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特許7479360スラッジの水熱炭化および湿式酸化の方法およびシステム
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  • 特許-スラッジの水熱炭化および湿式酸化の方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】スラッジの水熱炭化および湿式酸化の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/08 20060101AFI20240426BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C02F11/08 ZAB
C02F11/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021518550
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 SE2019051187
(87)【国際公開番号】W WO2020112007
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】1851461-2
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517456923
【氏名又は名称】シー - グリーン テクノロジー エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルンドクビスト、フレドリク
(72)【発明者】
【氏名】オーデン、エリク
(72)【発明者】
【氏名】エーマン、フレドリク
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/222462(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/067055(WO,A1)
【文献】特表2018-520864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B09B1/00-5/00
B09C1/00-10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理プラントからのスラッジの水熱炭化の方法であって、
少なくとも1つの第1の蒸気留分を供給して前記スラッジを予熱して、予熱されたスラッジを得るステップと、
第2の蒸気留分を供給して前記予熱されたスラッジをさらに加熱して、加熱されたスラッジを得るステップと、
前記加熱されたスラッジを反応器内で水熱炭化(HTC)に供して、HTC処理されたスラリーを得るステップと、
前記HTC処理されたスラリーを酸化剤と混合して、湿式酸化されたスラリーを得るステップと、
前記湿式酸化されたスラリーをフラッシングに供して、前記第2の蒸気留分および予冷されたスラリーを得るステップと、
前記予冷されたスラリーを少なくとも1つのステップでフラッシングに供して、前記少なくとも1つの第1の蒸気留分および冷却されたスラリーを得るステップと、
前記冷却されたスラリーを液体留分と固体留分に分離するステップと、
前記液体留分をさらに処理するために前記廃水処理プラントにルーティングするステップとを含み、
前記第2の蒸気留分は、予熱されたスラッジをHTC反応の温度に加熱するために使用される、方法。
【請求項2】
前記HTC処理されたスラリーの温度は、180~250℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿式酸化されたスラリーの温度は、220~260℃である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の蒸気留分の温度は、190~240℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予熱されたスラッジをさらに加熱するステップは、少なくとも10℃の温度上昇をもたらす、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の蒸気留分の温度は、前記加熱されたスラッジの温度よりも9~40℃高い、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の蒸気留分の温度は、前記予熱されたスラッジの温度よりも25~75℃高い、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
スラッジは、自治体スラッジまたは産業スラッジである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記予冷されたスラリーは、少なくとも2つのステップでフラッシングに供されて、異なる温度の少なくとも2つの第1の蒸気留分が得られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記HTC処理されたスラリーを前記酸化剤と混合するステップと、前記湿式酸化されたスラリーをフラッシングにさらすステップとの間の滞留時間は、5~75分である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
廃水処理プラントからのスラッジの水熱炭化(HTC)のためのシステムであって、
HTC処理されたスラリーが得られるようにスラッジにHTCを行うための反応器(HTC反応器)と、
湿式酸化および冷却されたスラリーを液体留分と固体留分に分離するための分離装置と、
スラッジを前記HTC反応器にルーティングするためのスラッジルーティング装置であって、前記スラッジルーティング装置は、予熱装置および他の加熱装置を備え、前記他の加熱装置は、前記予熱装置の下流に配置される、スラッジルーティング装置と、
HTC処理されたスラリーを前記HTC反応器から前記分離装置にルーティングするためのスラリールーティング装置であって、前記スラリールーティング装置は、前記HTC処理されたスラリーを酸化剤と混合するためのミキサーと、第1および第2のフラッシング装置とを備え、前記ミキサーは、前記第1のフラッシング装置の上流に配置され、前記第2のフラッシング装置は、前記第1のフラッシング装置の下流に配置される、スラリールーティング装置と、
前記第1のフラッシング装置から前記他の加熱装置に蒸気をルーティングするための第1の蒸気ルーティング装置と、
前記第2のフラッシング装置から前記予熱装置に蒸気をルーティングするための第2の蒸気ルーティング装置と、
前記液体留分を前記分離装置から前記廃水処理プラントにルーティングするための液体留分ルーティング装置と
を備える、システム。
【請求項12】
前記スラリールーティング装置は、前記ミキサーと前記第1のフラッシング装置との間に配置された第2の反応器を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ミキサーは、前記第2の反応器の一部である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の反応器の体積は、前記HTC反応器の体積の5~30%である、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2のフラッシング装置は、異なる温度の蒸気留分を提供するために直列に配置された少なくとも2つのフラッシング容器を備え、
前記予熱装置は、直列に配置された少なくとも2つの蒸気ミキサーを備え、
前記第2の蒸気ルーティング装置は、前記スラッジを段階的に予熱できるように、前記少なくとも2つのフラッシング容器を前記少なくとも2つの蒸気ミキサーに接続する、請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラッジ、特に都市汚泥、または廃水処理プラントからの産業スラッジの水熱炭化の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラッジは、通常、自治体または産業廃水処理プラントでの廃水処理後に残るものである。自治体の廃水処理プラントは都市からの廃水を処理し、一方、産業廃水処理プラントは、例えばパルプ工場および製紙工場、工業的食品製造施設などの異なる産業プロセスからの排水を処理する。大規模な養豚などの畜産もまた、廃水およびスラッジのかなりの発生源である。本開示の実施形態は、これらすべての分野において有用であろう。
【0003】
廃水処理のための技術は、一般的なレベルで類似しているが、処理される廃棄物の流れの特性、基本設計、地域の要件、および環境問題に応じた特定の解決策を含む。スウェーデンの大規模なプラントでは、廃水処理プロセスは、多くの場合、機械的前処理と、それに続く一次(沈降)および二次(好気性)処理ステップとを含む。場合によっては、処理水中の残留問題物質、例えば薬物残留物、有毒有機物質などを除去するために、異なる形態の三次処理がまた適用される。小規模なプラントでは、これらの段階の1つ以上が、しばいば省略され得る。
【0004】
使用中のほとんどすべての廃水処理プラントは、処理する必要のあるスラッジを生成する。スラッジは、脱水後にプラントから直接回収するか(好気性スラッジ)、またはスラッジの一部を消化するバイオガスの生成のために最初に嫌気的に処理して、残りを嫌気性スラッジとして回収する。
【0005】
世界中の廃水処理プラントは、毎年数億メートルトンのスラッジを生成し、その量は急速に増加している。スウェーデンでは、1年当たりの乾燥固形物のトン(tDS/y)で表した総スラッジ量は、2010年に25万と報告されており、現在の数値は同じかそれ以上であると推定されている。したがって、スラッジの処理は社会にとって大きな課題であり、現在の解決策は高コストと関連しており、しばしば環境への悪影響も伴う。
【0006】
1986年から、欧州連合は、廃水スラッジの処理および処分を規制するいくつかの指令を採用し、例えば、埋め立て地としてのスラッジの使用、リンの回収、スラッジの焼却などの異なる側面に対処している。様々な指令は、個々の加盟国の国内法に反映されており、例えばスウェーデンでは、2005年から埋め立て地へのスラッジの廃棄が禁止されている。
【0007】
今日、廃水スラッジの主な用途は、農業および林業/造林での施肥、地盤建設プロジェクトおよび埋め立て地の被覆と修復のための植物土壌への混合、エネルギー回収を伴う焼却、化学物質の回収と肥料の生産、そして最後に埋め立て地であるが、スラッジが堆肥化などの特定の前処理を受けている場合に限る。
【0008】
有害な化学物質を破壊し、重金属を安全に取り扱うためのエネルギー回収および煙道ガスおよび灰の適切な処理を伴うスラッジの焼却は、依然として魅力的な代替手段である。しかしながら、スラッジの正確な組成は、流入する廃水の組成と廃水処理プラントのタイプに依存している。高濃度の有機成分および/または生物学的成分を含むスラッジは、一般的に脱水が困難である。含水量が非常に高いことが多いため、発電所で焼却した場合の正味発熱量は非常に低いか、またはさらには負となり、サポート燃料(多くの場合化石燃料)の追加が必要になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際出願公開第2017/111462号
【発明の概要】
【0010】
C-グリーンテクノロジーAB(C-Green Technology AB)は、水熱炭化(HTC)のステップを含むスラッジの処理のためのプロセスを開発した。
【0011】
多くの水熱炭化(HTC)システムの動作は、通常、例えば電気やガスの形態の、外部エネルギーの供給を必要とする。本発明者らは、スラッジのHTC処理における外部エネルギーの継続的な供給の必要性が、HTC処理の生成物(すなわち、HTC処理されたスラリー)を湿式酸化し、次いで湿式酸化されたスラリーをフラッシングに供して、未処理のスラッジをHTC反応の温度に加熱するために使用できる高温蒸気留分を得ることによって排除または少なくとも大幅に低減できることを見出した。これにより、酸化反応によって放出された熱が回収され、効率的な方法でプロセス内において使用される。HTC処理の下流で湿式酸化を実行するもう1つの利点は、HTC処理によって化学的酸素要求量(COD)が増加することであり、これは、湿式酸化プロセスで利用できる燃料が増えることを意味する。さらに、HTC処理されたスラリーは、入ってくるまたは予熱されたスラッジよりも温度が高く、温度が高いと、温度に依存する湿式酸化反応の速度が高くなる。特許文献1に開示された概念と比較して、本開示の概念は単純化されており、例えば、それはより複雑でない熱回収を可能にする。
【0012】
したがって、本開示の第1の態様として、廃水処理プラントからのスラッジの水熱炭化の方法であって、
少なくとも1つの第1の蒸気留分を有するスラッジを予熱して、予熱されたスラッジを得るステップと、
第2の蒸気留分を有する予熱されたスラッジをさらに加熱して、加熱されたスラッジを得るステップと、
加熱されたスラッジを反応器内で水熱炭化(HTC)に供して、HTC処理されたスラリーを得るステップと、
HTC処理されたスラリーを酸素ガスなどの酸化剤と混合して、湿式酸化されたスラリーを得るステップと、
湿式酸化されたスラリーをフラッシングに供して、第2の蒸気留分および予冷されたスラリーを得るステップと、
予冷されたスラリーを少なくとも1つのステップでフラッシングに供して、少なくとも1つの第1の蒸気留分および冷却されたスラリーを得るステップと、
冷却されたスラリーを液体留分と固体留分に分離するステップと、
液体留分をさらに処理するために廃水処理プラントにルーティング(routing)するステップとを含む、方法が提供される。
【0013】
上記の方法の湿式酸化により、液体留分のCODが減少し、廃水処理プラントでのCOD低減処理(通常は嫌気性処理)の負荷が減少する。さらに、湿式酸化は粒子状有機物質を消費し、これにより固体留分(通常は別の場所に輸送する必要がある)の体積が減少し、固体留分がリンおよび他の灰成分に富む。
【0014】
酸化剤は、好ましくは酸素ガスである。「酸素ガス」は、少なくとも80体積%の酸素、好ましくは少なくとも95体積%の酸素を含むガスを指す。したがって、ステップb)の「酸素ガスの添加」は、(空気の酸素含有量はわずか21体積%であるため)空気の添加をカバーしていない。空気の代わりに酸素ガスを使用する利点は、反応器により少ない不活性ガスが添加されることである。もう1つの利点は、より効率的な湿式酸化反応である。
【0015】
当業者によって理解されるように、この方法は連続的な方法である。
【0016】
本開示のスラッジは、好ましくは、廃水処理プラントからの自治体スラッジまたは産業スラッジである。
【0017】
予冷されたスラリーは、少なくとも2つのステップでフラッシング(flashing)に供されて、異なる温度の少なくとも2つの第1の蒸気留分を得ることができる。これらの少なくとも2つの第1の蒸気留分は、好ましくは予熱ステップでスラッジの連続加熱に使用される。一実施形態では、予冷されたスラリーは、少なくとも3つのステップ(例えば、3または4ステップ)でフラッシングに供されて、好ましくは予熱ステップでのスラッジの連続加熱に使用される異なる温度の少なくとも3つの第1の蒸気留分(例えば、3または4つの第1の蒸気留分)が得られる。
【0018】
スラッジの乾燥固形分(「全固形分」とも呼ばれる)は、通常、1~35%、例えば2~35%、例えば3~32%である。スラッジが嫌気性スラッジの場合、乾燥固形分は通常13~32%である。スラッジが好気性スラッジの場合、乾燥固形分は通常5~15%である。灰分は、通常、スラッジの乾燥重量の10~75%、例えば12~50%、例えば30~50%である。スラッジの高位発熱量(HHV)は、通常3.5~21MJ/kg、例えば6~17MJ/kg(乾燥重量)である。
【0019】
本開示の湿式酸化は、通常、スラリーの全エネルギー含有量を使用しない。それは、例えば、HTC処理されたスラリーの熱容量を5~50%、好ましくは5~25%、より好ましくは9~16%低減することができる。この方法で添加される酸化剤の量は、それに応じて適合させることができる。熱容量はボンベ熱量計で測定することができる。
【0020】
HTC処理は、スラッジの熱容量にわずかな影響しか及ぼさない。その結果、未処理スラッジの熱容量の50~95%、例えば75~95%、例えば84~91%が、通常、湿式酸化後に残る。
【0021】
本開示は、リン(P)の分離を容易にする。したがって、本開示のスラッジは、リンを、例えばスラッジの乾燥重量の0.5~9%、例えばスラッジの乾燥重量の1~9%、例えばスラッジの乾燥重量の1.5~9%の量で含んでいてもよい。
【0022】
本開示のスラッジは、好ましくは、炭素(C)を、例えばスラッジの乾燥重量の9~46%、例えばスラッジの乾燥重量の20~46%の量で含む。
【0023】
湿式酸化反応に十分な時間を得るために、HTC処理されたスラリーと酸化剤との混合物を反応器内に一定期間保持することができる。そのような反応器内における保持時間は、例えば5~40分、例えば5~20分とすることができる。そのような反応器の体積は、例えばHTC用の反応器の体積の5~30%、例えば5~20%とすることができる。
【0024】
酸化剤は、そのような反応器に直接添加することができる。そのような場合、反応器は向流または並流反応器または吸収塔とすることができる。しかしながら、湿式酸化反応のために反応器の上流のHTC処理されたスラリーに、例えばガスミキサーを使用して、酸化剤を加えることがより好ましい場合がある。
【0025】
酸化剤が酸素ガスである場合、それは、この方法で処理された乾燥スラッジ1トン当たり60~260kg、好ましくはこの方法で処理された乾燥スラッジ1トン当たり100~200kg、より好ましくはこの方法で処理された乾燥スラッジ1トン当たり110~150kgの量で添加することができる。
【0026】
反応器内における平均保持時間は、通常0.25~8時間、好ましくは0.5~2時間である。
【0027】
HTC処理されたスラリーの化学的酸素要求量(COD)は、通常少なくとも30g/l、好ましくは30~50g/l、より好ましくは35~45g/lである。
【0028】
HTC処理されたスラリーの温度は、通常180~250℃、好ましくは180~230℃である。より好ましくは、それは190~225℃である。
【0029】
湿式酸化は、HTC処理されたスラリーの温度を上昇させる。湿式酸化されたスラリーの温度は、例えば220~260℃、好ましくは230~250℃、より好ましくは235~245℃とすることができる。
【0030】
湿式酸化されたスラリーをフラッシングすることによって得られる高温蒸気留分である第2の蒸気留分の温度は、190~240℃、好ましくは200~230℃、より好ましくは210~220℃とすることができる。
【0031】
この第2の蒸気留分は、予熱されたスラッジの温度を上昇させる。第2の蒸気留分が使用される予熱されたスラッジをさらに加熱するステップは、例えば、少なくとも10℃(例えば、10~50℃)、好ましくは少なくとも15℃(例えば、15℃~50℃)、より好ましくは少なくとも20℃(例えば20~50℃)、例えば少なくとも25℃(例えば25~50℃)の温度上昇をもたらす可能性がある。
【0032】
第2の蒸気留分の温度は、通常、加熱されたスラッジの温度よりも9~40℃高い。好ましくは、それは10~35℃高く、例えば10~30℃高く、例えば10~21℃高い。
【0033】
さらに、第2の蒸気留分の温度は、通常、予熱されたスラッジの温度よりも25~75℃高い。好ましくは、それは30~70℃高く、より好ましくは40~60℃高い。
【0034】
第1の態様の他の実施形態は、以下の第2の態様についての議論から導き出すことができる。
【0035】
本開示の第2の態様として、廃水処理プラントからのスラッジの水熱炭化(HTC)のためのシステムであって、
HTC処理されたスラリーが得られるようにスラッジをHTCにさらすための反応器(HTC反応器)と、
湿式酸化および冷却されたスラリーを液体留分と固体留分に分離するための分離装置と、
スラッジをHTC反応器にルーティングするためのスラッジルーティング装置であって、スラッジルーティング装置は、予熱装置および他の加熱装置を含み、他の加熱装置は、予熱装置の下流に配置される、スラッジルーティング装置と、
HTC処理されたスラリーをHTC反応器から分離装置にルーティングするためのスラリールーティング装置であって、スラリールーティング装置は、HTC処理されたスラリーを酸化剤と混合するためのミキサーと、第1および第2のフラッシング装置とを含み、ミキサーは、第1のフラッシング装置の上流に配置され、第2のフラッシング装置は、第1のフラッシング装置の下流に配置される、スラリールーティング装置と、
第1のフラッシング装置から他の加熱装置に蒸気をルーティングするための第1の蒸気ルーティング装置と、
第2のフラッシング装置から予熱装置に蒸気をルーティングするための第2の蒸気ルーティング装置と、
液体留分を分離装置から廃水処理プラントにルーティングするための液体留分ルーティング装置とを含む、システムが提供される。
【0036】
当業者によって理解されるように、システムは連続プロセスに適合されており、HTC反応器は連続反応器である。
【0037】
酸化剤は好ましくは酸素ガスであり、ミキサーは好ましくは酸素ガスミキサーである。向流または並流反応器または吸収塔などの他のタイプの酸化装置もまた使用することができる。
【0038】
湿式酸化反応のための時間を提供するために、スラリールーティング装置は、ミキサーと第1のフラッシング装置との間に配置された第2の反応器を含むことができる。ミキサーはまた、第2の反応器の一部であってもよい。
【0039】
湿式酸化反応に必要な時間は通常、HTCプロセスに必要な時間よりも短いので、第2の反応器の体積は、HTC反応器の体積の5~30%、例えば5~20%とすることができる。
【0040】
第2のフラッシング装置は、異なる温度の蒸気留分を提供するために直列に配置された少なくとも2つ、例えば少なくとも3つのフラッシング容器を含むことができる。さらに、予熱装置は、直列に配置された少なくとも2つ、例えば少なくとも3つの蒸気ミキサーを含むことができる。第2の蒸気ルーティング装置は、好ましくは、スラッジを段階的に予熱できるように、フラッシング容器を蒸気ミキサーに接続する。
【0041】
蒸気ミキサーは、ベンチュリミキサーであってもよい。
【0042】
それ以外の場合、第1の態様の実施形態は、変更すべきところは変更して第2の態様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本開示に係るスラッジ処理のためのシステムの例示的な一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示に係るシステム100の例示的な一実施形態は、図1に概略的に示されている。スラッジは、廃水処理プラント101から受け取られる。スラッジは、プラント101から直接か、またはシステム100の一部を形成する貯蔵タンク(図示せず)から受け取られ得る。スラッジは、通常、約30℃の初期温度および約30%の乾燥物質含有量を有する。任意選択の初期加熱(図示せず)の後、スラッジは予熱装置103で予熱される。予熱は、好ましくは、例えば直列に配置された第1の蒸気ミキサー104および第2の蒸気ミキサー105において、蒸気の段階的添加によって実行される。各蒸気ミキサー104、105の下流には、ポンプ104p、105pが配置されている。予熱装置103の後、約175℃の温度を有する予熱されたスラッジが得られる。予熱されたスラッジは、通常蒸気ミキサーであり、その後にポンプ106pが配置される他の加熱装置106内でさらに加熱される。さらに加熱されたスラッジは反応器108に供給され、そこでスラッジは水熱炭化(HTC)を受ける。通常200~215℃の温度を有するHTC処理されたスラリーが、反応器108から引き出される。HTC処理されたスラリーの圧力は、ポンプ(図示せず)によってわずかに増加する。次に、酸素ガスミキサー110内で、HTC処理されたスラリーに酸素ガスが添加される。酸素ガスミキサーは、加圧された酸素タンク(図示せず)に接続されている。酸素ガスの量は、システム100で処理される乾燥スラッジ1トン当たり約250kgとすることができる。湿式酸化は瞬間的ではない。むしろそれは、留分が酸素ガスミキサー110の下流に流れるときに進行する。したがって、発熱性湿式酸化反応のための時間を許容するために、第2の反応器111を酸素ガスミキサー110の下流に配置することができる。第2の反応器111から得られた湿式酸化されたスラリーは、通常約240℃の温度を有し、第1のフラッシング装置112に導かれ、約220℃の温度を有する高温蒸気留分および予冷されたスラリーを生成する。高温蒸気留分は、他の加熱装置106にルーティングされ、したがって、予熱されたスラッジを加熱するために使用される。
【0045】
予冷されたスラリーは、第2のフラッシング装置113内でフラッシングに供され、これは、予熱装置103内でスラッジを予熱するために使用される少なくとも1つの蒸気留分を生成する。好ましくは、フラッシング装置113は、異なる温度の蒸気留分を生成するために直列に配置されたいくつかのフラッシング容器を含む。例えば、フラッシング装置113は、予熱装置103の第2の蒸気ミキサー105にルーティングされる「中」温の蒸気留分を生成する第1のフラッシング容器114と、予熱装置103の第1の蒸気ミキサー104にルーティングされる比較的低温の蒸気留分を生成する第2のフラッシング容器115とを含むことができる。
【0046】
第2のフラッシング装置113の下流で得られた冷却されたスラリーは、分離装置116によって分離され、さらなる処理のために廃水処理プラント101に戻される液体流と、上流の湿式酸化プロセスによってリンなどの灰成分に富む固体留分になる。
【0047】
システム100は、プロセスをコールドスタートするために、電気ヒーターなどの外部熱を使用するヒーター107を含むことができる。ヒーター107は、好ましくは、他の加熱装置106の下流であるが反応器108の上流に配置される。
【0048】
予熱装置103、他の加熱装置106、関連するポンプおよびヒーター107は、スラッジを反応器108にルーティングするためのスラッジルーティング装置102の一部を形成する。
【0049】
酸素ガスミキサー110、第2の反応器111、第1のフラッシング装置112、および第2のフラッシング装置113は、HTC処理されたスラリーを反応器108から分離装置116にルーティングするためのスラリールーティング装置190の一部を形成する。
図1