(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】車両用車輪装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240426BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 K
(21)【出願番号】P 2022519071
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2019076640
(87)【国際公開番号】W WO2021058118
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/076083
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ザクリソン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】エールフェルト,ペール
(72)【発明者】
【氏名】ダーグ,インゲマル
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206207(JP,A)
【文献】特開2018-071679(JP,A)
【文献】特開2003-014094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(401)とハブ(402)とを含み、前記駆動軸と前記ハブとの間にギヤ機構(412)を収容するギヤ空間(411)をさらに含む車両用車輪装置(4)であって、
容器(42)を含み、還流通路(431、441)が前記ギヤ空間(411)から前記容器(42)へと延びていると共に、供給通路(451)が前記容器から前記ギヤ空間へと延びており、
ポンプ(421)をさらに含み、前記ポンプは、潤滑剤を前記ギヤ空間から前記容器へと送るように構成されている、
ことを特徴とする、車両用車輪装置。
【請求項2】
前記還流通路(431、441)は、前記ギヤ空間の下部領域(413)から前記容器へと延びていることを特徴とする、請求項1に記載の車両用車輪装置。
【請求項3】
前記容器(42)の容積は、前記ギヤ空間(411)の容積の少なくとも10%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両用車輪装置。
【請求項4】
前記容器(42)は、前記ポンプ(421)が前記潤滑剤を送っているときに前記ギヤ空間(411)内、前記還流通路(431、441)内、前記ポンプ内、前記容器内および前記供給通路(451)内に同時に現れる前記潤滑剤の少なくとも10%を保持するように構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項5】
前記供給路(451)の入口(453)は、前記車両用車輪装置(4)が車両(1)の一部を形成するときの姿勢を取った場合、前記ギヤ空間(411)内における前記供給通路(451)の出口(452)の上方に位置することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項6】
前記ポンプ(421)、前記還流通路(431、441)、前記容器(42)および前記供給路(451)は、前記ポンプの作用によって前記容器内の圧力を高めるように構成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項7】
前記容器(42)において、前記供給通路(451)の入口(453)は、前記車両用車輪装置(4)が車両(1)の一部を形成するときの姿勢を取った場合、潤滑剤が前記供給通路の入口(453)の下方に貯蔵され得るように配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項8】
前記容器(42)において、前記還流通路(431、441)の出口(445)は、前記車両用車輪装置(4)が車両(1)の一部を形成するときの姿勢を取った場合、前記還流通路(431、441)の一部の下方に位置することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項9】
前記容器において、前記還流通路(431、441)の出口(445)は、前記車両用車輪装置が車両の一部を形成するときの姿勢を取った場合、前記供給通路(451)の入口(453)の下方に位置することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項10】
前記容器において、前記還流通路(431、441)の出口(445)は、前記供給路(451)の入口(453)から、前記容器の任意の方向における最長延在長さの少なくとも50%の距離だけ離れたところに配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項11】
スピンドル(41)を含み、前記容器(42)は、前記スピンドル(41)の外側に固定して取り付けられていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項12】
前記ポンプ(421)は、前記駆動軸(401)によって駆動されるように構成されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項13】
前記還流通路(431、441)は、前記ギヤ空間(411)の下部領域(413)から前記ポンプ(421)へと延びる排出通路(431)を含み、前記排出通路(431)には逆止弁(432)が設けられており、前記逆止弁は、潤滑剤が前記ポンプ(421)から前記ギアキャビティ(411)の前記下部領域(413)へと移動するのを防ぐように構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項14】
前記供給通路(451)の少なくとも一部は、前記駆動軸(401)に設けられていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項15】
前記供給通路(451)は、前記ギヤ空間(411)内に潤滑剤を分配するように構成された分配装置(452)で終端することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項16】
前記還流通路(431、441)にはフィルタ(442)が設けられていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1つに記載の車両用車輪装置。
【請求項17】
前記フィルタ(442)を迂回するバイパス通路(443)と、潤滑剤が前記バイパス通路を介して前記容器(42)へと導かれることを選択的に可能とするように構成された逆止弁(444)と、を含むことを特徴とする請求項16に記載の車両用車輪装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1つに記載の車両用車輪装置(4)を含む車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸とハブとを含み、駆動軸とハブとの間にギヤ機構を収容するギヤ空間をさらに含む車両用車輪装置に関する。本発明はまた、そのような車両用車輪装置を含む車両に関する。
【0002】
本発明は、トラックやバスなどの大型車両や、ホイールローダ、運搬車、掘削機などの建設機械に適用可能である。以下において、本発明は、トラックに関して説明されているが、本発明は、この特定の車両やその他のタイプの大型車両に限定されるものではなく、乗用車などの他の車両にも使用することができる。
【背景技術】
【0003】
被駆動輪のための車輪装置は、駆動軸と、ハブと、駆動軸とハブとの間の減速のためのギヤ機構を含むことがある。ギヤ機構には、動作中、ギヤ機構の効率を向上させ、および摩耗を低減する状態が提供されることが望ましい。
【0004】
EP2572917A1には、インホイールモータ駆動装置のための潤滑システムが開示されている。潤滑剤は、減速部内と、モータケーシング内と、モータリアカバー内とを循環する。フィンが、モータケーシングの外面とモータリアカバーの外面とに形成されている。潤滑剤は、モータケーシング及びモータリアカバーを流れる際に冷却される。
【0005】
しかし、ギヤ機構の効率を向上させ、および摩耗を低減させるため、ギヤ機構を有する車輪装置をさらに改良することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、車輪装置の効率を向上させることである。本発明の別の目的は、車輪装置における摩耗を低減することである。
【0007】
これらの目的は、請求項1に記載の車両用車輪装置によって達成される。そのため、本発明は、駆動軸とハブとを含み、駆動軸とハブとの間にギヤ機構を収容するギヤ空間をさらに含む車両用車輪装置を提供する。車両用車輪装置は、容器を含み、還流通路がギヤ空間から容器へと延びており、供給通路が容器からギヤ空間へと延びている。車両用車輪装置は、ポンプをさらに含み、ポンプは、還流通路に沿って配置され、潤滑剤をギヤ空間から容器へと送る(圧送する)ように構成されている。
【0008】
ギヤ機構は、駆動軸の回転速度をハブの回転速度まで減少させるように構成されてもよい。ハブは、車輪取付装置を含んでもよい。ポンプは、還流通路を介してギヤ空間から容器へと潤滑剤を送るように構成されてもよい。ポンプ、通路および容器は、ギヤ機構のための潤滑システムの一部を形成してもよい。潤滑剤は、オイルであってもよい。
【0009】
容器は、潤滑剤(潤滑油)を貯蔵するように構成されてもよい。これにより、ギヤ空間内の潤滑剤レベルを比較的低くすることができる。つまり、容器は、ギヤ空間内の潤滑剤レベルを低くすることを可能にする。これにより、オイルの飛散(スプラッシュ)損失が低減する。よって、ギヤ機構の効率が向上する。さらに、ギヤ空間内における飛散の減少によって、潤滑剤と混合する空気の量が減少する。潤滑剤内の空気量の減少によって、ギヤ機構の摩耗が低減される。
【0010】
さらに、潤滑剤を容器内に貯蔵することによって、潤滑剤のかなりの部分を同時に冷却することが可能になる。また、容器に比較的多量の潤滑剤を配分することにより、潤滑剤の温度変化を比較的小さくできる。よって、冷却性が向上し得る。この冷却性の向上は、潤滑剤の長寿命化にも寄与する。よって、潤滑剤の交換間隔を長くすることができ、車輪装置のメンテナンスが容易になる。
【0011】
さらに、容器により、潤滑システムに多量の潤滑剤を使用できるようになる。これにより、ギヤ機構の摩耗を増加させることなく、潤滑剤の交換間隔を長くすることができる。
【0012】
好ましくは、還流通路は、ギヤ空間の下部領域から容器へと延びている。還流通路は、ギヤ空間からポンプへと延びる排出通路を含んでもよい。したがって、排出通路がギヤ空間の下部領域からポンプへと延びてもよい。還流通路は、ポンプから容器へと延びる移送通路を含んでもよい。ポンプは、排出通路から移送通路へと潤滑剤を送るように構成されてよい。排出通路、ポンプ及び移送通路によって、ギヤ空間から容器へと潤滑剤が移送されてもよい。いくつかの実施形態において、ポンプは、還流通路の端部のいずれかに配置されてもよい。
【0013】
還流通路がギヤ空間の下部領域からポンプへと延びることによって、還流通路の吸入口が潤滑剤に浸されることが確保される。これにより、空気が還流通路に入り込むことがなくなる。したがって、たとえギヤ空間内の潤滑剤レベルが比較的低くても、空気が潤滑システムに入り込むことがない。ここで、ギヤ空間の最下部領域とは、車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢を取った場合に、ギヤ空間の底部からギヤ空間の最大鉛直延在量の30%、好ましくは20%、さらに好ましくは10%まで鉛直方向に延在する領域であり得る。いくつかの実施形態において、還流通路の入口は、ギヤ空間の底部に配置される。還流通路、たとえば、その排出通路は、ギヤ空間の最下部から潤滑剤を回収するための吸引パイプを形成してもよい。ギヤ機構が遊星ギヤセットである場合、還流通路は、ギヤセットのサン・ギア(太陽歯車)の下方から、好ましくは複数のプラネタリ・ギヤ(遊星歯車)の最も低い延長部の下方から、好ましくはリング・ギヤ(内歯車)の下方から、延びてもよい。いくつかの実施形態において、還流通路は、ギヤ空間の下部の一部を構成してもよい。例えば、還流通路は、ギヤ空間の下部のオイルパンで構成されてもよい。
【0014】
容器は、任意の適切なサイズであってよい。好ましくは、容器の容積は、ギヤ空間の容積の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%であり得る。好ましくは、容器は、ポンプが潤滑剤を送るとき、ギヤ空間内、還流通路内、ポンプ内、容器内および供給通路内に同時に現れる潤滑剤の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも25%を保持するように適合されている。これにより、容器が潤滑剤の十分に多くの部分を保持することができるので、車輪装置の公知の潤滑システムと比較して、潤滑剤の量を大幅に増加することができる。
【0015】
容器は、内部の潤滑剤の速度が流路内の潤滑剤の速度よりも実質的に小さくなるのに十分に大きくてもよい。例えば、容器内の潤滑剤の速度は平均で、流路内の潤滑剤の速度の20%以下、または10%以下であり得る。
【0016】
好ましくは、供給通路の入口は、車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢を取った場合に、ギヤ空間における供給通路の出口の上方に位置する。これにより、重力によって、潤滑剤が供給通路を介して移送されることが補助され得る。車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢は、車両が直立かつ水平な姿勢にあるときの向きであってもよい。
【0017】
ポンプ、還流通路、容器および供給通路は、ポンプの作用によって容器内の圧力を高めるように構成されてもよい。これにより、供給通路を介した潤滑剤の移送が促進される。具体的には、供給通路における圧力損失が解消され得る。
【0018】
好ましくは、容器内における供給路の入口は、車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢を取った場合に、潤滑剤が容器内における供給通路の入口の下方の貯蔵され得るように配置される。これにより、効率を向上させ、摩耗を低減するための効果的な潤滑剤の貯蔵が容易になる。
【0019】
好ましくは、容器内における還流通路の出口は、車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢を取った場合に、還流通路の一部の下方、例えば、移送通路の一部の下方および/または排出通路の一部の下方に位置する。これにより、ポンプが作動していないときや車両が停止しているときなどに、潤滑剤が還流通路を通って容器から出ていくのを防ぐことができる。
【0020】
容器内における還流通路の出口は、車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢を取った場合に、供給通路の入口の下方に位置してもよい。容器内における還流通路の出口は、供給通路の入口から、容器の任意の方向における最大延在長さの少なくとも50%の距離だけ離れたところに配置されてもよい。これにより、潤滑剤の一部が停止した状態になることを避けることができる。したがって、潤滑剤の全部または少なくとも大部分の還流が確保され得る。
【0021】
車輪装置は、スピンドルを含んでもよい。スピンドルは、駆動軸を収容してもよい。スピンドルは、車両のシャーシに取り付けられるか、または結合されるように構成されてもよい。
【0022】
容器は、好ましくは、車輪装置のスピンドルの外側に固定して取り付けられる。これにより、容器、ひいてはその内部の潤滑剤は効率的に冷却され得る。容器は、ハブが位置する側とは反対のスピンドル側に取り付けられてもよい。
【0023】
本発明の実施形態において、歯車機構のための潤滑システムの全ての部品は、スピンドル上におよび/またはスピンドル内に配置される。これにより、車輪装置は「独立した」潤滑システムを形成することができる。これにより、潤滑システムの全ての部品は、シャーシなどの車両の他の部品とは分離され得る。よって、潤滑剤の移送のための通路を短くすることができる。また、潤滑システムのメンテナンスが容易になる。
【0024】
好ましくは、ポンプは、駆動軸によって駆動されるように構成される。これにより、ポンプを駆動させるための別の装置が不要になる。また、有利には、ポンプは、ギヤ空間の下部領域と容器との間で駆動軸上に配置されてもよい。車両が動き始めると、ポンプが潤滑剤を容器へと移動させ始める。その後、潤滑剤は、容器に貯蔵されてもよい。その後、潤滑剤は、還流してギヤ空間に戻ってもよい。
【0025】
示唆されるように、還流通路は、ギヤ空間の下部領域からポンプへと延びる排出通路を含んでもよい。好ましくは、逆止弁が排出通路に設けられ、逆止弁は、潤滑剤がポンプからギヤ空間の下部領域へと移動するのを阻止するように構成される。これにより、ポンプが作動していないときに、潤滑剤が排出通路を介してギヤ空間へと移送されることが防止され得る。よって、ポンプ停止時にギヤ空間が過充填されるのを防ぐことができる。
【0026】
好ましくは、供給通路の少なくとも一部が駆動軸内に設けられている。供給通路は、ギヤ空間に潤滑剤を分配するように構成された分配装置で終端してもよい。分配装置は、駆動軸に固定されてよい。分配装置は、駆動軸の端部に配置されてよい。分配装置は、ギヤ空間に潤滑剤を流すように構成されたフラッシュ装置として提供されてもよい。これにより、潤滑剤がギヤ空間内に効率的に分配され得る。また、駆動軸の回転によって、ギヤ空間への潤滑剤の移動が促進され得る。
【0027】
好ましくは、還流通路にはフィルタが設けられている。ポンプから容器へと延びる移送通路を還流通路が含む場合、フィルタは、移送通路に設けられてもよい。車輪装置は、フィルタを迂回するバイパス通路と、潤滑剤がバイパス通路を介して容器に導かれることを選択可能な逆止弁とを含んでもよい。フィルタによって、潤滑剤のメンテナンス間隔を長くすることができる。逆止弁によって、フィルタが詰まったときに潤滑剤がフィルタを迂回できるようになる。
【0028】
また、本発明の目的は、駆動軸とハブとを含み、駆動軸とハブとの間にギヤ機構を収容するためのギヤ空間をさらに含む車両用車輪装置であって、還流通路がギヤ空間から容器へと延びており、還流通路に沿って配置されたポンプと、容器からギヤ空間へと延びる供給通路とをさらに含み、供給通路の入口は、車輪装置が車両の一部を形成する際の姿勢を取る場合に、ギヤ空間内における供給通路の出口の上方に位置している、車両用車輪装置によっても達成させる。
【0029】
これにより、重力によって、供給通路を介して潤滑剤を移送することが補助され得る。好ましくは、ポンプは、ギヤ空間から容器へと潤滑剤を送るように構成される。
【0030】
また、本発明の目的は、請求項18に記載の車両によっても達成される。
【0031】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明および従属請求項に開示される。
【0032】
以下、添付図面を参照して、実施例として挙げられている本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】トラックの形態である車両の部分側断面図である。
【
図2】
図1の車両の複数の車輪のうちの1つについての車輪装置の斜視図である。
【
図3】
図2の車輪装置の中心回転軸に沿った断面図である。
【
図4】本発明のより一般的な実施形態による車輪装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、トラックの形態である車両1を一部切断した側面図である。車両1は、車両1を推進するための内燃機関2を有する。車両は、車輪、この例では4つの車輪を有する。本発明は、他のタイプの推進力、例えば電力推進力を有する車両にも同様に適用可能であることを理解されたい。電動車両の場合、1つの電動モータが複数の車輪を駆動するように構成され得る。あるいは、複数の電動モータのそれぞれが、複数の車輪またはすべての車輪のうちのそれぞれの1つのみを駆動するように構成され得る。例えば、複数の電動モータのそれぞれは、複数の車輪または全ての車輪のそれぞれに配置され得る。
【0035】
本明細書において、車輪は、車輪装置と称されるものを用いて取り付けられている。以下、前輪3の1つについての実施形態を示すが、本発明は、様々なタイプの車輪に同様に適するものである。本発明が使用される車輪は、前輪であってもよいし、後車軸輪であってもよい。さらに本発明が使用される車輪は、非操舵輪であってもよいし、操舵輪であってもよい。
【0036】
図2も参照すると、
図2は、
図1に示す車輪3のための車輪装置4を示している。車輪装置は、車輪を取り付けるための複数のねじ付きピン4021を含む。車輪装置は、スピンドル41を含む。スピンドル41は、例えば、リンケージ機構(図示せず)を介して車輪装置を車両のシャーシに取り付けるための取り付け装置4101を含む。車輪装置は、車両の被駆動輪用に適合されている。このため、車輪装置は、駆動軸401を含む。駆動軸は、ドライブトレイン(図示せず)を介してエンジン2(
図1)によって駆動されるように構成されている。
【0037】
車輪装置は、容器42を含む。容器42については以下で説明する。容器42は、スピンドル41の外側に固定して取り付けられている。この例において、容器42は、車輪装置が車両に取り付けられたときに内側を向くスピンドルの側面に取り付けられている。
【0038】
図3も参照すると、スピンドルは、筒状部4121を含む。筒状部4121は、駆動軸401の一部を取り囲んでいる。
【0039】
車輪装置は、さらにハブ402を含む。ハブは、ねじ付きピン4021を含む車輪取付装置を含む。ハブは、車輪のディスクブレーキのためのディスク4022を含む。
【0040】
駆動軸401とスピンドル41との間には、第1軸受461が設けられている。ハブ402とスピンドルとの間には、第2軸受462が設けられている。
【0041】
駆動軸401とハブ402との間には、ギヤ機構412が設けられている。ギヤ機構412は、プラネタリ・ギヤを含む。サン・ギヤ4221は、駆動軸401に固定されている。リング・ギア4222は、スピンドル41に固定されている。プラネタリ・キャリア4223は、ハブ402に固定されている。ギヤ機構は、駆動軸401からハブ402へと回転速度を低下させる役割を果たす。
【0042】
車輪装置は、ギヤ機構412を収容するギヤ空間411を含む。ギヤ空間は、ハブ402と、スピンドル41と、駆動軸401とによって形成されている。
【0043】
スピンドルは、カバー4122を含み、カバー4122は、ハブ402とギヤ機構412の周りに少なくともその一部が延びている。
【0044】
車輪装置は、ギヤ機構412のための潤滑システムを含む。このため、車輪装置は、ポンプ421を含む。ポンプ421は、駆動軸401によって駆動されるように構成されている。ポンプを駆動するための代替手段が設けられてもよい。例えば、ポンプは、電動モータなどの補助装置によって駆動されるように構成されてもよい。
【0045】
車輪装置は、還流通路431、441を含む。還流通路は、排出通路431及び移送通路441を含む。排出通路431は、ギヤ空間の下部領域413からポンプ421へと延びている。移送通路441は、ポンプから容器42へと延びている。移送通路は、少なくとも一部がスピンドル41を通って延びてもよい。ポンプ421は、潤滑剤を排出通路431から移送通路441へと送るように構成されてもよい。つまり、ポンプ421は、潤滑剤をギヤ空間の下部領域413から容器42へと送るように構成されている。この例において、ポンプは、ギヤ空間の下部領域の上方に配置されている。よって、ポンプは、ギヤ空間の下部領域から潤滑剤を吸引するように構成されている。
【0046】
供給通路451は、容器42からギヤ空間411へと延びている。この例では、供給通路の一部がスピンドルを通って延びている。より一般的には、供給通路は、少なくとも一部がスピンドル41を通って延びてもよい。
【0047】
この例において、供給通路451の一部は、スピンドル41と駆動軸401との間を延びている。これにより、スピンドル内の中空部の内径と比較して駆動軸の直径が小さくなり、供給チャネルの一部のための空間が残される。この空間は、ポンプ421におけるシーリング装置および第1ベアリング461におけるシーリング装置によって長手方向に制限される。より一般的には、供給通路は、少なくとも一部がスピンドル41と駆動軸401の間を延びている。
【0048】
この例において、供給通路451の一部は、駆動軸401を通って延びている。このために、駆動軸では、駆動軸の外側から駆動軸内の長手方向孔へと横方向孔が延びている。この長手方向孔は、駆動軸に固定された分配装置452につながっている。分配装置は、供給通路の出口を形成する。分配装置は、ギヤ空間411に潤滑剤を流すように構成されるフラッシュ装置452の形態で設けられている。
【0049】
したがって、この例において、供給通路451は、容器42から、潤滑剤を、スピンドル41を通過させ、および駆動軸とスピンドルとの間の空間を通過させて導くように構成されている。供給通路451は、さらに、潤滑剤を、駆動軸とスピンドルとの間の空間から駆動軸内へと導き、その後、フラッシュ装置を介してギヤ空間411内へと導くように構成されている。
【0050】
好ましくは、ポンプ421は、移送通路441、容器42および供給通路451を考慮して、容器内の圧力を高めるように構成される。これにより、供給通路における圧力損失が解消される。
【0051】
本実施形態において、排出通路431には逆止弁432が設けられている。逆止弁432は、潤滑剤が重力によってポンプ421からギヤ空間411の下部領域413に移動するのを防ぐように構成されている。これにより、例えば、ポンプが停止しているときにそのような潤滑剤の移動が防止される。
【0052】
供給通路451の入口453は、車両の通常の直立姿勢において、ギヤ空間411内における供給通路451の出口452の上方に配置されている。さらに、供給通路451の入口453は、容器内において、潤滑剤が供給通路の入口453の下方に貯蔵されるように配置されている。このため、供給通路451の入口453は、容器の底部領域の上方に配置されている。容器の内部容積の大部分が供給通路の入口453の下方に位置していてもよい。
【0053】
容器42における移送通路441の出口445は、車両の通常の直立姿勢において、移送通路441の一部4411の下方に配置されている。容器42における移送通路441の出口445は、車両の通常の直立姿勢において、供給通路451の入口453の下方に位置配置されている。
【0054】
移送通路441には、フィルタ442が設けられている。フィルタ442を迂回するためにバイパス通路443が設けられている。逆止弁444は、潤滑剤がバイパス通路を介して容器42へと導かれることを選択的に許容するように構成されている。これにより、フィルタを通る流れが阻害された場合であっても、流れが大幅に減少したり、終了したりすることがなくなる。
【0055】
図4は、本発明のより一般的な実施形態による車両用車輪装置を示す図である。車輪装置4は、駆動軸とハブとの間にギヤ機構を収容するギヤ空間411を含む。車輪装置は、ポンプ421および還流通路431、441をさらに含む。還流通路は、ギヤ空間からポンプへと延びる排出通路431を含む。還流通路は、ポンプから容器42へと延びる移送通路441をさらに含む。供給通路451は、容器からギヤ空間へと延びている。ポンプ421は、ギヤ空間から容器へと潤滑剤を送るように構成されている。
【0056】
本発明は、本明細書に記載され、図面に例示されている実施形態に限定されるものではなく、むしろ、当業者であれば、特許請求の範囲の範囲内で多くの変更及び修正を行うことが可能であることを認識するであろうことを理解されたい。