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特許7479483インバータ装置及びそれを備えた車両用電動圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】インバータ装置及びそれを備えた車両用電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240426BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022544607
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021030910
(87)【国際公開番号】W WO2022045098
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020141410
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 淳
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046647(JP,A)
【文献】特開2008-005615(JP,A)
【文献】特開2011-223678(JP,A)
【文献】特開2008-215089(JP,A)
【文献】特開2002-119044(JP,A)
【文献】特開2005-269832(JP,A)
【文献】特開2007-259576(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0089659(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用半導体素子を有するインバータ回路と、前記電力用半導体素子を駆動するインバータ制御部を備えたインバータ装置において、
前記電力用半導体素子近傍の温度を検出する温度検出器を備え、
前記インバータ制御部は、
前記電力用半導体素子の損失Pを計算する損失計算部と、
前記温度検出器が検出する温度Tthに、前記損失計算部が計算した前記電力用半導体素子の損失Pから得られる温度上昇値ΔTを加えて、当該電力用半導体素子のジャンクション温度Tjを推定するジャンクション温度推定計算部と、を有し、
該ジャンクション温度推定計算部は、前記ジャンクション温度Tjを推定する際、前記電力用半導体素子以外の他の電子部品、及び/又は、制御基板の配線パターンの発熱が前記温度検出器に及ぼす影響を除外する方向の補正を行うことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記温度検出器は、前記他の電子部品が実装された前記制御基板上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記ジャンクション温度推定計算部は、前記電力用半導体素子の損失Pに所定の熱変数αを乗算することで前記温度上昇値ΔTを算出すると共に、
動作状態に基づいて前記熱変数αを変更することにより、前記他の電子部品、及び/又は、前記制御基板の配線パターンの発熱が前記温度検出器に及ぼす影響を除外する方向の補正を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記動作状態には、電源電圧、相電流、及び、入力電流のうちの何れか、或いは、それらの組み合わせ、若しくはそれらの全てを含むことを特徴とする請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記熱変数αは、前記電源電圧、前記相電流、及び、前記入力電流のうちの少なくとも二つから決まる値としてマップ化されていることを特徴とする請求項4に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記電源電圧が高い程、前記熱変数αは大きくなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記相電流が大きい程、前記熱変数αは小さくなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記入力電流が大きい程、前記熱変数αは小さくなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記インバータ制御部は、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値を超えた場合、所定の保護動作を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちの何れかに記載のインバータ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうちの何れかに記載のインバータ装置により運転されるモータと、該モータが収容されたハウジングを備え、前記電力用半導体素子が前記ハウジングの低温箇所と熱交換関係に配置されていることを特徴とする車両用電動圧縮機。
【請求項11】
電力用半導体素子を有するインバータ回路と前記電力用半導体素子を駆動するインバータ制御部を備えたインバータ装置と、該インバータ装置により運転されるモータと、該モータが収容されたハウジングを備え、前記電力用半導体素子が前記ハウジングを介して吸入冷媒と熱交換関係に配置された車両用電動圧縮機において、
前記電力用半導体素子近傍の温度を検出する温度検出器を備え、
前記インバータ制御部は、
前記電力用半導体素子の損失Pを計算する損失計算部と、
前記温度検出器が検出する温度Tthに、前記損失計算部が計算した前記電力用半導体素子の損失Pから得られる温度上昇値ΔTを加えて、当該電力用半導体素子のジャンクション温度Tjを推定するジャンクション温度推定計算部と、を有し、
該ジャンクション温度推定計算部は、前記ジャンクション温度Tjを推定する際、前記モータの回転数が高い程、低くする方向で前記ジャンクション温度Tjを補正することを特徴とする車両用電動圧縮機。
【請求項12】
前記ジャンクション温度推定計算部は、前記電力用半導体素子の損失Pに所定の熱変数αを乗算することで前記温度上昇値ΔTを算出すると共に、前記モータの回転数が高い程、前記熱変数αが小さくなるよう当該熱変数αを変更することを特徴とする請求項11に記載の車両用電動圧縮機。
【請求項13】
前記インバータ制御部は、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値を超えた場合、所定の保護動作を実行することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の車両用電動圧縮機。
【請求項14】
前記インバータ制御部は、前記電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更するゲート抵抗変更部を有し、
該ゲート抵抗変更部は、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づき、前記電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項13のうちの何れかに記載のインバータ装置又は車両用電動圧縮機。
【請求項15】
前記ゲート抵抗変更部は、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが低い程、前記電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を大きくし、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが高い程、前記電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を小さくすることを特徴とする請求項14に記載のインバータ装置又は車両用電動圧縮機。
【請求項16】
前記ゲート抵抗変更部は、
前記電力用半導体素子のゲートに接続された可変抵抗装置を有し、
前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づいて、前記可変抵抗装置の抵抗値を変更することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のインバータ装置又は車両用電動圧縮機。
【請求項17】
前記ゲート抵抗変更部は、
前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが低い程、前記可変抵抗装置の抵抗値を大きくし、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが高い程、前記可変抵抗装置の抵抗値を小さくすることを特徴とする請求項16に記載のインバータ装置又は車両用電動圧縮機。
【請求項18】
前記可変抵抗装置は、
前記電力用半導体素子のゲートに接続され、当該ゲートにON信号を入力するためのON信号生成用スイッチと、
前記電力用半導体素子のゲートにそれぞれ接続され、当該ゲートにOFF信号を入力するための複数のOFF信号生成用スイッチと、
これら複数のOFF信号生成用スイッチにそれぞれ接続された抵抗値の異なる複数の抵抗素子と、を有し、
前記ゲート抵抗変更部は、
前記電力用半導体素子をOFFする際、前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づいて、前記各OFF信号生成用スイッチを切り換えてONすることにより、前記電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更することを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のインバータ装置又は車両用電動圧縮機。
【請求項19】
前記ゲート抵抗変更部は、
前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値T1以下である場合、抵抗値が大きい前記抵抗素子が接続された前記OFF信号生成用スイッチをONさせ、
前記ジャンクション温度推定計算部が推定した前記電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが、前記所定値T1より高い所定値T2以上である場合、抵抗値が小さい前記抵抗素子が接続された前記OFF信号生成用スイッチをONさせることを特徴とする請求項18に記載のインバータ装置又は車両用電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動圧縮機のモータを運転するインバータ装置、及び、それを備えた車両用電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題からハイブリッド自動車や電気自動車が注目されてきているが、この種ハイブリッド自動車等の空調装置では冷媒圧縮機として電動圧縮機が使用される。この電動圧縮機は、車両のバッテリ(電源)から給電されるモータにより圧縮要素を駆動するものであるが、このモータはインバータ装置により運転される。
【0003】
この種のインバータ装置は、ブリッジ構成の電力用半導体素子(IGBTやMOSFET等)をスイッチングすることにより、モータの各相の通電を制御するものであるが、これら電力用半導体素子は、損失分の発熱が生じるため、特に電動圧縮機がエンジンルームなどの過酷な温度(高温)環境下で使用される車両用電動圧縮機である場合には、インバータ装置を構成する電力用半導体素子の過熱保護が極めて重要となる。
【0004】
係る電力用半導体素子の発熱を考慮した保護方式として、電力用半導体素子のジャンクション温度を推定し、当該ジャンクション温度が所定値に上昇したことに基づいて運転を停止するものがある。このジャンクション温度とは、電力用半導体素子内部のチップの温度(IGBTチップやMOSFETチップと、FWDチップの表面温度)であり、電力用半導体素子の端子が接続された制御基板の温度(電力用半導体素子の近傍の温度)を温度センサ(温度検出器)で検出し、この検出値に電力用半導体素子のスイッチング損失と定常損失(導通損失又は通電損失)から成る損失で生じる発熱量に相当する温度上昇値を加えることで得られるものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-46647号公報
【文献】特許第6330219号公報
【文献】特許第3983439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、温度検出器が配置された制御基板上には、電力用半導体素子以外の他の電子部品や配線パターンが存在し、通電によりこれらも発熱する。この熱は温度検出器に伝達するため、実際のジャンクション温度より高い温度を温度検出器が検出し、電力用半導体素子の過熱保護を行う必要が無い段階で動作を抑制し、或いは、停止してしまうという問題があった。
【0007】
また、インバータ装置が車両用電動圧縮機のモータの運転に使用される場合、電力用半導体素子は車両用電動圧縮機のハウジングと熱交換関係に配置される。これは、ハウジングに流入する低温の吸入冷媒によって電力用半導体素子を冷却するためであるが、この場合の冷却効果はモータの回転数によって変動するため、従来のジャンクション温度の推定方法では、正確な温度を推定できず、やはり的確な保護を行うことができないという問題があった。
【0008】
更に、電力用半導体素子の耐圧は、例えば、IGBTの場合は600V耐圧品、1200V耐圧品と云うように、比較的大きな幅をもった間隔でシリーズ展開されているのが実情である。この場合、耐圧が高いIGBT程、電気的な特性が悪く、コスト的にもデメリットがある。
【0009】
一方、IGBTのゲートを駆動した場合、ONからOFF(ターンオフ)にしたときに、配線バスバーのインダクタンスLによって、図15の左側に示すようにサージ電圧ΔV(=L*di/dt)が発生するが、このサージ電圧ΔVがIGBTの耐圧(許容されるコレクタ-エミッタ間電圧の上限)を超えた場合、素子が破壊される危険性がある。そのため、例えば車両に搭載される電動圧縮機のモータを駆動する場合、高電圧バッテリの上限電圧値が電力用半導体素子の耐圧(素子耐圧)に対して余裕が無いときには、図15の左側に示すサージ電圧ΔVをきわめて小さくする必要がある。その理由としては、前記の如く一つ上の耐圧品をできるだけ使用したくないからである。
【0010】
他方、図15の右側に示すように、例えばIGBTの耐圧はジャンクション温度が低くなる程、低下する特性を有している。この場合、ジャンクション温度が1℃低下するごとに、何V低下するという線形性を有する。そして、ジャンクション温度がX℃のときに耐圧が高電圧バッテリの上限電圧値+サージ電圧ΔVの値であるとき、X℃以下の動作では耐圧逸脱による破壊の可能性が出て来る。
【0011】
そのため、低温での耐圧低下を考慮し、且つ、ターンオフ時のサージ電圧ΔVをきわめて小さくするためには、IGBTのゲートにゲート抵抗を接続し、このゲート抵抗の抵抗値を大きく設定して、ゲート抵抗とIGBTのゲート-エミッタ間の寄生容量により、ゲートに与えられる信号電圧の立ち下がり波形をなまらせる必要がある。しかしながら、ゲート抵抗の抵抗値(ゲート抵抗値)を大きくすると、IGBTのOFF時の電流遮断スピードが遅くなり(di/dtが小さい)、図16に示すように、発生する動作損失(発生損失)が増大する。
【0012】
但し、実際にはIGBTが動作すると、上記のように発生する動作損失(発生損失)により自ら熱を発するため、徐々にジャンクション温度は上昇し、それに伴って耐圧も上昇する。そのため、低温環境で起動した直後が最も問題となるが、当然ながらあらゆる状況での動作に対応する必要があるため、ゲート抵抗の抵抗値を大きくする必要があり、図16に示すような発生損失が大きい、即ち、効率が悪い装置となってしまうと云う問題があった。
【0013】
その問題を解決するために、電力用半導体素子の温度に応じてゲート抵抗(入力抵抗)の抵抗値を変更することで、温度による耐圧変動を考慮した回路の最適化を図ったものも開発されているが(例えば、特許文献3参照)、その場合にも、最適な動作を実現するためには、正確なジャンクション温度を把握することが極めて重要となる。
【0014】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、電力用半導体素子を的確に保護でき、更には、耐圧を考慮した最適な動作を実現することができるインバータ装置及びそれを用いた車両用電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明のインバータ装置は、電力用半導体素子を有するインバータ回路と、電力用半導体素子を駆動するインバータ制御部を備えたものであって、電力用半導体素子近傍の温度を検出する温度検出器を備え、インバータ制御部は、電力用半導体素子の損失Pを計算する損失計算部と、温度検出器が検出する温度Tthに、損失計算部が計算した電力用半導体素子の損失Pから得られる温度上昇値ΔTを加えて、当該電力用半導体素子のジャンクション温度Tjを推定するジャンクション温度推定計算部と、を有し、このジャンクション温度推定計算部は、ジャンクション温度Tjを推定する際、電力用半導体素子以外の他の電子部品、及び/又は、制御基板の配線パターンの発熱が温度検出器に及ぼす影響を除外する方向の補正を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明のインバータ装置は、上記発明において温度検出器は、他の電子部品が実装された制御基板上に配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明のインバータ装置は、上記各発明においてジャンクション温度推定計算部は、電力用半導体素子の損失Pに所定の熱変数αを乗算することで温度上昇値ΔTを算出すると共に、動作状態に基づいて熱変数αを変更することにより、他の電子部品、及び/又は、制御基板の配線パターンの発熱が温度検出器に及ぼす影響を除外する方向の補正を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明のインバータ装置は、上記発明において動作状態には、電源電圧、相電流、及び、入力電流のうちの何れか、或いは、それらの組み合わせ、若しくはそれらの全てを含むことを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明のインバータ装置は、上記発明において熱変数αは、電源電圧、相電流、及び、入力電流のうちの少なくとも二つから決まる値としてマップ化されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明のインバータ装置は、請求項4又は請求項5の発明において電源電圧が高い程、熱変数αは大きくなることを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明のインバータ装置は、請求項4又は請求項5の発明において相電流が大きい程、熱変数αは小さくなることを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明のインバータ装置は、請求項4又は請求項5の発明において入力電流が大きい程、熱変数αは小さくなることを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明のインバータ装置は、上記各発明においてインバータ制御部は、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値を超えた場合、所定の保護動作を実行することを特徴とする。
【0024】
請求項10の発明の車両用電動圧縮機は、上記各発明のインバータ装置により運転されるモータと、このモータが収容されたハウジングを備え、電力用半導体素子がハウジングの低温箇所と熱交換関係に配置されていることを特徴とする。
【0025】
請求項11の発明の車両用電動圧縮機は、電力用半導体素子を有するインバータ回路と電力用半導体素子を駆動するインバータ制御部を備えたインバータ装置と、このインバータ装置により運転されるモータと、このモータが収容されたハウジングを備え、電力用半導体素子がハウジングを介して吸入冷媒と熱交換関係に配置されたものであって、電力用半導体素子近傍の温度を検出する温度検出器を備え、インバータ制御部は、電力用半導体素子の損失Pを計算する損失計算部と、温度検出器が検出する温度Tthに、損失計算部が計算した電力用半導体素子の損失Pから得られる温度上昇値ΔTを加えて、当該電力用半導体素子のジャンクション温度Tjを推定するジャンクション温度推定計算部と、を有し、このジャンクション温度推定計算部は、ジャンクション温度Tjを推定する際、モータの回転数が高い程、低くする方向でジャンクション温度Tjを補正することを特徴とする。
【0026】
請求項12の発明の車両用電動圧縮機は、上記発明においてジャンクション温度推定計算部は、電力用半導体素子の損失Pに所定の熱変数αを乗算することで温度上昇値ΔTを算出すると共に、モータの回転数が高い程、熱変数αが小さくなるよう当該熱変数αを変更することを特徴とする。
【0027】
請求項13の発明の車両用電動圧縮機は、請求項11又は請求項12の発明においてインバータ制御部は、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値を超えた場合、所定の保護動作を実行することを特徴とする。
【0028】
請求項14の発明のインバータ装置又は車両用電動圧縮機は、上記各発明においてインバータ制御部は、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更するゲート抵抗変更部を有し、このゲート抵抗変更部は、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づき、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更することを特徴とする。
【0029】
請求項15の発明のインバータ装置又は車両用電動圧縮機は、上記発明においてゲート抵抗変更部は、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが低い程、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが高い程、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を小さくすることを特徴とする。
【0030】
請求項16の発明のインバータ装置又は車両用電動圧縮機は、請求項14又は請求項15の発明においてゲート抵抗変更部は、電力用半導体素子のゲートに接続された可変抵抗装置を有し、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づいて、可変抵抗装置の抵抗値を変更することを特徴とする。
【0031】
請求項17の発明のインバータ装置又は車両用電動圧縮機は、上記発明においてゲート抵抗変更部は、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが低い程、可変抵抗装置の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが高い程、可変抵抗装置の抵抗値を小さくすることを特徴とする。
【0032】
請求項18の発明のインバータ装置又は車両用電動圧縮機は、請求項16又は請求項17の発明において可変抵抗装置は、電力用半導体素子のゲートに接続され、当該ゲートにON信号を入力するためのON信号生成用スイッチと、電力用半導体素子のゲートにそれぞれ接続され、当該ゲートにOFF信号を入力するための複数のOFF信号生成用スイッチと、これら複数のOFF信号生成用スイッチにそれぞれ接続された抵抗値の異なる複数の抵抗素子と、を有し、ゲート抵抗変更部は、電力用半導体素子をOFFする際、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づいて、各OFF信号生成用スイッチを切り換えてONすることにより、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更することを特徴とする。
【0033】
請求項19の発明のインバータ装置又は車両用電動圧縮機は、上記発明においてゲート抵抗変更部は、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値T1以下である場合、抵抗値が大きい抵抗素子が接続されたOFF信号生成用スイッチをONさせ、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが、前記所定値T1より高い所定値T2以上である場合、抵抗値が小さい抵抗素子が接続されたOFF信号生成用スイッチをONさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1の発明によれば、電力用半導体素子を有するインバータ回路と、電力用半導体素子を駆動するインバータ制御部を備えたインバータ装置において、電力用半導体素子近傍の温度を検出する温度検出器を備えており、インバータ制御部が、電力用半導体素子の損失Pを計算する損失計算部と、温度検出器が検出する温度Tthに、損失計算部が計算した電力用半導体素子の損失Pから得られる温度上昇値ΔTを加えて、当該電力用半導体素子のジャンクション温度Tjを推定するジャンクション温度推定計算部と、を有し、このジャンクション温度推定計算部が、ジャンクション温度Tjを推定する際、電力用半導体素子以外の他の電子部品、及び/又は、制御基板の配線パターンの発熱が温度検出器に及ぼす影響を除外する方向の補正を行うようにしたので、特に、請求項2の発明の如く温度検出器が制御基板上に配置されている場合等に、電力用半導体素子以外の他の電子部品や配線パターンの発熱が温度検出器に及ぼす影響を廃し、電力用半導体素子のジャンクション温度Tjをより正確に推定することができるようになる。
【0035】
これにより、請求項9の発明の如く保護動作を実行する場合にも、電力用半導体素子の使用可能領域を拡大することが可能となり、それにより部品の定格を小さくして、小型化と低コスト化を図ることができるようになる。
【0036】
また、請求項3の発明の如くジャンクション温度推定計算部が、電力用半導体素子の損失Pに所定の熱変数αを乗算することで温度上昇値ΔTを算出すると共に、動作状態に基づいて熱変数αを変更するようにすれば、他の電子部品、及び/又は、制御基板の配線パターンの発熱が温度検出器に及ぼす影響を円滑に除外することが可能となる。
【0037】
この場合の動作状態には、請求項4の発明の如き電源電圧や、相電流、入力電流を採用できる。そして、請求項5の発明の如く熱変数αを、電源電圧、相電流、及び、入力電流のうちの少なくとも二つから決まる値としてマップ化することで、相互に連関する各動作状態に応じて的確に熱変数αを設定することが可能となる。
【0038】
ここで、電源電圧が高い程、電力用半導体素子のジャンクション温度Tjは高くなるので、他の電子部品や配線パターンからの熱影響は相対的に小さくなる。そこで、請求項6の発明の如く電源電圧が高い程、熱変数αを大きくすることで、正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。
【0039】
また、相電流が大きい程、他の電子部品や配線パターンの発熱が大きくなり、温度検出器に伝わる熱も増大する。そこで、請求項7の発明の如く相電流が大きい程、熱変数αを小さくすることで、正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。
【0040】
更に、入力電流が大きい場合も配線パターンの発熱が大きくなり、温度検出器に伝わる熱も増大する。そこで、請求項8の発明の如く入力電流が大きい程、熱変数αを小さくすることで、正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。
【0041】
そして、高温環境下で使用される請求項10の発明の如き車両用電動圧縮機において、上記各発明のインバータ装置によりモータを運転することで、極めて効果的な過熱保護を実現することができるようになる。
【0042】
一方、請求項11の発明の如き車両用電動圧縮機においては、モータの回転数が高い程、吸入冷媒による冷却能力は高くなる。即ち、ハウジングを介して吸入冷媒と熱交換関係に設けられた電力用半導体素子のジャンクション温度Tjは低下することになるので、モータの回転数が高い程、低くする方向でジャンクション温度Tjを補正することで、正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。
【0043】
この場合も、請求項12の発明の如くジャンクション温度推定計算部が、電力用半導体素子の損失Pに所定の熱変数αを乗算することで温度上昇値ΔTを算出すると共に、モータの回転数が高い程、熱変数αが小さくなるよう当該熱変数αを変更するようにすれば、正確なジャンクション温度Tjを円滑に推定することが可能となる。
【0044】
これにより、請求項13の発明の如く保護動作を実行する場合にも、同様に電力用半導体素子の使用可能領域を拡大することが可能となり、それにより部品の定格を小さくして、小型化と低コスト化を図ることができるようになる。
【0045】
上記の如く請求項1乃至請求項13の発明によれば、電力用半導体素子のジャンクション温度Tjを正確に推定することができるようになるので、電力用半導体素子の耐圧変動を正確に把握することができるようになる。
【0046】
これにより、請求項14の発明の如くインバータ制御部に、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更するゲート抵抗変更部を設け、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づき、ゲート抵抗変更部により電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更することで、電力用半導体素子の耐圧を考慮した最適な動作を実現することが可能となる。
【0047】
例えば、請求項15の発明の如くゲート抵抗変更部が、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが低い程、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが高い程、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を小さくするようにすれば、ジャンクション温度Tjが低く、電力用半導体素子の耐圧が低下する状況では、ゲート抵抗の抵抗値を大きくしてサージ電圧を小さくし、ジャンクション温度Tjが高く、電力用半導体素子の耐圧が上昇する状況では、ゲート抵抗の抵抗値を小さくして発生損失を低下させることができるようになる。
【0048】
これにより、サージ電圧による電力用半導体素子の破壊を回避しながら、発生損失を抑制し、効率の良い動作を実現することができるようになる。
【0049】
具体的には、例えば請求項16の発明の如くゲート抵抗変更部に、電力用半導体素子のゲートに接続された可変抵抗装置を設け、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づいて、可変抵抗装置の抵抗値を変更するようにすると共に、請求項17の発明の如くジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが低い程、可変抵抗装置の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが高い程、可変抵抗装置の抵抗値を小さくすることで、サージ電圧による電力用半導体素子の破壊防止と、電力用半導体素子の発生損失の抑制の双方を実現することができる。
【0050】
更に具体的には、例えば請求項18の発明の如く可変抵抗装置に、電力用半導体素子のゲートに接続され、当該ゲートにON信号を入力するためのON信号生成用スイッチと、電力用半導体素子のゲートにそれぞれ接続され、当該ゲートにOFF信号を入力するための複数のOFF信号生成用スイッチと、これら複数のOFF信号生成用スイッチにそれぞれ接続された抵抗値の異なる複数の抵抗素子を設け、ゲート抵抗変更部が、電力用半導体素子をOFFする際、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjに基づいて、各OFF信号生成用スイッチを切り換えてONすることにより、電力用半導体素子のゲート抵抗の抵抗値を変更するようにすると共に、請求項19の発明の如くジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが所定値T1以下である場合、抵抗値が大きい抵抗素子が接続されたOFF信号生成用スイッチをONさせ、ジャンクション温度推定計算部が推定した電力用半導体素子のジャンクション温度Tjが、所定値T1より高い所定値T2以上である場合、抵抗値が小さい抵抗素子が接続されたOFF信号生成用スイッチをONさせるようにすることで、電力用半導体素子がターンオフする際のサージ電圧による電力用半導体素子の破壊防止と、電力用半導体素子の発生損失の抑制の双方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明のインバータ装置を適用した一実施例の車両用電動圧縮機の概略断面図である。
図2】本発明の一実施例のインバータ装置の電気回路図である。
図3図2のインバータ装置のジャンクション温度推定計算部が保有するバッテリ電圧と相電流から決まる熱変数αの3次元マップを示す図である(実施例1)。
図4】相電流と熱変数αの関係を説明する3次元マップである。
図5】相電流と熱変数αの関係を説明するための車両用電動圧縮機の要部断面図である。
図6】相電流と熱変数αの関係を説明するための熱回路図である。
図7】バッテリ電圧(電源電圧)と熱変数αの関係を説明する3次元マップである。
図8】バッテリ電圧と熱変数αの関係を説明するための熱回路図である。
図9】入力電流と熱変数αの関係を説明するグラフである。
図10】入力電流と熱変数αの関係を説明するための車両用電動圧縮機の要部断面図である。
図11】入力電流と熱変数αの関係を説明するための熱回路図である。
図12】モータの回転数と熱変数αの関係を説明するグラフである(実施例2)。
図13】モータの回転数と熱変数αの関係を説明するための車両用電動圧縮機の要部断面図である。
図14】モータの回転数と熱変数αの関係を説明するための熱回路図である。
図15】実施例の電力用半導体素子の半導体スイッチング素子(IGBT)のターンオフ時のコレクタ-エミッタ間電圧(サージ電圧含む)と、半導体スイッチング素子のジャンクション温度と素子耐圧の関係を示す図である。
図16】実施例の電力用半導体素子の半導体スイッチング素子(IGBT)のゲート抵抗の抵抗値(ゲート抵抗値)とサージ電圧及び発生損失の関係を示す図である。
図17】本発明のインバータ装置のゲート抵抗変更部の構成の一例を示す電気回路図である(実施例3)。
図18図17のゲート抵抗変更部の具体的な電気回路の一例を示す図である。
図19図18におけるゲート抵抗変更部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0053】
(1)車両用電動圧縮機1
図1は本発明を適用した車両用電動圧縮機1の概略断面図を示している。実施例の電動圧縮機1は、図示しない車両の車室内を空調する空気調和装置の冷媒回路の一部を構成するもので、車両のエンジンルームに搭載される。電動圧縮機1は、金属製のハウジング2内にモータ3と、このモータ3の回転軸により駆動されるスクロール型等の圧縮要素6を備えている。ハウジング2には更に本発明のインバータ装置7が取り付けられており、このインバータ装置7によりモータ3は運転され、圧縮要素6を駆動する。圧縮要素6はモータ3の回転軸により駆動されて吸込口4より冷媒回路からの冷媒を吸入し、圧縮して図示しない吐出口より再度冷媒回路に吐出するものである。
【0054】
図中11はインバータ装置7の制御基板(樹脂製)であり、この制御基板11には相電流が流れる配線パターン34や、入力電流が流れる配線パターン36がプリントされている。また、図中16Uはインバータ装置7のインバータ回路8を構成する電力用半導体素子であり、その端子37は制御基板11に接続されている。この場合、電力用半導体素子16U(後述する他の電力用半導体素子16V、16W、17U、17V、17Wも同様)は、ハウジング2の吸込口4の近傍(ハウジング2の低温箇所)と熱交換関係に配置されている。これにより、電力用半導体素子16U、16V、16W、17U、17V、17Wはハウジング2を介して低温の吸入冷媒と熱交換関係に配置されている。
【0055】
また、図中22は温度検出器としての温度センサであり、制御基板11に配置されて電力用半導体素子16U、16V、16W、及び、17U、17V、17Wの近傍に位置している。また、制御基板11には後述するインバータ制御部12や平滑コンデンサ9等の電力用半導体素子以外の電子部品も配置されている。
【0056】
(2)インバータ装置7
次に、図2は係るインバータ装置7の電気回路図を示している。実施例のインバータ装置7は、前述した平滑コンデンサ9や配線パターン34、36が実装され、インバータ回路8が接続された制御基板11と、マイクロコンピュータ(プロセッサ)により構成された前記インバータ制御部12を備えている。インバータ回路8の正側の直流母線13は、車両に搭載された高電圧バッテリ(車両用HV電源)Bの+端子に接続され、負側の直流母線14は、高電圧バッテリBの-端子に接続されている。そして、平滑コンデンサ9はインバータ回路8の二つの直流母線13、14間に接続されている。この平滑コンデンサ9からインバータ回路8に至る回路が配線バスバーとなる。
【0057】
(3)インバータ回路8
インバータ回路8は、ブリッジを構成する複数の電力用半導体素子のスイッチング状態をそれぞれ変化させて、高電圧バッテリBから印加される直流を交流に変換し、モータ3に供給するものである。具体的には、ブリッジの上相を構成する三つの前記電力用半導体素子16U、16V、16Wと、ブリッジの下相を構成する三つの前記電力用半導体素子17U、17V、17Wを備えている。各電力用半導体素子16U、16V、16W、及び、17U、17V、17Wは、何れも半導体スイッチング素子18とそれに逆並列で接続された還流ダイオード19との複合体であり、このインバータ回路8の直流母線13、14には高電圧バッテリBから直流電源が供給される。
【0058】
このインバータ回路8では、上相の電力用半導体素子16U、16V、16Wの各半導体スイッチング素子18と下相の電力用半導体素子17U、17V、17Wの各半導体スイッチング素子18とが、1対1に対応して直列接続されている。以下では、直列接続された電力用半導体素子16U~17Wの各半導体スイッチング素子18の対をスイッチングレグと称する。即ち、実施例では電力用半導体素子16Uの半導体スイッチング素子18と電力用半導体素子17Uの半導体スイッチング素子18の対で構成されたスイッチングレグ21Uと、電力用半導体素子16Vの半導体スイッチング素子18と電力用半導体素子17Vの半導体スイッチング素子18の対で構成されたスイッチングレグ21Vと、電力用半導体素子16Wの半導体スイッチング素子18と電力用半導体素子17Wの半導体スイッチング素子18の対で構成されたスイッチングレグ21Wとがある。
【0059】
これらスイッチングレグ21U、21V、21Wは、正側の直流母線13と負側の直流母線14との間にそれぞれ接続されている。また、それぞれのスイッチングレグ21U、21V、21Wの各中間点MU、MV、MWが出力交流の各相(U相、V相、W相)の相電圧Vu、Vv、Vwを出力するノードであり、各中間点MU、MV、MWがモータ3の各相に接続されている。
【0060】
実施例のインバータ回路8では、半導体スイッチング素子18はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いている。尚、半導体スイッチング素子18としては係るIGBTに限らず、MOSFET等でも良い。また、制御基板11には前述した如く電力用半導体素子16U~17Wの近傍に位置して温度センサ22が実装されている。この温度センサ22は実施例ではサーミスタから構成されている。
【0061】
更に、モータ3からの電流が流れ込む位置の負側の直流母線14には相電流検出器としてのシャント抵抗23が接続されている。このシャント抵抗23にモータ3からの電流が流れると、シャント抵抗23の両端には電位差が生じ、この両端間の電圧を検出することで、相電流Iu、Iv、Iwを算出することができる。尚、相電流検出器としては係るシャント抵抗に限らず、カレントトランス等で構成しても良い。
【0062】
(4)インバータ制御部12
一方、インバータ制御部12は、モータ制御部26と、PWM制御部27と、電流検出部28と、ゲートドライバ29と、損失計算部31と、ジャンクション温度推定計算部32と、温度保護部33を備えている。そして、正側の直流母線13のバッテリ(HV)電圧(電源電圧)VbはPWM制御部27と損失計算部31に入力される。
【0063】
(5)モータ制御部26
モータ制御部26はモータ3に印加する三相正弦波の目標とする波形(変調波)をPWM制御部27に出力する。PWM制御部27はモータ制御部26が出力する変調波とキャリア(三角波)の高低を比較することにより、ドライブ信号であるデューティ(Duty:ON時間)を生成する。このデューティはU相、V相、W相の各相について生成され、各半導体スイッチング素子18のゲートをドライブ(ON-OFF)するゲートドライバ29に送出される。ドライブ信号を受けたゲートドライバ29は、ドライブ信号の立ち上がりと立ち下がりに応じて、半導体スイッチング素子18(IGBT)をONさせる信号とOFFさせる信号を生成する。ゲートドライバ29の出力(6つの出力)は、ゲート抵抗39を介して各半導体スイッチング素子18のゲートにそれぞれ接続されており、立ち上がりと立ち下がりを有する信号電圧を各半導体スイッチング素子18のゲートに印加することで、それらをスイッチング(ON-OFF)する。
【0064】
尚、実施例のモータ3の回転速度である相電流Iu、Iv、Iwの周波数は400Hz~500Hzであり、PWM制御部27におけるキャリアの周期(以下、PWMキャリア周期と称する)は、それよりも十分小さい(或いは、十分短い)20kHzである。また、電力用半導体素子16U~17Wの熱時定数(損失分の温度上昇値として温度センサ22に伝達するまでにかかる時間)は50msec程であり、PWMキャリア周期はこの熱時定数よりも十分短い(或いは、十分早い)。
【0065】
電流検出部28は、シャント抵抗23の両端間の電圧を入力し、当該シャント抵抗23の抵抗値から相電流Iu、Iv、Iwを算出する。算出された相電流Iu、Iv、Iwは損失計算部31に入力される。
【0066】
(6)損失計算部31
損失計算部31は、電流検出部28から入力されたU相、V相、W相の各相の相電流Iu、Iv、Iw、及び、正側の直流母線13のHV電圧(印加電圧)と、PWM制御部27から入力されるデューティに基づき、各電力用半導体素子16U~17Wの損失を計算する。実施例の場合、損失計算部31は各電力用半導体素子16U~17Wを構成する半導体スイッチング素子18のスイッチング損失、及び、定常損失(導通損失又は通電損失)と、還流ダイオード19のスイッチング損失、及び、定常損失(導通損失又は通電損失)をそれぞれ別個に計算する。
【0067】
この半導体スイッチング素子18のスイッチング損失、及び、定常損失(導通損失又は通電損失)が半導体スイッチング素子18の損失であり、当該半導体スイッチング素子18の発熱量となる。また、還流ダイオード19のスイッチング損失、及び、定常損失(導通損失又は通電損失)が還流ダイオード19の損失であり、当該還流ダイオード19の発熱量となる。そして、これらが各電力用半導体素子16U~17Wの損失Pとなる。この損失計算部31で算出された各電力用半導体素子16U~17Wの損失Pは、ジャンクション温度推定計算部32に入力される。
【0068】
また、実施例では前述したバッテリ電圧Vbや相電流Iu、Iv、Iwの他、入力電流Iin、モータ3の回転数NCに関する情報も損失計算部31からジャンクション温度推定計算部32に送信されるものとする。
【0069】
(7)ジャンクション温度推定計算部32
ジャンクション温度推定計算部32は、温度センサ22が検出する電力用半導体素子16U~17Wの近傍の温度Tthに、損失計算部31が計算した各電力用半導体素子16U~17Wの損失Pから得られる温度上昇値ΔTを加えることで、各電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のジャンクション温度Tjの推定値を計算する。
【0070】
この場合、ジャンクション温度推定計算部32は、所定の熱変数αを損失計算部31が計算した各電力用半導体素子16U~17Wの損失Pに乗算する(掛ける)ことで上記温度上昇値ΔTを算出する。上記のジャンクション温度推定計算部32における推定計算を式で表すと下記式(1)、式(2)のようになる。
Tj=Tth+ΔT ・・・(1)
ΔT=α×P ・・・(2)
上記熱変数αについては後に詳述する。そして、算出されたジャンクション温度Tjは温度保護部33に入力される。
【0071】
(8)温度保護部33
温度保護部33は、ジャンクション温度推定計算部32が推定した各電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のジャンクション温度Tjに基づいて所定の保護動作を実行する。この保護動作は、実施例では二段階に分かれており、先ず、何れかの電力用半導体素子16U~17Wの各ジャンクション温度Tjのうちの最も高いものが第1の所定値TS1を超えた場合、温度保護部33はモータ制御部26に電流制限信号を出力する。
【0072】
モータ制御部26は温度保護部33から電流制限信号を受信した場合、インバータ回路8に流れる電流を所定の値に制限するように変調波を調整する。また、温度保護部33は、前記ジャンクション温度Tjのうちの最も高いものが前記第1の所定値TS1より高い第2の所定値TS2を超えた場合、電流遮断信号をモータ制御部26に出力する。モータ制御部26は温度保護部33から電流遮断信号を受信した場合、変調波の出力を停止することで、全ての電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18をOFFし、インバータ回路8に流れる電流を遮断する。これら第1の所定値TS1及び第2の所定値TS2は、電力用半導体素子16U~17Wを構成する半導体スイッチング素子18
の温度限界から設定された値である。
【0073】
(9)ジャンクション温度推定計算部32による熱変数αの変更(その1)
次に、図3図8を参照しながらインバータ制御部12のジャンクション温度推定計算部32による前述した式(2)の熱変数αを変更する制御の一例について説明する。前述した如く制御基板11には相電流(Iu、Iv、Iw)が流れる配線パターン34や、入力電流Iinが流れる配線パターン36、インバータ制御部12や平滑コンデンサ9等の電力用半導体素子16U~17W以外の電子部品が実装されている。
【0074】
これらの電子部品(12、9)や配線パターン(34、36)は、インバータ装置7に通電されてモータ3が運転されることによって発熱する。この発熱は、同じく制御基板11に配置された温度センサ22にも伝達するため、温度センサ22が検出する温度Tthは、その影響を受けて上昇することになる。そのため、前述した式(1)の如く温度センサ22が検出した温度Tthに各電力用半導体素子16U~17Wの損失Pから換算した温度上昇値ΔTをそのまま加えただけでは、ジャンクション温度Tjは実際よりも高く算出され、無用に早い段階で前述した保護動作が実行されてしまうようになる。
【0075】
そこで、実施例のジャンクション温度推定計算部32は、前述した式(2)の如く、損失Pに所定の熱変数αを乗算すると共に、この熱変数αを動作状態に応じて変更することで、上記の如く電子部品(12、9)や配線パターン(34、36)の発熱が温度センサ22に及ぼす影響を除外する方向でジャンクション温度Tjの補正を行う。
【0076】
実際には、この実施例では動作状態として、バッテリ電圧Vb(電源電圧)と相電流(Iu、Iv、Iw)を採用し、これらに基づいて熱変数αを決定する。この実施例では熱変数αは、バッテリ電圧Vbと相電流(Iu、Iv、Iw)から決まる値として、図3の如くマップ化されており(3次元マップ)、ジャンクション温度推定計算部32に予め記憶されている。尚、図3の3次元マップは、当該車両用電動圧縮機1について予め実験により求められた値である。
【0077】
(9-1)相電流(Iu、Iv、Iw)と熱変数αの関係
次に、図4図6を参照して相電流(Iu、Iv、Iw)と熱変数αとの関係について説明する。尚、この場合の相電流としては、例えば、各相電流Iu、Iv、Iwの実効値を用いるものとする。そして、各電力用半導体素子16U~17Wに相電流が流れると、配線パターン34も発熱するので、図4に示す如く相電流が大きい程、熱変数αが小さくなるように3次元マップが構成されている。その理由を図5図6を用いて説明する。
【0078】
図5の車両用電動圧縮機1における熱の伝達は、電気回路に置き換えて考えることができ、その場合、電力用半導体素子16U~17Wや配線パターン34等の熱源は、図6に示す如く電流源となり、各素子やハウジング2の熱抵抗は抵抗R1~R5となる。尚、ジャンクション温度Tjと温度センサ22が検出する温度Tthの間の抵抗は熱変数αとなる。
【0079】
相電流が大きい程、配線パターン34の発熱は大きくなり、その熱量によって温度センサ22が検出する温度Tthが上昇する。そこで、相電流が大きい程、熱変数αを小さくすることで、配線パターン34からの熱影響が除外された正確なジャンクション温度Tjを推定することができるようになる。
【0080】
(9-2)バッテリ電圧Vb(電源電圧)と熱変数αの関係
次に、図7図8を参照してバッテリ電圧Vb(電源電圧)と熱変数αとの関係について説明する。バッテリ電圧Vbが高い程、各電力用半導体素子16U~17Wの発熱量が大きくなる。そのため、他の電子部品や配線パターン34からの熱影響は相対的に小さくなるので、図7に示す如くバッテリ電圧Vbが高い程、熱変数αが大きくなるように3次元マップが構成されている。その理由を、図8を用いて説明する。
【0081】
尚、以下の説明では電力用半導体素子16U~17Wの熱量(図8の熱回路の電流値)の90%がハウジング2を介して吸入冷媒に奪われ、残りの10%が端子37に伝達しているものとする。また、バッテリ電圧Vbが高いときの電力用半導体素子16U~17Wの発熱量を50W(電流に置き換えて50Aと考える)、低いときは25W(同じく25Aと考える)、相電流は双方とも同じ10Arms、抵抗R1+抵抗R2を抵抗群X、抵抗R3+抵抗R4を抵抗群Yとすると、バッテリ電圧Vbが高いときのジャンクション温度Tj、温度センサ22が検出する温度Tth、熱変数αは以下のようになる。
Tj=45X
Tth=(50×0.1+0.1)Y=5.1Y
α=(Tj-Tth)/50=(45X-5.1Y)/50
=0.9X-0.102Y ・・・(3)
【0082】
一方、バッテリ電圧Vbが低いときのジャンクション温度Tj、温度センサ22が検出する温度Tth、熱変数αは以下のようになる。
Tj=22.5X
Tth=(25×0.1+0.1)Y=2.6Y
α=(Tj-Tth)/25=(22.5X-2.6Y)/25
=0.9X-0.104Y ・・・(4)
【0083】
上記式(3)及び式(4)から明らかな如く、熱変数αはバッテリ電圧Vbが高い程、大きくなるので、図3の3次元マップにおいても図7の如くバッテリ電圧Vbが高い程、熱変数αを大きくすることで、正確なジャンクション温度Tjを推定することができるようになる。
【0084】
(10)ジャンクション温度推定計算部32による熱変数αの変更(その2)
次に、図9図11を参照しながらインバータ制御部12のジャンクション温度推定計算部32による前述した式(2)の熱変数αを変更するもう一つの制御例について説明する。配線パターン36に入力電流Iinが流れると当該配線パターン36も発熱する。この発熱も、温度センサ22に伝達するため、温度センサ22が検出する温度Tthは、その影響を受けて上昇することになる。
【0085】
そこで、この実施例のジャンクション温度推定計算部32は、前述した式(2)の熱変数αを入力電流Iin(動作状態)によって変更し、配線パターン36の発熱が温度センサ22に及ぼす影響を除外する方向でジャンクション温度Tjの補正を行う。
【0086】
(10-1)入力電流Iinと熱変数αの関係
次に、図10図11を参照して入力電流Iinと熱変数αとの関係について説明する。尚、各図において、図5図6と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。実施例の場合、熱変数αと入力電流Iinの関係は図9に示す一次関数とされており、ジャンクション温度推定計算部32に予め記憶されている。尚、図9の関数は、当該車両用電動圧縮機1について予め実験により求められた値である。
【0087】
また、この場合も熱の伝達を電気回路に置き換えて考える。即ち、熱源である電力用半導体素子16U~17Wや配線パターン34、36は、図11に示す如く電流源となり、各素子やハウジング2の熱抵抗は抵抗R1~R6となる。また、同様にジャンクション温度Tjと温度センサ22が検出する温度Tthの間が熱変数αとなる。
【0088】
入力電流Iinが大きい程、配線パターン36の発熱は大きくなり、その熱量によって温度センサ22が検出する温度Tthが上昇する。そこで、入力電流Iinが大きい程、熱変数αを小さくすることで、配線パターン36からの熱影響が除外された正確なジャンクション温度Tjを推定することができるようになる。
【実施例2】
【0089】
(11)ジャンクション温度推定計算部32による熱変数αの変更(その3)
次に、図12図14を参照しながらインバータ制御部12のジャンクション温度推定計算部32による前述した式(2)の熱変数αを変更する更にもう一つの制御例について説明する。前述した如く各電力用半導体素子16U~17Wはハウジング2を介して吸入冷媒と熱交換関係に配置されている。また、モータ3の回転数NCが高くなれば、吸入冷媒による冷却能力も高くなる。
【0090】
そのため、回転数NCが高い程、各電力用半導体素子16U~17Wは、より強力に冷却されるようになるので、ジャンクション温度推定計算部32は、図12に示す如くモータ3の回転数NCが高い程、熱変数αを小さくし、ジャンクション温度Tjが低くなる方向で補正する。その理由を図13図14を用いて説明する。
【0091】
尚、各図において図5図6と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。また、この実施例においても、適用する機器は図1の電動圧縮機1であり、インバータ装置7の電気回路構成も図2と同様であるものとする。但し、図2中のインバータ制御部12のジャンクション温度推定計算部32の動作が前記実施例とは異なる。
【0092】
この場合も電力用半導体素子16U~17Wを熱源と見做し、その熱(電流Iと考える)の伝達を電気回路に置き換えて考えると、抵抗R1とR2から成る抵抗群Xを流れる電流(熱)Ixと、熱変数αと抵抗R3とR4から成る抵抗群Yを流れる電流Iy(熱)は、分流の法則により、それぞれ以下の式(5)と式(6)で表すことができる。
Ix={Y/(X+Y)}×I ・・・(5)
Iy={X/(X+Y)}×I ・・・(6)
【0093】
ここで、抵抗群Yは、樹脂製の制御基板11の熱抵抗を含むため、抵抗群Xに比べて非常に大きな値となる。従って、モータ3の回転数NCの変動に伴って変動する抵抗値R2やR4が変動しても、式(5)、式(6)から明らかな如く、電流Iyは殆ど影響を受けない。即ち、温度センサ22が検出する温度Tthはモータ3の回転数NCからそれ程影響を受けない。
【0094】
一方、モータ3の回転数NCが高い程、変動する抵抗値R2やR4は小さくなるため、ジャンクション温度Tjは低下するが、上述した如く温度センサ22が検出する温度Tthは、ジャンクション温度Tjのようには低下せず、双方(TjとTth)の差は縮まってくる。
【0095】
そこで、この実施例ではジャンクション温度推定計算部32が、図12の如くモータ3の回転数NCが高い程、熱変数αを小さくし、ジャンクション温度Tjが低くなる方向で補正する。これにより、この場合にも正確なジャンクション温度Tjを推定することができるようになる。そして、この場合も温度保護部33は、推定されたジャンクション温度Tjに基づき、前述同様の保護動作を実行するものである。
【0096】
以上詳述した如く、前述した実施例1ではジャンクション温度推定計算部32が、ジャンクション温度Tjを推定する際、電力用半導体素子16U~17W以外の他の電子部品、制御基板11の配線パターン34、36の発熱が温度センサ22に及ぼす影響を除外する方向の補正を行うようにしたので、実施例の如く温度センサ22が制御基板11上に配置されている場合等に、電力用半導体素子16U~17W以外の他の電子部品や配線パターン34、36の発熱が温度センサ22に及ぼす影響を廃し、電力用半導体素子16U~17Wのジャンクション温度Tjをより正確に推定することができるようになる。
【0097】
これにより、前述したような保護動作を実行する場合にも、電力用半導体素子16U~17Wの使用可能領域を拡大することが可能となり、それにより部品の定格を小さくして、小型化と低コスト化を図ることができるようになる。
【0098】
また、実施例の如くジャンクション温度推定計算部32が、電力用半導体素子16U~17Wの損失Pに熱変数αを乗算することで温度上昇値ΔTを算出すると共に、動作状態に基づいて熱変数αを変更するようにしているので、他の電子部品、制御基板11の配線パターン34、36の発熱が温度センサ22に及ぼす影響を円滑に除外することが可能となる。
【0099】
この場合、実施例では動作状態にバッテリ電圧Vb(電源電圧)や、相電流(Iu、Iv、Iw)、入力電流Iinを採用している。また、前記実施例では熱変数αを、バッテリ電圧Vbと相電流から決まる値としてマップ化しているので、相互に連関する各動作状態に応じて的確に熱変数αを設定することが可能となる。
【0100】
この場合、実施例ではバッテリ電圧Vbが高い程、熱変数αを大きくしているので、正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。また、相電流Iu、Iv、Iw)が大きい程、熱変数αを小さくしているので、同様に正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。更に、入力電流Iinが大きい程、熱変数αを小さくしているので、これによっても正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。
【0101】
そして、高温環境下で使用される実施例の如き車両用電動圧縮機1において、実施例のインバータ装置1によりモータ3を運転することで、極めて効果的な過熱保護を実現することができるようになる。
【0102】
一方、実施例2の発明ではモータ3の回転数NCが高い程、低くする方向でジャンクション温度Tjを補正しているので、これによっても正確なジャンクション温度Tjの推定を行うことができるようになる。この実施例の場合も、ジャンクション温度推定計算部32は、電力用半導体素子16U~17Wの損失Pに熱変数αを乗算することで温度上昇値ΔTを算出すると共に、モータ3の回転数NCが高い程、熱変数αが小さくなるよう当該熱変数αを変更するようにしているので、正確なジャンクション温度Tjを円滑に推定することが可能となる。
【0103】
これにより、前述した保護動作を実行する場合にも、同様に電力用半導体素子16U~17Wの使用可能領域を拡大することが可能となり、それにより部品の定格を小さくして、小型化と低コスト化を図ることができるようになる。
【実施例3】
【0104】
(12)ゲート抵抗の変更制御
次に、図17図19を参照しながら、インバータ制御部12による各半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の変更制御について説明する。この実施例のインバータ制御部12は、前述した如くジャンクション温度推定計算部32が推定したジャンクション温度Tjに基づき、各電力用半導体素子16U~17Wを構成する半導体スイッチング素子1
8のゲート抵抗を変更する。
【0105】
前述した如く半導体スイッチング素子18(IGBT)のゲートを駆動した場合、ONからOFF(ターンオフ)にしたときに、配線バスバーのインダクタンスLによってサージ電圧ΔV(=L*di/dt)が発生する(図15の左側)。一方、半導体スイッチング素子18(IGBT)の耐圧はジャンクション温度Tjが低くなる程、低下する特性を有している(図15の右側)。そして、サージ電圧ΔVが半導体スイッチング素子18の耐圧(素子耐圧)を超えた場合、素子が破壊される危険性がある。
【0106】
そのため、半導体スイッチング素子18のゲートに、図2では39で示したゲート抵抗を接続し、このゲート抵抗39によりゲートに与えられる信号電圧の立ち下がりをなまらせる必要があるが、ゲート抵抗39の抵抗値を大きくすると、半導体スイッチング素子18のOFF時の電流遮断スピードが遅くなり、発生損失が増大する(図16)。他方、半導体スイッチング素子18が動作すると、発生損失により自ら熱を発するため、徐々にジャンクション温度Tjは上昇し、それに伴って耐圧(素子耐圧)も上昇することが分かっている。
【0107】
そこで、この実施例のインバータ制御部12は、前述した如くジャンクション温度推定計算部32が推定したジャンクション温度Tjに基づき、各電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を変更する。以下、インバータ制御部12によるゲート抵抗の変更制御について具体的に説明する。
【0108】
この実施例では、インバータ制御部12がゲート抵抗変更部41を有する。図17はこの実施例のインバータ制御部12のゲート抵抗変更部41の構成の一例を示す電気回路図である。尚、図17図19において、図1図14と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとし、基本的な電気回路も図2と同様であるものとする。但し、この実施例では前述したゲート抵抗39を図17に示す可変抵抗装置42に置き換える。
【0109】
ここで、図17では電力用半導体素子17Uの半導体スイッチング素子18を代表して示しているが、全ての電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18についても同様の可変抵抗装置42がゲートに接続され、インバータ制御部12により制御されるものとする。
【0110】
そして、この可変抵抗装置42と、前述したゲートドライバ29と、PWM制御部27がこの実施例におけるゲート抵抗変更部41を構成する。尚、ゲートドライバ29やPWM制御部27の内部構成や制御プログラムについては、前述した各実施例のものにこの実施例を実現するために必要な構成や制御プログラムが追加され、或いは、変更が加えられるものとする。
【0111】
この実施例のゲート抵抗変更部41は、ジャンクション温度推定計算部32が推定した電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のジャンクション温度Tjに基づき、半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値である可変抵抗装置42の抵抗値を変更する。この場合、ゲート抵抗変更部41は、ジャンクション温度Tjが低い程、可変抵抗装置42の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度Tjが高い程、可変抵抗装置42の抵抗値を小さくする方向で動作する。
【0112】
図18は上記可変抵抗装置42を含むゲート抵抗変更部41周辺の具体的な電気回路の一例を示している。この例のゲート抵抗変更部41は、半導体スイッチング素子18のゲート電圧電源Vccにソースが接続されたMOSFETから成るON信号生成用スイッチS0と、ソースが接地され、ドレインがON信号生成用スイッチS0のドレインに接続された同じくMOSFETから成るOFF信号生成用スイッチS1と、これらON信号生成用スイッチS0のドレインとOFF信号生成用スイッチS1のドレインの接続点と半導体スイッチング素子18のゲート間に接続された抵抗素子R10と、この抵抗素子R10と半導体スイッチング素子18のゲートとの間に一端が接続され、他端が同じくMOSFETから成るもう一つのOFF信号生成用スイッチS2のドレインに接続されたもう一つの抵抗素子R20から構成されている。
【0113】
上記OFF信号生成用スイッチS2のソースは接地され、電力用半導体素子17Uの半導体スイッチング素子18のエミッタもOFF信号生成用スイッチS1、S2のソースに接続されて接地されている。これにより、ON信号生成用スイッチS0とOFF信号生成用スイッチS1は抵抗素子R10を介して半導体スイッチング素子18のゲートに接続され、OFF信号生成用スイッチS2は抵抗素子R20を介して半導体スイッチング素子18のゲートに接続されたかたちとなる。尚、上記構成は電力用半導体素子17V、17Wの半導体スイッチング素子18についても同様である。電力用半導体素子16U~16Wの半導体スイッチング素子18についても同様であるが、エミッタは接地されないものとする。
【0114】
この場合、ON信号生成用スイッチS0と、OFF信号生成用スイッチS1、S2はゲートドライバ29に含まれる。また、各抵抗素子R10、R20が実施例の可変抵抗装置42を構成するものであり、これら抵抗素子R10、R20は半導体スイッチング素子18のゲートの直近に設けられる。また、抵抗素子R10と抵抗素子R20の抵抗値は異なり、抵抗素子R10の抵抗値は、抵抗素子R20の抵抗値より大きいものとする。
【0115】
そして、ON信号生成用スイッチS0のゲートにはPWM制御部27から前述した半導体スイッチング素子18(IGBT)をONさせる信号が入力され、OFF信号生成用スイッチS1、S2には半導体スイッチング素子18(IGBT)をOFFさせる信号が入力される。この場合、PWM制御部27は、ジャンクション温度推定計算部32が推定したジャンクション温度Tjに基づいて、半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号を各OFF信号生成用スイッチS1、S2に対し、切り換えて出力する。それにより、OFF信号生成用スイッチS1、S2を切り換えてONし、半導体スイッチング素子18をOFFする際、当該半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を変更するものである。
【0116】
次に、図19を参照しながら図18のゲート抵抗変更部41の動作を説明する。図19の最下段は半導体スイッチング素子18のコレクタ-エミッタ間電圧を示し、最上段はON信号生成用スイッチS0のON/OFF状態、上から2段目、3段目はOFF信号生成用スイッチS1、S2のON/OFF状態を示している。
【0117】
電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18をON(ターンオン)する場合、ゲートドライバ29はPWM制御部27から出力されたドライブ信号の立ち上がりを受けて、半導体スイッチング素子18をONさせる信号をON信号生成用スイッチS0に出力し、ON信号生成用スイッチS0をONする。他方、半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号は出力せず、それにより、OFF信号生成用スイッチS1、S2はOFFしている(図19中のON信号生成用スイッチS0がONしている期間は、OFF信号生成用スイッチS1、S2はOFFしている)。これにより、ゲート電圧電源Vcc、ON信号生成用スイッチS0、抵抗素子R10、半導体スイッチング素子18のゲート、エミッタ、接地の経路で半導体スイッチング素子18のゲートに電流が流れ、当該半導体スイッチング素子18がON(ターンオン)する。
【0118】
次に、半導体スイッチング素子18をOFF(ターンオフ)する場合、ゲートドライバ29(前述した如くゲート抵抗変更部41を構成する)は、PWM制御部27から出力されたドライブ信号の立ち下がりを受けて、半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号をOFF信号生成用スイッチS1(又はS2)に出力し、OFF信号生成用スイッチS1(又はS2)をONする。他方、半導体スイッチング素子18をONさせる信号は出力せず、それにより、ON信号生成用スイッチS0はOFFしている(図19中のS1(又はS2)がONしている期間は、ON信号生成用スイッチS0はOFFしている)。ゲートドライバ29(ゲート抵抗変更部41)は、半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号については、ジャンクション温度推定計算部32が推定したジャンクション温度Tjに応じて出力する相手を切り換える。
【0119】
実施例では、ジャンクション温度Tjが低く(低温時)、所定値T1以下である場合、ゲートドライバ29はPWM制御部27から出力されたドライブ信号の立ち下がりを受けて、OFF信号生成用スイッチS1に半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号を出力して当該OFF信号生成用スイッチS1をONし、OFF信号生成用スイッチS2はOFFさせる。これにより、半導体スイッチング素子18のゲートに蓄積された電荷が抵抗素子R10、OFF信号生成用スイッチS1、接地の経路で放出されるので、半導体スイッチング素子18はOFFする。従って、係る低温時には半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値は、抵抗値が大きい抵抗素子R10の抵抗値となるので、サージ電圧が抑制されることになる。
【0120】
一方、ジャンクション温度Tjが上昇して、前述した所定値T1より高い所定値T2以上となった場合、半導体スイッチング素子18をOFFする際には、ゲートドライバ29はPWM制御部27から出力されたドライブ信号の立ち下がりを受けて、OFF信号生成用スイッチS2に半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号を出力して当該OFF信号生成用スイッチS2をONし、OFF信号生成用スイッチS1はOFFさせる。これにより、半導体スイッチング素子18のゲートに蓄積された電荷は抵抗素子R20、OFF信号生成用スイッチS2、接地の経路で放出されるようになるので、半導体スイッチング素子18がOFFする際、高温時には半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値が、抵抗値が小さい抵抗素子R20の抵抗値となる。そのため、サージ電圧は大きくなるものの、係る高温時には半導体スイッチング素子18の耐圧も上昇しているので、素子破壊は生じなくなる。そして、発生損失は抑えられるようになる。
【0121】
尚、その後ジャンクション温度Tjが低下し、所定値T1以下となった場合、半導体スイッチング素子18をOFFする際、ゲートドライバ29はPWM制御部27から出力されたドライブ信号の立ち下がりを受けて、OFF信号生成用スイッチS1に半導体スイッチング素子18をOFFさせる信号を出力して当該OFF信号生成用スイッチS1をONし、OFF信号生成用スイッチS2はOFFさせるように切り換えるものとする。
【0122】
前述した各実施例のように、電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のジャンクション温度Tjを正確に推定することができるようになったことにより、電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18の耐圧変動を正確に把握することができるようになった。
【0123】
そして、この実施例では上記詳述した如くインバータ制御部12に、電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を変更するゲート抵抗変更部41を設け、ジャンクション温度推定計算部32が推定した半導体スイッチング素子18のジャンクション温度Tjに基づき、ゲート抵抗変更部41により半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を変更するようにしたので、半導体スイッチング素子18の耐圧を考慮した最適な動作を実現することが可能となった。
【0124】
そして、実施例ではゲート抵抗変更部41が、ジャンクション温度推定計算部32が推定した半導体スイッチング素子18のジャンクション温度Tjが低い程、半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度Tjが高い程、半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を小さくするようにしているので、ジャンクション温度Tjが低く、半導体スイッチング素子18の耐圧が低下する状況では、ゲート抵抗の抵抗値を大きくしてサージ電圧を小さくし、ジャンクション温度Tjが高く、半導体スイッチング素子18の耐圧が上昇する状況では、ゲート抵抗の抵抗値を小さくして発生損失を低下させることができるようになる。
【0125】
これにより、サージ電圧による電力用半導体素子16U~17Wの破壊を回避しながら、発生損失を抑制し、効率の良い動作を実現することができるようになる。
【0126】
この場合、実施例ではゲート抵抗変更部41に、半導体スイッチング素子18のゲートに接続された可変抵抗装置42を設け、ジャンクション温度推定計算部32が推定したジャンクション温度Tjに基づいて、可変抵抗装置42の抵抗値を変更するようにすると共に、ジャンクション温度Tjが低い程、可変抵抗装置42の抵抗値を大きくし、ジャンクション温度Tjが高い程、可変抵抗装置42の抵抗値を小さくしているので、サージ電圧による電力用半導体素子16U~17Wの破壊防止と、電力用半導体素子16U~17Wの発生損失の抑制の双方を実現することができる。
【0127】
特に、実施例では可変抵抗装置42に、半導体スイッチング素子18のゲートに接続され、当該ゲートにON信号を入力するためのON信号生成用スイッチS0と、ゲートにそれぞれ接続され、当該ゲートにOFF信号を入力するための二つのOFF信号生成用スイッチS1、S2と、これらOFF信号生成用スイッチS1、S2にそれぞれ接続された抵抗値の異なる二つの抵抗素子R10、R20を設け、ゲート抵抗変更部41が、半導体スイッチング素子18をOFFする際、ジャンクション温度Tjに基づいて、各OFF信号生成用スイッチS1、S2を切り換えてONすることにより、半導体スイッチング素子18のゲート抵抗の抵抗値を変更するようにすると共に、ジャンクション温度Tjが所定値T1以下である場合、抵抗値が大きい抵抗素子R10が接続されたOFF信号生成用スイッチS1をONさせ、ジャンクション温度Tjが、所定値T1より高い所定値T2以上である場合、抵抗値が小さい抵抗素子R20が接続されたOFF信号生成用スイッチS2をONさせるようにしているので、半導体スイッチング素子18がターンオフする際のサージ電圧による電力用半導体素子16U~17Wの破壊防止と、電力用半導体素子16U~17Wの発生損失の抑制の双方を実現することができる。
【0128】
尚、前述した実施例ではバッテリ電圧Vb(電源電圧)と相電流とで熱変数αの3次元マップを構成したが、それに限らず、例えばバッテリ電圧Tbと入力電流Iinとで3次元マップを構成してもよい。
【0129】
また、実施例では半導体スイッチング素子18(IGBT、MOSFET)と還流ダイオード19の複合体から成る電力用半導体素子16U~17Wを例に採って説明したが、それに限らず、還流ダイオードを有しない半導体スイッチング素子(IGBT、MOSFET)のみのインバータ回路にも本発明は有効である。
【0130】
更に、実施例では車両に搭載される電動圧縮機のモータを駆動するインバータ装置で本発明を説明したが、請求項1~請求項9の発明ではそれに限らず、電力用半導体素子を有するインバータ回路を用いたインバータ装置全般に本発明は有効である。
【0131】
更にまた、上記実施例で示したゲート抵抗変更部41の電気回路は、実施例のものに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは云うまでもない。特に、実施例では可変抵抗装置42を二つのOFF信号生成用スイッチと二つの抵抗素子により構成したが、更に多くのスイッチと抵抗素子を用い、ジャンクション温度Tjに基づいてスイッチを切り換えることで、電力用半導体素子16U~17Wの半導体スイッチング素子18のゲート抵抗を更に細かく変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 電動圧縮機
2 ハウジング
3 モータ
4 吸込口
6 圧縮要素
7 インバータ装置
8 インバータ回路
11 制御基板
12 インバータ制御部
16U~17W 電力用半導体素子
18 半導体スイッチング素子
22 温度センサ(温度検出器)
23 シャント抵抗(相電流検出器)
26 モータ制御部
27 PWM制御部
28 電流検出部
29 ゲートドライバ
31 損失計算部
32 ジャンクション温度推定計算部
33 温度保護部
41 ゲート抵抗変更部
42 可変抵抗装置
B 高電圧バッテリ
R10、R20 抵抗素子
S0 ON信号生成用スイッチ
S1、S2 OFF信号生成用スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19