(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】液体分析装置及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20240426BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240426BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20240426BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20240426BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G01N27/28 341A
G01N27/416 353Z
G01N27/26 371G
G01N27/27 A
G01N27/06 A
(21)【出願番号】P 2021525957
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019537
(87)【国際公開番号】W WO2020250622
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019108265
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】芝田 学
(72)【発明者】
【氏名】小松 佑一朗
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 大輝
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02196202(GB,A)
【文献】特開2010-151729(JP,A)
【文献】実開昭53-063889(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0012530(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354786(US,A1)
【文献】特開2013-142964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0204876(US,A1)
【文献】特開昭52-046892(JP,A)
【文献】特開昭58-103658(JP,A)
【文献】特開2004-286685(JP,A)
【文献】実開平04-127566(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0300981(US,A1)
【文献】特開2005-077252(JP,A)
【文献】中国実用新案第206208882(CN,U)
【文献】特開2005-114697(JP,A)
【文献】特開平11-153594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/06,27/26-27/28,27/416,
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に接触して所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、
前記センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部が有線又は無線により接続されて前記変換部からデジタル信号を取得する装置本体とを備え、
前記センサ部及び前記変換部が互いに着脱可能に構成されており、
前記センサ部は、前記変換部に電気的に接続するための接続プラグを有しており、
前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられ
、
前記装置本体には、それぞれセンサ部が装着された複数の前記変換部が接続されており、
前記複数の変換部を互いに連結する連結機構を有している、液体分析装置。
【請求項2】
前記センサ部及び前記変換部は前記接続プラグで電気的に接続された状態で一体となり、手に持って操作される、請求項1記載の液体分析装置。
【請求項3】
前記センサ部を複数有しており、
測定対象項目としてpHを測定するセンサ部に前記金属シールドが設けられている、請求項2に記載の液体分析装置。
【請求項4】
前記変換部は、測定時及び校正時において前記センサ部の出力が安定したことを報知する報知部を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の液体分析装置。
【請求項5】
前記連結機構は、前記複数の変換部それぞれに装着された前記各センサ部における水底からのセンシング部分までの位置又は水面からのセンシング部分までの位置の少なくとも何れかがそれぞれ同じ位置となるように、前記複数の変換部を連結するものである、請求項
1乃至4の何れか一項に記載の液体分析装置。
【請求項6】
前記装置本体は、測定対象項目が互いに異なる複数の前記センサ部がそれぞれ装着された複数の前記変換部が接続されるものであり、
前記装置本体は、測定対象項目が互いに異なる複数の前記センサ部を同時に校正する校正部を有する、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の液体分析装置。
【請求項7】
前記装置本体は、測定対象項目が互いに異なる複数の前記センサ部を種類が互いに異なる校正物質で校正する、請求項
6記載の液体分析装置。
【請求項8】
液体に接触して所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、
前記センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部が有線又は無線により接続されて前記変換部からデジタル信号を取得する装置本体とを備え、
前記センサ部及び前記変換部が互いに着脱可能に構成されており、
前記センサ部は、前記変換部に電気的に接続するための接続プラグを有しており、
前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられ、
前記装置本体は、前記変換部から延びるケーブルが接続される接続ポートと、前記接続ポートに接続された前記変換部に装着されたセンサ部を認識するセンサ認識部とを有する
、液体分析装置。
【請求項9】
液体に接触して所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、
前記センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、
前記変換部が有線又は無線により接続されて前記変換部からデジタル信号を取得する装置本体とを備え、
前記センサ部及び前記変換部が互いに着脱可能に構成されており、
前記センサ部は、前記変換部に電気的に接続するための接続プラグを有しており、
前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられ、
前記装置本体には、前記装置本体を傾斜又は起立した状態で支えるスタンド部材が設けられており、
前記スタンド部材は、前記変換部及び前記装置本体を接続するケーブルを巻き付け可能に構成されている
、液体分析装置。
【請求項10】
液体に接触して所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、前記センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換して外部に出力する変換部と
、前記変換部が有線又は無線により接続されて前記変換部からデジタル信号を取得する装置本体とを有するセンサユニットであって、
前記センサ部及び前記変換部が互いに着脱可能に構成されており、
前記センサ部は、前記変換部に電気的に接続するための接続プラグを有しており、
前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられ
、
前記装置本体には、それぞれセンサ部が装着された複数の前記変換部が接続されており、
前記複数の変換部を互いに連結する連結機構を有している、センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分析する液体分析装置、及び液体を分析するためのセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば環境水、工業用水又は汚水処理中の水等の液体中のpHや溶存酸素等を測定するものとして、特許文献1に示すように、液体に浸漬されて所定の測定対象項目に応じた検出信号を出力するセンサユニットと、当該センサユニットからの検出信号を取得して測定値を表示する装置本体とを備えたものがある。
【0003】
ここで、センサユニットは、測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、当該センサ部からのアナログ信号を増幅などしてデジタル信号に変換する変換部と、それらを収容する収容体とを有している。
【0004】
しかしながら、上記のセンサユニットでは、収容体がセンサ部を収容する部分と、A/D変換部を収容する部分とで分離できない構成となっている。そのため、センサ部の劣化などによりセンサ部を交換する場合には、本来であれば交換する必要のない変換部も併せて交換する必要があり、ランニングコストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本願発明者は、液体に浸漬されて所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、当該センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部とを互いに着脱可能に構成することを考えている。このとき、センサ部は、変換部に電気的に接続するための接続プラグを有する構成とすることが考えられる。この場合、接続プラグとセンサ部の配線との接続部分からアナログ信号に電磁ノイズが乗ってしまう恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであり、液体分析装置におけるランニングコストを低減するとともに、アナログ信号に重畳する電磁ノイズを低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る液体分析装置は、液体に浸漬されて所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、前記センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、前記変換部が有線又は無線により接続されて前記変換部からデジタル信号を取得する装置本体とを備え、前記センサ部及び前記変換部が互いに着脱可能に構成されており、前記センサ部は、前記変換部に電気的に接続するための接続プラグを有しており、前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられていることを特徴とする。
【0009】
この液体分析装置であれば、センサ部及び変換部が互いに着脱可能に構成されているので、センサ部を交換する場合に、センサ部のみを交換して変換部を交換する必要がなく、液体分析装置のランニングコストを削減することができる。そして、前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられているので、接続プラグとセンサ部の配線との接続部分からアナログ信号に重畳する電磁ノイズを低減して、測定精度を向上させることができる。
【0010】
前記センサ部及び前記変換部は前記接続プラグで電気的に接続された状態で一体となり、手に持って操作される構成の場合、手からの静電気により電磁ノイズが乗りやすい。この場合、本発明の効果がより一層顕著となる。
【0011】
センサ部としては、pHセンサ、溶存酸素センサ、導電率センサ、酸化還元電位センサ、カルシウムやカリウム等のイオン濃度センサ、濁度センサなどの液体の性質を示す値を検出可能なセンサが考えられる。これらにおいて、pHセンサが電磁ノイズによる影響を特に受けやすく、SN比が悪くなってしまう。このため、測定対象項目としてpHを測定するセンサ部に前記金属シールドが設けられていることが望ましい。
【0012】
測定時又は校正時においてセンサ部の出力が安定したか否かを確認することが行われている。ここで、装置本体の表示部においてセンサ部の出力が安定していることを示していても、ユーザの意識がセンサ部及び変換部からなるセンサユニットにあることが多く、使い勝手が良いとは言えない。このため、液体分析装置の使い勝手を良くするためには、前記変換部は、測定時及び校正時において前記センサ部の出力が安定したことを報知する報知部を有することが望ましい。
【0013】
前記装置本体は、それぞれセンサ部が装着された複数の前記変換部が接続されることにより、複数の測定地点又は複数の測定対象項目の測定結果を取得することができる。このとき、センサ部及び変換部からなる複数のセンサユニットの取り扱いを容易にするためには、前記複数の変換部を互いに連結する連結機構を有していることが望ましい。これにより、ユーザは片手で複数のセンサユニットを簡単に持つことができる。
【0014】
前記連結機構は、前記複数の変換部それぞれに装着された各センサ部における水底からのセンシング部分(例えばガラス電極の場合は応答ガラス)までの位置又は水面からのセンシング部分までの位置の少なくとも何れかがそれぞれ同じ位置となるように、前記複数の変換部を連結するものであることが望ましい。この構成であれば、複数のセンサ部を例えば同じ深さ位置に設置することが容易となる。
【0015】
前記装置本体に対して、測定対象項目が互いに異なる複数の前記センサ部がそれぞれ装着された複数の前記変換部が接続されるものであれば、複数の測定対象項目を一挙に測定することができる。この構成において、前記装置本体は、測定対象項目が互いに異なる複数の前記センサ部を同時に校正する校正部を有することが望ましい。ここで、同時に校正するとは、複数のセンサの校正が開始されるタイミングが同時であり、開始後のそれぞれの校正処理が並列的に行われることである。この構成であれば、各センサ部の校正を一挙に行うことができるので、校正時間を短縮することができる。このとき、前記装置本体は、測定対象項目が互いに異なる複数の前記センサ部を種類が互いに異なる校正物質で校正することが考えられる。
【0016】
前記装置本体は、前記変換部から延びるケーブルが接続される接続ポートと、前記接続ポートに接続された前記変換部に装着されたセンサ部を認識するセンサ認識部とを有することが望ましい。この構成であれば、変換部に装着されたセンサ部の種類に関わらず、共通の接続ポートに接続することができる。
【0017】
装置本体を手に持った状態だけでなく、装置本体を置いた状態で液体分析を行うことを考えた場合、前記装置本体には、前記装置本体を傾斜又は起立した状態で支えるスタンド部材を設けることが考えられる。この構成において、前記スタンド部材は、前記変換部及び前記装置本体を接続するケーブルを巻き付け可能に構成されていることが望ましい。この構成であれば、ケーブルを纏めることができ、液体分析装置を持ち運ぶ際や液体分析装置を保管する際に、ケーブルが邪魔になりにくい。
【0018】
本発明に係るセンサユニットは、液体に接触して所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部と、前記センサ部により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換して外部に出力する変換部とを有するセンサユニットであって、前記センサ部及び前記変換部が互いに着脱可能に構成されており、前記センサ部は、前記変換部に電気的に接続するための接続プラグを有しており、前記接続プラグと前記センサ部の配線との接続部分に金属シールドが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上に述べた本発明によれば、センサ部及び変換部が互いに着脱可能に構成されているので、センサ部を交換する場合に、センサ部のみを交換して変換部を交換する必要がなく、液体分析装置のランニングコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体分析装置の全体模式図である。
【
図2】同実施形態の装置本体の機能ブロック図である。
【
図3】同実施形態のセンサユニットを組み立てた状態及び分離した状態の正面図である。
【
図4】同実施形態の接続プラグ及びその周辺の部分拡大断面図である。
【
図5】同実施形態の画面表示の一例を示す図である。
【
図9】同実施形態の校正タイミングを示す図である。
【
図10】同実施形態のスタンド部材により置いた状態を示す模式図及びスタンド部材の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
100・・・液体分析装置
2・・・センサユニット
21・・・センサ部
22・・・変換部
3・・・装置本体
P1~P3・・・接続ポート
3e・・・校正部
3b・・・センサ認識部
212・・・接続プラグ
5・・・金属シールド
6・・・連結機構
7・・・報知部
8・・・スタンド部材
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る液体分析装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<1.装置構成>
本実施形態の液体分析装置100は、例えば河川や沼湖、海洋などの環境水、工業用水、汚水処理中の水などの測定対象である液体の所定の測定対象項目を計測するものである。
【0024】
ここで、測定対象項目としては、pH、導電率(EC)、溶存酸素(DO)、酸化還元電位(ORP)、カルシウムやカリウム等のイオン濃度、濁度、クロロフィルやシアノバクテリア等の細胞の量、硝酸濃度、及び、アンモニウム濃度の少なくともいずれかを含む液体の性質を示す値と、水深と、水位等を挙げることができる。なお、以下では、pH、導電率(EC)、溶存酸素(DO)の3つの測定対象項目を測定可能な液体分析装置100を説明する。
【0025】
具体的に液体分析装置100は、例えばフィールド測定に用いられる浸漬型のものであり、
図1及び
図2に示すように、液体に浸漬されて所定の測定対象項目を測定するためのセンサユニット2と、当該センサユニット2が接続される装置本体3とを備えている。本実施形態では、センサユニット2及び装置本体3は、信号伝送用及び電源用のケーブルCにより接続されている。
【0026】
以下、各部について説明する。
【0027】
<2.センサユニット>
本実施形態では、pH測定用のセンサユニット2と、EC測定用のセンサユニット2と、DO測定用のセンサユニット2とを備えている。
【0028】
各センサユニット2は、特に
図3に示すように、液体に接触して所定の測定対象項目に応じたアナログ信号を出力するセンサ部21と、当該センサ部21により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部22とを有している。なお、
図3には、pH測定用のセンサユニット2を示している。また、各センサユニット2は、
図2に示すように、変換部22をユーザが手に持って使用するものである。より具体的には、ユーザが変換部22を手に持った状態でセンサユニット2を液体中に浸漬することによりセンサ部21が液体に接触する。
【0029】
センサ部21は、測定対象項目に応じてその測定対象項目を測定するための部品が設けられている。
例えばセンサ部21が、測定対象項目としてpHを測定するpHセンサの場合には、pH測定用のガラス電極、比較電極、参照電極、温度補償電極などが設けられている。センサ部21が、測定対象項目としてECを測定するECセンサの場合には、EC測定用の2つの電極又は4つの電極などが設けられている。また、センサ部21が測定対象項目としてDOを測定するDOセンサの場合には、酸素濃度に依存した量の蛍光を発する感応膜と、感応膜に蛍光を励起させる励起光を照射する光源と、感応膜から発せられた蛍光を受光する光検出器とが設けられている。これらセンサ部21において、測定対象項目を測定するための部品は、例えば直管状をなす支持管211の内部に保持されている。
【0030】
変換部22は、センサ部21により得られたアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。具体的に変換部22は、センサ部21のアナログ信号を増幅する増幅器と、増幅されたアナログ信号をデジタル変換するAD変換器とを備えている。変換部22は、センサ部毎に専用のものである。つまり、センサ部21がpHセンサの場合にはpHセンサ用の変換部22であり、センサ部21がECセンサの場合にはECセンサ用の変換部22であり、センサ部21がDOセンサの場合にはDOセンサ用の変換部22である。
【0031】
各変換部22において、増幅器及びAD変換器は回路基板221上に設けられており、この回路基板221は、変換部22の筐体222に収容されている。筐体222の上端部には、回路基板221に電気的に接続されたケーブルCが接続されており、変換部22により得られたデジタル信号は、ケーブルCを介して装置本体3に送信される。
【0032】
そして、本実施形態のセンサユニット2は、
図3に示すように、センサ部21と変換部22とで着脱可能に構成されている。
【0033】
ここで、センサ部21の支持管211の上端部には、変換部22に電気的に接続するための接続プラグ212が設けられている。この接続プラグ212は、
図4に示すように、例えば半田付けにより、センサ部21の配線21wと電気的に接続されている。また、変換部22の筐体222の下端部には、接続プラグ212が差し込まれる差し込み部223が形成されている。この差し込み部223にセンサ部21の接続プラグ212を差し込むことによって、筐体222内部の回路基板221に設けられた接続端子221xに接続プラグ212が接触して電気的に接続される。
【0034】
また、センサ部21及び変換部22には、それらが接続された状態で液密にシールするためのシール機構4が設けられている。このシール機構4は、変換部22の筐体222及びセンサ部21の支持管211の間に介在するOリング(不図示)と、当該Oリングを筐体222及び支持管211により押しつぶすための締め付け構造41とからなる。締め付け構造41は、例えば、筐体222の外側周面に設けられたネジ部と、支持管211に設けられ、ネジ部に螺合するナット部とからなる。このシール機構4によりセンサ部21及び変換部22の接続部分の液密性が確保されるとともに、センサ部21及び変換部22の接続が強固となる。
【0035】
ここで、センサ部21において、接続プラグ212とセンサ部21の配線21wとの接続部分を介してアナログ信号に電磁ノイズが乗ってしまう。特に、ユーザがセンサユニット2を手に持つ場合、上述のようにユーザは変換部22を持つ、又はセンサ部と変換部22との接続部分を持つことになる。そうすると、手からの静電気がアナログ信号に電磁ノイズとして乗ってしまう。この問題は、センサ部21がpHセンサにおいて特に顕著となり、pHセンサのSNが悪くなってしまう。そこで、本実施形態では、
図4に示すように、pHセンサにおける接続プラグ212と配線21wとの接続部分に金属シールド5を設けている。この金属シールド5は、例えば円筒形状をなす真鍮パイプであり、前記接続部分を取り囲むように設けられている。なお、その他のセンサ部21に金属シールド5を設けても良い。
【0036】
<3.装置本体>
このように構成されたセンサユニット2が接続される装置本体3は、接続されたセンサユニット2から取得したデジタル信号に基づいて各測定対象項目の測定値を算出する測定値算出部3aを有している(
図2参照)。また、装置本体3の前面には、
図1に示すように、接続されたセンサユニット2の測定結果を表示するディスプレイ31と、接続されたセンサユニット2を制御したり、ディスプレイの表示を切り替えたりするための操作ボタン群32とを有している。なお、装置本体3は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェイス等を有するコンピュータである。また、
図1における符号34は、印刷するための出力ポートやUSBポートを保護するカバーである。
【0037】
ディスプレイ31には、装置本体3の表示制御部3bによって、測定結果が表示される。
図5に表示制御部3bによる画面表示例を示している。
図5(a)は、装置本体3にpHセンサが接続された場合の測定結果を表示する表示画面である。
図5(b)は、装置本体3にpHセンサ及びECセンサが接続された場合の測定結果を表示する表示画面である。
図5(c)は、装置本体3にpHセンサ、ECセンサ及びDOセンサが接続された場合の測定結果を表示する表示画面である。
図5(b)及び(c)では、複数のセンサが接続された場合に表示画面を分割して複数の測定対象項目を一覧表示しているが、各測定対象項目に切り替えて表示することもできるし、表示する項目数を設定することもできる。
【0038】
また、操作ボタン群32には、
図6に示すように、校正を開始するための「校正(CAL)ボタン」、測定を開始するための「測定(MEAS)ボタン」、履歴データを表示するための「データ(DATA)ボタン」、測定時において測定パラメータを変更するための「モード(MODE)ボタン」、例えばディスプレイ表示などの設定を行う「設定(SET)ボタン」、測定時又は校正時における測定値を記録する等を決定する「決定(ENT)ボタン」、上下左右に移動するための「移動(UP、DOWN、LEFT、RIGHT)ボタン」、電源をオン/オフする「電源(POWER)ボタン」が含まれている。
【0039】
<4.センサ自動認識>
また、装置本体3には、測定対象項目が互いに異なる複数のセンサユニット2を同時に接続できるように複数(ここでは3つ)の接続ポートP1~P3が設けられている。これら3つの接続ポートP1~P3は、同一形状をなすものであり、上記3つのセンサユニット2(変換部22)を区別なく接続することができる。つまり、1つ目の接続ポートP1に3つの変換部22の何れか1つを接続することができ、2つ目の接続ポートP2に3つの変換部22の何れか1つを接続することができ、3つ目の接続ポートP3に3つの変換部22の何れか1つを接続することができる。なお、3つの変換部22それぞれに接続されたケーブルCの接続端子も、接続ポートP1~P3に合わせて同一形状とされている。
【0040】
そして、装置本体3は、各接続ポートP1~P3に接続された変換部22に装着されたセンサ部21を認識するセンサ認識部3cを有する。ここで、センサ認識部3cは、各変換部22に設定された識別子及び当該識別子に紐付けられたセンサの種類からなるデータベースを有しており、接続ポートP1~P3に接続された変換部22から当該変換部22に設定された識別子を取得し、前記データベースに照らし合わせて、接続ポートP1~P3に接続されたセンサ部21を認識する。
【0041】
<5.連結機構>
また、本実施形態の液体分析装置100は、
図7に示すように、複数の変換部22を互いに連結する連結機構6を有している。
【0042】
この連結機構6は、複数の変換部22を、それらに装着されたセンサ部21が同一方向を向くように連結するものである。具体的に連結機構6は、各変換部22の側面に形成された凹部61と、当該凹部61に嵌まる凸部62とから構成される。ここでは、凹部61は、上下方向に延びる凹溝であり、その上端部が開口している。また、凸部62は、凹溝にスライドして嵌まる凸条である。これにより、2つの変換部22のうち一方の変換部22の凹部61に他方の変換部22の凸部62をスライドさせることによって、2つの変換部22を連結することができる。
【0043】
本実施形態では、各変換部22において、互いに対応する側面(左右側面)それぞれに1つずつ凹部61が形成されており、背面に1つの凸部62が形成されている。このように凹部61及び凸部62が形成されていることにより、3つの変換部22を横一列に連結することもできるし(
図8(A)参照)、3つの変換部22を直角状(L字状)に連結することもできる(
図8(B)参照)。
【0044】
図7では、上下にスライド移動させることによって変換部22が連結される構成であったが、凹部61及び凸部62の形成方向を変更することによって、例えば横方向からスライド移動させる構成にもできるし、斜め方向からスライド移動させる構成にもできる。
【0045】
また、連結機構6は、複数の変換部22それぞれに装着されたセンサ部21が互いに同じ高さに位置するように、複数の変換部22を連結する。つまり、連結機構6は、複数の変換部22それぞれに装着された各センサ部21における水底からのセンシング部分までの位置又は水面からのセンシング部分までの位置の少なくとも何れかがそれぞれ同じ位置となるように、複数の変換部22を連結する。ここで、各センサ部21のセンシング部分は、pHセンサの場合はガラス電極の応答膜であり、ECセンサの場合には電極であり、DOセンサの場合には感応膜である。本実施形態では、各変換部22が同一形状をなし、センサ部21が同一長さであることから、連結機構6により複数の変換部22を連結することによって、センサ部21が互いに同じ高さ位置となる。
【0046】
なお、装置本体3の側面には、変換部22に形成された凸部62が嵌まる凹部33が形成されており、変換部22を装置本体3に連結固定できるように構成されている(
図1参照)。
【0047】
<6.安定表示機能>
さらに、本実施形態において、変換部22は、測定時及び校正時においてセンサ部21の出力が安定したことを報知する報知部7を有する。
【0048】
この報知部7は、センサ部21の出力が安定したか否かを光により報知するものである。具体的に報知部7は、変換部22の筐体222の前面に露出して設けられた例えばLED等のランプである。例えば、報知部7は、センサ部21の出力(つまり、センサユニット2による測定値)が安定する前は間欠的に点灯(点滅)し、センサ部21の出力が安定した場合には連続的に点灯するように制御される。この点灯制御は、変換部22の回路基板に設けられた制御部(不図示)により行われるものであってもよいし、装置本体3に設けられた測定制御部3dにより行われるものであっても良い。
【0049】
この安定表示機能に関して言うと、装置本体3の表示制御部3bは、センサユニット2による測定値が安定した後に、ディスプレイ31に表示される測定値を自動で固定表示するホールド機能を有している。このホールド機能は、ホールド時の測定値とホールド後の測定値との差が所定値以上となれば自動で解除される。また、ユーザが「測定(MEAS)ボタン」等を押すことにより手動で解除することもできる。
【0050】
さらに、報知部7は、変換部22がケーブルCを介して装置本体3に接続されることにより装置本体3から給電されて例えば間欠的に点灯(点滅)するように構成されている。これにより、報知部7により変換部22が確実に装置本体3に接続されたか否かも分かる。なお、接続時の点灯は、上記のセンサ認識部3cがセンサ部21を認識した後に行っても良い。これにより、センサ部21が接続後に認識されたか否かが分かる。
【0051】
<7.同時校正機能>
さらに、本実施形態の装置本体3は、測定対象項目が互いに異なる複数のセンサ部21を同時に校正できるように構成されている。つまり、本実施形態では、pHセンサ、ECセンサ及びDOセンサの3つを同時に校正できるように構成されている。
【0052】
具体的に装置本体3は、測定対象項目が互いに異なる複数のセンサ部21を同時に校正する校正部3eを有する。pHセンサをpHセンサ用校正液に浸漬し、ECセンサをECセンサ用校正液に浸漬し、DOセンサを空気中に晒す。このように各センサ部21は、種類が互いに異なる校正液などの校正物質で校正が行われる。そして、装置本体3の操作ボタン(「校正(CAL)ボタン」)を押すことによって、
図9に示すように、各センサ部21の校正が同時に開始される。校正開始により、各センサ部21からアナログ信号が出力されて変換部22によりデジタル信号に変換される。そして、装置本体3の測定値算出部3aによりデジタル信号が示す測定値を算出する。校正部3eは、この測定値算出部3aにより得られた測定値と、各校正液の値とから、各センサを校正する。このように、校正開始後のそれぞれのセンサ部21に対する校正処理が並列的に行われる。
【0053】
ここで、校正部3eは、校正時に得られる測定値から校正液を自動認識することもできる。具体的に校正部3eは、校正液のデータベースを有しており、校正時に得られる測定値を前記データベースに照らし合わせて、校正に使用されている校正液を特定し、その特定した校正液の値を用いて校正する。
【0054】
<8.スタンド部材>
その他、本実施形態の装置本体3には、
図10に示すように、装置本体3を傾斜又は起立した状態で支えるスタンド部材8が設けられている。このスタンド部材8は、装置本体3の背面(ディスプレイ31が設けられた前面とは反対側の面)に収納可能に設けられている。スタンド部材8は、装置本体3の背面に収納された収納位置と、装置本体3を傾斜又は起立した状態で支える支持位置との間で回転可能に設けられている。
【0055】
また、スタンド部材8は、ケーブルCが巻き付けられるように構成されている。なお、
図10(B)では、スタンド部材8と装置本体3とにケーブルCを巻き付けた例を示しているが、スタンド部材8のみに巻きつけるようにしても良い。なお、スタンド部材8の側辺に凹部を形成することによって、スタンド部材8に巻き付けた状態でケーブルCの嵩張りを少なくすることができる。
【0056】
<9.本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の液体分析装置100によれば、センサ部21及び変換部22が互いに着脱可能に構成されているので、センサ部21を交換する場合に、センサ部21のみを交換して変換部22を交換する必要がなく、液体分析装置100のランニングコストを削減することができる。そして、接続プラグ212とセンサ部21の配線21wとの接続部分に金属シールド5が設けられているので、接続プラグ212とセンサ部21の配線21wとの接続部分からアナログ信号に重畳する電磁ノイズを低減して、測定精度を向上させることができる。
【0057】
<10.その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0058】
例えば、前記実施形態では、装置本体3とセンサユニット2とがケーブル接続されるものであったが、装置本体3とセンサユニット2とを無線接続するものであっても良い。
【0059】
また、装置本体3に音声認識機能を持たせても良い。具体的には装置本体3が音声認識部を有し、例えばユーザが「測定」「校正」等の声を発すると、それを認識して、測定又は校正するように構成しても良い。この音声認識機能は、装置本体3とセンサユニット2とが離れた位置にあり、ユーザが装置本体3とセンサユニット2とを同時に操作できない場合に特に有効である。
【0060】
さらに、前記実施形態では、装置本体3がセンサユニット2からのデジタル信号を取得して測定値を算出するものであったが、変換部22が測定値を算出するものであっても良い。この場合、装置本体3には、測定値を示すデジタル信号が装置本体に送信される。
【0061】
また、前記実施形態では、連結機構6は、複数の変換部22を、それらに装着されたセンサ部21が同一方向を向くように連結するものであった。このように複数の変換部22が連結機構6により連結された場合、ユーザは各変換部22に接続されたそれぞれのケーブルCを手に持って、複数のセンサユニット2を使用する。より具体的には、ユーザがそれぞれのケーブルCを片方の手に持った状態で、複数のセンサユニット2を液体中に浸漬することによりセンサ部21が液体に接触する。これにより、センサ部21における水底からのセンシング部分までの位置又は水面からのセンシング部分までの位置の少なくとも何れかの水中における位置がそれぞれ同じ位置となる。したがって、液体分析装置100は、ユーザによる各センサユニット2の水中における位置の調整が不要となる。
【0062】
前記実施形態では、測定対象項目として、pH、EC及びDOを測定する液体分析装置100を例示したが、その他の測定対象項目を測定するセンサユニット2を装置本体3に接続することによって、pH、EC及びDO以外の測定対象項目を測定することができる。
【0063】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、液体分析装置におけるランニングコストを低減するとともに、アナログ信号に重畳する電磁ノイズを低減することができる。