(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】低臭気性軟質PVC材料
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20240426BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240426BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240426BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240426BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240426BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240426BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/09
C08K3/26
C08K5/10
C08K3/013
C08K5/13
C08K5/17
(21)【出願番号】P 2022539061
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 CN2020125101
(87)【国際公開番号】W WO2021129140
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】201911371662.9
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520070792
【氏名又は名称】金発科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCI. & TECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.33 Kefeng Road, Science City, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】朱 秀梅
(72)【発明者】
【氏名】黄 険波
(72)【発明者】
【氏名】葉 南▲ビャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 裕森
(72)【発明者】
【氏名】尹 国傑
(72)【発明者】
【氏名】謝 明星
(72)【発明者】
【氏名】楊 霄雲
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107337872(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105647060(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109467844(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00- 27/24
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、PVC樹脂100重量部、可塑剤60~125重量部、熱安定剤2~10重量部、フィラー10~50重量部、酸化防止剤0.2~1重量部、潤滑剤0.02~0.06重量部、及び消臭剤0.5~1重量部を含み、前記PVC樹脂の重合度が1300以下であり、前記消臭剤はナノ炭酸カルシウム及びリシノール酸亜鉛を含む低臭気性軟質PVC材料であって、
前記ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との重量比は3~6.5:3~6.5であり、
前記酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤及びヒンダードアミン系酸化防止剤を含み、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤との重量比が1~3:1~3である、
ことを特徴とする低臭気性軟質PVC材料。
【請求項2】
前記ナノ炭酸カルシウムの粒子径D50が15~40nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【請求項3】
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、及び1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ヒンダードアミン系酸化防止剤は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンである、ことを特徴とする請求項
1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【請求項4】
前記熱安定剤はカルシウム・亜鉛系熱安定剤である、ことを特徴とする請求項1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【請求項5】
前記可塑剤は、ベンゾエート類、ポリオールエステル類、エポキシ化大豆油類、クエン酸エステル類、及びポリエステル類のうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【請求項6】
前記可塑剤は、テレフタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-プロピルヘプチル)、及びトリオクチルトリメリテートからなる群から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【請求項7】
前記フィラーは炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、及びカオリンのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【請求項8】
光安定剤、強化剤、強靭化剤、帯電防止剤、及び着色剤のうちの少なくとも1種をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の低臭気性軟質PVC材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子材料の技術分野に関し、具体的には、低臭気性軟質PVC材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、低価格で性能に優れ、加工しやすいなどの利点を有することから、日常生活の様々な分野に広く利用されている。その可塑剤の含有量によって、通常、可塑剤の含有量が30%を超えるものは軟質PVCとし、自動車内装に広く利用されている。
【0003】
耐衝撃性が劣り、熱に敏感であるというPVCに固有の特徴により、PVCの変性には各種助剤を添加する場合が多い。軟質PVCの場合、可塑剤、安定化剤の大量の添加が必要とされる。軟質PVCの臭気の原因が、主として、可塑剤に残留されて上流合成で反応していないアルコール類単量体、アルデヒド類化合物と、安定化剤中の残留揮発性物質、例えばチオール類有機スズ中のチオール類化合物と、PVC粉末が高温せん断の作用を受けて分解して生じた微量の塩化水素などの分子と、全ての揮発性小分子の高温加工におけるさらなる反応による他の揮発性物質との4つである。この4つの主な由来のため、軟質PVC材料は、ほとんど、深刻な臭気をしており、VOC含有量が高いなどの問題が存在する。中国第VI段階自動車汚染物質排出基準が全面的に実施されるに伴い、軟質PVC材料の自動車内装材料としての用途において、臭気の課題は従来の選択可能な条件から必須な条件になり、臭気の強いVOCは解決しなければならない課題となっている。
【0004】
PVC材料の臭気の問題を解決するために、現在、これについて研究を行った特許が報告されている。中国特許CN201410257480.Xは、塗料分野に用いられる低臭気性PVC組成物を開示し、この組成物は、NaY分子篩と4A分子篩との組み合わせを添加することで臭気を物理的に吸着し、ただし、使用される分子篩の粒子径が大きく、自動車内装材料への適用に不利である一方、塗料とする場合加工温度が低く、変性プラスチックとする場合加工温度が高く、分子篩で物理的に吸着された臭気が再び放出される恐れがあり、このため、PVCプラスチックの臭気改善に適していない。特許CN201310725382.Xは、白色活性炭を添加することで消臭するPVC薄膜材料を開示し、ただし、活性炭の添加量が高く、PVC材料の物理的特性に大きな影響を与える。特許CN201410693355及び201610714766.5は、ケーブル材料用の低臭気性PVCの処方を開示し、この処方には、無機ケイ酸塩類が消臭剤として使用されるが、この特許では、可塑剤の割合が30%以下であり、試験したところ、このような消臭剤は、本特許に含まれる可塑剤の種類が多くかつ含有量が高い(30%~50%)処方に対して作用が小さい。CN201710438307も自動車内装用の低臭気性PVC粉末を開示し、物理的に吸着するような消臭剤、具体的には、ナノ炭酸カルシウム、ナノ酸化亜鉛、沈降シリカ、ヒュームドシリカやホットメルト粉末接着剤のうちの少なくとも1種を導入することにより臭気を改善し、ただし、添加量がまた1%~5%と高く、外観性や性能への影響を低減させるために、カップリング剤を導入して消臭剤を表面変性し、このため、製造方法において混合工程を増加し、結果として時間や手間がかかり、生産効率が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許CN201410257480.X
【文献】中国特許CN201310725382.X
【文献】中国特許CN201410693355
【文献】中国特許CN201610714766.5
【文献】中国特許CN201710438307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術に存在する欠点を解決するために、低臭気性軟質PVC材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明が採用する技術的解決手段は以下のとおりである。低臭気性軟質PVC材料であって、成分として、PVC樹脂100重量部、可塑剤60~125重量部、熱安定剤2~10重量部、フィラー10~50重量部、酸化防止剤0~2重量部、潤滑剤0.02~0.06重量部、及び消臭剤0.5~1重量部を含み、前記PVC樹脂の重合度が1300以下であり、前記消臭剤はナノ炭酸カルシウム及びリシノール酸亜鉛を含む。
【0008】
現在、産業用のPVCは、懸濁重合方法によるものが主であり、重合中に分散剤が使用され、高重合度のPVCに使用される分散剤の種類や使用量が多く、分散剤が多く残留されることがあり、しかも、ほとんどの分散剤の臭気が強く、さらに、重合度の高いPVC粉末には、押し出し中に摩擦熱が生じて、低分子分解物が生成されるという問題が生じやすく、このため、本発明では、重合度が1300以下のPVC樹脂を利用することにより、臭気の発生を効果的に低減させる。
【0009】
また、本発明の前記PVC材料は、物理的吸着と化学反応とを組み合わせた消臭剤を利用しており、ナノ炭酸カルシウムはナノスケールの炭酸カルシウムであり、大きな比表面積を有し、臭気物質に対する表面吸着効果が高く、一方、リシノール酸亜鉛には、臭気に含まれるNやSなどの原子と強固な化合結合を形成して臭気を徹底的に解消できる多量の活性亜鉛原子が含有されている。さらに、本発明の前記消臭剤は実質的にはPVC材料にカルシウムや亜鉛のイオンを導入し、このため、材料の安定性がさらに向上し、これは、消臭効果を達成できる別の原因であると考えられる。発明者は、ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との組み合わせによる消臭効果が、ナノ炭酸カルシウムやリシノール酸亜鉛単独の効果よりも優れ、しかも、他の一般的な消臭剤(例えば活性炭、珪藻土、ナノ酸化亜鉛、ベントナイトなど)よりも優れることを見出した。このため、前記消臭剤は、消臭効率が高く、効果が安定的であり、添加量が少なく、製造された自動車内装の外観性や全体の性能への影響が小さく、量産に適用しており、消臭剤の処方がシンプルでかつ入手しやすく、コストが低いなどの利点を有する。
【0010】
ナノ炭酸カルシウム及びリシノール酸亜鉛は系への添加量が少ないため、系に分散しにくく、且つマトリックスとの相溶化性が悪く、潤滑剤を加えると、ナノ炭酸カルシウム及びリシノール酸亜鉛を材料に十分に分散させ、ナノ炭酸カルシウム及びリシノール酸亜鉛とマトリックスとの相溶化性を向上させ、さらに消臭効果を高めることができる。潤滑剤は、好ましくは、エステル類、ポリエチレン類、ステアリン酸類及びパラフィン類のうちの少なくとも1種である。
【0011】
本発明の前記PVC材料は、臭気性が低いことを特徴とする軟質PVC材料であり、特に自動車内装材料として有用である。
【0012】
好ましくは、前記ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との重量比は、3~6.5:3~6.5である。ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛とが上記の配合比で配合されると、消臭効果がより優れる。
【0013】
好ましくは、前記ナノ炭酸カルシウムの粒子径D50は15~40nmである。
【0014】
好ましくは、前記酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はヒンダードアミン系酸化防止剤である。
【0015】
好ましくは、前記酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤であり、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤との重量比は1~3:1~3である。発明者は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤との2種類の酸化防止剤を配合すると、PVC材料の臭気を明らかに低減させ、PVCなどの高分子材料の加工過程における酸化や劣化を抑制し、これにより揮発物の発生を減らし、臭気性を低減させることを見出した。
【0016】
好ましくは、前記酸化防止剤は0.2~1部である。前記酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤を配合すると、酸化防止剤の添加量が0.2部以上である場合、PVCの臭気を効果的に低減させ、添加量が1部よりも大きい場合、臭気改善効果は明らかではなく、かつコストが高まる。
【0017】
好ましくは、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びトリス[2,4-ジ-t-ブチルフェニル]ホスファイトのうちの少なくとも1種であり、前記ヒンダードアミン系酸化防止剤は4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンである。ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びヒンダードアミン系酸化防止剤としては、PVC材料の臭気を明らかに低減できることから、上記のものが好ましい。
【0018】
好ましくは、前記熱安定剤はカルシウム・亜鉛系熱安定剤である。
【0019】
好ましくは、前記可塑剤は、ベンゾエート類、ポリオールエステル類、エポキシ化大豆油類、クエン酸エステル類、及びポリエステル類のうちの少なくとも1種である。
【0020】
好ましくは、前記可塑剤は、テレフタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-プロピルヘプチル)、及びトリオクチルトリメリテートのうちの少なくとも1種である。上記の種類の可塑剤を用いると、可塑剤の添加量が大きい軟質PVC材料では、臭気性が効果的に低下する。
【0021】
好ましくは、前記フィラーは、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク(タルカムパウダー)、及びカオリンのうちの少なくとも1種である。前記フィラー中の炭酸カルシウムはミクロンスケールの炭酸カルシウムであり、粒子径D50=1.5~10μmである。
【0022】
好ましくは、前記PVC材料は、光安定剤、強化剤、強靭化剤、帯電防止剤、及び着色剤のうちの少なくとも1種をさらに含む。
【0023】
本発明の前記PVC材料の製造方法は、
所定の重量部で前記低臭気性軟質PVC材料の各成分を秤量するステップ(a)と、
PVC樹脂粉末、可塑剤、熱安定剤及び酸化防止剤を高速ミキサーに加えて8~15min混合し、材料の温度を110℃に上昇し、ここで、可塑剤を2回に分けて投入して、PVC樹脂粉末により可塑剤を十分に吸収させるステップ(b)と、
フィラー及び消臭剤を加え、さらに3~5min高速混合し、消臭剤と粉体とを十分に混合した後、ミキサーを停止して材料を取り出すステップ(c)と、
高速ミキサー内の熱い材料を低速コールドミキサーに移し、ミキサーを起動させて低速混合を行い、材料の温度を50℃以下に下げるステップ(d)と、
ツインスクリューの温度120℃~130℃、シングルスクリューの温度130℃~140℃の二段押出機に上記の混合済み材料を投入して押し出して造粒し、空冷式ホットカットを行い、前記低臭気性軟質PVC材料を得るステップ(e)とを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は、低臭気性軟質PVC材料を提供し、本発明の前記低臭気性軟質PVC材料は、低重合度のPVC樹脂及び消臭効率の高い消臭剤を利用することで、発生源から臭気性を低減させ、しかも、自動車内装の外観性や全体の性能への影響が少なく、コストが低く、量産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をよりよく説明するために、以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0026】
実施例及び比較例において、各原料は市販品として入手し、これらのうち、重合度1300のPVC樹脂のグレードはTK-1300であり、重合度1000のPVC樹脂のグレードはTK-1000であり、重合度700のPVC樹脂のグレードはTK-700であり、
潤滑剤はエメリーオレオケミカルズ(ドイツ)株式会社から購入したものであり、型番がLOXIOL P 861/3.5(エステル類潤滑剤)であり、
テレフタル酸ジオクチルは、広州市威聯達可塑剤有限公司(Guangzhou Weilianda Plasticizer Co., Ltd.)から購入され、
トリオクチルトリメリテートは、波林香港有限公司(Pauline Hong Kong Co., Ltd.)から購入され、
フタル酸ビス(2-プロピルヘプチル)は、広州市威聯達可塑剤有限公司(Guangzhou Weilianda Plasticizer Co., Ltd.)から購入され、
カルシウム・亜鉛系熱安定剤は、艾迪克上海貿易有限公司(Adeka Shanghai Trading Co., Ltd.)から購入され、型番RUP-108であり、
リシノール酸亜鉛は温州格雷化工社(Wenzhou Gray Chemicals)から購入され、
ナノ炭酸カルシウムの粒子径D50は20nmであり、
炭酸カルシウムの粒子径D50は4.5μmであり、
酸化防止剤1010(ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])は、BASF社から購入され、
酸化防止剤330(1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン)は、佛山▲元▼勝化工有限公司(Foshan Yuansheng Chemical Co., Ltd.)から購入され、
酸化防止剤168(トリス[2,4-ジ-t-ブチルフェニル]ホスファイト)は、BASF社から購入され、
酸化防止剤KY-405(4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)は、江蘇飛亜化学工業集団(Jiangsu Feiya Chemical Industry Group)から購入される。
【0027】
実施例1~20(実施例1,4,7-12は参考例)及び比較例1~5の前記低臭気性軟質PVC材料の処方及びテスト結果を表1及び表2に示す。
【0028】
実施例及び比較例の前記PVC材料の製造方法は、
所定の重量部で前記低臭気性軟質PVC材料の各成分を秤量するステップ(a)と、
PVC樹脂粉末、可塑剤、熱安定剤及び酸化防止剤を高速ミキサーに加えて8~15min混合し、材料の温度を110℃に上昇し、ここで、可塑剤を2回に分けて投入して、PVC樹脂粉末により可塑剤を十分に吸収させるステップ(b)と、
フィラー及び消臭剤を加え、さらに3~5min高速混合し、消臭剤と粉体とを十分に混合した後、ミキサーを停止して材料を取り出すステップ(c)と、
高速ミキサー内の熱い材料を低速コールドミキサーに移し、ミキサーを起動させて低速混合を行い、材料の温度を50℃以下に下げるステップ(d)と、
ツインスクリューの温度120℃~130℃、シングルスクリューの温度130℃~140℃の二段押出機に上記の混合済み材料を投入して押し出して造粒し、空冷式ホットカットを行い、前記低臭気性軟質PVC材料を得るステップ(e)とを含む
【0029】
実施例及び比較例にかかるテスト方法は以下のとおりである。
1、ショア硬度:ASTM D2240
2、臭気等級:PV 3900-2000、等級が低いほど、臭気が低いことを示す。
3、TVOC:TS-INT-002、値が小さいほど、総揮発性物質が少ないことを示す。
【0030】
【0031】
【0032】
一般には、臭気等級が3.5よりも高いと、ほとんどのユーザーは受けいられず、臭気等級が3.0以下であると、ほとんどのユーザーのニーズが満たされる。
【0033】
表1及び表2のテスト結果から分かるように、消臭剤を使用しないか、ナノ炭酸カルシウムやリシノール酸亜鉛だけを使用する場合に比べて、ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との組み合わせを使用すると、臭気等級及びテストしたTVOC含有量がともに低く、このことから、ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との組み合わせの場合、消臭効率がより高いことを示し、ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との配合比が3~6.5:3~6.5である場合、消臭効果はより優れ、臭気等級を3.0以下に効果的に低下させることができ、ほとんどのユーザーのニーズが満たされる。また、潤滑剤の添加により消臭効果が効果的に向上する。ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤との組み合わせを使用すると、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やヒンダードアミン系酸化防止剤だけを使用する場合よりも、臭気等級及びTVOC含有量が低く、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤との組み合わせが0.2部以上添加されると、臭気等級を3.0以下に低下させることができるが、酸化防止剤の添加量が1部よりも多くなると、酸化防止剤の量をさらに増加しても、臭気性をさらに低下させにくく、かつコストが高まる。
【0034】
なお、以上の実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためにのみ使用され、本発明の特許範囲を制限するものではなく、本発明は好適な実施例を参照して詳細に説明されたが、当業者が理解できるように、本発明の技術的解決手段の主旨や範囲を逸脱することなく、本発明の技術的解決手段を修正したり同等置換を行ってもよい。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕成分として、PVC樹脂100重量部、可塑剤60~125重量部、熱安定剤2~10重量部、フィラー10~50重量部、酸化防止剤0~2重量部、潤滑剤0.02~0.06重量部、及び消臭剤0.5~1重量部を含み、前記PVC樹脂の重合度が1300以下であり、前記消臭剤はナノ炭酸カルシウム及びリシノール酸亜鉛を含む、ことを特徴とする低臭気性軟質PVC材料。
〔2〕前記ナノ炭酸カルシウムとリシノール酸亜鉛との重量比が、3~6.5:3~6.5である、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔3〕前記ナノ炭酸カルシウムの粒子径D50が15~40nmである、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔4〕前記酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はヒンダードアミン系酸化防止剤であり、好ましくは、前記酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤であり、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系酸化防止剤との重量比が1~3:1~3である、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔5〕前記酸化防止剤は0.2~1部である、ことを特徴とする〔4〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔6〕前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びトリス[2,4-ジ-t-ブチルフェニル]ホスファイトのうちの少なくとも1種であり、
前記ヒンダードアミン系酸化防止剤は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンである、ことを特徴とする〔4〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔7〕前記熱安定剤はカルシウム・亜鉛系熱安定剤である、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔8〕前記可塑剤は、ベンゾエート類、ポリオールエステル類、エポキシ化大豆油類、クエン酸エステル類、及びポリエステル類のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、前記可塑剤は、テレフタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-プロピルヘプチル)、及びトリオクチルトリメリテートのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔9〕前記フィラーは炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、及びカオリンのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。
〔10〕光安定剤、強化剤、強靭化剤、帯電防止剤、及び着色剤のうちの少なくとも1種をさらに含む、ことを特徴とする〔1〕に記載の低臭気性軟質PVC材料。