IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エンテロバイオーム インコーポレイテッドの特許一覧

特許7479521新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途
<>
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図1
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図2
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図3
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図4
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図5
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図6
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図7
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図8
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図9
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図10
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図11
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図12
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図13
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図14
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図15
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図16
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図17
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図18
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図19
  • 特許-新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20240426BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240426BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/20 E ZNA
A61P29/00
A61P1/16
A61P3/00
A61K35/741
A61K35/74 A
A61K35/74 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022576179
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 KR2020008345
(87)【国際公開番号】W WO2021261631
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0077337
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12620P
(73)【特許権者】
【識別番号】521022956
【氏名又は名称】エンテロバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTEROBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・グ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヒュン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ド・キュン・イ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-208479(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230695(WO,A1)
【文献】特表2016-511272(JP,A)
【文献】特表2019-508486(JP,A)
【文献】関節リウマチにおけるIL-6阻害治療,Clin. Rheumatol.,2015年,Vol. 27,p.228-231
【文献】慢性肝疾患の窒素代謝における血中亜鉛の意義についての検討,肝臓,2001年,Vol. 42, No. 3,p. 120-125
【文献】多様な酪酸投与とその効果,甲南女子大学研究紀要II,2019年03月,Vol. 13,p.25-35
【文献】C. V. Ferreira-Halder, et al.,Best Practice & Research Clinical Gastroenterology,2017年,Vol.31,p.643-648
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A23L
A61P
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCCM12620Pであるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株。
【請求項2】
請求項1に記載の菌株、前記菌株の培養液および前記菌株の破砕物からなる群より1つ以上を含む、炎症性サイトカインIL-8の発現抑制剤
【請求項3】
請求項1に記載の菌株、前記菌株の培養液および前記菌株の破砕物からなる群より1つ以上を含む、抗炎症サイトカインIL-10の発現増加剤。
【請求項4】
請求項1に記載の菌株、前記菌株の培養液および前記菌株の破砕物からなる群より1つ以上を含む、非アルコール性脂肪肝炎の予防、改善または治療
【請求項5】
請求項1に記載の菌株、前記菌株の培養液および前記菌株の破砕物からなる群より1つ以上を含む、脂肪蓄積抑制剤
【請求項6】
請求項1に記載の菌株、前記菌株の培養液および前記菌株の破砕物からなる群より1つ以上を含む、脂肪分化関連遺伝子であるC/EBPα、SREBP1c、aP2、FAS、ACC1またはLPL遺伝子の発現抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクス(probiotics)は、乳酸菌を含めて体の中で有益な効果を示すすべての菌を意味するもので、腸だけでなく、免疫疾患などの多様な身体機能に関与する。一時、プロバイオティクスの餌になる食物繊維、すなわちプレバイオティクス(prebiotics)を一緒に服用すれば効果がより良いという研究が注目されていた。最近は、プロバイオティクスが産生する代謝産物であるポストバイオティクスが治療剤や疾病の診断に効率的という主張が注目されており、併せてファーマバイオティクスも注目されている。ファーマバイオティクス(pharmabiotics)は、医薬を意味する「ファーマシューティカル」と生菌という「プロバイオティクス」の合成語で、疾患ケアのために医療用に使用可能な人体マイクロバイオームを称するもので、プロバイオティクスとポストバイオティクスの両方をすべて含む。
【0003】
一方、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)細菌は、腸内の粘液層に常に存在する偏性嫌気性桿菌であって、人間において保有率および保有数がいずれも高く、腸内細菌叢の主な構成菌種である。
【0004】
このような背景の下、本発明者らは、人体に有害でない菌株を用いて疾患を治療できる技術を開発するために努力した結果、優れた抗炎症効果および脂肪蓄積抑制効果を示すフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)菌株を同定し、これから肝疾患および大腸炎などの治療に適合することを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2018-230695A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、受託番号KCCM12620Pであるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む炎症性疾患、肝疾患または代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む炎症性疾患、肝疾患または代謝性疾患の予防または改善用食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、受託番号KCCM12620Pであるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株を提供する。
【0010】
本発明の一具体例において、前記菌株は、16S rRNAが配列番号1であるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株を提供するものである。
【0011】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む肝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む炎症性疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0015】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む肝疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む代謝性疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0017】
本発明の一具体例によれば、前記食品組成物は、健康機能食品の形態に製造される。
【0018】
本発明の一具体例によれば、前記食品組成物は、プロバイオティクス製剤の形態に製造される。
【発明の効果】
【0019】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む組成物を摂取すれば、炎症性疾患、肝疾患または代謝性疾患を予防、改善または治療する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を顕微鏡で観察したものである。
図2】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9をFP-特異性プライマーでPCR後に電気泳動した結果である。
図3】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9をERIC-1、ERIC-2および(GTG)プライマーでPCR後に電気泳動した結果である。
図4】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9の16rRNA塩基配列を用いて作成した系統樹である。
図5】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9の溶血現象の有無を確認したものである。
図6】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9の短鎖脂肪酸を分析したグラフである。
図7】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9の炎症サイトカインIL-8 mRNA発現を確認したグラフである。
図8】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9の抗炎症サイトカインIL-10の濃度を確認したグラフである。
図9】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9の脂肪蓄積抑制程度を確認した写真およびグラフである。
図10】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9培養液の脂肪蓄積抑制程度を確認した写真およびグラフである。
図11】フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9処理時、脂肪分化誘導後の脂肪細胞分化に関与する遺伝子の発現程度を比較および確認したグラフである。
図12】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの体重と食物摂取量を比較したグラフである。
図13】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの耐糖能を比較したグラフである。
図14】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの肝の重量および形状を比較したグラフである。
図15】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの脾臓の重量および形状を比較したグラフである。
図16】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの血中脂質の生化学的指標を分析して比較したグラフである。
図17】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの肝をH&E染色により脂肪滴の形成を確認した結果である。
図18】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスのコラーゲン沈着量を比較した結果である。
図19】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの肝をα-SMAにより損傷度を比較した結果である。
図20】非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスにおいてフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)標準菌株およびEB-FPDK9を投与したマウスの肝の中性脂肪と総コレステロールを比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、受託番号KCCM12620Pであるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株を提供する。
【0022】
本発明の一具体例において、前記菌株は、16S rRNAが配列番号1であるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株を提供するものである。
【0023】
前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)は、ヒトの腸内細菌叢を構成する細菌の中で最も豊富に存在する細菌の一つで、運動性のない厚壁細菌である。酸素に非常に敏感で極少量の酸素があっても育たないという特徴を有している。
【0024】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明において、用語「培養液」は、培養が完了した後の組成物を称するものであってもよいし、より具体的には、前記培養液は、菌体を含むか、含まなくてもよい。したがって、前記培養液は、培養上澄液、培養上澄液が除去された組成物、またはこれらを濃縮した組成物を含むことができる。前記培養液の組成は、通常のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの培養に必要な成分だけでなく、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの生長に相乗的に作用する成分を追加的に含むことができ、これによる組成は、当業界における通常の技術を有する者によって容易に選択可能である。
【0026】
また、菌株の状態は、液相状態または乾燥状態であってもよいし、乾燥方法は、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥および凍結乾燥が可能であるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明の用語、「炎症性疾患」は、炎症を主病変とする疾患の総称で、例えば、炎症性皮膚疾患、クローン病(Crohn’s disease)および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、肝炎、腹膜炎、骨髄炎、蜂巣炎、脳膜炎、脳炎、膵臓炎、嚢胞性線維症、脳卒中、急性気管支炎、気管支炎、関節炎、関節細胞動脈炎、血色素症、鎌状赤血球症およびその他の血色素病症、敗血症からなる群より選択されるいずれか1つであってもよいし、好ましくは、炎症性皮膚疾患、大腸炎、慢性気管支炎、肝炎、骨関節炎であってもよいが、これに限定されない。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む肝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0029】
前記肝疾患は、肝線維症または肝硬化症、急性または慢性肝炎、脂肪肝または肝臓癌を含み、好ましくは、脂肪肝または肝炎であってもよいし、さらに好ましくは、非アルコール性脂肪肝炎であってもよいが、これに限定されない。
【0030】
本発明において、前記肝疾患の予防または治療は、肝の重量が異常に増加することを抑制するものであってもよく、脾臓の長さおよび重量が異常に増加することを抑制するものであってもよい。また、中性脂肪、コレステロール、GOT、GPTの濃度を調節したり異常に増加することを抑制するものであってもよく、肝細胞の脂肪滴(fat droplet)生成、肝の線維化およびα-SMAの発現を抑制するものであってもよい。しかし、予防および治療効果がこれに限定されるものではない。
【0031】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む代謝性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0032】
前記代謝性疾患は、高脂血症、糖尿病、痛風、痴呆、肥満、高血圧、低血糖、高コレステロール血症、血色素症、アミロイド症、ポルフィリン症であってもよく、前記糖尿病は、第1型糖尿病および第2型糖尿病を含むことができる。好ましくは、肥満であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明で使用される前記薬学的組成物は、薬学的に有効な量でなければならない。本発明で使われる用語、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、個体の種類および重症度、年齢、性別、感染したウイルスの種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野にてよく知られた要素によって決定可能である。有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用および他の薬剤と共に使用できる可能性によって変化可能である。
【0034】
本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、遅速または遅延された放出を提供できるように当業界にてよく知られた方法を用いて薬学的剤形に製造できる。剤形の製造において、活性成分を担体と共に混合または希釈するか、容器形態の担体内に封入させることが好ましい。
【0035】
したがって、本発明の薬学的組成物は、方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤およびパッチの形態に剤形化して使用可能であり、組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤を追加的に含むことができる。
【0036】
例えば、本発明の薬学的組成物に含まれる担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製可能である。
【0037】
本発明のさらに他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む炎症性疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0038】
本発明の他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む肝疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0039】
本発明のさらに他の態様は、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物からなる群より1つ以上を含む代謝性疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0040】
本発明において、前記食品組成物は、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセルまたは液剤などの形態を含み、本発明の組成物を添加できる食品としては、例えば、各種食品類、例えば、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0041】
本発明の食品組成物で含み得る必須成分として、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9、前記フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(F.prausnitzii)EB-FPDK9菌株の培養液、破砕物または抽出物を含む食品組成物またはその有効成分、またはその生理学的に許容可能な塩を含むほかは他の成分には特に限定がなく、通常の食品のような、様々な生薬抽出物、食品補助添加剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。
【0042】
また、前述したように、食品補助添加剤を追加的に含むことができる。食品補助添加剤は、当業界にて通常の食品補助添加剤、例えば、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などを含むことができる。
【0043】
前記天然炭水化物は、例えば、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、デキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライドを含むことができ、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールのような糖アルコールを含むことができる。上述のほか、香味剤として、天然香味剤(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)または合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を適宜使用可能である。
【0044】
上記のほか、本発明の食品組成物は、様々な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。その他、天然フルーツジュースおよびフルーツジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は、独立にまたは組み合わせて使用可能である。
【0045】
本発明の一具体例によれば、前記食品組成物は、健康機能食品の形態に製造できる。本明細書において、用語、「健康機能食品(functional food)」は、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同じ用語で、栄養供給以外にも生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学、医療効果が高い食品を意味する。前記機能(性)食品とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節したり、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得るものを意味する。本発明の食品は、当業界にて通常使用される方法により製造可能であり、前記製造時には、当業界にて通常添加する原料および成分を添加して製造することができる。また、前記食品の剤形も、食品と認められる剤形であれば制限なく製造可能である。本発明の食品組成物は、多様な形態の剤形に製造され、一般の薬品とは異なり、食品を原料とすることで薬品の長期服用時に発生しうる副作用などがないというメリットがあり、携帯性に優れ、本発明の食品組成物は、炎症性疾患、肝疾患または代謝性疾患の予防または改善の効果を増進させるための補助剤として摂取可能である。
【0046】
本発明の一具体例によれば、前記食品組成物は、プロバイオティクス製剤の形態に製造できる。
【0047】
前記プロバイオティクス製剤は、当業界にて公知の方法により多様な剤形と方法で製造および投与可能である。例えば、本発明のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK11菌株、その培養液、前記培養液の濃縮液または乾燥物は、薬剤学的分野にて通常使用される担体と混合して、散剤(powder)、液剤(liquids and solutions)、錠剤(tablet)、カプセル(capsule)、シロップ(syrup)、懸濁剤(suspension)または顆粒剤(granule)などの形態に製造されて投与可能である。前記担体としては、例えば、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素および香料などであってもよいが、これに限定されない。また、投与用量は、体内での活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、被投与者の年齢、性別、体重、状態および疾病の重症程度などによって適宜選択可能である。
【実施例
【0048】
以下、一つ以上の具体例を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1:フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)EB-FPDK9菌株の分離および同定
1.1.フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ試料の確保および分離
健康な韓国人(女性、9歳、BMI15.5)の糞便からフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイを分離するために、Martinの方法により、YBHI培地[Brain-heart infusion medium supplemented with 0.5%w/v yeast extract(Difco)、0.1%w/v D-cellobiose、0.1%w/v D-maltose]を用いて培養した後、EOS(Extremely Oxygen Sensitivity)菌種を選別した後に分離した。
【0050】
1.2.顕微鏡観察
分離された菌株がフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株であるか否かを確認するために、分離された菌株を顕微鏡で観察した。その結果、図1に示された標準菌株であるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイDSM 17677菌株であるAとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を1000倍の倍率で拡大したBとも、形状が棒状細胞で真っ直ぐなまたは曲がっている形態で類似の形態を示すことを確認した。
【0051】
1.3.PCR分析
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株であるか否かを確認するために、分離された菌株を下記表1のFP-特異性プライマー(配列番号2、配列番号3)を用いてPCR分析を実施した。その結果、図2のように、陽性対照群菌株であるフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイDSM 17677と類似のバンドで結果値が出たことを確認することができた。
【0052】
【表1】
【0053】
1.4.Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD)分析
前記のように分離された菌株がすでに報告された同種の標準菌株と比較して異なるか否かを確認するために、分子タイピングの一種であるRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析を実施した。このために、菌体から抽出したgDNA(genomic DNA)を対象に下記表2のuniversal primer(配列番号4~6)を用いてDNAを増幅した後、1%アガロースゲルで90分間電気泳動し、図3のように、UV transilluminatorを用いてDNA分節パターンを比較した。
【0054】
【表2】
【0055】
DNA分節パターンの比較結果、図3から確認したように、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ標準菌株DSM 17677と一部類似しているものの、異なるパターンであることを確認することができた。したがって、分離された菌株がすでに報告された同種の標準菌株フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイDSM 17677と種は同じであるものの、異なる菌株であることを確認した。
【0056】
1.5.16S rRNA BLAST
分離された菌株がフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株であるか否かを確認するために、16S rRNA塩基配列を分析した後、BLASTして確認した結果、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ種と99%以上一致しており、このような結果に基づいて分離された菌株をフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株と名付け、韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託して受託番号KCCM12620Pを受けた。
【0057】
1.6.16s rRNA塩基配列を用いた系統樹(phylogenetic tree)分析
前記菌株の同定結果、現在知られている菌株に対して類似の菌株は存在するものの、正確に一致する結果は得られず、系統樹分析を行った。分離されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の全長16S rRNA遺伝子の塩基配列分析のために、下記表3の27F(配列番号7)および1492R(配列番号8)プライマーを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した後、3730xl DNA Analyzer(Thermo Fisher Scientific、USA)を用いて塩基配列を決定した。このように得たEB-FPDK9菌株および標準菌株を含めてすでに公表された同種の他の菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を用いて、Maximum Likelihood methodにより図4のような系統樹を作成した。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例2:フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の特性分析
2.1.抗菌剤感受性の確認
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の抗菌剤感受性を把握するために、Clinical&Laboratory Standard Institute(CLSI)ガイドラインの液体培地微量希釈法によって嫌気性菌用抗菌剤(piperacillin-tazobactam、ceftizoxime、chloramphenicol、clindamycin、meropenem、moxifloxacin、metronidazole、ciprofloxacin)に対する最小阻害濃度(minimum inhibitory concentration、MIC)を確認した。
【0060】
【表4】
【0061】
確認結果、前記表4から分かるように、本発明のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株は、セフチゾキシム(CTZ)、クロラムフェニコール(CHL)、メロペネム(MEM)とフルオロキノロン系の抗生剤であるモキシフロキサシン(MXF)とシプロフロキサシン(CIP)に耐性を示し、ピペラシリン・タゾバクタム(PTZ)、クリンダマイシン(CLI)とメトロニダゾール(MTZ)には感受性を示した。標準菌株(DSM 17677)と比較すれば、ピペラシリン・タゾバクタム(PTZ)抗生剤において大きな差を示した。
【0062】
2.2.溶血活性(hemolytic activity)の確認
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の安全性検証のために、溶血活性を保有するか否かを評価した。このために、YBHI培地[Brain-heart infusion medium supplemented with 0.5%w/v yeast extract(Difco)、0.1%w/v D-cellobiose、0.1%w/v D-maltose]に1.5%w/v bacto-agarと5%w/v defbrinated sheep bloodを添加して製造した血液寒天培地を用いて菌株を培養した後、コロニー周辺の溶血現象の有無を観察した。陽性対照群としてβ-hemolysisを起こすStreptococcus pyogenes ATCC 19615と比較した。
【0063】
その結果、図5に示されるように、本発明のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株と標準菌株DSM 17677はいずれも、コロニー周辺が透明になる部分がなくて、病原性に関係するβ-hemolysisを起こさないことを確認した。
【0064】
2.3.機能性代謝物(短鎖脂肪酸)分析
分離されたフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の機能性代謝物確認のために、培養液に含有された短鎖脂肪酸(SCFA、short chain fatty acids)の含有量をガスクロマトグラフィーで分析した。このために、YBHI培地[Brain-heart infusion medium supplemented with 0.5%w/v yeast extract(Difco)、0.1%w/v D-cellobiose、0.1%w/v D-maltose]に菌株を24時間培養した後、12,000×gで5分間遠心分離して上澄液を回収し、上澄液は0.2μmのシリンジフィルタを用いた濾過した後、分析に使用した。FFAP column(30m×0.320mm、0.25μm phase)が装着されたガスクロマトグラフィー(Agilent 7890N)を用いており、条件は表5のように設定した。
【0065】
【表5】
【0066】
機能性短鎖脂肪酸を分析した結果、図6のグラフから確認されるように、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株は、アセテートを消費し、ブチレートを生成することを確認した。
【0067】
実施例3:フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の抗炎症効能の確認
3.1.HT-29腸上皮細胞における抗炎症効能評価
炎症性腸疾患において炎症反応調節にサイトカインが関与するので、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を投与してサイトカインの遺伝子発現の変化を確認した。試験管実験で抗炎症効能評価実験をするために、ヒト由来大腸上皮細胞であるHT-29細胞(ATCC○R HTB-38TM、USA)を培養した。10%FBS(fetal bovine serum、Hyclone、USA)、10μg/mlのゲンタマイシンを添加したMcCoy’s 5A modified media(Gibco、USA)を基本培養培地として用いて、37℃、5%COインキュベータ(NUAIRE、USA)で培養した。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株がHT-29細胞においてLPSで誘導された炎症性サイトカインであるIL-8遺伝子の発現を抑制するかを確認するために、下記表6のプライマー(配列番号9~12)を用いてリアルタイムPCRを進行させた。
【0068】
【表6】
【0069】
TRI試薬(Sigma、USA)を用いて全RNAを抽出し、cDNA合成のために、1μgのRNAをM-MLV cDNA合成キット(Enzynomics、Korea)でcDNAを抽出した。リアルタイムPCRはQuant Studio 3 real time PCR system(Applied Biosystems、USA)を用いて行った。
【0070】
炎症性サイトカインの遺伝子発現はSYBR Green TOPrealTM qPCR 2X PreMIX(Enzynomics、Korea)を用い、internal standardとしてはGAPDHを使用した。PCRの条件は、pre-incubationは50℃で4分、95℃で10分、そして40サイクルは95℃で15秒、60℃で1分間行った。データはQuantStudio Design&Analysis Software v1.4.3に内蔵されているプログラムを用いてdelta CT方法で分析した。
【0071】
すべての実験で得られた結果は、統計プログラムGraphPad Prism7(GraphPad software Inc、USA)を用いて各実験群の平均と標準偏差で計算され、各群間の差はone-way ANOVA、Tukey’s testを用い、p値が0.05以下の場合に有意性があると判定した。一部の結果ではAUC(area under curve)を計算した。
【0072】
その結果、図7に示すように、HT-29細胞にLPS(100μg/ml)を6時間単独処理した時、代表的な炎症サイトカインであるIL-8の発現が正常群に比べて著しく増加した。これに対し、LPSを処理した群に比べて、LPSとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株の培養液(10%、v/v)を一緒に処理した群では、IL-8の発現が減少し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株培養液を一緒に処理した群では、LPSとA2-165標準菌株処理群に比べてIL-8の発現を有意にさらに減少させるという結果が出た。したがって、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株培養液は炎症性サイトカインIL-8を著しく減少させることを確認した。
【0073】
3.2.マウス骨髄由来樹状細胞における抗炎症効能評価
抗炎症反応を観察するために樹状細胞(Dendritic cells、DC)のサイトカインの分泌を確認した。マウス骨髄由来樹状細胞(bone marrow derived dendritic cells、BMDC)を用いて菌株の抗炎症効能を評価するために、BMDC細胞を分離した。0.5mlのマイクロチューブに18Gニードルを用いて穴を開けた後、6週齢C57BL/6マウスの大腿骨と硬骨を分離して1.5mlの沈殿管に入れた後、10,000×gに15秒間遠心分離をした。PBSを用いて1.5mlの沈殿管に入ったペレットを3回洗浄した後、ペレットにRPMI-1640(10%FBS、1%P/S、media、1X mercaptoethanol、20μg GM-CSF)培地を入れて、150mmの培養皿に培養した。翌日に100mlのペトリ皿にBMDCを移して培養をし、5日目になる日に培養液10mlを15mlのコニカルチューブ(conical tube)に移して入れた後、1,000×gに15分間遠心分離して、上澄液を除去し、BMDC media10mlを添加してペトリ皿に入れた。6~7日目にBMDCを実験に使用した。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の抗炎症効能分析のために、代表的な抗炎症サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)の分泌をmIL-10 ELISA(Invitrogen、USA)で分析した。
【0074】
BMDC細胞にLPS(100μg/ml)、E.coli、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株、EB-FPDK9菌株を(10cfu/ml、10%v/v)1時間抗生物質のない培地に処理した後、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生剤を入れた培地に切り替えた後、24時間培養し、培地を1,000×g遠心分離して、上澄液を用いてIL-10の分泌をELISAで測定した。
【0075】
図8のように、LPSとE.coliを処理した時は、IL-10の分泌が正常群と差なく類似のレベルを示した。これに対し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株を処理した群は、正常群に比べてIL-10の分泌量が著しく増加した。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株処理群では、A2-165標準菌株処理群に比べてIL-10の発現が有意なレベルにさらに増加した。したがって、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株が抗炎症サイトカインIL-10を増加させることと、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株がさらに著しく増加させることを確認した。
【0076】
実施例4:脂肪蓄積抑制効果の確認
脂肪蓄積と肥満関連バイオマーカーの発現が本発明の菌株の投与によって影響を受けるか否かを調べた。
【0077】
4.1.脂肪分化細胞を用いたOil Red-O染色
3T3-L1細胞において脂肪細胞の分化および脂肪の生成に本発明のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株が及ぼす影響を調べるために、Oil Red-O(ORO)染色実験を行った。まず、3T3-L1脂肪前駆細胞を脂肪細胞に分化させるために、24well plateに2×10/wellの細胞を分注した。10%BSを含むDMEM培地で4日間培養した後、細胞がプレートで飽和状態になると、分化用培地[DMEM、10%FBS、0.5mM IBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine、Sigma I5879)、1μMデキサメタゾン(Sigma D4902、FW392.5)、10mg/ml insulin]に切り替え、試料(フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの菌株または培養液)50μl(1×10/well)を処理した後、37℃、5%CO条件で2日間培養した。以後、インスリン培地(10%FBS、10mg/ml insulin)に2日ごとに切り替えて、8日間同じ条件で培養した。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイの菌株と培養液を培地を切り替えるたびに同時に処理した。菌株と菌株培養液(10cfu/ml)は10%v/vで細胞に処理した。
【0078】
Oil Red-O染色法は、分化された3T3-L1細胞にOil Red-O試薬で染色して細胞内生成された脂肪を測定する方法である。マウス脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞(韓国細胞株銀行、KOREA)を培養した。10%FBS(fetal bovine serum、Hyclone、USA)、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、Welgene、KOREA)を基本培養培地として用いて、37℃、5%COインキュベータ(NUAIRE、USA)で培養した。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株が脂肪細胞である3T3-L1でインスリン(1μg/ml)、IBMX(0.5mM)、デキサメタゾン(1μM)で10日間脂肪分化を誘導した後、培養液をPBSで3回洗浄して培養液を除去し、10%ホルマリン(Sigma、USA)を添加してOil Red-O(Oil red O、Sigma、USA)溶液を細胞と1時間反応させ、蒸留水で洗浄して脂肪球を染色した。
【0079】
細胞染色が終わった後、40%イソプロパノール(Duksan、KOREA)で3回洗浄後に乾燥して、細胞内脂肪の大きさを光学顕微鏡で観察した。イソプロパノールを添加してOil Red-O溶液で染色された脂肪球試料を溶かし、Spectrophotometer(Epoch、BioTek、USA)を用いて500nmでの吸光度を測定して、その結果を測定した。
【0080】
実験結果、図9に示されるように、3T3-L1細胞の分化過程中に本発明のフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株を処理した結果、対照群に比べて脂肪蓄積を抑制させた。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を処理した時、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株処理群に比べてさらに脂肪蓄積を抑制させた。
【0081】
図10においても同様に、3T3-L1細胞の分化過程中にフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株の培養液を処理した結果、対照群に比べて著しく脂肪蓄積を抑制させた。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の培養液を処理した時、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株培養液処理群に比べてさらに脂肪蓄積を抑制させた。
【0082】
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株および培養液よりフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株および培養液が3T3-L1細胞の脂肪分化抑制に効果がさらに優れていることを確認した。
【0083】
4.2.バイオマーカーの遺伝子発現に対する効能評価
菌株の脂肪細胞分化抑制に対する効果を確認するために、下記表7に記載の遺伝子特異的プライマー(配列番号13~26)を用いてリアルタイムPCRを進行させて、脂肪細胞への分化段階で脂肪細胞の分化と成熟に関与する転写因子であるC/EBPα(CCAAT/enhancer binding protein alpha)、SREBP1c(Sterol regulatory element-binding protein 1c)と脂肪合成遺伝子aP2(adipocyte protein2)、FAS(fatty acid synthase)、ACC1(acetyl-coenzyme A-carboxylase)、LPL(lipoprotein lipase)遺伝子のmRNA発現を分析した。
【0084】
【表7】
【0085】
具体的には、全RNAは製造会社の指針に従い、TRI試薬(Sigma、USA)を用いて細胞の単層から抽出し、cDNAはM-MLV cDNA合成キット(Enzynomics、Korea)を用いて、全RNA1μgから合成した。PCR反応はQuant Studio 3 real time PCR system(Applied Biosystems、USA)を用いて行った。PCRの条件は、pre-incubationは50℃で4分、95℃で10分、そして40サイクルは95℃で15秒、60℃で1分間行った。データはQuantStudio Design&Analysis Software v1.4.3に内蔵されているプログラムを用いてdelta CT方法で分析した。
【0086】
図11のように、脂肪分化誘導後、脂肪細胞の分化に関与する遺伝子であるC/EBPα、SREBP1c、aP2、FAS、ACC1、LPLの増加した発現を100%に数値化した時、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株の培養液を一緒に処理した群からC/EBPα、aP2、FAS、ACC1、LPLの発現が、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の培養液を一緒に処理した群からC/EBPα、SREBP1c、aP2、FAS、ACC1、LPLの発現が著しく減少した。SREBP1cの場合、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の培養液を与えた時のみ対照群に比べて発現が減少し、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株が全体的にフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株より発現がさらに減少した。フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株とフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株はいずれも、3T3-L1細胞の脂肪分化関連遺伝子の発現抑制効果があることを確認した。
【0087】
実施例5:非アルコール性脂肪肝炎効果の確認
5.1.非アルコール性脂肪肝炎動物モデルの作製
動物実験はInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のAnimal use and Care Protocolを守って進行させた。実験動物は8週齢雄マウスC57BL/6(グループあたり9匹)を購入して、1週間適応期間を持った後、12週間飼育が行われ、飼育環境は一定の温度(22℃)と相対湿度(40~60%)を維持し、12時間の周期で明暗を調節しながら1週間適応させた。
【0088】
非アルコール性脂肪肝炎を誘導するために、実験食餌(NASH)として16週間高脂肪飼料(60kcal%fat;Research Diets Inc、NJ、USA)と果糖(Fructose)30%を添加した飲用水で摂取させ、飲用水は自由に摂取させた。
【0089】
実験マウスをランダムに下記表8のように5つのグループに分けた。
【0090】
【表8】
【0091】
実験群III、IV、Vの場合には、実験食餌によって非アルコール性脂肪肝炎誘導8週後から、シリマリン(30mg/kg)、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ生菌を1×10CFU/150μl PBS(25%グリセロール、0.05%システイン/PBS)の濃度で毎日経口投与した。
【0092】
正常食餌群マウスには10%fat飼料を摂取させた。陽性対照群として非アルコール性脂肪肝の改善に役立てられる機能性原料として知られたシリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株を投与した。この時、正常食餌群と実験食餌群は、投与によるストレスなどの影響を排除するために、これと同量のリン酸緩衝食塩水(25%グリセロール、0.05%システイン/PBS)を毎日経口投与した。
【0093】
5.2.体重および餌摂取の変化
非アルコール性脂肪肝炎誘導実験を行って16週後、実験群の体重の変化を測定して、その結果を図12に示した。
【0094】
図12を参照すれば、実験食餌で非アルコール性脂肪肝炎を誘導した全体グループ動物の体重は、正常食餌群に比べて体重が増加した。シリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイ菌株を投与した8週を起点として16週までの体重増加を質量(g)と百分率(%)で計算した時、シリマリンとEB-FPDK9菌株投与群において非アルコール性脂肪肝炎誘導グループに比べてやや体重増加が少ないことが観察されたが、有意な減少を示すことは確認できなかった。体重増加の場合、その増加量がEB-FPDK9投与グループにおいて百分率で計算した時、正常食餌群に比べて最も少なく増加したことが観察された。食物摂取量およびカロリーの場合、実験食餌で非アルコール性脂肪肝炎を誘導したグループの間では差が大きくなかった。
【0095】
5.3.耐糖能の変化(OGTT、oral glucose tolerance test)
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の投与が耐糖能に及ぼす効果を確認するために、実験を行って16週後、マウスを18時間絶食にした状態でブドウ糖(glucose2g/kg)を経口投与した。ブドウ糖の投与直前と投与後30、60、90、および120分後に尾静脈から血液を採取して血糖を血糖測定器で測定して、その結果を図13に示した。
【0096】
図13によれば、ブドウ糖投与直前にフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を投与した群で投与群のうち血糖が最も減少した傾向を示した。ブドウ糖投与30分後、すべての投与群で正常食餌群より血糖が増加するが、120分間の血糖曲線下面積(AUC)を計算した結果、60分、90分、120分へと時間が経過するほど、シリマリン、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株およびEB-FPDK9菌株投与群において、非アルコール性脂肪肝炎誘導群に比べて有意に血糖が著しく減少した。このような研究結果により、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の口腔投与が、非アルコール性脂肪肝炎の誘導で低くなった血糖調節能力を緩和させ、耐糖能を高められることを確認した。
【0097】
5.4.脂肪肝炎の観察および組織の重量の変化
実験終了時にCOで痲酔した状態で肝と脾臓を摘出して生理食塩水で洗浄し、水分を除去した後、重量を測定し、それらの大きさと色を肉眼的に観察した。
【0098】
図14を参照すれば、正常食餌群の肝組織の場合、鮮紅色の健康な肝の形態を示したのに対し、実験食餌で非アルコール性脂肪肝炎を誘導したグループの肝からは、脂肪蓄積によって色も濁り、本来の鮮紅色を失ったことが観察された。しかし、シリマリン、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株とEB-FPDK9菌株を投与したグループでは、正常食餌群に近い鮮紅色の肝形態を示した。肝の重量測定の場合、正常食餌群に比べて非アルコール性脂肪肝炎誘導グループとシリマリン投与グループで重量増加が観察された。しかし、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9投与グループの肝組織の重量は、最も正常群と類似の数値を示し、非アルコール性脂肪肝炎誘導グループと比べた時、有意な重量差を示した。図14を通して、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株投与グループが正常食餌群と類似の形態および重量を示すという点を確認した。したがって、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株が非アルコール性脂肪肝炎を緩和させることができるという結論を導出することができた。
【0099】
脾臓の場合、図15に示されるように、長さと重量が正常食餌群に比べて非アルコール性脂肪肝炎誘導グループですべて増加した。肝組織と同様に、シリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株を処理したグループの脾臓の長さも正常食餌群に比べて増加したが、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を投与したグループでは、脾臓の長さの増加数値が有意性がないほど低いことが観察された。脾臓の重量は非アルコール性脂肪肝炎誘導群よりその数値が低いことを確認した。
【0100】
5.5.血中脂質の生化学的指標分析
18時間絶食にした後、各実験動物から血液を採取した後、分離した血清(serum)で脂質含有量の指標である中性脂肪(triglyceride、TG)、総コレステロール(total cholesterol、TC)、肝機能の指標であるGOT(glutamic oxaloacetic transaminase)、GPT(glutamic pyruvic transaminase)を測定して、図16に示した。脂質組成の指標であるTG、TC、GOT、GPTの濃度はいずれも、ASAN製薬から購入した個別測定キットを用いて定量した。
【0101】
中性脂肪の場合、非アルコール性脂肪肝炎誘導グループで有意に増加したことを確認した。しかし、シリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を投与したグループでは、中性脂肪が有意に減少した。総コレステロールの場合、非アルコール性脂肪肝炎誘導グループとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株処理グループでは、正常群に比べて高いレベルを示した。しかし、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を処理した時、非アルコール性脂肪肝炎誘導グループとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株を処理したグループに比べて総コレステロールのレベルが著しく減少したことを確認した。肝細胞の損傷程度を示すGOTの濃度は非アルコール性脂肪肝炎誘導グループに比べてすべての投与グループで減少したことを観察し、GPTの濃度はシリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株投与グループでのみ有意に減少した。血中脂質の生化学的指標分析により非アルコール性脂肪肝炎と密接な関係がある中性脂肪、総コレステロール、GOTおよびGPTの濃度がフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の投与によって減少することを確認した。
【0102】
5.6.肝組織内脂肪肝炎の病理学的深度分析
フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の投与が非アルコール性脂肪肝炎の緩和に及ぼす影響を観察するために、肝組織切断面でhematoxylin&eosin染色と、肝線維化を測定可能なSirius red染色、肝損傷時に発現するalpha-smooth muscle actin(α-SMA)の発現を染色して観察した。マウスから分離した肝組織を約5μmに組織切片にした後、パラフィン包埋し、それぞれの染色により形態学的変化の差を観察した。それぞれの染色による肝損傷の程度はImage Jプログラムにより百分率(%)に換算して示した。
【0103】
図17のように、マウスの肝組織をH&E染色により組織分析した結果、正常群は肝細胞組織の緻密な正常形態で脂肪滴(fat droplet)がないことが観察された。しかし、非アルコール性脂肪肝炎を誘導したマウスの肝組織では、正常群に比べて脂肪滴の形成が多数明確に観察できた。脂肪滴の形成はすべての投与グループにおいて非アルコール性脂肪肝炎誘導グループに比べて減少したことを観察し、シリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株投与群でさらに減少したことを確認した。
【0104】
図18のように、マウスの肝組織をSirius red染色によりコラーゲン沈着量を分析した。肝のコラーゲン沈着量は線維化程度を反映する敏感な指標として知られている。本実験において、正常群に比べて非アルコール性脂肪肝炎誘導群、シリマリン投与群およびフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株投与群のすべてにおいて肝線維化が増加した。しかし、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株投与群では、非アルコール性脂肪肝炎とフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株投与群に比べてコラーゲンの生成が有意に抑制されて、肝の線維化による肝損傷が著しく抑制されたことを確認した。
【0105】
また、マウスの肝組織をα-SMAの発現染色により肝損傷の程度を観察した結果、図19から確認するように、すべての投与グループにおいて非アルコール性脂肪肝炎誘導群に比べてα-SMAの発現が減少して肝損傷が抑制されたことが観察され、シリマリンとフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株投与群の場合、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165標準菌株投与群に比べてα-SMAの発現がさらに有意に減少したことを観察した。
【0106】
5.7.肝組織内の中性脂肪および総コレステロール分析
マウスの肝組織内脂質抽出物により中性脂肪と総コレステロールを分析した。肝組織30mgにPBSを120μl入れて、ホモゲナイザーを用いて粉砕後、Chloroform320μlとMeOH160μlを入れて混合物を作った。前記混合物を常温で1日間シェイキングインキュベータで混合した後、2000rpmで遠心分離し、上澄液のみ別途に分離して溶媒を蒸発させた。その後、前記溶媒を蒸発させた上澄液を1mlのisopropanolで溶かした後、TG、TC測定キット(ASAN製薬、韓国)を用いてマウスの全体肝重量対比で換算して定量した。
【0107】
その結果、図20のグラフのように、肝組織内の中性脂肪の場合、非アルコール性脂肪肝炎誘導グループで有意に増加したことを確認した。しかし、シリマリン、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を投与したグループでは中性脂肪が有意に減少した。肝組織内の総コレステロールの場合にも、非アルコール性脂肪肝炎誘導グループにおいて正常群に比べて高い数値を示した。しかし、シリマリン、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイA2-165、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株を投与した時、非アルコール性脂肪肝炎誘導群に比べて肝組織内の総コレステロールのレベルが著しく減少した。
【0108】
肝組織内の脂質蓄積の分析結果、シリマリンとともに、フィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株の摂取が中性脂肪とコレステロールの生成を最も多く抑制し、非アルコール性脂肪肝炎の改善効能があることを確認した。
【0109】
肝組織の分析結果、全体的にフィーカリバクテリウムプラウスニッツィイEB-FPDK9菌株投与群において非アルコール性脂肪肝炎によって誘導された肝損傷と脂肪肝炎の進行が最も抑制されたことを確認した。
[寄託証]
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
0007479521000001.app