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特許7479493窒化アルミニウム撓み防止層を有する半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】窒化アルミニウム撓み防止層を有する半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240426BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240426BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L23/30 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022553107
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 US2020067425
(87)【国際公開番号】W WO2021178031
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】62/986,099
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/998,235
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,アンドリュー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ロンドン,マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】グラマ,ジョージ
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186028(JP,A)
【文献】特開昭61-135169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0385954(US,A1)
【文献】特開平08-288535(JP,A)
【文献】特開2010-135516(JP,A)
【文献】特開2019-149480(JP,A)
【文献】特開2018-181870(JP,A)
【文献】特開2008-022408(JP,A)
【文献】特開2010-133897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/119
H01L 23/28-23/31
H05B 33/00-33/28
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
H10K 50/00-50/88
H10K 59/00-59/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板によって支持された温度敏感材料であり、50°Cから250°Cの範囲内の熱劣化温度を持つ無機p型又はn型半導体材料である温度敏感材料と、
前記基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム引張層と、
前記基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層と、
を有し、
前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の両方が前記基板に力を及ぼすことによって、前記基板が湾曲する量を制御する、
半導体デバイス。
【請求項2】
基板と、
前記基板によって支持された温度敏感材料であり、50°Cから250°Cの範囲内の熱劣化温度を持つ光伝導体材料である温度敏感材料と、
前記基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム引張層と、
前記基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層と、
を有し、
前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の両方が前記基板に力を及ぼすことによって、前記基板が湾曲する量を制御する、
半導体デバイス。
【請求項3】
前記窒化アルミニウム引張層は多結晶誘電体材料である、請求項1又は2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記窒化アルミニウム引張層は、+10MPaから+1GPaの範囲内の固有引張応力を持つ、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記窒化アルミニウム引張層は前記圧縮層と前記基板との間にある、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記窒化アルミニウム引張層は前記圧縮層と直接接触している、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記窒化アルミニウム引張層は、1つ以上の中間層によって前記温度敏感材料から隔てられている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記窒化アルミニウム引張層は前記温度敏感材料と前記圧縮層との間にある、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記温度敏感材料は、120°Cから150°Cの範囲内の熱劣化温度を持つHg1-xCdTeである、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記温度敏感材料は前記基板と前記窒化アルミニウム引張層との間にある、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
前記圧縮層はボンディング層である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項12】
前記圧縮層はSiO層である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記圧縮層は、-120MPaから-1GPaの範囲内の固有圧縮応力を持つ、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記基板はシリコン基板である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記光伝導体材料は、前記基板の上に位置
前記窒化アルミニウム引張層は、前記光伝導体材料の上に位置し、且つ1つ以上の介在層によって前記光伝導体材料から隔てられ、
前記圧縮層は、前記窒化アルミニウム引張層の上に位置するボンディング層であり、
前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の各々からの応力が、これらの層の間の界面に集中する、
請求項2に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
少なくとも1つの垂直インターコネクトとボンディング層とを有する読み出し集積回路と、
請求項15に記載の半導体デバイスであり、当該半導体デバイスは、光検出器であり、且つ少なくとも1つの垂直インターコネクトを更に有する、半導体デバイスと、
を有し、
前記読み出し集積回路の前記ボンディング層が、前記半導体デバイスの前記ボンディング層にボンディングされており、前記読み出し集積回路の前記少なくとも1つの垂直インターコネクトが、前記半導体デバイスの前記少なくとも1つの垂直インターコネクトに電気的に接続されている、
3D集積電気デバイス。
【請求項17】
半導体デバイスを製造する方法であって、
温度敏感材料を支持した基板を用意し、前記温度敏感材料は、無機p型若しくはn型半導体材料、又は光伝導体であり、前記温度敏感材料は、50°Cから250°Cの範囲内の熱劣化温度を持ち、
前記基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム引張層を形成し、
前記基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層を形成する、
ことを有し、
前記窒化アルミニウム引張層は、前記熱劣化温度よりも低い温度で形成され、
前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の両方が前記基板に力を及ぼすことによって、前記基板が湾曲する量を制御する、
方法。
【請求項18】
前記窒化アルミニウム引張層は反応性スパッタリングによって形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記窒化アルミニウム引張層は、窒素及び不活性ガスを含有する雰囲気中で、アルミニウムを含有するターゲットから、スパッタリングによって形成され、
前記雰囲気中の前記不活性ガスの割合に対する前記窒素の割合が、スパッタリング中の前記ターゲットのスパッタリング表面上にAlNの改質層を形成するように調節される、
請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2020年3月6日に出願された米国仮出願第62/986,099号の利益を主張するものであり、それをその全体にてここに援用する。
【0002】
本発明は、概して半導体デバイスに関し、より具体的には窒化アルミニウム撓み防止層を有する半導体デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば半導体集積回路(IC)又は他の半導体デバイスなどの電気デバイスは、典型的に、例えばシリコンウエハなどの基板の中及び/又は上に製造され、デバイスの複雑さが増すにつれて一般的にサイズ及び密度が増すデバイス面積をもたらす。最近の半導体デバイス製造における1つのトレンドは、複数のデバイスを共に上下に積み重ねて垂直方向に相互接続することによる3D集積を通じて、半導体デバイスの数及び/又は種類を増やすことである。一般的に、上下に積層される半導体デバイスの各々は、異なるサイズのものであり、異なるサイズのウエハに由来し、異なる機能を持ち、異なる材料で製造され、等々であり得る。そのような半導体デバイスを上下積層するアプローチを実現するための1つの従来方法は、個々に積層される半導体デバイス間で、周囲の酸化物ボンディング層が共にダイレクトボンディングされる間に、各デバイスの垂直電気インターコネクト構造が共に熱圧縮ボンディングされるものであるハイブリッドボンディングプロセスによる。
【0004】
このような3D集積技術では、半導体デバイスが湾曲するのを防ぐことが望ましいことが多い。湾曲の量を制限する1つのアプローチは、半導体ウエハの両面(主面)上に材料を堆積させることである。例えば、表と裏の両方の主面上に圧縮応力材料を堆積させることで、応力がバランスされて、湾曲が防止される。
【発明の概要】
【0005】
例えばセンサなどの一部の半導体デバイスに伴う1つの問題は、そのようなデバイスの利用に際して、温度に敏感な材料が必要とされることがあり、それが、それらのデバイスを、3D集積に至るまでの及び3D集積中の処理条件の影響を受けやすくすることである。一例として、赤外光を検知するための光検出器は、例えばHg1-xCdTe(一般的に“MCT”と称される)などの温度に敏感な光伝導体材料を利用することがある。MCTの熱劣化温度(その温度になると材料の特性が悪影響を受ける温度)は、120°Cから150°Cの範囲内である。このような光検出器デバイスの3D集積を容易にするには、デバイスの(1つ以上の)圧縮層からの湾曲力を打ち消すためにデバイス上に撓み防止引張層を適用し、それによって基板の湾曲量を制御することが有益であろう。しかしながら、従来の撓み防止引張層はMCT熱劣化温度よりも高い処理温度を持つことが多いという問題がある。
【0006】
3D集積スキーム内の材料の熱劣化問題に加えて、そのようなスキームに使用される一部の従来の材料に伴う熱膨張係数(CTE)問題も存在する。例えば、一部の3D集積設計は、ボンディングされたウエハスタックの1つ以上の層に、溶融シリカから作製されたウエハを使用することがある。溶融シリカはシリコンのCTEの1/4未満のCTEを持つので、温度変化の下で遥かに小さくしか収縮及び膨張しないことになる。これは、クラックの発生及び電気接続の破断からのデバイス故障につながってしまい得る。
【0007】
従って、例えばデバイス内に温度に敏感な材料を持つ半導体デバイスとともに使用するなどのために、より低い温度で形成される撓み防止引張層を提供すること、及び/又はデバイス内のCTEミスマッチを補償する撓み防止引張層を提供することが、技術的に望まれる。
【0008】
本開示の一態様は、半導体デバイスに、デバイス内の圧縮層応力を打ち消し、それによってデバイス内の基板湾曲の量を制御する窒化アルミニウム引張層を提供する。本開示の一態様はまた、例えば温度に敏感な材料(以下、温度敏感材料)を含む電気デバイスとともに使用するなどのために、比較的低い温度で窒化アルミニウム引張層を作製する方法を提供する。
【0009】
本開示の一態様によれば、半導体デバイスは、基板と、前記基板によって支持された温度敏感材料であり、50°Cから250°Cの範囲内の熱劣化温度を持つ温度敏感材料と、前記基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム引張層と、前記基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層と、を含み、前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の両方が前記基板に力を及ぼすことによって、前記基板が湾曲する量を制御する。
【0010】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は多結晶誘電体材料である。
【0011】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は、+10MPaから+1GPaの範囲内の固有引張応力を持つ。
【0012】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は前記圧縮層と前記基板との間にある。
【0013】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は前記圧縮層と直接接触している。
【0014】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は、1つ以上の中間層によって前記温度敏感材料から隔てられている。
【0015】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は前記温度敏感材料と前記圧縮層との間にある。
、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【0016】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層はまた、前記圧縮層の中の1つ以上の層を形成して、減少した湾曲について同じ望ましい正味結果を達成する交互の応力の多層スタックを形成してもよい。
【0017】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記温度敏感材料は無機p型又はn型半導体材料である。
【0018】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記温度敏感材料が光伝導体である。
【0019】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記温度敏感材料は、120°Cから150°Cの範囲内の熱劣化温度を持つHg1-xCdTeである。
【0020】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記温度敏感材料は前記基板と前記窒化アルミニウム引張層との間にある。
【0021】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記圧縮層はボンディング層である。
【0022】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記圧縮層はSiO層である。
【0023】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記圧縮層は、-120MPaから-1GPaの範囲内の固有圧縮応力を持つ。
【0024】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記基板はシリコン基板である。
【0025】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記温度敏感材料は、前記基板の上に位置する光伝導体材料であり、前記窒化アルミニウム引張層は、前記光伝導体材料の上に位置し、且つ1つ以上の介在層によって前記光伝導体材料から隔てられ、前記圧縮層は、前記窒化アルミニウム引張層の上に位置するボンディング層であり、前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の各々からの応力が、これらの層の間の界面に集中する。
【0026】
他の一態様によれば、半導体デバイスは、基板と、前記基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム引張層と、前記基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層と、を含み、前記窒化アルミニウム引張層は、エピタキシャル成長されずに、多結晶のミクロ構造を持ち、前記引張層及び前記圧縮層の両方が力を及ぼすことによって基板湾曲の量を制御する。
【0027】
他の一態様によれば、3D集積電気デバイスは、少なくとも1つの垂直インターコネクトとボンディング層とを有する読み出し集積回路と、この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落に従った半導体デバイスと、を含み、前記半導体デバイスは、光検出器であり、且つ少なくとも1つの垂直インターコネクトを更に有し、前記温度敏感材料は光伝導体材料であり、前記圧縮層はボンディング層であり、前記読み出し集積回路の前記ボンディング層が、前記半導体デバイスの前記ボンディング層にボンディングされており、前記読み出し集積回路の前記少なくとも1つの垂直インターコネクトが、前記半導体デバイスの前記少なくとも1つの垂直インターコネクトに電気的に接続されている。
【0028】
他の一態様によれば、半導体デバイスを製造する方法は、基板を用意し、前記基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム引張層を形成し、前記基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層を形成する、ことを含み、前記窒化アルミニウム引張層は、50°Cから250°Cの範囲内の温度で形成され、前記窒化アルミニウム引張層及び前記圧縮層の両方が前記基板に力を及ぼすことによって、前記基板が湾曲する量を制御する。
【0029】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は反応性スパッタリングによって形成される。
【0030】
この発明の概要のいずれか(1つ以上の)段落の一実施形態によれば、前記窒化アルミニウム引張層は、窒素及び不活性ガスを含有する雰囲気中で、アルミニウムを含有するターゲットから、スパッタリングによって形成され、前記雰囲気中の前記不活性ガスの割合に対する前記窒素の割合が、スパッタリング中の前記ターゲットのスパッタリング表面上にAlNの改質層を形成するように調節される。
【0031】
以下の記載及び添付の図面は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に説明するものである。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理が使用され得る様々なやり方のうちのほんの数例を示すものである。本発明の他の目的、利点及び新機構が、以下の発明の詳細な説明が図面とともに検討されることで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
添付の図面は、本発明の様々な態様を示している。
図1】本開示の一実施形態に従った半導体デバイスを製造する例示的な方法のハイレベルフローチャートである。
図2A図2A-2Fは、本開示の一実施形態に従った例示的な半導体デバイスを形成することの例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。
図2B図2A-2Fは、本開示の一実施形態に従った例示的な半導体デバイスを形成することの例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。
図2C図2A-2Fは、本開示の一実施形態に従った例示的な半導体デバイスを形成することの例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。
図2D図2A-2Fは、本開示の一実施形態に従った例示的な半導体デバイスを形成することの例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。
図2E図2A-2Fは、本開示の一実施形態に従った例示的な半導体デバイスを形成することの例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。
図2F図2A-2Fは、本開示の一実施形態に従った例示的な半導体デバイスを形成することの例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。
図2G図2G及び2Hは、図2Fの例示的な半導体デバイスを別の例示的な電子デバイスにハイブリッドボンディングする例示的なプロセスを示す概略断面図である。
図2H図2G及び2Hは、図2Fの例示的な半導体デバイスを別の例示的な電子デバイスにハイブリッドボンディングする例示的なプロセスを示す概略断面図である。
図3】半導体デバイスの処理中に例示的な窒化アルミニウム引張層を形成するための例示的な物理気相成長プロセスの概略図である。
図4】窒化アルミニウム引張層の物理気相成長における窒素流量に対するカソード電圧を示すヒステリシス図である。
図5】物理気相成長における堆積窒化アルミニウム層の固有引張応力をアルゴン(Ar)圧力の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示に従った原理及び態様は、例えば集積回路(IC)デバイスなどの電気デバイスに対して注目すべき用途を有し、そして、より具体的には、特定用途向け集積回路(ASIC)、フォーカルプレーンアレイ及びインテリジェントイメージセンサ、メモリチップ、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)、赤外線電気デバイス(例えば、赤外線検出器)、アンテナ回路、ストリップライン、配信ネットワークなどを含む垂直積層半導体集積回路(IC)に対して注目すべき用途を有し、以下では、主にこの文脈で説明される。しかしながら、理解されることには、本開示に従った原理及び態様は、力を均衡させるための、そしてそれによってデバイスにおける湾曲の量を制御するための窒化アルミニウム引張層を設けることが望ましい他の電気デバイス、又は電気回路全般に適用可能であるとし得る。そのような電気デバイスの非限定的な例は、例えば受動的な無線周波数(RF)回路(例えば、フィルタ又はアンテナアレイ)などの非半導体デバイス、又は例えばダイオード、フォトセル、トランジスタ、センサ、及びこれらに類するものなどの他の半導体デバイスを含み得る。例示的な電気デバイスを形成する例示的な方法も、能動的及び受動的の両方の電気デバイスを垂直積層することに適用可能であるとし得る。
【0034】
図1を参照するに、半導体デバイスを形成するための例示的な方法100が示されており、これは概して、半導体デバイスの基板を容易する工程(工程102)と、該基板の少なくとも一部の上に位置する窒化アルミニウム(AlN)層を形成する工程(工程104)と、該基板の少なくとも一部の上に位置する圧縮層を形成する工程(工程106)とを含む。更に詳細に後述するように、窒化アルミニウム引張層及び圧縮層の両方が基板に力を及ぼし、これらの層は、相互に協力してデバイスにおける基板湾曲の量を制御するように構成される。
【0035】
図2A-2Hは、方法100に従って例示的な電気デバイス10を形成するための例示的なプロセス工程を示す概略断面図である。図示した実施形態において、半導体デバイス10は光検出器10であり、これは概して、基板12と、基板12によって支持された光伝導体層14と、基板12の少なくとも一部(例えば、主表面)の上に位置する窒化アルミニウム引張層16と、基板12の少なくとも一部(例えば、主表面)の上に位置する圧縮層18とを含む。理解されることには、この光検出器10の描写は例示的なものであり、好適な如何なる形態の電気デバイスが、ここに開示される原理及び態様に従って使用されてもよい。
【0036】
図2A及び図1の工程102を参照するに、基板12を用意する工程は、特定の用途のために所望され得るように、電気デバイス10に好適な何らかの基板を用意することを含む。例示的な実施形態において、基板12は、例えばシリコンなどの半導体材料、又はIII-V族材料などの他の半導体材料である。図示した光検出器10の実施形態では、基板12は、更に詳細に後述するように、光伝導体層14へのフォトンの透過のためのウィンドウ(窓)を提供するシリコン基板である。
【0037】
図2Aに示すように、基板12を用意した後、光伝導体層14を形成する前に、当該プロセスは、基板12を覆う1つ以上のバッファ層20、22を形成することを含む。図示のようにバッファ層20、22は基板12の全体を覆ってもよく、あるいは、バッファ層は基板12の一部を覆ってもよい。図示した光検出器10の実施形態において、第1及び第2のバッファ層20、22はエピタキシバッファ層である。例えば、第1のバッファ層20は、例えばテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)又は他の好適材料などのシード層とし得る。シード層20は、分子線エピタキシ(MBE)又は液相エピタキシ(LPE)によって特定の厚さに形成され得る。シード層20の厚さは、基板(例えば、シリコン)との格子不整合による欠陥を消滅させる助けとなるものとし得る。第2のバッファ層22は、例えば分子線エピタキシ(MBE)によって、シード層20の上に成長され得るテルル化カドミウム(CdTe)層とし得る。エピタキシャル成長に対するこのようなアプローチは、より少ない欠陥及び/又は転位しか持たない第2のバッファ層22の形成を可能とする。
【0038】
図示した実施形態に示すように、第2のバッファ層22(例えば、CdTe)の上に、光伝導材料(これも参照符号14で参照する)を有する光伝導体層14が形成される。ここで使用されるとき、光伝導材料(すなわち、光伝導体、フォトレジスタ、又は感光性材料)は、電磁放射線(例えば、可視光、紫外光、又は赤外光)の吸収に反応して、いっそう導電性となる材料である。光伝導材料を回路の一部として接続されるとき、その材料は、その抵抗が光強度に依存する抵抗器として機能する。この文脈において、この材料をフォトレジスタ(光依存抵抗又は光依存光伝導体とも呼ばれる)とも呼ぶ。
【0039】
例示的な実施形態において、光伝導材料14は、無機n型(n-type)又はp型(p-type)半導体材料であり、逆のp型又はn型材料(後述)と結合してpn接合を形成し、それによって光起電効果を利用して、技術的に周知の方法で、光の吸収に応答して光電流を生成する。このような材料では、該材料の価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップを横切って電子を上げるのに十分なエネルギーのフォトンが光伝導材料14に衝突すると、光導電性が生じる。より具体的には、十分なエネルギーを持つ入射フォトン(例えば、IRフォトン)が光伝導材料14によって吸収されるとき、該材料がpn接合の位置で反応して自由電子-正孔対を生成する。pn接合にて、電子は、n型ドープされた材料から隣接するp型材料へと移動する。電荷キャリア(例えば、n型材料における電子)の可動性が光伝導体材料の電気抵抗を変化させ、その結果、デバイスにかかる電圧が変化する。この電圧変化は光生成電荷の数に比例し、それ故に、デバイスにかかる電圧の変化を測定することが、光伝導体材料14によって捕獲されたフォトンの直接的な測定を提供する。典型的に、この測定は、光検出器10を読み出し集積回路(ROIC)70に接続する(例えば図2G及び図2Hに示されて更に詳細に後述されるように)ことによって行われ、このような光検出器とROICの動作は技術的に周知である。
【0040】
図示した実施形態において、光伝導材料14は、CdTeバッファ層22上にMBEによってエピタキシャルに成長させたテルル化水銀カドミウム(“MCT”としても参照する)である。高品質のエピタキシャル成長CdTeバッファ層22はエピタキシャル成長されるMCT光伝導体層14内の転位及び欠陥の数を最小限にする。MCT材料は化学式Hg1-xCdTeを有し、一般に、テルル化カドミウム(CdTe)とテルル化水銀(HgTe)との化合物を含む。Cdに対するHgの割合(化学量論比)が該材料の光吸収を制御し、その結果、MCT材料は、短波赤外から非常に長波の赤外までの領域にわたって調整可能なバンドギャップを持つ。例えば、CdTeは室温で約1.5電子ボルト(eV)のバンドギャップを持つ半導体であり、HgTeはゼロのバンドギャップエネルギーを持つ半金属である。従って、MCTにおいてこれらの2つの化合物の部分を混ぜ合わせることで、例えば0と1.5eVとの間でのバンドギャップチューニングが可能である。これは、MCT材料を、3μmから5μmのアクセス可能大気窓(中波赤外ウィンドウ、MWIR)と、8μmから12μmのアクセス可能大気窓(長波赤外ウィンドウ、LWIR)との両方を含んだ、大きいスペクトル範囲の赤外線の吸収に反応することができるという点で独特なものとする。例として、MWIRウィンドウでの検出は、30%カドミウム(すなわち、(Hg0.7Cd0.3)Te)を用いることによって得ることができ、LWIRウィンドウでの検出は、20%カドミウム(すなわち、(Hg0.8Cd0.2)Te)を用いることによって得ることができる。MCT材料はまた、2.2μmから2.4μm及び1.5μmから1.8μmの短波赤外SWIR大気窓でも検出を行うことが可能であり得る。MCT材料は、MCTで使用されるドーパントに応じてp型であることもあれば、n型であることもある。例えば、p型ドーピングにはヒ素を使用することができ、n型にはインジウムを使用することができる。図示した実施形態では、光伝導体層14に使用されるMCT材料はn型材料である。
【0041】
MCTは有利な光吸収特性を持つが、MCTに伴う1つの問題は、比較的低い熱劣化温度を有した温度敏感材料であることであり、このことは、MCTを、光検出器10を作製するための処理条件の影響を受けやすいものにする。例えば、MCTの熱劣化温度は約120°Cから約150°Cの範囲内である(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、120°C、130°C、140°C、又は150°C)。この温度範囲内で、MCT化合物中の水銀が材料外に拡散し始めることになる。水銀はMCT材料のドーピング(n型又はp型)に影響しているので、水銀の拡散は、MCT材料の半導体の型を変える(例えば、p型からn型に変える、又はその逆)ことによってMCT性能に影響を及ぼし得る。水銀の拡散はまた、例えば(1つ以上の)パッシベーション層(後述)などのデバイス10内の他の層にも影響を及ぼし得る。従って、熱劣化温度範囲内の温度又はそれよりも高い温度への持続的な曝露は、MCTバルク材料特性、pn接合の完全性、及びパッシベーション-MCT界面(後述)に影響を与えてしまい得る。従って、MCT光伝導体層14の形成中及び形成後に半導体デバイス10を製造する際のプロセスの各工程は、MCTの劣化を防ぐためにMCT熱劣化温度よりも低く保たれるべきである。また、水銀はテルルと弱い結合を形成することに起因して、MCTは比較的柔らかい材料である。例として、Hg0.5Cd0.5Teは、約4のモース硬度を持ち得る。さらに、MCTは比較的弱い材料であり、処理中にデバイス10が過度に湾曲すると、隣接する層との接着を破損又は喪失しやすい。MCTの相対的な弱さはまた、MCTを、デバイス内の隣接する層との間に大きい熱膨張係数(CTE)ミスマッチがある場合に欠陥を生じやすいものにする。例えば他の層との界面におけるものなど、MCTにおける半導体結晶欠陥は、MCTの性能に影響を及ぼし得る(例えば、電荷トラップサイトを形成するなど)。従って、更に詳細に後述するように、比較的低い温度で窒化アルミニウム(AlN)引張層16を形成することは、MCTの劣化を防ぐとともに基板湾曲の量を制御するのに有利である。
【0042】
なおも図2Aを参照するに、光伝導体層14の形成に続いて、光伝導体層14の上に1つ以上のパッシベーション層24、26が形成される。図示した実施形態において、パッシベーション層のうち少なくとも1つ24はCdTeである。図示のように、パッシベーション層24、26内に開口27が形成され、n型MCT層14とpn接合を形成するよう、開口27の下のMCT光伝導体層14内にp型インプラント28が形成される。あるいは、MCTがp型半導体である場合、インプラント28はn型インプラントとなる。p型インプラント28に接触するとともにパッシベーション層26の上面より上に突出するように、開口27内に金属コンタクト30が形成される。
【0043】
図2B及び図1の工程104を参照するに、基板12の上に位置する窒化アルミニウム引張層16が形成される。図示した実施形態において、窒化アルミニウム引張層16はパッシベーション層26の上に直接形成され、金属コンタクト30を直接覆う。図示のように、窒化アルミニウム層16は基板12の主面の全体を覆い得る。例示的な実施形態において、窒化アルミニウム層16は、窒化アルミニウム層16を形成する前の電気デバイス10に含まれるいずれの温度敏感材料の熱劣化温度よりも低温でのプロセスで形成される。例えば、温度に敏感なMCT光伝導体層14を含む光検出器10では、窒化アルミニウム層16は、例えば約25°Cから約150°Cの範囲内(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、25°C、50°C、75°C、85°C、90°C、100°C、125°C、140°C、又は150°C)など、150°C(すなわち、MCTの熱劣化温度)よりも低い温度で形成される。MCTが使用される好適実施形態において、窒化アルミニウム層16は、MCT熱劣化温度とのクッションをもたらすよう、約80°Cから約110°Cの温度で形成される。また、窒化アルミニウム層16は、更に詳細に後述するように、圧縮層18の圧縮力を打ち消す好適な厚さ及び構造で形成される。窒化アルミニウム層16を形成するための例示的な低温プロセスについては、特に図3-5を参照して後述する。
【0044】
図2C及び図1の工程106を参照するに、基板12の上に位置する圧縮層18が形成される。例示的な実施形態において、圧縮層18は、窒化アルミニウム層16が圧縮層18と基板12との間、より具体的には、圧縮層18と光伝導体層14との間にあるように、窒化アルミニウム引張層16を覆うように形成される。図示した実施形態において、圧縮層18は、窒化アルミニウム引張層16の上に直接(直接接触して)形成され、これらの層16、18の間の反作用し合う応力がこれらの層16、18の間の界面を横切って伝達されるようにする。これは、バランスさせるための膜スタックの応力エネルギーの大部分が、基板12内ではなく、AlN/圧縮層(例えば、SiOx)界面に蓄えられることを可能にし得る。より具体的には、引張層16と圧縮層18とによって誘起される横歪みが、これらの層の間の界面に集中され、最初の引張AlN層16の引張歪みが、最初の引張AlN層と表面パッシベーション層26(この頂部パッシベーション層26は、中立の残留歪みの剛性材料で形成され得るものである)との間の界面に集中され、それ故に、最初の引張AlN層16の当初の横歪みが、MCT層14とそのパッシベーション層との間の界面から離れるように動かされる。
【0045】
例示的な実施形態において、圧縮層18は、別の電気デバイス(例えば、図2G及び2Hに示す読み出しIC70)への半導体デバイス10(例えば、光検出器10)のハイブリッドボンディングを介した3D集積を容易にするためのボンディング層として形成される。当該ボンディング層(やはり参照符号18で参照する)は、コンフォーマルな(共形の)誘電体膜とし得る。ボンディング層18は、例えば、酸化物、より具体的には例えば二酸化シリコン(例えば、溶融シリカ又はSiO)といった酸化シリコン(SiO)、などの、非金属材料とし得る。窒化アルミニウム引張層16は酸化シリコンと良好な密着性を示し、故に、圧縮層18として酸化シリコンを選択した場合、好ましいことに、層16と18との間に中間層は必要とされない。圧縮層18は、例えば、物理気相成長、化学気相成長、プラズマ化学気相成長、スパッタリング、又はスピンオンガラスプロセスを含め、堆積プロセスなどの、任意の好適技術によって形成され得る。例示的な実施形態において、圧縮層18は、更に詳細に後述するように、圧縮/ボンディング層18を形成するようにPVDによって堆積され得る。
【0046】
上述のように、窒化アルミニウム引張層16及び圧縮層18は各々、それぞれの層16及び18の応力(引張と圧縮)の釣り合いを可能にする好適な厚さ及び構造で形成され、それによって基板12の湾曲の量を制御する。例えば、窒化アルミニウム層16は、約+10MPaから約+1GPaの範囲内(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、+10MPa、+50MPa、+100MPa、+200MPa、+300MPa、+400MPa、+500MPa、+750MPa、又は+1GPaなど)の引張応力を持つように形成され得る。例示的な実施形態において、窒化アルミニウム層16によって提供される引張応力は、層の形成及び冷却の際に熱膨張係数(CTE)ミスマッチによって発生する応力値とは対照的に、材料の固有応力値である。例えばSiOなどの圧縮層18は、約-120MPaから約-1GPaの範囲内(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、-120MPa、-150MPa、-200MPa、-250MPa、-300MPa、-500MPa、-750MPa、又は-1GPaなど)の固有圧縮応力値を持ち得る。例示的な実施形態において、窒化アルミニウム層は、AlNの厚さ1μmごとに約-20μmから約-300μmの範囲内(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、-20μm、-50μm、-100μm、-150μm、-200μm、-250μm、又は-300μmなど)の、基板の負の湾曲を生成し得る。例えばSiOなどの圧縮層18は、SiOの厚さ1μmごとに約+20μmから約+300μmの範囲内(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、+20μm、+50μm、+100μm、+150μm、+200μm、+250μm、又は+300μmなど)の、基板の正の湾曲を生成し得る。窒化アルミニウム層16及び圧縮層18の厚さは、所望量の湾曲を基板12に達成するようにバランスされ得る。例えば、窒化アルミニウム層16は、例えば、約7,000オングストロームから約12,000オングストローム、より好ましくは約9,000オングストロームから約10,000オングストローム(1ミクロン)など、約3,000オングストロームから約1.5μm(ミクロン)の範囲内の厚さを持ち得る。圧縮層18(例えば、SiO)は、一部の実施形態において、例えば、約8,000オングストロームから約12,000オングストローム、より好ましくは約11,000オングストローム(1.1ミクロン)など、約5,000オングストロームから約3.0ミクロンの厚さを持ち得る。
【0047】
非限定的な例として、第1の実験にて、窒化アルミニウム層(AlN、ここでは単純にAlNとしても参照する)を、追加の層のない200mmシリコンプライムウエハ上に堆積させる。AlN層の厚さは1.0ミクロンであり、シリコンウエハは-50ミクロンの湾曲を示す。第2の実験にて、酸化シリコン(SiO)層を、追加の層のない200mmシリコンプライムウエハ上に堆積させる。SiO層の厚さは1.1ミクロンであり、シリコンウエハは+80ミクロンの湾曲を示す。第3の実験にて、窒化アルミニウム(AlNx)引張層及び酸化シリコン(SiO)圧縮層をインサイチュ(in-situ)で堆積させる。先ず、窒化アルミニウム引張層を200mmシリコンウエハ上に堆積させる。AlN層の厚さは1.0ミクロンであり、シリコンウエハは(第1の実験においてと同様に)-50ミクロンの湾曲を示す。SiOの厚さを1.1ミクロンとして、SiOをAlN層の上に堆積させる。結果として生じるウエハの湾曲は合わせて-7ミクロンである。最初の2つの実験におけるそれぞれの層の個別堆積は、AlNについての-50ミクロンの湾曲と、SiOについての+80ミクロンの湾曲とを示したので、これは直感的には+30ミクロンの和を示唆する。しかし、第3の実験では、最初のAlN層が剛性を増加させ、続くSiO層の結果として生じる湾曲を減少させると考えられる。
【0048】
例示的な実施形態において、窒化アルミニウム層16及び酸化シリコン圧縮層18の好適厚さは第1の実験の結果と同様とし得るが、様々な厚さ/応力の組み合わせが同じ正味の湾曲をもたらし得る。一般的に、ハイブリッドボンディングを容易にするため、好適なSiO厚さは1.0ミクロンであり、これは、約-200MPaの残留応力で約+80ミクロンの湾曲を与える。このような厚さのSiOは、例えば、+200MPa/0.75μm、+100MPa/1.2μm、又は+300MPa/0.5μmの固有応力/厚さ比を持つAlN下地層によって平衡され得る。理解されることには、窒化アルミニウム層16及び圧縮(例えば、SiO)層は二層(バイレイヤ)の撓み防止スタックを形成する個々の層として示されているが、デバイス内にこれらの層の各々が2つ以上形成されてもよい。例えば、所望の層の厚さ及び/又は基板12の湾曲を達成するために望ましい場合、AlN-SiOバイレイヤのバランススタックが交互パターンで繰り返されてもよい。
【0049】
図3-5を参照するに、窒化アルミニウム層16を形成するための例示的なプロセスが示されている。例示的な実施形態において、窒化アルミニウム層16は、PVD真空チャンバ50内でPVD反応性スパッタリングプロセスによって半導体デバイス10上に形成される。図示のように、スパッタリングターゲット52はアルミニウム(又はアルミニウム合金)ターゲットであり、スパッタリングガス53はアルゴン(又は他の不活性ガス)と窒素(反応性)ガスとを有する。一般に、電源54を介してターゲット52に負電荷が与えられ、そして、負に帯電されたターゲット52の中へと高速のアルゴンイオン55が加速されて、ターゲット52からアルミニウム原子56を解放し、それらアルミニウム原子56がデバイス10の方に向けられる。デバイス10の堆積表面において、アルミニウム原子56が表面の窒素原子57と反応して窒化アルミニウム層16を形成する。上述のように、このAlN膜形成プロセスの温度は、デバイス10(そして、特に、温度敏感材料14)が温度敏感材料14の熱劣化温度を超えないように制御される。例えば、MCTが使用される場合、AlN成膜温度は150°Cよりも低く制御され、より好ましくは125°Cを超えない。温度は、技術的によく知られているようにして、温度ドット又は他の好適センサによってモニタリングされ得る。
【0050】
例示的な実施形態において、ターゲット52が汚染されて、その表面に、窒化アルミニウムに改質された層58を持つようになり、スパッタリング中にその窒化アルミニウムが表面から解放される。はじき出されたこの窒化アルミニウムは、高エネルギーアルゴンイオン55との衝撃によって解離され、その結果、アルミニウム原子56がデバイス10の反応表面に到達し、雰囲気中の窒素原子57と反応してAlN層16を形成する。
【0051】
図4を参照するに、1kWの一定のカソード電力及び5標準立方センチメートル毎分(sccm)の一定のアルゴン流量における、窒素(N)流量(cm/min)の関数としてのカソード電圧(ボルト単位)の例示的なヒステリシスカーブが示されている。このヒステリシスカーブは、ターゲットが汚染するときの“金属モード”(領域60)から“化合物モード”(領域61)へのターゲットの電圧の低下を示している。より具体的には、定電力制御の下で、N2流量がアルゴンの量に対して増加されるにつれて、スパッタカソード電圧は、カソード電流が増加するにつれて次第に低下する。“コラプス流量”点62で、ターゲット表面が汚染されたものとなり、AlNの改質層によって完全に覆われ、カソード電圧が約10%低下する。この点からN2流量を“リカバリ流量”点63まで減少させることによって、改質層を除去することができる。理解されることには、基本的に同じヒステリシスカーブをもたらすことになる他のカソード電力、流量などが使用されてもよく、それ故に、カソード電圧についてのY軸及び窒素量についてのX軸の単位は任意とし得るが、所望のAlN膜を達成するために、プロセスがコラプス流量点62において又はそれよりも上で行われるように窒素流量が維持され得る。
【0052】
概して、本発明者が見出したことには、Al-Nヒステリシスカーブの“金属モード”部分で堆積されるAlN膜は、高い堆積速度(約700オングストローム/kW・分)によって特徴付けられ、x<1である茶色の非化学量論的なAlNの膜を形成する。一方、Al-Nヒステリシスカーブの“化合物モード”部分は、低い堆積速度(約70Å/kW・分から約150Å/kW・分(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、70Å/kW・分、90Å/kW・分、115Å/kW・分、125Å/kW・分、又は150Å/kW・分など))によって特徴付けられる。この“化合物モード”堆積は、0.9<x<1.1(例えばx=1など)である化学量論的又は略化学量論的なAlNの膜を形成する。これらの膜は青色であり、2.02の屈折率を持つ。
【0053】
例示的な実施形態において、“化合物モード”によって形成される化学量論的又は略化学量論的なAlN膜は、例示的な半導体10にとって好適な形態の窒化アルミニウム引張層16である。窒化アルミニウム引張層16のこのような形成は、低い処理温度、固有の引張応力、及び/又は圧縮酸化物層の応力及び/又は湾曲を相殺する固有の湾曲を含め、1つ以上の望ましい特性を持った、蒸着された(すなわち、エピタキシャル成長されていない)多結晶膜を提供し得る。例えば、蒸着された多結晶窒化アルミニウム層は、+10MPaから+1GPaの範囲内(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、10MPa、50MPa、100MPa、200MPa、300MPa、400MPa、500MPa、750MPa、又は1GPaなど)の固有引張応力を持ち得る。このような窒化アルミニウム層は、200mmシリコン基板において、例えば第1の実験で上述した-50μmなど、AlNの厚さ1μmごとに-20μmから-300μmの範囲内の負の湾曲を生成し得る。このような堆積AlN膜は、バルクAlNの熱伝導率(約285W/m・k)の50-80%を持ち得るとともに、約4から約9の範囲の低周波誘電率を持ち得る。このようなAlN層の熱膨張係数(CTE)は、4×10-6/Kから5×10-6/Kとなり得る。
【0054】
理解されることには、“化合物モード”でのAlN引張膜応力は、均一性及び全体的な品質(すなわち、密着性、化学量論、密度)に悪影響を及ぼすことなく、引張から圧縮まで様々となることができ、当業者によって理解されるように特定の用途で望ましいものとなり得る。例えば、図5を参照するに、シリコンウエハ上に“化合物モード”で堆積された1,000nm厚のAlN膜についての、アルゴン圧力に対するAlN応力のプロットが示されている。このプロットに示されるように、アルゴン圧力を増加又は減少させることで、圧縮と引張との間で所望のようにAlN層の応力に影響を与えることができる。理解されることには、図5の描写は例示的なものであり、応力-圧力カーブは、例えばカソード電力などの処理パラメータに基づいて、X軸に沿ってオフセットされ得る。
【0055】
例示的な実施形態において、AlN引張層16を蒸着させるためのターゲット材料は、純Al又はアルミニウム合金(例えば、Al及び0.4重量%のTiドーピング)を含み得る。しかしながら、堆積されるAlN層の応力、誘電率、電荷とラッピング、又は平滑性を操作するために、他のドーパントを持つAlターゲットを使用することが考えられる。例示的な実施形態において、AlN引張層16の堆積速度は、典型的に、約4kWの一定のカソード電力で約125オングストローム/キロワット・分である。しかしながら、理解されることには、当業者によって理解されるようにAlN層の構造、引張挙動、密着性、強度などを変化させるのに望ましいように、電圧、分圧、堆積速度などを変えてもよい。
【0056】
図2C及び図1の工程106を再び参照するに、圧縮層18もPVDによって形成され得る。SiOの場合、“金属モード”反応性PVDプロセスが、予め指定された最終的な厚さまで圧縮層を堆積させるのに好適なターゲット及び環境とともに使用され得る。例示的な実施形態において、窒化アルミニウム層16のPVDに続いて、デバイス10のサブアセンブリが真空下で第2のPVDモジュールに渡され、そこで圧縮層18(例えば、約-180MPaの圧縮応力を持つSiO層)が堆積される。
【0057】
上述のように、窒化アルミニウム引張層16及び圧縮層18は、互いに釣り合うように構成され、それによって基板12の湾曲の量を制御する。例示的な実施形態において、圧縮層18(例えば、SiO)の堆積後の最終的な基板湾曲の量は、10μmから30μmの範囲内の正の湾曲となり得る。これは、後の化学機械研磨(CMP)を容易にし、湾曲の量が減少されることになる。あるいは、層16、18は、相互に協力して基板が湾曲することを防ぐ又は負の湾曲を作り出すように構成されてもよい。
【0058】
図2Dを参照するに、圧縮層18(例えば、SiO)を形成した後、デバイス10の構造内に1つ以上のインターコネクトを形成するための表面を準備するために、圧縮層18の上層が化学機械研磨又は他の除去技術によって平坦化され得る。
【0059】
図2Eを参照するに、(1つ以上の)金属コンタクト30との電気接続を為すために、半導体デバイス10内に1つ以上のインターコネクト32が形成される。例示的な実施形態において、インターコネクト32を形成するために、金属コンタクト30の上面に達するように圧縮層18及び窒化アルミニウム層16を貫いてビアホール34が形成され得る。ビアホール34は、当業者によって理解される任意の好適な方法で、層16、18を貫いて形成され得る。例えば、圧縮層18の上面の少なくとも一部に沿ってフォトレジスト層が堆積され得る。フォトレジスト層は、比較的均一な層を生成するように、例えばスピンコーティングによってなど、技術的によく知られている従来からの方法に従って堆積され得る。ビアホール34(チャネル、キャビティなどとも称する)は、フォトレジスト層及び圧縮層18に、従来からのフォトリソグラフィーパターニング及び/又はエッチング技術を用いて形成され得る。例えば、(1つ以上の)ビアホール34を形成するための所望のパターンを持つフォトマスクがフォトレジスト層の上に配置され、そして、マスクの孔を通してUV光が導かれて、(1つ以上の)ビアホール34に対応するフォトレジスト層の部分を露光し得る。その後、従来からの方法でフォトレジスト層が現像されて、UV光に曝されたフォトレジスト層の部分が除去され、それによって(1つ以上の)ビアホール34が形成され得る。
【0060】
ビアホール34の形成に続いて、任意の好適技術によってビアホール内にインターコネクト32が形成され得る。例えば、インターコネクト32は電気めっきによって堆積され得る。他の好適技術は、例えば、電気化学析出、蒸着、又は有機金属化学気相成長を含み得る。インターコネクトは、任意の好適な導電材料又は複数の材料の組み合わせで作製され得る。例えば、インターコネクト32は、例えばニッケル、銅、又はインジウムから作製され得る。
【0061】
図2E及び2Fを参照するに、インターコネクト32の形成に続いて、圧縮層18の上面は、インターコネクト形成からの重なった余分な材料を含み得る。図2Fにて、例えばROIC70(図2H)などの別の電気デバイスへのハイブリッドボンディングの準備などのために、CMPプロセスを用いて余分な材料を除去し、圧縮層18(例えば、SiOボンディング層18)の上面36を平坦化する。このボンディング前のCMPプロセスの間に、基板12の何らかの追加の湾曲が減少又は除去され得る。ハイブリッドボンディングを更に容易にするために、例えば約10ミクロン以下などの僅かな湾曲を持つことが望ましいことがある。
【0062】
このCMP除去プロセスはまた、別の電気デバイス70の対応するインターコネクト72(図2G)への融着の準備として、(1つ以上の)インターコネクト32の外部アドレス可能な(1つ以上の)面38を露出させ得る。図示した実施形態に示すように、圧縮層18及びインターコネクト32は研磨されて、互いに同一平面にあるそれぞれの上面を有している。基板12の上側の主面に対するインターコネクト32の高さも、研磨プロセスで制御され得る。CMPプロセスは典型的に、以下に限られないが、研磨スラリーの種類、スラリー付与の速さ、研磨パッド、研磨パッド回転速度、及び研磨圧力を含む多数のプロセス変数を持つ。インターコネクト32に使用される材料及び/又は圧縮層18の材料の種類が、CMPプロセスに更に影響を与え得る。これらの変数は、基板12の上面に対するインターコネクト32及び圧縮層18の高さを制御するために最適化されることができ、また、圧縮層18の上面36及び/又はインターコネクト32のアドレス可能な面38に最適な表面ラフネスを提供するようにも最適化され得る。
【0063】
図2G及び2Hを参照するに、圧縮(ボンディング)層18及びインターコネクト32の上面が準備された後、例示的な半導体デバイス10は、別の電気デバイス70と上下に積み重ねられてハイブリッドボンディングされる準備ができているとし得る。図示した実施形態において、半導体デバイス10が光検出器10である場合、別の電気デバイス70は読み出し集積回路(ROIC)(やはり参照符号70で参照する)とし得る。ROIC70は、従来通りであってもよいし、半導体デバイス10に対して特別に適応されてもよい。この例に示すように、ROIC70は、デバイス10の少なくとも1つのインターコネクト32に対して相補的なビアパターンで、少なくとも1つの再配線インターコネクト72を含み得る。インターコネクト72は、デバイス10からの電気的な読み取りを可能にするために、基板76の上に位置する電気配線層74に電気的に接続され得る。ROIC70は、ROIC70の湾曲を制限及び/又は制御するために、引張層78及び圧縮層79を含み得る。例示的な実施形態において、引張層78は窒化アルミニウム層であり、圧縮層79は酸化シリコン(SiO)ボンディング層であり、これらは、デバイス10においてと同様の方法で準備され得る。
【0064】
図2Hに示すように、室温でのこれら2つの電気デバイス10、70の当初の接触において、それぞれのインターコネクト32、72がアライメントされ、デバイス10、70の対向し合う表面の少なくとも一部が弾性変形によって互いに一致することができる。その後、各デバイス10、70の対向する接触面の間でハイブリッドボンディングを行うことができる。このようなプロセスにおいて、対向するボンディング層18、79の各々の少なくとも一部が共にボンディングされるとともに、対向するインターコネクト32、72のうちの1つ以上が共に接触又はボンディングされて、隣接する電気デバイス10、70間に電気的な相互接続を形成し、それによって3D集積(例えば、垂直積層)電気アセンブリを形成することができる。一般的に、このようなハイブリッドボンディングは、直接酸化物接合及びインターコネクト間の熱圧縮接合を同時に形成することを指し、直接ボンディングは一般的に、追加材料を用いずに酸化物層同士を直接的に接合することを指し、単独の熱圧縮ボンディングは一般的に、圧力と熱との組み合わせを用いて金属層同士を接合することを指す。
【0065】
より具体的には、対向するボンディング層18、79が室温で接触するとき、ボンディング層の接触した(例えば、SiO)領域が1つ以上の接触点で結合を形成し始め得る。接触結合面積が増加するにつれて、電気デバイス10、70間の引き付け合う結合力が増加する。各ボンディング層18、79の対向表面間に化学結合が成長することができ、これは、表面要素間で反応して、例えば電気デバイス材料の破壊強度に近い高い結合強度を形成する共有結合であることができる。ボンディング層18、79間の化学結合の形成は、例えば、約50℃から約200℃の間(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、50°C、100°C、125°C、150℃、175°C、200℃、又は250℃)での、そして、より好ましくは、デバイス10、79内の材料の熱劣化温度よりも低い温度処理での低温処理といった、温度処理によって加速され得る。
【0066】
インターコネクト32、72は低温(例えば、室温)でコールドフュージョンボンドを形成し、あるいは、インターコネクト32、72間のフュージョンボンドは、例えば上述のボンディング層18、79の温度処理などの温度処理によって加速され得る。これらの比較的低い温度(例えば、50℃から200℃)で、インターコネクト材料は、インターコネクト32、72の接触部分間での相互拡散によって信頼性あるフュージョンボンドを形成する。ボンディング層18、79をボンディングするのと同時にインターコネクト32、72を融着できることは、追加の加熱工程を排除する。しかしながら、理解されることには、ボンディング層18、19をボンディングした後に、インターコネクト32、72を融着するための加熱工程が行われてもよい。理解されることには、この(1つ以上の)低温処理は、以下に限られないが、熱的、赤外線、及び誘導的を含む、多様な加熱方法で実行され得る。熱的な加熱の例は、真空アニーリング(加熱された基板ホルダーを使用する)、裏面赤外線加熱、オーブン、ラピッドサーマルプロセッサ、ベルト炉、及びホットプレートを含む。赤外線加熱の一例はラピッドサーマルアニーリングである。
【0067】
理解されることには、この例において、半導体デバイス10は、ROICと3D集積される光伝導体であるが、他の半導体デバイス10が他の電気デバイス70と結合されてもよい。例えば、第2の電気デバイス70は、異なるサイズの別の半導体デバイスであってもよいし、異なる機能を有してもよいし、あるいは異なる材料で作製されてもよく、これらは全て、当業者によって理解されるように設計上の考慮に応じて選択され得る。更に理解されることには、例示的な半導体デバイス10は、非半導体デバイスと、あるいは他の能動又は受動電気デバイスと、上下に積み重ねられてハイブリッドボンディングされてもよい。
【0068】
なおも図2Hを参照するに、ハイブリッドボンディングによって3D集積プロセスが完了した後、光検出器10の基板12は、その厚さを減らすために研削又は研磨され得る。例示的な実施形態において、基板12は、例えば約750ミクロンのその元々の厚さから約100ミクロンまで減らされ得る。基板12はまた、ラフネスを減らすために光学研磨される。厚さの減少及び光学研磨は、基板12が、光伝導体層14による入射光検出のための窓として機能することを可能にする。図示した実施形態に示すように、入って来るフォトン(例えば、赤外線フォトン)は基板12を通じて光伝導体層14(例えば、MCT層)内に伝達される。上述のように、十分なエネルギーの赤外線フォトンは、電子を価電子帯から伝導帯に移動させて電子-正孔対を作り出す。電子は、金属コンタクト30及びインターコネクト32、72を経由して進められてROIC70によって収集されるのに十分な可動性を持ち、次いで、電子はそこで、技術的によく知られた方法で、光検出器10によって検出されたIR放射線の量を検出するための電気信号へと変換される。ROIC70は、検出の各ピクセルが専用の読み出し回路と光検出器10とを有し得るマルチプレクサ構成を持つことができる。技術的によく知られた方法で光検出器10によって検出された(1つ以上の)IRフォトンに対応する好適な信号を作り出すために、他の好適な回路がROIC70と共に使用されてもよい。
【0069】
ここでは、半導体デバイス用の例示的な窒化アルミニウム引張層及びその製造方法を説明してきた。上述のように、例示的な窒化アルミニウム層(相互に入れ替え可能にAlN、又はより単純にAlNとも称する)は、圧縮層の応力及び/又は湾曲に反作用する固有引張応力及び/又は固有引張湾曲を持つように構成され、それによってデバイスにおける基板湾曲の量を制御する。
【0070】
ここで説明した例示的なAlN引張層16は、半導体デバイスにとっての数多くの利点を有し得る。例えば、このようなAlN層は優れた密着性及び誘電特性を示す。バランスする膜スタックの応力エネルギーは、Si基板内ではなく、AlN/圧縮層(例えば、SiO)界面に蓄えられ得る。AlN層は非常に高い熱伝導率を持ち、それを、動作中のデバイス内のホットスポットを減らす助けとなる熱拡散層にする。AlNの熱膨張係数はMCTのそれとほぼ一致し、それを、例えば高度なIRセンサ又は光検出器との使用など、この独特な材料と使用するための優れた候補とする。
【0071】
上述のように、窒化アルミニウム引張層を作製する例示的な方法も、半導体デバイスにとっての数多くの利点を含む。例えば、窒化アルミニウム層は、比較的低温で形成されることができ、特に、例えば光検出器デバイスで使用されるMCTなどの、形成時点で半導体デバイス内に存在する任意の(1つ以上の)温度敏感材料の熱劣化温度よりも低い温度で形成されることができる。例示的なPVD反応性スパッタリングプロセスにおいて、アルミニウムターゲットの使用は、熱応力によるクラック形成の発生しやすさを改善し、そうして、パワー及び堆積速度を上げるように調節されることができ、サイクル時間を短縮する。アルミニウムターゲットはまた、典型的に、例えばSiなどの他のターゲットよりも遥かにコストがかからない。AlN引張膜はたった+/-2%の不均一性しか持たず、それを、圧縮SiOxボンディング酸化物膜に対して適合したものにする。例示的なPVDプロセスは、ウエハをひっくり返して裏面補償層を堆積させるために真空を破ることなく、ボンディング誘電体スタックを単一ランで処理することを可能にし、この工程におけるサイクル時間及びウエハハンドリングを大幅に減らす。このプロセスは、ウエハをひっくり返してウエハの両面を研磨することを不要にすることにより、CMPのためのウエハハンドリングと処理時間を減らすことを可能にし、この工程におけるサイクル時間を大幅に短縮する。このプロセスは、ウエハの裏面を薄くしてデバイス設計に利用可能にすることによって、設計の柔軟性と自由度を可能にする(例えば、IRセンサ/光検出器の窓としてシリコン基板を薄くする)。
【0072】
概して、半導体デバイスにおいて窒化アルミニウム引張層を圧縮ボンディング酸化物層と組み合わせて使用することは、ボンディング酸化物応力を補償するためにウエハの裏面を被覆する必要のない正味のウエハ湾曲をもたらし得る。窒化アルミニウム引張層及び/又は圧縮層は、これら2つの層のスタックによってシリコンウエハに誘起される湾曲が、過度のウエハ湾曲によるミスハンドリング又は悪影響のリスクなしに後続の処理を可能にするのに十分に且つ予測可能に低くなるように調節され得る。
【0073】
例示的な半導体デバイス10の好適な形態を上述してきたが、当業者には明らかであるはずのことには、他の電気デバイス設計も本発明と共に使用され得る。本発明は、特定の電気デバイス設計に限定されるものではなく、むしろ多種多様な電気デバイス設計に適する。
【0074】
例えば、3D集積技術では、温度を制限することが一般的に有利であり、高い熱伝導率のAlNをウエハスタックに埋め込むことは利点である。例えばSiと溶融シリカ、サファイア、InSbなどの異なる基板材料間のCTEの違い、及び金属フィーチャの高いCTEは、物理的な損傷につながり得るものであり、多くの3D集積スキームは、片面での湾曲補償と低温の恩恵を受ける。低温処理とAlNとのCTEマッチとの恩恵を受ける別のタイプの半導体の一例は、AlNと十分に一致する4×10-6/Kと6×10-6/Kとの間のCTE範囲を持つものであるAlGa(1-x)Asである。II-VI族及びIII-V族の半導体カテゴリーにおける他の材料も、AlNの熱膨張係数とよく一致し得る。
【0075】
更に理解されることには、窒化アルミニウム引張層16、圧縮(ボンディング)層18(例えば、SiO)、及び温度敏感材料14の好適な位置を上述したが、特定の用途に基づいて望まれるようなこれらの材料の他の好適位置が半導体デバイスで使用されてもよい。これらの層は、互いに(直接的又は間接的に)下にあっても上にあってもよく、(直接的又は間接的に)互いに横方向に隣接して配置されてもよく、あるいは、半導体デバイスの任意の好適位置に置かれてもよい。
【0076】
理解されることには、例示的な窒化アルミニウム引張層の利点はまた、上述のMCT以外の、このような電気デバイスで使用される他の温度敏感材料にも適用可能であり得る。そのような温度敏感材料は、例えば250°C以下、特に150°C以下など、300°C以下の熱劣化温度を持ち得る。例えば、そのような温度敏感材料の熱劣化温度、ひいては、AlN層の形成に対する温度限界は、25°Cから300°C、特に50°Cから250°C、特に75°Cから200°C、特に75°Cから150°C、特に90°Cから125°Cの範囲内とすることができ、特に約100°C(例えば、記載する値の間の全ての範囲及び部分範囲を含め、25°C、50°C、75°C、90°C、100°C、115°C、125°C、150°C、175°C、200°C、225°C、250°C、又は300°Cなど)とし得る。
【0077】
ここで使用されるとき、熱劣化温度という用語は、材料に対する熱の作用が、例えば物理的、機械的、及び電気的な特性などの特性の損失を生じさせる温度を意味する。熱劣化によるそのような特性の損失は、ミクロ構造若しくは組成の変化、時間に依存した変形とそれに伴うダメージの蓄積、環境への攻撃と上昇した温度での環境との反応効果の加速、又はこれらに類するものによって明らかにされ得る。例えば、熱劣化温度は、物質が1つ以上の構成部分へと化学的に分解して(化学結合の切断)、熱分解が起こる温度を含み得る。熱分解温度はまた、そのような材料の融解温度、ガラス転移温度、共晶形成温度、沸騰/揮発温度、又はこれらに類するものを含み得る。
【0078】
非限定的な例として、一部の例示的な温度敏感材料とその熱劣化温度は以下を含む:183°Cの共晶融解温度を持つ鉛スズ(PbSn);約95℃の融解温度を持つビスマス鉛スズ(BiPbSn);約138°Cの共晶融解温度を持つビスマススズ(BiSn);約118°Cの融解温度を持つインジウムスズ(52%In:48%Sn);約155°Cの融点を持つインジウム(In);約230°Cの融点を持つスズ(Sn);約40°Cの融点を持つルビジウム(Rb);約180°Cの熱劣化温度を持つテルル化カドミウム(CdTe)又はテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe);約120°Cから約150°Cの範囲内の熱劣化温度を持つテルル化水銀カドミウム(Hg1-xCdTe)。
【0079】
理解されることには、明細書及び請求項にて開示される全ての範囲及び比率の境界は、記載される値の間の全ての値、範囲及び部分範囲を含め、任意に組み合わされ得るものである。用語“約”は、ここで使用されるとき、記載された値の最大±10%の変動、例えば、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.01%、又は±0.0%、及び記載されたこれらの値の間の値の変動によって定められる範囲内にある任意の値を指す。
【0080】
ここで使用されるとき、例えば“上側”、“下側”、“頂部”、“底部”、“左”、“右”、“水平”、“垂直”などの位置又は方向の用語は、例えば図2Hに示したように水平位置で見たときの例示的な電気装置を参照してのものである。これは、これらのデバイスが、製造されるとき、他の電気デバイスに実装されるとき、パッケージングされるときなどに様々な他の位置に向けられ得ることを認識して行われている。
【0081】
ここで使用されるとき、用語“~上に配置される”、“~上へと配置される”、“~上に堆積される”、“~の下に位置する”、“~の上に位置する”、又はこれらに類するものは、ある要素と別の要素との直接的又は間接的な接触を指し、用語“~上に直接”又は“~上へと直接”は、ある要素と別の要素との直接的な接触を指し、要素間の間接的な接触は指さない。
【0082】
理解されるべきことには、特に断りのない限り、“a”、“an”、及び/又は“the”への言及は、1つ又は2つ以上を含み得るものであり、あるアイテムへの単数形での言及は、そのアイテムが複数であることも含み得る。フレーズ“及び/又は”は、そのように連結された要素の、すなわち、一部のケースでは結合的に存在し、他のケースでは選言的に存在する要素の、“いずれか又は双方”を意味すると理解されるべきである。反対のことが明確に指し示されていない限り、“及び/又は”節によって具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関係していようと、関係していなかろうと、オプションで存在してもよい。従って、非限定的な例として、“A及び/又はB”への言及は、例えば“有する”などのオープンエンドな言葉と共に使用されるとき、一実施形態では、BなしのA(オプションでB以外の要素を含む)を指すことができ、他の一実施形態では、AなしのB(オプションでA以外の要素を含む)を指すことができ、更に他の一実施形態では、A及びBの双方(オプションで他の要素を含む)を指すことができ、等々である。
【0083】
用語“又は”は、上で定義した“及び/又は”と同じ意味を持つように理解されるべきである。例えば、リスト内のアイテムを区切っているとき、“又は”若しくは“及び/又は”は包含的であるとして解釈されるべきであり、すなわち、ある数の要素又はリストの要素のうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、そしてオプションで、リストにはない更なるアイテムを含む、として解釈されるべきである。例えば“のうちの1つのみ”又は“のうちのまさに1つ”などの、反対のことを明確に指し示す用語のみが、ある数の要素又はリストの要素のうちのまさに1つを含むことを指し得る。一般に、ここで使用される用語“又は”は、例えば“いずれか”、“のうちの1つ”、“のうちの1つのみ”、又は“のうちのまさに1つ”などの排他性の用語によって先行されるときにのみ、排他的選択(すなわち、“一方又は他方であるが双方ではない”)を指し示すとして解釈される。
【0084】
1つ以上の特定の好適実施形態に関して本発明を図示して説明してきたが、明らかなことには、本明細書及び添付の図面を読んで理解した当業者には、等価な代替及び変更が思い浮かぶことになる。特に、上述の要素(コンポーネント、アセンブリ、装置、組成など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を記述するために使用される用語(“手段”への参照を含む)は、特段の断りがない限り、ここに例示した本発明の1つ以上の実施形態においてその機能を果たす開示構造とは構造的に等価でないとしても、記述される要素の指定機能を実行する(すなわち、機能的に等価な)如何なる要素にも対応することが意図される。また、本発明の或る特定の機構は、例示した幾つかの実施形態のうちの1つ以上に関してのみ上述されているかもしれないが、そのような機構が、所与又は特定の用途に関して望ましくて有利であるように、他の実施形態の1つ以上の他の機構と組み合わされてもよい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3
図4
図5