(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】メタバース空間提供プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240426BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
(21)【出願番号】P 2022534157
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047573
(87)【国際公開番号】W WO2023119484
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】516013837
【氏名又は名称】株式会社ハシラス
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】水上 智絵
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-329282(JP,A)
【文献】特開2011-216073(JP,A)
【文献】特開平11-259685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00 - 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想3D空間を生成して複数のユーザに提供するためのシステムにおいて実行されるメタバース空間提供プログラム(1)が、
ユーザの生成したアバター情報(10)とユーザの各種属性情報(30)とを取得するユーザ情報取得ステップ(100)と、前記アバター情報を基に前記ユーザのプレーンアバター画像(20)を生成するアバター生成ステップ(200)と、3D空間の映像を生成して出力する3D空間映像生成ステップ(300)と、前記3D空間内における前記各プレーンアバター画像の位置情報を管理、演算するアバター管理ステップ(400)と、生成された前記各ユーザのプレーンアバター画像を3D空間に描画して表示させるアバター表示ステップ(500)と、をメタバース空間を生成するシステムに実行させる構成からなり、
複数のアバターが同じ仮想空間内に存在する状態においてシステムに掛かる負荷
が軽減
されたメタバース空間を提供するため、
前記アバター生成ステップ(200)は、前記アバター情報(10)から平面または多面体で形成される画像からなるアバター画像(40)を生成する処理を実行させるとともに、ユーザの各種属性情報(30)を画像化したうえで、前記ユーザの各種属性情報(30)を平面または多面体からなる前記アバター画像(40)の一の面に重畳的に結合して前記ユーザのプレーンアバター画像(20)を生成する処理を実行させ、
前記アバター表示ステップ(500)は、各ユーザの仮想3D空間内における立ち位置から視認される構図として描画される映像中に、前記アバター管理ステップ(400)を実行させることによって取得した仮想3D空間内の他のユーザの立ち位置に該ユーザの前記プレーンアバター画像(20)を、自分に近いユーザのアバターは多面体で、遠いユーザのアバターは平面で描画し表示する処理を実行させることを特徴とするメタバース空間提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VR(バーチャルリアリティ)によりユーザが体験するためのメタバース空間を生成し提供するメタバース空間提供プログラムに関し、特に、生成されたメタバース空間を複数のユーザが体感する際に、多数のユーザが同時にメタバース空間にアクセスした場合であっても、安定してメタバース空間を提供することを可能にしたメタバース空間提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザが専用の映写機器を通して映像を視聴することで、様々な疑似体験を得ることを可能としたバーチャルリアリティ(VR)に関する技術が数多く開発され、様々な場面で活用されている。近年では、ユーザがアバターを介して参加可能な仮想空間を提供するメタバースというサービスが用いられており、VR空間内でのコミュニケーションの活性化が期待されている。
【0003】
バーチャルリアリティとは、コンピュータがユーザの動きに応じて変化させる映像からなる仮想空間において、ユーザがその映像の視聴その他の体感を得ることによって恰も自らが空間に居るかのように認識・知覚させることを可能とした技術であり、このような技術を用いた様々なビジネスツールやアミューズメント装置が開発されており、メタバースに係るサービスもこの技術を用いたものとなっている。
【0004】
メタバース空間内では、そのサービスの性質上複数のユーザが参加することが想定されており、各ユーザは、自分の分身であるアバターを空間内に表示させて参加する。アバターは、画一的なもののほか、ユーザに選択・作成させたものであってもよいし、他社との差別化を図るために様々な装飾を施すことが可能となっている。
【0005】
バーチャルリアリティ技術を用いた参加型の空間を生成するためのシステムとしては、例えば、特開2020-17242号公報が存在する。ここには、通信網や各端末ハードウエアの負担を小さくして、多数の視聴者と空間(映像)のシェアをしながらライブコンテンツの視聴を楽しむことができる3次元コンテンツ配信コンピュータプログラムに関する技術が開示されている。
【0006】
この技術は、仮想的な3次元バーチャル空間を用いたコンテンツを視聴用端末へ配信して視聴者に提供する3次元コンテンツ配信プログラムが、3次元バーチャル空間に配置された各バーチャルオブジェクトの仕様に関する第1データと各バーチャルオブジェクトの動作に関する第2データを含んだコンテンツデータを記録ステップによって記録し、これらを用いて視聴のための画像データを生成する生成ステップを備え、記録ステップで記録される第1・第2データが、コンテンツの初回のネット配信中に最初に記録されたデータであるとともに、いずれかを追加または修正して新たなコンテンツデータを生成可能とする技術となっている。
【0007】
この技術によれば、確かに、レンダリング処理に伴う通信網や各端末ハードウエアの負担を小さくすることが可能となると考えられるが、相当数のアバターを同一空間内に参加させる場合における負荷対策としては充分ではなく、ある一定のアバター数を超えると、処理しきれなくなる虞があるという問題点が内在する技術であった。
【0008】
仮想空間内における会合や、イベントが行われる機会は、数多く行われており、例えば数千人、数万人が参加するイベントが仮想空間内で行われることも充分に考えられる。そこで、かなりの数の個性を持ったアバターが同じ仮想空間内に存在する状態にしたとしても、大きな負荷がかからず、安定してメタバース空間を提供することを可能としたメタバース空間を提供するためのプログラムの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、VRによりユーザが体験するためのメタバース空間を生成し提供するメタバース空間提供プログラムであって、特に、生成されたメタバース空間を複数のユーザが体感する際に、多数のユーザが同時にメタバース空間にアクセスした場合であっても、負荷によってシステムダウンすることなく、安定してメタバース空間を提供することを可能にした、大規模イベントなどに対応可能なメタバース空間提供プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る仮想3D空間を生成して複数のユーザに提供するためのシステムにおいて実行されるメタバース空間提供プログラムは、ユーザの生成したアバター情報とユーザの各種属性情報とを取得するユーザ情報取得ステップと、前記アバター情報を基に前記ユーザのプレーンアバター画像を生成するアバター生成ステップと、3D空間の映像を生成して出力する3D空間映像生成ステップと、前記3D空間内における前記各プレーンアバター画像の位置情報を管理、演算するアバター管理ステップと、生成された前記各ユーザのプレーンアバター画像を3D空間に描画して表示させるアバター表示ステップと、をメタバース空間を生成するシステムに実行させる構成からなり、複数のアバターが同じ仮想空間内に存在する状態においてシステムに掛かる負荷が軽減されたメタバース空間を提供するため、前記アバター生成ステップは、前記アバター情報から平面または多面体で形成される画像からなるアバター画像を生成する処理を実行させるとともに、ユーザの各種属性情報を画像化したうえで、前記ユーザの各種属性情報を平面または多面体からなる前記アバター画像の一の面に重畳的に結合して前記ユーザのプレーンアバター画像を生成する処理を実行させ、前記アバター表示ステップは、各ユーザの仮想3D空間内における立ち位置から視認される構図として描画される映像中に、前記アバター管理ステップを実行させることによって取得した仮想3D空間内の他のユーザの立ち位置に該ユーザの前記プレーンアバター画像を、自分に近いユーザのアバターは多面体で、遠いユーザのアバターは平面で描画し表示する構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.アバター生成ステップが、アバター情報をもとにユーザのプレーンアバター画像を生成する構成としたため、ユーザはアバターを自由に選択・作成することができるとともに、ユーザの属性情報をアバターに重ねて表示することが可能となる。
2.ユーザ情報取得ステップが、ユーザの各種属性情報を取得する構成としたため、アバター生成ステップがユーザの属性情報を画像化してアバター画像に重畳的に表示することが可能となる。
【0015】
3.アバター画像が平面または多面体で形成される画像からなる構成としたため、個性を持つアバターの表示処理によってかかる負荷を抑制することが可能となり、多数のユーザが同時にメタバース空間にアクセスすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るメタバース空間提供プログラムを、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るメタバース空間提供プログラムの概略図であり、
図2a乃至
図2dは、プレーンアバター画像を例示した図である。
図3a乃至
図3cは、メタバース空間提供プログラムの表示例を示す図である。
【0017】
本発明に係るメタバース空間提供プログラム1は、
図1に示すように、ユーザ情報取得ステップ100と、アバター生成ステップ200と、3D空間映像生成ステップ300と、アバター管理ステップ400と、アバター表示ステップ500と、からなり、仮想3D空間を生成して複数のユーザに提供するためのプログラムであり、大規模イベントなどで多数のユーザが同時にメタバース空間にアクセスしても、高負荷によるシステムダウンを抑制することを可能としたメタバース空間提供プログラムである。
【0018】
ユーザ情報取得ステップ100は、
図1に示すように、ユーザの生成したアバター情報10を取得するためのステップである。アバターとは、メタバース空間内におけるユーザの分身である。メタバース空間内では、アバターの姿で空間内を移動したり、他人とコミュニケーションを交わすこととなる。
【0019】
ユーザは、本実施例では、アバターを自由に作成することができ、該データをアバター情報10としてユーザ情報取得ステップ100が取得するが、この構成に限定されることはなく、顔の輪郭、目の形、髪の毛の色、体型など、予め準備された複数のテンプレートから任意に選択してアバター情報を生成する構成とすることも可能である。また、全てのユーザのアバターのデザインを統一してデータ処理の負荷を減らす構成とすることも可能である。
【0020】
アバター生成ステップ200は、ユーザ情報取得ステップ100によって取得したアバター情報10を基に、ユーザのプレーンアバター画像20を生成するステップである。プレーンアバター画像20は、
図2a乃至
図2dに示すように、ユーザの分身としてメタバース空間内に存在するアバターであり、本実施例では、平面状の画像がメタバース空間内に配置される構成であるが、これに限定されることはなく、多面体など、システムに負荷がかからない態様・形式のアバター画像であれば、適宜選択して使用することが可能である。なお、プレーンアバター画像20の詳細については、後述する。
【0021】
3D空間映像生成ステップ300は、3D空間の映像を生成して出力するステップである。メタバース空間を構成する3D空間映像は、本実施例では、本発明に係るプログラムとともに又は別個にサーバ又はクラウド等(図示せず)に記憶保持されており、3D空間映像生成ステップ300がそこからユーザが視認する映像データを特定のシーンごとに順次取得して出力する構成である。
【0022】
アバター管理ステップ400は、3D空間であるメタバース空間内において、複数のユーザの分身である各プレーンアバター画像20の、空間内における立ち位置に係る情報を管理し、演算するためのステップである。本実施例では、ユーザの分身であるプレーンアバター画像20は、ユーザが保持する外部の操作手段又はユーザ自身の移動(図示せず)によって、空間内を移動することができる。この場合、アバターの移動により、ユーザの空間内の立ち位置が変化し、また、他のユーザのアバターとの相対位置や方向が変化することとなる。この時、個々のユーザのアバターの空間内における立ち位置に係る情報を管理し、演算処理することにより、ユーザの立ち位置から視認できる風景の変化を正確に出力することが可能となる。
【0023】
アバター表示ステップ500は、
図3a乃至
図3cに示すように、生成された各ユーザのプレーンアバター画像20を3D空間に重ねて描画し、表示画面(図示せず)に表示する処理を行うステップである。各々のユーザのアバターの立ち位置は、アバター管理ステップ400によって管理され、演算処理されている。この処理によって得られたメタバース空間内のアバターの正確な位置や向きから視認される空間内の映像に、他のユーザのプレーンアバター画像22を重ねて表示する。
【0024】
すなわち、アバター表示ステップ500は、各ユーザの仮想3D空間であるメタバース空間内における立ち位置から視認される構図として描画される映像中に、アバター管理ステップ400によって取得した仮想3D空間内の他のユーザの立ち位置に、各々のユーザのプレーンアバター画像20を描画し表示する処理を常に行っている。本実施例では、自分に近いユーザのアバターは立体的に表示され、遠いユーザのアバターは、平面的な表示となっているが、この実施例に限定されるものではない。
【0025】
この構成とすることにより、
図3a乃至
図3cに示すように、3D空間からなるメタバース空間内にユーザが入り込んだような臨場感あふれる映像を表示画面に出力することが可能となり、イベント、展示会やセミナーなど、大人数のユーザが参加する空間を提供することが可能となった。
【0026】
ユーザ情報取得ステップ100は、
図1に示すように、本実施例では、更に、ユーザの各種属性情報30を取得する構成からなる。属性情報30とは、例えば、名前(ニックネーム)、年齢、性別、所属などが挙げられるが、これらに限定されることはなく、ユーザに関するあらゆる情報を含めることが可能である。また、ユーザは、各属性情報を非公表とする選択を取る事も可能である。
【0027】
また、アバター生成ステップ200は、より詳細には、属性情報30をも取得する場合には、ユーザ情報取得ステップ100によって取得した各ユーザのアバター情報10を画像化してアバター画像40とするのみならず、同様に取得した各種属性情報30をも併せ画像化する。本実施例では、テキストデータからなる属性情報30を画像ファイルに加工して画像化する構成であるが、処理方法はこれに限定されるものではない。
【0028】
アバター生成ステップ200は、属性情報30をも取得する場合には、更に、画像化されたユーザの各種属性情報30を、そのユーザのアバター画像40に重畳的に結合する。この処理により、ユーザのプレーンアバター画像20が生成される構成である。この構成とすることにより、容易にアバターが誰であるかを他のユーザが認識することが可能となるとともに、システムに負荷の少ないプレーンアバター画像20を表示することができ、イベント、展示会やセミナーなど、大人数のユーザが参加する空間を提供することが可能となった。
【0029】
アバター画像40は、本実施例では、平面または多面体で形成される画像からなる構成である。また、アバター画像40をもとに生成されるプレーンアバター画像20は、平面または多面体からなるアバター画像40の一の面に、ユーザの各種属性情報30を重畳的に結合して表示した構成からなる。この構成とすることにより、アバターの表示処理によってかかる負荷を抑制することが可能となり、多数のユーザが同時にメタバース空間にアクセスすることが可能となった。例えば、平面からなるプレーンアバター画像20を用いると、低負荷で大人数の個性を持った参加者を同じメタバース空間内に共存させることが可能となり、多面体のプレーンアバター画像20を用いることにより、低負荷かつ見た目がよく分かりやすいユーザのアバターを使用することが可能となり、より視覚的に優れたメタバース空間を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係るメタバース空間提供プログラムの概略図
【
図3a】メタバース空間提供プログラムの表示例を示す図
【
図3b】メタバース空間提供プログラムの表示例を示す図
【
図3c】メタバース空間提供プログラムの表示例を示す図
【符号の説明】
【0031】
1 メタバース空間提供プログラム
10 アバター情報
20 プレーンアバター画像
22 プレーンアバター画像
30 属性情報
40 アバター画像
100 ユーザ情報取得ステップ
200 アバター生成ステップ
300 3D空間映像生成ステップ
400 アバター管理ステップ
500 アバター表示ステップ