(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
B60K11/04 E
(21)【出願番号】P 2021085295
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一隆
(72)【発明者】
【氏名】奥本 泰典
(72)【発明者】
【氏名】武岡 達
(72)【発明者】
【氏名】金尾 勇作
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-343219(JP,A)
【文献】特開2005-232911(JP,A)
【文献】登録実用新案第3097684(JP,U)
【文献】特開2004-027664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04 - 11/06
E06B 9/00 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、
前記ファンを囲むように形成され、空気を案内するファンシュラウドと、
可撓性を有し、前記ファンシュラウドへと空気を案内する整流板と、
を具備し、
前記整流板は、
前記ファンシュラウドよりも前方に配置される第一部材
と、前記ファンシュラウド、又は前記ファンシュラウドよりも後方に配置され、前記第一部材とは異なる第二部材
と、に対して着脱可能に係合される着脱部を具備し、
外力により、前記着脱部が前記第一部材に取り付けられた第一状態と、前記着脱部が前記第二部材に取り付けられた第二状態と、に弾性変形可能に形成されており、
前記着脱部は、
前記整流板を厚さ方向に貫通するように形成され、
前記第一部材は、
前記厚さ方向に延出し、前記着脱部に含まれる第一の孔部に挿通されることで、前記整流板に対して係合する第一係合部材と、
前記厚さ方向に延出する第一延出部分と、前記第一延出部分の延出方向先端部から前記厚さ方向に対して直交する方向に延出する第二延出部分と、を有し、前記第一延出部分及び前記第二延出部分が、前記着脱部に含まれる第二の孔部に挿通されることで前記整流板に対して係合する第二係合部材と、
を含む、
作業車。
【請求項2】
前記整流板は、
平板状に形成され、他の部材に固定される第一平板部と、
前記着脱部が形成され、前記第一平板部に対して垂直な方向に延びる平板状に形成される第二平板部と、
を具備
し、
第一平板部及び第二平板部が弾性変形可能に形成されている、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記第一平板部は、
前記ファンシュラウドに固定される、
請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記着脱部は、
第一着脱部と、
前記第一着脱部とは異なる部分に形成される第二着脱部と、
を具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記整流板は、
前記第一着脱部が前記第一部材に取り付けられた前記第一状態において、コンデンサを側方から覆い、
前記第二着脱部が前記第二部材に取り付けられた前記第二状態において、前記コンデンサを側方に露出させる、
請求項
4に記載の作業車。
【請求項6】
前記第二係合部材は、
固定対象に固定される固定部分を有し、
前記第一係合部材は、
前記固定部分に設けられる、
請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記第二延出部分は、
前記直交する方向において、当該整流板の内側を向くように
延出する、
請求項5又は請求項6に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンシュラウドへ空気を案内する整流板を具備する作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンシュラウドへ空気を案内する整流板を具備する作業車は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のトラクタは、ボンネット内に配置されるバッテリ等の部材が載置される支持部材と、支持部材に立設される左右一対の整流板を具備する。この整流板によって、ボンネット内の空気の流れを整えることができる。
【0004】
また特許文献1に記載の整流板は、支持部材から任意に脱着することができる。例えばボンネット内の掃除や点検等のメンテナンス作業等を行う際には、機体から整流板を取り外すことで、作業のスペースを確保することができる。
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、各種作業を行う作業者は、機体から取り外した整流板を手で持ったまま作業を行う、若しくは、作業の邪魔にならない場所に整流板を保管した上で作業を行う必要がある。このように、機体から整流板を取り外す構成としたことによって、作業性が損なわれる可能性がある点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、整流板を作業車から取り外すことなく作業を行うことが可能な作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、ファンと、前記ファンを囲むように形成され、空気を案内するファンシュラウドと、可撓性を有し、前記ファンシュラウドへと空気を案内する整流板と、を具備し、前記整流板は、前記ファンシュラウドよりも前方に配置される第一部材と、前記ファンシュラウド、又は前記ファンシュラウドよりも後方に配置され、前記第一部材とは異なる第二部材と、に対して着脱可能に係合される着脱部を具備し、外力により、前記着脱部が前記第一部材に取り付けられた第一状態と、前記着脱部が前記第二部材に取り付けられた第二状態と、に弾性変形可能に形成されており、前記着脱部は、前記整流板を厚さ方向に貫通するように形成され、前記第一部材は、前記厚さ方向に延出し、前記着脱部に含まれる第一の孔部に挿通されることで、前記整流板に対して係合する第一係合部材と、前記厚さ方向に延出する第一延出部分と、前記第一延出部分の延出方向先端部から前記厚さ方向に対して直交する方向に延出する第二延出部分と、を有し、前記第一延出部分及び前記第二延出部分が、前記着脱部に含まれる第二の孔部に挿通されることで前記整流板に対して係合する第二係合部材と、を含むものである。
【0010】
請求項2においては、前記整流板は、平板状に形成され、他の部材に固定される第一平板部と、前記着脱部が形成され、前記第一平板部に対して垂直な方向に延びる平板状に形成される第二平板部と、を具備し、第一平板部及び第二平板部が弾性変形可能に形成されているものである。
【0011】
請求項3においては、前記第一平板部は、前記ファンシュラウドに固定されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記着脱部は、第一着脱部と、前記第一着脱部とは異なる部分に形成される第二着脱部と、を具備するものである。
【0013】
請求項5においては、前記整流板は、前記第一着脱部が前記第一部材に取り付けられた前記第一状態において、コンデンサを側方から覆い、前記第二着脱部が前記第二部材に取り付けられた前記第二状態において、前記コンデンサを側方に露出させるものである。
【0014】
請求項6においては、前記第二係合部材は、固定対象に固定される固定部分を有し、前記第一係合部材は、前記固定部分に設けられるものである。
【0015】
請求項7においては、前記第二延出部分は、前記直交する方向において、当該整流板の内側を向くように延出するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、整流板を作業車から取り外すことなく作業を行うことができる。また、ファンシュラウドの前方に位置する部材のメンテナンス作業等を行い易くすることができる。
【0018】
請求項2においては、整流板の強度を向上させることができる。
【0019】
請求項3においては、ファンシュラウドへ空気を案内し易くすることができる。
【0020】
請求項4においては、着脱部の劣化を抑制することができる。
【0021】
請求項5においては、コンデンサのメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0022】
請求項6においては、部材の取り付けの作業性を向上させることができる。
【0023】
請求項7においては、整流板を外れ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタを示した側面図。
【
図2】ボンネット内の構成を示した一部側面断面図。
【
図3】(a)同じく、斜視図。(b)
図3(a)に示す部分A1を示す拡大後方斜視図。
【
図5】(a)上側板状部材を示す斜視図。(b)同じく、側面図。
【
図6】(a)下側板状部材を示す斜視図。(b)同じく、側面図。
【
図7】(a)整流板を示す正面図。(b)同じく、側面図。
【
図8】(a)整流板をファンシュラウドの爪部に係合させた状態を示す斜視図。(b)
図8(a)に示す部分A2を示す拡大後方斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0026】
まず、
図1を用いて本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0027】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、ボンネット4、トランスミッションケース5、前輪6、後輪7、フェンダ8、昇降装置9、キャビン10、座席11及びステアリングホイール12等を具備する。
【0028】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に配置される。機体フレーム2の後部にはエンジン3が固定される。エンジン3は、ボンネット4に覆われる。エンジン3の後部には、トランスミッションケース5が固定される。
【0029】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪6に支持される。トランスミッションケース5の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。左右一対の後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0030】
トランスミッションケース5の後部には、昇降装置9が設けられる。昇降装置9には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。昇降装置9は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。当該昇降装置9には、図示せぬPTO軸を介してエンジン3の動力を伝達することができる。
【0031】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース5に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置9に装着された作業装置を駆動させることができる。
【0032】
エンジン3の後方にはキャビン10が設けられる。キャビン10の内部には、運転者が搭乗する居住空間が形成される。キャビン10の略中央には、運転者が着座するための座席11が配置される。キャビン10の前部には、前輪6の切れ角を調節するためのステアリングホイール12が配置される。また、キャビン10には、前記居住空間に空調空気を送るためのエアコンユニット(不図示)が設けられる。
【0033】
以下では、
図2から
図4を参照して、ボンネット4内の各部材の配置について説明する。
【0034】
ボンネット4内には、エンジン3、DPF21、エアクリーナ22、載置部23、バッテリ24、レシーバ25、コンデンサ26、横部材27、ラジエータ28、ファンシュラウド29、ファン30及び整流板100等が配置される。なお、
図2では、整流板100を想像線(二点鎖線)で記載している。
【0035】
エンジン3は、ボンネット4の後部に配置される。エンジン3は、機体フレーム2に支持される。
【0036】
DPF(Diesel Particulate Filter)21は、エンジン3から排出される排気ガス中のPMを捕集するためのものである。DPF21は、エンジン3の上方に配置される。DPF21は、配管21aを介してエンジン3と接続される。
【0037】
エアクリーナ22は、空気を除塵してエンジン3へと送るためのものである。エアクリーナ22は、ボンネット4の前部に配置される。エアクリーナ22は、配管22aを介してエンジン3と接続される。
【0038】
載置部23は、後述するバッテリ24等が載置される平板状の部材である。載置部23は、板面を上下に向けた状態で機体フレーム2に固定される。
【0039】
バッテリ24は、トラクタ1の給電対象(例えば、エアコンユニットや作業灯等)へ電力を供給するためのものである。バッテリ24は、載置部23に載置され、ボンネット4の前部に配置される。
【0040】
レシーバ25は、エアコンユニットの冷媒を貯溜するためのものである。レシーバ25は、中空の略円柱状に形成される。レシーバ25は、所定の部材(不図示)を介して後述するコンデンサ26に固定され、バッテリ24の後方に配置される。
【0041】
コンデンサ26は、エアコンユニットの冷媒を冷却するためのものである。コンデンサ26は、レシーバ25の後方に配置され、当該レシーバ25と配管(不図示)を介して接続される。コンデンサ26は、ネット26aを具備する。ネット26aは、塵や埃等からコンデンサ26を保護するためのものである。ネット26aは、コンデンサ26を前方から覆うように設けられる。
【0042】
横部材27は、水平方向(左右方向)へ延出する略長尺状の部材である。横部材27は、エアクリーナ22を支持する支持部材(不図示)に固定され、エアクリーナ22の後方に配置される。
【0043】
ラジエータ28は、エンジン3の冷却水を冷却するためのものである。ラジエータ28は、コンデンサ26の後方に配置される。ラジエータ28は、ネット28aを具備する。ネット28aは、塵や埃等からラジエータ28を保護するためのものである。ネット28aは、ラジエータ28を前方から覆うように設けられる。
【0044】
ファンシュラウド29は、前方から後方へと空気を案内するものである。ファンシュラウド29には、前後に貫通する貫通孔(不図示)が形成される。当該貫通孔内に後述するファン30が配置されることで、ファンシュラウド29は、後述するファン30を外周側から囲むように形成される。ファンシュラウド29は、ラジエータ28の後方に配置される。
【0045】
ファン30は、後方へと空気を送るものである。ファン30は、エンジン3のシャフト3aと連結される。ファン30は、シャフト3a等を介してエンジン3からの動力が伝達されて駆動する。
【0046】
整流板100は、ファンシュラウド29へ空気を案内するためのものである。整流板100は、後述する取付構造40によりボンネット4内に設けられる。整流板100は、左右一対設けられ、ボンネット4の左部及び右部(コンデンサ26及びラジエータ28の左右外側方)に配置される。取付構造40及び整流板100の構成については後述する。
【0047】
上述のようなボンネット4内には、ファン30の駆動に伴って空気(外気)が導入される。当該空気は、ボンネット4内を前方から後方へと流通する。この際、整流板100は、コンデンサ26及びラジエータ28を通過するように空気を案内すると共に、コンデンサ26等を通過した空気をファンシュラウド29へ案内する。以下では、
図2から
図8を参照して、取付構造40及び整流板100の構成を説明する。
【0048】
取付構造40は、左右一対設けられ、ボンネット4の左部及び右部に整流板100をそれぞれ取り付けるものである。取付構造40は、互いに左右対称となるように構成される。以下では、左側の取付構造40を例に挙げて取付構造40の構成を説明し、右側の取付構造40についての説明を省略する。
図2及び
図4に示すように、取付構造40は、第一ピン50、上側板状部材60、第二ピン70、下側板状部材80及び爪部90を具備する。
【0049】
図2、
図4及び
図5に示すように、第一ピン50は、整流板100の上端部を取り付けるためのものである。第一ピン50は、軸線方向を左右方向に向けると共に、フランジ状に形成された頭部が左右外側を向くように配置される。第一ピン50は、後述する上側板状部材60に固定され、当該上側板状部材60を介して横部材27に固定される。こうして第一ピン50は、ファンシュラウド29よりも前方に配置される。なお、
図5(a)では、第一ピン50等に整流板100が取り付けられていない状態を示している。また、
図5(b)では、第一ピン50等に整流板100が取り付けられた状態を示している。
【0050】
上側板状部材60は、整流板100の上端部を取り付けるための板状の部材である。上側板状部材60は、横部材27の左右外側端部に固定される。こうして上側板状部材60は、ファンシュラウド29よりも前方に配置される。上側板状部材60は、第一部分61、第二部分62及び第三部分63を具備する。
【0051】
第一部分61は、上側板状部材60の上部である。第一部分61は、板面を左右方向へ向けて配置される。第一部分61は、横部材27に固定される。第二部分62は、上側板状部材60の上下中途部である。第二部分62は、板面を上下方向へ向けると共に、第一部分61の下端部から左右外側方へ延出するように形成される。第三部分63は、上側板状部材60の下部である。第三部分63は、板面を左右方向へ向けると共に、第二部分62の左右外側端部から下方へ延出するように形成される。第二部分62及び第三部分63は、後述する整流板100の第二孔部102bに挿通可能に構成される。
【0052】
図2に示す第二ピン70は、整流板100の上下中途部を取り付けるためのものである。第二ピン70は、コンデンサ26の左右外側面に固定される点を除いて第一ピン50と略同様に構成される。当該第二ピン70は、ファンシュラウド29よりも前方に配置される。また、第二ピン70は、コンデンサ26の上下中途部に配置される。
【0053】
図2、
図4及び
図6に示す下側板状部材80は、整流板100の下部を取り付けるための板状の部材である。下側板状部材80は、載置部23に固定され、側面視でコンデンサ26及びラジエータ28の間(ファンシュラウド29よりも前方)に配置される。なお、
図6(a)では、下側板状部材80に整流板100が取り付けられていない状態を示している。また、
図6(b)では、下側板状部材80に整流板100が取り付けられた状態を示している。下側板状部材80は、第一部分81、第二部分82及び第三部分83を具備する。
【0054】
第一部分81は、下側板状部材80の下部である。第一部分81は、板面を左右方向へ向けると共に、載置部23から立ち上がるように形成される。第二部分82は、下側板状部材80の上下中途部である。第二部分82は、板面を上下方向へ向けると共に、第一部分81の上端部から左右外側方へ延出するように形成される。第三部分83は、下側板状部材80の上部である。第三部分83は、板面を左右方向へ向けると共に、第二部分82の左右外側端部から上方へ延出するように形成される。第二部分82及び第三部分83は、後述する整流板100の第五孔部102eに挿通可能に構成される。
【0055】
図3に示す爪部90は、整流板100の上下中途部を取り付けるための部分である。爪部90は、ファンシュラウド29の上下中途部に設けられる。爪部90は、ファンシュラウド29から左右外側方へ延出する部分と、ファンシュラウド29から後方へ延出する部分と、を有する平面視略L字状に形成される。また、爪部90は、背面視で開口部を右方へ向けた略U字状に形成される。
【0056】
図3及び
図4に示す整流板100は、ファンシュラウド29へ空気を案内するためのものである。整流板100は、左右一対設けられ、互いに左右対称となるように構成される。以下では、左側の整流板100を例に挙げて整流板100の構成を説明し、右側の整流板100についての説明を省略する。整流板100は、可撓性を有する板状の部材によって構成される。整流板100は、例えば、外力により容易に弾性変形可能な材料(ゴム等)により構成される。また、整流板100は、外力が加わらない場合に、略L字状(後端部を左方へ屈曲させたような形状、
図4参照)となるように成形される。以下では、
図3、
図4及び
図7に示す状態を基準に整流板100の構成を説明する。整流板100は、コンデンサ26及びラジエータ28の左右外側方に配置される。整流板100は、第一板部101及び第二板部102を具備する。
【0057】
第一板部101は、長手方向を上下方向に向けた略平板状に形成される。第一板部101は、板面を略前後方向に向けて配置される。第一板部101は、固定孔101aを具備する。固定孔101aは、第一板部101を前後に貫通する孔である。固定孔101aは、正面視略円状に形成される。固定孔101aは、上下に間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)形成される。
【0058】
第二板部102は、略平板状に形成される。第二板部102は、板面を左右方向に向けて配置される。第二板部102は、第一板部101の左右内側端部から前方へ延出するように形成される。
図7(b)に示すように、第二板部102は、第一孔部102a、第二孔部102b、第三孔部102c、第四孔部102d及び第五孔部102eを具備する。
【0059】
第一孔部102aは、整流板100を第一ピン50に取り付けるための孔である。第一板部101は、第二板部102の前上端部を左右に貫通するように形成される。第一孔部102aは、長手方向を上下方向に向けた側面視略トラック状に形成され、第一ピン50に対して着脱可能(係合可能)に構成される。
【0060】
第二孔部102bは、整流板100を上側板状部材60に取り付けるための孔である。第二板部102は、第二板部102を左右に貫通するように形成される。第二孔部102bは、長手方向を前後方向に向けた側面視略矩形状に形成され、上側板状部材60に対して着脱可能(係合可能)に構成される。第二孔部102bは、第一孔部102aの下方に形成される。
【0061】
第三孔部102cは、整流板100を爪部90に取り付けるための孔である。第三孔部102cは、第二板部102の上下中途部を左右に貫通するように形成される。第三孔部102cは、側面視略正方形状に形成され、爪部90に対して着脱可能(係合可能)に構成される。
【0062】
第四孔部102dは、整流板100を第二ピン70に取り付けるための孔である。第四孔部102dは、第二板部102の上下中途部を左右に貫通するように形成される。第四孔部102dは、長手方向を前後方向に向けた側面視略トラック状に形成され、第二ピン70に対して着脱可能(係合可能)に構成される。第四孔部102dは、第三孔部102cの下方に形成される。
【0063】
第五孔部102eは、整流板100を下側板状部材80に取り付けるための孔である。第五孔部102eは、第二板部102の下端部を左右に貫通するように形成される。第五孔部102eは、長手方向を前後方向に向けた側面視略矩形状に形成され、下側板状部材80に対して着脱可能(係合可能)に構成される。
【0064】
上述の如く構成される整流板100は、第一板部101の固定孔101aにピンPが挿通されることにより、ファンシュラウド29の前側面における左右外側端部に固定される(
図3参照)。こうして第二板部102は、ファンシュラウド29から前方へ延出するように設けられる。当該第二板部102の第一孔部102aは、側面視で第一ピン50と重複する位置に配置される(
図4及び
図7(b)参照)。また、第二孔部102bは、側面視で上側板状部材60と重複する位置に配置される。また、第四孔部102dは、側面視で第二ピン70と重複する配置に配置される。また、第五孔部102eは、側面視で下側板状部材80と重複する配置に配置される。
【0065】
また、整流板100は、第一板部101がファンシュラウド29に固定されることで、当該第一板部101を支点として撓む(弾性変形する)ことができる。当該整流板100は、撓むことで使用状態及び非使用状態に切り替え可能に構成される。以下では、使用状態及び非使用状態について説明する。
【0066】
図3及び
図7に示すように、使用状態は、整流板100が第一ピン50、上側板状部材60、第二ピン70及び下側板状部材80と係合され(第一ピン50等に取り付けられ)、第二板部102がコンデンサ26等の側方に位置する状態である。整流板100は、後述するメンテナンス作業を行わない場合に使用状態に切り替えられる。使用状態の整流板100は、第二板部102の板面が左右方向を向くように配置される。当該第二板部102には、第一ピン50等が挿通される。
【0067】
具体的には、
図3及び
図5(b)に示すように、第二板部102の第一孔部102aには、第一ピン50の軸部が挿通される。こうして第二板部102は、第一ピン50の頭部に引っ掛けられ、当該第一ピン50に係合される。
【0068】
また、第二板部102の第二孔部102bには、上側板状部材60の第二部分62が挿通される。こうして第二板部102は、上側板状部材60に引っ掛けられ、当該上側板状部材60と係合される。
【0069】
また、第四孔部102dには、第二ピン70の軸部が挿通される。こうして第二板部102は、第二ピン70の頭部に引っ掛けられ、当該第二ピン70に係合される。
【0070】
また、
図6(b)に示すように、第五孔部102eには、下側板状部材80の第二部分82が挿通される。こうして第二板部102は、下側板状部材80に引っ掛けられ、当該下側板状部材80と係合される。
【0071】
このように、第二板部102は、第一ピン50等と係合され、使用状態の姿勢で保持される。
【0072】
図3に示すように、使用状態における整流板100の第二板部102は、板面を左右方向に向けた状態で、コンデンサ26及びラジエータ28の左右外側方に配置される。こうして整流板100は、コンデンサ26及びラジエータ28を左右外側方から覆う(側面視で重複する)ように配置される。当該整流板100により、コンデンサ26及びラジエータ28を通過するように、ボンネット4内に流入した空気を案内することができる。
【0073】
また、取付構造40では、使用状態の整流板100(第二板部102)の上端部から下端部に亘る複数箇所(上部、中途部、下部)を支持している。これにより、使用状態の整流板100の姿勢を安定させることができる。
【0074】
また、
図5に示すように、上側板状部材60の第三部分63は、第二部分62に対して下方へ延出するように形成されている。こうして上側板状部材60(第三部分63)を下に向けることで、ボンネット4内を流通する空気により使用状態の整流板100(第二板部102の上下中途部)が左右外側に膨らんで上側板状部材60から外れようとするのを、効果的に押さえることができる。また、
図6に示すように、下側板状部材80の第三部分83は、第二部分82に対して上方へ延出するように形成されている。こうして下側板状部材80(第三部分83)を上に向けることで、ボンネット4内を流通する空気により使用状態の整流板100(第二板部102の上下中途部)が左右外側に膨らんで上側板状部材60から外れようとするのを、効果的に押さえることができる。
【0075】
このように、上側板状部材60及び下側板状部材80を上下内側に向けることで、使用状態の整流板100を外れ難くすることができる。
【0076】
図8に示す非使用状態は、整流板100が爪部90と係合され(爪部90に取り付けられ)、コンデンサ26等の側方を開放した状態である。整流板100は、メンテナンス作業を行う場合等に、非使用状態に変更される。当該メンテナンス作業としては、コンデンサ26に取り付けられたネット26aを点検し、必要に応じて清掃する作業等がある。整流板100は、上述した第一ピン50等との係合が解除され、第二板部102が第一板部101を支点として後方へ曲げられたような姿勢となることで、使用状態から非使用状態へと切り替えられる。
【0077】
図8に示すように、当該整流板100の第二板部102の第三孔部102cには、爪部90が挿通される。こうして爪部90が第二板部102と係合することで、当該爪部90により第二板部102が元の形状(使用状態)へ戻ろうとするのを押さえることができる。非使用状態における整流板100は、コンデンサ26と側面視で重複しないように配置される。
【0078】
このように、本実施形態では、整流板100を非使用状態に切り替えることで、コンデンサ26を露出させて当該コンデンサ26のネット26a等を点検することができる。また、必要に応じて(例えば、ネット26aを清掃する場合に)、コンデンサ26を左右外側方へ引き出すことができる。こうして整流板100を取り外すことなくメンテナンス作業を行うことができる。これにより、取り外した整流板100を手で持ったままで作業を行ったり、整流板100を作業の邪魔にならない場所に保管する必要がなくなり、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0079】
また、爪部90により、整流板100を非使用状態で保持することができる。これにより、作業者は、使用状態へ戻ろうとする整流板100を手で押さえる必要がなくなり、メンテナンス作業をより効率的に行うことができる。
【0080】
また、非使用状態から使用状態へ切り替える際には、1箇所(爪部90及び第二板部102)の係合を解除すれば、第二板部102を前方へ(板面が左右を向くように)弾性変形させることができる。これにより、使用状態へ速やかに切り替えることができる。
【0081】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、ファン30と、前記ファン30を囲むように形成され、空気を案内するファンシュラウド29と、可撓性を有し、前記ファンシュラウド29へと空気を案内する整流板100と、を具備し、前記整流板100は、第一ピン50、上側板状部材60、第二ピン70及び下側板状部材80(第一部材)、並びに爪部90(前記第一部材とは異なる第二部材)に対して着脱可能な第一孔部102a、第二孔部102b、第三孔部102c、第四孔部102d及び第五孔部102e(着脱部)を具備するものである。
【0082】
このように構成することにより、所定の作業(例えば、コンデンサ26のネット26aを点検する作業等)を行う際に整流板100を弾性変形させることで、整流板100をトラクタ1から取り外すことなく作業を行うことができる。また、第一孔部102a等を第一ピン50や爪部90に対して任意に着脱することで、整流板100を所定の姿勢(例えば、弾性変形させた状態)で保持することができ、作業性を向上させることができる。
【0083】
また、前記整流板100は、平板状に形成され、他の部材に固定される第一板部101(第一平板部)と、前記第一孔部102a等が形成され、前記第一板部101に対して垂直な方向(前後方向)に延びる平板状に形成される第二板部102(第二平板部)と、を具備するものである。
【0084】
このように構成することにより、第一板部101をリブとして機能させ、整流板100の強度を向上させることができる。
【0085】
また、前記第一板部101は、前記ファンシュラウド29に固定されるものである。
【0086】
このように構成することにより、ファンシュラウド29へ空気を案内し易くすることができる。
【0087】
また、前記第一ピン50、上側板状部材60、第二ピン70及び下側板状部材80は、前記ファンシュラウド29よりも前方に配置されると共に、前記第一孔部102a、第二孔部102b、第四孔部102d及び第五孔部102eと係合可能に構成され、前記爪部90は、前記ファンシュラウド29、又は前記ファンシュラウド29よりも後方(本実施形態ではファンシュラウド29)に配置されると共に、前記第三孔部102cと係合可能に構成されるものである。
【0088】
このように構成することにより、爪部90と第三孔部102cとを係合させて、ファンシュラウド29の前方に位置する部材(例えば、コンデンサ26等)のメンテナンス作業等を行い易くすることができる。
【0089】
また、前記着脱部は、前記第一孔部102a、第二孔部102b、第四孔部102d及び第五孔部102e(第一着脱部)と、前記第一孔部102a等とは異なる部分に形成される第三孔部102c(第二着脱部)と、を具備するものである。
【0090】
このように構成することにより、第一孔部102a等が他の部材と係合する頻度を減らして(例えば、第一孔部102aが爪部90及び第一ピン50とそれぞれ係合するのを防止して)、第一孔部102a等の劣化を抑制することができる。
【0091】
また、前記整流板100は、前記第一孔部102a等が前記第一ピン50等に取り付けられた第一状態(
図3に示す使用状態)において、コンデンサ26を側方から覆い、前記第三孔部102cが前記爪部90に取り付けられた第二状態(
図8に示す非使用状態)において、前記コンデンサ26を側方に露出させるものである。
【0092】
このように構成することにより、コンデンサ26のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0093】
また、前記上側板状部材60及び下側板状部材80は、前記整流板100に挿通可能であり、当該整流板100の内側を向くように形成された第三部分63・83(挿通部)を含むものである。
【0094】
このように構成することにより、整流板100を外れ難くすることができる。
【0095】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一ピン50、上側板状部材60、第二ピン70及び下側板状部材80は、本発明に係る第一部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る爪部90は、本発明に係る第二部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一孔部102a、第二孔部102b、第三孔部102c、第四孔部102d及び第五孔部102eは、本発明に係る着脱部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一板部101は、本発明に係る第一平板部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第二板部102は、本発明に係る第二平板部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一孔部102a、第二孔部102b、第四孔部102d及び第五孔部102eは、本発明に係る第一着脱部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第三孔部102cは、本発明に係る第二着脱部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第三部分63・83は、本発明に係る挿通部の実施の一形態である。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0097】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0098】
また、取付構造40(第一ピン50、上側板状部材60、第二ピン70、下側板状部材80及び爪部90)は、左右対称に設けられたが、これに限定されるものではなく、左右非対称に設けられていてもよい。
【0099】
また、整流板100(第一板部101)は、ファンシュラウド29に固定されたが、整流板100が固定される部材は特に限定されるものではない。
【0100】
また、整流板100は、第一板部101及び第二板部102を具備するものとしたが、可撓性を有していれば整流板100の構成は特に限定されるものではなく、例えば、略平板状に形成されていても(第一板部101を具備しないものであっても)よい。また、整流板100は、左右対称に設けられたが、これに限定されるものではなく、左右非対称に設けられていてもよい。
【0101】
また、使用状態における整流板100は、上端部から下端部に亘る複数箇所が係合されたが、これに限定されるものではなく、1箇所のみが係合されてもよい。また、使用状態における整流板100と係合される部材は、第一ピン50等に限定されるものではなく、ファンシュラウド29よりも前方に設けられた適宜の部材と係合可能である。
【0102】
また、非使用状態における整流板100は、1箇所のみが係合されたが、これに限定されるものではなく、複数箇所が係合されてもよい。また、非使用状態における整流板100と係合される部材は、爪部90に限定されるものではなく、ファンシュラウド29と同一位置又は、当該ファンシュラウド29よりも後方に配置された適宜の部材と係合可能である。
【0103】
また、整流板100は、使用状態及び非使用状態で異なる孔部(使用状態では第一孔部102a等、非使用状態では第三孔部102c)が他の部材に係合されたが、これに限定されるものではなく、使用状態及び非使用状態で同一の孔部が係合されてもよい。すなわち、本発明に係る第一着脱部及び第二着脱部として共通の着脱部(孔部等)を使用することも可能である。例えば、整流板100に1つだけ孔部を設け、当該孔部を使用状態及び非使用状態のいずれにおいても他の部材と係合させてもよい。
【0104】
また、本実施形態においては、整流板100の上端部に挿通される上側板状部材60(第三部分63)を下向きに延設し、整流板100の下端部に挿通される下側板状部材80(第三部分83)を上向きに延設する構成とした。すなわち本実施形態では、第三部分63と第三部分83がそれぞれ整流板100の上下方向内側を向くように配置するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、第三部分63等の向きは任意に変更することが可能である。
【0105】
また、取付構造40では、整流板100の孔部(第一孔部102a等)を他の部材に係合させたが、整流板100を取り付ける構成は特に限定されるものではない。例えば、整流板100に形成された凸部を、他の部材の孔部に係合させてもよい。
【0106】
また、整流板100は、使用状態でコンデンサ26を側方から覆うと共に非使用状態でコンデンサ26を露出させるものとしたが(
図3及び
図8参照)、整流板100とコンデンサ26との位置関係は特に限定されるものではない。また整流板100は、コンデンサ26に限らず、その他の部材を使用状態において側方から覆い、非使用状態において露出させる配置とすることも可能である。すなわち、整流板100と他の部材との位置関係は、任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 トラクタ(作業車)
30 ファン
31 ファンシュラウド
100 整流板
102a 第一孔部(着脱部)
102b 第二孔部(着脱部)
102c 第三孔部(着脱部)
102d 第四孔部(着脱部)
102e 第五孔部(着脱部)