(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】補助クランプ装置
(51)【国際特許分類】
A61C 1/14 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
A61C1/14 A
(21)【出願番号】P 2021555601
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020058910
(87)【国際公開番号】W WO2020201193
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517313109
【氏名又は名称】ビエン - エア ホールディング ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナスコーニ、ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】サルチ、ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ジュールラット、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ガールキン、ガエル
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】実公平05-046735(JP,Y2)
【文献】特開平01-110357(JP,A)
【文献】特開2008-132041(JP,A)
【文献】実開平02-079915(JP,U)
【文献】特開平05-220175(JP,A)
【文献】特開2016-013434(JP,A)
【文献】特開2006-346452(JP,A)
【文献】米国特許第05022857(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科又は外科用途のハンドピース(1)であって、
- 回転軸(R)の周りを回転する駆動シャフト(2)を含む駆動機構によって、前記回転軸(R)を中心に回転して作動できるドリルツール(100)が取り外し可能な方法で挿入されたヘッド(10)と、
- 前記回転軸(R)に対して前記ドリルツール(100)を軸方向に保持するために、前記駆動シャフト(2)の内側に配置されたチャッキングクランプ(4)を含む、前記ドリルツール(100)用のクランプ装置であって、前記クランプ(4)はプランジャ(5)と協働する、クランプ装置と、
- 前記ドリルツール(100)を解放するために、前記プランジャ(5)に作用するように配置された押しボタン(61)と、を含み、
・前記ハンドピース(1)は、前記回転軸(R)の周りに対称的に配置され、前記押しボタン(61)の方向に前記プランジャ(5)に磁気引力(F)を及ぼす永久磁石(7)を含むことを特徴とする、ハンドピース(1)。
【請求項2】
前記永久磁石(7)は、環状又は円筒形を有する、請求項1に記載のハンドピース(1)。
【請求項3】
前記永久磁石(7)は、前記ヘッド(10)内の前記押しボタン(61)の保持ナット(62)上に配置されている、請求項1又は2に記載のハンドピース(1)。
【請求項4】
前記永久磁石(7)は、軸方向保持カラー(722)を備えた保持ピース(72)によって、前記押しボタン(61)の前記保持ナット(62)に固定されている、請求項3に記載のハンドピース(1)。
【請求項5】
前記永久磁石(7)は、前記押しボタン(61)
に固定されている、請求項1又は2に記載のハンドピース(1)。
【請求項6】
前記永久磁石(7)は、軸方向保持ワッシャ(71)と前記押しボタン(61)の下面(610)との間に配置されている、請求項5に記載のハンドピース(1)。
【請求項7】
前記軸方向保持ワッシャ(71)は
、強磁性材料でできている、請求項6に記載のハンドピース(1)。
【請求項8】
前記押しボタン(61)内に配置された抗加熱ボール(8)であって、前記抗加熱ボール(8)
は強磁性材料でできている、請求項5から7までのいずれか一項に記載のハンドピース(1)。
【請求項9】
前記永久磁石(7)は、前記押しボタン(61)
の下面(610)の凹部(611)に配置されたパッドによって形成され、前記駆動シャフト(2)と回転して一体である前記プランジャ(5)の上部(52)に配置された抗加熱ボール(8)と接触することができる、請求項5から7までのいずれか一項に記載のハンドピース(1)。
【請求項10】
前記磁石(7)は、前記押しボタン(61)に組み込まれたミューメタルのカバー(57)によって覆われている、請求項5から9までのいずれか一項に記載のハンドピース(1)。
【請求項11】
前記プランジャ(5)は、上向きに延びる第1の周辺環状突起(54)をさらに含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載のハンドピース(1)。
【請求項12】
前記プランジャ(5)は、肩部(50)を超えて半径方向に延びる第2の周辺環状突起(55)をさらに含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載のハンドピース(1)。
【請求項13】
前記プランジャ(5)は、磁性材料のキャップ(56)によって覆われ、前記キャップ(56)は、軸方向及び半径方向に同時に延びる環状ビード(561)を備える、請求項1から12までのいずれか一項に記載のハンドピース(1)。
【請求項14】
前記プランジャ(5)は、硬度が800HV以下の鉄合金でできており、硬度が900HV以上の薄い硬質コーティングで覆われている、請求項1から13までのいずれか一項に記載のハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン及びコントラアングルの分野、より具体的には、ドリルツール用のチャッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市場に出回っている高速歯科用ハンドピースの大部分、つまり(空圧式)タービンとマルチプライヤコントラアングル(電気モーター式)には、弾性クランプを使用してドリルをクランプするシステムが装備されている。このシステムは非常に長い間よく知られており、特に特許文献欧州特許第0273259号に記載されている解決策はよく知られている。
【0003】
このタイプのクランプシステムでは、ローターシャフト(エアタービンの場合はタービン、又はコントラアングルの場合はトランスミッションピニオンのいずれかがその上及び外側に圧入される)駆動回転すると、ドリルツールにはクランプとプランジャが含まれる。クランプは一般にシャフトに圧入及び/又は溶接され、それは2つの機能を有している:柔軟な弾性端によってドリルを軸方向に保持する機能と、削っている間に歯科医によって半径方向荷重が加えられた場合、ドリルが過度に傾いて作業の精度に悪影響を与える過度の振動を発生させないようにドリルを半径方向にガイドする機能である。プランジャ自体は、シャフト内で軸方向に摺動でき、場合によってはシャフト内で角度を付けて回転できるため(円錐形プランジャの場合)、シャフト内で部分的に自由である。クランプの開放段階でクランプと協働して、外科医-歯科医がプランジャを覆っている解放ボタンを押すと、ドリルを解放する。クランプが閉じてドリルをつかむとき、プランジャはクランプの表面に単純に隣接することができるが、クランプの弾性部分に開く力を加えてはならない。
【0004】
削っている間に、外科医-歯科医によってドリルに加えられる過度の軸方向荷重のために、ドリルがクランプの顎を越えてカバーに向かって摺動し、プランジャをブロックすることを防ぐために、ユーザがプランジャをカバーに加えられた圧力に抗して押し、クランプを開いて作業の最後にドリルを取り外すのは不可能であり、クランプストップと呼ばれる追加の構成要素を含むさらに完成されたクランプシステムが存在する。そのような構成要素が導入され、好ましくは、ハンドピースのヘッドのカバーの側面のシャフトに圧入及び/又は溶接又ははんだ付けされ、それにより、プランジャの軸方向の閉塞を防ぐことが可能になる。したがって、クランプストップの存在は、クランプに詰まったドリルによるメーカーへの返品を制限する。
【0005】
しかしながら、従来技術のこれらの解決策のいずれも、特に削られる材料が特に硬いときの振動又は衝撃のために、プランジャが回転及び削っている間にクランプを誤って開くことを効果的に防ぐことを可能にしない。
【0006】
歯科用ハンドピースのヘッドに永久磁石を使用することも知られている。特許文献欧州特許第0374276号は、例えば、冷却水が上部及び下部ベアリングに到達するのを防ぐシール手段内で使用される永久磁石を開示し、それにより、永久磁石の間に配置された磁性流体は、回転駆動される支持体と固定キャップとの間の摩擦のない接触を確実にすることを目的とする。
【0007】
特許文献仏国特許第2573303号は、ドリルツールを保持するためのレバー作動クランプに関するものであり、それにより、磁石が、レバーを非アクティブ位置で外側キャップに固定することが予見される。
【0008】
これらの2つの解決策のいずれも、どちらかの動作中のドリルツールのクランプの信頼性に関する上記の問題を解決することはできない。
【0009】
したがって、これらの既知の制限のない解決策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第0273259号
【文献】欧州特許第0374276号
【文献】仏国特許第2573303号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Fiske, T.J.、Gokturk, H.S.&Kalyon, D.M. Journal of Materials Science(1997)32:5551。https://doi.org/10.1023/A:1018620407013、Materials Science and International Team(2008)。
【文献】Selected Systems from C-Cr-Fe to Co-Fe-S。Springer、22頁(
図2 Fe-Siシステムの状態図)、DOI:10.1007/978-3-540-74196-1_12。ISBN 978-3-540-74193-0、2011年12月25日取得。
【文献】Zhuang, Linら、「Hydrophilic Magnetochromatic Nanoparticles with Controllable Sizes and Super-high Magnetization for Visualization of Magnetic Field Intensity」、Scientific Reports、2015/11/23/online、5、17063、https://doi.org /10.1038/srep17063、https://www.nature.com/articles/srep17063#supplementary-information
【文献】Diane Talbot、Smart Materials、Institute of Materials,Minerals and Mining Schools Affiliate Schemeの2003年のリソースとして作成された小冊子
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、より効果的でより信頼性の高い新しいクランプ装置を提案することである。
【0013】
本発明の別の目的は、それにもかかわらず標準的なハンドピースのヘッドと互換性を維持し、解放に使用されるボタンプランジャの組み立てをより複雑にしない完全なクランプ装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、主請求項の特徴によって、特にハンドピースが回転軸の周りに対称的に設計され、プランジャに押しボタンの方向で磁気引力を及ぼす永久磁石を含むという事実によって達成される。
【0015】
有利なことに、永久磁石は、プランジャと決して接触しないように設計及び配置され、それによって、永久磁石とプランジャとの間にエアギャップが提供される。
【0016】
提案された解決策の利点は、磁力によってプランジャをクランプに対して上昇位置に保つことができることであり、これにより、削っている間にドリルが大きな衝撃を与えた場合でも、クランプの堅牢性を向上させることができるため、これは、クランプ内のプランジャの詰まりを非常に引き起こしにくく、さらに少ないので、ドリルの排出につながるチャックの開放を引き起こす可能性がある。
【0017】
同時に、提案された解決策は、ハンドピースの組み立て作業に影響を与えることなく、ハンドピースの構造に導入される追加の構成要素も最小限に抑えながら、クランプの信頼性を向上させることを可能にする。
【0018】
好ましい実施例によれば、押しボタンの保持ナットに永久磁石を配置することにより、押しボタンに意図しない圧力が加えられたために、ばねによって加えられる弾性戻り力に加えて、克服しなければならない磁力のためにチャックが適時に開くことに対して追加の安全性を提供することがさらに可能になる。
【0019】
いくつかの変形によれば、プランジャの形状はさらに、必要に応じて、それらを近づけるために、特に垂直方向又は半径方向に配向された周辺環状突起の助けを借りて、又は、プランジャを覆う、周辺環状ビードを備えたキャップの助けを借りて、磁石に向かい合う引力を最大化するように適合させることができる。
【0020】
別の有利な変形によれば、磁石は、遮蔽の目的で強磁性材料で覆われ、したがって、外部に対する磁石によって生成される磁場の影響を最小限に抑えること、及び外部磁場による干渉を最小限に抑えることを可能にする。
【0021】
さらに別の有利な変形では、永久磁石若しくはプランジャの近く、又はすぐ近くに位置するすべての構成要素は、好ましくは強磁性ではない。
【0022】
本発明は、実例として与えられ、以下の図面を参照して、以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好ましい実施例による、ドリルツールを備えたハンドピースのヘッドの正面図である。
【
図2】本発明の好ましい実施例によるクランプシステムを備えたタービンを使用するハンドピースの3次元での
図1に示される切断面(SS)に沿った部分矢状断面図である。
【
図3】矢状面(SS)での
図2のハンドピースの断面図を示す。
【
図4】
図3の拡大鏡(A)で示されるクランプ装置の拡大図を示す。
【
図5】本発明の別の好ましい実施例によるクランプシステムを備えたタービンを使用するハンドピースの3次元での部分矢状断面図である。
【
図6】矢状面(SS)での
図5のハンドピースの断面図を示す。
【
図7】
図6の拡大鏡(B)で示されるクランプ装置の拡大図を示す。
【
図8】圧縮空気だけでなく、駆動モーターシャフトを使用するコントラアングルタイプのハンドピースの3次元での部分矢状断面図であり、本発明のさらに別の好ましい実施例によるクランプシステムを備える。
【
図9】矢状面における
図8のハンドピースの断面図を示す。
【
図10】
図9の拡大鏡(C)で示されるクランプ装置の拡大図を示す。
【
図11】強磁性材料の突出部分が上向きになっている、本発明によるプランジャの実装のための変形の断面図による図を示し、
図11A及び11Bは、そのようなプランジャの代替の実装のための2つの上面図をそれぞれ示す。
【
図12】放射状に配向された強磁性材料の突出部分を備えたプランジャを実装するための別の変形の断面図による図を示し、
図12A及び12Bは、そのようなプランジャの代替実装の2つの上面図をそれぞれ示す。
【
図13】キャップで覆われた、本発明によるプランジャの実装のためのさらに別の変形の断面図による図を示し、
図13Aは、そのようなキャップの可能な実装に対応する上面図を示す。
【
図14】押しボタンが磁気シールドを備える別の好ましい実施例によるプランジャ及び磁石の断面図による図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願の文脈において、本発明によるクランプ機構が組み込まれているハンドピースは、パイプによって注入された圧縮空気の作用下でドリルが駆動回転されるときの「タービン」、又はモーターで作動する駆動シャフトを使用した「コントラアングル」で構成できる。
【0025】
図1に正確に示されているのは、タービン又はコントラアングルで構成できるハンドピース1の外側の図である。それは、その回転軸Rを中心に回転するように取り付けられた、ドリル100が挿入される基部にあるヘッド10を備える。ヘッド10を覆う押しボタン61は、従来の方法で、ハンドピースのユーザ、すなわち典型的には外科医-歯科医によってドリル100に圧力が加えられたときにドリル100を解放することを可能にする。
【0026】
図1の矢印S~Sは、本発明の文脈、最初にタービンの文脈(
図2から7)で、次にコントラアングルの文脈で提案されたドリル100の取り付け及びクランプの機構をより詳細に表示することを可能にするために、以下の
図2から10で使用される矢状切断面を示す。
【0027】
以下では、まず、
図2から
図4を参照して、タービンに接続された第1の好ましい実施例について説明する。
【0028】
図2は、
図1に示される切断面(SS)に沿ったハンドピース1の3次元の部分矢状断面図からなり、ドリル100のヘッド10及びのクランプ機構の異なる通常の要素を区別することを可能にし(しかし、明確にするために示されていない)、特に、図の右側に圧縮空気11を供給するためのパイプを含み、タービン21を駆動し、それ自体がドリルツール100の駆動シャフト2と回転して一体であり、一般に「ローターシャフト」と呼ばれる。ここでの駆動シャフト2は、2つのベアリング23、好ましくはボールベアリングの間に挿入され、それ自体がOリングタイプ24のそれぞれのガスケットによって圧搾される。駆動シャフト2に取り付けられているのは、それぞれ、ドリル用の軸方向保持クランプ4(その顎はこの図には見えないが、コントラアングルの対応する実施例に関連して
図10によく見られる)及び半径方向ガイドブッシュ3である。これらの2つの部品は、特にクランプ4に使用される材料をガイドブッシュ3の材料に調整することができるように分離されている。したがって、クランプ4は、好ましくは弾性及び変形可能な材料を必要とするが、ブッシュ3は、耐摩耗性であり、回転軸Rに沿って可能な限りの長い時間、ガイドするための優れた特徴を確実にするために、その部分について、好ましくは非常に硬い材料を必要とする。
【0029】
ヘッドの上部には、ドリル100を解放するために設けられた押しボタン61を保持するための部品が挿入されている。この保持部品は、記載された好ましい実施例によれば、その外周でねじ付きビード621によってヘッドにねじ込まれ、ヘッド10に作られためねじ13と協働するナット62からなる。シーリングガスケット64が提供され、これらの2つのねじ込み面が協働して、ナット及び押しボタンの繰り返し可能な位置決めを確実にし、したがってタービンの場合、ヘッドから出る空気力学的流れを安定させる。保持ナット62の上部に配置されているのはばね63であり、
図2及び3に示されるように、押しボタン61をその静止位置に戻すことを可能にし、押しボタンの周辺半径方向係合部分612が内周保持リップ622と接触して保持される。係合部分の協働が
図3に示されている。
【0030】
図2では、同様に、押しボタン61の下面610において、この目的のために提供された低熱伝導率の材料でできている抗加熱ボール8を区別することができ、これは、好ましくは、押しボタン61への熱伝達熱橋を最小化するために、ここでは六角形の断面である押しボタン61に設けられた中央の収容部613に直接圧入される。
【0031】
ナット62及び押しボタン61によって形成される押しボタンモジュール6、並びに2つの間に挿入された圧縮ばね63は、
図3の後半に示されている。
図2では、それでもプランジャ5を区別でき、
図3及び4に見られるように、方向Pに圧力が加えられたときに押しボタン61、又はここではより正確にはボール8と接触させることができ、永久磁石7がナット62に配置されている。本発明の文脈において、プランジャ5は、永久磁石7と協働するように、受動強磁性材料でできている。
【0032】
以下では、矢状面S-Sで前述した
図2と同じ要素を使用して、
図3を等しく参照し、
図4は、
図3の円で示された拡大鏡Aの詳細を示し、拡大図において、本発明による完成されたクランプ装置の異なる要素を表す。これらすべての図に共通する参照の説明は、体系的に繰り返されることはない。
【0033】
図2から
図4では、円筒形部分721及び軸方向保持カラー722を有する保持部品72の助けを借りて、環状形状7の永久磁石が押しボタン61の保持ナット62に位置決めされていることに留意されたい。この部品は、例えば、圧入、溶接若しくははんだ付け、又はねじ込みによってさえ、ナット62に任意の方法で固定することができ、環状形状の磁石7の位置決めは、半径方向の凹部の上に環状形状のクランプストップ51を位置決めできるようにするために、さらに周辺肩部50を有するプランジャ5のケーシングを越えて半径方向に延びることに留意されたい。この磁石7は、軸方向に磁化されており、したがって、パートナー強磁性要素、すなわちクランプ装置のプランジャ5に実質的に上向きに配向された引力を恒久的に及ぼす。磁気引力Fは、プランジャ5が押しボタン61の方向で上部位置に保たれているという事実を示す
図4の矢印によって示されている。使用条件において、すなわち、駆動シャフト2の回転中及び削っている間に、この磁気引力Fは、プランジャ5をクランプストップ51に対して平らにすることを可能にし、したがって、プランジャ5がクランプ4に詰まり、クランプ4が誤って開くのを防ぐ。
【0034】
本発明の文脈において、永久磁石7は、好ましくは環状又は円筒形であり、すなわち、ドリルの回転軸Rの周りの回転形態を有する。
図2から4に示される実施例によれば、永久磁石7がナット62内に位置決めされるという事実は、結果として、永久磁石7をそのパートナー強磁性要素、すなわちプランジャ5に可能な限り近づけ、したがって、磁力Fの強度を最大化して、それを「高い」位置に保つことを可能にする、すなわち、プランジャがクランプストップ51に対して接触し続けることを可能にする。
【0035】
永久磁石7が固定され、押しボタン61の保持ナット62内に配置されるこの好ましい実施例は、さらに、信頼性の追加の技術的利点を有する。実際、クランプを開くとき、押しボタン61は、ユーザによって方向Pに押されて、プランジャ5をクランプ4の内側に押し込み、したがって、クランプ4の弾性スリーブを開く。この場合、ユーザは、ナット62と押しボタン61との間の圧縮ばね63の保持力だけでなく、プランジャ5と永久磁石7との間の磁力Fも克服しなければならず、これは、ユーザ側の押しボタン61を誤って押すことに対する補足的なセキュリティを追加する。
【0036】
図5から7は、タービンに関する本発明の別の好ましい実施例を示す。
【0037】
この実施例によれば、ドリル100を駆動するための装置は、すべての点で、前述の実施例の装置と同一であり、
図2から4に示されている。したがって、これらの図の文脈で導入されたすべての参照番号は、再度説明されることはない。
【0038】
しかしながら、ドリル100をクランプするための装置は、永久磁石7の異なる配置を有し、これは、今度は、もはやナット62に組み込まれておらず、押しボタンに直接組み込まれている。言い換えれば、
図6に示されているように、環状形状の永久磁石7が、今度は、押しボタン61の下面610の凹部611内に、抗加熱ボール8の収容部613の周りに配置されている。永久磁石7は、押しボタン61の凹部の内側の位置に、軸方向保持ワッシャ71によって、好ましくは押しボタン61に溶接又ははんだ付け又は接着されて保持される。磁石のパートナー強磁性要素は、再び、
図5から7に示される「高」位置にある、すなわち、
図7に見られる矢印によって示される磁気引力Fによって、クランプストップ51に対して接触して保持されているプランジャ5であり、これはプランジャ5を上方に引っ張る傾向がある。
【0039】
機能機構は、回転/削りモードにおける前の実施例の機構と同様であり、磁石によって及ぼされる磁気引力Fに従ってプランジャが上方に引き上げられる。しかしながら、
図6及び7の矢印Pによって示されるように、押しボタン61に圧力がかかると、大きな違いに気付くことができる。換言すれば、押しボタン61へのそのような圧力段階の間、磁気引力は、永久磁石7とプランジャ5との間の距離のために、今度は押しボタン61の下向きの動きに有利に働き、押しボタンがプランジャ5に近づくときに減少する。したがって、ユーザが加えなければならない圧力Pの強度は、磁石がない場合の強度よりも小さいが、前の場合には増加した。
【0040】
しかしながら、
図5から7の実施例では、永久磁石7は、
図2から4の実施例よりもプランジャ5からより離れた位置に配置されているので、プランジャ5に加えられる磁気引力Fは、永久磁石7及びプランジャ5の寸法に等しい方法でより少ない。対照的に、
図5から7のこの最後の実施例は、単純なワッシャを使用して永久磁石を裏打ちすることができるので、達成するのがより簡単である。さらに、プランジャ5に作用する磁力を増大させるために、さらに、同様に強磁性材料内に、抗加熱ボール8とともに軸方向保持ワッシャ71を作製することが可能であり、例えば、30%のコバルトを含む炭化タングステンである。
【0041】
さらに、コントラアングルに関連して、以下の
図8から10に示されている変形によれば、永久磁石7はまた、押しボタンの内側であるが、抗加熱ボール8の後ろに位置決めされたディスク又はパッドの形をとることができる。そのような場合、磁気引力Fの増加が生じるように永久磁石7の厚さも顕著な方法で増加させることができる。
【0042】
図8及び9は、前の
図1から7のタービンに関して、ローターシャフト、すなわち駆動シャフト2の異なる実施例を示し、今度は、電気モーターによって駆動されるモーターシャフト12と駆動ピニオン22との間のギアリングの助けを借りる。クランプ装置はもはやクランプ4をブッシュ3から分離しないが、逆に、プランジャ5は、横方向ピンによって形成されたクランプストップ51のために、駆動シャフト2と回転して一体であるプランジャ5の上部52及び駆動シャフトに対して自由に回転する下部円錐部分53を備えた2つの部分でこれから達成される。押しボタン61の下面610の凹部611に配置されたパッドによって形成された永久磁石7は、これから、今度は、押しボタン61の収容部に直接ではなく、プランジャ5の上部52という条件で抗加熱ボール8と接触することができる。
【0043】
図9の囲まれた部分(拡大鏡(C))の拡大図である
図10に見られるように、クランプ4の顎45は、ドリル100を軸方向に保持する(他の部分が容易に見えるように示されていない)一方、押しボタン61にヘッド10の内側に向かって圧力が加えられたとき、下部円錐部53はそれらを広げないが、参照記号「P」を有する矢印の方向に一致する。そのような場合、押しボタン61の下面に配置された凹部611に収容された永久磁石7に関連する受動磁気要素は、正確には、少なくとも下部円錐部分53に含まれ、永久磁石7に対してこの部品が軸方向に離れているため、潜在的にプランジャ5の上部52にも含まれる。
【0044】
以下に説明する図面では、本発明による受動磁気要素を構成する永久磁石7とプランジャ5との間の磁気引力Fを増加させるために、複数の変形が与えられる。さらに、この目的を達成するために、変形によれば、強磁性材料にもクランプストップを実装することが同様に可能であることにさらに留意されたい。
【0045】
図11の図は、本発明によるプランジャ5を達成するための変形の断面図を示しており、強磁性材料の第1の環状突出部分54が上向きになっている。様々なホーンを形成する突出部のこのような配置は、永久磁石7をプランジャ5に部分的に近づけることを可能にし、したがって、磁気引力Fの強さを増大させることを可能にする。
図11A及び11Bは、それぞれ、ホーンを備えたそのようなプランジャ5の代替の実装のための2つの上面図を表し、ドリルの回転軸Rを中心に対称に配置された切頭ディスク54Aの形状の2つの周辺部分、及び2つのロッド54Bを有する。
【0046】
図12の図は、強磁性材料の第2の突出部分55を有するプランジャを実現するための別の変形の断面図を示しており、今度は半径方向に配向され、これにより、
図2から4、並びに5から7に示される実施例に従って、永久磁石と向かい合わせにすることによって、永久磁石7をプランジャ5に少なくとも部分的に近づけることによって、磁気引力Fの強さを増加させるという同じ有利な効果を得ることが可能である。これらの2つの突出部分55は、プランジャ5の肩部50を超えて半径方向に延びる。
図12A及び12Bは、それぞれ、そのようなプランジャ5のロッドのタイプ又はカラー55Bにそれぞれ再び対応する、2つの突出部分55A及び55Bの代替の実装のための2つの上面図を表す。
【0047】
図13は、本発明によるプランジャ5を実装するためのさらに別の変形の断面図による図を示しており、その形状により、プランジャ5を永久磁石に近づけることが可能である。今度のプランジャ5は、軸方向及び半径方向に同時に延びる環状ビード561を備えた磁性材料のキャップ56で覆われている。このような変形は、いわば、
図11及び12に関連して前述した2つの変形の利点を組み合わせたものである。
図13Aは、オーバーモールドされたディスク56Aの形態のそのようなキャップの可能な実装に対応する上面図を示す。
【0048】
図14は、最後に、その部分について、永久磁石が押しボタン61に組み込まれる好ましい実施例に関連する変形によるプランジャ5及び永久磁石7の断面図による図を示す。特に
図5から7及び8から10に示されているように、押しボタン61にはさらに磁気シールドが設けられている。この目的のために、永久磁石7は、例えば、ミューメタルで作られたシールドカバー57によって覆われ、これは、押しボタン61自体の材料を構成することによって、又は内部継手のいずれかによって、前記押しボタンに組み込まれている。
【0049】
プランジャに作用する磁力を加えてプランジャを高い位置に保ち、クランプの緩みを防止することによって改善された新しいクランプ装置に関する本発明は、前の図のセットによって、図示された別個の実施例に関連して説明されてきたが、押しボタン61の方向に上方への磁気引力Fの強さを最大化する目的で、タービンに関連する2つの好ましい実施例の特に組み合わせが考えられることが理解されるであろう。さらに、同様に、抗加熱ボール8は、
図8から10に示されるコントラアングルに関連するものを含む、前述の実施例のいずれかのために強磁性材料に実装され得ることが理解されるであろう。
【0050】
当業者は同様に、クランプ装置及び相互に協働する磁性部品を、ハンドピース1のヘッド10全体ではなく、ヘッドに取り付けることを意図したモジュール又はカートリッジ内に配置することが考えられることをさらに理解するであろう。
【0051】
しかしながら、前述の説明及び求められる技術的効果を考慮すると、永久磁石7をプランジャ5に直接配置し、プランジャモジュール6内の強磁性部品の配置を逆にすることは不利であることが理解されよう。クランプ4は、ほとんどの場合、強磁性材料にも実装されているので、プランジャ5とクランプとの間の相互の磁気引力は、求められているものとは逆の効果をもたらすであろう。
【0052】
図示されたすべての実施例について、特に有利な変形は、硬度が800HV以下の鉄合金でできており、硬度が900HV以上の薄い硬質コーティングで覆われたプランジャを製造することにさらにある。非限定的な例として、プランジャは、マルテンサイト系ステンレス鋼又はコバルト鉄合金で作ることができる。このようにして、プランジャ本体の耐食性、透磁率、及び磁気飽和は、比較的硬くない材料(通常、マルテンサイト系焼戻し鋼又は非焼戻し鋼、又はVacoflux(登録商標)などの他の非腐食性の高強磁性鉄コバルト合金の場合は150~700HV)を使用することによって最大化することができる。非限定的な例として、硬質層は、窒化クロム又は窒化チタン又は窒化タンタル又は酸化ケイ素で達成することができ、PVD又はCVD又はALD技術によって堆積させることができる。このようにして、プランジャクランプとプランジャシャフトの接触面の耐摩耗性が最大化され、その結果、耐用年数が長くなる。
【0053】
図示されたすべての実施例について、特に有利な変形は、さらに、1T以上の磁気飽和の磁場を有する強磁性材料(例えば、鉄、コバルト又はニッケル)の粉末を含む5g/cm
3以下の低密度の成分(例えば、ケイ素又はポリプロピレン又は別の樹脂)からなる複合材料における機械加工、カットアウト又は3D印刷によるプランジャの製造にある。この変形の利点は、プランジャが同時に非常に軽く、磁石に向かう非常に強い磁気引力の影響を受け得る一方で、非常に激しい衝撃の場合であってもクランプに対してプランジャを上昇した位置に維持できることである。この変形の可能な実装は、以下の記事に基づいて当業者によって導き出すことができる:
・Fiske, T.J.、Gokturk, H.S.&Kalyon, D.M. Journal of Materials Science(1997)32:5551。
https://doi.org/10.1023/A:1018620407013、Materials Science and International Team(2008)。
・Selected Systems from C-Cr-Fe to Co-Fe-S。Springer、22頁(
図2 Fe-Siシステムの状態図)、
DOI:10.1007/978-3-540-74196-1_12。ISBN 978-3-540-74193-0、2011年12月25日取得。
【0054】
図示されたすべての実施例について、特に有利な変形は、磁歪又は磁色材料及び/又は流体で構成された、すなわち外部磁場に応じてその形態及び/又は色が変化する、外側から見えるインサートを押しボタンに導入することにある。非限定的な例として、これらの材料ファミリーの例は、以下の文書に記載されている。
・Zhuang, Linら、「Hydrophilic Magnetochromatic Nanoparticles with Controllable Sizes and Super-high Magnetization for Visualization of Magnetic Field Intensity」、Scientific Reports、2015/11/23/online、5、17063、
https://doi.org /10.1038/srep17063、
https://www.nature.com/articles/srep17063#supplementary-information
・Diane Talbot、Smart Materials、Institute of Materials,Minerals and Mining Schools Affiliate Schemeの2003年のリソースとして作成された小冊子
【0055】
有利には、このように押しボタンに挿入され、外部から見える材料及び/又は流体は、アフターサービスの文脈での修理中に、磁石によって生成される磁場の劣化をユーザ又は技術者に示すことができる。この劣化は、磁石の劣化及び/又は経年劣化(製品の使用説明書に従わない滅菌手順、高すぎる温度又は高真空にさらされている)又は、力線を歪める可能性のある強磁性材料のタービンのヘッドへの侵入、又は磁石又はプランジャを破壊した激しい衝撃による。この場合、ユーザは他の内部構成要素の劣化を引き起こす前に修理のためにハンドピースを返却することができ、及び/又はアフターサービス技術者はハンドピースの磁気構成要素を清掃及び/又は修理するために特別に介入することができる。