(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】血管内皮細胞純粋分離方法、血管内皮細胞特性維持培地及びそれを含む培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240426BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20240426BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20240426BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240426BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240426BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240426BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20240426BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240426BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240426BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240426BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20240426BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N1/02
C12N5/0735
C12N5/10
C12N1/00 G
C12M1/00 A
A61K35/44
A61P9/12
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/06
A61P9/00
(21)【出願番号】P 2022526288
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2020015785
(87)【国際公開番号】W WO2021096218
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0145337
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0145348
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523322368
【氏名又は名称】カリス バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、シン ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ヨウン スプ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-131373(JP,A)
【文献】特表2015-519890(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0007694(KR,A)
【文献】Circulation,2017年,Vol.136,pp.1939-1954
【文献】Curr. Cardiol. Rep.,2018年,Vol.20, No.6,Article number 45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12M 1/00-3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞系統の細胞株を分化培地から収得するステップ;
収得された前記細胞株をフィルタを利用してろ過するステップ;
ろ過された前記細胞株を基質上に培養するステップ、及び
培養された前記細胞株から基質上に付着された同質性(homogenous)の内皮細胞を分離するステップを含む、血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項2】
前記フィルタは、
空隙間隔が20~40μmの範囲である、請求項1に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項3】
前記基質は、
コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、マトリゲル、ゼラチン、ラミニン、ヘパリン、ポリリジン及びヒアルロン酸のうち少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項4】
前記基質は、
コラーゲンであり、0.1mg/mlの前記コラーゲンを含む、請求項3に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項5】
前記培養するステップは、
細胞成長因子及びアスコルビン酸を含むDMEM/F-12培地で培養する、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項6】
前記細胞成長因子は、
FGF-1(fibroblast growth factor-1)、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、EGF(epidermal growth factor)、KGF(keratinocyte growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、TGF-α(transforming growth factor-α)、TGF-β、アンジオポエチン1(angipoietin 1)、アンジオポエチン2、エリスロポエチン(erythropoietin)、ニューロピリン、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロフィン、アクチビン、エンドセリン01及びVEGF-A(vascular endothelial growth factor-A)のうち少なくとも一つを含む、請求項5に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項7】
前記培養するステップは、
ろ過された前記細胞株を2個の基質上に播種するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項8】
前記培養するステップは、
4時間から20時間の間培養される、請求項1から7のいずれか一項に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項9】
前記同質性の内皮細胞は、
CDH5及びVWFを発現する、請求項1に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項10】
前記CDH5の遺伝子発現水準は、
分離される前より12倍高い、請求項9に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項11】
前記VWFの遺伝子発現水準は、
分離される前より2倍高い、請求項9または10に記載の血管内皮細胞純粋分離方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の血管内皮細胞純粋分離方法で分離
する工程を含み、当該工程により分離されたCDH5及びVWFを発現する同質性(homogenous)の内皮細胞を98%以上含有する、血管内皮細胞の細胞株の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の血管内皮細胞の細胞株の製造方法により製造
する工程を含み、当該工程により製造された98%以上の純度を有する血管内皮細胞を含む、心血管系疾患の予防用または治療用細胞治療剤組成物の製造方法。
【請求項14】
前記心血管系疾患は、
虚血性心疾患、心不全、高血圧性心疾患、不整脈、心臓管膜症、心室中隔欠損、先天性心疾患、心筋症、心嚢疾患、脳卒中、末梢血管疾患、動脈瘤、動脈硬化症、高血圧、狭心症及び心筋梗塞症のうち少なくとも一つである、請求項13に記載の心血管系疾患の予防用または治療用細胞治療剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮細胞純粋分離方法、血管内皮細胞特性維持培地及びそれを含む培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生(Vasculogenesis)は、既存の血管の内皮細胞が細胞外基質(Extracellular Matrix、ECM)を分解し、移動、分裂及び分化して新たな毛細血管を形成する過程を意味する。そこで、このような血管形成は、傷修復、胚発生、腫瘍形成、慢性炎症、肥満等、種々の生理的及び病理的現象に関与し得る。
【0003】
血管新生は、特に、傷治癒や組織再生に必須な現象であり得る。例えば、体内で血管新生の欠乏がある場合、壊死、潰瘍及び虚血が起こることで、組織または器官の機能異常を誘発し得る。さらに、血液供給が円滑でないことで、虚血性心疾患、動脈硬化症、心筋梗塞症及び狭心症のような心血管系疾患もまた引き起こされ得る。これによって、血管新生の欠乏による組織損傷を減少させ、これで誘発される心血管系疾患を治療するための、血管新生を誘導するか促進させる治療法の開発が要求された。
【0004】
発明の背景になる技術は、本発明に対する理解をより容易にするために作成された。発明の背景になる技術に記載の事項が先行技術として存在すると認めるものと理解されてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
胚から分離したヒト胚性幹細胞(hESC、human embryonic stem cell)と体細胞から作られたヒト誘導万能幹細胞(hiPSC、human induced pluripotent stem cell)は、血管形成において重要な役割を果たす内皮細胞(endothelial cell)に分化でき、血管再生治療に利用され得る。これによって、損傷した血管を再生し、さらに血管の形成を誘導する新たな戦略として、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を利用した血管再生治療法が提示された。
【0006】
一方、本発明の発明者らは、血管再生治療の効果において、誘導万能幹細胞から分化された内皮細胞の純度及びその生体内生存率の重要性に対して認知した。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは、ヒト誘導万能幹細胞から分化された多様な細胞株(cell line)から血管形成能の内皮細胞を高い純度で分離できる方法に対して研究した。
【0008】
その結果、本発明の発明者らは、分化された内皮細胞の特性によって基質付着性が異に現れることを見出し、基質付着性により現れる特定付着時間によって細胞を分離する場合、同質性の血管内皮細胞を高い純度で分離することができた。
【0009】
そこで、解決しようとする課題は、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞系統の細胞株から特定時間の間基質上に付着された同質性の内皮細胞を分離できる、血管内皮細胞純粋分離方法及びそれを通して分離された高純度の血管内皮細胞を提供することである。
【0010】
万能幹細胞(Pluripotent Stem Cell)は、自己増殖能力を備え、多様な細胞に分化でき、血管再生治療に利用され得る。これによって、虚血性組織機能を回復させることのできる新たな戦略として、胚から分離した胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell)と体細胞から作られた誘導万能幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell)から分化された血管内皮細胞(Endothelial Cell、EC)を利用した、血管再生治療法が提示された。
【0011】
一方、本発明の発明者らは、腫瘍及び異常組織の発生のような万能幹細胞が有する潜在的危険要素、分化過程で利用される動物成分の利用、幹細胞の体外培養で血管内皮細胞への低い分化率等が、血管再生治療において副作用または微々たる治療効果を引き起こし得ることを認識した。
【0012】
一方、体外で人為的に万能幹細胞を内皮細胞に分化及び維持するためには、適した培養培地を供給しながら、血漿やリンパ液のような体液を根拠とした生体の条件に近い栄養分、pH、温度及び浸透圧等の環境条件を十分に満たす環境を提供しなければならない。幹細胞及び内皮細胞は、体外で培養を繰り返すか、外部から刺激を受けるほど細胞の形態、大きさ及び特性等が微細に変形されるか変わり、細胞の再生能、増殖及び分化能力が低くなる、即ち、老化が進行するという問題点がある。
【0013】
従って、条件に合わない培養培地で幹細胞及び内皮細胞を体外培養する場合、幹細胞及び内皮細胞は容易に老化され、増殖及び分化能力を喪失する。さらに、幹細胞及び内皮細胞は、培養条件によって所望しない細胞への分化が誘発される異質性(Heterogeneity)を有するため、幹細胞及び内皮細胞に対する培養培地及び培養方法の開発は、幹細胞の研究において必須で非常に重要な技術の分野である。
【0014】
本発明の発明者らは、血管再生治療の効果において、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞の純度及び特性維持の重要性に対して認知した。
【0015】
そこで、本発明の発明者らは、ヒト万能幹細胞から分化された細胞株から血管形成能の内皮細胞を高い純度で分離し、その体外培養時、細胞増殖の増進及び細胞の特性が初期の状態と同一に維持されながら長期培養が可能な培養培地及び培養方法に対して研究した。
【0016】
その結果、本発明の発明者らは、細胞成長因子であるFGF及びEGF、細胞信号伝達物質であるVEGF-A及び酸化防止剤であるアスコルビン酸を基本培地であるDMEM/F-12に添加して細胞培養に使用した場合、繰り返される培養でも血管内皮細胞の特性が維持された高純度の血管内皮細胞を生産できるということを見出すことができた。そこで、本発明の発明者らは、ヒト万能幹細胞から分化された血管内皮細胞を高純度に維持及び増殖させることができる、血管内皮細胞特性維持培地を開発するに至った。
【0017】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ヒト万能幹細胞から分化された血管内皮細胞を繰り返される培養でも特性が維持されながら増殖できる、血管内皮細胞特性維持培地を提供することである。
【0018】
本発明が解決しようとする他の課題は、ヒト万能幹細胞から純度の高い血管内皮細胞を培養できる、血管内皮細胞特性維持培養方法及びそれを通して培養された高純度の血管内皮細胞を提供することである。
【0019】
本発明の課題は、以上において言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施例によれば、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞系統の細胞株を分化培地から収得するステップ、収得された細胞株をフィルタを利用してろ過するステップ、ろ過された細胞株を基質上に培養するステップ、及び培養された細胞株から20時間以下の時間の間基質上に付着された同質性(homogenous)の内皮細胞だけを分離するステップを含む、血管内皮細胞純粋分離方法が提供される。
【0021】
本明細書において使用される用語「ヒト万能幹細胞」は、未分化状態を維持しながら無限大に自己増殖できる増殖能力及び人体のあらゆる細胞に分化できる分化能力を有する細胞を意味し、胚性幹細胞(embtyonic stem cell)、誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPSC)及び体細胞核置換幹細胞(somatic cell nuclear transfer cell、SCNT)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0022】
本明細書において使用される用語、「内皮細胞」は、血管とリンパ管の内壁を覆っている層を構成する扁平細胞を意味し得る。そこで、内皮細胞は、「血管内皮細胞(Vascular Endothelial Cell)」と同じ意味で使用され得る。
【0023】
一方、血管再生治療において幹細胞、例えば、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞は、細胞治療剤として生体内に移植されて損傷した血管を再生し、血管の形成または血管の新生を誘導できる。このとき、治療に利用される内皮細胞の純度は、血管再生治療に対する予後とも関連され得る。より具体的に、未分化された内皮細胞または中胚葉系統の他の細胞株を含むか、不純物が混合された内皮細胞を虚血性組織に移植する場合、内皮細胞の生存率の低下を引き起こし得る。そこで、再生治療において移植された内皮細胞は、長い期間の間血管形成に寄与できないことで、純度の低い内皮細胞の利用は、治療効果の低下につながり得る。
【0024】
そこで、純度の高い内皮細胞を分類し、その特性を高い水準に維持することは、内皮細胞そのものの収得率を高めることだけではなく、それを利用した細胞再生治療の効果を増進させることとも関連され得る。
【0025】
本明細書において使用される用語「フィルタ(Filter)」は、細胞採集装置であって、流体サンプルから一定の大きさの標的細胞を分離して採集するためのスクリーンを意味し得る。例えば、フィルタが使用されることで、細胞の純度を下げ得る不純物や細胞集塊(Clump)が除去され、一定の大きさの細胞だけが選別されて純度が高くなり得る。そこで、本発明の特徴によれば、高純度の血管内皮細胞を選別するためのフィルタの空隙間隔は、20~40μmの範囲であってよい。
【0026】
本明細書において使用される用語「基質(Matrix)」は、細胞が付いていることのできる成分であって、結合組織の基本物質を意味し得る。より具体的に、生きている生物学的細胞は、有機体の基質で体外培養され得る。このとき、体外培養のために意図された基質は、表面の官能化された領域によって細胞との相互作用、即ち、付着(Adhesion)、分化(Differentiation)、拡散(proliferation)、及び移住(Migration)等を調節できる。例えば、細胞は、それぞれの種類によって表面に互いに異なる付着タンパク質を有している。このような、付着タンパク質は、細胞の種類毎に異に現れることで、選択的に基質の官能化された領域との付着親和力を有し得る。従って、細胞の分化及び増殖のための培養が進行しながら、細胞の種類によって現れる付着タンパク質の分泌差によって基質との付着親和力が決定され得、これによって異なる時期に基質に対する相互作用、即ち、付着が現れ得る。そこで、血管内皮細胞は、培養4時間から最大20時間までコラーゲン基質に対する付着がなされ得る。さらに、20時間を超えて培養が進行する場合、血管内皮細胞でない異なる特性を有する細胞が付着して細胞分離時に純度が低くなり得る。また、4時間未満で培養が進行する場合、血管内皮細胞が付着できず、血管内皮細胞を収得できなくなり得る。
【0027】
そこで、血管内皮細胞を基質上に培養することで、血管内皮細胞で現れる特異的表面付着性、即ち、基質との付着親和力によって時間による選択的培養がなされ得る。さらに、本発明の他の特徴によれば、基質は、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、マトリゲル、ゼラチン、ラミニン、ヘパリン、ポリリジン及びヒアルロン酸のうち少なくとも一つを含むことができるが、1mg/ml以下、好ましくは0.1mg/mlのコラーゲンを含むことができる。しかし、基質は、これに制限されるものではなく、血管内皮細胞が選択的に付着され得る物質であれば制限なく使用され得る。
【0028】
本発明のまた他の特徴によれば、前述した培養するステップでは、細胞成長因子及びアスコルビン酸を含むDMEM/F-12培地でろ過された内皮細胞系統の細胞株が培養され得る。このとき、成長因子(Growth factor)は、細胞分裂、細胞生長及び分化を促進できる物質を意味し、FGF-1(fibroblast growth factor-1)、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、EGF(epidermal growth factor)、KGF(keratinocyte growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、TGF-α(transforming growth factor-α)、TGF-β、アンジオポエチン1(angipoietin 1)、アンジオポエチン2、エリスロポエチン(erythropoietin)、ニューロピリン、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロフィン、アクチビン、エンドセリン01及びVEGF-A(vascular endothelial growth factor-A)のうち少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0029】
さらに、アスコルビン酸(Ascorbic acid)は、酸化防止剤であって、procollagen合成に関与し、type 1コラーゲン生産の増加と関連した補助因子(Cofactor)を意味し得る。アスコルビン酸は、in vitroで内皮細胞、脂肪細胞、造骨細胞及び軟骨細胞のような多様な中胚葉由来の細胞増殖を刺激及び調節できる。さらに、細胞の培養培地に特定の濃度のアスコルビン酸を添加する場合、細胞成長促進剤として作用して細胞の増殖力が増加し、DNAの合成が促進され得る。
【0030】
一方、DMEM/F-12は、基本培地である。このとき、本発明において使用される用語「基本培地」は、細胞が生きていくために必要な、糖、アミノ酸及び水等が含まれている混合物であって、血清、栄養物質及び各種の成長因子を除く混合物を意味する。本発明の基本培地は、人為的に合成して製造して使用するか商業的に製造された培地を使用することができる。例えば、商業的に製造された培地は、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、Iscove's Modified Dulbecco's Medium及びFBS(Fetal bovine serum)等を含むことができるが、これに制限されるものではなく、好ましくはDMEM/F-12であってよい。
【0031】
本発明のまた他の特徴によれば、前述した培養するステップでは、ろ過された内皮細胞系統の細胞株を2個の基質上に播種するステップを含むことができる。このとき、2個超過に分けて培養する場合、血管内皮細胞の選別収率が減少して、継代培養時に血管内皮細胞の増殖効率及び特性維持が減少し得る。
【0032】
一方、本明細書において使用される用語「同質性(Homogenous)」は、顕微鏡上に観察される形態学的模様及びマーカーの発現様相が同一である同種の細胞類型を意味し得る。このとき、マーカー(Marker)は、標的細胞と周辺の他の細胞を区別できるようにする全ての物質であって、タンパク質、糖脂質、核酸及びこれらの組み合わせからなるグループのうち少なくとも一つであってよいが、これに制限されるものではない。より具体的に、血管内皮細胞に対するマーカーは、血管内皮細胞で特異的に発現されるタンパク質であってよく、CDH5、VWF、PECAM1、TEK及びKDRを含むことができるが、好ましくはCDH5及びVWFであってよい。
【0033】
このような、血管内皮細胞に対するマーカーは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって、発現水準が増加し得る。より具体的に、血管内皮細胞に対する特異的なマーカーであるCDH5の遺伝子発現水準は、血管内皮細胞純粋分離方法によって分離される前より12倍高くなり得る。また、血管内皮細胞に対する特異的なマーカーであるVWFの遺伝子発現水準は、血管内皮細胞純粋分離方法によって分離される前より2倍高くなり得る。
【0034】
さらに、同質性の内皮細胞の増加は、高純度の内皮細胞を提供できることを意味し得る。高純度の内皮細胞を利用することは、血管形成または血管再生効果と関連され得る。例えば、未分化された幹細胞または中胚葉系統の幹細胞を含む低い純度の内皮細胞を虚血組織に移植する場合、血管形成または血管再生の効果は、高い純度の内皮細胞を移植した時より低くなり得る。これによって、高純度の内皮細胞を分離することが非常に重要であり得る。
【0035】
本発明の一実施例によれば、前述した方法で分離されてCDH5及びVWFを発現する同質性の内皮細胞を98%以上含有する、血管内皮細胞が提供される。
【0036】
また、本発明の一実施例によれば、本発明は、前述した血管内皮細胞を含む、心血管系疾患の予防用または治療用細胞治療剤組成物が提供される。
【0037】
このとき、本明細書使用される用語、「心血管系疾患」は、心血管系疾患は心臓と主要動脈に発生する疾患を意味し得る。その原因としては、血管形成の欠乏による円滑でない血液供給があり得る。本願発明において心血管系疾患は、虚血性心疾患、心不全、高血圧性心疾患、不整脈、心臓管膜症、心室中隔欠損、先天性心疾患、心筋症、心嚢疾患、脳卒中、末梢血管疾患、動脈瘤、動脈硬化症、血圧、狭心症及び心筋梗塞症のうち少なくとも一つであってよく、特に、多様な心血管系疾患のうち、虚血性心血管系疾患に特に効果的であり得る。しかし、内皮細胞に対する予防用または治療用細胞治療剤としての効果は、虚血性心血管系疾患に制限されるものではない。
【0038】
本明細書使用される用語、「細胞治療剤」は、細胞と組織の機能を復元するために生きている自家(Autologous)、同種(Allogenic)、異種(Xenogenic)細胞を体外で増殖、選別するか細胞の生物学的特性を変化させる等、一連の行為を通して治療、診断、予防の目的で使用される全ての医薬品を意味し得る。本願明細書において、細胞治療剤は、損傷組織の回復のために移植され得る細胞そのものを意味し得る。例えば、細胞治療剤は、虚血部位に移植されて血管形成に寄与する、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞であってよい。
【0039】
本発明の一実施例によれば、ヒト万能幹細胞(Human Pluripotent Stem Cell、hPSC)を誘導培地と懸濁してプレート上に第1接種するステップ、第1接種された幹細胞を誘導培地で中胚葉細胞に分化するように第1培養するステップ、第1培養された細胞を分化培地で内皮細胞に分化するように第2培養するステップ、第2培養された細胞を血管内皮細胞系統の細胞に選別するステップ、選別された血管内皮細胞を維持培地と懸濁してプレート上に第2接種するステップ、及び第2接種された血管内皮細胞を維持培地で増殖するように継代培養するステップを含む、血管内皮細胞特性維持培養方法が提供される。
【0040】
本発明において使用される用語「培地」は、糖、アミノ酸、各種の栄養物質、血清、成長因子、無機質等の細胞の成長及び増殖等に必須な要素を含む生体外(In vitro)で幹細胞等の細胞の成長及び増殖のための混合物を意味する。
【0041】
このとき、本発明の特徴によれば、本発明は、誘導培地、分化培地及び維持培地を含むことができる。より具体的に、誘導培地は、未分化細胞であるヒト万能幹細胞が中胚葉に誘導させることのできる培養培地を意味し、4~6ng/mlのFGF2、2~4μMのCHIRR99021及びDMEM/F-12を含むことができる。
【0042】
また、分化培地は、中胚葉に誘導された細胞血管内皮細胞系統に分化させることのできる培養培地を意味し、4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~30ng/mlのDLL4及びDMEM/F-12を含むことができる。
【0043】
また、維持培地は、分化された血管内皮細胞を維持及び増殖させることのできる培養培地を意味し、4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~50ng/mlのアスコルビン酸及びDMEM/F-12を含むことができる。
【0044】
このとき、DMEM/F-12は、基本培地である。
【0045】
本発明のまた他の特徴によれば、本発明の培養ステップは、ステップによる異なる培養期間を有し得る。より具体的に、第1培養ステップは、ヒト万能幹細胞が誘導培地で中胚葉細胞に分化されるステップであって、毎日培地を取り替えながら3日間の培養期間を有し得る。さらに、第2培養ステップは、中胚葉に誘導された細胞が内皮細胞に分化されるステップであって、毎日培地を取り替えながら11~13日間の培養期間を有し得る。
【0046】
一方、本発明において使用される用語「プレート」は、細胞の培養、即ち、成長及び増殖がなされ得る容器であって、上部表面が細胞が付着可能な基質のコーティング膜を含むことができる。このとき、コーティング膜は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ラミニンフラグメント、ビトロネクチン、基底膜マトリックス、ゼラチン、ヒアルロン酸、ポリリジン及びビトロネクチンのうち少なくとも一つからなるコーティング膜を含むことができ、1mg/ml以下、好ましくは0.1mg/mlのコラーゲンを含むことができる。
【0047】
そこで、分化された細胞を1mg/ml以下、0.1mg/mlのコラーゲンを含むコーティング膜がコーティングされたプレートで培養して、コーティング膜に特異的に付着された血管内皮細胞系統の細胞だけを自然選択(Natural Selection)して選別できる。
【0048】
本発明のまた他の特徴によれば、内皮細胞の増殖のために継代培養をする場合、継代培養は、1~4継代まで遂行され得る。
【0049】
本発明において使用される用語「継代培養」は、細胞を健常な状態で持続的に長期間培養するために、周期的に細胞の一部を新たな培養プレートに移した後、培養培地を取り替えながら細胞の代を引き続き培養する方法を意味し得る。限定された空間を有する培養プレート内で細胞の数が増えながら一定時間が経つと、増殖栄養分が消費されるか汚染物質が積もって細胞が自然に死ぬようになり得る。そこで、健常な細胞の数を増やすための方法として継代培養が使用され、通常、一度培地(培養プレート)を取り替えることまたは細胞群を分けて培養することを1継代(1 passage)といえる。継代培養の方法は、当業界に公知になった方法を制限なく使用することができるが、好ましくは酵素的分離で遂行され得る。
【0050】
本発明の一実施例によれば、4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~50ng/mlのアスコルビン酸及びDMEM/F-12を有効成分として含む、血管内皮細胞特性維持培地が提供される。
【0051】
また、本発明の一実施例によれば、血管内皮細胞系統に選別された細胞を4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~50ng/mlのアスコルビン酸及びDMEM/F-12を有効成分として含む維持培地と懸濁してプレート上に接種するステップ、及び接種された血管内皮細胞を維持培地で血管内皮細胞の特性が維持されるように継代培養するステップを含む、血管内皮細胞特性維持培養方法が提供される。
【0052】
このとき、ヒト万能幹細胞から分化された血管内皮細胞は、これに特異的に高い水準に発現する遺伝子及びタンパク質を有し得る。例えば、ヒト万能幹細胞から分化された血管内皮細胞でのCDH5、PECAM1及びVWF遺伝子の発現水準は、ヒト万能幹細胞から分化された他の細胞株でより高くなり得る。そこで、ヒト万能幹細胞から分化された血管内皮細胞で特異的に高い水準に発現する遺伝子及びタンパク質が血管内皮細胞の特性を示すマーカー(Marker)として利用され得る。従って、前述したマーカーの確認を通して、培養を繰り返しながら引き起こされ得る血管内皮細胞の変質に対する問題点を確認することができ、分化された多様な細胞株の間から血管内皮細胞を高い純度で分離することができる。
【0053】
そこで、本発明のまた他の特徴によれば、前述した方法により継代培養された血管内皮細胞は、前述した血管内皮細胞の特異発現マーカーである、CDH5陽性細胞発現が4継代まで98%以上維持され得る。
【0054】
さらに、本発明のまた他の特徴によれば、前述した方法により継代培養された血管内皮細胞は、前述した血管内皮細胞の特異発現マーカーである、PECAM1陽性細胞発現が4継代まで40%以上維持され得る。
【0055】
さらには、本発明のまた他の特徴によれば、前述した方法により継代培養された血管内皮細胞は、前述した血管内皮細胞の特異発現マーカーである、VWF陽性細胞発現が4継代まで88%以上維持され得る。
【0056】
本発明のまた他の特徴によれば、プレートは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ラミニンフラグメント、ビトロネクチン、基底膜マトリックス、ゼラチン、ヒアルロン酸、ポリリジン及びビトロネクチンのうち少なくとも一つからなるコーティング膜を含むことができ、1mg/ml以下、好ましくは0.1mg/mlのコラーゲンを含むことができる。
【0057】
また、本発明のまた他の特徴によれば、前述した方法の継代培養は、1~4継代まで遂行され得る。
【0058】
本発明の一実施例によれば、前述した方法で製造された血管内皮細胞が提供され得る。このような、血管内皮細胞は、血管形成能及び再生能を有することができ、そこで、心血管系疾患の予防用または治療用細胞治療剤として利用され得る。
【0059】
以下、実施例を通して本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎないので、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されるものと解釈されてはならない。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、細胞の特性によって発現される基質付着性に基づいて、高純度の血管内皮細胞を提供することで、安定して臨床に適用できる効果がある。
【0061】
より具体的に、本発明は、血管内皮細胞で特異的に発現される付着タンパク質及び基質との相互作用、即ち、付着力を利用して、特定時間内に分化されて付着された血管内皮細胞だけを分離することができる。さらに、前述した方法によって分離された血管内皮細胞は、血管内皮細胞で特異的に発現するマーカーであるCDH5及びVWFを98%以上発現することで、純度が98%以上である高純度の血管内皮細胞を提供できる。
【0062】
また、本発明は、培養容器内で培養過程を通して高純度の血管内皮細胞を分離する方法であって、磁性細胞分類及び流細胞分類のような従来の方法より比較的簡単で、経済的であり得る。
【0063】
また、血管内皮細胞の大量生産のための血管内皮細胞の継代培養において高純度の血管内皮細胞を短い時間内に高い収率で提供できる。
【0064】
さらに、本発明は、血管新生を促進し、血管再生力に優れた血管内皮細胞を提供することで、心血管系疾患に対する予防または治療に効果的な細胞治療剤として活用され得る効果がある。
【0065】
本発明は、動物由来血清またはフィーダー細胞(Feeder cell)を利用によって発生する免疫反応を誘発しない血管内皮細胞、これを高純度で増殖培養できる血管内皮細胞特性維持培地及びそれを含む培養方法を提供することで安定して臨床に適用できる効果がある。
【0066】
具体的に、本発明は、ヒト万能幹細胞が血管内皮細胞に培養においてそれぞれのステップに特化された誘導、分化及び維持培地を提供することで、分化された細胞の収率を増加させ、高純度の血管内皮細胞を提供できる。
【0067】
また、血管内皮細胞の大量生産のための血管内皮細胞の継代培養において特化された維持培地を提供することで、高純度の血管内皮細胞を短い時間内に提供できる。
【0068】
本発明に係る効果は、以上において例示された内容により制限されず、さらに多様な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】純粋血管内皮細胞の培養方法の手順を示したものである。
【
図2】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法の手順を示したものである。
【
図3a】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に分離する過程を示したものである。
【
図3b】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に分離する過程を示したものである。
【
図3c】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に分離する過程を示したものである。
【
図3d】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に分離する過程を示したものである。
【
図4】血管内皮細胞の基質付着性メカニズムを示したものである。
【
図5a】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの有無によるマーカー発現及び顕微鏡イメージを結果を示したものである。
【
図5b】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの有無によるマーカー発現及び顕微鏡イメージを結果を示したものである。
【
図6a】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞のマーカー発現の結果を示したものである。
【
図6b】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞のマーカー発現の結果を示したものである。
【
図6c】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞のマーカー発現の結果を示したものである。
【
図7】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法による継代培養時の顕微鏡イメージを結果を示したものである。
【
図8】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法の手順を示したものである。
【
図9a】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に選別する過程を示したものである。
【
図9b】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に選別する過程を示したものである。
【
図9c】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に選別する過程を示したものである。
【
図9d】ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞を純粋血管内皮細胞に選別する過程を示したものである。
【
図10】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で培養継代数による血管内皮細胞の顕微鏡イメージを示す結果である。
【
図11a】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【
図11b】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【
図11c】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【
図12】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の継代数による細胞成長率を示す結果である。
【
図13a】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の培養培地によるマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【
図13b】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の培養培地によるマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【
図14】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の継代数による血管内皮細胞の培養培地別の細胞成長率を示す結果である。
【
図15】本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の培養培地による血管内皮細胞の顕微鏡イメージを示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると、明確になるだろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され、単に、本実施例は、本発明の開示が完全なものとなるようにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。本明細書において使用される用語「分化(Differentiation)」は、細胞が特別な機能を有する特定の細胞や組織の複合体または個体の水準に発達することを意味する。
【0071】
本明細書において使用される用語「増殖(Proliferation)」は、細胞数の増加を意味するものであり、成長(growth)と同じ意味で使用される。
【0072】
本明細書において使用される用語「再生能(Renewal ability)」は、細胞が自身と全く同じコピー本を作り出すことのできる能力を意味し得、再生能が改善される場合、細胞の増殖能に優れ得る。
【0073】
血管内皮細胞純粋分離方法
【0074】
以下においては、
図1から
図3dを参照して、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法について具体的に説明する。
【0075】
図1は、純粋血管内皮細胞の培養方法の手順を示したものである。以下においては、説明の便宜のために、
図2から
図3dを参照して説明する。
【0076】
図1を参照すると、まず、万能幹細胞が誘導培地と懸濁してプレート上に接種(Seeding)され、3日間毎日誘導培地が取り替えられ、中胚葉系統の細胞に分化が誘導され得る。このとき、誘導培地は、成長因子及びGSK3β阻害剤であるCHIRR99021を含むDMEM/F-12培地であってよい。このとき、成長因子は、FGF-1(fibroblast growth factor-1)、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、EGF(epidermal growth factor)、KGF(keratinocyte growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、TGF-α(transforming growth factor-α)、TGF-β、アンジオポエチン1(angipoietin 1)、アンジオポエチン2、エリスロポエチン(erythropoietin)、ニューロピリン、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロフィン、アクチビン、エンドセリン01及びVEGF-A(vascular endothelial growth factor-A)のうち少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。さらに、CHIRR99021は、GSK(Glycogen synthase kinase)の活性を抑制する物質である。より具体的に、GSKが抑制されることで細胞増殖に関与する信号伝達体系のβがGSKにより分解されず細胞増殖に関与する遺伝子発現量が増加し、細胞の生存及び増殖が向上し得る。
【0077】
その後、中胚葉系統の細胞は、分化培地で11~14日間毎日分化培地が取り替えられ、内皮細胞系統の細胞株に分化され得る。このとき、分化培地は、成長因子及びノッチ信号伝達リガンドであるDLL4を含むDMEM/F-12培地であってよい。このとき、DLL4(Delta-like ligand 4)は、新生血管形成過程での信号伝達物質であって、内皮細胞のマーカーの発現水準の増加とも関連され得る。
【0078】
その後、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法を利用して分化された内皮細胞系統の細胞株から同質性(Homogenous)の内皮細胞が分離され得る。より具体的に、
図2を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法の手順が示される。血管内皮細胞純粋分離方法は、高純度の血管内皮細胞を選別するための方法であり、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞系統の細胞株を分化培地から収得するステップ(S110)、収得された細胞株をフィルタを利用してろ過するステップ(S120)、ろ過された細胞株を基質上に培養するステップ(S130)、及び培養された細胞株を基質上に付着された同質性の内皮細胞を分離するステップ(S140)を含むことができる。
【0079】
まず、ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞系統の細胞株を分化培地から収得するステップ(S110)では、分化培地から分化された内皮細胞系統の細胞株を収得するためにタンパク質分解酵素方法が利用され得る。より具体的に、
図3aを参照すると、タンパク質分解酵素方法は、タンパク質分解酵素を利用して細胞及び細胞間または細胞及び基質間を分離する方法であって、分解酵素物質としてコラゲナーゼ(Collagenase)、ディスパーゼ(Dispase)、プロテアーゼ(Protease)及びトリプシン(Trypsin)等が利用され得るが、これに制限されるものではない。そこで、内皮細胞系統の細胞株は、基質及び細胞間の結合からそれぞれの一つの細胞に分離され得る。さらに、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法で前述したタンパク質分解酵素方法を利用して基質から標的細胞を分離することができる。
【0080】
その後、収得された細胞株をフィルタを利用してろ過するステップ(S120)では、一定の大きさの細胞を分離するために空隙間隔が20~40μmの範囲のフィルタが使用され得る。より具体的に、
図3bを参照すると、フィルタを使用することで、標的細胞と形態学的大きさが異なる細胞、不純物及び細胞集塊(Clump)が除去され、形態学的に同じ大きさの細胞だけが分離され得る。そこで、より高い同質性の細胞が収得され得る。このとき、細胞集塊は、細胞が固まって生じた塊を意味し、細胞集塊が形成された場合、細胞周期抑留(Cell cycle arrest)が発生し、これによって自体分化が誘導されて所望の細胞、即ち、血管内皮細胞への分化が難しくなり得る。
【0081】
その後、ろ過された細胞株を基質上に培養するステップ(S130)では、細胞株を分けて基質上に播種(Seeding)できる。より具体的に、
図3cを参照すると、基質を含む一つのプレートから収得された内皮細胞系統の細胞株をフィルタを利用してろ過し、ろ過された細胞株を2個の基質上に分けて播種して培養できる。このとき、2個超過に分けて培養する場合、血管内皮細胞の選別収率が減少して、継代培養時に血管内皮細胞の増殖効率及び特性維持が減少し得る。
【0082】
また、ろ過された細胞株を基質上に培養するステップ(S130)では、4時間から20時間の間培養され得る。より具体的に、
図4を参照すると、血管内皮細胞の基質付着性メカニズムを示したものである。細胞は、インテグリン(Integrin)のような付着タンパク質を利用して細胞と基質表面の官能化された領域と相互作用できる。このとき、付着タンパク質は、細胞が分化されながら発生する細胞の特性及び種類によって異なる発現様相の差を有し得る。このような、付着タンパク質の差によって基質に対する付着親和力が決定され得、さらに、細胞の特性及び種類による付着親和力によって異なる時期に基質に対する相互作用、即ち、付着が現れ得る。また、細胞の特性及び種類は、マーカーを通して区別され得、血管内皮細胞を確認できるマーカーとしては、CDH5、VWF、PECAM1、TEK及びKDRを含むことができるが、好ましくはCDH5及びVWFであってよい。
【0083】
そこで、CDH5及びVWFマーカーを発現する血管内皮細胞は、4時間から20時間の間に0.1mg/mlのコラーゲンを含む基質に対する付着がなされ得、20時間を超えて培養が進行する場合、CDH5及びVWFマーカーを発現する血管内皮細胞でないマーカーの発現様相が異なる種類の細胞が付着され得る。そこで、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法に対する培養するステップの時間は、4時間から20時間の間培養され得るが、これに制限されるものではなく、基質の種類によって培養時間が調節され得る。
【0084】
さらに、ろ過された細胞株を基質上に培養するステップ(S130)で使用される基質は、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、マトリゲル、ゼラチン、ラミニン、ヘパリン、ポリリジン及びヒアルロン酸のうち少なくとも一つを含むことができるが、1mg/ml以下、好ましくは0.1mg/mlのコラーゲンを含むことができる。しかし、基質は、これに制限されるものではなく、血管内皮細胞が選択的に付着され得る物質であれば制限なく使用され得る。
【0085】
さらには、ろ過された細胞株を基質上に培養するステップ(S130)では、細胞成長因子及びアスコルビン酸を含むDMEM/F-12培地でろ過された内皮細胞系統の細胞株が培養され得る。このとき、成長因子(Growth factor)は、細胞分裂、細胞生長及び分化を促進できる物質を意味し、FGF-1(fibroblast growth factor-1)、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、EGF(epidermal growth factor)、KGF(keratinocyte growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、TGF-α(transforming growth factor-α)、TGF-β、アンジオポエチン1(angipoietin 1)、アンジオポエチン2、エリスロポエチン(erythropoietin)、ニューロピリン、IGF-1、オステオポンチン、プレイオトロフィン、アクチビン、エンドセリン01及びVEGF-A(vascular endothelial growth factor-A)のうち少なくとも一つを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0086】
さらには、培養環境条件で、温度は、36℃~38℃、好ましくは36.5℃~37.5℃であり、供給酸素(O2)は、1%~25%であり、供給二酸化炭素(CO2)は、1%~15%であってよい。
【0087】
その後、培養された細胞株を基質上に付着された同質性の内皮細胞を分離するステップ(S140)では、血管内皮細胞から特異的に発現されるマーカーに対する発現陽性細胞を98%以上含有する高純度の血管内皮細胞を分離することができる。より具体的に、
図3dを参照すると、まず、4時間から20時間の間付着できなかった細胞が除去され、4時間から20時間の間基質上に付着された細胞だけが分離され得る。このとき、4時間から20時間の間基質上に付着された細胞は、形態学的模様及びマーカーの発現様相が同一である同質性の細胞であって、血管内皮細胞で特異的なCDH5及びVWFマーカーを発現する陽性細胞が98%以上であり得る。即ち、純度98%以上の内皮細胞が収得され得る。
【0088】
さらに、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって血管内皮細胞に対するマーカーの発現水準が増加し得る。より具体的に、血管内皮細胞に対する特異的なマーカーであるCDH5の遺伝子発現水準は、血管内皮細胞純粋分離方法によって分離される前より12倍高くなり得る。また、血管内皮細胞に対する特異的なマーカーであるVWFの遺伝子発現水準は、血管内皮細胞純粋分離方法によって分離される前より2倍高くなり得る。
【0089】
また、
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された同質性の内皮細胞は、細胞の量的増加及び細胞の維持のために継代培養され得る。このとき、継代培養で使用される培地は、純粋分離ステップで使用された培地と同一である、細胞成長因子及びアスコルビン酸を含むDMEM/F-12培地であってよい。また、継代培養は、1~4継代まで遂行され得る。より具体的に、血管内皮細胞は、培養が4継代超過で進行する場合、増殖力及び分化能力が減少するだけではなく、長期間培養する場合、細胞集塊(Clump)等が形成され、染色体上の変異が伴われ得る。従って、血管内皮細胞の特性が維持されながら高純度を有する多量の細胞数を確保できる継代培養は好ましく、1~4継代までであり得る。
【0090】
以上の本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって、ヒト万能幹細胞から同質性の特性を有する高純度の血管内皮細胞を高い収率で生産できる効果がある。
【0091】
本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でのフィルタ効果の確認
【0092】
以下においては、
図5aから
図5bを参照して、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタによる効果について具体的に説明する。
図5aは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの有無によるマーカー発現及び顕微鏡イメージを結果を示したものである。
図5bは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの有無によるマーカー発現及び顕微鏡イメージを結果を示したものである。
【0093】
図5aを参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの有無によるマーカーに対する陽性血管内皮細胞の発現水準の結果が示される。このとき、フィルタの有無による血管内皮細胞は、同型対照群(Isotype control)と共に検査され得る。同型対照群は、抗原特異性のない同種の免疫グロブリンと検体を反応させた対照群であって、同型対照群で陽性の割合が2%未満となるようにして血管内皮細胞の陽性に対するcut-offに設定され得る。
【0094】
まず、
図5aの(a)を参照すると、フィルタが使用されなかった場合、血管内皮細胞のCDH5マーカーに対する陽性発現水準は、72.8%であるものと示される。さらに、フィルタが使用された場合、血管内皮細胞のCDH5マーカーに対する陽性発現水準は、99.7%であるものと示される。
【0095】
さらに、
図5aの(b)を参照すると、前述したフィルタの有無による血管内皮細胞のマーカーに対する陽性発現水準をグラフで示した結果が示される。より具体的に、フィルタの使用によって、CDH5マーカーを発現する陽性細胞が72.8%から99.7%に増加したものと示される。これは、フィルタの使用によって、CDH5マーカーを発現する陽性細胞の数が増加し得るということを意味し得る。
【0096】
さらには、
図5bを参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの有無による顕微鏡イメージの結果が示される。より具体的に、フィルタが使用されなかった場合、観察された細胞群集(colony)は、形態学的に均一でない細胞で構成されているものと示される。これに対して、フィルタが使用された場合、細胞群集は、形態学的に均一な模様の細胞で構成されているものと示される。これは、フィルタの使用によって、同じ形態学的特性を有する細胞にだけ分離され得るということを意味し得る。
【0097】
以上の結果で、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でフィルタの使用によって、血管内皮細胞に対する特異的なマーカーであるCDH5を発現する陽性細胞数が増加し得、形態学的にも同じ模様の細胞を分離することができる。そこで、フィルタの使用によって、より高い高純度の血管内皮細胞を提供できる効果がある。
【0098】
本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞の純度確認
【0099】
以下においては、
図6aから
図6c及び
図7を参照して、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞の純度確認について具体的に説明する。
図6aは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞のマーカー発現の結果を示したものである。
【0100】
図6bは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞のマーカー発現の結果を示したものである。
【0101】
図6cは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって分離された血管内皮細胞のマーカー発現の結果を示したものである。
【0102】
まず、
図6aを参照すると、本発明の本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の発現水準の結果が示される。より具体的に、血管内皮細胞のCDH5マーカーに対する陽性発現水準は、本発明の純粋分離が遂行されなかった場合は41.6%であるものと示され、純粋分離が遂行された場合は99.7%であるものと示される。
【0103】
また、血管内皮細胞のPECAM1マーカーに対する陽性発現水準は、本発明の純粋分離が遂行されなかった場合は16.9%であるものと示され、純粋分離が遂行された場合は42.6%であるものと示される。
【0104】
また、血管内皮細胞のTEKマーカーに対する陽性発現水準は、本発明の純粋分離が遂行されなかった場合は11.6%であるものと示され、純粋分離が遂行された場合は28.8%であるものと示される。
【0105】
また、血管内皮細胞のKDRマーカーに対する陽性発現水準は、本発明の純粋分離が遂行されなかった場合は2.6%であるものと示され、純粋分離が遂行された場合は16.0%であるものと示される。
【0106】
また、血管内皮細胞のVWFマーカーに対する陽性発現水準は、本発明の純粋分離が遂行されなかった場合は71.6%であるものと示され、純粋分離が遂行された場合は98.4%であるものと示される。
【0107】
さらに、
図6bを参照すると、前述した血管内皮細胞純粋分離方法でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の発現水準をグラフで示した結果が示される。より具体的に、血管内皮細胞の特徴的な指標であるCDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFマーカーのいずれでも、純粋分離によってマーカー発現陽性細胞数が増加したものと示される。特に、CDH5及びVWFに対するマーカー発現陽性細胞数が98%以上であるものと示されることで、血管内皮細胞の純度が98%以上であることを意味し得る。
【0108】
さらには、
図6cを参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法による血管内皮細胞のマーカーに対するmRNAの発現水準が示される。このとき、マーカーの発現水準は、GAPDHを利用して標準化された。より具体的に、CDH5、PECAM1、TEK、VWF及びNOSマーカーに対する血管内皮細胞のmRNA発現水準は、純粋分離によって増加するものと示される。さらに、98%の純度を有する血管内皮細胞で特徴的に発現されるCDH5マーカーに対する遺伝子発現は、純粋分離によって純粋分離される前より12倍高いものと示される。
【0109】
また、98%の純度を有する血管内皮細胞で特徴的に発現されるVWFマーカーに対する遺伝子発現は、純粋分離によって純粋分離される前より2倍高いものと示される。
【0110】
これに対して、KDRマーカーに対する血管内皮細胞のmRNA発現水準は、純粋分離前に高いものと示される。これは、KDRマーカーの場合、血管内皮細胞の分化初期に発現され、成熟した血管内皮細胞に分化されると、これらの性徴を徐々に失うようになる。これに対して、VWFマーカーの場合、分化初期に発現されず、成熟した血管内皮細胞に分化される過程で発現される物質である。そこで、KDRに対するmRNA発現水準が高い純粋分離前の内皮細胞群集の場合、未分化された血管内皮細胞が含まれたものと意味し得る。さらに、VWFに対するmRNA発現水準が高い純粋分離後の内皮細胞群集の場合、完全分化されて成熟した血管内皮細胞が含まれたものと意味し得る。
【0111】
例えば、
図7を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法による継代培養時の顕微鏡イメージが示される。純粋分離方法が遂行されなかった血管内皮細胞の継代培養では、付着細胞及び浮遊細胞が混ざっているものと示される。より具体的に、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法での血管内皮細胞は、ヒト万能幹細胞から分化され得る。
【0112】
このとき、ヒト万能幹細胞の場合、幹細胞の特性を有するため基質付着性が他の細胞に比して顕著に劣り得、これによって、浮遊培養され得る。しかし、幹細胞が血管内皮細胞に分化がなされながら、幹細胞に対する特性を失い、血管内皮細胞に対する基質付着性を獲得できる。そこで、継代培養時、浮遊細胞は、未だ基質付着性に劣る幹細胞の特性を有し、KDRマーカーが発現される分化初期の未分化された細胞であることを意味し得る。さらに、付着細胞は、血管内皮細胞の基質付着性の特性が現れた成熟した細胞であることを意味し得る。
【0113】
さらには、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって成熟した血管内皮細胞だけが分離されて継代培養された場合、付着細胞だけが存在するものと示される。これは、未分化細胞が存在せず、成熟した血管内皮細胞だけが播種され、高純度の血管内皮細胞に増殖されたことを意味し得る。
【0114】
以上の結果で、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞純粋分離方法によって未分化された細胞及び特性が異なる細胞を分離することで、継代培養時、高い純度の血管内皮細胞を提供できることを確認することができた。そこで、血管内皮細胞の特徴的に発現されるCDH5及びVWFマーカー発現が98%以上、即ち、純度が98%以上である高純度の血管内皮細胞を提供できる。
【0115】
血管内皮細胞特性維持培養方法
【0116】
以下においては、
図8から
図10を参照して、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法について具体的に説明する。
【0117】
図8は、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法の手順を示したものである。以下においては、説明の便宜のために、
図9aから
図10を参照して説明する。
【0118】
図8を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法は、ヒト万能幹細胞を誘導培地と懸濁してプレート上に第1接種するステップ(S110)、第1接種された幹細胞を誘導培地で中胚葉細胞に分化するように第1培養するステップ(S120)、第1培養された細胞を分化培地で内皮細胞に分化するように第2培養するステップ(S130)、第2培養された細胞を血管内皮細胞系統の細胞に選別するステップ(S140)、選別された血管内皮細胞を維持培地と懸濁してプレート上に第2接種するステップ(S150)、及び第2接種された血管内皮細胞を維持培地で増殖するように継代培養するステップ(S160)を含む。
【0119】
このとき、培養環境条件で、温度は、36℃~38℃、好ましくは36.5℃~37.5℃であり、供給酸素(O2)は、1%~25%であり、供給二酸化炭素(CO2)は、1%~15%であってよい。
【0120】
より具体的に、まず、ヒト万能幹細胞を誘導培地と懸濁してプレート上に第1接種するステップ(S110)では、未分化状態のヒト万能幹細胞をタンパク質分解酵素を利用して組織から分離した後、誘導培地と懸濁して0.1mg/mlのコラーゲンを含むコーティング膜がコーティングされたプレート上に接種(Seeding)させる。
【0121】
このとき、タンパク質分解酵素は、生体組織に含まれる細胞または細胞集合体を遊離させるために細胞間マトリックスを単離させることのできる酵素を意味し、組織からヒト万能幹細胞を分離または細胞及び細胞集合体を分離するためにコラゲナーゼ(Collagenase)、ディスパーゼ(Dispase)、プロテアーゼ(Protease)及びトリプシン(Trypsin)等が利用され得るが、これに制限されるものではない。
【0122】
さらに、プレートは、細胞培養がなされ得るものであれば限定されず、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ及び培養バッグ等、多様な模様のプレートが利用され得、上部表面の細胞付着層コーティング膜を含むことができる。より具体的に、プレートのコーティング膜は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ラミニンフラグメント、ビトロネクチン、基底膜マトリックス、ゼラチン、ヒアルロン酸、ポリリジン及びビトロネクチンのうち少なくとも一つを含むことができ、1mg/ml以下、好ましくは0.1mg/mlのコラーゲンを含むことができる。そこで、0.1mg/mlのコラーゲンコーティング膜を含むプレートに培養されることで細胞の接着及び伸展が促進され、中胚葉系統細胞の分化効率が増加し得る。
【0123】
その後、第1接種された幹細胞を誘導培地で中胚葉細胞に分化するように第1培養するステップ(S120)では、成長因子である4~6ng/mlのFGF2、GSK3β阻害剤である2~4μMのCHIRR99021及びDMEM/F-12を含む誘導培地で3日間毎日培地を取り替えて培養することで、幹細胞から中胚葉系統細胞に分化を誘導できる。
【0124】
このとき、FGF2(Fibroblast growth factor)は、細胞増殖、細胞分化等を始めとして分裂促進、血管生成、骨形成及び神経成長等の多様な生物学的過程に関連している成長因子である。
【0125】
また、CHIRR99021は、GSK(Glycogen synthase kinase)の活性を抑制する物質である。より具体的に、GSKが抑制されることで細胞増殖に関与する信号伝達体系のβがGSKにより分解されず細胞増殖に関与する遺伝子発現量が増加し、細胞の生存及び増殖が向上し得る。
【0126】
その後、第1培養された細胞を分化培地で内皮細胞に分化するように第2培養するステップ(S130)では、成長因子である4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、ノッチ信号伝達リガンドである20~30ng/mlのDLL4及びDMEM/F-12を含む分化培地で11~13日間毎日培地を取り替えて培養することで、中胚葉系統の細胞から内皮細胞系統に分化を誘導できる。さらに、第1培養された細胞を分化培地で内皮細胞に分化するように第2培養するステップ(S130)で選択的にヘパリンが利用されることで、内皮細胞系統への分化効率が増加し得る。
【0127】
このとき、EGF(Epidermal growth factor)は、その受容体と結合して細胞の増殖、成長及び分化を促進できる成長因子であり、上皮細胞の増殖を促進する活性を有し得る。
【0128】
また、VEGF-A(Vascular endothelial growth factor)は、VEGF信号伝達を活性化して胚循環系形成及び血管形成に関与する信号伝達物質であり、内皮細胞の細胞分裂及び細胞移動を刺激することができる。
【0129】
また、DLL4(Delta-like ligand 4)は、内皮細胞の成長、移動、動/静脈分化の決定、チップ/ストーク細胞決定及びチップ細胞形成を減少させて過度な血管新生を抑制する役割を果たすノッチ(Notch)受容体に作用して血管新生性発芽を適切に調節する信号伝達物質である。特に、DLL4の追加によって、細胞の特性を区別し維持するのに作用するノッチ信号が調節され、血管内皮細胞の特性、即ち、マーカーの発現水準が増加するものと判断される。
【0130】
その後、第2培養された細胞を血管内皮細胞系統の細胞に選別するステップ(S140)では、幹細胞から分化された多様な細胞株、即ち、内皮細胞系統から血管内皮細胞を選別することで、高い純度の血管内皮細胞を獲得できる。より具体的に、
図9aから
図9dを参照して、純粋血管内皮細胞に選別する過程を説明する。
【0131】
まず、
図9aの(a)を参照すると、内皮細胞系統で構成されるコロニー(Colony)が示される。ヒト万能幹細胞から分化された内皮細胞は自律的に分化されることで不均質(Heterogeneous)な内皮細胞系統で構成されるコロニーを形成することができる。そこで、
図9aの(b)を参照すると、分化された内皮細胞系統は、大きさ及び形態の面で多様な種類が混ざっているものと示される。
【0132】
その後、
図9bを参照すると、細胞選別に先立って分化された内皮細胞系統で構成されるコロニーを2個以下のプレート上に分割して接種できる。このとき、プレートが2個を超えて接種する場合、血管内皮細胞の選別収率が減少し得る。
【0133】
その後、高い純度の血管内皮細胞だけを獲得するために細胞選別が遂行され得る。細胞選別は、分化された特定細胞を高純度で分離するための技術であって、流細胞分類(Flow cell sorting)及び磁性細胞分類(magnetic cell sorting)等が利用され得るが、細胞固有の特性を利用して細胞を選別することもできる。
【0134】
例えば、
図9cの(a)を参照すると、基質の特異的表面付着性を有する細胞の選択的付着を利用して細胞が分離及び選別され得る。より具体的に、各細胞は、特性によって、基質に付着される時間が異に現れ得る。そこで、基質からなるコーティング膜を含むプレートに不均質な内皮細胞系統を培養して、プレートのコーティング膜に付着される細胞を培養時間によって順次に分類できる。
【0135】
図9cの(b)を参照すると、特定時間内に付着された血管内皮細胞が示される。同一時間に付着された細胞は全て同じ模様を有するものと示され、浮遊細胞は、同じ特性を有する内皮細胞でないものと見なして、洗滌を通して除去される。このとき、基質からなるコーティング膜は、0.1mg/mlのコラーゲンを含むことができるが、これに制限されるものではなく、血管内皮細胞が時間によって特異的に付着され得る多様な基質を含むコーティング膜が利用され得る。
【0136】
最後に、
図9dの(a)を参照すると、プレートのコーティング膜に付着された細胞だけを選別する。
図9dの(b)を参照すると、選別された細胞は、同じ形態であるものと示され、これは、同じ特性を有する内皮細胞であることを意味し得る。そこで、前述した方法によって純度の高い血管内皮細胞だけを選別して利用できる。付着時間は、4時間から20時間であってよい。即ち、細胞選別は、接種後4時間から20時間に内皮細胞系統の細胞を分離することを意味し得る。
【0137】
また、
図8の選別された血管内皮細胞を維持培地と懸濁してプレート上に第2接種するステップ(S150)では、高純度で選別された血管内皮細胞を維持培地と懸濁して0.1mg/mlのコラーゲンを含むコーティング膜がコーティングされたプレート上に接種させる。
【0138】
最後に、第2接種された血管内皮細胞を維持培地で増殖するように継代培養するステップ(S160)では、成長因子である4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~50ng/mlのアスコルビン酸及びDMEM/F-12を含む維持培地で継代培養することで、血管内皮細胞の増殖を誘導できる。
【0139】
このとき、継代培養は、1~4継代まで遂行され得る。より具体的に、血管内皮細胞は、培養が4継代超過で進行する場合、増殖力及び分化能力が減少するだけではなく、長期間培養する場合、細胞集塊(Clump)等が形成され、染色体上の変異を伴い得る。そこで、
図10を参照すると、培養継代数による血管内皮細胞の顕微鏡イメージを示す結果が示される。各継代による血管内皮細胞は、全て同じ大きさ及び形態を有するものと示され、4継代まで細胞集塊が生成されないものと示される。このとき、細胞集塊が形成された場合、細胞周期抑留(Cell cycle arrest)が発生し、これによって自体分化が誘導されて所望の細胞、即ち、血管内皮細胞への分化が難しくなり得る。従って、血管内皮細胞の特性が維持されながら高純度を有する多量の細胞数を確保できる継代培養は好ましく、1~4継代までであり得る。
【0140】
さらに、アスコルビン酸(Ascorbic acid)は、酸化防止剤であって、procollagen合成に関与し、type 1コラーゲン生産の増加と関連した補助因子(Cofactor)である。アスコルビン酸は、in vitroで脂肪細胞、造骨細胞、軟骨細胞のような多様な中胚葉由来の細胞増殖を刺激及び調節できる。さらに、中間葉幹細胞の培養培地に特定の濃度のアスコルビン酸を添加する場合、細胞成長促進剤として作用して細胞の増殖力が増加し、DNAの合成まで促進させることができる。しかし、アスコルビン酸の濃度が適切でない場合、むしろ細胞の増殖力を抑制させ、細胞毒性(Cytotoxic)を有するため細胞自殺(Apoptosis)を起こし得る。そこで、細胞の増殖力を向上させることのできる適正なアスコルビン酸の濃度は、20~50ng/mlであってよいが、これに制限されるものではない。
【0141】
以上の本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法によって、ヒト万能幹細胞から血管内皮細胞を高い収率で生産できる効果がある。
【0142】
本発明の一実施例に係る維持培地での血管内皮細胞特性維持の確認
【0143】
以下においては、
図11aから
図12を参照して、本発明の一実施例に係る維持培地での血管内皮細胞特性維持について具体的に説明する。
図11aから
図11cは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【0144】
図11b は、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【0145】
図11cは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養でマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【0146】
まず、
図11aを参照すると、血管内皮細胞陽性対照群(Positive control)の相対的マーカー発現水準が示される。より具体的に、血管内皮細胞陽性対照群では、CDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFが発現されるものと示される。これは、CDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFが血管内皮細胞で特性を示すマーカーであることを意味し得る。そこで、血管内皮細胞に特異的に発現するマーカーである、CDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFを確認することで、血管内皮細胞の特性維持を確認することができる。
【0147】
そこで、
図11bを参照すると、維持培地での継代培養による血管内皮細胞のマーカー発現水準の結果が示される。より具体的に、維持培地での継代培養による血管内皮細胞のCDH5マーカーに対する陽性発現水準は、1継代で99.7%、2継代で99.0%、3継代で99.2%及び4継代で98.3%であるものと示される。
【0148】
また、維持培地での継代培養による血管内皮細胞のPECAM1マーカーに対する陽性発現水準は、1継代で42.8%、2継代で43.2%、3継代で38.6%及び4継代で45.4%であるものと示される。
【0149】
また、維持培地での継代培養による血管内皮細胞のTEKマーカーに対する陽性発現水準は、1継代で28.8%、2継代で63.4%、3継代で30.2%及び4継代で17.9%であるものと示される。
【0150】
また、維持培地での継代培養による血管内皮細胞のKDRマーカーに対する陽性発現水準は、1継代で16.0%、2継代で61.2%、3継代で14.5%及び4継代で4.6%であるものと示される。
【0151】
また、維持培地での継代培養による血管内皮細胞のVWFマーカーに対する陽性発現水準は、1継代で98.4%、2継代で93.1%、3継代で88.3%及び4継代で97.4%であるものと示される。
【0152】
従って、維持培地での継代培養による血管内皮細胞は、血管内皮細胞陽性対照群で確認されたマーカーであるCDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFに対して高い発現水準を示す高純度の分化された血管内皮細胞であることを意味し得る。高純度は、98%以上の純度を意味し得、例えば、CDH5陽性細胞発現が4継代まで98%以上維持されることを意味し得る。
【0153】
さらに、
図11cを参照すると、前述した維持培地での継代培養による血管内皮細胞のマーカーに対する陽性発現水準をグラフで示した結果が示される。より具体的に、CDH5マーカーでは、4継代までCDH5発現陽性細胞数が98%以上維持されるものと示され、PECAM1マーカーでは、4継代までCDH5発現陽性細胞数が40%以上維持されるものと示され、VWFマーカーでは、4継代までCDH5発現陽性細胞数が88%以上維持されるものと示される。しかし、TEK及びKDRマーカーでは、各継代別のマーカー発現陽性細胞数が均一でないか、減少する傾向を示すが、3継代までのマーカー発現陽性細胞数は、血管内皮細胞陽性対照群より高く維持されたものと示される。従って、血管内皮細胞が維持培地で継代培養された場合、血管内皮細胞陽性対照群で確認されたマーカーであるCDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFの発現が4継代まで持続的に維持されたものと示される。これは、維持培地での血管内皮細胞の培養は、血管内皮細胞の特性を維持しながら増殖させることができるということを意味し得る。
【0154】
さらには、
図12を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の継代数による細胞成長率が示される。このとき、細胞は、二分法を利用して増殖することで、細胞成長率は、一つの細胞が二つの細胞になる時間がどの程度であるかによって決定される。これを、分裂時間(Doubling time)といい、細胞の成長率、即ち、増殖力を評価できる尺度として使用され得る。そこで、細胞成長率は、血管内皮細胞の継代数によってCPDL(Cumulative population doubling level)値で示した。CPDLは、細胞成長率を示す指数である。より具体的に、CPDL値が10であるとすれば細胞が10回の分裂をしたことを意味し得、これを数値上で計算すると一つの細胞が約1000個の細胞まで増殖することを意味し得る。CPDLは、下記の数1により計算された。
【0155】
【0156】
このとき、Niは初期接種(Seeding)した細胞数、Nfは最終細胞数、Inは自然対数を意味する。
【0157】
維持培地で培養された血管内皮細胞のCPDL値は、1~4継代で1~2.5の範囲内の値を有するものと示される。これは、一つの血管内皮細胞が22.5個まで増殖できることを意味し得る。
【0158】
以上の結果で、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養培地での血管内皮細胞の増殖培養は、繰り返される培養にもかかわらず、細胞の形態及び特性に変化なしに均一な血管内皮細胞に増殖させることができる。
【0159】
培地による血管内皮細胞特性維持の比較
【0160】
以下においては、
図13aから
図15を参照して、培地による血管内皮細胞特性維持について具体的に説明する。このとき、実施例1は、本発明の一実施例に係る4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~50ng/mlのアスコルビン酸及びDMEM/F-12を含む血管内皮細胞特性維持培地に設定した。
【0161】
さらに、比較例1は、hFGF-B、VEGF、R3-IGF-1、アスコルビン酸、hEGF、ヘパリン及びGA-1000を含む従来の細胞培養培地に、比較例2は、4~6ng/mlのFGF2、5~10ng/mlのEGF、10~30ng/mlのVEGF-A、20~30ng/mlのDLL4及びDMEM/F-12を含む本発明の血管内皮細胞分化培地に設定した。
【0162】
まず、
図13a及び
図13bは、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の培養培地によるマーカーに対する陽性血管内皮細胞の相対的発現水準を示す結果である。
【0163】
より具体的に、
図13aを参照すると、培養培地による血管内皮細胞のマーカー発現水準の結果が示される。血管内皮細胞のCDH5マーカーに対する陽性発現水準は、比較例1で96.2%、比較例2で99.4%及び実施例1で99.0%であるものと示される。
【0164】
また、血管内皮細胞のPECAM1マーカーに対する陽性発現水準は、比較例1で42.9%、比較例2で37.6%及び実施例1で59.9%であるものと示される。
【0165】
また、血管内皮細胞のTEKマーカーに対する陽性発現水準は、比較例1で57.3%、比較例2で38.8%及び実施例1で66.9%であるものと示される。
【0166】
また、血管内皮細胞のKDRマーカーに対する陽性発現水準は、比較例1で19.2%、比較例2で69.4%及び実施例1で63.8%であるものと示される。
【0167】
また、血管内皮細胞のVWFマーカーに対する陽性発現水準は、比較例1で85.0%、比較例2で91.6%及び実施例1で96.7%であるものと示される。
【0168】
従って、培養培地による血管内皮細胞は、血管内皮細胞陽性対照群で確認されたマーカーであるCDH5、PECAM1、TEK、KDR及びVWFに対して発現を示す血管内皮細胞であることを意味し得る。
【0169】
しかし、
図13bを参照すると、前述した培養培地による血管内皮細胞のマーカーに対する陽性発現水準をグラフで示した結果が示される。より具体的に、
図13bの(a)及び(e)を参照すると、血管内皮細胞の特徴的な指標であるCDH5及びVWFマーカーでは、比較例1、比較例2及び実施例1がいずれも高いマーカー発現陽性細胞数を示すものと示される。これに対して、
図13bの(b)、(c)及び(d)を参照すると、血管内皮細胞の特徴的な指標であるPECAM1、TEK及びKDRマーカーでは、実施例1が比較例1及び2より高いマーカー発現陽性細胞数を示すものと示される。このとき、少数指標の発現確認だけでは分化された細胞が血管内皮細胞であることを立証することが困難であり得る。そこで、これと関連した多数の指標が高いほどより純度の高い内皮細胞であり得る。従って、血管内皮細胞に特異的に発現するマーカーに対して全て高いマーカー発現陽性細胞数を示した、実施例1が最も高純度の分化された血管内皮細胞であることを意味し得る。
【0170】
さらに、
図14を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の継代数による血管内皮細胞の培養培地別の細胞成長率の結果が示される。より具体的に、比較例1で培養された血管内皮細胞のCPDL値は、1~4継代で1~4.5の範囲内の値を有するものと示される。これは、一つの血管内皮細胞が24.5個まで増殖できることを意味し得る。
【0171】
また、比較例2で培養された血管内皮細胞のCPDL値は、1~4継代で1~3の範囲内の値を有するものと示される。これは、一つの血管内皮細胞が23個まで増殖できることを意味し得る。
【0172】
また、実施例1で培養された血管内皮細胞のCPDL値は、1~4継代で1~3.5の範囲内の値を有するものと示される。これは、一つの血管内皮細胞が23.5個まで増殖できることを意味し得る。従って、細胞成長率は、最も多く増殖できる比較例1が最も良い。しかし、細胞が速く爆発的に増加する場合、細胞は細胞集塊が形成され得、細胞集塊によって所望しない細胞に分化が誘発され得る。
【0173】
そこで、
図15を参照すると、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培養方法で血管内皮細胞の培養培地による血管内皮細胞の顕微鏡イメージが示される。より具体的に、比較例1で培養された血管内皮細胞で細胞集塊が形成されたものと示される。これに対して、実施例1では、細胞集塊の形成なしにそれぞれの血管内皮細胞のみからなるものと示される。従って、所望の方向にのみ分化が誘導されながら、増殖力に優れた培地は、実施例1であり得る。
【0174】
以上の結果で、本発明の一実施例に係る血管内皮細胞特性維持培地は、細胞培養が進行するほど増殖力及び再生能が減少し、変異を伴って血管内皮細胞の特性が変質する問題を引き起こさず、血管内皮細胞を高純度に維持及び増殖できる効果がある。
【0175】
そこで、本発明は、均一な血管内皮細胞を提供することで、臨床適用において安定して使用可能な血管内皮細胞を提供できる。
【0176】
以上、添付の図面を参照して、本発明の実施例をさらに詳細に説明したが、本発明は、必ずしもこのような実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を外れない範囲内で多様に変形実施され得る。従って、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。それゆえ、以上において記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。