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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】スライド式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20240426BHJP
   F16K 3/02 20060101ALI20240426BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F16K3/02 B
F16K31/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021053599
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150819
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-196477(JP,A)
【文献】特開2011-190897(JP,A)
【文献】特開2000-179731(JP,A)
【文献】特開昭62-196475(JP,A)
【文献】米国特許第02828767(US,A)
【文献】特開昭61-048675(JP,A)
【文献】特開昭58-021069(JP,A)
【文献】特開平07-190226(JP,A)
【文献】実開昭60-073071(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00 - 3/36
F16K 11/00 - 11/24
F16K 31/04
F16K 31/06 - 31/11
F25B 41/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の弁本体と、
前記弁本体に設けられて複数の弁ポートを有する弁座部と、
前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、
前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁であって、
前記駆動部は、ステッピングモータと、該ステッピングモータの回転を直線運動に変換して前記弁体に伝達する直動機構と、を有し、
前記直動機構は、互いに螺合する雄ねじ部および雌ねじ部を有した送りねじ機構であって、
前記雄ねじ部が前記ステッピングモータに接続され、前記雌ねじ部が前記弁体にガタをもって接続され、
前記駆動部には、前記雌ねじ部の回転を規制しつつ進退案内するガイド部が設けられ、
前記弁本体、前記弁座部および前記駆動部の少なくとも一つには、スライドした前記弁体に当接して位置決めする位置決め部が設けられ、
前記弁体は、前記弁座部のシール面に摺接するシール部と、前記位置決め部に当接する当接部と、を有し、該当接部が前記シール部から離れた位置に設けられ、
前記位置決め部に当接した前記当接部と前記シール面との間に逃がし空間が形成されていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記雄ねじ部および前記雌ねじ部が多条ねじによって構成されていることを特徴とする請求項に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記位置決め部及び前記当接部の少なくとも一方には、該位置決め部と該当接部とが当接した際に前記弁体を前記弁座部に向かって付勢する付勢部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライド式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルなどにおいて冷媒の流路を切り換える切換弁として、筒状の弁本体(シリンダ)と、弁本体内部にスライド自在に設けられた碗状の弁体(スライドバルブ)と、弁本体に固定されて複数の弁ポートを有する弁座部(バルブシート)と、弁体をスライド駆動する駆動部(モータ)と、を備えたスライド式切換弁が知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載のスライド式切換弁において、弁体は、駆動部の駆動軸(雄ねじ)に連結され、駆動軸の進退移動に伴ってスライドされるとともに、弁座部の端部に設けられた立ち上がりに当接することで位置決めされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-21069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスライド式切換弁では、弁体が弁座部の立ち上がりに当接して位置決めされるため、弁体と立ち上がりとの間に異物が挟まると、弁体が正規の位置からずれて停止してしまい、弁漏れや冷媒の流量不足などを招く可能性がある。
【0005】
本発明は、異物等の影響による弁体の位置ずれを抑制し、弁体の位置精度を高めることができるスライド式切換弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられて複数の弁ポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁であって、前記駆動部は、ステッピングモータと、該ステッピングモータの回転を直線運動に変換して前記弁体に伝達する直動機構と、を有し、前記直動機構は、互いに螺合する雄ねじ部および雌ねじ部を有した送りねじ機構であって、前記雄ねじ部が前記ステッピングモータに接続され、前記雌ねじ部が前記弁体にガタをもって接続され、前記駆動部には、前記雌ねじ部の回転を規制しつつ進退案内するガイド部が設けられ、前記弁本体、前記弁座部および前記駆動部の少なくとも一つには、スライドした前記弁体に当接して位置決めする位置決め部が設けられ、前記弁体は、前記弁座部のシール面に摺接するシール部と、前記位置決め部に当接する当接部と、を有し、該当接部が前記シール部から離れた位置に設けられ、前記位置決め部に当接した前記当接部と前記シール面との間に逃がし空間が形成されていることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、位置決め部に当接した当接部とシール面との間に形成された逃がし空間に異物を逃がし収めることができることから、位置決め部と当接部との間に異物が挟まりにくくでき、弁体の位置精度を高めることができる。これにより、弁体の位置が正規の位置からずれることによって生じる弁漏れや、圧力損失による冷媒の流量不足などの発生を防止し、冷凍サイクルシステムを稼働する際のエネルギー損失を回避することができる。なお、この種のスライド式切換弁でモータ駆動のものには、モータの軸線の周方向にストッパが当接する構成のものがある。この場合、弁体等の起点を決める際にストッパの衝突音が生じる。しかしながら、本発明のスライド式切換弁は、弁体が弁本体の軸線方向にスライドすることで、当接部と位置決め部とがスライド方向に当接する。これにより、当該衝突音を抑制し、スライド式切換弁の静音化を図ることができる。
【0008】
また、上記構成によれば、直動機構によって、ステッピングモータの回転を弁体のスライド運動に変換することができる。また、ステッピングモータ駆動とすることで、高速でピストン駆動される弁体がストッパに衝突する一般的な電磁式ピストン駆動のスライド式切換弁と比較すると、ストッパの衝突音を格段に低減することができる。また、ステッピングモータは、パルス印加時に励磁速度を下げることにより、回転速度を落とすことが容易にできるため、ステッピングモータ駆動とすることで、当接部が位置決め部に当接する際の弁体の速度を落とすことが容易になり、当該ストッパの衝突音を、さらに低減することができる。
また、上記構成によれば、雌ねじ部が弁体にガタをもって接続されていることで、弁体はスライド方向およびスライド方向に交差する方向のいずれにも移動するゆとりが生じ、駆動部と弁座部の位置精度および寸法精度に捉われずに機能する。これにより、駆動部の駆動力を弁体に適切に伝達することができる。また、ガイド部により、回転の規制をしつつ雌ねじ部を進退案内することができる。
【0009】
また、前記雄ねじ部および前記雌ねじ部が多条ねじによって構成されていることが好ましい。このような構成によれば、雄ねじ部および雌ねじ部を多条ねじで構成したことで、一条ねじの場合と比較して、リード角が大きくなり、マグネットロータ1回転当たりの弁体移動量を大きくできるため、弁位置切換えに要する時間を短くすることができる。
【0011】
さらに、前記位置決め部及び前記当接部の少なくとも一方には、該位置決め部と該当接部とが当接した際に前記弁体を前記弁座部に向かって付勢する付勢部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、付勢部を設けたことで、弁体を、弁座部のある方向に押し付けることができる。これにより、弁体がシール面から浮いてしまうことを防止し、弁体のシール性能を確保することができる。また、弁体を、ガタなく雌ねじ部に固定した場合に比べて、弁体とシール面との位置精度を高くしなくても、弁体のシール性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明のスライド式切換弁によれば、位置決め部に当接した当接部とシール面との間に形成された逃がし空間に異物を逃がし収めることができることから、異物等の影響による弁体の位置ずれを抑制し、弁体の位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のスライド式切換弁の第1状態の縦断面図。
図2】前記スライド式切換弁の第2状態の縦断面図。
図3】前記スライド式切換弁における第一当接部の部分拡大断面図。
図4】前記スライド式切換弁における第二当接部の部分拡大断面図。
図5】弁体および雌ねじ部の接続の詳細を示した斜視図。
図6図5の弁体および雌ねじ部を背面側から見た背面図。
図7図6のA-A線矢視断面図。
図8】弁体および雌ねじ部の接続の詳細を示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1~7に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態のスライド式切換弁の第1状態の縦断面図である。図2は、前記スライド式切換弁の第2状態の縦断面図である。図3は、前記スライド式切換弁における第一当接部の部分拡大断面図である。図4は、前記スライド式切換弁における第二当接部の部分拡大断面図である。図5は、弁体および雌ねじ部の接続の詳細を示した斜視図である。図6は、図5の弁体および雌ねじ部を背面側から見た背面図である。図7は、図6のA-A線矢視断面図である。図8は、弁体および雌ねじ部の接続の詳細を示した縦断面図である。
【0015】
本実施形態に係るスライド式切換弁1は、冷凍サイクルなどにおいて圧縮機、蒸発器、凝縮器と接続され、当該機器に流れる冷媒の流路を切り換えるものである。
【0016】
スライド式切換弁1は、中空筒状の弁本体2と、弁本体2を収容するハウジング3と、弁本体2内に設けられる弁座部4と、弁座部4に着座する弁体5と、弁体5を弁本体2の軸線L方向にスライド駆動する駆動部6と、スライドした弁体5に当接する位置決め部7と、を備えている。そして、本実施形態のスライド式切換弁1は、軸線L方向の一方側に駆動部6を有し、軸線L方向他方側に後述する入口ポート20aを有するので、軸線L方向の一方側を駆動部6側、軸線L方向の他方側を入口ポート20a側と記す場合がある。また、軸線Lに直交する方向における2つの部位の位置関係を示す場合、軸線Lがある側を軸線L側と記す場合がある。
【0017】
弁本体2は、円板状の底部20と、底部20の周縁部から駆動部6側に向けて軸線Lと平行に延びる側壁部21と、側壁部21の駆動部6側の端部を周方向に囲む中空筒状のケース25と、ケース25の開口を閉じる固定蓋26と、を備え、これらの内部に弁室27が構成されている。この弁本体2は、樹脂成形により成形されている。底部20は、中央部に、軸線L方向に貫通する入口ポート20aを有して形成されている。入口ポート20aは、不図示の圧縮機から送られる高圧の冷媒の入口であり、圧縮機の吐出口に接続される入口接続流路20bと連通している。側壁部21は、弁本体2の外方に突出する複数の管状の流路を有している。この流路は、蒸発器(又は凝縮器)と連通する第1接続流路22と、圧縮機の吸入口に連通する出口接続流路23と、凝縮器(又は蒸発器)に連通する第2接続流路24と、で構成されている。各流路は、第1接続流路22、出口接続流路23、第2接続流路24、の順で入口ポート20a側から駆動部6側に一直線に並ぶように配置され、軸線Lに直交する方向に延びている。
【0018】
ケース25は、弁本体2の内径よりも僅かに大きな内径を有している。ケース25の入口ポート20a側の端部には、弁本体2の駆動部6側の端部が嵌め込まれるようになっている。固定蓋26は、ケース25の開口を閉じるとともに、駆動部6を弁本体2に接続する部材である。固定蓋26の中央部には、軸線L方向に貫通する貫通孔26aが形成されている。底部20および側壁部21の外周面には、ハウジング3と、係合するための係合突起28が形成されている。
【0019】
ハウジング3は、アルミダイキャストで有底筒状に成形されている。このハウジング3は、軸線Lを中心とする略円筒形状の収容室30を有しており、この収容室30に弁本体2が収容されるようになっている。収容室30の内壁には、不図示の係合溝部が形成されており、弁本体2の係合突起28が嵌め込まれるようになっている。ハウジング3の底部には、入口接続流路20bを接続するための入口接続口31が形成されている。また、ハウジング3には、弁本体2の第1接続流路22と連通する第1ハウジング流路32、出口接続流路23と連通する出口ハウジング流路33、第2接続流路24と連通する第2ハウジング流路34が、それぞれ形成されている。なお、弁本体2とハウジング3との間には、所定位置にOリングRが設置されている。
【0020】
弁座部4は、第1接続流路22、出口接続流路23、第2接続流路24の軸線L側の端部に設置される部材である。弁座部4は、薄型金属板で構成され、インサート成形により弁本体2の側壁部21に固定されている。この弁座部4は、複数の弁ポートを有している。弁ポートは、第1接続流路22に連通する第1ポート40と、出口接続流路23に連通する出口ポート41と、第2接続流路24に連通する第2ポート42と、で構成されている。第1ポート40、出口ポート41、第2ポート42の内径は、第1接続流路22、出口接続流路23、第2接続流路24の内径よりも僅かに小さく形成されている。そして、弁座部4の弁室27に臨む面は、シール面43を構成している。シール面43は、後述する弁体5のシール部51が摺接する面である。
【0021】
弁体5は、弁座部4に着座し、入口ポート20a、第1ポート40、出口ポート41、第2ポート42の各々を連通又は遮断する部材である。弁体5は、弁本体2内で軸線L方向にスライド自在に設けられている。図1に示すように、弁体5が入口ポート20a側にスライドできる限界までスライドした状態である第1状態では、入口ポート20aと第2ポート42とが連通され、第1ポート40と出口ポート41とが連通される。図2に示すように、弁体5が駆動部6側にスライドできる限界までスライドした状態である第2状態では、入口ポート20aと第1ポート40とが連通され、第2ポート42と出口ポート41とが連通される。この弁体5は、弁座部4側に向けて開口する碗状の弁体本体50と、弁体本体50の縁部に形成されるシール部51と、弁体本体50の底部に設置されるばね部52と、当接部53と、を備えている。
【0022】
弁体本体50は、第1ポート40、出口ポート41、第2ポート42の内径のうち、いずれか2つ分よりも軸線L方向に大きな開口を有して形成されている。シール部51は、弁座部4のシール面43に摺接する部分であり、当該シール面43と対向する面として、弁体本体50の縁部に全周に亘って形成されている。ばね部52は、弁体本体50を弁座部4側に向けて付勢する部材である。ばね部52は、軸線L方向に直交する方向に延び、一端部が弁本体2の側壁部21の内周面に、他端部が弁体本体50の底部に当接するように設置されている。当接部53は、位置決め部7に当接することで、弁体5のスライドを止めるストッパとして機能する。
【0023】
当接部53は、第1状態で入口ポート20a側の位置決め部7(70)に当接する第一当接部54と、第2状態で駆動部6側の位置決め部7(71)に当接する第二当接部55と、で構成されている。図3および図7に示すように、第一当接部54は、縦断面視における弁体本体50の入口ポート20a側の端部であって、シール部51から軸線L側に離間した位置から入口ポート20a側に向けて板状に突出した第一突出部54aと、第一突出部54aの先端面で構成される第一当接面54bと、を備えている。図4および図7に示すように、第二当接部55は、縦断面視における弁体本体50の駆動部6側の端部であって、シール部51から軸線L側に離間した位置から駆動部6側に向けて板状に突出した第二突出部55aと、接続爪部55bと、第二当接面55cと、を備えている。
【0024】
接続爪部55bは、後述する雌ねじ部66に弁体5を接続する部分である。接続爪部55bは、第二突出部55aの駆動部6側の端部における弁室27に臨む面を基端部とし、この基端部から軸線L側に向けて先端部が突出して形成されている。接続爪部55bは、図4図7に示すように、軸線L方向に厚みをもち、軸線Lに直交する方向に二叉に分かれている。接続爪部55bは、入口ポート20a側の面が突出方向に向けて水平方向(軸線Lと直交する方向)に延び、駆動部6側の面が突出方向に向かうにつれて入口ポート20a側に位置するように傾斜している。すなわち、接続爪部55bは、側面から見て先端先細の楔形に形成されている。第二当接面55cは、上述のように傾斜した接続爪部55bの駆動部6側の面(傾斜面)で構成されている。
【0025】
駆動部6は、図1および図2に示すように、軸線Lの周方向に回転するステッピングモータ60と、ステッピングモータ60の回転を直線運動に変換して弁体5に伝達する直動機構63と、を備えている。ステッピングモータ60は、固定蓋26の駆動部6側に配置されるマグネットロータ61と、マグネットロータ61を軸線L周りに囲むステータコイル62と、で構成されている。直動機構63は、前記固定蓋26の貫通孔26aに挿入される有底筒状のガイド部64と、マグネットロータ61のロータ軸である雄ねじ部65と、雄ねじ部65に螺合する雌ねじ部66と、を備えている。すなわち、直動機構63は、互いに螺合する雄ねじ部65および雌ねじ部66を有した送りねじ機構として構成されている。なお、雄ねじ部65および雌ねじ部66を構成するねじとしては、多条ねじを用いることが望ましい。ガイド部64は、先端側が弁室27内に位置し、底部側が弁室27の外方に位置する状態で固定蓋26に固定されている。ガイド部64は、雌ねじ部66の外周面が摺動する内周壁が断面角筒状に形成されている。
【0026】
雄ねじ部65は、マグネットロータ61の中心部からガイド部64の底部を貫通して入口ポート20a側に向けて延びている。雄ねじ部65の軸線は、軸線Lと重なるように調整されている。雌ねじ部66は、断面角筒状に形成されている。雌ねじ部66の駆動部6側の部分は、断面隅丸四角状の外周壁がガイド部64の断面角筒状の内周壁に摺接するようにガイド部64内に収容されている。これにより、マグネットロータ61の回転に伴って雄ねじ部65が回転すると、雌ねじ部66は、ガイド部64の断面角筒状の内周壁によって回転を規制されつつスライド方向に進退案内されるようになっている。図5に示すように、雌ねじ部66の入口ポート20a側の端部には、弁体5の接続爪部55bを嵌め込むための溝部67が設けられている。溝部67は、雌ねじ部66の外壁部のうち軸線Lに直交する方向の一側と他側に形成され、軸線Lと交差する方向に延びている。
【0027】
溝部67は、溝幅の寸法が、接続爪部55bの軸線L方向の寸法よりもわずかに大きく設定されている。図5および図6に示すように、接続爪部55bが溝部67に嵌め込まれると、当該接続爪部55bが軸線Lに直交する方向から雌ねじ部66を挟み込み、弁体5が雌ねじ部66に接続されるようになっている。この際、上述の寸法差により、溝部67と接続爪部55bとの間には、軸線L方向に僅かな隙間が生じるようになっている。また、図8に示すように、溝部67の溝内駆動部6側の内面は、軸線Lに直交する方向に対する傾きが、第二当接面55cの当該方向に対する傾きよりも所定の角度θ1分大きく形成されている。本実施形態では、角度θ1は、2°に設定されている。このため、弁体5が雌ねじ部66に接続される際には、第二当接面55cと溝部67の内面との間に、軸線L方向の隙間が生じるようになっている。また、弁体5が雌ねじ部66に接続される際には、雌ねじ部66が接続爪部55bの基端部に当接しないようになっている。すなわち、弁体5は、軸線L方向および軸線Lと直交する方向のいずれにも、ガタをもって雌ねじ部66に接続されている。
【0028】
位置決め部7は、図3および図4に示すように、第1状態にある弁体5の第一当接部54と当接する第一位置決め部70と、第2状態にある弁体5の第二当接部55と当接する第二位置決め部71と、を備えている。第一位置決め部70は、弁本体2の底部20における駆動部6側の面で構成されている。第二位置決め部71は、ガイド部64の入口ポート20a側の端部で構成されている。第二位置決め部71は、第二当接部55と当接した際に弁体5を弁座部4に向かって付勢する付勢部71aを有して形成されている。付勢部71aは、ガイド部64の入口ポート20a側の面を構成する傾斜面である。この付勢部71aは、軸線Lに直交する方向に対する傾きが、第二当接面55cの当該方向に対する傾きよりも所定の角度θ2分大きく形成されている。本実施形態では、角度θ2は、2°に設定されている。この付勢部71aには、第二当接面55cが当接するようになっている。
【0029】
そして、本実施形態のスライド式切換弁1では、位置決め部7に当接部53が当接した際に、逃がし空間Sが生じるようになっている。この逃がし空間Sは、シール部51とシール面43との摺接等によって生じた異物を、位置決め部7と当接部53との間に挟まらないように逃がして収容するための空間である。具体的には、第1状態では、図3に示すように、第一当接部54と、弁体本体50の外周壁と、シール面43と、で囲まれる部分に逃がし空間Sが形成されている。第2状態では、第二当接部55と、弁体本体50の外周壁と、シール面43と、で囲まれる部分に逃がし空間Sが形成されている。このように、逃がし空間Sは、位置決め部7に当接した当接部53と、シール面43との間に形成されるようになっている。
【0030】
このような構成のスライド式切換弁1は、入口ポート20aおよび入口接続流路20bを介して圧縮機の吐出口と接続される。また、出口ポート41および出口ハウジング流路33を介して圧縮機の吸入口と接続される。また、第1ポート40および第1ハウジング流路32を介して蒸発器(又は凝縮器)と接続される。さらに、第2ポート42および第2ハウジング流路34を介して凝縮器(又は蒸発器)と接続される。弁室27には、入口ポート20aを介して圧縮機で圧縮された高圧の冷媒が流入する。弁室27内の冷媒は、第1ポート40又は第2ポート42の一方を介して弁室27外に送り出され、第1ポート40又は第2ポート42の他方を介して再び弁室27内に戻った後、出口ポート41を介して圧縮機に送られる。
【0031】
このようなスライド式切換弁1において、弁体5は、弁本体2の軸線L方向にスライドして冷媒の流路を切り換える。先ず、駆動部6を駆動し弁体5を入口ポート20a側にスライドさせると、第一当接部54が第一位置決め部70に当接して第1状態となる。この際、弁室27内は、高圧の冷媒により高圧となる一方、各ポート40、41は低圧となっている。この状態でさらに弁体5を入口ポート20a側にスライドさせようとすると、弁体5にかかるスライド方向の力が溝部67の溝内駆動部6側の内面から接続爪部55bの第二当接面55c(傾斜面)に作用することによるシール面43方向への付勢力と、ばね部52の付勢力と、弁室27内と弁体本体50内の圧力差と、によりシール部51がシール面43に押し付けられる。これにより、弁体5と弁座部4とのシールが確実に行われる。この状態では、入口ポート20aと第2ポート42とが連通され、弁室27内の冷媒は、第2ハウジング流路34を介して凝縮器(又は蒸発器)に送られる。また、第1ポート40と出口ポート41とが連通され、第1ハウジング流路32を介して蒸発器(又は凝縮器)から戻ってきた冷媒が、出口ハウジング流路33を介して圧縮機に送られる。
【0032】
次に、駆動部6を駆動し弁体5を駆動部6側にスライドすると、第二当接部55が第二位置決め部71の付勢部71aに当接して第2状態となる。この際の弁室27内と弁体本体50内の圧力差は、第1状態と同様である。この状態でさらに弁体5を駆動部6側にスライドさせようとすると、弁体5にかかるスライド方向の力が第二当接面55c(傾斜面)から付勢部71a(傾斜面)に作用することによるシール面43方向への付勢力と、ばね部52の付勢力と、弁室27内と弁体本体50内の圧力差と、によりシール部51が、シール面43に押し付けられる。これにより、弁体5と弁座部4とのシールが確実に行われる。この状態では、入口ポート20aと第1ポート40とが連通され、弁室27内の冷媒は、第1ハウジング流路32を介して蒸発器(又は凝縮器)に送られる。また、第2ポート42と出口ポート41とが連通され、第2ハウジング流路34を介して凝縮器(又は蒸発器)から戻ってきた冷媒が、出口ハウジング流路33を介して圧縮機に送られる。
【0033】
上述した実施形態によれば、位置決め部7に当接した当接部53とシール面43との間に形成された逃がし空間Sに異物を逃がし収めることができることから、位置決め部7と当接部53との間に異物が挟まりにくくでき、弁体5の位置精度を高めることができる。これにより、弁体5の位置が正規の位置からずれることによって生じる弁漏れや、圧力損失による冷媒の流量不足などの発生を防止し、冷凍サイクルシステムを稼働する際のエネルギー損失を回避することができる。また、弁体5が、軸線L方向にスライドするように設けられていることで、当接部53と位置決め部7とをスライド方向に当接させるストッパとすることができる。これにより、軸線Lの周方向にストッパが当接する構成に比べて、弁体5等の起点を決める際のストッパの衝突音を抑制することができる。したがって、スライド式切換弁1の静音化を図ることができる。
【0034】
また、駆動部6に直動機構63を設けたことにより、ステッピングモータ60の回転を弁体5のスライド運動に変換することができる。また、ステッピングモータ60駆動とすることで、高速でピストン駆動される弁体がストッパに衝突する一般的な電磁式ピストン駆動のスライド式切換弁と比較すると、ストッパの衝突音を格段に低減することができる。また、ステッピングモータ60は、パルス印加時に励磁速度を下げることにより、回転速度を落とすことが容易にできるため、ステッピングモータ60駆動とすることで、当接部53が位置決め部7に当接する際の弁体5の速度を落とすことが容易になり、前記ストッパの衝突音をさらに低減することができる。また、直動機構63を構成する雄ねじ部65および雌ねじ部66を多条ねじとしたので、一条ねじの場合と比較して、リード角が大きくなり、マグネットロータ61の1回転当たりの弁体移動量を大きくできるため、弁位置切換えに要する時間を短くすることができる。
【0035】
そして、雌ねじ部66を弁体5にガタをもって接続するようにしたことで、弁体5はスライド方向およびスライド方向に交差する方向のいずれにも移動するゆとりが生じる。これにより、弁体5は、駆動部6と弁座部4の位置精度および寸法精度に捉われずに機能するので、駆動部6の駆動力を弁体5に適切に伝達することができる。また、雌ねじ部66の外周壁をガイド部64の内周壁に摺接するようにしたことで、雌ねじ部66を、回転を規制しつつ進退案内することができる。さらに、付勢部71aを設けたことで、弁体5をスライド方向に移動する力を調整するだけで、傾斜面による作用により弁体5を弁座部4側に押し付けることができる。これにより、弁体5がシール面43から浮いてしまうことを防止し、弁体5のシール性能を確保することができる。また、弁体5を、ガタなく雌ねじ部66に固定した場合に比べて、弁体5とシール面43との位置精度を高くしなくても、弁体5のシール性能を確保することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、雄ねじ部65の軸線の位置は、軸線Lと重なるように調整したが、雄ねじ部65の位置はこれに限られない。雄ねじ部65の軸線は、軸線Lと重なっていなくてもよい。同様に、雌ねじ部66および弁体5も、軸線Lと同軸に配置される必要はない。上述の通り、弁体5とシール面43との位置精度を高くしなくても、弁体5のシール性能を確保することができるためである。また、本実施形態では、弁体5と雌ねじ部66との接続は、接続爪部55bおよび溝部67を介して行うこととしたが、弁体5と雌ねじ部66の接続構造はこれに限られない。例えば、雌ねじ部66における弁座部4と対向する部分に、軸線Lと直行する方向に貫通する貫通孔を設け、接続爪部55bの代わりに貫通孔に挿入可能な突起を形成してもよい。
【0037】
また、接続爪部55bに相当する部分の形状は、楔形に限られない。接続爪部55bに相当する部分が、雌ねじ部66に対してガタをもって接続できる形状であれば、例えば、棒状などの形状であってもよい。また、本実施形態では、付勢部71aは、ガイド部64の入口ポート20a側の面に設けたが、付勢部71aの配置や形状は、適宜変更することができる。例えば、付勢部71aは、第一位置決め部70にも設けることができるし、位置決め部7でなく、当接部53に設けてもよい。すなわち、付勢部71aは、位置決め部7及び当接部53の少なくとも一方に設けられていればよい。また、付勢部71aは、傾斜面とせず、湾曲面としてもよい。例えば、弁体5における弁体本体50の湾曲した側壁を利用して付勢部71a(当接部53)とし、この付勢部71a(当接部53)に向けて弁本体2の底部20又はガイド部64から軸線L方向の弁体側に延びる棒状の位置決め部7に当接させる構造とすることもできる。
【0038】
また、本実施形態では、位置決め部7を弁本体2及びガイド部64に設けたが、位置決め部7の配置は、これに限られない。例えば、位置決め部7を弁座部4に設けてもよい。弁本体2、弁座部4および駆動部6の少なくとも一つに位置決め部7が設けられていればよい。
【0039】
そして、本実施形態では、当接部53は、板状に突出しているが、例えば、一又は複数の突起で当接部53を構成してもよい。また、本実施形態では、弁体5を付勢するばね部52を設置したが、ばね部52は省略してもよい。上述のように、弁室27内には、圧力差があることから、弁室27内と弁体本体50内の圧力差と、付勢部71aの付勢力とで、弁体5を付勢できるからである。
【0040】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 スライド式切換弁
2 弁本体
4 弁座部
40 第1ポート(複数の弁ポート)
41 出口ポート(複数の弁ポート)
42 第2ポート(複数の弁ポート)
43 シール面
5 弁体
51 シール部
53 当接部
6 駆動部
7 位置決め部
S 逃がし空間
L 軸線
図1
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図3
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図5
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図8