(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】光学ユニット、ビーム結合装置およびレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20240426BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20240426BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240426BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240426BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B3/06
G02B5/18
B23K26/064 A
(21)【出願番号】P 2021561151
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025876
(87)【国際公開番号】W WO2021106257
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019215505
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発/高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】淺井 陽介
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163335(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163598(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/037663(WO,A1)
【文献】特開2006-171348(JP,A)
【文献】特開2000-137139(JP,A)
【文献】国際公開第2009/137703(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00- 3/14
B23K26/064
G02B 5/18
G02B 5/32
H01S 5/00- 5/50
G02B 6/42
G02B27/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ビームを導光する光学ユニットであって、
前記複数の光ビームがそれぞれ透過する複数のレンズ部を備え、
前記複数のレンズ部は、前記光ビームが透過する光軸方向と交差する配列方向に配列され、
前記各レンズ部は、前記光軸方向及び前記配列方向と交差する厚み方向に対して傾斜しており、
前記光軸方向における前記光学ユニットの両端面のうちの、一方の端面において前記レンズ部が配列されたピッチが、他方の端面において前記レンズ部が配列されたピッチよりも小さい
光学ユニット。
【請求項2】
前記両端面のうちの片方の端面に対向して配置され、当該端面から前記レンズ部に光ビームを入射させる第1のコリメータレンズをさらに備える
請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記両端面のうちの、前記第1のコリメータレンズが対向した端面とは反対側の端面に対向して配置され、当該端面から射出する光ビームをコリメートする第2のコリメータレンズをさらに備える
請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
互いに異なる波長で共振可能な複数の光源素子を含み、各光源素子からの複数の光ビームを発光する光源と、
前記光源からの各光ビームを導光する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ユニットと、
前記光源から前記光学ユニットを介して入射する各光ビームを回折して、異なった波長で共振する複数の光ビームを結合する回折素子とを備え、
前記光学ユニットが、前記両端面のうちの前記レンズ部のピッチが小さい端面を前記回折素子に向けて配置される
ビーム結合装置。
【請求項5】
前記光源素子毎の前記回折素子を介した共振の波長は、前記配列方向における前記各光源素子の位置に応じて次第に変化する
請求項4に記載のビーム結合装置。
【請求項6】
前記配列方向及び前記厚み方向に並ぶ複数の光源素子を含み、各光源素子からの複数の光ビームを発光する光源と、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ユニットであって、前記光源において前記配列方向に並んだ光源素子の組毎に、各光ビームを導光する複数の光学ユニットと、
各光学ユニットに導光された複数の光ビームを結合する結合光学系とを備え、
前記光学ユニットが、前記両端面のうちの前記レンズ部のピッチが大きい端面を前記結合光学系に向けて配置される
ビーム結合装置。
【請求項7】
前記配列方向における前記複数の光源素子間のピッチと、前記光学ユニットの両端面のうちの前記光源に近い方の端面において前記レンズ部が配列されたピッチとが合致する
請求項4~6のいずれか1項に記載のビーム結合装置。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載のビーム結合装置と、
前記ビーム結合装置によって結合された光ビームを加工対象物に照射する加工ヘッドと
を備えたレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学ユニット、及び光学ユニットを備えたビーム結合装置、並びにビーム結合装置を備えたレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、個々の光ビームを重ね合わせて結合ビームを形成する波長合成式のレーザシステムを開示している。特許文献1では、光出力を増大する観点より、複数のダイオードバーからの光ビームを光ファイバに集光することが開示されている。また、レーザシステムを小型化する目的から、波長合成における結合レンズの配置を焦点距離から外すための光学系を別途含めたり、ビーム回転子を回転させたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第2016/0048028号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の光ビームを導光する設計自由度を向上することができる光学ユニット、ビーム結合装置及びレーザ加工機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る光学ユニットは、複数の光ビームを導光する。光学ユニットは、複数の光ビームがそれぞれ透過する複数のレンズ部を備える。複数のレンズ部は、光ビームが透過する光軸方向と交差する配列方向に配列される。各レンズ部は、光軸方向及び配列方向と交差する厚み方向に対して傾斜している。光軸方向における光学ユニットの両端面のうちの、一方の端面においてレンズ部が配列されたピッチが、他方の端面においてレンズ部が配列されたピッチよりも小さい。
【0006】
本開示の一態様に係るビーム結合装置は、互いに異なる波長で共振可能な複数の光源素子を含む光源と、上記の光学ユニットと、回折素子とを備える。光源は、各光源素子からの複数の光ビームを発光する。光学ユニットは、光源からの各光ビームを導光する。回折素子は、光源から光学ユニットを介して入射する各光ビームを回折して、異なった波長で共振する複数の光ビームを結合する。光学ユニットが、両端面のうちのレンズ部のピッチが小さい端面を回折素子に向けて配置される。
【0007】
本開示の別の態様に係るビーム結合装置は、配列方向及び厚み方向に並ぶ複数の光源素子を含む光源と、複数の上記光学ユニットと、結合光学系とを備える。光源は、各光源素子からの複数の光ビームを発光する。複数の光学ユニットは、光源において配列方向に並んだ光源素子の組毎に、各光ビームを導光する。結合光学系は、各光学ユニットに導光された複数の光ビームを結合する。光学ユニットが、両端面のうちのレンズ部のピッチが大きい端面を結合光学系に向けて配置される。
【0008】
本開示に係るレーザ加工機は、上記いずれかのビーム結合装置と、ビーム結合装置によって結合された光ビームを加工対象物に照射する加工ヘッドとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る光学ユニット、ビーム結合装置及びレーザ加工機によると、複数の光ビームを導光する設計自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態1に係るレーザ加工機の構成を例示する図
【
図2】実施形態1のビーム結合装置における光ビームの結合方法を説明した図
【
図3】ビーム結合装置における共振波長のスペクトルを示すグラフ
【
図4】実施形態1に係るビーム結合装置の構成を示す図
【
図5】ビーム結合装置における光学ユニットの基本構成を例示する図
【
図6】光学ユニットにおけるビームツイスタユニットの構成例を示す斜視図
【
図7】実施形態1における光学ユニットの構成例を示す図
【
図9】
図7の光学ユニットにおける主光線を例示する光路図
【
図10】実施形態1のビーム結合装置の実施例を示す図
【
図11】実施形態2に係るレーザ加工機の構成を例示する図
【
図12】実施形態2に係るビーム結合装置の構成を示す図
【
図13】実施形態2における光学ユニットの構成例を示す図
【
図15】
図13の光学ユニットにおける主光線を例示する光路図
【
図16】実施形態2のビーム結合装置の実施例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施形態1)
実施形態1では、波長合成式のビーム結合装置及びそれを備えたレーザ加工機に、光学ユニットを適用する例について説明する。
【0014】
1.レーザ加工機について
実施形態1に係るレーザ加工機及びビーム結合装置の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機1の構成を示す図である。
【0015】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機1の構成を例示する図である。レーザ加工機1は、例えば、ビーム結合装置2と、伝送光学系10と、加工ヘッド11と、コントローラ12とを備える。レーザ加工機1は、レーザ光を種々の加工対象物15に照射して、各種レーザ加工を行う装置である。各種レーザ加工は、例えばレーザ溶接、レーザ切断、及びレーザ穿孔などを含む。
【0016】
ビーム結合装置2は、例えばレーザ加工機1のレーザ光を供給するために、別個に発光する複数の光ビームを結合する装置である。本実施形態において、ビーム結合装置2は、複数の光ビームを、互いに異なる波長において共振させながら合成する波長合成式で構成される。波長合成式のビーム結合装置2によると、良好なビーム品質を得やすく、ビーム径を絞り易い。
【0017】
レーザ加工機1において、伝送光学系10は、ビーム結合装置2からのレーザ光を加工ヘッド11に伝送する光学系であり、例えば光ファイバを含む。加工ヘッド11は、例えば加工対象物15に対向して配置され、ビーム結合装置2から伝送されたレーザ光を加工対象物15に照射する装置である。
【0018】
コントローラ12は、レーザ加工機1の全体動作を制御する制御装置である。コントローラ12は、例えばソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU又はMPUを備える。コントローラ12は、各種プログラム及びデータを記憶する内部メモリ、及び使用者の操作により発振条件等を入力可能な各種インタフェースを備えてもよい。コントローラ12は、各種機能を実現するASIC,FPGA等のハードウェア回路を備えてもよい。また、コントローラ12は、光源の駆動回路と一体的に構成されてもよい。
【0019】
1-1.ビーム結合装置について
本実施形態のビーム結合装置2は、例えば
図1に示すように、光源の一例であるLDバー3と、光学ユニット4と、結合レンズ24と、回折素子25と、出力カプラ26とを備える。本実施形態のビーム結合装置2は、LDバー3と出力カプラ26との間を往復する光路において、光を共振させる外部共振型の光共振器を構成する。
【0020】
LDバー3は、一次元的に配列された複数のLD(レーザダイオード)311~315を含む光源素子のアレイで構成される。以下では、LD311~315が配列された方向を「X方向」とし、LDバー3がLD311~315から射出する光ビームの光軸の方向を「Z方向」とし、X,Z方向に直交する方向を「Y方向」とする。
【0021】
図1では、LDバー3における3個のLD311,313,315を例示している。LDバー3に含まれるLD311~315の個数は、例えば数十個から数百個である。複数のLD311~315は、例えばLD発光層の材質に応じた共通の自然放出スペクトルを有する(
図3参照)。以下、LD311~315の総称を「LD31」という場合がある。各LD31は、LDバー3のエミッタを構成する光源素子の一例であり、それぞれ+Z側に光ビームを射出する。
【0022】
光学ユニット4は、LDバー3の各LD31からの複数の光ビームをそれぞれ調整して導光する光学系である。光学ユニット4は、LDバー3の+Z側に配置される。本実施形態の光学ユニット4によると、複雑な光学設計を伴う波長合成式のビーム結合装置2における設計自由度を向上して、ビーム結合装置2を小型化することができる。光学ユニット4の詳細については後述する。
【0023】
結合レンズ24は、例えば光学ユニット4の+Z側に距離D1を置いて配置される。結合レンズ24の-Z側の距離D1は、例えば結合レンズ24の焦点距離に設定される。LDバー3の各LD31からの複数の光ビームは、光学ユニット4を介して結合レンズ24に入射すると、結合レンズ24から+Z側に距離D2を置いた位置に集光する。結合レンズ24は、こうした集光時に各光ビームをそれぞれコリメートする。
【0024】
回折素子25は、例えば結合レンズ24から+Z側に距離D2の位置に配置される。回折素子25は、例えば透過型の回折格子が形成された分散性素子である。本実施形態において、回折素子25の回折格子は、複数のLD311~315からの光ビームを同じ方向に射出して、結合するための回折条件を満たす。回折素子25の回折条件は、例えば次式(1)のように表される。
【0025】
sinα+sinβ=mλ/d …(1)
ここで、αは回折素子25に入射する光ビームの入射角であり、βは回折後に射出する光ビームの回折角である。また、λは回折させる光の波長であり、共振波長に対応する。dは、回折素子25における回折格子のピッチである。mは、回折次数を示し、例えば自然数である。
【0026】
図2は、ビーム結合装置2の回折素子25における光ビームの結合方法を説明した図である。回折素子25においては、
図2に示すように、各LD311,313,315からの光ビームの入射角α=α1,α2,α3が互いに異なる。本実施形態のビーム結合装置2では、上式(1)に基づいて、各LD311~315の回折角βを同一にするように、各LD311~315に異なる共振波長λが設定される。これにより、複数のLD311~315からの光ビームは、回折後に回折素子25から同じ方向に射出して、結合結果の光ビームが得られる。
【0027】
図3は、ビーム結合装置2における共振波長λのスペクトルを示すグラフである。
図3のグラフにおいて、横軸は波長[nm]を示し、縦軸は光の強度を示す。
【0028】
図3では、LDバー3における複数のLD311~315における個々の共振スペクトルS1~S3と、共通の自然放出スペクトルS0とを示している。各共振スペクトルS1,S2,S3は、各々のLD311,313,315の共振波長λの分布を示す。自然放出スペクトルS0は、例えば955nm~990nmといった900nm帯の波長帯を含む。共振スペクトルS1~S3によると、LDバー3において配列された位置に応じてLD311からLD315へと順番に、共振波長λが長くなっている。
【0029】
本実施形態のビーム結合装置2は、
図3に示すように、LDバー3中の全てのLD311~315の共振スペクトルS1~S3が、自然放出スペクトルS0の範囲内に収まるように、ビーム結合装置2の各種パラメータが設定される。ビーム結合装置2の各種パラメータは、例えば、LDバー3におけるLD311~315のピッチ、結合レンズ24の焦点距離、回折素子25における回折格子の形状、ビーム結合装置2の各部間の距離である。
【0030】
図1に戻り、出力カプラ26は、回折素子25において回折された光ビームが射出する方向に配置される。出力カプラ26は、例えば所定の透過率及び反射率を有するミラー素子等を含む。回折素子25から出力カプラ26に入射する光ビームのうち、透過率に応じた透過成分は、ビーム結合装置2の出力として、例えば伝送光学系10に射出する。一方、反射率に応じた反射成分は、光共振のために回折素子25に戻される。出力カプラ26には、こうした反射率及び透過率が調整可能な機構が設けられてもよい。
【0031】
以上のようなビーム結合装置2によると、外部共振型の光共振器として波長合成式のビーム結合を行って、良好なビーム品質を得ることができる。その一方で、波長合成式のビーム結合を行う外部共振型の光共振器においては、光学設計が複雑になり、装置構成の大型化を招くといった課題がある。これに対して、本実施形態では、こうした光学設計の設計自由度を向上し、ビーム結合装置2を小型化できる光学ユニット4を提供する。
【0032】
1-1-1.ビーム結合装置の詳細
本実施形態に係るビーム結合装置2の構成の詳細を、
図4を用いて説明する。
図4(A)は、ビーム結合装置2をY方向から見た平面図を示す。
図4(B)は、ビーム結合装置2をX方向から見た側面図を示す。
【0033】
本実施形態のビーム結合装置2において、光学ユニット4は、例えば、LDバー3に対向配置されるBTU(ビームツイスタユニット)40と、BTU40の+Z側に配置されるSAC(スロー軸コリメータ)45とを含む。結合レンズ24は、例えばX方向において正の屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成される。なお、BTU40とSAC45とは別体で提供されてもよく、この場合においてBTU40は本実施形態における光学ユニットの一例である。
【0034】
本実施形態において、例えば光学ユニット4のBTU40から結合レンズ24までの距離D1は、上述したようにLDバー3からの各光ビームのコリメートの観点から、結合レンズ24の焦点距離Dfに設定される。一方、結合レンズ24から回折素子25までの距離D2は、各光ビームを回折素子25に集光する観点から設定することが考えられる。
【0035】
ここで、LDバー3からの複数の光ビームが互いに平行なまま結合レンズ24に入射するような場合、上記集光の観点から回折素子25までの距離D2も焦点距離Dfだけ取る必要が生じ、装置構成が大型化してしまう。そこで、本実施形態では、光学ユニット4のBTU40により、LDバー3からの複数の光ビームの向きを制御する。
【0036】
図4(A),(B)では、それぞれLDバー3における外側のLD311からの光ビームの主光線L11と、中央のLD313からの光ビームの主光線L13とを例示している。本実施形態のビーム結合装置2において、例えば中央のLD313は、光学ユニット4及び結合レンズ24を直進し、Z方向に平行な主光線L13を有する。
【0037】
本実施形態のBTU40によると、
図4(A)に示すように、LDバー3における外側のLD311からの光ビームの主光線L11をX方向に内向させる。これにより、例えば結合レンズ24から焦点距離Dfよりも短い距離D2において、各主光線L11,L13が交差し、複数の光ビームを集光させることができる。よって、回折素子25までの距離D2を焦点距離Dfよりも短縮し、ビーム結合装置2を小型化することができる。
【0038】
又、BTU40が複数の光ビームの主光線方向を制御することで、結合レンズ24の配置を変えることができる。例えば、結合レンズ24の焦点距離Dfが、上述したコリメートの観点から適切な長さに設定可能となり、例えば1m以上等にも設定可能である。その一方で、集光の機能が、BTU40と結合レンズ24との協働によって実現されるような設計自由度も得られる。
【0039】
また、本実施形態の光学ユニット4によると、BTU40でX方向に内向させた主光線L11が、
図4(B)に示すように、Y方向においては特に内向あるいは外向しないようにすることができる。ここで、外部共振型の光共振器においては、光ビームの光線角度がY方向にずれると、出力カプラ26(
図1参照)に対する光ビームの入射角度が変わり、光共振に不具合を生じる事態が考えられる。これに対して、本実施形態の光学ユニット4によると、Y方向における光線角度に干渉せずにX方向の光線方向を制御でき、上記のような不具合を回避できる。以上のように、本実施形態の光学ユニット4によると、ビーム結合装置2における各種光学設計の設計自由度を向上することができる。
【0040】
2.光学ユニットについて
以下、本実施形態におけるビーム結合装置2の光学ユニット4の詳細について説明する。
【0041】
2-1.光学ユニットの基本構成
まず、光学ユニット4の基本的な構成について、
図5~6を用いて説明する。
図5は、光学ユニット4の基本構成を例示する。
【0042】
図5(A)は、基本構成における光学ユニット4の平面図を示す。
図5(B)は、
図5(A)の光学ユニット4の側面図を示す。
図5(A),(B)では、中央のLD313のような1つのLD31からの光ビームの光路を例示している。
【0043】
光学ユニット4におけるBTU40は、BT(ビームツイスタ)50と、FAC(ファスト軸コリメータ)41とを含む。光学ユニット4では、例えばLD31近傍から+Z側へ順番に、FAC41、BT50及びSAC45が配置される。
【0044】
本実施形態において、LD31は、ファスト軸Af及びスロー軸Asを有する光ビームを発光する。光ビームのファスト軸Afは、スロー軸Asよりも急速にビーム径を拡げ、且つ良好なビーム品質を得やすい。LD31の光ビームが光学ユニット4に入射する前に、光ビームのファスト軸AfはY方向に向いており、スロー軸AsはX方向に向いている。
【0045】
FAC41は、ファスト軸Afにおいて光ビームをコリメートするために設けられ、例えば正の屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成される。FAC41は、例えば
図5(A),(B)に示すように、長手方向をX方向に向けて、LDバー3の+Z側から焦点距離の位置に配置される。本例では、LD31からの光ビームは、FAC41によりY方向(即ちファスト軸Af)においてコリメートされて、BT50に入射する。
【0046】
図6に、BT50の構成例を示す。BT50は、例えば複数の光ビームをそれぞれ回転させる光学素子であり、複数の斜行したレンズ部51を含む。斜行レンズ部51は、BT50において、LD31毎のレンズを構成する部分であり、例えばシリンドリカルレンズを構成する。なお、BT50とFAC41とは別体で提供されてもよく、この場合においてBT50は本実施形態における光学ユニットの一例である。
【0047】
BT50は、例えばX方向に所定のピッチで複数の斜行レンズ部51を配列するように形成される。本構成例において、斜行レンズ部51は、配列方向(即ちX方向)およびBT50の厚み方向(即ちY方向)の双方に対して45°傾斜している。BT50における斜行レンズ部51の傾斜は、必ずしも45°でなくてもよく、例えばY方向に対して40°~50°であってもよい。
【0048】
図5(A),(B)の例において、BT50は、LD31からFAC41を介して入射する光ビームを、XY平面において回転角度90°だけ回転させる。これにより、BT50から射出する光ビームのスロー軸AsがY方向に向き、ファスト軸AfはX方向に向くこととなる。又、BT50の射出時の光ビームは、Y方向では発散光となり、X方向においては平行光となる。
【0049】
SAC45は、スロー軸Asにおいて光ビームをコリメートするために設けられ、例えば正の屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成される。SAC45は、例えば
図5(A),(B)に示すように、長手方向をX方向に向けて、BTU40の+Z側から焦点距離の位置に配置される。本例では、BT50からの光ビームは、SAC45によりY方向(即ちスロー軸As)においてコリメートされて、光学ユニット4を射出する。
【0050】
以上の光学ユニット4によると、LDバー3の各LD31から発光した光ビームは、基本的にはファスト軸Af及びスロー軸Asにおいてコリメートされる。但し、光の波動的な作用により、特にファスト軸AfにおいてはBT50の+Z側の面等からの波の影響としてビーム径が広がり得る。これに対して、本実施形態のビーム結合装置2においては、結合レンズ24による各光ビームのコリメートによって、上記の影響を抑制することが可能となる。
【0051】
2-2.光学ユニットのBTについて
本実施形態では、以上のような光学ユニット4の各部の基本的な機能を利用しながら、BT50における斜行レンズ部51の配置を調整することにより、各種の主光線の制御を実現する。以下、こうした光学ユニット4の構成例を説明する。
【0052】
図7は、本実施形態における光学ユニット4のBT50の構成例を示す。
図7は、複数のLD311,312,313,314,315と共に、-Z側から見た光学ユニット4の前面図を示している。LD311~315からの光ビームは、例えばZ方向を光軸方向として、それぞれ対向するレンズ部51を-Z側から+Z側に透過する。本実施形態のBT50では、各LD31からの光ビームの射出側と入射側すなわち±Z側の両端面の間で、斜行レンズ部51のピッチをずらして構成される。
【0053】
図8は、
図7のBT50におけるXZ平面の断面図を示す。本構成例のBT50は、+Z側の端面における斜行レンズ部51間のピッチWoが、-Z側の端面におけるピッチWiよりも小さくなるように構成される。-Z側のピッチWiは、例えばLDバー3におけるLD31間のピッチと同一に設定される。本構成例のBT50において、例えば中央の斜行レンズ部51の中心は、±Z側の両面において合致する。
【0054】
ピッチWi,Wo間の差分は、例えば各ピッチWi,Woよりも充分に小さく設定され、例えば各ピッチWi,Woの0.1倍以下である。ピッチWi,Wo間の差分は、斜行レンズ部51或いはLD31の個数を考慮して設定されてもよい。ピッチWi,Wo間の差分は、例えば各ピッチWi,Woの0.0001倍以上である。
【0055】
図9(A)~(C)は、本構成例の光学ユニット4における光路を例示する。
図9(A)は、
図7の光学ユニット4におけるA-A断面に対応する。A-A断面は、LDバー3の各LD311~315が位置するXZ平面である。
図9(B),(C)は、それぞれ
図9(A)におけるB-B断面図とC-C断面図に対応する。B-B断面は、中央のLD313が位置するYZ平面である。C-C断面は、外側のLD315が位置するYZ平面である。
【0056】
本実施形態の光学ユニット4によると、各LD31からの光ビームの主光線は、
図9(A)~(C)に示すように、FAC41に入射してからBT50の+Z側の面に到る前まで、Z方向に沿って直進する。BT50の+Z側の面では、-Z側の面よりも小さい斜行レンズ部51のピッチWoにより、X方向において外側に位置するLD31aほど、主光線LaがX方向に内向すると共に、Y方向にも傾き得る。
【0057】
各主光線La,Lcは、BT50を射出するとSAC45に到る。ここで、SAC45はY方向における光ビームのコリメートを行うことから、
図9(C)に示すように、Y方向における主光線Lcの傾きはSAC45において補正される。
【0058】
以上のように、本実施形態の光学ユニット4によると、X方向における外側のLD31cの主光線Lcを、X方向に制限して内向させることができる。
【0059】
2-3.実施形態1の実施例
以上のような本実施形態のビーム結合装置2とその光学ユニット4の構成例に関する実施例について、以下説明する。
【0060】
本実施形態のビーム結合装置2の数値的な実施例として、上記の構成例の光学ユニット4を用いた数値シミュレーションを行った。本シミュレーションにおいて、SAC45の焦点距離は50mmに設定し、結合レンズ24の焦点距離は1130mmに設定し、LDバー3のLD31間のピッチは0.225000mmに設定した。こうしたシミュレーション環境において、本実施例としてBT50の+Z側のピッチWoを、-Z側のピッチWiよりも230nmだけ小さく設定した。また、BT50の-Z側のピッチWiはLDバー3のLD間のピッチと同じに設定した。
【0061】
図10(A)は、本実施形態のビーム結合装置2のシミュレーション結果を示す。本シミュレーションでは、上記の設定においてBT50のピッチWi,Woをずらす効果を確認するべく、+X側の主光線の数値計算を行った。図中の各行は、物体側(即ち-Z側)から像側(即ち+Z側)への面番号毎に主光線がビーム結合装置2の各部を通過する際の数値計算結果を示す。数値計算結果として、「X」はX座標を示し、「Y」はY座標を示し、「TANX」はXZ平面における傾きをtan関数で示し、「TANY」は、YZ平面における傾きをtan関数で示す。なお、数値計算した主光線に対応するLD31の位置は、X座標4mmであった。
【0062】
図10(A)のシミュレーション結果によると、LD31の射出時はゼロ値であった「TANX」が、SAC45の射出後に正値「-0.00346」になっており、+X側の主光線が内向している。さらに、「TANY」は、SAC45の射出以降、回折素子25に到るまでゼロ値で維持されており。よって、BT50のWi,Woのずれに応じて、X方向外側の主光線を、Y方向の影響を抑えながら、X方向に内向できることが確認できた。
【0063】
図10(B)は、
図10(A)に対する比較例のシミュレーション結果を示す。この比較例では、BTUのピッチを±Z側の両面でずらさずに、これに代えてXY平面内でBTUを回転させた場合に、
図10(A)と同様の数値計算を行った。BTUのような光学素子の回転により外側主光線を内向させる技術は、従来より知られている(例えば特許文献1)。BTUの回転角度は、0.008°に設定した。
【0064】
図10(B)のシミュレーション結果によると、SACの射出後の「TANX」の値「-0.00346」は、
図10(A)の例と同等である。一方、「TANY」は、SACの射出後に値「0.0007」を有している。即ち、この比較例では、外側主光線をX方向に内向させる際に、Y方向の傾きを生じさせる影響が生じている。以上より、本実施形態の光学ユニット4によると、外側主光線のX方向への内向を、従来技術よりもY方向への影響を抑制しながら実現できることが確認された。
【0065】
3.まとめ
以上のように、本実施形態における光学ユニット4は、複数の光ビームを導光する。光学ユニット4のBT50は、複数の光ビームがそれぞれ透過する複数のレンズ部の一例として、複数の斜行レンズ部51を備える。複数の斜行レンズ部51は、光ビームが透過する光軸方向(例えばZ方向)と交差する配列方向(例えばX方向)に配列される。各斜行レンズ部51は、光軸方向及び配列方向と交差する厚み方向(例えばY方向)に対して傾斜している。本実施形態の光学ユニット4では、光軸方向におけるBT50の両端面のうちの、一方の端面の一例としての+Z側の端面において斜行レンズ部51が配列されたピッチWoが、他方の端面としての-Z側の端面において斜行レンズ部51が配列されたピッチWiよりも小さい。
【0066】
以上の光学ユニット4によると、例えばBT50の-Z側の斜行レンズ部51のピッチWiと同じピッチにおいて、複数の光ビームが-Z側から入射する際に、+Z側で斜行レンズ部51のピッチWoが小さくなることから、X方向外側の光ビームの主光線L11を内向させることができる。よって、複数の光ビームを集光するように導光する光線方向の制御が実現できる。このように、光学ユニット4のBT50によって、複数の光ビームを導光する設計自由度を向上することができる。
【0067】
本実施形態において、光学ユニット4のBTU40は、第1のコリメータレンズの一例としてFAC41を備える。FAC41は、BT50の±Z側の両端面のうちの片方の端面である-Z側の端面に対向して配置され、当該端面から斜行レンズ部51に光ビームを入射させる。本実施形態のBTU40によると、FAC41から入射する複数の光ビームの光線方向を制御することができる。
【0068】
本実施形態において、光学ユニット4は、第2のコリメータレンズの一例としてSAC45をさらに備える。SAC45は、BT50の両端面のうちの、FAC41が対向した端面とは反対側である+Z側の端面に対向して配置され、当該端面から射出する光ビームをコリメートする。SAC45によると、FAC41から入射してBT50において光線方向が変更された光ビームの光線方向を補正でき、複数の光ビームの光線方向の制御を行い易くすることができる。
【0069】
本実施形態におけるビーム結合装置2は、光源の一例としてのLDバー3と、光学ユニット4と、回折素子25と備える。LDバー3は、互いに異なる波長で共振可能な複数の光源素子としてのLD311~313を含み、各LD311~313からの複数の光ビームを発光する。光学ユニット4は、LDバー3からの各光ビームを導光する。回折素子25は、LDバー3から光学ユニット4を介して入射する各光ビームを回折して、異なった波長で共振する複数の光ビームを結合する。光学ユニット4が、BT50の両端面のうちの斜行レンズ部51のピッチWoが小さい+Z側の端面を回折素子25に向けて配置される。
【0070】
以上のビーム結合装置2によると、異なる波長で共振する複数の光ビームを回折素子25で回折して結合する際に、光学ユニット4によって複数の光ビームを回折素子25に集光できる。こうした設計自由度の向上により、ビーム結合装置2の装置構成を小型化することができる。
【0071】
本実施形態において、LD31毎の回折素子25を介した共振の波長は、配列方向であるX方向における各LD31の位置に応じて次第に変化する。例えば+X側のLD311から-X側のLD315へと共振波長λは長くなる。これにより、回折素子25を介して各LD31からの光ビームを結合できる。
【0072】
本実施形態において、配列方向における複数のLD31間のピッチと、光学ユニット2BTU40の両端面のうちの光源に近い方である-Z側の端面において斜行レンズ部51が配列されたピッチWiとが合致する。これにより、各LD31からの光ビームを適切に制御することができる。
【0073】
本実施形態におけるレーザ加工機1は、ビーム結合装置2と、ビーム結合装置2によって結合された光ビームを加工対象物に照射する加工ヘッド11とを備える。本実施形態のレーザ加工機1は、光学ユニット4により、複数の光ビームを導光する設計自由度の向上から小型化された波長合成式のビーム結合装置2を用いて構成することができる。
【0074】
(実施形態2)
以下、
図11~16を用いて実施形態2を説明する。実施形態2では、空間合成式のビーム結合装置及びそれを備えたレーザ加工機に、光学ユニットを適用する例について説明する。
【0075】
以下、実施形態1に係るレーザ加工機1、ビーム結合装置2及び光学ユニット4と同様の構成、動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係るレーザ加工機、ビーム結合装置及び光学ユニットを説明する。
【0076】
1.レーザ加工機について
図11は、実施形態2に係るレーザ加工機1Aの構成を例示する図である。本実施形態のレーザ加工機1は、実施形態1のレーザ加工機1と同様の構成において、波長合成式のビーム結合装置2の代わりに、空間合成式のビーム結合装置2Aを備える。
【0077】
本実施形態におけるビーム結合装置2Aは、レーザ光源30と、複数の光学ユニット4A-1~4A-3と、結合光学系20とを備える。レーザ光源30は、本実施形態において複数のLDバー3-1~3-3を含む。LDバー3-1~3-3の各々は、例えば実施形態1のLDバー3と同様に構成される。以下、LDバー3-1~3-3の総称を「LDバー3」といい、光学ユニット4A-1~4A-3の総称を「光学ユニット4A」という場合がある。
【0078】
複数のLDバー3は、ビーム結合装置2Aにおいて、例えば各々のLDの配列方向を平行に向けてX方向とし、X方向に直交するY方向に並置される。ビーム結合装置2AにおけるLDバー3の個数は、3個の例を図示しているが特に限定されず、2個又は4個以上であってもよい。
【0079】
本実施形態のビーム結合装置2Aは、レーザ光源30において空間的に配置された複数のLDバー3の各LD31が発光する多数の光ビームを結合する空間合成式で構成される。本実施形態では、小さいビーム径において高密度にビーム結合を行うことができるビーム結合装置2Aを提供する。
【0080】
本実施形態のビーム結合装置2Aにおいて、複数の光学ユニット4Aは、例えばLDバー3の個数分、設けられる。1つの光学ユニット4Aは、1つのLDバー3による各LDからの光ビームを結合光学系20に導光する。結合光学系20は、ビーム結合装置2Aにおける各光学ユニット4Aからの光ビームを結合する光学系である。
【0081】
1-1.ビーム結合装置について
図12は、実施形態2に係るビーム結合装置2Aの構成を示す図である。
図12(A)は、ビーム結合装置2AをX方向から見た側面図を示す。
図12(B)は、ビーム結合装置2AをY方向から見た平面図を示す。
【0082】
本実施形態のビーム結合装置2Aにおいては、例えば
図12(A)に示すように、各LDバー3が別々の光学ユニット4Aの-Z側に配置される。本実施形態の光学ユニット4Aでは、実施形態1の光学ユニット4の構成から、BTU40Aの構成が異なる。結合光学系20は光学ユニット4Aの+Z側に配置され、軸対称の集光レンズ21、及び集光レンズ21と光学ユニット4A間に配置されるシリンドリカルレンズ22を含む。
【0083】
図12(B)では、LDバー3における5個のLD31a,31b,31c,31d,31eを例示している。本実施形態において、個々のLD31a~31eの共振波長は同じであってもよい。LDバー3における複数のLD31a~31eは、本実施形態のレーザ光源30における1組の光源素子の一例である。以下、LD31a~31eの総称を「LD31」という場合がある。
【0084】
図12(A),(B)では、ビーム結合装置2Aによる光ビームの結合結果とするビーム結合位置P1を例示する。ビーム結合位置P1は、例えば全てのLDバー3-1~3-3の各LD31a~31eから発光する光ビームを含めたビーム径が最小となる位置に設定される。例えば、ビーム結合位置P1に、上述した伝送光学系10の光ファイバの入射端が配置される。
【0085】
図12(A)では、Y方向における外側のLDバー3-1からの光ビームの主光線L1と、中央のLDバー3-2からの光ビームの主光線L2とを例示している。
図12(B)では、X方向における外側のLD31aからの光ビームの主光線Laと、中央のLD31cからの光ビームの主光線Lcとを例示している。本実施形態のビーム結合装置2Aにおいて、例えばX,Y方向における中央のLD31cは、実施形態1と同様にZ方向に平行な主光線Lcを有する。
【0086】
本実施形態では、例えば空間合成によるビーム結合装置2Aの高出力化の観点から、
図12(A)に示すように、Y方向に並ぶ複数のLDバー3における外側のLDバー3-1が発光する光ビームの主光線L1を内向させる。こうした光線制御は、外側の光学ユニット4A-1の向きを傾けたり、SAC45の配置を内側にずらしたりすることによって行える。例えば、図中で上側(+Y側)の光学ユニット4Aは、光ビームの主光線L1を、Z方向から下側(-Y側)に傾ける。この場合、LDバー3間で主光線L1,L2が交わるY方向のビーム結合位置P1は、集光レンズ21の焦点位置P0よりも-Z側に位置することとなる。
【0087】
一方、
図12(B)に示すように、LDバー3毎にX方向に並ぶ複数のLD31a~31eにおいて、本実施形態のビーム結合装置2Aの光学ユニット4Aは、外側のLD31aからの光ビームの主光線Laを外向させるように構成される。これにより、複数の光ビームが交差する位置を集光レンズ21の焦点に近づけて、各光ビームの結合時のビーム径自体を小さくでき、結合光学系20に入射する光ビームの密度を高くすることができる。さらに、結合光学系20のシリンドリカルレンズ22によると、ビーム結合位置P1は、X方向とY方向とにおいてビーム結合位置P1を合致させることができる。
【0088】
2.光学ユニットについて
以下、実施形態2に係るビーム結合装置2Aの光学ユニット4Aについて説明する。
【0089】
図13は、実施形態2における光学ユニット4AのBT50Aの構成例を示す。本実施形態の光学ユニット4Aは、実施形態1の光学ユニット4において-Z側のピッチWiよりも+Z側のピッチWoが小さいBT50に代えて、例えば
図13の構成例のBT50Aを備える。
【0090】
図14は、
図13のBT50AにおけるXZ平面の断面図を示す。本構成例のBT50Aにおいては、+Z側のピッチWoよりも-Z側のピッチWiが小さい。換言すると、本構成例のBT50Aは、+Z側の端面における斜行レンズ部51間のピッチWoが、-Z側の端面におけるピッチWiよりも大きくなるように構成される。本構成例のBT50Aにおいて、+Z側の端面における斜行レンズ部51の曲面形状は、例えば-Z側の曲面形状を延長するように設定できる。
【0091】
また、本構成例において、-Z側のピッチWiは、例えば実施形態1のBT50と同様にLDバー3におけるLD31間のピッチに合わせて設定される。また、ピッチWi,Wo間の差分の大きさも、実施形態1と同様の範囲内であってもよい。本実施形態のBT50A及びBTU40Aも、実施形態1と同様にそれぞれ光学ユニットの一例である。
【0092】
図15(A)~(C)は、本実施形態の光学ユニット4Aにおける光路を、
図9(A)~(C)と同様に例示する。
図15(A)は、
図13のA-A断面に対応する。
図15(B),(C)は、それぞれ
図15(A)におけるB-B断面図とC-C断面図に対応する。本実施形態のBT50Aは、実施形態1と同様に、+Z側においてSAC45に対向し、-Z側においてFAC41に対向する。
【0093】
本実施形態の光学ユニット4Aによると、各LD31からの光ビームの主光線は、
図15(A)~(C)に示すように、BT50Aの+Z側の端面では、LD31間のピッチよりも大きい斜行レンズ部51のピッチWoにより、X方向において外側に位置するLD31aほど、主光線LaがX,Y方向において外向する。Y方向における主光線Laの傾きは、
図15(C)に示すように、SAC45において実施形態1と同様に補正される。
【0094】
以上のように、本実施形態の光学ユニット4Aによると、X方向における外側のLD31cの主光線Lcを、X方向に制限して外向させることができる。
【0095】
2-1.実施形態2の実施例
図16は、実施形態2のビーム結合装置2Aの実施例としてのシミュレーション結果を示す。本シミュレーションでは、空間合成式のビーム結合装置2Aのシミュレーション環境において、実施形態1と同様の数値計算を行った。本シミュレーションにおいて、複数の光学ユニット4A間の間隔は4.8mmに設定し、SAC45の焦点距離は15mmに設定し、集光レンズ21の焦点距離は50mmに設定した。
【0096】
本シミュレーションでは、実施形態1と同様の数値計算を、BT50Aの+Z側のピッチWoを、-Z側のピッチWiよりも318nmだけ大きくする設定で行った。なお、BT50Aの-Z側のピッチWi及びLDバー3のLD間のピッチは、実施形態1と同様に0.225000mmであった。
【0097】
図16のシミュレーション結果によると、「TANX」が、SAC45の射出後に正値「0.00443」になっており、+X側の主光線が外向している。また、この際の「TANY」の値「0.00003」は、上記の「TANX」よりも充分に小さい。よって、X方向外側の主光線を、Y方向の傾きを軽微に留めながら、X方向に外向できることが確認できた。
【0098】
3.まとめ
以上のように、本実施形態の光学ユニット4Aにおいて、光軸方向におけるBT50の両端面のうちの、一方の端面の一例としての-Z側の端面において斜行レンズ部51が配列されたピッチWiが、他方の端面の一例としての+Z側の端面において斜行レンズ部51が配列されたピッチWoよりも小さい。
【0099】
以上の光学ユニット4Aによると、例えばBT50Aの-Z側の斜行レンズ部51のピッチWiと同じピッチにおいて、複数の光ビームが-Z側から入射する際に、+Z側で斜行レンズ部51のピッチWoが大きくなることから、X方向外側の光ビームの主光線Laを外向させることができる。このように、光学ユニット4AのBT50Aによって、複数の光ビームを導光する設計自由度を向上することができる。
【0100】
本実施形態におけるビーム結合装置2Aは、光源の一例としてレーザ光源30と、複数の光学ユニット4Aと、結合光学系20とを備える。レーザ光源30は、例えばX方向及びY方向に並ぶ複数の光源素子の一例であるLD31を含む。複数の光学ユニット4Aは、レーザ光源30においてX方向に並んだLD31a~LD31eの組としてのLDバー3毎に、各光ビームを導光する。結合光学系20は、各光学ユニット4Aに導光された複数の光ビームを結合する。光学ユニット4Aが、BT50の両端面のうちの斜行レンズ部51のピッチWoが大きい+Z側の端面を結合光学系20に向けて配置される。
【0101】
以上のビーム結合装置2Aによると、複数の光ビームを結合する際に、光学ユニット4AによってX方向外側の主光線L11を外向させることにより、ビーム結合位置P1におけるビーム径自体を小さくすることができる。このように、光学ユニット4Aによる設計自由度の向上により、空間合成式のビーム結合装置2Aにおいてビーム品質を良好にすることができる。
【0102】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1~2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記各実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0103】
上記の実施形態1では、波長合成式のビーム結合装置2の一例を説明したが、ビーム結合装置2の構成は、特にこの例に限定されない。例えば、ビーム結合装置2に透過型の回折素子25を用いる例を説明したが、回折素子25は透過側に限らず、反射型であってもよい。また、
図3ではLD31が発光する波長帯として900nm帯を例示したが、LD31の波長帯は特に限定されず、例えば400nm帯であってもよい。本実施形態の光学ユニット4によると、こうした各種の波長合成式のビーム結合装置2の光学設計においても、集光の機能をBT50で担うなど光ビームの光線方向を制御でき、設計自由度を向上することができる。
【0104】
また、上記の実施形態2では、空間合成式のビーム結合装置2Aの一例を説明したが、ビーム結合装置2Aの構成は、特にこの例に限定されない。例えば、Y方向における外側の主光線L1を内向させるビーム結合装置2Aについて説明したが、当該主光線L1は内向させなくてもよく、例えば外向させてもよい。また、結合光学系20にシリンドリカルレンズ22を用いる例を説明したが、シリンドリカルレンズ22が省略されてもよい。本実施形態の光学ユニット4Aによると、こうした各種の空間合成式のビーム結合装置2Aの光学設計においても、設計自由度を向上することができる。
【0105】
また、上記の各実施形態では、波長合成式または空間合成式のビーム結合装置2,2Aに光学ユニット4,4Aを適用する例を説明した。本実施形態の光学ユニットは、波長合成式または空間合成式に限らず、各種のビーム結合装置に適用されてもよい。本実施形態の光学ユニットは、波長合成式と空間合成式とを適宜組み合わせたビーム結合装置にも適用可能である。
【0106】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0107】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0108】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示は、複数の光ビームを結合して用いる各種の用途に適用可能であり、例えば各種のレーザ加工技術に適用可能である。