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特許7479384N-複素環式5員環含有カプシドタンパク質のアセンブリの阻害剤、その医薬組成物および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】N-複素環式5員環含有カプシドタンパク質のアセンブリの阻害剤、その医薬組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/34 20060101AFI20240426BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C07D207/34 CSP
A61P1/16
A61P31/20
A61P43/00 111
A61K31/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021542370
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2019108483
(87)【国際公開番号】W WO2020151252
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】201910073465.2
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チャン,インシェン
(72)【発明者】
【氏名】アオ,ワンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ホイ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ハンチョウ
(72)【発明者】
【氏名】ニー,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ペン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シュウシ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ティエンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】グゥー,シンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ダンダン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シゥオ
(72)【発明者】
【氏名】マ,シュエチン
(72)【発明者】
【氏名】シ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオジン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ホンジャン
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/156255(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105431413(CN,A)
【文献】野崎正勝 等,創薬化学,第1版,株式会社化学同人,1995年,p.98-99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、水物まは薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、水物まは薬学的に許容される塩を含み、
任意に、薬学的に許容される補助剤をさらに含む、医薬組成物
【請求項3】
プシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療のための医薬の調製における、請求項1に記載の式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、水和物または薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患が、B型肝炎ウイルス(HBV)感染によって引き起こされる疾患である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療のための医薬の調製における、請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患が、B型肝炎ウイルス(HBV)感染によって引き起こされる疾患である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療における使用のための、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患が、B型肝炎ウイルス(HBV)感染によって引き起こされる疾患である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
プシドタンパク質のアセンブリの阻害のための医薬の調製における、請求項1に記載の式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、水和物または薬学的に許容される塩の使用。
【請求項10】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害のための医薬の調製における、請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
カプシドタンパク質のアセンブリの阻害における使用のための、請求項2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年1月25日に中国国家知的財産局に出願された出願番号がCN201910073465.2である中国特許出願に基づく優先権および利益を主張し、当該中国特許出願の内容の全てを本明細書に援用する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、式Iもしくは式IIで表される化合物(以下、式Iもしくは式IIの化合物とも言い)、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、その製造方法、および該化合物を含む医薬組成物、ならびに疾患の予防または治療のためのその使用(例えば、B型肝炎ウイルス感染の治療薬とするようなカプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防又は治療への応用)に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、慢性B型ウイルス性肝炎には、治癒することはできず、制御することしかできず、現時点では主に2種類の薬剤(インターフェロンおよびヌクレオシド類似体/ウイルスポリメラーゼの阻害剤)に限定されている。HBVの治癒率が低いのは、感染した肝細胞の細胞核に共有結合で閉じた環状DNA(cccDNA)が存在し、その存在が持続しているためである。現在の治療プロトコルでは、リポジトリ(repository)からcccDNAを削除できず、コア阻害剤(Core inhibitors、例えばウイルスカプシッドタンパク質形成またはアセンブリ阻害剤、およびcccDNA阻害剤、ならびにインターフェロン刺激遺伝子活性剤など)のようないくつかのHBVの新たな標的(ターゲット)は、治癒B型肝炎の治癒に有望であると期待されている(Mayur Brahmania, et al. New therapeutic agents for chronic hepatitis B)。
【0004】
HBVカプシドはコアタンパク質からアセンブリされてなり、逆転写の前に、HBV逆転写酵素、pgRNAはカプシドタンパク質で正しくカプセル化されている必要がある。したがって、カプシドタンパク質のアセンブリ(カプシドタンパク質集合)を遮断したり、カプシドタンパク質の分解を加速したり、それぞれカプシドタンパク質のアセンブリプロセスを遮断してウイルスの複製に影響する。近年、研究者らは、カプシドタンパク質のアセンブリを標的とする阻害剤を研究し始めており、例えばWO2014184350、WO2015011281、WO2017156255などには、一連の関連化合物を開示している。しかしながら、それらのほとんどは、前臨床研究段階または研究終了段階にあり、当技術分野では、HBV感染を治療、改善または予防するための、より代替的で効果的なカプシドタンパク質アセンブリ阻害剤が必要とされている。
【0005】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、次の式Iの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩に関する。
【化1】
【0006】
また、本発明は、次の式IIで表される化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝産物、水和物、プロドラッグまたは薬学的に許容される塩に関する。
【化2】
【0007】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る医薬組成物は薬学的に許容される補助剤(補助材料)をさらに含む。
【0008】
別の態様によれば、本発明は、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の治療の方法をさらに提供し、前記方法では、前記治療を必要とする哺乳類(好ましくはヒト)に治療有効量の上記式Iもしくは式IIの化合物、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を投与することを含む。
【0009】
別の態様によれば、本発明は、上記式Iもしくは式IIの化合物、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療のための医薬の製造における使用をさらに提供する。
【0010】
別の態様によれば、本発明は、上記式Iもしくは式IIの化合物、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療における使用をさらに提供する。
【0011】
別の態様によれば、本発明は、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療のための上記式Iもしくは式IIの化合物、その薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物をさらに提供する。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態において、本発明に係る医薬組成物は薬学的に許容される補助剤をさらに提供する。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、治療有効量の本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害方法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、前記個体は哺乳類であり、いくつかの実施形態において、前記個体はヒトである。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、治療有効量の本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含むカプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療方法をさらに提供する。いくつかの実施形態において、前記個体は哺乳類であり、いくつかの実施形態において、前記個体はヒトである。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害における使用をさらに提供する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害のための医薬の製造における使用をさらに提供する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係る式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療のための医薬の製造における使用をさらに提供する。
【0018】
別の態様によれば、本発明は、上記式Iもしくは式IIの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療における使用をさらに提供する。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害のための、本発明に係る式Iの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物をさらに提供する。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患の予防または治療のための、上記式Iの化合物、その立体異性体、互変異性体、幾何異性体、溶媒和物、活性代謝物、水和物、プロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物をさらに提供する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、前記カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患とは、B型肝炎ウイルス(HBV)感染によって引き起こされる疾患を意味する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患とは、B型肝炎ウイルス(HBV)感染によって引き起こされる肝疾患を意味する。
【0022】
本発明の一部の実施形態において、前記治療カプシドタンパク質のアセンブリの阻害から恩恵を受ける疾患とは、感染した患者の肝疾患を予防、緩和または治癒するためにHBVを制御、低減または除去することを意味する。
【0023】
定義
他に断らない限り、本明細書に用いられる下記の用語およびフレーズは、次の意味を有する。ある1個の特定の用語は、特に定義されない場合、不確定または不明確とが認定されておらず、当該分野の一般的な意味として理解されるべきである。本明細書では、商品名が記載される場合、その対応の商品またはその活性成分を示すことである。
【0024】
用語「任意」または「任意に/任意に選択的に」とは、後述する事情や状況が発生する可能性も、発生しない可能性もあることを意味し、該記載は、前記の事情や状況が発生した場合も、発生しなった場合も含む。例えば、エチルがハロゲン(例えばフッ素)で「任意に」置換されていることとは、エチルが非置換(CHCH)、一置換(例えば、CHCHF)、多置換(例えば、CHFCHF、CHCHFなど)または全置換(CFCF)のものであってもよいことを意味する。1個以上の置換基を含む任意の基について、任意の空間的に存在し得ない、および/または合成し得ない置換や置換モードを導入することにならないことは、当業者にとって理解されるべきである。
【0025】
用語「治療」とは、本発明に記載の化合物または製剤を投与して疾患または前記疾患関連の1つ以上の症状を緩和したり、解消したりすることを意味し、且つ
(i)疾患または疾患状態を阻害し、すなわちその発生・進行を阻害することと、
(ii)疾患または疾患状態を緩和し、すなわち疾患または疾患状態を減退させることとを含む。
【0026】
用語「予防」とは、本発明に記載の化合物または製剤を投与して疾患または前記疾患関連の1つ以上の症状を予防することを意味し、且つ、
哺乳類において疾患または疾患状態の発生を予防し、特に、当該哺乳類が前記疾患状態に罹りやすいが、そのような疾患状態にすでに罹患していることがまだ診断されていない場合、予防することとを含む。
【0027】
用語「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、状態、または障害を治療または予防し、(ii)特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状を軽減、改善、または解消し、あるいは(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態、または障害の1つまたは複数の症状の発症を予防しまたは遅らせる、本発明の化合物の投与量を意味する。「治療有効量」となる本発明に係る化合物の量は、化合物、疾患状況とその重症度、投与形態および治療しようとする哺乳類の年齢によって変わるが、当業者は、その自身の持つ知識および本発明に開示された内容により通常的に決めることができる。
【0028】
用語「薬学的に許容される」とは、それらの化合物、材料、組成物および/または剤形に対して信頼性を有する医学的判断の範囲においてヒトおよび動物の組織とを接触して使用することに適用するが、過剰な毒性、刺激性、アレルギー性の反応、または他の問題や合併症がなく、合理的なベネフィット・リスク比に見合うことを意味する。
【0029】
薬学的に許容される塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
【0030】
用語「医薬組成物」とは、本発明の1つまたは複数の化合物またはその塩と薬学的に許容される補助剤からなる混合物を意味する。医薬組成物は、本発明の化合物を有機体に投与することに有利となる目的とする。
【0031】
用語「溶媒和物」とは、本発明に係る化合物を薬学的に許容される溶媒と組み合わせて形成された物質を意味する。薬学的に許容される溶媒には、水、エタノール、酢酸などが含まれる。溶媒和物には、化学量論量的溶媒和物および非化学量論量的溶媒和物が含まれる。
用語「水和物」とは、既に開示されたまたは保護の請求された化合物、および化学量論量または非化学量論量の水を含む溶媒和物を意味する。
【0032】
本発明の化合物は、薬学的に許容されるプロドラッグなどのようなプロドラッグとして調製することもできる。プロドラッグは、薬物の多くの所望の特性(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティ、調製など)を向上させることができると知られており、このため、本発明に係る化合物は、プロドラッグの形態で送達することができる。したがって、本発明は、現在特許請求されている化合物のプロドラッグ、その送達方法、およびプロドラッグを含む組成物を包含することを意図している。
【0033】
用語「プロドラッグ」は、哺乳類被験個体(被験対象)に投与される際に本発明の活性な親薬物をインビボで放出する任意の共有結合した担体を含むことを意図している。本発明に係るプロドラッグは、化合物に存在する官能基を、修飾して得られたものが通常の操作でまたはインビボで親化合物に開裂するように修飾することにより調製される。
【0034】
本明細書に記載の用語「個体(対象)」とは、ヒトと動物とを含み、例えば、哺乳類(例えば霊長類、牛、馬、豚、犬、猫、マウス、ラット、兎、ヤギ、ヒツジおよび禽類等)が挙げられる。用語「活性代謝物」とは、化合物が代謝される際に形成した生物活性誘導体を意味する。
【0035】
用語「薬学的に許容される補助剤」とは、生体に対して顕著な刺激作用がなく、且つ該活性化合物の生物学的活性や性能を損なうことのない補助剤(賦形剤)を意味する。適切な補助剤は、当業者に周知されるもの、例えば炭水化物、ワックス、水溶性および/または水膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などである。
【0036】
用語「含む/含有する(comprise)」、およびそれらの英語の変形(例えば「comprises」や「comprising」など)は、いずれも開放(オープンエンド)式の、包含式の意味、すなわち「…を含むが、これらに限定されない」として解釈されるべきである。
【0037】
本発明に係る化合物および中間体は、異なる互変異性体の形態でも存在し得、そしてこのような形態はすべて本発明の保護範囲内に含まれている。用語「互変異性体」または「互変異性型」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能である、異なるエネルギーを有する構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られている)は、ケト-エノールおよびイミン-エナミン異性化のような、プロトン移動による相互変換を含む。プロトン互変異性体の具体例は、プロトンが2つの環窒素原子間を移動可能なイミダゾール部分である。原子価互変異性体は、いくつかの結合電子の再編成による相互変換を含む。
【0038】
本発明に係るいくつかの化合物は、不斉炭素原子(立体中心)または二重結合を有することができる。したがって、ラセミ体、ジアステレオマー、エナンチオマー、幾何異性体、および単一の異性体のいずれも本発明の範囲内に含まれている。
本発明に係る化合物にオレフィン二重結合または他の幾不斉中心を含む場合、特に断りのない限り、それらはEおよびZ幾何異性体を含む。
【0039】
本発明に係る化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在してもよい。本発明に想定された全ての化合物は、シスおよびトランス異性体、(-)-および(+)-鏡像異性体、(R)-および(S)-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体と、それらのラセミ体混合物および他の混合物とを含み、例えば、鏡像異性体またはジアステレオマーに富む混合物である。これらのいずれも本発明の範囲に含まれている。アルキルなどの置換基に他の不斉炭素原子が存在してもよい。これらの異性体の全ておよびそれらの混合物は、いずれも本発明の範囲に含まれる。
【0040】
キラル合成またはキラル試薬、あるいは他の通常の技術により、光学活性の(R)-および(S)-異性体、並びにDおよびL異性体を調製することができる。本発明のある化合物の1種の鏡像異性体を取得しようとする場合、不斉合成、またはキラル補助剤を有する誘導作用により調製することができ、取得されたジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断させて所望の純粋な鏡像異性体を提供する。あるいは、分子に塩基性官能基(例えば、アミノ)または酸性官能基(例えば、カルボキシル)を含む場合、適当な光学活性の酸または塩基によりジアステレオマー塩を形成し、次に本分野に周知の通常法によりジアステレオマーを分割し、その後、回収して純粋な鏡像異性体を得る。なお、鏡像異性体とジアステレオマーとの分離は、通常、クロマトグラフィーにより完成され、前記クロマトグラフィーは、キラル固定相を採用し、且つ必要に応じて化学誘導体化とを組み合わせる(例えば、アミンによりカルバミン酸塩を生成する)。
【0041】
また、本発明には、本明細書に記載の同一であるが1つまたは複数の原子が通常自然界に見られる原子量または質量数と異なっている原子で置換されている同位体により標識された本発明の化合物を含む。本発明に係る化合物に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、および塩素の同位体を含み、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I、および36Cl等である。
【0042】
いくつかの本発明の同位体標識化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質組織分布のアッセイにおいて有用である。トリチウム化(すなわち、H)および炭素-14(すなわち、14C)同位体は、それらの製造の容易さおよび検出能の観点から特に好ましい。15O、13N、11Cおよび18Fなどの陽電子放出同位体は、基質占有率を調べるために陽電子放出断層撮影(PET)研究に有用である。本発明の同位体標識化合物は、一般に、同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりに用いることにより、以下のスキームおよび/または実施例に開示されいるのと類似する手順に従って調製することができる。
【0043】
さらに、重同位体(例えば、重水素、すなわちHなど)で置換することにより、さらに高い代謝安定性から生じる特定の治療上の利点(例えば、インビボ半減期の増加、または必要用量の減少など)が得られるため、ある状況によって好ましい場合があり、その中で、重水素化は部分的でも完全でもよく、部分的重水素化は少なくとも1個の水素が少なくとも1個の重水素で置換されることを意味し、このような形態はすべて本発明の保護範囲内に含まれている。
【0044】
本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る化合物と適切な薬学的に許容される補助剤とを組み合わせて製造することができ、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、クリーム剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェアおよびエアゾールのような固体、半固体、液体または気体の製剤として調製することができる。
【0045】
本発明の化合物、またはその医薬的に許容される塩あるいはその医薬組成物の典型的な投与経路は、経口投与、直腸投与、局所投与、吸入投与、腸管外投与、舌下投与、膣内投与、鼻内投与、眼内投与、腹膜内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明に係る医薬組成物は、例えば通常の混合法、溶解法、造粒法、糖衣錠製法、粉砕法、乳化法、凍結乾燥法等の本技術分野で周知の方法によって製造することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は経口投与の形である。経口投与については、活性化合物と当該技術分野で周知の医薬的に許容され得る補助剤とを混合して当該医薬組成物を調製してもよい。これらの補助剤は、本発明の化合物を、錠剤、丸剤、トローチ剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル化剤、シロップ剤、懸濁剤等として調製されて患者の経口投与に用いられてもよい。
【0048】
通常の混合法、充填法や打錠法によって経口固形組成物を製造できる。例えば、下記の方法により得ることができ、すなわち、前記活性化合物と固体補助剤とを混合し、任意に選択的に、得られた混合物をパンミリングし、必要とすれば他の適当な助剤を加え、そして当該混合物を顆粒に加工して錠剤や糖衣剤のコアを得る。適当な補助剤は、粘着剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、甘味剤または矯味剤等が挙げられれるが、これらに限定されない。
医薬組成物は、さらに、適切な単位剤形の無菌液剤、懸濁液や凍結乾燥製品での非経口投与のために適用されてもよい。
【0049】
本発明の化合物の治療量は、例えば、治療の具体的な使用、投与される化合物の形態、患者の健康状態、および処方医師の判断に基づいて決定される。本発明の化合物の医薬組成物における割合または濃度は、可変であり、投与量(用量)、化学的特性(例えば、疎水性)、および投与経路を含む複数種の要素に依存する。例えば、当該化合物約0.1~10%w/vを含有する生理緩衝水溶液により本発明の化合物を提供して非経口投与に用いる。いくつかの典型的な投与量の範囲は、約1μg/kg~約1g/kg体重/日である。いくつかの実施形態において、投与量の範囲は、約0.01mg/kg~約100mg/kg体重/日である。投与量は、例えば疾患または病症のカテゴリ、並びに進行程度、特定患者の通常健康状態、選ばれる化合物の相対的生物学的効果、賦形剤製剤およびその投与経路のような変量に依存する可能性がある。生体外または動物モデル試験システムから導出される投与量反応曲線により推測して有効投与量を得た。
【0050】
本発明の化合物は、下記に記載の具体的な実施形態およびその他の化学合成方法との組合せてなった実施形態、並びに当業者にとってよく知られた均等な形態を含む、当業者にとってよく知られている多種類の合成方法により調製することができる。好ましい実施形態には本発明の実施例を含むが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の具体的実施形態の化学反応は、適当な溶媒において達成され、当該溶媒は、本発明の化学変化とその所望の試薬および材料に適合させなければならない。当業者は、本発明の化合物を得るために、既存の実施形態に基づいて合成手順や反応スキームを変更したり選択したりする必要となる場合がある。
【0052】
当該技術分野のいずれかの合成経路の計画における重要な考慮要素の1つは、反応性官能基(本明細書に記載のアミノ基のようなもの)に適当な保護基を選択することであり、例えば、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis (4th Ed). Hoboken, New Jersey: John Wiley & Sons, Inc.」を参照することができ、この書類に援用された全ての参考文献は全体として本明細書に組み込まれている。
【0053】
本出願には下記の略語が用いられている。
EAは酢酸エチルを表し、MeOHはメタノールを表し、DMFはN、N-ジメチルホルムアミドを表し、HATUは、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N、N、N’、N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(即ち、2-(7-オキシベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)を表し、DIPEAはN、N-ジイソプロピルエチルアミンを表し、POは経口投与を表し、IVは静脈注射を表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
【0054】
明確にするために、以下の実施例によってさらに本発明を説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図しない。本発明に用いられる全ての試薬は、市販品であり、さらなる精製の必要がないままで使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の核磁気共鳴クロマトグラフィー(NMR)は、BRUKER-300およびBRUKER-500核磁気共鳴分光計を使用して測定されており、化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS=δ0.00)を内部標準とし、核磁気共鳴水素スペクトルデータ記録のフォーマットは、陽子数、ピークパターン(s:一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線)、および結合定数(単位:ヘルツHz)である。質量分析用機器は、AB SCIEX Triple TOF4600、またはAB SCIEX3200 QTRAPを用いた。
【実施例1】
【0056】
(S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド
【化3】

【化4】
【0057】
ステップA:
氷浴中に、Nの保護下で、反応フラスコに2-クロロ-2-オキソ酢酸エチル(40.8g)および酸化亜鉛(1.22g)を順次加え、そして2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチル(5g)を加えた後、混合物を氷浴下で10分間撹拌し、氷浴を取り外し、室温で撹拌した。反応終了後、反応液を氷水混合物200mLに徐々に滴下し、EA(200mL)を加え、分層し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより作製して5-(2-エトキシ-2-オキソアセチル)-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチル(4.5g)を得た。MS (ESI+,[M+Na]) m/z:290.07。
【0058】
ステップB:
反応フラスコに、5-(2-エトキシ-2-オキソアセチル)-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸エチル(3.5g)、MeOH(40mL)を順次加え、氷浴下で水酸化ナトリウム(1.05g)の水(20mL)溶液を滴下し、室温で撹拌した。反応終了後、2N塩酸水溶液で水相のpHを3~4に調整し、EA(100mL×2)で抽出し、有機相を水(30mL)で洗浄し、濃縮して2-(4-(エトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル)-2-オキソ酢酸(2.7g)を得た。MS (ESI-,[M-H]) m/z:238.1.
【0059】
ステップC:
室温で、反応フラスコに、2-(4-(エトキシカルボニル)-3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル)-2-オキソ酢酸(1g)、DMF(20mL)、HATU(2.07g)およびDIPEA(1.08g)を順次加えた後、室温で10分間撹拌し、(S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-アミン塩酸塩(0.63g)を加えた。反応終了後、反応液を水50mLに注ぎ、EA(50mL×3)で抽出し、有機相を飽和硫酸ナトリウム水溶液(50mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ろ液を回収し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して(S)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸エチル(0.5g)を得た。MS (ESI-,[M-H]) m/z:333.4.
【0060】
ステップD:
反応フラスコに、(S)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸エチル(300mg)、MeOH(2mL)を加え、さらにNaOH(72mg)の水(1mL)溶液を加えた後、反応温度を80℃まで加熱して一晩反応させた。反応終了後、濃縮し、そして水(20mL)およびEA(60mL)を加え、水層を分離し、有機相を水(30mL)で洗浄し、分層し、水相を合わせ、2N塩酸で水相を調整し、pHを3程度にし、そしてEA(100mL×2)で抽出し、分層し、有機相を濃縮して(S)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸(230mg)を得た。MS (ESI-,[M-H]) m/z:305.4.
【0061】
ステップE:
室温で、反応フラスコに、(S)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸(230mg)、DMF(5mL)、HATU(428mg)およびDIPEA(194mg)を順次加えた後、10分間撹拌し、さらに5-アミノ-2-フルオロベンゾニトリル(123mg)を加え、40℃まで加熱して撹拌しながら20時間反応させた。反応終了後、水(20mL)およびEA(60mL)を加え、分層し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ろ液を回収し、回転乾燥し、サンプルを混合し、カラムクロマトグラフィーにより精製して(S)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド(180mg)を得た。H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 12.05 (s, 1H), 10.20 (s, 1H), 9.49 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 8.20 (dd, J = 6.0, 2.5Hz, 1H), 7.98-7.91 (m, 1H),7.53 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 4.78-4.67 (m, 1H),2.40 (s, 3H), 2.32 (s, 3H), 1.34 (d, J = 7.0 Hz, 3H)。MS (ESI-,[M-H]) m/z:423.0。
【実施例2】
【0062】
(R)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボキサミド
【化5】

【化6】

ステップA:
実施例1に記載のステップCにおいて、(S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-アミン塩酸塩の代わりに、(R)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-アミン塩酸塩を用い、(R)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルエステルを得た。MS (ESI-,[M-H]) m/z:333.2。
ステップB:
実施例1に記載のステップDにおいて、(S)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルエステルの代わりに、(R)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸エチルエステルを用い、(R)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸を得た。MS (ESI-,[M-H]) m/z:305.4。
ステップC:
実施例1に記載のステップEにおいて、(S)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸の代わりに、(R)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボン酸を用い、(R)-N-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-2-((1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)アミノ)アセチル)-1H-ピロール-3-カルボキサミドを得た。H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 12.03 (s, 1H), 10.19 (s, 1H), 9.48 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.20 (dd, J = 6.0, 2.5 Hz, 1H), 8.00-7.90 (m, 1H), 7.52 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 4.90-4.65 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 1.34 (d, J = 7.5 Hz, 3H)。MS (ESI-,[M-H]) m/z:423.2。
【0063】
[実験例1] インビトロ活性の研究
1.1 インビトロ細胞HBV DNA阻害活性
指数増殖期における状態が良好なHepG2.2.15細胞(Wuhan Institute of Virology)またはHepAD38細胞をボトル1本で取り、PBS 5mLを加えて1回洗浄した後、トリプシン3mLを加えた。室温で5分間消化した後、2mLのトリプシンを廃棄し、細胞培養インキュベーターに入れて10分間消化し、細胞を時々取り出し、顕微鏡下で観察(細胞が単一の円形であるかどうか、細胞間に接着がなかったかどうか)を行った後、完全培地10mLを加えて消化を停止した。単細胞懸濁液になるようにピペッティングした後、細胞懸濁液10μLを取り出してセルカウンターで細胞数を計数し、完全培地で希釈し、細胞密度を1×10個細胞/mLに調整した。次に、マルチチャンネルピペットを用いて細胞懸濁液を24ウェルプレートに1mL/ウェルで播種し(24ウェルプレートに対して予め50μg/mLコラーゲンI(Collagen I)溶液で被覆した)、恒温COインキュベーターに48時間インキュベートした。
【0064】
DMSOに溶解させた化合物を、完全培地を用いて2倍勾配で希釈して合計10個の濃度にし、化合物のサンプルをローディングし、72時間ごとに化合物含有新鮮培地を交換し、細胞を化合物で6日間処理した。上清を吸い出した後、各ウェルに溶解液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、および1%NP-40)300μLを加え、室温で10分間放置して溶解した後、DNAを抽出し、リアルタイム蛍光定量PCR計で細胞内ウイルスキャプシド中のHBV DNAを測定し、Ct値から阻害率を算出し、EC50値は4パラメーター法で算出した。結果を表1および表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
1.2 インビトロ細胞毒性
指数増殖期における状態が良好なHepG2.2.15細胞(Wuhan Institute of Virology)をボトル1本で取り、PBS 5mLを加えて1回洗浄した後、トリプシン2mLを加えた。細胞インキュベーターに入れて消化を行い、時々取り出して顕微鏡下で観察し、細胞が脱落した直後に、1mLのトリプシンを廃棄し、残液のみを残し、37℃のインキュベーターに入れて8~15分間消化し、顕微鏡下に取り出して細胞を観察し(細胞が単一の円形であるかどうか、細胞間に接着がなかったかどうか)、MEM培地5mLを加えて細胞を再懸濁した。セルカウンターで細胞数を計数し、完全培地で希釈し、細胞密度を2×10個細胞/mLに調整した。マルチチャネルピペットを用いて96ウェルプレートに100μL/ウェルで接種し(96ウェルプレートに対して予め50μg/mLコラーゲンI(Collagen I)溶液で被覆した)、恒温COインキュベーターに置いて24時間インキュベートし、投薬処理し、化合物含有新鮮培地を3日間ごとに交換し、薬物を含まないDMSO濃度が0.5%である培地を対照ウェルに加え、また通常の培地での対照ウェルを設け、投与処理6日間後、10μL/ウェルでCCK-8を加え、1~2時間後マイクロプレートリーダーにより450nmでの吸光値を検出し、阻害率を算出し、且つCC50を算出した。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
1.3 CYP450酵素阻害の研究
500μLの最終インキュベーション系には、ヒト肝ミクロソーム(タンパク質濃度:0.2mg/mL、Corning)50μL、混合CYP450特異的基質(CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、およびCYP3A4)1μL、PBSバッファー(PH7.4)398μL、特異的陽性阻害剤(陽性対照群)1μLまたは被験化合物(アセトニトリルで調製)1μL、およびNADPHMgCl 50μLが含まれていた。各CYP450サブタイプ(亜型)に対して、それぞれ0.5mLの重複したインキュベーション系を作成した。各チューブに予め基質と酵素と均一に混合された溶液(総容量450μL)を配合してそれぞれ37oCで5分間プレインキュベートした後、NADPHMgClの混合溶液50μLを加えて反応させ、30分間で反応液50μLを取り出し、内部標準含有氷アセトニトリル300μLで反応を停止した。また、NADPHを加えずに、2つのブランク対照群を500μLずつ平行して作製して陰性対照群とした。
【0070】
サンプル前処理:
インキュベートしたサンプル50μLに、内部標準含有アセトニトリル300μLを加えて沈殿させ、5分間ボルテックスした後、サンプルを10分間遠心分離(12,000rpm、4℃)した。上清75μLをピペットで吸引して取り、超純水75μLで希釈して均一に混合し、得られた溶液1μLを検体として注入し分析した。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
1.4 血漿タンパク質結合試験
血漿サンプルの調製:
対応する種(マウス、ラット、イヌ、サルおよびヒト)のブランク血漿495μLをそれぞれ採取し、対応する被験化合物溶液または陽性対照5μLを加え、化合物の血漿薬物濃度がそれぞれ1μM、10μM(アセトニトリルで調製)となるように血漿サンプル溶液を得た。
【0073】
よく前処理された透析膜をハイスループット平衡透析装置に入れ、それぞれ100μLの血漿サンプル溶液とPBSバッファー溶液を吸引して取り、透析膜の両側(サンプル側とバッファー側)に加え(n=3)、平衡装置をフィルムで密封した後、37℃で一晩インキュベートし(100 rpm)、透析平衡に達した後、それぞれサンプル側とバッファー側からサンプル50μLを吸引して取り、内部標準含有氷アセトニトリルで反応を停止させた。
【0074】
サンプル前処理:
血漿側のサンプル50μLに、内部標準含有アセトニトリル450μLを加えて沈殿させ、5分間ボルテックスした後、サンプルを10分間遠心分離(12,000rpm、4℃)した。上清75μLをピペットで吸引して取り、超純水75μLで希釈して均一に混合し、得られた溶液1μLを検体として注入し分析した。PBS側のサンプル50μL、内部標準含有氷アセトニトリル250μLを加えてを沈殿させ、5分間ボルテックスした後、サンプルを10分間遠心分離(12,000rpm、4℃)した。上清75μLをピペットで吸引して取り、超純水75μLで希釈して均一に混合し、得られた溶液2μLを検体として注入し分析した。結果を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
[実験例2] インビトロ肝ミクロソームの安定性
最終インキュベーション系300μLには、肝ミクロソーム(タンパク質濃度:0.15mg/mL、Corning)30μL、NADPH+MgCl 30μL、基質(アセトニトリルで調製)3μL、およびPBSバッファー237μLが含まれていた。各種に対して、それぞれ0.3mLの重複したインキュベーション系を作成した。各チューブに予め基質と酵素と均一に混合された溶液(総容量270μL)を配合してそれぞれ37oCで5分間プレインキュベートした後、NADPHMgClの混合溶液30μLを加えて反応させ、それぞれ0、10、30、60分間で反応液50μLを取り出し、内部標準含有氷アセトニトリル300μLで反応を停止した。
【0077】
サンプル前処理:
インキュベートしたサンプル50μLに、内部標準ジアゼパム含有アセトニトリル300μLを加えて沈殿させ、5分間ボルテックスした後、サンプルを10分間遠心分離(12,000rpm、4℃)した。上清75μLを96ウェルプレートに吸引して取り出し、超純水75μLで希釈して均一に混合し、0.5μLを検体として注入してLC-MS/MS分析を行った。結果を次の表6に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
[実験例3] インビボ動物薬効
3.1 AAVマウスモデルによる抗ウイルス効果の評価
6~8週齢の雄C57BL/6マウス(Shanghai Lingchang Biotechnology Co., Ltd.)を取り、用量1×1011vgでrAAV8-1.3HBVウイルス(Beijing FivePlus Gene Technology Ltd.、adrサブタイプ)を、C57BL/6マウスに尾静脈注射した。ウイルス注射後2週目、4週目にマウスの眼窩から採血し、血清を分離し、血清中のHBeAgとHBsAgの発現レベル、およびHBV DNAコピー数を検出し、モデル構築の成否について評価した。血清学的HBeAg、HBsAg、およびHBV DNAの定量的検出の結果と組み合わせると、選択したマウスのそれぞれのHBV DNA発現レベルは1×10 IU/mLを超え、HBeAg発現レベルは1×10 NCU/mLを超え、HBsAg発現レベルは1×10 ng/mLを超えた。マウスをブランク対照群、溶媒対照群、被験物質群として群分けた。各群のマウスには、1日1回連続的に3週間胃内投与し、1週間投与停止(休薬)した。実験中、1週間おきに眼窩から採血し、血清を分離し、蛍光定量PCR法によりDNA含有量を検出した。結果を表7及び表8に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
3.2 pAAV/HBVモデルの実験方法
6~8週齢の雄C57BL/6マウス(Shanghai Lingchang Biotechnology Co., Ltd.)を取り、精製した組換えプラスミドpAAV/HBVl.2(10μg)をPBSに溶解し、各マウスに対してそれぞれの体重の約10%である体積量で3~8秒以内に尾静脈注射した。プラスミド注射3日後に、マウスの眼窩から採血し、血清HBV DNAを検出し、血清DNAの均一なモデルマウスを選択し、モデル対照群、溶媒対照群、および被験物質群として分けた。各群のマウスには、用量3mg/kgで1日1回連続的に10日間胃内投与された。マウス血清を、それぞれ投与後の0、4、7、10日に採取し、10日目にマウスを犠牲にさせて肝臓組織サンプルを採取し、蛍光定量PCR法によりマウス血清と肝臓中のHBV DNAコピー数を検出した。結果を表9に示す。
【0083】
【表9】
【0084】
[実験例4] インビボ薬物動態学
ラットインビボ薬物動態学的(PK)研究
体重180~220gのSDラット(Shanghai Xipuer-Bikai Laboratory Animal Co., Ltd.)を用い、3日~5日間適応性飼育を行った後、群ごとに3匹で無作為に群分け、それぞれ一連の化合物を投与量20mg/kgで胃内投与した。
被験動物(SDラット)には、投与前12時間から絶食させ、投与後4時間から給餌し、実験前後も実験中も自由に水を飲んだ。
【0085】
投与後、0分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、24時間、30時間、48時間の時点で眼窩から約0.2mLの血液を採取し、EDTA-K2で抗凝固した後、30分間以内に4℃、4,000rpmで10分間遠心分離して血漿を分離した。すべての血漿を採取した直後に、-20℃で保存して測定用に用意した。
【0086】
50μLの被験血漿サンプルと検量線サンプルをピペットで吸引して取り、内部標準(ジアゼパム:20mg/mL)含有アセトニトリル溶液500μLを加え、得られた混合物を振動させて5分間均一に混合し、その後12,000rpmで10分間遠心分離し、上清75μLを取り、超純水75μLで希釈し、均一に混合し、得られた溶液1μLをピペットで吸引し取ってLC/MS/MS測定に用いた。結果を表10に示す。
【0087】
【表10】