(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】可塑剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/12 20060101AFI20240426BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20240426BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240426BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C08G63/12
C08G63/78
C08L67/00
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2022163903
(22)【出願日】2022-10-12
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】趙 成礼
(72)【発明者】
【氏名】呉 朝棟
(72)【発明者】
【氏名】呉 栄祖
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第01173323(GB,A)
【文献】中国特許出願公開第111533889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113004506(CN,A)
【文献】特開平05-140396(JP,A)
【文献】特開2004-161801(JP,A)
【文献】特開2012-025851(JP,A)
【文献】特開2005-126637(JP,A)
【文献】特開2013-234273(JP,A)
【文献】特開2004-189776(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087219(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジピン酸を含む二塩基酸と、ポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含む二価アルコールと、触媒とを混合することで反応混合物を形成することと、
前記反応混合物を130℃~220℃の温度で反応させて、半製品を形成することと、
前記半製品に、イソオクタノール、イソデカノール又は2-プロピルヘプタノールを含む末端封止アルコールを添加して、205℃~220℃の温度で反応させることで、粗製可塑剤を形成することと、
前記粗製可塑剤を760トル~5トルの圧力で精製することで、可塑剤を得ることと、を含み、
前記二塩基酸:前記二価アルコール:前記末端封止アルコール(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であることを特徴とする、可塑剤の製造方法。
【請求項2】
前記ポリグリコールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項3】
前記飽和脂肪アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,10-デカンジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項4】
前記ポリグリコールの添加モル数は、前記飽和脂肪アルコールの添加モル数以下であり、かつ前記ポリグリコールの前記二価アルコールでのモル比は、0.25以上である、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項5】
前記ポリグリコール:前記飽和脂肪アルコール(モル比)は1:1~1:3である、請求項4に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項6】
前記反応混合物は、温度が130℃~220℃の加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージのそれぞれで反応され、
前記粗製可塑剤は、圧力が760トル~5トルの減圧プロセスにおける複数の低圧ステージのそれぞれで精製されることで、前記可塑剤を得る、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項7】
複数の前記保持温度ステージはそれぞれ、所定温度が130℃~150℃の第1の保持温度ステージ、所定温度が150℃~170℃の第2の保持温度ステージ、所定温度が170℃~190℃の第3の保持温度ステージ、所定温度が190℃~205℃の第4の保持温度ステージ及び所定温度が205℃~220℃の第5の保持温度ステージである、請求項6に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項8】
前記半製品の酸価が70mgKOH/g~90mgKOH/gになった時に、前記加熱プロセスを中止する、請求項6に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項9】
前記粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g~30mgKOH/gになった時に、前記減圧プロセスが開始する、請求項6に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項10】
複数の前記低圧ステージはそれぞれ、所定圧力が750トル~400トルの第1の低圧ステージ、所定圧力が400トル~300トルの第2の低圧ステージ、所定圧力が300トル~150トルの第3の低圧ステージ、所定圧力が150トル~20トルの第4の低圧ステージ及び所定圧力が20トル~10トルの第5の低圧ステージである、請求項6に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項11】
アジピン酸を含む二塩基酸と、ポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含む二価アルコールと、イソオクタノール、イソデカノール又は2-プロピルヘプタノールを含む末端封止アルコールとで合成される、可塑剤であって、
前記二塩基酸:前記二価アルコール:前記末端封止アルコール(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、
前記可塑剤の
ダインペンを用いて測定される表面張力は、36
mN/m~38
mN/mであることを特徴とする、可塑剤。
【請求項12】
前記可塑剤の粘度は、1500cps~3000cpsである、請求項11に記載の可塑剤。
【請求項13】
前記可塑剤の重量平均分子量は、2500g/mol~3500g/molである、請求項11に記載の可塑剤。
【請求項14】
前記ポリグリコールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項11に記載の可塑剤。
【請求項15】
前記飽和脂肪アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,10-デカンジオールからなる群から選択される、請求項11に記載の可塑剤。
【請求項16】
前記ポリグリコール:前記飽和脂肪アルコール(モル比)は1:1~1:3である、請求項11に記載の可塑剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤及びその製造方法に関し、特に、高い表面張力を有する可塑剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤(Plasticizer)は、プラスチック材料、塗料、染料、接着剤、又は石膏の製造に広く使用されており、成形性を向上するため、可塑剤を添加することで、材料を液化したり、柔らかくしたりすることができる。現在、最も広く使用されている可塑剤はフタル酸エステル(Phthalates、PAEs)化合物であるが、長期間使用されると、フタル酸エステル化合物の安全性が常に疑問視されている。
【0003】
2008年では、欧州化学機関(European Chemicals Agency,ECHA)は、高懸念物質(substances of very high concern,SVHC)の候補物質リストとしてフタル酸エステルをリストしたと共に、製品に含まれたフタル酸エステルの含有量を、0.1wt%を超えないように規制した。規制されたフタル酸エステル化合物は、フタル酸ジ-n-ブチル(di-n-butyl phthalate,DBP)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(bis(2-ethylhexyl)phthalate,DEHP)、及びフタル酸ブチルベンジル(benzyl butyl phthalate,BBP)を含む。このように、関連する分野では、従来のフタル酸エステル化合物を置換するように、環境に優しい可塑剤の開発が進んでいる。
【0004】
また、環境保護のために、下流の製造業者は徐々に水ベースのプロセスを採用する傾向出できた。水ベースのプロセスでは、さまざまな添加剤は、材料と均一に混合できるようにある程度の親水性を備えている必要があり、可塑剤も例外ではない。可塑剤の親水性が不十分になると、可塑剤の析出が起こりやすくなり、サイジングの悪さや印刷適性の不足など、製品の品質に悪影響を及ぼす。
【0005】
しかしながら、市販の環境にやさしい可塑剤の表面張力は33ダイン(dyne)~35ダイン(25℃)に含まれることが多いが、この表面張力の範囲に含まれた環境にやさしい可塑剤は、未だ水ベースのプロセスに効果的に応用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、可塑剤及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、可塑剤の製造方法を提供する。可塑剤の製造方法は、二塩基酸と、二価アルコールと、触媒とを混合することで反応混合物を形成することと、反応混合物を130℃~220℃の温度で反応させて、半製品を形成することと、半製品に末端封止アルコールを添加して、205℃~220℃の温度で反応させることで、粗製可塑剤を形成することと、粗製可塑剤を760トル~5トルの圧力で精製することで、可塑剤を得ることと、を含む。二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコールのモル比は、1:0.6~0.9:0.3~0.6である。二塩基酸はアジピン酸を含み、二価アルコールはポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含み、末端封止アルコールはイソオクタノール、イソデカノール又は2-プロピルヘプタノールを含む。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、ポリグリコールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、飽和脂肪アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択される。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、ポリグリコールの添加モル数は、飽和脂肪アルコールの添加モル数以下であり、かつポリグリコールの二価アルコールでのモル比は、0.25以上である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、ポリグリコール:飽和脂肪アルコール(モル比)は1:1~1:3である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、反応混合物は、温度が130℃~220℃の加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージのそれぞれで反応される。粗製可塑剤は、圧力が760トル~5トルの減圧プロセスにおける複数の低圧ステージのそれぞれで精製されることで、可塑剤を得る。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、複数の保持温度ステージはそれぞれ、所定温度が130℃~150℃の第1の保持温度ステージ、所定温度が150℃~170℃の第2の保持温度ステージ、所定温度が170℃~190℃の第3の保持温度ステージ、所定温度が190℃~205℃の第4の保持温度ステージ及び所定温度が205℃~220℃の第5の保持温度ステージである。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、半製品の酸価が70mgKOH/g~90mgKOH/gになった時に、加熱プロセスを中止する。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g~30mgKOH/gになった時に、減圧プロセスが開始する。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、複数の低圧ステージはそれぞれ、所定圧力が750トル~400トルの第1の低圧ステージ、所定圧力が400トル~300トルの第2の低圧ステージ、所定圧力が300トル~150トルの第3の低圧ステージ、所定圧力が150トル~20トルの第4の低圧ステージ及び所定圧力が20トル~10トルの第5の低圧ステージである。
【0017】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、可塑剤を提供する。可塑剤は、二塩基酸と、二価アルコールと、末端封止アルコールと、触媒とで合成され、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、二塩基酸はアジピン酸を含み、二価アルコールはポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含み、末端封止アルコールはイソオクタノール、イソデカノール又は2-プロピルヘプタノールを含み、可塑剤の表面張力は、36ダイン~38ダインである。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、可塑剤の色相のα値は、100未満である。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、可塑剤の粘度は、1500cps~3000cpsである。
【0020】
本発明の一つの実施形態において、可塑剤の重量平均分子量は、2500~3500g/molである。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、ポリグリコールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、飽和脂肪アルコールは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,10-デカンジオールからなる群から選択される。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、ポリグリコール:飽和脂肪アルコール(モル比)は1:1~1:3である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有利な効果として、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「二価アルコールはポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含む」、及び「二塩基酸はアジピン酸を含む」といった技術特徴により、可塑剤の表面張力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る可塑剤の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0027】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の「可塑剤及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0028】
本発明は、可塑剤及びその製造方法を提供する。本発明に係る可塑剤は、フタル酸エステルに属しないため、安全性のおそれが存在しない。本発明に係る可塑剤は、環境にやさしい可塑剤であると共に、高い表面張力を有し、水ベースのプロセスに応用することができる。具体的に説明すると、本発明の可塑剤の25℃で測定された表面張力は、36ダインを超える(37ダインを超えることもある)ことができ、すなわち、市販の環境に優しい可塑剤の表面張力(33ダイン~35ダイン)及び高分子型可塑剤(35ダイン~37ダイン)を超える。
【0029】
本発明の可塑剤は、特定の二塩基酸と、二価アルコールと、末端封止アルコールとで合成され、成分の選択によって、可塑剤全体の親水性を向上することができる。本発明において、可塑剤の親水性を量化することで可塑剤の表面張力を示す。
【0030】
図1に示すように、本発明に係る可塑剤の製造方法は、以下の工程を含む。工程S1において、150℃の温度かつ常圧に設定する反応装置に二塩基酸、二価アルコール及び触媒を導入して、反応混合物を形成する。
【0031】
前記二塩基酸は、アジピン酸(adipic acid)を含む。
【0032】
前記二価アルコールはポリグリコール(polyglycol)及び飽和脂肪アルコールを含む。ポリグリコールの炭素数は2~9(好ましくは、2~6)であり、飽和脂肪アルコールの炭素数は2~10(好ましくは、2~6)である。一つの示範例において、二価アルコールは、ポリグリコールと飽和脂肪アルコールとの混合物であり、飽和脂肪アルコールのみを用いることに比べて、ポリグリコールと飽和脂肪アルコールとを混合する場合、可塑剤の構造を改良することができ、可塑剤の表面張力を更に向上することができる。特に、飽和脂肪アルコールが2-メチル-1,3-プロパンジオールである場合、ポリグリコールを添加することで可塑剤の構造を改良することができる。
【0033】
一つの示範例において、ポリグリコールの添加モル数は、飽和脂肪アルコールの添加モル数以下であり、かつポリグリコールの二価アルコールでのモル比の下限は、0.25である。本発明では、可塑剤でのポリグリコール及び飽和脂肪アルコールの含有量を制御することによって、可塑剤の構造を調整して、可塑剤の表面張力を向上する効果を果たせる。ポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを混合するモル比(ポリグリコール:飽和脂肪アルコール)は、1:1~1:3であり、1:1.5~1:2.5であることが好ましい。例えば、ポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを混合するモル比(ポリグリコール:飽和脂肪アルコール)は、1:1.7、1:1.9、1:2.1又は1:2.3であってもよい。
【0034】
具体的に説明すると、ポリグリコールは、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、トリエチレングリコール(triethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、及びトリプロピレングリコール(tripropylene glycol)からなる群から選択されてもよい。飽和脂肪アルコールは、エチレングリコール(ethylene glycol)、1,2-プロパンジオール(1,2-propanediol)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(1,3-butanediol)、1,4-ブタンジオール(1,4-butanediol)、ネオペンチルグリコール(neopentyl glycol)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(2-methyl-2,4-pentanediol)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-methyl-1,3-propanediol)、1,6-ヘキサンジオール(1,6-hexanediol)及び1,10-デカンジオール(1,10-decanediol)からなる群から選択されてもよい。
【0035】
前記触媒は、チタン触媒、スズ触媒、ナトリウム触媒、亜鉛触媒又はマグネシウム触媒。前記触媒は具体的に、チタネート、酸化第一スズ、シュウ酸第一スズ、アルミン酸ナトリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムからなる群から選択され、チタネートであることが好ましい。
【0036】
工程S2において、反応混合物を加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージで反応させることで、半製品を形成する。加熱プロセスにおいて、高温(100℃を超える)でエステル化反応による水分を蒸発させ、それによって、水分を除去する効果を果たせる。
【0037】
加熱プロセスの温度は、130℃~220℃に含まれた任意な値であってもよい。本実施形態において、加熱プロセスの温度は、140℃~210℃である。温度の範囲から複数の所定温度を選択して、複数の保持温度ステージにおける固定の温度にする。一つの実施形態において、複数の所定温度は、前記温度の範囲の上限及び下限を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、複数の所定温度は前記温度の範囲の上限及び下限を含まなくてもよい。所定温度の個数は、3以上であってもよく、4以上であることが好ましい。
【0038】
例えば、温度範囲が130℃~220℃である場合、複数の所定温度は130℃~220℃に含まれた任意な温度であってもよく、例えば、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃又は210℃であってもよく、また、130℃~220℃(上限及び下限)を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0039】
反応混合物の反応速度を制御するため、本発明では、各保持温度ステージの温度を制御する。一つの示範例において、加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージは、低温から高温に順番に行い、それぞれ、第1の保持温度ステージ、第2の保持温度ステージ、第3の保持温度ステージ、第4の保持温度ステージ及び第5の保持温度ステージである。第1の保持温度ステージの所定温度は、130℃~150℃であり、第2の保持温度ステージの所定温度は、150℃~170℃であり、第3の保持温度ステージの所定温度は、170℃~190℃であり、第4の保持温度ステージの所定温度は、190℃~205℃であり、第5の保持温度ステージの所定温度は、205℃~220℃である。第1の保持温度ステージ、第2の保持温度ステージ、第3の保持温度ステージ、第4の保持温度ステージ及び第5の保持温度ステージの保持時間はそれぞれ、0.5時間~4時間である。
【0040】
加熱プロセスにおいて、保持温度ステージの保持時間は、所定温度の個数及び所定温度の間の差に基づいて調整する。具体的に説明すると、所定温度の個数が多い場合、保持温度ステージの保持時間が低減することができ、一方、所定温度の個数が少ない場合、保持温度ステージの保持時間を延長することができる。所定温度の間の差が大きい場合、各保持温度ステージの保持時間を延長することができ、一方、所定温度の間の差が小さい場合、各保持温度ステージの保持時間を低減することができる。
【0041】
前記加熱プロセスに亘って、反応混合物全体の平均加熱速度は、5℃/時間~8℃/時間である。
【0042】
加熱プロセスにおいて、不十分な重合による低分子量ポリマーを生成しないように、反応物が十分に反応・重合される。低分子量ポリマーの生成は、最終の製品の粘度の均一性に悪影響を起こすため、可塑性の品質が均一でない問題を起こす。また、その後に可塑剤を用いる場合、可塑剤に含まれた低分子量ポリマーが加工プロセスで滲出することがあるため、加工性が悪い問題を有する。
【0043】
連続的な加熱方式(即ち、反応器の温度は時間とともに連続的に変化する)で反応混合物を加熱すると、末端封止アルコールは、最初に二塩基酸と反応して、二塩基酸の末端酸基が置換されることで、重合反応を続いて進行することができないため、低分子量ポリマーを生成する可能性が高い。よって、本発明で複数の保持温度ステージを用いることによって、低分子量ポリマーの生成を低減する効果を果たせる。
【0044】
工程S3において、半製品の酸価が70mgKOH/g~90mgKOH/gになった時に、加熱プロセス(工程S2)を中止する。半製品に末端封止アルコールを添加すると共に、温度(205℃~220℃)を保持するように、粗製可塑剤を得る。末端封止アルコールの添加の時点を制御することによって、可塑剤の分子量を制御して、可塑剤の粘度を制御する効果を果たせる。
【0045】
前記末端封止アルコールはイソオクタノール、イソデカノール又は2-プロピルヘプタノールを含む。
【0046】
一つの示範例において、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、1:0.75~0.9:0.3~0.45であることが好ましく、1:0.85~0.89:0.32~0.40であることがより好ましい。
【0047】
説明すべきことは、上述の二塩基酸、二価アルコール及び末端封止アルコールを用いることによって、高い表面張力を有する可塑剤を合成することができる。特に、二価アルコールとしてポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを用いる場合、可塑剤の表面張力を大幅に向上させることができる。
【0048】
工程S4において、粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g~30mgKOH/gになった時に、粗製可塑剤に残りの末端封止アルコールを導入して、減圧プロセスを開始する。
【0049】
減圧プロセスにおいて、重合反応における低沸点物(即ち、低分子量ポリマー)を除去することができるため、可塑剤の粘度の均一性を維持することができる。このように、本発明の可塑剤は、加工性が優れ、低臭気、色相が優れる、という利点を有する。
【0050】
減圧プロセスの圧力は、760トル~5トルに含まれた任意な値であってもよい。一つの示範例において、減圧プロセスの圧力は、750トル~10トルである。圧力の範囲から複数の所定圧力を選択して、複数の低圧ステージにおける圧力にする。一つの実施形態において、複数の所定圧力は、前記圧力の範囲の上限及び下限を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、複数の所定圧力は前記圧力の範囲の上限及び下限を含まなくてもよい。所定圧力の個数は、3以上であってもよく、4以上であることが好ましい。
【0051】
例えば、圧力の範囲が760トル~5トルである場合、複数の所定圧力は760トル~5トルに含まれた任意な圧力であってもよく、例えば、750トル、700トル、600トル、500トル、400トル、300トル、200トル、100トル、50トル又は10トルであってもよく、また、760トル及び5トル(上限及び下限)を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0052】
半製品の精製効果を制御するため、本実施形態では、各低圧ステージの圧力を制御する。一つの示範例において、減圧プロセスにおける複数の低圧ステージは、高圧から低圧に順番に行い、それぞれ、第1の低圧ステージ、第2低圧ステージ、第3の低圧ステージ、第4の低圧ステージ及び第5の低圧ステージである。第1の低圧ステージの所定圧力は、760トル~450トルであり、第2の低圧ステージの所定圧力は、450~300トルであり、第3の低圧ステージの所定圧力は、300トル~200トルであり、第4の低圧ステージの所定圧力は、200トル~100トルであり、第5の低圧ステージの所定圧力は、100トル~5トルである。第1の低圧ステージ、第2の低圧ステージ、第3の低圧ステージ、第4の低圧ステージ及び第5の低圧ステージの保持時間はそれぞれ、0.5時間~3時間である。
【0053】
減圧プロセスにおいて、低圧ステージの保持時間は、所定圧力の個数及び所定圧力の間の差に基づいて調整する。具体的に説明すると、所定圧力の個数が多い場合、低圧ステージの保持時間が低減することができ、一方、所定圧力の個数が少ない場合、低圧ステージの保持時間を延長することができる。所定圧力の間の差が大きい場合、各低圧ステージの保持時間を延長することができ、一方、所定圧力の間の差が小さい場合、各低圧ステージの保持時間を低減することができる。
【0054】
前記減圧プロセスに亘って、半製品全体の平均減圧速度は、75トル/時間~125トル/時間である。
【0055】
工程S5において、反応装置からサンプリングして可塑剤の酸価を測定し、可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、真空引きで強く減圧する。例えば、反応装置の内部圧力を10トル未満にすることが挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。次に、サンプリングして可塑剤の粘度を測定し、可塑剤の粘度が2500cps~3500cps(25℃)になった時に、反応を中止し、真空引きも停止すると共に、40℃に冷却して荷を下ろす。冷却した後に本発明の可塑剤を得られる。好ましい実施形態において、可塑剤の粘度が2800cps~3200cps(25℃)になる場合反応を中止する。
【0056】
上述した説明によれば、本発明に係る可塑剤の製造方法は、可塑剤の分子量及び粘度を制御することができるため、可塑剤に良好な加工性を与え、その後に、水性プラスチック材料、水性樹脂塗料又は他の水ベースのプロセスに応用することには有利となる。また、本発明に係る可塑剤の製造方法は、低分子量ポリマーの生成を低減するので、低分子量ポリマーのこの後の滲出を回避し、製品の品質に対する悪影響を回避する。
【0057】
[実験データの測定]
本発明で特定の二価アルコールを用いることで、可塑剤の表面張力を向上する効果を果たせることを証明するために、本発明では、前記工程S1~S5に基づいて、高い表面張力を有する実施例1~5の可塑剤を製造した。実施例1~3での主の相違点は、異なる種類の二価アルコールを用いた。具体的に説明すると、実施例1で二価アルコールとしてジエチレングリコール(ポリグリコール)及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを用い、実施例2で二価アルコールとしてジプロピレングリコール(ポリグリコール)及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを用い、実施例3で二価アルコールとしてトリエチレングリコール(ポリグリコール)及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを用いた。実施例1、4及び5での主の相違点は、異なる種類の末端封止アルコールを用いた。具体的に説明すると、実施例1で末端封止アルコールとしてイソオクタノールを用い、実施例4で末端封止アルコールとしてイソデカノールを用い、実施例5で末端封止アルコールとして2-プロピルヘプタノールを用いた。具体的な操作工程は、以下の通りであった。
【0058】
[実施例1]
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0059】
【0060】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にイソオクタノール90g(0.69モル)に添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例1において、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.87:0.36であった。
【0061】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0062】
【0063】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に強く真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例1の可塑剤を得た(工程S5)。
【0064】
[実施例2]
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジプロピレングリコール80g(0.60モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0065】
実施例2が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による放熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0066】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にイソオクタノール90g(0.69モル)に添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例2において、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.89:0.36である。
【0067】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0068】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に強く真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例1の可塑剤を得た(工程S5)。
【0069】
[実施例3]
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、トリプロピレングリコール85g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。実施例3が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による放熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0070】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にイソオクタノール90g(0.69モル)に添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例3において、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.87:0.36である。
【0071】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行った。
【0072】
可塑剤の酸価が1mgKOH/gになった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に全力で真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例3の可塑剤を得た(工程S5)。
【0073】
[実施例4]
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0074】
実施例4が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による放熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0075】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にイソデカノール110g(0.69モル)に添加して、210℃に維持させたことで、粗製可塑剤を生成した。実施例4において、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.87:0.36である。
【0076】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0077】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に全力で真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例4の可塑剤を得た(工程S5)。
【0078】
[実施例5]
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0079】
実施例5が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による放熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0080】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品に2-プロピルヘプタノール110g(0.69モル)に添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例1において、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.87:0.36である。
【0081】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0082】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に強く真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例5の可塑剤を得た(工程S5)。
【0083】
[比較例1]
比較例1と実施例1との主の相違点は、比較例1で二価アルコールとして2-メチル-1,3-プロパンジオール及びネオペンチルグリコールを用い、即ち、比較例1でポリグリコールを添加しなかった。
【0084】
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ネオペンチルグリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0085】
比較例1が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による放熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0086】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にイソオクタノール90g(0.69モル)に添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。比較例1おいて、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.88:0.36である。
【0087】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0088】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に全力で真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、比較例1の可塑剤を得た(工程S5)。
【0089】
実施例1~5及び比較例1に係る可塑剤の特性を比較するため、下表3の通りである。なかでも、可塑剤の粘度は、25℃で粘度計を用いて測定された。表面張力の測定について、ダインペン(dyne test pen)を用いて、可塑剤の、硬度さ43PHR(parts per fundred resin)のPVCテープに付いた時の表面張力を測定した。
【0090】
【0091】
表3に示すように、本発明では、可塑剤を合成原料として、ポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを用いたことで、可塑剤の表面張力(36dyne~38dyne)を向上することができる。このように、本発明の可塑剤は、従来のフタル酸エステル系可塑剤の代わりに、環境に優しい可塑剤として用いられる。また、本発明の可塑剤は、水ベースのプロセスに用いられる。
【0092】
実施例1~5と比較例1との比較によって、ポリグリコールを添加することで、可塑剤の表面張力を向上することができる。更に説明すると、ポリグリコール及び飽和脂肪アルコールが同時に存在する場合、可塑剤の構造を改善することができ、ポリグリコールを添加しない状況に比べて、可塑剤はより高い表面張力を達成する。また、可塑剤は、二塩基酸としてアジピン酸を更に組み合わせると共に、末端封止アルコールとしてイソオクタノールを用いる場合に、前記効果は最も顕著する。
【0093】
また、本発明に係る可塑剤は、100未満の色相のα値を有するため、プラスチック材料に本発明の可塑剤を添加した後に、プラスチック材料の品質及び外観に悪影響を与えない。好ましくは、可塑剤の色相のα値は、40~95である。例えば、可塑剤の色相のα値は、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90であってもよい。
【0094】
本発明の可塑剤の25℃での粘度は、1500cps~3000cpsであるため、良好な加工性を有する。好ましくは、本発明の可塑剤の25℃での粘度は、1700cps~2500cpsである。例えば、本発明の可塑剤の25℃での粘度は、1800cps、1900cps、2000cps、2100cps、2200cps、2300cps又は2400cpsであってもよい。
【0095】
可塑剤の重量平均分子量は、2500g/mol~3500g/molであり、2600g/mol~3300g/molであることが好ましい。例えば、可塑剤の重量平均分子量は、2700g/mol、2800g/mol、2900g/mol、3000g/mol、3100g/mol又は3200g/molであってもよい。
【0096】
可塑剤の酸価は、0.1mgKOH/g~1mgKOH/gであり、0.2mgKOH/g~0.5mgKOH/gであることが好ましい。例えば、可塑剤の酸価は、0.25mgKOH/g、0.30mgKOH/g、0.35mgKOH/g、0.40mgKOH/g又は0.45mgKOH/gであってもよい。
【0097】
可塑剤のOH価は、0.5mgKOH/g~2.5mgKOH/gであり、0.8mgKOH/g~2.0mgKOH/gであることが好ましい。例えば、可塑剤のOH価は、1.0mgKOH/g、1.2mgKOH/g、1.4mgKOH/g、1.6mgKOH/g又は1.8mgKOH/gであってもよい。
【0098】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「二価アルコールはポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含む」、及び「二塩基酸はアジピン酸を含む」といった技術特徴により、可塑剤の表面張力を向上することができる。
【0099】
更に説明すると、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「二価アルコールはポリグリコール及び飽和脂肪アルコールを含む」といった技術特徴により、可塑剤の表面張力を向上することができる。
【0100】
更に説明すると、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「反応混合物はそれぞれ、加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージで反応される」、「粗製可塑剤は、減圧プロセスにおける複数の低圧ステージで精製される」といった技術特徴により、可塑剤の外観品質を向上することができる。
【0101】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。