トレッドバンドは、マイクロメートル寸法のフィブリル化ポリマー繊維を含む加硫性エラストマー化合物を加硫することによって作製され、少なくとも1つの保護層は、前記カーカス構造体と前記トレッドバンドとの間に挿入され、前記保護層は、(i)タイヤの赤道面に対して30°を上回る角度に向けられたテキスタイル材料の複数の補強コード、(ii)タイヤの赤道面に対して20°を上回る角度に向けられた横糸若しくは縦糸のテキスタイル繊維を備える方形織柄ファブリック、又は(iii)ランダムな向きのテキスタイル繊維を備える不織ファブリックを含む、タイヤに関する。
【0025】
任意選択的に、本発明の自転車用車輪用のタイヤは、前記トレッドバンドに対して半径方向内側の位置に配置された、好ましくは前記カーカス構造体内に、又は前記カーカス構造体に関して半径方向内側の位置に挿入された、少なくとも1つのさらなる保護層を含む。
【0026】
発明の説明
本明細書及び以下の特許請求の範囲では、以下の定義が適用される。
【0027】
「競技用自転車」は、ロード競技又はトラック競技用の高性能自転車を指すことを意味する。これらの自転車は、the Union Cycliste Internationale (UCI) - Title I - General Organization of Cycling Sports - Chapter 3: Equipment Section 2によって確立された規定に一致するものを含む。この範囲内に、リカンベント自転車、タイムトライアル自転車及び/又はトライアスロン自転車も含まれる。いわゆるフィットネスバイク(娯楽目的の競技用バイク)も含まれる。
【0028】
「街乗り用自転車」は、主に、道路、又は主としてアスファルトの自転車用道路での、都会の旅のための都市用途を対象とした自転車(アーバンバイク、シティバイク、トレッキングバイク及びツーリングバイク、並びに電動又はペダルアシストバイク)を指すことを意味する。これらの自転車は、一般的に、良好な視界のための良好な前方及び後方照明、チェーンから衣服を守るためのクランクケース(又はチェーンカバー)、軽い荷物用の荷台又はフロントバスケットなど、安全性及び使い心地を向上させるように設計された付属品を備え、且つ一般的に、競技用バイクのためのように滑らかすぎることも、オフロード自転車用のブロックを備えていることもない、中間カバーのある26”又は28”の車輪を備えて作製される。
【0029】
「オフロード自転車」は、一般に起伏のあるすなわち不規則な地形、すなわち、互いに非常に異なり且つアスファルトとは異なる地面、例えばぬかるんだ、砂だらけの、岩石の多い、固い(compact)、軟らかい地面などを網羅することを対象とした自転車を指すことを意味する。これらの自転車は、それぞれの分野に対してthe Union Cycliste Internationale (UCI)によって確立された規定に一致するものを含み、及び特にマウンテンバイク(MTB)又はオールテラインバイク(ATB)(通常、クロスカントリー(Cross Country)(XC)、マラソン(Marathon)、トレイル(Trail)、オールマウンテン(All Mountain)、エンデューロ(Enduro)、フリーライド(Freeride)、及びダウンヒル(Downhill)のカテゴリーに分割される)、並びにファットバイク、シクロクロス、及び電動又はペダルアシストバイクを含む。
【0030】
タイヤの「赤道面」は、タイヤの回転軸に対して垂直であり且つタイヤを2つの対称的な等しい部分に分割する平面を意味する。
【0031】
用語「半径方向」及び「軸方向」並びに表現「半径方向内側/外側」及び「軸方向内側/外側」は、それぞれ、タイヤの回転軸に対して垂直な方向及び平行な方向を指すために使用される。
【0032】
用語「周方向」及び「周方向に」は、タイヤの環状展開部の方向、すなわちタイヤの転がり方向を指すために使用され、これは、タイヤの赤道面に一致する又はそれに対して平行な平面上にある方向に対応する。
【0033】
用語「エラストマー化合物」は、少なくとも1種の弾性重合体と少なくとも1種の補強充填材とを含む組成物を指すために使用される。好ましくは、そのような組成物は、さらに、例えば、架橋剤及び/又は可塑剤などの添加剤を含む。架橋剤が存在することによって、そのような化合物は加熱によって架橋(加硫)できる。
【0034】
用語「弾性重合体」又は「エラストマー」は、本明細書では、加硫可能な天然又は合成ポリマーを指すことを意味し、これは、室温において、加硫後、力によって変形しやすく、且つ変形力が排除された後は、実質的に元の形状及び寸法に急速に力強く回復できる(ゴムに関するASTM D1566-11 Standardの用語の定義による)。
【0035】
用語「コード」又は表現「補強コード」は、エラストマー化合物マトリックスでコーティングされているか、又はそれに組み込むことができる、1つ以上の糸状要素からなる要素(以下、「糸」とも称す)を指すために使用される。
【0036】
表現「補強リボン様要素」は、長尺状の物品を指すことを意味し、これは、平らな断面輪郭を有し、及び物品の長手方向展開部に対して平行に延在され且つエラストマー化合物マトリックスの少なくとも1つの層に組み込まれるか又はそれで少なくとも部分的にコーティングされる、1つ以上の補強コードを含む。
【0037】
コード又は糸の「直径」は、BISFA E10法(The International Bureau For The Standardization Of Man-Made Fibers, Internationally Agreed Methods For Testing Steel Tire Cords, 1995 edition)の規定通りに測定されたコード又は糸の厚さを意味する。
【0038】
層又はプライ又はファブリックの「密度」又は「コードの密度」は、そのような層/プライ/ファブリックに存在する、長さの単位当たりの補強コードの数を意味する。密度は、TPI(インチ当たりの糸数(threads per inch))で測定可能である。
【0039】
コード又は糸の「線密度」又は「糸カウント」は、長さの単位当たりの補強コードの重量を意味する。線密度は、dtex(長さ10km当たりのグラム)で測定され得る。
【0040】
表現「高弾性率繊維」は、30GPa以上の弾性係数又は剛性を有する材料の繊維、例えばアラミド繊維及びリヨセル繊維を意味する。
【0041】
アラミド繊維(AR)では、弾性係数は、BISFA - Testing methods for para-aramid fiber yarns, 2002 edition, Determination of linear density - Chapter 6, Determination of the tensile properties - Chapter 7 - Test procedures - Paragraph 7.5 -に従って、最初にプレテンションされている手順で、評価される。
【0042】
リヨセル繊維では、弾性係数は:BISFA - Testing methods for viscose, cupro, acetate, triacetate and lyocell filament yarns - 2007 edition, Determination of tensile properties - Chapter 7 - Tensile test conditions: oven dry test - Table 7.1 - Test procedure - Paragraph 7.5 - With oven dry test on relaxed samples - Subparagraph 7.5.2.4に従って評価される。
【0043】
用語タイヤの「嵌合径」は、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organization)において規定されているように、タイヤをホイールリムに固定するためのビードコアの内径で測定されたタイヤの直径を意味する。
【0044】
「トレッドバンドの軸方向展開部」又はその部分の軸方向展開部は、タイヤの回転軸を含む平面によって切り取られた、タイヤの横断面における、トレッドバンドの又はその部分の半径方向最も外側の輪郭の展開部を意味する。
【0045】
「タイヤの軸方向展開部」は、タイヤの回転軸を含む平面によって切り取られた、タイヤの横断面における、タイヤの半径方向最も外側の輪郭の展開部を意味し、そのような軸方向展開部は、タイヤビードの両端部間で測定される。
【0046】
タイヤの「幅」は、タイヤの最大軸方向延在部、ETRTO規格- Manual Standards 2018 - Cycle and Motorcyle Tyres - M5によるSg幅を意味し、そのような幅は、タイヤの軸方向最も外側の点間で測定される。
【0047】
タイヤの「トレッドキャンバー(Tread camber)」は、タイヤの横断面の輪郭の一部分のキャンバー半径を通って測定されたキャンバー(camber)を意味する。
【0048】
タイヤの横断面の輪郭の一部分の「キャンバー半径」は、その輪郭部分を最も近似する円周の半径を意味する。
【0049】
以下、本明細書及び以下の特許請求の範囲では、いくつかの角度のいくつかの値に言及するとき、絶対値、すなわち、基準面に対する正の値及び負の値の双方であることが理解される。
【0050】
本発明の態様によれば、トレッドバンドは、マイクロメートル寸法のフィブリル化ポリマー繊維を含む加硫性エラストマー化合物を加硫することによって作製される。
【0051】
好ましくは、マイクロメートル寸法のフィブリル化ポリマー繊維は、溶融温度が少なくとも170℃、好ましくは少なくとも190℃のポリマー繊維である。
【0052】
本発明で有用なフィブリル化ポリマー繊維は、例えば、アラミド繊維(例えばDuPont(登録商標)によるKevlar(登録商標)Pulp又はTeijin AramidによるTwaron(登録商標)パルプ)、ポリエステル繊維(例えばEngineered Fibers TechnologyによるVectran(登録商標)Pulp)、アクリル繊維(例えばEngineered Fibers TechnologyによるCFF(登録商標)Fibrillated Fiber、及びSterling FibersによるCFF(登録商標)Pulp)、ミクロフィブリル化セルロース繊維(例えばWEIDMANN FIBER TECHNOLOGYによるWMFC Q_ECO)、及び植物繊維(vegetable fibres)(例えばECCO GleittechnikによるSetralit(登録商標))に代表される。
【0053】
用語「フィブリル化ポリマー繊維」は、繊維自体が不規則な分岐形状を有し、主幹から、ほつれた繊維のより細いフィラメントが分岐し、これにより、繊維に、非フィブリル化繊維と比較して、より大きい表面積並びにより良好な固定及び結合特徴を与えることを意味する。「フィブリル化ポリマー繊維」は、非フィブリル化繊維から、機械、熱及び化学プロセスによって得られる。
【0054】
繊維に言及する用語「マイクロメートル寸法」は、繊維の直径又は最大断面寸法が100μm(マイクロメートル)未満、典型的には500nm(ナノメートル)超であることを意味する。
【0055】
アラミド繊維は、芳香族ポリアミドから得られた合成繊維、すなわち、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸の溶液中での縮合によって得られる特定の種類のナイロンである。アラミド繊維及びその準備プロセスは、文献から公知であり、例えば、特許文献、米国特許第3006899号、米国特許第3063966号、米国特許第3094511号、米国特許第3287323号、米国特許第3322728号、米国特許第3349062号、米国特許第3354127号、米国特許第3380969号、米国特許第3671542号、及び米国特許第3951914号において説明されている。
【0056】
Kevlar(登録商標)は、1,4-フェニレンジアミン(パラ-フェニレンジアミン)モノマーとテレフタル酸クロリドから、溶液中での縮合によって得られた、特定のアラミド繊維である。
【0057】
Kevlar(登録商標)パルプは、DuPont(登録商標)の専有技術に従ってKevlar(登録商標)繊維のフィブリル化によって得られた材料である。Kevlar(登録商標)パルプは、典型的には、全長0.5~1mm、表面積7~11m2/g及び主繊維直径10~18マイクロメートル(μm)の繊維を有する。
【0058】
ポリエステル繊維は、ポリエステルから、又は少なくとも1つのカルボキシル基(-COOH)と少なくとも1つのヒドロキシル基(-OH)を含むモノマーの縮合によって得られたポリマーから得られた合成繊維である。
【0059】
Vectran(登録商標)は、Kuraray及びCelaneseによって生産された、4-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-カルボキシナフタレン酸の縮合によって得られた、溶融液晶特徴を備える、完全に芳香族ベースのポリエステルである。
【0060】
Vectran(登録商標)Pulpは、例えばEngineered Fibers TechnologyからのVectran(登録商標)繊維のフィブリル化によって得られた材料である。Vectran(登録商標)パルプは、典型的には、全長1~6mm及びフィブリル直径数マイクロメートルの繊維を有する。
【0061】
アクリル繊維は、ポリアクリレートから、又はアクリルモノマー、特にアクリロニトリルの重合、典型的にはラジカル重合によって得られたポリマーから得られた合成繊維である。
【0062】
「CFF(登録商標)パルプ」は、Engineered Fibers Technologyによる特定のポリアクリレートグレードの繊維のフィブリル化によって得られ、直径約20μm及び長さ7mmまで、フィブリルの直径約1μm、及び表面積50m2/gまでの主繊維を有する。
【0063】
ミクロフィブリル化セルロース繊維は、例えばWEIDMANN FIBER TECHNOLOGYからの、セルロースフィブリル化によって得られた天然繊維であり、典型的には長さは0.05~1mm、及びフィブリル直径は典型的には1μm未満である。
【0064】
ECCO GleittechnikによるSetralit(登録商標)フィブリル化天然繊維は、植物繊維(plant fibres)の機械的処理によって得られ、最大長は7~8mm及び表面積は約1m2/gである。
【0065】
好ましくは本発明で使用されるフィブリル化ポリマー繊維は、長さ約0.05~約8mm、好ましくは約0.1~約2mmに及ぶ主幹と、5~30μmの直径と、30超のアスペクト比とからなり、そこから、主幹の直径よりも小さい直径の複数のフィブリルが分岐する。フィブリル化ポリマー繊維の表面積は約0.5~約60m2/gであり、等価であるがフィブリル化されていないポリマー繊維の表面積の約10~約200倍大きい。
【0066】
本発明において有用な加硫性エラストマー化合物は、100phrの少なくとも1種のジエン弾性重合体を含む。
【0067】
好ましくは、本発明において使用され得るジエン弾性重合体は、硫黄-架橋可能なエラストマー化合物(これは、タイヤ及びタイヤ部品の生産に特に好適である)において一般的に使用されているものから、すなわち、一般的に20℃未満、好ましくは0℃~-110℃に及ぶガラス転移温度(Tg)によって特徴づけられる、不飽和鎖を備える弾性重合体又はコポリマーから、選択され得る。これらのポリマー又はコポリマーは、天然起源のものとしても、又は任意選択的に60重量%以下の量のモノビニルアレーン(monovinylarenes)及び/又は極性コモノマーから選択された少なくとも1種のコモノマーと混合される、1種以上の共役ジオレフィンの溶液重合、エマルション重合若しくは気相重合によって得られてもよい。
【0068】
共役ジオレフィンは、一般的に4~12、好ましくは4~8個の炭素原子を含み、且つ例えば:1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン及びその混合物からなる群から選択され得る。1,3-ブタジエン及びイソプレンが特に好ましい。
【0069】
任意選択的にコモノマーとして使用され得るモノビニルアレーンは、一般的に、8~20、好ましくは8~12個の炭素原子を含み、且つ例えば:スチレン;1-ビニルナフタレン;2-ビニルナフタレン;様々なアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、又はスチレンのアリールアルキル誘導体、例えば、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-p-トリル-スチレン、4-(4-フェニルブチル)スチレンなど、及びその混合物から選択され得る。スチレンが特に好ましい。
【0070】
任意選択的に使用され得る極性コモノマーは、例えば:ビニルピリジン、ビニルキノリン(vinylquinoline)、アクリル酸及びアルキルアクリル酸エステル、ニトリル、又はその混合物、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリロニトリルなど、並びにその混合物から選択され得る。
【0071】
好ましくは、本発明において使用され得るジエン弾性重合体は、例えば:シス-1,4-ポリイソプレン(天然又は合成、好ましくは天然ゴム)、3,4-ポリイソプレン、ポリブタジエン(特に1,4-シスの含有量が高いポリブタジエン)、任意選択的にハロゲン化イソプレン/イソブテンコポリマー、1,3-ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/1,3-ブタジエンコポリマー、スチレン/イソプレン/1,3-ブタジエンコポリマー、スチレン/1,3-ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー、及びその混合物から選択され得る。
【0072】
好ましい実施形態によれば、前記加硫性エラストマー化合物は、前記少なくとも1種のジエン弾性重合体の総重量に対して、少なくとも10重量%、好ましくは20重量%~100重量%の天然ゴムを含む。
【0073】
上述の加硫性エラストマー化合物は、可能性として、オレフィン系コモノマー又はその誘導体(a’)を備える、1種以上のモノオレフィンの少なくとも1種の弾性重合体を含み得る。モノオレフィンは:エチレン、及び一般的に3~12個の炭素原子を含むα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及びその混合物などから選択され得る。以下が好ましい:エチレン、及び任意選択的にジエンを備えるα-オレフィンから選択されるコポリマー;任意選択的に少なくとも部分的にハロゲン化されている、少量のジエンを備えるイソブテンホモポリマー又はそのコポリマー。存在する場合があるジエンは、一般的に、4~20個の炭素原子を含み、且つ好ましくは:1,3-ブタジエン、イソプレン、1,4-ヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ビニルノルボルネン及びその混合物から選択される。それらの中から、以下が特に好ましい:エチレン/プロピレン(EPR)コポリマー又はエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)コポリマー;ポリイソブテン(polyisobutene);ブチルゴム;ハロブチルゴム、特にクロロブチル又はブロモブチルゴム;又はその混合物。
【0074】
好適な停止剤(terminating agents)又は結合剤との反応によって官能化された、ジエン弾性重合体又は弾性重合体も、使用され得る。特に、有機金属開始剤(特に、有機リチウム開始剤)の存在下でアニオン重合によって得られたジエン弾性重合体が、開始剤に由来する有機金属残基と、好適な停止剤又は結合剤、例えば、イミン、カルボジイミド、ハロゲン化アルキルスズ、置換ベンゾフェノン、アルコキシシラン又はアリーロキシシラン(aryloxysilanes)などとの反応によって、官能化され得る。
【0075】
本発明の態様によれば、マイクロメートル寸法のフィブリル化ポリマー繊維(例えばKevlar(登録商標)Pulp)は、他の構成成分と一緒にジエン弾性重合体に組み込まれて、加硫性エラストマー化合物が生成され、これを用いて、自転車用車輪用のタイヤのトレッドバンドが作製される。
【0076】
好ましくは、前記フィブリル化ポリマー繊維は、0.1phr~20phr、好ましくは0.5phr~10phr、好ましくは1phr~5phrの量でエラストマー化合物中に存在し得る。
【0077】
好ましくは、加硫性エラストマー化合物は、補強充填材を含む。
【0078】
好ましくは、カーボンブラック、沈降非晶質シリカ、天然起源の非晶質シリカ、好ましくは非修飾シリケート繊維及びその混合物から選択された、補強充填材が存在する。
【0079】
好ましくは、補強充填材は、加硫性エラストマー化合物中に、一般的に、1phr~120phr、好ましくは20phr~90phrに及ぶ量で存在する。
【0080】
好ましくは、加硫性エラストマー化合物に存在する補強充填材の総量は、少なくとも20phr、より好ましくは少なくとも30phrである。
【0081】
好ましくは、加硫性エラストマー化合物に存在する補強充填材の総量は、20phr~120phr、より好ましくは30phr~90phrに及ぶ。
【0082】
好ましくは、補強充填材は、(ISO 18852:2005によるSTSA(statistical thickness surface area)によって決定されるときに)表面積が20m2/g以上のカーボンブラックであるか又はそれを含む。
【0083】
好ましくは、前記カーボンブラック補強充填材は、加硫性エラストマー化合物に、1phr~120phr、好ましくは20phr~90phrに及ぶ量で存在する。
【0084】
好都合にも、補強充填材は、BET表面積(ISO 5794/1規格に従って測定された)が50m2/g~500m2/g、好ましくは70m2/g~200m2/gの、焼成シリカ若しくは好ましくは沈降シリカから選択されたシリカであるか、又はそれを含む。
【0085】
加硫性エラストマー化合物は、少なくとも1種の加硫剤を含む。
【0086】
最も好都合に使用される加硫剤は、硫黄、又は、その代わりに、当業者に公知の促進剤(accelerators)、活性剤及び/又は遅延剤を備える硫黄含有分子(硫黄供与体)である。
【0087】
硫黄又はその誘導体は、好適には、例えば:(i)可溶性硫黄(結晶硫黄);(ii)不溶性硫黄(ポリマー性硫黄);(iii)油に分散した硫黄(例えば、Eastmanからの商品名Crystex OT33で公知の33%の硫黄);(iv)硫黄供与体、例えば、カプロラクタムジスルフィド(CLD)、ビス[(トリアルコキシシリル)プロピル]ポリスルフィド、ジチオホスフェート;及びその混合物から選択され得る。
【0088】
加硫剤は、加硫性エラストマー化合物に、0.1~15phr、好ましくは0.5~10phr、さらにより好ましくは1~7phrの量で存在する。
【0089】
加硫性エラストマー化合物は、任意選択的にさらに、補強充填材として存在する場合があるシリカ及び/又はシリケートと相互作用できる少なくとも1種のシラン結合剤を含み、且つそれを、加硫中にジエン弾性重合体に結合し得る。
【0090】
好ましくは、加硫性エラストマー化合物は、少なくとも1種の結合剤を含む。
【0091】
好ましくは、本発明において使用され得るシラン結合剤は、例えば、以下の一般式(IV):
(R)3Si-CnH2n-X (I)
(式中、同じでも又は異なってもよいR基は:R基のうちの少なくとも1つがアルコキシ基又はアリールオキシ基又はハロゲンであることを条件に、アルキル基、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基、又はハロゲン原子から選択され;nは、1と6を含む1~6の整数であり;Xは:3価の窒素(nitrous)、メルカプト、アミノ、エポキシド、ビニル、イミド、塩素、-(S)mCnH2n-Si-(R)3及び-S-COR(ここで、m及びnは、1と6を含む1~6の整数であり、及びR基は、上記で定義されるようなものである)から選択される基である)
によって特定され得る、少なくとも1つの加水分解性シラン基を有するものから選択される。
【0092】
シラン結合剤の中で、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(tetrasulphide)及びビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが特に好ましい。前記結合剤は、そのまま使用されても、又は加硫性エラストマー化合物へのそれらの組み込みを促すように、不活性充填材(カーボンブラックなど)との好適な混合物として使用されてもよい。
【0093】
好ましくは、前記シラン結合剤は、加硫性エラストマー化合物に、0.1phr~20phr、好ましくは0.5phr~10phrに及ぶ量で存在する。
【0094】
好ましくは、加硫剤は、当業者に公知の促進剤及び活性剤と組み合わせて使用される。
【0095】
一般的に使用されている促進剤は:ジチオカルバメート、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、スルフェンアミド、チウラム、アミン、キサンテート(xanthates)及びその混合物から選択され得る。
【0096】
好ましくは、加硫促進剤は、加硫性エラストマー化合物に、0.1~8phr、好ましくは0.3~6phrの量で存在する。
【0097】
特に効果的な活性剤は、亜鉛化合物、及び特にZnO、ZnCO3、8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和脂肪酸の亜鉛塩、例えば、好ましくはZnO及び脂肪酸からの加硫性エラストマー化合物でインサイチュで形成されるステアリン酸亜鉛など、並びにBi2O3、PbO、Pb3O4、PbO2、又はその混合物である。
【0098】
好ましくは、加硫活性剤は、加硫性エラストマー化合物に、0.2~15phr、好ましくは0.5~10phrの量で存在する。
【0099】
上述の加硫性エラストマー化合物は、化合物が対象とする特定用途に基づいて選択される、他の一般的に使用されている添加剤を含み得る。例えば、前記化合物は:抗酸化物質、老化防止剤、可塑剤、接着剤、抗オゾン剤、改質樹脂、又はその混合物と混合され得る。
【0100】
特に、加工性をさらに改善するために、前記加硫性エラストマー化合物は、一般的に鉱物油、植物油、合成油、低分子量のポリマー及びその混合物、例えば、芳香油、ナフテン油、フタレート、大豆油及びその混合物から選択される少なくとも1種の可塑剤と混合され得る。可塑剤の量は、一般的に0phr~70phr、好ましくは5phr~30phrに及ぶ。
【0101】
上述の加硫性エラストマー化合物は、当該技術分野で公知の技術に従って、ポリマー成分と補強充填材及び存在する場合がある他の添加剤を一緒に混合することによって、準備され得る。混合は、例えば、「開放形ロール機(open-mill)」タイプのオープン系ミキサー、又は、接線ロータ(tangential rotors)を備えるタイプ(Banbury(登録商標))若しくは相互貫入ロータ(interpenetrating rotors)を備えるタイプ(Intermix)の内部ミキサー、又はKo-Kneader(商標)タイプ(Buss(登録商標))若しくは二軸スクリュー若しくはマルチスクリュータイプの連続式ミキサーを使用して、実施され得る。
【0102】
本発明の態様によれば、少なくとも1つの保護層は、前記カーカス構造体と前記トレッドバンドとの間に挿入され、前記保護層は、(i)タイヤの赤道面に対して30°を上回る角度に向けられたテキスタイル材料の複数の補強コード、(ii)タイヤの赤道面に対して20°を上回る角度に向けられた横糸若しくは縦糸のテキスタイル繊維を備える方形織柄ファブリック、又は(iii)ランダムな向きのテキスタイル繊維を備える不織ファブリックを含む。
【0103】
好ましい実施形態では、保護層は、タイヤの赤道面に対して35°を上回る、より好ましくは45°を上回る、さらにより好ましくは60°を上回る角度に向けられたテキスタイル材料製の補強コードを含む。
【0104】
好ましい代替的な実施形態では、保護層は、タイヤの赤道面に対して25°を上回る、より好ましくは30°を上回る、さらにより好ましくは45°を上回る角度に向けられた横糸又は縦糸のテキスタイル繊維を備える方形織柄ファブリックを含む。
【0105】
好ましい代替的な実施形態では、保護層は、好ましくは機械的若しくは熱プロセスによって、又は接着剤を使用することによって作製された、複数の層に配置されたか又は交差したランダムな向きのテキスタイル繊維を備える不織ファブリックを含む。
【0106】
好ましくは、前記保護層は、トレッドバンドの軸方向展開部の30%以上、好ましくはトレッドバンドの軸方向展開部の50%以上、より好ましくはトレッドバンドの軸方向展開部の70%以上、さらにより好ましくはトレッドバンドの軸方向展開部の90%以上の延在部を有する。
【0107】
特に好都合な実施形態によれば、保護層は、トレッドバンドの軸方向展開部の100%以上の延在部を有する、すなわち、保護層の延在部は、トレッドバンドの軸方向展開部と等しいか、又はトレッドバンドの軸方向展開部を越えて延在して、ビードにおいてビードコアの周りで上方に折り返る。
【0108】
好都合なことに、保護層は、タイヤの軸方向展開部の65%まで、より好ましくはタイヤの軸方向展開部の75%まで、さらにより好ましくはタイヤの軸方向展開部の85%まで延在する。
【0109】
さらなる特に好ましい実施形態によれば、前記保護層の幅は、ビードからビードまで、タイヤの軸方向展開部の100%まで延在する。
【0110】
好ましくは、前記保護層は、タイヤの赤道面に対して対称的に延在する。
【0111】
好ましくは、保護層は、アラミド繊維、リヨセル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、綿繊維、ポリエステル繊維(PET、PEN繊維など)及びビニル繊維(PVA)のうちの1種以上からなる群から選択されるテキスタイル材料を含む。
【0112】
好都合なことに、保護層は、高弾性率の繊維、例えば、アラミド繊維及びリヨセル繊維などを含むテキスタイル材料を含む。
【0113】
好ましくは、前記保護層の密度は、約20TPI以上、より好ましくは約30TPI以上である。
【0114】
好ましくは、前記保護層の密度は、約300TPI以下、より好ましくは、約250TPI以下である。
【0115】
好ましくは、前記保護層の補強コードの直径は、約0.6mm以下、より好ましくは、約0.4mm以下である。
【0116】
好ましくは、前記保護層の補強コードの直径は、約0.10mm以上、より好ましくは、約0.12mm以上である。
【0117】
好ましくは、前記保護層の補強コードの線密度は、約40dtex以上、より好ましくは、約100dtex以上である。
【0118】
好ましくは、前記保護層の補強コードの線密度は、約1300dtex以下、より好ましくは、約940dtex以下である。
【0119】
任意選択的に、本発明の自転車用車輪用のタイヤは、前記トレッドバンドに対して半径方向内側の位置に配置された、好ましくは前記カーカス構造体内に、又は前記カーカス構造体に関して半径方向内側の位置に挿入された、少なくとも1つのさらなる保護層を含む。
【0120】
好ましくは、上述の特徴はまた、前記さらなる保護層にも適用される。
【0121】
好ましくは、本発明のタイヤのカーカス構造体は、軸方向に対向するその端部フラップにおいて、一対の環状固着構造に係合する少なくとも1つのカーカスプライであって、タイヤの赤道面に対して、約30°~約60°(境界値を含む)の第1の角度だけ傾斜した複数の補強コードを含む、少なくとも1つのカーカスプライを含む。
【0122】
好ましくは、前記少なくとも1つのカーカスプライの補強コードは、タイヤの重量を可能な限り制限するために、テキスタイル材料製である。
【0123】
タイヤの第1の実施形態では、カーカス構造体は単一のカーカスプライを含む。以下、そのようなタイヤは、「単一プライタイヤ」とも称する。
【0124】
タイヤの第2の実施形態では、カーカス構造体は、交差した、好ましくは2プライの、カーカス構造体を規定するように、前記赤道面に対して、前記第1の角度だけ傾斜された第1の複数の補強コードを含む第1のカーカスプライと、第1のカーカスプライに対して半径方向外側の位置に配置され且つ前記赤道面に対して、前記第1の複数のコードに対して反対側に前記第1の角度だけ傾斜された第2の複数の補強コードを含む第2のカーカスプライとを含む。以下、そのようなタイヤは、「2プライタイヤ」とも称する。
【0125】
代替的な実施形態では、カーカス構造体は、3つ以上のカーカスプライを含んでもよく、各カーカスプライは、第1及び第2のカーカスプライに関して上述したものと完全に同一の、隣接する半径方向内側のカーカスプライとの交差構造を規定するように配置されている。
【0126】
好ましくは、単一プライタイヤの場合、前記第1の角度は、好ましくは、約30°超、より好ましくは約40°超であり、さらにより好ましくは約45°に等しい。
【0127】
好ましくは、「2プライ」タイヤの場合、前記第1の角度は、約30°~約60°(境界値を含む)である。
【0128】
競技用又は街乗り用自転車の車輪用のタイヤの場合、好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)、又は各カーカスプライ(2つ以上のカーカスプライを備えるタイヤの場合)の密度は、約20TPI以上、より好ましくは約30TPI以上、さらにより好ましくは約60TPI以上、さらにより好ましくは約120TPI以上である。
【0129】
競技用又は街乗り用自転車の車輪用のタイヤの場合、好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)、又は各カーカスプライ(2つ以上のカーカスプライを備えるタイヤの場合)の密度は、約360TPI以下、より好ましくは約300TPI以下、さらにより好ましくは約240TPI以下、さらにより好ましくは約200TPI以下である。
【0130】
オフロード自転車用車輪用のタイヤの場合、好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)、又は各カーカスプライ(2つ以上のカーカスプライを備えるタイヤの場合)の密度は、約20TPI以上、より好ましくは約60TPI以上である。
【0131】
オフロード自転車用車輪用のタイヤの場合、好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)、又は各カーカスプライ(2つ以上のカーカスプライを備えるタイヤの場合)の密度は、約150TPI以下、より好ましくは約120TPI以下である。
【0132】
2プライ(又は3つ以上のカーカスプライ)タイヤの場合、第2のカーカスプライ(又は少なくとも別のカーカスプライ)の密度は、第1のカーカスプライと実質的に同一であることが好ましい。
【0133】
好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)又は各カーカスプライ(2プライ又は3つ以上のカーカスプライのタイヤの場合)の補強コードの直径は、約0.55mm以下、より好ましくは約0.35mm以下である。
【0134】
好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)又は各カーカスプライ(2プライ又は3つ以上のカーカスプライのタイヤの場合)の補強コードの直径は、約0.10mm以上、より好ましくは約0.12mm以上である。
【0135】
好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)又は各カーカスプライ(2プライ又は3つ以上のカーカスプライのタイヤの場合)の補強コードの線密度は、約110dtex以上、より好ましくは約200dtex以上である。
【0136】
好ましくは、単一のカーカスプライ(単一プライタイヤの場合)又は各カーカスプライ(2プライ又は3つ以上のカーカスプライのタイヤの場合)の補強コードの線密度は、約1300dtex以下、より好ましくは約940dtex以下である。
【0137】
好ましくは、競技用自転車用車輪用のタイヤの場合、タイヤの重量は、約350g未満、好ましくは約250g以下である。
【0138】
好ましくは、オフロード自転車の車輪用のタイヤの場合、タイヤの重量は、約300g以上、より好ましくは約350g以上である。
【0139】
好ましくは、街乗り用自転車用車輪用のタイヤの場合、タイヤの重量は、約250g超、好ましくは、約350g以上である。
【0140】
好ましくは、オフロード又はシティバイクの車輪用のタイヤの場合、タイヤの重量は、約2kg以下、より好ましくは約1.5kg以下、さらにより好ましくは約750g以下、さらにより好ましくは約650g以下である。
【0141】
好ましい実施形態では、オフロード自転車用車輪用のタイヤの場合、タイヤの重量は、境界値を含めて、約300g~約2kg、より好ましくは約350g~約1.5kg、より好ましくは約350g~約750g、より好ましくは約350g~約650gである。
【0142】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明のタイヤのさらなる特徴及び利点が、添付図面を参照して、そのいくつかの好ましい実施形態の以下の詳細な説明から、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【
図1】本発明の第1の実施形態による競技用自転車用車輪用のタイヤの概略的な半径方向断面図である。
【
図2】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図3】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図4】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図5】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図6】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図7】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図8】本発明によるタイヤの実施形態の考えられる概略的な構成図である。
【
図9】実施例2のサンプルの材料の変形が増加するにつれた、穿孔力の傾向を示す、実施例3で説明されるように得られたグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0144】
図1には、参照符号100で、本発明による自転車の車輪用のタイヤを示している。
図1のタイヤ100は、高いトラバースキャンバー(high transverse camber)によって特徴づけられる。
【0145】
タイヤは、オフロード又は街乗り用のいずれかの競技用自転車の車輪に装着されるように設計され得る。
【0146】
好ましくは、競技用自転車用のタイヤのクラウン部分2aにおいては、タイヤ100のキャンバー半径は、境界値を含めて、10mm~18mm、より好ましくは12mm~15mmであるが、側部部分2bにおいては、キャンバー半径は、15mm~30mm、より好ましくは20mm~25mmである。例えば、クラウン部分2aにおけるキャンバー半径は約13mmに等しくてもよく、側部部分2bにおけるキャンバー半径は約25mmに等しくてもよい。
【0147】
好ましくは、オフロード自転車タイヤのクラウン部分2aでは、タイヤ100のキャンバー半径は、境界値を含めて、15mm~50mm、より好ましくは25mm~35mmである一方、側部部分2bにおけるキャンバー半径は、15mm~60mm、より好ましくは30mm~40mmである。例えば、クラウン部分2aにおけるキャンバー半径は、約30mmに等しくてもよく、側部部分2bにおけるキャンバー半径は、約35mmに等しくてもよい。
【0148】
図1では、タイヤ100は、好ましくは赤道面X-Xに対して対称的に配置されたクラウン部分2aと、クラウン部分2aに対して軸方向に向かい合った側にそれぞれ配置された、対向する側部部分2bとを含むカーカス構造体2を含む。
【0149】
添付図面に示す実施形態では、カーカス構造体2は、単一のカーカスプライ3(単一プライタイヤ)を含むが、カーカス構造体2が、いくつかのカーカスプライ、好ましくは2つ(2プライタイヤ)を含む他の実施形態(例えば
図4に示すものなど)が提供される。
【0150】
図面に示すカーカスプライに関して下記で説明していることは、特に明記しない限り、単一プライタイヤの単一のカーカスプライ及び2プライタイヤの各カーカスプライの双方に当てはまる。
【0151】
カーカスプライ3は、カーカス構造体2の側部部分2bから対向する側部部分2bまで軸方向に延在する。
【0152】
カーカスプライ3は、軸方向に対向する、プライの端部フラップ3aのそれぞれにおいて、一般に「ビードコア」と呼ばれるそれぞれの環状固着構造4と係合する。
【0153】
カーカスプライ3の各端部フラップ3aは、それぞれのビードコア4の周りで折り返される。
【0154】
ビードコア4は、好ましくは、高弾性率のテキスタイル繊維、例えばアラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維の一般名)、又は例えば鋼などの金属線などで作製される。
【0155】
カーカスプライ3とそれぞれの折り返された端部フラップ3との間に画成される空間を占める、テーパ付きエラストマー充填材が、ビードコア4の外周縁に適用され得る。
【0156】
ビードコア4及び考えられるエラストマー充填材を含むタイヤの領域は、全体的にいわゆる「ビード」(
図1では参照符号5で示される)を形成し、ビードは、弾性的圧入(elastically forced fitting)によって、タイヤを対応する取付けリム(図示せず)に固定するためのものである。
【0157】
カーカス構造体2に対して半径方向外側の位置には、トレッドバンド7が提供され、それによって、タイヤ100は路面に接触する。
【0158】
好ましくは、タイヤのトレッドバンドの厚さは、タイヤのタイプに依存して、約0.8~約8mmとし得る。
【0159】
図2~4及び
図6に示すように、補強リボン様要素10が、各ビード5において、カーカスプライ3の折り返された端部フラップ3aに適用される。そのような補強リボン様要素10は、タイヤが車輪のリムに装着されると、カーカスプライ3とそのリムとの間に挟まれる。そのようなリボン様要素は、耐摩耗性ゴムストリップによって置き換えられ得る。補強リボン様要素10の代わりに、単一の補強コードを使用することができ、それは、粘着付与剤処理(tackifying treatment)後に堆積され得る。
【0160】
図1のタイヤを参照すると、カーカスフラップ3aの2つの縁が、それぞれ、クラウン部分2aを覆うように延在して、クラウン部分2aに、第1の半径方向内側カーカス層とともに3つのカーカス層を形成するように重なる。
【0161】
タイヤ100は、競技用自転車の車輪を対象とする場合、一般に、境界値を含めて、好ましくは約19mm~約38mm、より好ましくは約19mm~約32mm、さらにより好ましくは約23mm~約30mmの軸方向展開部を有する。
【0162】
オフロード自転車用の車輪に設計されたタイヤの場合には、タイヤ100は、好ましくは、境界値を含めて、約37mm~約120mmの軸方向展開部を有する。
【0163】
街乗り用自転車用車輪を対象とするタイヤ100は、一般に、好ましくは、境界値を含めて、約32mm~62mmの軸方向展開部を有する。
【0164】
様々なタイプの自転車を対象とするタイヤ100の外径(これは、英語の単位名によれば、インチで表される)は、好ましくは、境界値を含めて、約24インチ~約29インチ、より好ましくは約26インチ~約29インチである。それに応じて、ISO又はE.T.R.T.O.規格による嵌合径は、好ましくは、約559mm(オフロード自転車用の26インチの外径に対応する)、又は約571mm(ロードレース用自転車用の26インチの外径に対応する)、又は約584mm(オフロード自転車用の27.5インチの外径に対応する)、又は約622mm(ロードレース用自転車用の28インチの外径、及びオフロード自転車用の29インチの外径に対応する)又は約630mm(ロードレース用自転車用の27インチの特定の外径に対応する)である。
【0165】
タイヤ100のカーカスプライ3は、好ましくは、エラストマー混合物でコーティングされ且つ互いに実質的に平行に配置された複数の補強コード30を含む。
図2~4では、参照符号30は、補強コードの組に関連付けられる。
【0166】
補強コード30は、1つ以上の端部、好ましくは1つ又は2つの端部において、好ましくは、ナイロン、レーヨン、PET、PEN、リヨセル、アラミド、綿又はコアスパン(Corespun)(ポリエステルで補強された綿)から選択される、好ましくはナイロン又はコアスパン又はこれらの組み合わせから選択される、テキスタイル材料製である。
【0167】
補強コード30の直径は、境界値を含めて、好ましくは、約0.10mm~約0.55mm、より好ましくは約0.12mm~約0.35mmであり、例えば約0.13mmに等しい。
【0168】
補強コード30の線密度は、境界値を含めて、約110dtex~約1300dtex、より好ましくは約230dtex~約940dtexであり、例えば約470dtexに等しい。
【0169】
上述の補強コード30に使用され得るテキスタイル材料の具体例は、ナイロン930dtex/1、ナイロン470dtex/1、ナイロン230dtex/1、及びアラミデ(Aramide)470/1繊維であり、ここで、dtexの後の数字1は、端部の数を示す。
【0170】
しかしながら、補強コード30は鋼製であってもよく、その場合、それらの直径は、境界値を含めて、好ましくは0.08mm~0.175mmである。
【0171】
補強コード30は、タイヤ100の赤道面に対して、境界値を含めて、約30°~約60°の角度だけ傾斜されている。
【0172】
競技用又は街乗り用自転車の車輪用のタイヤ100のカーカスプライ3は、好ましくは、境界値を含めて、約15TPI~約360TPI、より好ましくは約30TPI~約300TPI、例えば約240TPIに等しいロープ密度(rope density)を有する。
【0173】
好ましくは、2層タイヤの場合には、各カーカスプライは、境界値を含めて、約15TPI~約200TPI、より好ましくは約30TPI~約180TPI、例えば約120TPIに等しいコード密度を有する。
【0174】
オフロード自転車用車輪用のタイヤ100のカーカスプライ3は、好ましくは、約15TPI~約150TPI、より好ましくは約30TPI~約120TPIのコード密度を有する。
【0175】
好ましくは、2プライ、又は3つ以上のカーカスプライを備えるタイヤの場合には、各カーカスプライのコード密度は、約15TPI~約120TPI、より好ましくは約30TPI~約90TPIである。
【0176】
本発明の態様によれば、図面を参照して、1つ以上の保護層6及び11(存在する場合)が、トレッドバンド7とカーカス構造体2との間に挿入される。
【0177】
図1に示すように、保護層6は、トレッドバンド7の軸方向延在部の全体を通して延在する一方、保護層11は、ビードから対向するビードまで、タイヤ100の軸方向展開部の全体を通して延在する。
【0178】
図1に示す実施形態は特に好ましい実施形態であるが、多数の変形例が本発明の範囲内にあるとし得る。
【0179】
例えば、
図1のタイヤ100は、保護層6のみを含んでも、又は保護層11のみを含んでも、又は
図1に示すように双方を含んでもよい。
【0180】
或いは、
図2~6に示すように、保護層6は、トレッドバンド7の軸方向延在部よりも短い、例えばトレッドバンドの軸方向展開部の30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%に等しい延在部を有する。
【0181】
或いは、保護層11は、タイヤ100の軸方向展開部よりも短い、例えばタイヤの軸方向展開部の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は95%に等しい延在部を有する。
【0182】
任意選択的な実施形態によれば、さらなる保護層12がカーカス構造体2内に、特にカーカスプライ3のフラップの内部に挿入され得る。この場合、保護層12は、
図6に示すように、それぞれのサイドウォールの部分にのみ延在してもよいだけでなく、タイヤの軸方向展開部の全体を通して延在しても、又はトレッドの軸方向展開部にのみ延在してもよい。
【0183】
さらなる任意選択的な実施形態によれば、さらなる保護層12は、カーカス構造体2に関して半径方向内側の位置に配置され得る。この場合、保護層12は、
図5に示すように、タイヤの軸方向展開部の全体を通して延在して、また、それぞれのビード5の周りで折り返されてもよいだけでなく、より短い延在部を有してもよい。
【0184】
それゆえ、保護層12は、タイヤ100の軸方向展開部以下の、例えばタイヤの軸方向展開部の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%に等しい延在部を有し得るだけでなく、
図5に示すように、それぞれのビード5の周りで折り返すのに十分な、タイヤの軸方向展開部よりも広い幅にわたって延在してもよい。
【0185】
保護層6、11及び/又は12は、好ましくは、アラミド繊維、リヨセル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、綿繊維、ポリエステル繊維(PET繊維、PENなど)及びビニル繊維(PVA)から選択されたテキスタイル材料製であり、好都合には、高弾性率の繊維、例えば、アラミド繊維及びリヨセル繊維などを含むテキスタイル材料製である。
【0186】
保護層6、11及び/又は12は、好ましくは、境界値を含めて、20TPI~300TPI、より好ましくは、境界値を含めて、30TPI~250TPIの密度を示す。
【0187】
トレッドバンド7は、上述のようなマイクロメートル寸法のフィブリル化ポリマー繊維を含む加硫性エラストマー化合物で作製される。
【0188】
トレッドバンド7は、軸方向に延在し、且つクラウン部構造2a及び保護層6に対して、クラウン部構造2a及び保護層6の幅セクションよりも狭い又は少なくともそれに等しくてよい幅セクションだけ、半径方向外側の位置にある。
【0189】
競技用自転車用車輪用のタイヤ100の重量は、約350g未満、好ましくは約250g以下である。
【0190】
街乗り用自転車用車輪用のタイヤ100の重量は、約250gを上回り、好ましくは約350g以上である。
【0191】
オフロード自転車用車輪用のタイヤ100の重量は、約300g以上、より好ましくは約350g以上である。
【0192】
オフロード自転車用車輪を対象とするタイヤでは、トレッドバンド7は、複数のブロックを含む。
【0193】
好ましくは、タイヤ100の構築は、当業者に公知の手順に従って行われる。
【0194】
【0195】
図2の構成図では、カーカスプライ3の端部フラップ3aは、互いに軸方向に離間されており、且つトレッド7及び保護層6とは異なる軸方向位置にある。
図2の具体例では、補強リボン様要素10は、カーカスプライ3の折り返された端部フラップ3aに適用されているが、存在しなくてもよい。
【0196】
図3は、本発明による単一プライタイヤの代替的な実施形態を概略的に示す。
【0197】
この実施形態は、
図2のものとは、トレッド7及び保護層6において、端部フラップ3aが部分的に互いに重ね合わされている点で、異なる。
【0198】
図3の実施形態では、ビード5の近傍において、補強リボン様要素10は、カーカスプライ3の折り返された端部フラップ3aに適用されるが、存在しなくてもよい。
【0199】
図4は、本発明による2プライタイヤのさらなる代替的な実施形態を概略的に示す。
【0200】
図4の実施形態では、両カーカスプライ300、301は、それらそれぞれの対向する端部フラップ300a、301aを有し、それら端部フラップは、ビードコア4の周りで折り返され、互いに軸方向に離間され、且つトレッド7及び保護層6とは異なる軸方向位置にある。
【0201】
図5は、本発明による単一プライタイヤの代替的な実施形態を概略的に示す。
【0202】
図5の実施形態では、保護層12は、カーカス構造体2に関して半径方向内側の位置においてタイヤの軸方向展開部の全体を通して延在し、且つビードコア5の周りで折り返して、ビード5を補強している。
【0203】
図6は、本発明による単一プライタイヤの代替的な実施形態を概略的に示す。
【0204】
図6の実施形態では、保護層12は、カーカスプライ3のフラップ内のビードコアから出発し、それぞれのサイドウォールに対応するタイヤの軸方向延在部分のみに延在する。
【0205】
代替的な実施形態は、
図7及び
図8に示すチューブ状タイヤの実施形態である。
【0206】
チューブ状タイヤは、
図1のタイヤ100の構成と同様の構成によって特徴づけられ、ここでは、ビード5にあるカーカス構造体2の端部は、一般的に綿又はコアスパンのベルト15によって、一緒に縫われるか又は接合される。カーカス構造体2は、コアスパン、又はラテックス若しくは天然ゴムでコーティングされた、アラミド、綿若しくはナイロンと交互になったコアスパンからなり、内筒体14が内側にあるリング状チューブを作製する。
【0207】
図7及び
図8に示すように、保護層6及びトレッド7は、カーカス構造体2に対して半径方向外部の位置に作製され、且つカーカス2とともに加硫することができ、又は後で接着され得る。
【0208】
本発明は、さらに、純粋に示唆として与えられ且つ本発明をなんら限定するものではない、いくつかの例によって下記で説明される。
【実施例】
【0209】
実施例1-予備テスト
表1に示す量で、異なる補強充填材を含む、トレッドバンド1及び2用のエラストマー化合物が、以下の通り準備された(様々な構成成分の量は、phrで与えられている)。
【0210】
硫黄、遅延剤、及び促進剤(accelerant)(CBS)を除いた全ての構成成分が、内部ミキサー(モデルPomini PL 1.6)内で約5分間一緒に混合された(第1のステップ)。温度が145+5℃に達するとすぐに、エラストマー化合物はミキサーから取り出された。その後、硫黄、遅延剤及び促進剤(accelerator)(CBS)が添加され、且つオープンロールミキサー内で混合が行われた(第2のステップ)。
【0211】
【0212】
実施例2-タイヤの準備
次に、
図1に示す構造に従って寸法28-622で、実施例1に説明するエラストマー化合物で作製されたトレッドバンドを含む、自転車用のレース用タイヤが準備された。タイヤ1は、化合物1(Kevlar(登録商標)パルプの含有量が高い)で作製されたトレッドバンドを含んだ一方で、タイヤ2及び3は、化合物2(Kevlar(登録商標)パルプの含有量が低い)で作製されたトレッドバンドを含んだ。トレッドバンドの厚さは、1~3のタイヤの全てに関し、約2.2mmであった。
【0213】
全ての場合において、カーカス構造体は、アラミドビードコアで折り返される、密度60TPI及び線密度460dtexのナイロン6.6で、総厚0.4mmのゴム引きのカーカスプライを備え、及び縁部には2つのゴム引きの摩耗防止の方形織柄ファブリックを備えた。
【0214】
タイヤ1及び2は、線密度200dtex、及びタイヤの赤道面に対して45°の角度に向けられた密度55TPI(横糸)及び80TPI(縦糸)を備え、初期係数75GPaのアラミド繊維の補強コードを含む方形織柄ファブリック製の保護層6(
図1に示すように、トレッドバンド7の軸方向展開部の全体を通して延在する)と、線密度117dtex、及びタイヤの赤道面に対して45°の角度に向けられた密度90TPI(横糸)及び100TPI(縦糸)を備え、初期モジュール6GPaのナイロン6.6繊維の補強コードを含む方形織柄ファブリック製の保護層11(
図1に示すように、ビードからビードまでの、タイヤ100の全ての軸方向展開部によって延在する)とによって、作製された。タイヤ3は、タイヤ2のように作製されたが、保護層6がなく、それゆえ、保護層11のみ備えている。
【0215】
実施例3-耐パンク試験
実施例2のタイヤ1~3のトレッドで得られた寸法が約20×200mmのタイヤサンプルに対する、DIN EN14477規格によるパンク試験が、下記で説明するように試験条件のもと行われた。
【0216】
この試験は、一定速度でサンプルに侵入する侵入物(penetrator)(直径0.8mmの針)の作用を受けさせることによって、材料の穴あきへの耐性を評価できる。試験は、加えられた力(異なる侵入深さにおいてNで測定される)及び材料の弾性変形(mmで測定される)を記録できる動力計を用いて、実施される。
【0217】
したがって、この加えられた力は、異物の侵入に対するサンプルによる抵抗を示す(材料は、力の値が大きいほど、より抵抗する);及び前記弾性変形は、異物の侵入を吸収する材料の能力を表す(材料は、同じ力に対する前記変形の力の値が大きいほど、より弾性である)。
【0218】
試験は、温度が23°±2℃に制御された、調整された環境で実施された。サンプルは、試験前、48時間調整された。
【0219】
使用された試験条件は以下の通りであった:
- 試験速度=50mm/分;
- 侵入物の先端とタイヤとの間の初期の距離=10mm;
- 加えられている前負荷=0.5N。
【0220】
試験は、10個のサンプルで実施され、且つ得られた平均値は、以下の表2で与えられる。
【0221】
【0222】
図9に示すグラフは、材料の変形が増加するにつれた穿孔力の傾向を示す。グラフは、表2に示すデータによれば、全てのサンプルで非常に近い曲線を示す。
【0223】
得られた結果は、高又は低Kevlar含量のものと、1つ又は2つの保護層を含むものとの双方の全てのサンプルにおいて、穴あきに対する抵抗が優れていることが見られ、これは、変形をかなり減少させると同時に、同じ変形を引き起こすには高い穿孔力が必要となることを示している。
【0224】
本発明を、いくつかの好ましい実施形態を参照して説明した。上述の実施形態には、様々な修正が行われ得るが、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の保護範囲内に留まる。