(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】タービン制御システム
(51)【国際特許分類】
F01D 17/10 20060101AFI20240426BHJP
F01D 17/00 20060101ALI20240426BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F01D17/10 G
F01D17/10 L
F01D17/00 M
F01D17/00 Q
F01D17/00 S
F01D25/00 V
F01D25/00 W
(21)【出願番号】P 2020563458
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 US2019031445
(87)【国際公開番号】W WO2019217632
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-13
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク フォルツ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ リー ミラー
(72)【発明者】
【氏名】カミロ ロペス
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-156909(JP,A)
【文献】特開昭49-41706(JP,A)
【文献】特開2007-224918(JP,A)
【文献】特開昭53-125502(JP,A)
【文献】米国特許第4099237(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10
F01D 17/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン制御システムであって、前記タービン制御システムには、
タービンの速度を検出する速度プローブと、
タービンへの、またはタービンからの流体またはガスの流量を制御するタービン弁と、
前記速度プローブおよび前記タービン弁と通信するコントローラと、
が含まれ、前記コントローラにより、
前記速度プローブから速度信号が受信され、前記コントローラにより、前記タービン弁に第1信号および第2信号が
それぞれ異なる送信経路で送信され、前記第1信号には、前記速度信号に応じて前記タービン弁のポジションを変更する弁ポジションコマンドが含まれ、前記第2信号には、前記速度信号に応じて前記タービン弁のポジションにおける変更を命令しないサポート機能が含まれ、
前記コントローラにより、前記第2信号よりも速い速度で前記第1信号が出力され、
前記第1信号
は、第1のサイクルで処理され、前記第2信号
は、前記
第1のサイクルより遅い第2のサイクルで処理さ
れ、
前記サポート機能には、診断機能、フィードバック機能またはテスト機能、および前記機能に関連付けられたデータが含まれる、
タービン制御システム。
【請求項2】
前記タービンに装着されかつ前記タービンと共に回転可能な速度ホイールをさらに有し、前記速度プローブにより、前記速度ホイールの歯が前記速度プローブを通過するのに伴い、前記歯が識別される、
請求項1記載のタービン制御システム。
【請求項3】
速度監視モジュールをさらに有し、前記速度監視モジュールは、前記速度プローブと通信し、前記速度監視モジュールは、I/Oバスを介して前記コントローラと通信する、
請求項1記載のタービン制御システム。
【請求項4】
速度監視モジュールをさらに有し、前記速度監視モジュールは、前記速度プローブと通信し、前記速度監視モジュールは、I/Oバスを介して前記コントローラと通信し、複数の前記タービン弁のそれぞれに、燃料弁、バイパス弁、停止弁またはガバナ弁が含まれる、
請求項1記載のタービン制御システム。
【請求項5】
弁ポジショニングモジュールをさらに有し、前記弁ポジショニングモジュールは、前記タービン弁と通信し、前記弁ポジショニングモジュールは、I/Oバスを介して前記コントローラと通信する、
請求項1記載のタービン制御システム。
【請求項6】
複数の前記弁ポジショニングモジュールおよび複数の前記タービン弁をさらに有し、それぞれの前記弁ポジショニングモジュールは、別々の1つの前記タービン弁と通信し、前記コントローラは、前記サポート機能を含む前記第2信号を送信するために、複数の前記弁ポジショニングモジュールのそれぞれと別々に通信し、これにより、それぞれの前記サポート機能が、複数の前記弁ポジショニングモジュールの特定の1つに対応する、
請求項5記載のタービン制御システム。
【請求項7】
複数の前記タービン弁のそれぞれに、燃料弁、バイパス弁、停止弁またはガバナ弁が含まれる、
請求項6記載のタービン制御システム。
【請求項8】
複数の前記弁ポジショニングモジュールのそれぞれは、別々の回路ボードおよびプロセッサを前記弁ポジショニングモジュール内に有する、
請求項6記載のタービン制御システム。
【請求項9】
前記コントローラが、パケットによって複数の前記弁ポジショニングモジュールと通信し、それぞれの前記パケットには、複数の前記弁ポジショニングモジュールの1つに関連付けられた少なくとも1つのアドレスが含まれる、
請求項6記載のタービン制御システム。
【請求項10】
前記第1信号は、複数の前記弁ポジショニングモジュールの2つ以上に関連付けられた複数のアドレスを含む、第1タイプのパケットを有し、前記第1タイプのパケットにはさらに、複数の前記アドレスのそれぞれに対する前記弁ポジションコマンドの1つが含まれる、
請求項9記載のタービン制御システム。
【請求項11】
前記第1タイプのパケットには、複数の前記弁ポジショニングモジュールのすべてによって前記パケットが読み出されなければならないことを示すマルチキャストフラグが含まれる、
請求項10記載のタービン制御システム。
【請求項12】
前記第2信号は、複数の前記弁ポジショニングモジュールの1つだけに関連付けられたただ1つのアドレスを含む、第2タイプのパケットを有する、
請求項9記載のタービン制御システム。
【請求項13】
前記パケットに、対応する前記弁ポジショニングモジュールに関連付けられた前記アドレスが含まれない場合、複数の前記弁ポジショニングモジュールにより、前記第2タイプのパケットが無視される、
請求項12記載のタービン制御システム。
【請求項14】
弁ポジショニングモジュールをさらに有し、前記弁ポジショニングモジュールは、前記タービン弁と通信し、前記弁ポジショニングモジュールは、I/Oバスを介して前記コントローラと通信し、さらに、複数の前記弁ポジショニングモジュールおよび複数の前記タービン弁を有し、それぞれの前記弁ポジショニングモジュールは、別々の1つの前記タービン弁と通信し、前記コントローラは、前記サポート機能を含む前記第2信号を送信するために、複数の前記弁ポジショニングモジュールのそれぞれと別々に通信し、これにより、それぞれの前記サポート機能が、複数の前記弁ポジショニングモジュールの特定の1つに対応する、
請求項1記載のタービン制御システム。
【請求項15】
前記コントローラが、パケットによって複数の前記弁ポジショニングモジュールと通信し、それぞれの前記パケットには、複数の前記弁ポジショニングモジュールの1つに関連付けられた少なくとも1つのアドレスが含まれ、前記第1信号は、複数の前記弁ポジショニングモジュールの2つ以上に関連付けられた複数のアドレスを含む、第1タイプのパケットに含まれ、前記第1タイプのパケットにはさらに、複数の前記アドレスのそれぞれに対する前記弁ポジションコマンドの1つが含まれる、
請求項14記載のタービン制御システム。
【請求項16】
前記第1タイプのパケットには、複数の前記弁ポジショニングモジュールのすべてによって前記パケットが読み出されなければならないことを示すマルチキャストフラグが含まれる、
請求項15記載のタービン制御システム。
【請求項17】
前記第2信
号は、複数の前記弁ポジショニングモジュールの1つだけに関連付けられたただ1つのアドレスを含む、第2タイプのパケット
を有し、前記パケットに、対応する前記弁ポジショニングモジュールに関連付けられた前記アドレスが含まれない場合、複数の前記弁ポジショニングモジュールにより、前記第2タイプのパケットが無視される、
請求項16記載のタービン制御システム。
【請求項18】
前記タービンに装着されかつ前記タービンと共に回転可能な速度ホイールをさらに有し、前記速度プローブにより、前記速度ホイールの歯が前記速度プローブを通過するのに伴い、前記歯が識別され
、複数の前記弁ポジショニングモジュールのそれぞれは、別々の回路ボードおよびプロセッサを前記弁ポジショニングモジュール内に有する、
請求項17記載のタービン制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、一般にタービンに関し、より具体的にはタービンにおける弁を制御するシステムに関する。
【0002】
発電所では、電気を発生させるために大型の蒸気タービンが使用される。蒸気タービンでは、弁を高速に制御することが特に有効になり得る。
【0003】
図面に関連して、以下の説明を読むことにより、本発明はより完全に理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図3】コントローラの高速サイクルおよび低速サイクルならびに複数の弁ポジョニングモジュールとの通信を示す概略図である。
【
図4】高速サイクルによって生成されるポジションパケットの概略図である。
【
図5】低速サイクルによって生成されるサポート機能パケットの概略図である。
【0005】
詳細な説明
好ましい実施形態の一様相には、弁制御マルチキャスティングが含まれる。強固であり、応答性に優れ、かつ安全なタービン動作を提供するために、タービン制御システムは、その電子ガバナからの高速の応答時間をますます必要としている。電子ガバナの応答時間は、一般に、速度入力信号における変化に直接に応答して、システムが物理的なタービン速度信号を読み込んだ瞬間から、物理的なサーボ出力信号が調整される瞬間までの時間遅延として定義される。
図1に示したように、ガバナ制御チェーンには、ガバナ応答時間全体に影響を及ぼすいくつかの要素が存在する。基本的な要素は、1)速度入力信号(10)を読み込みかつ調整するタービン保護モジュール、2)I/Oバス(12)を介するメインDCSへの速度信号の伝送、3)(速度PIDを含めた)DCSコントローラ(14)内の制御ロジックの実行、4)I/Oバス(16)を介するDCSコントローラから弁ポジショナへの弁ポジション要求信号の伝送、および5)弁ポジショナ(18)内の弁ポジショニング機能の実行および物理的なサーボ出力信号の生成、である。
【0006】
従来のいくつかのシステムは、弁制御を含めたすべての機能を実行するためにコントローラを使用していた。これには、コントローラによって実行されることを要求される他の機能に加えて、クリティカルなタスクおよびクリティカルでないタスクが含まれる。しかしながら、好ましい実施形態ではこれらの機能が分割され、これにより、クリティカルな機能は、実行時間を数ミリ秒にまで大幅に短くするために、高速タスクで実行されるか、またはI/Oモジュールレベルまで下げられる。さらに、あまりクリティカルでない機能は、低速タスクで実行されて、コントローラに加わるストレスが低減される。
【0007】
好ましい実施形態についての主要な応用は、一般に、発電所における大型の蒸気タービンである。この応用を使用することにより、これまで使用されていた伝統的な制御よりも格段に高速な複数の蒸気弁の制御が提供される。予想される改善は、10:1のオーダである。付加的には、弁の高速制御を必要とする別の応用が、好ましい実施形態の恩恵を受けると考えられる。
【0008】
ガバナ応答時間における遅延の最大原因は、数ミリ秒から数百ミリ秒に変化し得る、メインDCSコントローラ内での制御ロジックの実行である。DCSコントローラは、速度制御、負荷制御、保護、燃料制御、およびI/Oモジュールへの通信インタフェースのようなガバナ機能を制御する。最後の要素、すなわちI/Oモジュールへの通信インタフェースにより、数多くのI/O、より具体的にいうと数多くの弁ポジショナI/Oモジュールを有するシステムにおいて、DCSコントローラに極めて大きな負荷が負わされることがある。弁ポジショナI/Oモジュールへの通信インタフェースは、インスタンス毎に数ミリ秒を所要することがあり、このことは、多くの蒸気タービンおよびガスタービンの代表である、多くの燃料弁を備えたタービン応用に対し、緩慢なコントローラ実行時間および緩慢なガバナ応答時間に結び付いてしまう。
【0009】
好ましい実施形態の1つの利点は、DCSコントローラにおける実行時間が大幅に短縮されることである。別の利点は、コントローラにおいて必要とされるロジックの量が低減されることである。別の利点は、弁ポジションI/Oモジュール内でクリティカルな機能と、クリティカルでない機能とが弁別されることである。
【0010】
ここで説明している本発明は、上で説明した任意の機能に加え、1つ以上の以下の機能を有していてよい。図面を参照して、以下の機能を示す。
【0011】
タービン制御システムには、タービン26の速度を検出する速度プローブ20と、タービン26への、またはタービン26からの流体またはガスの流量を制御するタービン弁24と、速度プローブ20およびタービン弁24と通信するコントローラ14と、が含まれ、コントローラ14により、速度プローブ20から速度信号が受信され、コントローラ14により、タービン弁24に第1信号32および第2信号34が送信され、第1信号32には、速度信号に応じてタービン弁24のポジションを変更する弁ポジションコマンド40が含まれ、第2信号34には、速度信号に応じてタービン弁24のポジションにおける変更を命令しないサポート機能42が含まれ、コントローラ14により、第2信号34よりも速い速度で第1信号32が出力される。
【0012】
タービン制御システムはさらに、タービン26に装着されかつタービン26と共に回転可能な速度ホイール22を有し、速度プローブ20により、歯が速度プローブ20を通過するのに伴い、速度ホイール22の歯が識別される。
【0013】
タービン制御システムはさらに、速度監視モジュール10を有し、速度監視モジュール10は、速度プローブ20と通信し、速度監視モジュール10は、I/Oバス12を介してコントローラ14と通信する。
【0014】
サポート機能42には、診断機能、フィードバック機能、校正機能またはテスト機能、およびこれらの機能に関連付けられたデータ44が含まれる、タービン制御システム。
【0015】
コントローラ14により、高速サイクル28および低速サイクル30においてタスクが処理され、第1信号32が、高速サイクル28で処理され、第2信号34が、低速サイクル30で処理される、タービン制御システム。
【0016】
タービン制御システムはさらに、弁ポジショニングモジュール18を有し、弁ポジショニングモジュール18は、タービン弁24と通信し、弁ポジショニングモジュール18は、I/Oバス16を介してコントローラ14と通信する。
【0017】
タービン制御システムはさらに、複数の弁ポジショニングモジュール18および複数のタービン弁24を有し、それぞれの弁ポジショニングモジュール18は、別々の1つのタービン弁24と通信し、コントローラ14は、サポート機能42を含む第2信号34を送信するために、複数の弁ポジショニングモジュール18のそれぞれと別々に通信し、これにより、それぞれのサポート機能42が、複数の弁ポジショニングモジュール18の特定の1つに対応する。
【0018】
複数のタービン弁24のそれぞれに、燃料弁、バイパス弁、停止弁またはガバナ弁が含まれる、タービン制御システム。
【0019】
複数の弁ポジショニングモジュール18のそれぞれは、別々の回路ボードおよびプロセッサを弁ポジショニングモジュール内に有する、タービン制御システム。
【0020】
コントローラ14が、パケット32、34によって複数の弁ポジショニングモジュール18と通信し、それぞれのパケット32、34には、複数の弁ポジショニングモジュール18の1つに関連付けられた少なくとも1つのアドレス38が含まれる、タービン制御システム。
【0021】
第1信号32は、複数の弁ポジショニングモジュール18の2つ以上に関連付けられた複数のアドレス38を含む、第1タイプのパケット32を有し、第1タイプのパケット32にはさらに、複数のアドレス38のそれぞれに対する弁ポジションコマンド40の1つが含まれる、タービン制御システム。
【0022】
第1タイプのパケット32には、複数の弁ポジショニングモジュール18のすべてによってパケット32が読み出されなければならないことを示すマルチキャストフラグ36が含まれる、タービン制御システム。
【0023】
第2信号34は、複数の弁ポジショニングモジュール18の1つだけに関連付けられたただ1つのアドレス38を含む、第2タイプのパケット34を有する、タービン制御システム。
【0024】
パケット34に、対応する弁ポジショニングモジュール18に関連付けられたアドレス38が含まれない場合、複数の弁ポジショニングモジュール18により、第2タイプのパケット34が無視される、タービン制御システム。
【0025】
ここで説明した好ましい実施形態は、必要に応じて、非一時的コンピュータ読み出し可能媒体における、コンピュータ化された方法として実現可能であると了解される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれによって限定されず、ここで説明した本発明から逸脱することなく変更を行えることが了解されるべきである。ここで説明したそれぞれの実施形態は、特定の特徴だけに言及していることがあり、別の実施形態に関連して説明したすべての特徴に特に言及していないことがあるが、ここで説明したこれらの特徴は、特定の1つの特徴に言及してないとしても、特に別に記載がないかぎり、互換性を有することが了解されるべきである。上で説明した複数の利点は、必ずしも本発明の利点のすべてではないことも了解されるべきであり、また説明した利点のすべてが、本発明のすべての実施形態によって達成されることは必ずしも期待されない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められ、特許請求の範囲の意図内に入るすべての装置および方法は、文字通りであってもまたは等価物のいずれでもあっても、本発明の範囲内に含まれる。