(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】インターロイキン-22の治療用誘導体
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20240426BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240426BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240426BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240426BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240426BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240426BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240426BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240426BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 11/16 20060101ALI20240426BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240426BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240426BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240426BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240426BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240426BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240426BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240426BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
C07K14/54 ZNA
C12P21/02 K
A61K38/20
A61K9/72
A61P3/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P1/00
A61P13/12
A61P17/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P43/00 105
A61P11/16
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P1/04
A61P37/06
A61P17/02
A61P29/00
C12N15/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064366
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2022526450の分割
【原出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522179105
【氏名又は名称】サイトカイ・ファーマ・アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・サス-ウルム
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス・ヨルゲンセン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ベック・ヨルゲンセン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング・トゥーヤスン
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ホウ-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・パオロ・バストナー・サンドリニ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501262(JP,A)
【文献】特表2016-531156(JP,A)
【文献】特表2018-511574(JP,A)
【文献】特表2013-533227(JP,A)
【文献】特表2016-522795(JP,A)
【文献】ACS Medicinal Chemistry Letters,2018年,Vol.9,p.577-580
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/54
A61K 38/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】
を有するIL-22の誘導体。
【請求項2】
構造:
【化2】
を有するIL-22の誘導体。
【請求項3】
療法において使用するための、請求項
1もしくは2に記載の誘導体または請求項
1もしくは2に記載の誘導体を含む薬学的組成物。
【請求項4】
代謝、肝臓、肺、腸、腎臓または皮膚の疾患、障害または状態の治療において使用するための、請求項
1もしくは2に記載の誘導体または請求項
1もしくは2に記載の誘導体を含む薬学的組成物。
【請求項5】
前記使用が、それを必要とする患者に、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の間の前記誘導体の1週用量を投与することを含む、請求項
4に記載の誘導体または薬学的組成物。
【請求項6】
(i)前記代謝の疾患、障害または状態は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、脂質異常症、高血糖または高インスリン血症である;
(ii)前記肝臓の疾患、障害または状態は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、慢性肝不全急性増悪(ACLF)、アセトアミノフェン誘導性肝臓毒性、急性肝臓傷害、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変または手術もしくは移植によって引き起こされる病理学的状態である;
(iii)前記肺の疾患、障害または状態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性窮迫症候群、化学的傷害、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症である;
(iv)前記腸の疾患、障害または状態は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性結腸炎、クローン病、移植片対宿主病(GvHD)、化学的傷害、ウイルス感染症または細菌感染症である;
(v)前記腎臓の疾患、障害または状態は、急性腎臓疾患または慢性腎臓疾患である;又は
(vi)前記皮膚の疾患、障害または状態は、創傷、炎症性疾患またはGvHDである
請求項
4または5に記載の誘導体または薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-22(IL-22)の新規誘導体、及び特にIL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含む誘導体に関する。本発明はまた、それらの生成ならびに代謝、肝臓、肺、腸、腎臓及び皮膚の疾患、障害及び病態の処置、予防及び改善を含む療法におけるそれらの使用のための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
IL-22は、17KDaの分子量を有する146アミノ酸タンパク質である。それは、サイトカインのIL-10ファミリーに属し、遍在的に発現するIL-10受容体Bサブユニット(IL-10RA2)及び上皮に限定した発現を有するIL-22受容体Aサブユニット(IL-22RA1)からなるヘテロ二量体受容体を選択的に活性化する。それは、免疫細胞から放出れるが、上皮細胞を選択的に標的とするという点でユニークなサイトカインである。よって、IL-22によって誘導されるシグナル伝達経路は、種々の組織において関連性を有し得る(標的には皮膚、腸、肺、肝臓、腎臓、膵臓及び胸腺が含まれる)が、IL-22は、上皮特異的にそれらを活性化する。可溶性結合タンパク質であるIL-22BPはIL-22を中和し、それによりその作用を制御する。
【0003】
IL-22は、化学的または機械的傷害を反映するシグナル、例えば、環境毒素またはトリプトファン中間体に反応するアリール炭化水素受容体活性化、及び死にゆく細胞または侵入病原体からのタンパク質、断片及びデブリに反応するトル様受容体4などのパターン認識受容体の活性化に対する反応として放出される。IL-22放出は、所定のサイトカイン、特にIL-23及びより少ない程度であるがIL1βによってさらに刺激される。よって、IL-22は、病原体感染症及び免疫活性化も反映する合図に対する反応として分泌される。
【0004】
IL-22の作用は、いくつかの活性/経路の編成された関与の結果である。IL-22は、傷害時に上皮障壁組織及び器官で作用して、細胞を保護し、障壁機能を維持する(例えば、抗アポトーシス遺伝子プログラムの活性化を介して)。それはまた、修復を加速させ(例えば、成熟細胞の増殖及び幹細胞の活性化を誘導することによって)、線維化を防止し(例えば、上皮間葉移行を減少させること、NLRP3インフラマソームに拮抗すること及び肝臓星細胞老化を誘導することによる)、炎症を制御する(例えば、抗微生物ペプチド及び走化性シグナルを誘導することによって)。IL-22は、様々な医学的病態(高血糖、脂質異常症及び高インスリン血症などの、糖尿病または過体重哺乳動物でしばしば観察されるものを含む)を処置することができるものとして報告されている。
【0005】
しかしながら、IL-22は通常、腎臓によって身体から迅速に消失し、これにより臨床実務ではその使用が制限される。そのため、循環IL-22の半減期を延長させるための既知の方法は、腎臓クリアランスを避けるように、IL-22のサイズを70kDaを超えるように人工的に拡大しようとするものである。Fc抗体断片へのIL-22の連結は現在、この作用に対する最も良好な解決策である;Genentech及びGeneron Shanghaiはいずれとも、臨床開発中の長期作用型IL-22-Fc融合体を有している。ポリエチレングリコールでのIL-22の改変(PEG化)は、腎臓クリアランスを避けるための別の既知の手段である。
【0006】
しかしながら、これらの既存の解決策は、それらの欠点がないわけではない。利用可能なデータは、PEG自体が免疫原性であり、ペグ化生物製剤を用いると細胞においてPEG含有液胞が観察されることを示唆している。低下した活性及び不均一性もまた、PEG化の不利な面である。Fc融合技術は極めてよく知られているが、Fc抗体断片の付加は、IL-22の構造の主要な変化を意味し、これは半減期延長を超えてその特性に影響を及ぼす。Fc融合は、タンパク質のサイズをおよそ17kDaからおよそ85kDaまで増加させるので、拡散速度、分布及び受容体係合動態などの特性が影響を受け得る。例えば、いくつかのFc融合体は徐々に吸収され、及び/または所定の経路を介した投与にとっては大きすぎる。Genentech及びGeneronはまた、IL-22-Fc融合体の用量制限的有害作用として中程度の可逆的皮膚反応を報告している。さらに、効力は、大きな融合パートナーによって引き起こされる立体障害を介して影響を受け得る。
【0007】
そのため、循環半減期を向上させ、かつネイティブ分子と比較して最適化された薬物動態的及び薬力学的特性を実証するIL-22の新たな生体適合性改変剤が当該技術分野で依然として必要とされている。理想的には、それらは、ネイティブ分子の効力及び他の特性を維持し、また、既知の誘導体によって示される毒性、免疫原性及び任意の他の有害な反応を回避すべきである。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含むIL-22の誘導体が提供される。
【0009】
本発明の一実施形態では、脂肪酸は、リンカーによってIL-22タンパク質に共有結合されている。
【0010】
脂肪酸は、式I:
HOOC-(CH2)x-CO-*,
(式中、xは、10~18、任意に12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、IL-22タンパク質またはリンカーの結合点を示す)のものであり得る。それは脂肪二酸、例えば、C12、C14、C16、C18またはC20二酸であり得る。有利には、脂肪酸はC16またはC18二酸、最も有利にはそれはC18二酸である。
【0011】
IL-22タンパク質は、ネイティブ成熟ヒトIL-22(以下、「hIL-22」)またはそのバリアントであり得る。バリアントは、位置1、21、35、64、113及び/または114で任意に置換された、hIL-22の置換形態であり得る。それは、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択されるhIL-22の置換を含み得る。有利には、バリアントは、hIL-22の位置1でCys残基を含む。
【0012】
バリアントは、hIL-22の伸長形態であり得る。それは、N末端ペプチド、例えば、N末端トリマーを含み得る。有利には、バリアントは、N末端G-P-Gを含む。
【0013】
リンカーは、グルタミン酸(Glu)及び/またはリジン(Lys)を任意に含む、1つ以上のアミノ酸を含み得る。リンカーは、オキシエチレングリシン単位または複数の連結されたオキシエチレングリシン単位、任意にそのような2~5単位、有利には2単位を含み得る。リンカーは、1つ以上のオリゴ(エチレングリコール)(OEG)残基を含み得る。それは、エチレンジアミン(C2DA)基及び/またはアセトアミド(Ac)基を含み得る。有利には、リンカーは、前述した要素のすべてを組み合わせて含む。特に、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcまたはγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり得る。
【0014】
リンカーは、hIL-22またはそのバリアントにおけるCys残基に結合したCys反応性リンカーであり得る。それは、hIL-22またはそのバリアントの位置-7、-5、1、6、33、113、114または153で結合され得る(位置-7、-5などは本明細書で定義されているとおりである)。例として、リンカーは、hIL-22の位置1、6、33、113または114で置換されたCys残基に結合され得る。それは、hIL-22に対して位置-5、-7または153でCys残基に結合され得る。有利には、リンカーは、hIL-22の位置1で置換されたCys残基に結合される。
【0015】
一実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC14、C16、C18またはC20二酸を含み、バリアントは、N末端G-P-G及びhIL-22の位置1におけるCys残基を含み、リンカーは、前記Cys残基に任意に結合されている。例示的な本発明の誘導体は、誘導体1~10として本明細書で特定されているものである。
【0016】
第2の態様では、第1の態様の誘導体を調製するためのプロセスであって、脂肪酸をIL-22タンパク質に共有結合させることを含む、プロセスが提供される。
【0017】
第3の態様では、第1の態様の誘導体、及び薬学的に許容可能なビヒクルを含む薬学的組成物が提供される。
【0018】
第4の態様では、療法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の薬学的組成物が提供される。
【0019】
第5の態様では、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓または皮膚の疾患、障害または病態を処置する方法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の薬学的組成物が提供される。
【0020】
代謝疾患、障害または病態は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、脂質異常症、高血糖または高インスリン血症であり得る。
【0021】
肝臓疾患、障害または病態は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、慢性肝不全急性増悪(ACLF)、急性肝臓傷害、アセトアミノフェン誘導性肝臓毒性、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変または手術もしくは移植によって引き起こされる病理学的状態であり得る。
【0022】
肺疾患、障害または病態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性窮迫症候群、化学的傷害、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症であり得る。
【0023】
腸疾患、障害または病態は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性結腸炎、クローン病、移植片対宿主病(GvHD)、化学的傷害、ウイルス感染症または細菌感染症であり得る。
【0024】
腎臓疾患、障害または病態は、急性腎臓疾患または慢性腎臓疾患であり得る。
【0025】
皮膚疾患、障害または病態は、創傷、炎症性疾患またはGvHDであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】Cys反応性単位を含むリンカーにそれぞれ接続された(A)C18二酸、(B)C16二酸、及び(C)C14二酸を示している。脂肪酸及びリンカーのこれらの組み合わせは、誘導体1~10として本明細書で特定される本発明の誘導体において用いられる。
【
図2】誘導体1として本明細書で特定される本発明の誘導体の構造を示している。
【
図3】誘導体6として本明細書で特定される本発明の誘導体の構造を示している。
【
図4】誘導体10として本明細書で特定される本発明の誘導体の構造を示している。
【
図5】糖尿病マウスモデルでの8日間の研究における血中グルコースに対するhIL-22及び骨格バリエーションのみを有する比較用IL-22バリアント(本明細書で比較物3として特定される)の毎日の投薬の効果を示している(平均±SEM)。
【
図6】糖尿病マウスモデルでの16日間の研究における(A)血中グルコース、及び(B)食物摂取に対する、IL-22-Fc融合体(具体的には、hIL-22にN末端で融合したヒトFc;以下「hFc-hIL-22」)と比較した本発明の誘導体(本明細書で誘導体1として特定される)の毎日の投薬の効果を示している(平均±SEM;*は対応のないt検定を使用してp<0.05を意味する)。
【
図7A】糖尿病マウスモデルでの16日間の研究における3つの異なる標的係合バイオマーカーに対する誘導体1及びhFc-hIL-22の毎日の投薬の効果を示している(平均±SEM;***は対応のないt検定を使用して(A)p<0.0002を意味する)。
【
図7B】糖尿病マウスモデルでの16日間の研究における3つの異なる標的係合バイオマーカーに対する誘導体1及びhFc-hIL-22の毎日の投薬の効果を示している(平均±SEM;***は対応のないt検定を使用して(B)p<0.0003を意味する)。
【
図7C】糖尿病マウスモデルでの16日間の研究における3つの異なる標的係合バイオマーカーに対する誘導体1及びhFc-hIL-22の毎日の投薬の効果を示している(平均±SEM;***は対応のないt検定を使用して(C)p<0.0026を意味する)。
【
図8】糖尿病マウスモデルでの13日間の研究における血中グルコースに対する、誘導体1及びhFc-hIL-22と比較した本発明の誘導体(本明細書で誘導体6として特定される)(3つの異なる用量)の毎日の投薬についての用量-反応曲線を示している(平均±SEM)。
【
図9A】2つの異なる肝臓酵素の血漿レベルによって明らかであるように、アセトアミノフェン(APAP)誘導性肝臓傷害マウスモデルにおける肝臓傷害の予防における誘導体1及び6の効果を示している。ダネット検定単一因子線形モデルを使用して、ビヒクル+APAPと比較して、*はp<0.05を意味し、**p<0.01を意味する。
【
図9B】2つの異なる肝臓酵素の血漿レベルによって明らかであるように、アセトアミノフェン(APAP)誘導性肝臓傷害マウスモデルにおける肝臓傷害の予防における誘導体1及び6の効果を示している。ダネット検定単一因子線形モデルを使用して、ビヒクル+APAPと比較して、*はp<0.05を意味し、**p<0.01を意味する。
【
図10A】APAP誘導性肝臓傷害マウスモデルにおける(A)アポトーシスの予防に対する誘導体1及び6の効果を示している。NSは非有意を意味する。
【
図10B】APAP誘導性肝臓傷害マウスモデルにおける(B)細胞増殖に対する誘導体1及び6の効果を示している。NSは非有意を意味する。
【
図11A】ブレオマイシン誘導性肺傷害ラットモデルにおける(A)肺炎症の予防及び/または減少におけるプレドニゾロンと比較した誘導体6の効果を示している。
【
図11B】ブレオマイシン誘導性肺傷害ラットモデルにおける(B)肺線維症の予防及び/または減少におけるプレドニゾロンと比較した誘導体6の効果を示している。
【
図11C】ブレオマイシン誘導性肺傷害ラットモデルにおける(C)肺線維症の予防及び/または減少におけるプレドニゾロンと比較した誘導体6の効果を示している。
【
図12】デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎マウスモデルにおける結腸炎の予防における誘導体6の効果を示している。****は、ビヒクル(DSSを含有する)と比較してp<0.0001を意味する。
【
図13】DSS誘導性大腸炎マウスモデルにおける粘膜上皮創傷の予防におけるhFc-hIL-22と比較した誘導体6の効果を示している。倍率4x、目盛り棒=500μm。
【
図14】標的係合の指標としての、DSS誘導性大腸炎マウスモデルにおける血漿再生膵島由来タンパク質3ガンマ(Reg3g)レベルを示している(Reg3gはIL-22の標的係合マーカーである)。
【
図15A】2つの異なる肝臓酵素の血清レベルによって明らかであるように、コンカナバリンA(ConA)誘導性肝臓傷害マウスモデルにおける肝臓傷害の予防における誘導体1の効果を示している。
【
図15B】2つの異なる肝臓酵素の血清レベルによって明らかであるように、コンカナバリンA(ConA)誘導性肝臓傷害マウスモデルにおける肝臓傷害の予防における誘導体1の効果を示している。
【
図16】食餌誘導性肥満マウスにおける体重に対する、hFc-hIL-22及び既知の肪酸コンジュゲーションGLP-1誘導体であるセマグルチドと比較した誘導体6の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、ギリシャ文字は、それらの書き言葉の名称ではなくそれらの記号によって表される。例えば、α=アルファ、ε=イプシロン、γ=ガンマ及びμ=ミュー。アミノ酸残基は、それらの完全名称、3文字コードまたは1文字コードによって特定され得、それらのすべては完全に同等である。
【0028】
用語「IL-22の誘導体」は、本明細書で使用される場合、共有結合した脂肪酸を有するIL-22タンパク質を指す。その用語は、脂肪酸がIL-22タンパク質に直接的に共有結合した誘導体及び共有結合がリンカーによるものであるものの両方を包含する。
【0029】
脂肪酸の共有結合は、ペプチド及びタンパク質の半減期延長のための認められた技術であり、ペプチドまたはタンパク質から脂肪酸を包む方法である。それは、1型及び2型糖尿病の上市された製品、例えば、インスリンであるLevemir(登録商標)(デテミル)及びTresiba(登録商標)(デグルデク)、ならびにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)誘導体Victoza(登録商標)(リラグルチド)及びOzempic(登録商標)(セマグルチド)から知られている。
【0030】
脂肪酸結合により、アルブミンへの結合が可能となり、それにより腎臓排泄を防止し、タンパク質分解に対するある程度の立体的保護を提供する。有利には、それは、Fc融合またはPEG化と比較してIL-22に対する最小の改変を提供する。この点に関して、Fc融合及びPEG化は、腎臓クリアランスの閾値を超えてIL-22のサイズの増加を目標とするが、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含む誘導体は、IL-22タンパク質のものに類似する小さなサイズを保持する。よって、脂肪酸結合は最小の改変であるため、生じる誘導体は、分布、拡散速度及び受容体係合(結合、活性化及びトラフィッキング)を含むネイティブ様特性を維持し、免疫原性リスクを最小化すると考えられる。
【0031】
上記のように、脂肪酸結合は、糖尿病のためのインスリン及びGLP-1誘導体で治療的有効性を証明してきた。しかしながら、IL-22は、そのサイズ、配列及び生物学的特性の観点から極めて異なるタンパク質である。そのため、脂肪酸がIL-22に、治療効果を維持しながら共有結合することができたことは発明者にとって直観で分かるものではないことであった。IL-22に対するそのような最小の改変は、極めて長い循環半減期と組み合わされた高い効力(hIL-22と近い)をもたらすことができたことが特に驚くべきことであった。
【0032】
そのため、第1の態様では、本発明は、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含むIL-22の誘導体に関する。脂肪酸は、直接的にまたはリンカーを介してIL-22タンパク質に共有結合され得、それ自体は様々なサブユニットから考案され得る。用語「IL-22タンパク質」は、本明細書で使用される場合、ネイティブIL-22タンパク質、例えば、hIL-22、またはそのバリアントを意味し得る。「バリアント」は、本明細書でさらに定義されるように、ネイティブタンパク質のものと類似するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。
【0033】
本来、ヒトIL-22タンパク質は、分泌のための33アミノ酸のシグナルペプチドと共に合成される。成熟ヒトIL-22タンパク質(すなわち、hIL-22)は、長さが146アミノ酸であり、マウスIL-22と80.8%の配列同一性を有する(後者は長さが147アミノ酸である)。hIL-22のアミノ酸配列は、配列番号1として本明細書で特定される。他のIL-10ファミリーメンバーのように、IL-22構造は、6つのα-ヘリックス(ヘリックスA~Fと称される)を含有する。
【0034】
よって、本発明の誘導体は、hIL-22のネイティブアミノ酸配列を有し得る。代替的には、それらは、ネイティブ配列内の1つ以上のアミノ酸配列バリエーションを有し得る。それらは、追加的または代替的に、ネイティブ配列に対して(すなわち、外側に)1つ以上のアミノ酸配列バリエーションを含み得る。よって、一実施形態では、誘導体は、hIL-22またはそのバリアントに共有結合した脂肪酸を含む。
【0035】
「内」、「に対して」、「に対応する」及び「と同等」などの表現は、ネイティブタンパク質、例えば、hIL-22の配列に対する参照によってIL-22タンパク質における脂肪酸の変化及び/または共有結合の部位を特性化するために本明細書で使用される。配列番号1において、hIL-22(アラニン(Ala))の最初のアミノ酸残基は、位置1として割り当てられる。
【0036】
よって、hIL-22の配列内のバリエーションは、配列番号1における残基番号1~146のいずれかに対するバリエーションである。例えば、hIL-22における残基10におけるネイティブAspに対するGlu置換は、本明細書では「D10E」として表される。誘導体がまた、位置10で共有結合した脂肪酸を有する場合、それは、本明細書では残基「10E」における結合と称される。
【0037】
しかしながら、hIL-22の配列に対するバリエーションは、配列番号1における残基番号1~146に対して外部のバリエーションである。例えば、本明細書で定義される誘導体2は、長さが15アミノ酸のN末端ペプチドを含む。N末端ペプチドにおける残基は、hIL-22における残基1に結合した残基から開始して負に付番される。すなわち、hIL-22における残基1に結合したN末端ペプチドにおける1番目の残基は、「-1」と表される。よって、誘導体2は、位置-1から開始するN末端における7番目の残基で共有結合した脂肪酸を有し、これはCysであるため、誘導体2についての共有結合部位は、本明細書で「-7C」と称される。しかしながら、当然ながら、誘導体2の配列表において使用される付番は、WIPO規格ST.25に従って1から開始する;このように、誘導体2の配列表における位置1は、実際には、本明細書で称される残基-7である。
【0038】
2、3、4、5またはそれ以上のバリエーションが、本発明の誘導体を形成するためにネイティブ配列内で生成され得る。この点に関して、例えば、10、15、20、25、50、75、100を超えるまたはさらに125を超えるバリエーションが生成され得る。ネイティブ配列における残基1~146のいずれかが変更され得る。バリエーションのための例示的な残基は、hIL-22における残基1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、29、30、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、45、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、58、59、61、62、63、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79、82、83、84、86、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、126、127、128、129、130、132、133、134、135、137、138、139、141、143、144、145及び/または146である。残基1、21、35、64、113及び/または114におけるバリエーションが特に有利である。
【0039】
ネイティブ配列内のバリエーションは、典型的にはアミノ酸置換である。用語「置換」は、本明細書で使用される場合、ネイティブタンパク質におけるアミノ酸を別のもので置き換えることを意味し得る。それらは、保存的または非保存的置換であり得る。例示的な置換は、A1C、A1G、A1H、P2C、P2H、I3C、I3H、I3V、S4H、S4N、S5H、S5T、H6C、H6R、C7G、R8G、R8K、L9S、D10E、D10S、K11C、K11G、K11V、S12C、N13C、N13G、F14S、Q15C、Q15E、Q16V、P17L、Y18F、I19Q、T20V、N21C、N21D、N21Q、R22S、F24H、M25E、M25L、L26S、A27L、E29P、A30Q、L32C、L32R、A33C、A33N、D34F、N35C、N35D、N35H、N35Q、N36Q、T37C、T37I、D38L、V39Q、R40W、L41Q、I42P、E44R、K45A、F47T、H48G、H48R、G49N、V50S、S51C、M52A、M52C、M52L、M52V、S53C、S53K、S53Y、E54D、E54F、R55Q、R55V、C56Q、L58K、M59I、Q61E、V62D、L63C、N64C、N64D、N64Q、N64W、F65G、L67Q、E69D、E69L、V70S、L71C、F72D、F72L、P73C、P73L、Q74T、R77I、F78Q、Q79E、M82Y、Q83G、E84R、V86A、F88N、A90P、A90T、R91C、R91K、R91Y、L92R、S93Y、N94C、N94Q、R95K、R95Q、L96E、S97K、T98C、T98N、T98S、C99V、H100S、E102S、G103D、D104Y、D105Y、L106E、L106Q、H107L、H107N、I108L、Q109Y、R110C、R110K、N111K、V112E、Q113C、Q113R、K114C、K114R、L115V、K116Y、D117E、T118G、V119A、K120H、K121R、L122A、G123V、G126Y、E127C、I128V、K129V、G132Y、E133Q、L134P、D135M、L137D、F138R、M139L、M139R、L141Q、N143S、A144E、C145E、I146R及び/またはI146Vである。有利には、置換は、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択され得る。驚くべきことに、本発明において用いられる置換は、IL-22活性に悪影響を及ぼさない。
【0040】
置換の特定の組み合わせには、(i)A1G、N21D、N35D及びN64D;(ii)A1G、I3V、S4N、S5T、H6R、R8K、D10E、K11V、T20V、H48R、M52A、S53K、E54D、R55Q、E69D、F72L、A90T、R91K、R95Q、T98S、E102S、L106Q、H107N、R110K、Q113R、K114R、D117E及びI146V;(iii)A1G、I3V、S4N、S5T、H6R、R8K、D10E、K11V、T20V、H48R、M52A、S53K、E54D、R55Q、E69D、F72L、A90T、R91K、R95Q、T98S、E102S、L106Q、H107N、R110K、Q113R、K114R、D117E及びI146V;(iv)A1G、N35Q及びN64Q;(v)A1G及びN64C;(vi)A1G及びQ113C;(vii)A1G及びK114C;(viii)A1G及びM25L;(ix)A1G及びM52L;(x)A1G及びM139L;(xi)A1G及びN36Q;(xii)A1G及びD117E;(xiii)A1G及びN21Q;(xiv)A1G及びN35Q;(xv)A1G及びN64Q;(xvi)A1G、N21Q及びN35Q;(xvii)A1G、N21Q及びN64Q;(xviii)A1G、N21Q、N35Q及びN64Q;(xix)A1G及びK11C;(xx)A1G及びN13C;(xxi)N35Q及びN64Q;(xxii)A1C、N35Q及びN64Q;(xxiii)H6C、N35Q及びN64Q;(xxiv)I3C、N35Q及びN64Q;(xxv)P2C、N35Q及びN64Q;(xxvi)L32C、N35Q及びN64Q;(xxvii)N35Q、M52C及びN64Q;(xxviii)N13C、N35Q及びN64Q;(xxix)N21C、N35Q及びN64Q;(xxx)N35Q、N64Q及びN94C;(xxxi)N35Q、N64Q及びP73C;(xxxii)N35Q、N64Q及びQ113C;(xxxiii)N35Q、N64Q及びR91C;(xxxiv)N35Q、N64Q及びR110C;(xxxv)S12C、N35Q及びN64Q;(xxxvi)N35Q、S51C及びN64Q;(xxxvii)N35Q、S53C及びN64Q;(xxxviii)N35Q、T37C及びN64Q;(xxxix)N35Q、N64Q及びT98C;(xxxx)Q15C、N35Q及びN64Q;(xxxxi)N35C及びN64Q;(xxxxii)H6C、N35Q及びN64Q;(xxxxiii)A33C、N35Q及びN64Q;及び(xxxxiv)A1H、P2H、I3H、S4H、S5H、C7G、R8G、L9S、D10S、K11G、N13G、F14S、Q15E、Q16V、P17L、18F、Y19Q、N21Q、R22S、F24H、M25E、L26S、A27L、E29P、A30Q、L32R、A33N、D34F、N35H、T37I、D38L、V39Q、R40W、L41Q、I42P、E44R、K45A、F47T、H48G、G49N、V50S、M52V、S53Y、E54F、R55V、C56Q、L58K、M59I、Q61E、V62D、L63C、N64W、F65G、L67Q、E69L、V70S、L71C、F72D、P73L、Q74T、R77I、F78Q、Q79E、M82Y、Q83G、E84R、V86A、F88N、A90P、R91Y、L92R、S93Y、N94Q、R95K、L96E、S97K、T98N、C99V、H100S、G103D、D104Y、D105Y、L106E、H107L、I108L、Q109Y、R111K、V112E、L115V、K116Y、D117E、T118G、V119A、K120H、K121R、L122A、G123V、G126Y、E127C、I128V、K129V、G132Y、E133Q、L134P、D135M、L137D、F138R、M139R、L141Q、N143S、A144E、C145E及びI146Rが含まれる。置換のあらゆる組み合わせが想定され、本発明の一部を形成する。
【0041】
第1の態様の誘導体は典型的には、任意に上で特定された位置、例えば、位置1、2、3、6、11、12、13、15、21、32、33、35、37、51、52、53、63、64、71、73、91、94、98、110、113、114及び/または127のいずれかにおいて、ネイティブ残基に対してCysが置換されたアミノ酸置換を含み得る。有利には、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、hIL-22の位置1でCys残基を含む。位置35及び64における2つのグリコシル化部位における置換と組み合わされたA1C置換は、効力または半減期に不利に影響を及ぼすことなくより速い取り込みにつながるので特に有利である(実施例1及び2における誘導体6及び10参照)。
【0042】
代替的に、または追加的に、ネイティブ配列内のバリエーションは、アミノ酸挿入であり得る。最大で5、10、15、20、25、30、35、40、45個またはさらに最大で50個のアミノ酸が、ネイティブ配列内に挿入され得る。トリマー、ペンタマー、セプタマー、オクタマー、ノナマー及び44-merがこの点に関して特に有利である。例示的な配列が表1に示されている。挿入は、ネイティブ配列における任意の位置でなされ得るが、ヘリックスAにおけるもの(例えば、残基30)、ループCDにおけるもの(例えば、残基75)、ヘリックスDにおけるもの(例えば、残基85)及び/またはヘリックスFにおけるもの(例えば、残基124)が好ましい。
【0043】
【0044】
hIL-22のアミノ酸配列に対する配列バリエーションは、存在する場合、典型的には、伸長、例えば、N末端におけるペプチドの付加を含む。ペプチドは、最大で5、10、15、20、25、30、35、40、45個またはさらに最大で50個のアミノ酸からなり得る。モノマー、トリマー、オクタマー、13-mer、15-mer、16-mer、21-mer、28-merがこの点に関して特に有利である。例示的な配列が表2に示されている。好適には、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、N末端G-P-Gを含む。特に好ましい例では、第1の態様の誘導体は、hIL-22(配列番号1)の位置1におけるCys残基及びN末端G-P-Gの両方を含む。これは、極めて良好な半減期及び効力を有する誘導体を生成することが判明した(実施例1及び2における誘導体1、3及び5参照)。
【0045】
【0046】
hIL-22のアミノ酸配列に対する配列バリエーションは、存在する場合、C末端におけるペプチドの付加を含み得る。ペプチドは、最大で5、10、15、20、25、30、35、40、45個またはさらに最大で50個のアミノ酸からなり得る。任意にアミノ酸配列G-S-G-S-G-S-C(配列番号15)を有するセプタマーがこの点に関して特に有利である。
【0047】
本発明の誘導体は、本明細書に記載されるネイティブまたはバリアントhIL-22アミノ酸配列に加えてN末端及びC末端ペプチドの両方を含み得る。本明細書に記載のN末端ペプチド及びC末端ペプチドの任意の組み合わせが想定され、本発明に明示的に含まれる。
【0048】
本発明は、hIL-22またはそのバリアントに共有結合した脂肪酸を含む、IL-22の任意の誘導体まで及ぶことが理解される。「バリアント」は、hIL-22と少なくとも10%の配列同一性を有するタンパク質であり得る。一実施形態では、バリアントは、hIL-22と少なくとも20%、またはさらに少なくとも30%の配列同一性を有する。バリアントは、hIL-22のアミノ酸配列と少なくとも40%の配列同一性を有する配列を意味し得る、hIL-22の「実質的アミノ酸配列」を有し得る。したがって、一実施形態では、第1の態様の誘導体は、hIL-22と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。実験セクションで開示されている本発明の特定の誘導体に組み込まれる例示的なIL-22タンパク質バリアントが配列番号16~21に示されている。
【0049】
当業者は、2つのアミノ酸配列間の同一率を計算する仕方を知っている。2つの配列のアライメントがまず準備され、続いて配列同一性値が計算されなければならない。2つの配列についての同一率は、(i)配列をアライメントするために使用される方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterm(異なるプログラムで実行される)、または3D比較からの構造的アライメント;及び(ii)アライメント方法によって使用されるパラメータ、例えば、ローカル対グローバルアライメント、使用されるペアスコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)及びギャップ-ペナルティ、例えば、機能形態及び定数に応じて異なる値をとり得る。
【0050】
アライメントを行った後、2つの配列間の同一率を計算する多くの異なる方法が存在する。例えば、同一の数を(i)最短配列の長さ;(ii)アライメントの長さ;(iii)配列の平均長さ;(iv)非ギャップ位置の数;または(iv)オーバーハングを除く等価位置の数で除算し得る。さらに、同一率はまた、長さに強く依存することが理解される。そのため、配列の対がより短いほど、配列同一性は高くなり、偶然に生じることが予想され得る。
【0051】
よって、アミノ酸配列の正確なアライメントは複雑なプロセスであることが理解される。評判の良い多重アライメントプログラムClustalW[48,49]は、本発明に従ってタンパク質の多重アライメントを生成するための好ましい方法である。ClustalWのための好適なパラメータは次のとおりであり得る:タンパク質アライメントの場合:ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、及びマトリックス=ゴネット(Gonnet)。DNA及びタンパク質アライメントの場合:ENDGAP=-1、及びGAPDIST=4。当業者は、最適な配列アライメントのためにこれらの及び他のパラメータを変更する必要があり得ることを知っている。
【0052】
好ましくは、次いで2つのアミノ酸配列間の同一率の計算が、(N/T)*100(Nは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含むがオーバーハングを除く比較された位置の総数である)としてそのようなアライメントから計算され得る。よって、2つの配列間の同一率を計算するための最も好ましい方法は、(i)好適なパラメータのセット、例えば、上記で示されるものを使用してClustalWプログラムを使用して配列アライメントを作成すること;及び(ii)N及びTの値を次の式:配列同一性=(N/T)*100に挿入することを含む。
【0053】
類似配列を特定するための代替的方法が当業者に知られている。
【0054】
好適には、第1の態様の誘導体は、200以下のアミノ酸を含む。例えば、誘導体は、190未満、180未満、170未満、160未満またはさらに150未満のアミノ酸を含む。好適には、誘導体は、少なくとも146アミノ酸を含むが、これはhIL-22におけるアミノ酸の数である。それは、少なくとも150アミノ酸、少なくとも160アミノ酸、少なくとも170アミノ酸またはさらに少なくとも180アミノ酸を含み得る。本発明の誘導体は、上記範囲内の任意の長さのタンパクを含み得るが、それらは典型的には、長さが146~180アミノ酸である。
【0055】
本発明の誘導体は、ネイティブまたはバリアントアミノ酸配列を有するかどうかにかかわらず、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含む。脂肪酸は典型的には、リンカーによってIL-22タンパク質に共有結合する。脂肪酸及びリンカーは好適には、アミド結合を介して互いに接続され、リンカーは、IL-22タンパク質に共有結合する。よって、脂肪酸及びリンカーは、IL-22タンパク質上に側鎖として存在し得る。共有結合した脂肪酸は、IL-22活性に悪影響を及ぼさないことは発明者にとって驚くべきことであった。脂肪酸結合がさらなる利点、例えば、半減期の延長に関連することは特に驚くべきことであった。
【0056】
脂肪酸は、任意の好適な脂肪酸であり得る。特に、脂肪酸は、式I:
HOOC-(CH2)x-CO-*,
(式中、xは、10~18、任意に12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、IL-22タンパク質またはリンカーの結合点を示す)のものであり得る。それは脂肪二酸、例えば、C12、C14、C16、C18またはC20二酸であり得る。有利には、脂肪酸はC16またはC18二酸、最も有利にはそれはC18二酸である。
【0057】
例えば、式Iにおける-(CH2)x-は、xが10である直鎖アルキレンであり得る。この脂肪酸は好都合には、C12二酸、すなわち、12個の炭素原子を有する脂肪ジ-カルボン酸と称され得る。代替的には、式Iにおける-(CH2)x-は、xが12である直鎖アルキレンであり得る。この脂肪酸は好都合には、C14二酸、すなわち、14個の炭素原子を有する脂肪ジ-カルボン酸と称され得る。同様の様式において、式Iにおける-(CH2)x-は、xが14(C16二酸)、16(C18二酸)または18(C20二酸)である直鎖アルキレンであり得る。好適には、第1の態様の誘導体は、C14、C16、C18またはC20二酸;より好適には、C16またはC18二酸、さらにより好適にはC18二酸を含む。
【0058】
二酸は、アルブミンと非共有結合性会合を形成することが可能であり、それにより血流における誘導体の循環を促進し得る。より短い二酸(例えば、C16二酸)は、より低いアルブミン親和性を有し、よって、より長い二酸(例えば、C18二酸)よりも短い半減期を有する。しかしながら、それらは依然として、1日を超えるヒトにおける予測される半減期を有する長期に作用する誘導体である。
【0059】
脂肪酸結合はまた、それ自体で、タンパク質分解に対してIL-22タンパク質を安定化する。得られる半減期は典型的には、IL-22-Fc融合体のものと類似する(すなわち、hIL-22と比較して大幅に改善される)。
【0060】
第1の態様の誘導体は、脂肪酸及びIL-22タンパク質の特定の組み合わせを含み得る。例えば、C14、C16、C18またはC20二酸は、hIL-22の位置1におけるCys残基及び/またはN末端G-P-Gを含むIL-22タンパク質に結合され得る。一例では、第1の態様の誘導体はC18二酸を含み、IL-22タンパク質は、hIL-22の位置1におけるCys残基及びN末端G-P-Gの両方を含む。
【0061】
上記のように、脂肪酸は好適には、IL-22タンパク質に結合されるリンカーに接続される。リンカーは、1つ以上のアミノ酸、例えば、1つ以上のGlu及び/またはLys残基を含む、いくつかのリンカー要素を含み得る。リンカーは、オキシエチレングリシン単位または複数の連結されたオキシエチレングリシン単位、任意にそのような2~5単位、有利には2単位を含み得る。1つ以上のOEG残基、C2DA及び/またはAc基が代替的にまたは追加的に含まれ得る。リンカーは、Cys反応性単位を含み得る。「Cys反応性単位」は、本明細書で使用される場合、Cysの硫黄原子と反応して炭素-硫黄共有結合を生成することが可能な機能性単位を意味し得る。Cys反応性単位は、いくつかの形態のいずれかを有し得るが、好適には、脱離基に結合した炭素原子を含み、その脱離基は、炭素-硫黄結合の形成中にCysの硫黄原子と置き換わる。脱離基は、ハロゲン、任意に臭素原子であり得る。この臭化物脱離基は、アクタミド官能基に対してアルファであり得;有利にはそれは、ブロモ-アセトアミド官能基である。脱離基は代替的に、メシレートもしくはトシレート形態の官能化ヒドロキシル基、または非官能化ヒドロキシル基であり得る。さらに、脱離基は、マレイミドまたは他の官能基であり得る。例示的なリンカーには、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAc及びγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcが含まれるが、任意の好適なリンカーが用いられ得る。
【0062】
脂肪酸、またはリンカーは、IL-22タンパク質における任意のアミノ酸残基に結合され得る。この点に関する例示は、hIL-22アミノ酸配列におけるまたはそれに対する残基-7、-5、1、6、33、113、114及び153である。ネイティブ残基は典型的には、脂肪酸またはリンカーの結合を可能にするためにCysまたはLysで置換される。代替的には脂肪酸またはリンカーは、ネイティブCysまたはLys残基で結合され得る。好適には、脂肪酸またはリンカーは、hIL-22の位置1、6、33、113または114で置換されたCys残基、またはhIL-22に対する位置-5、-7または153におけるCys残基に結合され得る。特に、脂肪酸またはリンカーは、hIL-22の位置1で置換されたCys残基に結合され得る。
【0063】
IL-22タンパク質への脂肪酸またはリンカーの結合は、共有結合である。例えば、Cys反応性脂肪酸またはリンカーは、IL-22タンパク質におけるCys残基に脂肪酸またはリンカーを結合させるために使用され得る。脂肪酸またはリンカーは、チオエーテル結合を介してCys残基の硫黄原子に共有結合し得る。例えば、Lys反応性脂肪酸またはリンカーは、IL-22タンパク質におけるLys残基に脂肪酸またはリンカーを結合させるために使用され得る。脂肪酸またはリンカーは代替的に、IL-22タンパク質のN末端における遊離アミン(-NH2)基に共有結合され得る(位置1におけるアミノ酸にかかわらない)。結合は、準化学量論量の好適なN反応性種を含有する脂肪酸またはリンカーを用いるが、Cys結合と同じように進行し得る。脂肪酸またはリンカーは、アルデヒドの形態(N反応性種)で提供され得、従来から知られている還元的アミノ化を用いて遊離アミンに共有結合され得る。
【0064】
よって、第1の態様の誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって結合したC14、C16、C18またはC20二酸を含み、バリアントは、hIL-22の位置1でN末端G-P-G及びCys残基を好適に含み、リンカーは、Cys残基に任意に結合されている。
【0065】
第1の態様の例示的な誘導体は、配列番号16~21のいずれかに示されるIL-22タンパク質を含む。特に有利な誘導体は、表3に示されており、
図1~4に図示されており、本明細書に例示されている。
【0066】
【0067】
図1Aは、Cys反応性単位を含むリンカーに接続されたC18二酸を示している。これは、誘導体1、2及び6~9で使用された脂肪酸及びリンカー(側鎖)である。
図1Bは、Cys反応性単位を含むリンカーに接続されたC16二酸を示している。これは、誘導体3、4及び10で使用された脂肪酸及びリンカー(側鎖)である。
図1Cは、Cys反応性単位を含むリンカーに接続されたC14二酸を示している。これは、誘導体5で使用された脂肪酸及びリンカー(側鎖)である。
【0068】
誘導体1、6及び10がそれぞれ
図2~4に示されている。
【0069】
本発明の誘導体は異なる立体異性体で存在し得、本発明はこれらのすべてに関する。
【0070】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の誘導体を調製するためのプロセスであって、脂肪酸をIL-22タンパク質に共有結合させることを含む、プロセスが提供される。
【0071】
そのプロセスは、本明細書で記載または想定されるIL-22の異なる誘導体のいずれかを生成するために使用され得るが、それは、脂肪酸がバリアントIL-22タンパク質に共有結合される場合に特に有利である。よって、一実施形態では、第2の態様で用いられるIL-22タンパク質は、位置1、21、35、64、113及び/または114で任意に置換された、hIL-22の置換形態である。例示的な置換には、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及び/またはK114Rが含まれる。好ましくは、IL-22タンパク質は、位置1でCys残基で置換される。
【0072】
脂肪酸は、組換え手段を含む、当該技術分野で知られている任意の手段によって得られ得る。好適な脂肪酸は、市販されており、または標準的な化学的合成を使用して利用可能な出発物質から誘導される。
【0073】
IL-22タンパク質は、組換え手段を含む、当該技術分野で知られている任意の手段によって得られ得る。組換えhIL-22の生成は、先行記載されており、当該技術分野でよく知られている。所望のバリアントIL-22タンパク質は、類似する手法で生成され得る。その分野における熟練した調査者は、所望のバリアントIL-22タンパク質をコードする好適な核酸配列を容易に特定することができるであろう。よって、当業者は、当該技術分野における既存の知識に基づいて、本発明のこの部分を容易に実施することができるであろう。好適には、IL-22タンパク質は、標準的な技術を使用して、哺乳動物システムにおいて、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において生成される。ポリヒスチジンタグ(His-tag)は、組換えタンパク質のアフィニティー精製を補助するために用いられ得る。
【0074】
この点に関して、本発明において使用されるIL-22タンパク質は、発現後に切断可能なHis-tag-ニッケルカラムに対する親和性によって精製され得る10個未満、好ましくは6個のヒスチジン残基の-N-またはC末端付加を使用して調製され得る。His-tagは、既知のプロテアーゼによって消化されて遊離IL-22タンパク質をもたらし得るリンカーを介してタンパク質のNまたはC末端に連結される。切断可能なHis-tagは、アミノ酸配列HHHHHHGGSSGSGSEVLFQ(配列番号25)を有し得、プロテアーゼで切断可能なリンカーは、タバコエッチウイルス(TEV)リンカー(ネイティブ切断部位についてのコンセンサス配列がENLYFQ\S(配列番号26)である)(「\」は切断されるペプチド結合を示す)またはEVLFQコンセンサス切断部位を有するヒトライノウイルス-14 3C(HRV14-3C)プロテアーゼ切断性リンカーであり得る。切断は、2.5μgのタンパク質及び10mMの2-メルカプトエタノールと共におよそ10μgのプロテアーゼを室温で4時間インキュベーションすることによって達成され得る。
【0075】
本発明をさらに説明するために、タンパク質調製のための代表的プロセスが以下のとおり提供される。プロセスは、IL-22タンパク質の所望のアミノ酸配列をコードするプラスミドDNAを調製することを含む。このプラスミドは、細胞株、例えばCHO-K1に一過性にトランスフェクションされ得、その細胞株は、成長が既知のエンハンサーの添加によって増大する前に関連する培地において成長させられる。次いで分泌されたIL-22タンパク質は、遠心分離及び滅菌濾過の既知の方法を介して採取され得、それからタンパク質がニッケルカラムで精製される。濃縮及び緩衝液交換の後、His-tagがHRV14-3Cプロテアーゼを使用して除去されてから、脂肪酸でのアルキル化(以下にさらに記載される)ならびに最終精製及び緩衝液交換がなされる。SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィーまたは脱グリコシル化を伴うまたは伴わないタンデム質量分析を伴う液体クロマトグラフィー(LC-MS-MS)を使用する最終生成物の分析が、最終生成物の品質を確保するために使用され得る。
【0076】
脂肪酸は、第1の態様について記載されるように直接的にまたはリンカーを使用してIL-22タンパク質に共有結合され得る。リンカーは、当該技術分野で知られている任意の手段によって得られ得る。脂肪酸及びリンカー(用いられる場合)を調製するための代表的な方法は以下のとおりである(誘導体10で使用されたC16二酸によって例示されるが、任意の誘導体が類似の方法を使用して作製され得る)。
【0077】
ジクロロメタン(500ml)中のN-(ベンゾイルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(100g、401mmol)の溶液をジクロロメタン(750ml)中のエチレンジアミン(189ml、2.81mol)の溶液に添加する。30分後、懸濁液を濾過し、洗浄し、真空中で濃縮する。残渣をトルエン(750ml)で希釈し、洗浄し、ジクロロメタン(4×200ml)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、ヘキサン(200ml)で希釈する。エーテル(100ml、400mmol)中の塩酸の4M溶液を溶液に添加し、得られた懸濁液を真空中で濃縮し、ヘキサン(1 l)で希釈する。沈殿した固体を濾過し、ヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させ、(2-アミノエチル)カルバミン酸ベンジルエステル塩酸塩を白色の粉末として得る。
【0078】
2-クロロトリチル樹脂100-200に{2-[2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-エトキシ]-エトキシ}-酢酸(Fmoc-Ado-OH、17.5g、45.4mmol)をロードする。Fmoc基を除去し、N,Nジメチルホルムアミド(140ml)中の0-6-クロロ-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU、24.2g、68.1mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(21.4ml、123mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を1時間振盪する。樹脂は濾過され、洗浄される。Fmoc基を前述のように20%ピペリジンでの処置によって除去する。樹脂を前述のように洗浄する。
【0079】
N,Nジメチルホルムアミド(140ml)中の(S)-2-(フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-ペンタン二酸1-tert-ブチルエステル(Fmoc-Glu-OtBu、29.0g、68.1mmol)、TCTU(24.2g、68.1mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(21.4ml、123mmol)の溶液を樹脂に添加し、混合物を1時間振盪する。樹脂を濾過し、前述のように洗浄する。Fmoc基を前述のように20%ピペリジンでの処置によって除去する。樹脂を前述のように洗浄する。
【0080】
N,N-ジメチルホルムアミド/ジクロロメタン混合物(4:1、200ml)中の16-tert-ブトキシ)-16-オキソヘキサデカン酸(23.3g、68.1mmol)、TCTU(24.2g、68.1mmol)及びN,Nジイソプロピルエチルアミン(21.4ml、123mmol)の溶液を樹脂に添加する。樹脂を1時間振盪し、濾過し、N,N-ジメチルホルムアミド(3×250ml)、ジクロロメタン(2×250ml)、メタノール(2×250ml)及びジクロロメタン(6×250ml)で洗浄する。生成物を、18時間の2,2,2-トリフルオロエタノール(250ml)での処置によって樹脂から切断する。樹脂は、濾過し、ジクロロメタン(2×250ml)、2-プロパノール/ジクロロメタン混合物(1:1、2×250ml)、2-プロパノール(250ml)及びジクロロメタン(3×250ml)で洗浄する。
【0081】
溶液を組み合わせ、溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製する。純粋な(S)-22-(tert-ブトキシカルボニル)-41,41-ジメチル-10,19,24,39-テトラオキソ-3,6,12,15,40-ペンタオキサ-9,18,23-トリアザドテトラコンタン酸を真空中で乾燥させ、淡黄色の粘度が高い黄色の油として得る。
【0082】
その後、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、11.4g、30.1mmol)及びトリエチルアミン(8.77ml、62.9mmol)を、乾燥ジクロロメタン(110ml)中の(S)-22-(tert-ブトキシカルボニル)-41,41-ジメチル-10,19,24,39-テトラオキソ-3,6,12,15,40-ペンタオキサ-9,18,23-トリアゾドテトラコンタン酸(22.4g、27.4mmol)の溶液に添加する。トリエチルアミン(72ml、41.0mmol)を乾燥ジクロロメタン(165ml)中の(2-アミノ-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル塩酸塩(6.94g、30.1mmol)の懸濁液に添加し、得られた混合物を上記溶液に添加する。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで乾燥するまで蒸発させる。残渣を再溶解し、洗浄する;無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、0.040~0.060mm;溶離剤:ジクロロメタン/メタノール95:5)で蒸発させて15-[(S)3-(2-{2-[(2-{2-[(2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-エチルカルバモイル)-メトキシ]-エトキシ}エチル-カルバモイル)メトキシ]エトキシ)-エチルカルバモイル)-1-tert-ブトキシカルボニルプロピルカルバモイル]-ペンタデカン酸tert-ブチルエステルを淡黄色の粘度の高い油として得る。
【0083】
パラジウム担持炭素(10%、1.27g、1.20mmol)をメタノール(350ml)中の上記化合物(23.8g、24.0mmol)の溶液に添加し、得られた混合物を標準圧で4時間水素化する。触媒を濾過し、濾液を乾燥するまで蒸発させる。残渣を、メタノールの残渣を除去するためにジクロロメタンから数回蒸発させ、真空中で乾燥させてtert-ブチル(S)-1-アミノ-25-tert-ブトキシカルボニル)-4,13,22,27-テトラオキソ-6,9,15,18-テトラオキサ-3,12,21,26-テトラアザドテトラコンタン-42-オエートを粘度の高い無色の油として生成する。
【0084】
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.98ml、28.6mmol)を乾燥ジクロロメタン(290ml)中の上記アミン(20.5g、23.8mmol)の溶液に-30℃でアルゴン下で添加する。臭化ブロモアセチル(2.48ml、28.6mmol)を滴下添加し、得られた溶液を-30℃でさらに3時間撹拌する。冷却浴を除去し、混合物を室温で1時間撹拌し、溶媒を真空中で除去する。残基を酢酸エチル(450ml)に再溶解し、クエン酸(300ml)の5%水溶液で洗浄する。相は1時間以内に分離される。有機層を一晩放置して分離して3つの層を得る。透明な水性層を除去し、残りの2つの相を臭化カリウムの飽和水溶液(100ml)と共に振盪する。有機層を一晩放置して分離し、水相を除去し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を真空中で除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー:ジクロロメタン/メタノール95:5)によって精製してtertブチル(S)-1-ブロモ-28-tert-ブトキシカルボニル)-2,7,16,25,30-ペンタオキソ-9,12,18,21-テトラオキサ-3,6,15,24,29-ペンタアザペンタ-テトラコンタン-45-オエートを無色の固体として得る。
【0085】
上記化合物(19.5g、19.8mmol)をトリフルオロ酢酸(120ml)に溶解し、得られた溶液を室温で1.5時間撹拌する。トリフルオロ酢酸を真空中で除去し、残基をジクロロメタン(6×200ml)から蒸発させる。ジエチルエーテル(200ml)を油性残渣に添加し、混合物を一晩撹拌して懸濁液を得る。固体生成物を濾過し、ジエチルエーテル及びヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させて所望の生成物15-{(S)-1-カルボキシ3-[2-(2-{[2-(2-{[2-(2-ブロモアセチルアミノ)エチルカルバモイル]メトキシ}-エトキシエチル-カルバモイル]メトキシ}エトキシル-エチルカルバモイル]プロピルカルバモイル}ペンタデカン酸を白色の粉末として得る。
【0086】
IL-22タンパク質への脂肪酸またはリンカーの共有結合は、当該技術分野で標準的な手順を使用して行われ得る。よって、リンカーは、用いられる場合、脂肪酸へのIL-22タンパク質の共有結合を可能とする。非限定的な例として、Cys反応性脂肪酸またはリンカーをIL-22タンパク質におけるCys残基の硫黄原子と反応させ、これによりチオエーテル結合を形成し得る。共有結合工程のための好適な条件が以下のとおり例示され得る:水中のトリスをトリス及びNaCl-緩衝液(1.35mg/ml)中のIL-22タンパク質(70mg)に添加して、pH8に調整する。水に溶解したビス(p-スルホナトフェニル)-フェニルホスフィン二水和物二カリウム(BSPP)塩(12mg)を添加し、4時間室温で穏やかに撹拌する。エタノール(0.5ml)中の15-{(S)-1-カルボキシ-3-[2-(2-{[2-(2-{[2-(2-ブロモアセチルアミノ)-エチルカルバモイル]エトキシ}エトキシ)エチルカルバモイル]メトキシ}エトキシ)エチルカルバモイル]プロピル-カルバモイル}ペンタデカン酸(19mg、0.022mmol)を添加し、混合物を一晩撹拌する。MiliQ水(150ml)を添加して伝導率を2.5mS/cmまで低下させる。次いで混合物を、結合緩衝液(20mMトリス、pH8.0)、溶出緩衝液(20mMトリス、500mMのNaCl、pH8.0)、フロー6ml及び60カラム体積で0~80%の溶出緩衝液の勾配を使用してMonoQ 10/100 GLカラムで陰イオン交換を使用して精製する。
【0087】
本発明の誘導体は、当該技術分野で知られている任意の好適な手順、例えば、クロマトグラフィー、電気泳動、溶解度差または抽出を使用して精製され得る。
【0088】
本明細書に記載されるように、発明者は、驚くべきことに、脂肪酸がIL-22タンパク質に共有結合することができた一方で、生物学的活性を維持したことを見出した。IL-22に対するそのような最小の改変は、極めて長い循環半減期と組み合わされた高い効力(hIL-22と近い)をもたらすことができたことが特に驚くべきことであった。この特定の特性の組み合わせが非常に所望であり得る。
【0089】
誘導体の効力は、ヒトIL-22受容体を発現する全細胞を用いたin vitroアッセイで決定され得る。例えば、ヒトIL-22受容体の反応は、IL-22R1、IL-10R2及びホスホ-STAT3(pSTAT3)反応性レポーター遺伝子を過剰発現するベビーハムスター腎臓(BHK)細胞を使用して測定され得る。代替的には、IL-22受容体を内因的に発現するHepG2細胞が使用され得る。受容体の活性化は、STAT3シグナル伝達経路の活性化につながり、これは、例えば、STAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼレポーター遺伝子を使用してまたはpSTAT3をアッセイすることによって測定され得る。そのようなアッセイの非限定的な例は実施例2に記載されている。in vivo効力は、当該技術分野で知られているように、動物モデルまたは臨床試験において決定され得る。
【0090】
最大半量有効濃度(EC50)値はしばしば、薬物の効力の指標として使用される。これは、最大効果の50%をもたらすのに必要とされる薬物の濃度を表すので、EC50値が低いほど効力が良好である。本発明の誘導体は好適には、1.5nM未満、1.25nM未満、1nM未満、0.75nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満またはさらに0.1nM未満の、細胞におけるIL-22受容体媒介STAT3活性化を使用して測定された効力(EC50値)を有する(例えば、実施例2において記載されているように決定される)。本発明の誘導体は好適には、15nM未満、12nM未満、10nM未満、7nM未満またはさらに5nM未満の、細胞におけるpSTAT3をアッセイすることによって測定される効力(EC50値)を有する(例えば、実施例2において記載されているように決定される)。
【0091】
有利には、IL-22の誘導体の効力は、IL-22-Fc融合体のものよりも高い場合がある。例えば、Genentechは、hIL-22と比較して、そのIL-22-Fc融合体であるUTTR1147Aについてin vitro効力の34分の1の減少を報告した(Stefanich et al.,Biochem Pharmacol,2018,152:224-235)。一方、hIL-22への脂肪酸の共有結合は、7分の1の効力減少しか引き起こさないことが示された(実施例における誘導体1参照)。IL-22-Fc融合体及び本発明の誘導体の両方は、hIL-22に対するそれらの改善された半減期及び少なくとも一部の状況における生物学的機能の観点から同等であり得るが、本発明の誘導体は、効力の最小限の喪失というさらなる利点を有し得る。
【0092】
誘導体の循環消失半減期(T1/2)は、マウス、ラットまたはミニブタなどの好適な動物モデルにおいて誘導体を皮下または静脈内に投与することによってin vivoで決定され得る。好適な方法は実施例1に記載されている。非限定的な例として、第1の態様の誘導体は、少なくとも1時間、少なくとも3時間、少なくとも5時間またはさらに少なくとも8時間の、マウスへの皮下または静脈内投与後の循環半減期を有する。誘導体は、少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間またはさらに少なくとも13時間の、ラットへの皮下または静脈内投与後の循環半減期を有し得る。誘導体は、少なくとも25時間、少なくとも40時間、少なくとも70時間またはさらに少なくとも100時間の、ミニブタへの皮下または静脈内投与後の循環半減期を有し得る(すべては、例えば、実施例1に記載されているように決定される)。
【0093】
本明細書で例示されているように、発明者はまた、本発明の誘導体がin vivoで急速に吸収されることを見出した。有利には、誘導体の吸収は、IL-22-Fc融合体のものよりも早く生じ得る。平均吸収時間は、取り込みを測定するための正確なパラメータであるが、なぜならそれは、用量及び薬物投与後の最大血漿濃度とは無関係だからである。それは、平均滞留時間、すなわち、吸収が完了した後に排泄前に身体において薬物が存在する時間に基づいて計算され得る。本発明の誘導体は好適には、100時間未満、90時間未満、80時間未満、70時間未満またはさらに60時間未満の平均吸収時間を有する(例えば、実施例1に記載されているように決定される)。
【0094】
本発明の誘導体はまた、良好な生物物理学的特性、例えば、高い物理的安定性及び/または溶解性を有し、これらは当該技術分野における標準的な方法を使用して測定され得る。
【0095】
そのため、本発明の第3の態様によれば、第1の態様の誘導体及び薬学的に許容可能なビヒクルを含む薬学的組成物が提供される。
【0096】
第3の態様の薬学的組成物は、本明細書で記載または想定されるIL-22の異なる誘導体のいずれかを含み得る。好適には、それは、誘導体1~10として本明細書で特定されるIL-22の誘導体のうちの1つを含む。
【0097】
第1の態様の誘導体、または第3の態様の薬学的組成物は好適には、hIL-22と比較して増加した循環消失半減期を示す。有利にはそれは、hIL-22と比較して少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%またはそれ以上増加した循環消失半減期を示す。
【0098】
第3の態様の薬学的組成物は、治療的有効量の第1の態様の誘導体を薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わせるによって調製され得る。様々な賦形剤を用いた薬学的活性成分の製剤化は、当該技術分野で知られている。
【0099】
第1の態様の誘導体の「治療的有効量」は、対象に投与された場合に、疾患、障害または病態を処置するまたは所望の効果をもたらすために必要とされる誘導体の量である任意の量である。
【0100】
例えば、使用される誘導体の治療的有効量は、約0.001mg~約1000mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであり得る。誘導体の量は、約0.1mg~約100mg、最も好ましくは約0.5mg~約50mgの量であることが好ましい。指針として、本明細書に記載の実施例3においてマウスで使用された誘導体の用量は0.5mg/kgであった(皮下投与された)。
【0101】
「薬学的に許容可能なビヒクル」は、本明細書で言及される場合、薬学的組成物の製剤化において有用であることが当業者に知られている任意の既知の化合物または既知の化合物の組み合わせである。
【0102】
一実施形態では、薬学的に許容可能なビヒクルは、固体であり得;任意に組成物は、再懸濁のための粉末の形態であり得る。固体の薬学的に許容可能なビヒクルは、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、色素、充填剤、流動促進剤、不活性結合剤、防腐剤または色素としても作用し得る1つ以上の物質を含み得る。ビヒクルはまた、カプセル化物質であり得る。粉末において、ビヒクルは、微細化された本発明による誘導体と混合された微細化された固体である。粉末は好ましくは、最大で99%の誘導体を含有する。好適な固体ビヒクルには、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース及びイオン交換樹脂が含まれる。
【0103】
別の実施形態では、薬学的ビヒクルはゲルであり得、組成物はクリームなどの形態であり得る。
【0104】
しかしながら、薬学的ビヒクルは液体であり得;任意に薬学的組成物は溶液の形態であり得る。液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル及び加圧組成物の調製において使用される。本発明による誘導体は、薬学的に許容可能な液体ビヒクル、例えば、水、有機溶媒、その両方の混合物または薬学的に許容可能な油または脂肪に溶解または懸濁され得る。液体ビヒクルは、他の好適な薬学的添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、防腐剤、甘味料、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定化剤または浸透圧調整剤を含有し得る。非経口投与のための液体ビヒクルの好適な例には、水(上記添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えば、グリコールを含む)及びそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分画されたココナッツ油及びラッカセイ油)が含まれる。非経口投与の場合、ビヒクルはまた、油性エステル、例えば、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルであり得る。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与のための滅菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物のための液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容可能なプロペラントであり得る。
【0105】
よって、本発明の薬学的組成物を調製するためのプロセスは、当該技術分野において標準的である通常の工程を含み得る。
【0106】
そのため、本発明の第4の態様によれば、療法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の薬学的組成物が提供される。対象を本発明の誘導体、またはそれを含む薬学的組成物で処置する方法も提供される。本明細書で記載または想定されるIL-22の異なる誘導体のいずれかは、本発明のこれらの態様に明示的に含まれる。
【0107】
「処置すること」及び「療法」などの用語には、本明細書で使用される場合、疾患、障害または病態の処置、改善または予防が明示的に含まれる。
【0108】
IL-22の誘導体またはそれを含む薬学的組成物は、処置される対象に直接的に投与され得る。誘導体または薬学的組成物は、吸入、注射、局所的または眼科的を含む任意の手段によって投与され得る。吸入によって投与される場合、それは鼻または口を介するものであり得る。好ましくは、誘導体または薬学的組成物は、注射によって、典型的には皮下または静脈内に投与される。そのため、誘導体は、それらのより小さなサイズ及びより高い効力のため、投与(例えば、注射、吸入、局所適用または眼送達)のそれらの柔軟性においてFc融合体を上回る明らかな利点を有する。処置される対象への本発明の誘導体の投与は、hIL-22と比較して増加した循環時間をもたらすこと、及びこれは疾患、障害または病態の処置を補助することが理解される。上記のとおり、「処置すること」にはまた、疾患、障害または病態を改善すること及び予防することが含まれる。
【0109】
滅菌溶液または懸濁液である液体薬学的組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内及び特に皮下または静脈内注射によって利用され得る。誘導体は、滅菌水、生理食塩水または他の適切な滅菌注射媒体を使用して投与時に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物として調製され得る。
【0110】
吸入に有用な形態には、滅菌溶液、エマルション及び懸濁液が含まれる。代替的には、誘導体は、Dischaler(登録商標)またはTurbohaler(登録商標)を介して微粉末またはエアロゾルの形態で投与され得る。鼻吸入剤は好適には、微粉末またはエアロゾル鼻スプレーまたは改変されたDischaler(登録商標)もしくはTurbohaler(登録商標)の形態であり得る。
【0111】
局所製剤には、溶液、クリーム、フォーム、ゲル、ローション、軟膏、ペースト、チンキ剤及び粉末が含まれる。それらは経皮であり得、すなわち、皮膚に直接的に適用され、または粘膜に適用され得る。
【0112】
眼投与のための製剤は典型的には、局所適用のための溶液、懸濁液及び軟膏、例えば、点眼の形態である。代替的には滅菌溶液または懸濁液は、眼内注射によって利用され得る。誘導体は、滅菌水、生理食塩水または他の適切な滅菌注射媒体を使用して投与時に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物として調製され得る。製剤は、結膜下、硝子体内、球後または前房内注射のためのものであり得る。
【0113】
本発明のための誘導体または薬学的組成物は、それを必要とする任意の対象に投与され得る。「対象」は、本明細書で使用される場合、脊椎動物、哺乳動物または家畜であり得る。よって、本発明による誘導体及び組成物は、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ)、ペットを処置するために使用され得、または他の獣医学的用途において使用され得る。最も好ましくは、対象はヒトである。誘導体及び組成物は、疾患、障害または病態の兆候をすでに示している者のみに投与される必要はない。むしろ、それらは、将来のそのような疾患、障害または病態の可能性に対する純粋な予防的手段として明らかに健康な対象に投与され得る。
【0114】
本発明によるIL-22の誘導体及び組成物は、疾患、障害または病態を処置するために単独療法(すなわち、その誘導体または組成物の単独使用)で使用され得ることが理解される。代替的には、本発明による誘導体及び組成物は、疾患、障害または病態を処置するための既知の療法の補助として、またはそれと組み合わせて使用され得る。
【0115】
必要とされるIL-22の誘導体の量は、その生物学的活性、半減期及びバイオアベイラビリティによって決定され、それは今度は、投与様式、誘導体及び組成物の生理化学的特性、及びそれが単独療法として使用されるかまたは併用療法において使用されるかに依存することが理解される。投与の頻度はまた、処置されている対象内の誘導体の半減期によって影響を受け得る。投与される最適な投薬量は、当業者によって決定され得、使用中の特定の誘導体、薬学的組成物の強度、投与様式、及び疾患、障害または病態の進展によって変わる。対象年齢、体重、性別、食餌及び投与の時間を含む、処置されている特定の対象に依存するさらなる要因は、投薬量を調整する必要性をもたらす。
【0116】
通常、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の間の本発明によるIL-22の誘導体の1日用量が、どの誘導体または組成物が使用されるかに応じて、疾患、障害または病態を処置するために使用され得る。より好ましくは、1日用量は、0.01μg/kg体重~1mg/kg体重の間、より好ましくは0.1μg/kg~500μg/kg体重の間、最も好ましくはおよそ0.1μg/kg~100μg/kg体重の間である。
【0117】
IL-22の誘導体または組成物は、疾患、障害または病態の発症の前、間または後に投与され得る。1日用量は、単回投与(例えば、単回の1日注射)として提供され得る。代替的には、誘導体または組成物は、1日に2回またはそれ以上の回数の投与を必要とし得る。例として、誘導体は、2回(処置されている疾患、障害または病態の重症度に応じて2回以上)の0.07μg~700mgの間の1日用量(すなわち、70kgの体重を想定)で投与され得る。処置を受ける患者は、起床すると第1の用量を摂取し、次いで第2の用量を夕方に(2用量レジームの場合)又その後3時間もしくは4時間間隔で摂取し得る。用量は代替的に、週1回、2週間毎または月1回、またはそれ以上の頻度で、例えば、週2回または3回で提供され得る。既知の手順、例えば、薬学産業で従来から用いられているもの(例えば、in vivo実験、臨床試験など)が、本発明による誘導体及び組成物の特定の製剤及び正確な治療レジーム(例えば、薬剤の1日用量及び投与の頻度)を生成するために使用され得る。
【0118】
多くの研究が特に肺、肝臓、腸、腎臓、皮膚、膵臓及び胸腺における複数の上皮傷害モデルでのIL-22の重要な効果を実証してきた。機構的に、例えば、抗アポトーシス、増殖、自然免疫、抗酸化ストレス、抗線維化、及び幹細胞/前駆細胞動員におけるいくつかの経路は、複数の調査者による研究においてIL-22の効果を媒介することがよく立証されている。ヒト細胞株を使用してin vitroでまたはヒトex vivoモデル(例えば、初代ヒト腸管オルガノイド)で重要な機構的知見がさらに確認されている。そのため、上皮傷害における細胞死の防止、再生の確保、及び炎症の制御におけるIL-22の強力な役割がよく確立されている。
【0119】
多くの研究は、傷害に供された遺伝子モデル(IL-22ノックアウトまたはトランスジェニック過剰発現)を分析することによって実施される。これらの研究において、IL-22の欠如またはIL-22過剰発現が傷害の時点で存在する。他の研究において、IL-22は、傷害の時点で抗体で中和され、いくつかの場合では、IL-22は、急性傷害期を超えて(例えば、亜急性でまたは再生期に十分に入って)中和される。他の研究は、外因的に投与されたIL-22の効果を調べることによって処置シナリオにより近づけている。利用可能な文献を総体的に調べると、異なるモデルは、ノックアウト、過剰発現、傷害前もしくは後のIL-22中和または外因性タンパク質投薬にかかわらず、傷害した器官を保護し、再生を促進するIL-22の同じ実体を表すことに気づくことが重要である。このことは、IL-22処置潜在性のための広い用途及び広い時間ウインドウを示し、また、hIL-22よりも長期に作用するIL-22タンパク質が必要とされる理由を示している。
【0120】
よって、本発明の第5の態様によれば、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓または皮膚の疾患、障害または病態を処置する方法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の薬学的組成物が提供される。本明細書で記載または想定されるIL-22の異なる誘導体のいずれかは、本発明のこの態様に明示的に含まれる。
【0121】
代謝疾患、障害または病態は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、脂質異常症、高血糖または高インスリン血症であり得る。
【0122】
肝臓疾患、障害または病態は、NAFLD、NASH、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、ACLF、アセトアミノフェン誘導性肝臓毒性、急性肝臓傷害、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変または手術もしくは移植によって引き起こされる病理学的状態であり得る。
【0123】
肺疾患、障害または病態は、COPD、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性窮迫症候群、化学的傷害、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症であり得る。
【0124】
腸疾患、障害または病態は、IBD、潰瘍性結腸炎、クローン病、GvHD、化学的傷害、ウイルス感染症または細菌感染症であり得る。
【0125】
腎臓疾患、障害または病態は、急性腎臓疾患または慢性腎臓疾患であり得る。
【0126】
皮膚疾患、障害または病態は、創傷、炎症性疾患またはGvHDであり得る。
【0127】
IL-22処置に対して反応性の病態、例えば、上記疾患、障害または病態のうちの1つ以上を有する対象をIL-22の誘導体、またはそれを含む薬学的組成物で処置する方法も提供される。
【0128】
IL-22の誘導体は、本発明の第1の態様について特定された特徴のすべてを有する。薬学的組成物は、本発明の第3の態様について特定された特徴のすべてを有する。IL-22処置に対して反応性の病態、例えば、上記疾患、障害または病態のうちの1つ以上を有する対象を処置する方法は、本発明の第4の態様について特定された特徴のすべてを有する。
【0129】
本明細書に記載されるどのIL-22の誘導体または組成物がどの患者に投与されるべきであるかに関する制限はない。むしろ、本明細書に記載の誘導体及び組成物のいずれかが、本明細書に記載される任意の患者に投与され得ることが意図される。
【0130】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に記載の特徴のすべて、及び/またはそれにより開示される任意の方法またはプロセスの工程のすべては、そのような特徴及び/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、上記の態様のいずれかと任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0131】
本発明のより良好な理解のため、及び同一の実施形態がどのように実現され得るかを示すために、これより実施例を参照するが、本発明を限定することはどのようにも意図されていない。
【実施例】
【0132】
実施例に記載の研究で用いられた物質及び方法は、別段示されない限り、以下のとおりである。
【0133】
誘導体
表4は、データセットで表されるIL-22の誘導体及び比較物の概要を提供する。
【0134】
IL-22の誘導体は、様々な骨格、脂肪酸のタイプ及び共有結合の部位を有し、よって、本発明に包含される誘導体の多様性の代表的なものであった。すべての場合において使用されたリンカーは、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Acであった。すべての場合においてリンカーは、誘導体2(-7C)、4(-7C)、8(6C)及び9(33C)を除き、残基1Cに結合された。誘導体7は、1Cにおける共有結合を例示する一方で、それは、1Cで共有結合した脂肪酸を有する他の誘導体のすべてに存在するG-P-G N末端ペプチドを欠く。
【0135】
比較物はhIL-22、hFc-hIL-22(組換え融合タンパク質)及びhIL-22バリアント(すなわち、1つ以上の骨格バリエーションのみを有するhIL-22)であった。
【0136】
【0137】
例について生成された誘導体の品質管理分析を以下のように行った。
【0138】
脱グリコシル化後のサンプルにおいて20μlの1mg/mlのサンプルを2μlのN-グリコシダーゼFに室温で48時間添加することによってタンパク質のインタクトな質量を決定した。次いでサンプルをPBSでpH7.4で0.2mg/mlまで希釈し、Waters MassLynx 4.1を有するWaters Synapt G2に接続されたSynapt G2を使用して分析した。10-90 Column Acquity UPLC Protein BEH C4 1.7μm 1x100mmを以下の移動相(複数可):A:水中0.1%ギ酸;及びB:アセトニトリル、0.09%ギ酸で使用した。流速は120μl/分、UV214nm(20pts/s)であり、勾配は表5に示されているとおりであった。
【0139】
【0140】
結果が表6に示されている。
【0141】
【0142】
よって、品質管理データは、意図された誘導体が実際に生成されたことを実証した。
【0143】
以下は、請求された発明を示すために意図されたにすぎない例示されたプロトコルである。研究で用いられた動物及び時間経過の正確な数字は、当業者に知られているように変更され得る。
【0144】
実施例1-薬物動態研究
方法
マウス(n=27)、ラット(n=4~8)及びミニブタ(n=2~5)において選択された誘導体について薬物動態研究を行った。IL-22の誘導体は、比較物としてのhIL-22、hFc-hIL-22及び/またはhIL-22バリアントと並行して試験した。
【0145】
(i)マウス&ラット
30匹の8週齢のC57Bl/6雄マウス及び5匹のSprague Dawley雄ラットをTaconic Biosciencesから入手した。マウスを10匹の群で飼育した。動物を実験前の1週間馴化させた。薬物動態計算のために重要である、投薬の前の体重を測定した。動物は、食物及び水へのアクセスができて、実験を通して起きていた。
【0146】
すべての誘導体及び比較物は、マウスで使用する場合はPBS、pH7.4中の0.3mg/ml溶液、及びラットで使用する場合は0.5mg/ml溶液として調製した。マウスでは2.0mg/kgの用量を試験した。ラットでは1mg/kgの用量を試験した。
【0147】
誘導体及び比較物を動物に皮下投与した。血液サンプルを投薬後の特定の時点で採取した。
【0148】
マウスではスパージサンプリングを使用した;よって、27匹のマウスにIL-22の誘導体または比較物を投薬し、血液サンプルを以下の時点の各々で3匹の異なるマウスから採取した:5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間、16時間、24時間、32時間及び48時間。そのため、各マウスは、研究の過程において2つのサンプルしか採取されなかった。最後のサンプルが採取された後、マウスを頸椎脱臼によって安楽死させた。
【0149】
5匹のラットにIL-22の誘導体または比較物を投薬し、3つの血液サンプルを以下の時点の各々で採取した:5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間及び24時間。各ラットは、研究の過程において17個のサンプルが採取された。最後のサンプルが採取された後、ラットを二酸化炭素によって安楽死させた。
【0150】
血液サンプル(100μl)をマウス及びラットから舌血液によって採取し、EDTAチューブ(Microvette(登録商標)VetMed 200 K3E,Sarstedt nr 09.1293.100)に移した。採血から20分以内に血液を8000G、4℃で5分間遠心分離した。血漿サンプル(40~50μl)をハーフマイクロニックチューブに移した。
【0151】
(ii)ミニブタ
およそ15kgの体重を有する9ヶ月齢の雌のGottingenミニブタをEllegaard Gottingen Minipigs A/Sから入手した。手術(カテーテルの挿入)前におよそ18日間の馴化期間を設け、その間、ミニブタを社会化し、カテーテルからの皮下投薬及び血液サンプリングのために訓練した。手術の3~5日前にミニブタを一匹で飼育した。投薬の6日前に、すべてのミニブタに2つの中心静脈カテーテル(Cook Medical、C-TPNS-6.5-90-REDO、ケイ素、サイズ6.5フレンチ、106cm長タイプTPN)を挿入し、これにより研究開始(投薬)の少なくとも5日前の手術後に回復時間を設けた。
【0152】
すべての誘導体及び比較物をPBS、pH7.4中の溶液として調製した。使用した用量は、0.1mg/kg(静脈内投与)または0.2mg/kg(皮下投与)であった。
【0153】
ミニブタを投薬中にプロポフォールで軽く麻酔をかけた。長い中心カテーテルを介して静脈内注射をミニブタに投与した。投与後、カテーテルを10mlの滅菌生理食塩水でフラッシュした。25Gの針を使用して5mmの深さで皮下注射を行った。逆流を避けるために針を注射後10秒間皮膚内で維持した。
【0154】
血液サンプルをミニブタから静脈内投薬後の以下の時点で採取した:1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、24時間、28時間、48時間、72時間、96時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間、432時間及び480時間。血液サンプルを皮下投薬後の以下の時点で採取した:1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、46時間、52時間、72時間、96時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間、432時間及び480時間。
【0155】
ミニブタから血液サンプル(1ml)をEDTAチューブ(1.6mg K3EDTA/ml血液をもたらすためのK3EDTAを含有する1.3mlチューブ(Sarstedt,Germany))内に収集した。サンプルを遠心分離(10分、4℃、2000G)まで最大で30分間湿った氷上で維持した。200μlの血漿をIL-22の誘導体または比較物の測定のためのマイクロニックチューブに移し、分析まで-20℃で保存した。
【0156】
(iii)サンプル処理
IL-22の誘導体または比較物の血漿レベルを、先行記載されているインハウスで開発された発光酸素チャネリング(LOCI(登録商標))アッセイを使用して測定した(Poulsen et al.J Biomol Screen,2007,12(2):240-7)。アッセイ中に、濃度依存的ビーズ-分析物-免疫複合体が形成されて光出力が生じ、これをPerkin Elmer Envisionリーダーで測定した。ビーズに対する抗体のカップリング、抗体のビオチン化及びLOCIアッセイ手順は、先行記載されているように実施した(Petersen et al.,J Pharmaceut Biomed,2010,51(1):217-24)。キャリブレータ及び品質管理(QC)サンプルを研究サンプルとして同じマトリックスで生成した。アッセイ精度(%CV)をアッセイし、試験されたサンプルのすべてについて20%未満であることが示された。
【0157】
アッセイは、抗ヒトIL-22モノクローナル抗体(R&D Systems MAB7822)がコンジュゲーションされたアクセプタービーズをビオチン化モノクローナル抗体(R&D Systems BAM7821;ヒトIL-22に対して生成された)及びノーブランドのストレプトアビジンが被覆されたドナービーズと共に使用した。ラット血漿におけるヒトIL-22についての定量の下限(LLOQ)は、4pMであった。しかしながら、各誘導体または比較物は、同じ誘導体のキャリブレータ列に対して測定した。hIL-22に対する各誘導体または比較物の交差反応性を測定し、アッセイ感受性を調整するために使用した。
【0158】
血漿濃度-時間プロファイルをミニブタについてPhoenix WinNonlin Professional 6.4(Pharsight Inc)でノンコンパートメント分析(NCA)を使用して測定した。個々の濃度を使用し、1/(Y*Y)によって計量し、線形対数台形を使用して計算を実施した。循環消失半減期(T1/2)が主要なスクリーニングパラメータであったため静脈内投薬を使用した。クリアランス及び分布容積は、対象となる二次的パラメータであり、よって、研究の1日目での幾つもの血液サンプルの理由であった。
【0159】
マウス及びラットにおける薬物動態を評価するために測定された唯一のパラメータは循環消失半減期(T1/2)であった。ミニブタにおいて、測定された追加のパラメータは、薬物投与後の最大(ピーク)血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間(Tmax)、薬物用量について正規化された血漿薬物濃度-時間曲線下面積(AUC;薬物の用量の投与後の薬物に対する実際の身体曝露を反映する)(AUC/D)、平均滞留時間(MRT;すなわち、吸収が完了した後に排泄前に身体において薬物が存在する時間)、平均吸収時間(MAT)及び投与された用量の全身利用可能性(すなわち、バイオアベイラビリティ;F)であった。MATは、皮下投与後のMRT(MRTSC)から静脈内投与後のMRT(MRTIV)を減算したものとして計算される。
【0160】
結果
表7はマウスで得られたを示しており、表8はラットで得られたを示しており、表9及び10はミニブタで得られた結果を示している。ND=未決定。IV=静脈内投与。SC=皮下投与。
【0161】
【0162】
表7に示されるように、骨格バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較物1及び3)は、投与経路にかかわらず、短い循環半減期を有していた。Fc融合体(hFc-hIL-22)での延長は、半減期をかなり増加させた。脂肪酸の共有結合(C18二酸;誘導体1及び6)は、マウスにおいて中間的な循環半減期をもたらした。IL-22の誘導体は、マウスにおいて、皮下投与された場合、静脈内と比較してより長い間循環した。
【0163】
【0164】
表8に示されるように、骨格バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較物1)は、短い循環半減期を有していた。脂肪酸の共有結合(誘導体1、3及び6)は、用いられた脂肪酸(C16対C18二酸)及び投与経路にかかわらず、ラットにおいて増加した循環半減期をもたらした。IL-22の誘導体は典型的には、皮下投与された場合、静脈内と比較してより長い間循環した。
【0165】
【0166】
表9に示されるように、骨格バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較物1及び2)は、hIL-22と匹敵する短い循環半減期を有していた。比較物のFc融合体(hFc-hIL-22)及びIL-22の誘導体のすべて(誘導体1、6及び10)は、有意に増加した循環半減期を有していた。IL-22の誘導体は、ミニブタにおいて静脈内投与された場合、50時間を超える循環半減期を有し、これは比較物のIL-22-Fc融合体と同等であった。
【0167】
【0168】
表10に示されるように、IL-22の誘導体(誘導体6)について、比較物のFc融合体(hFc-IL-22)と比較してより早いMATが実証された。MATは、Tmaxを単純に比較するよりも正確な薬物の取り込みの指標であり、なぜならそれは、Cmaxの相違も考慮に入れるからである(Tmaxは、用量及びCmaxの両方によって影響を受ける)。ミニブタは、それらのヒトとの類似性により、マウスまたはラットではなく、この研究に使用された。
【0169】
結論
既知の脂肪酸アルキル化GLP-1誘導体であるセマグルチドは、ミニブタにおいて46時間の半減期(Lau et al.,J Med Chem,2015,58(18):7370-80)及びヒトにおいて160時間の半減期を有し、これは2のピーク対トラフ比を有する週1回投薬プロファイルに対応する。Fc-融合GLP-1誘導体であるデュラグルチドの半減期も同様である。
【0170】
そのため、皮下投与された場合の少なくとも40時間及び静脈内投与された場合の50時間超の、ミニブタにおけるIL-22の誘導体によって実証された半減期は、2のピーク対トラフ比を有するヒトにおける週1回投薬プロファイルに対応することが想定される。
【0171】
よって、データは、本発明の誘導体が、IL-22の循環半減期を増加させ、最適化された薬物動態及び薬力学的特性を実証し、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、眼、胸腺、膵臓、及び皮膚の疾患、障害及び病態を含む多様な範囲の適応症のための新規かつ改善された処置を提供する。
【0172】
実施例2-in vitro効力研究
方法
2つのin vitroアッセイを効力を研究するために用いた。
【0173】
1つ目は、IL-22Ra、IL-10Rb及びルシフェラーゼがSTAT3誘導プロモーターと共に三重でトランスフェクションされたBHK細胞におけるレポーター遺伝子アッセイであった。これは、IL-22受容体媒介STAT3活性化を測定した高感度のハイスループットアッセイである。
【0174】
以下のプラスミドを使用して安定なレポーターBHK細胞株を生成した:(i)pcDNA3,1hygro(+)におけるhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)におけるIL22R及び(iii)pGL4.20における2xKZdel2。よって、細胞株は、pSTAT3駆動プロモーターの制御下でヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現した。
【0175】
アッセイプロトコルの0日目に、96ウェルプレート(Corning#3842、黒色、透明底)において15,000~20,000細胞/ウェルで細胞を基礎培地(500mlの場合:DMEM+Glutamax(Gibco,cat.番号:31966-021)、10%(w/v)ウシ胎児血清(FCS;アルブミンを含有する)(50ml)及び1%(w/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5ml))に播種した。1日目に、プレートを反転させることによって培地を除去した。新たな基礎培地を1ウェル当たり50μlで添加し、細胞を60分間インキュベーションした。
【0176】
IL-22の誘導体を、比較物としてのhIL-22及び骨格バリエーションのみを有するhIL-22バリアントと並行して試験した。各誘導体または比較物を試験するために使用された動物の「n」数は、1~36の範囲であった。
【0177】
よって、50μlの希釈された誘導体または比較物(基礎培地に希釈した)を各ウェルに添加し、プレートを4時間放置した。そのため、誘導体及び比較物は、既にウェルにおいて50μlの培地に希釈されていたので、2倍希釈された。100μlのSteadylite+試薬(Perkin Elmer cat番号6066759)を添加することによって刺激を4時間後に終了させた。プレートをTopSeal Aで封止し、450rpmで15分間振盪し、次いで12時間後よりも前にMithrasまたは同様のシステムを使用して読み取った。
【0178】
データ分析をGraphpad Prismを使用して実施した。各誘導体または比較物の最大半量有効濃度(EC50)を、その効力の指標として評価した。EC50は、Log(化合物)対反応-可変スロープ(4p)を使用して決定した。ヒルスロープを標準として1に拘束した。
【0179】
2番目のin vitro効力アッセイは、IL-22Ra及びIL-10Rbを内因的に発現するHepG2細胞-ヒト肝臓由来細胞株におけるpSTAT3を測定した。
【0180】
1日目に、HepG2細胞を96ウェルプレート(Biocoat#35-4407 Becton Dickinson)に25,000~30,000細胞/ウェルで播種した。播種及び継代に使用した細胞は、DMEM(1x)+25mM(4.5g/l)グルコース、-ピルベート(Gibco,cat.番号61965-026)+10%(w/v)FCS+1%(w/v)P/Sであった。2日目に、細胞はアッセイするための準備が整った。細胞をDMEM(Gibco,cat.番号61965-026)中の0.1%(w/v)FCS(すなわち、極めて低いアルブミン濃度)で飢餓状態とした-50μlを各ウェルに添加し、60分間放置した。
【0181】
技術的二連(technical duplicates)を使用して各誘導体または標準としての比較物の7種の濃度(0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000nM)で試験を実施した。よって、50μlの希釈された誘導体または比較物(DMEM中の0.1%(w/v)FCSに希釈した)を各ウェルに添加し、プレートを15分間放置した。そのため、誘導体及び比較物は、既にウェルにおいて50μlの培地に希釈されていたので、2倍希釈された。細胞を溶解するために、培地を細胞から除去し、50μlの新たに調製された1x溶解緩衝液(キットからのSureFire溶解緩衝液)を各ウェルに添加した。プレートを350rpmで10分間室温で撹拌した。
【0182】
AlphaScreen(登録商標)SureFire(登録商標)STAT3(p-Tyr705)アッセイプロトコル(Perkin Elmer cat.番号TGRS3S(500-10K-50K))に従ってSTAT3のIL-22誘導リン酸化を測定した。この点に関して、4μlのライセートをアッセイのための384ウェルプロキシプレートに移した(4μlの陽性対照及び陰性対照を添加した)。使用直前に、アクセプターミックスを調製した(反応緩衝液に活性化緩衝液を5倍希釈し、希釈された緩衝液にアクセプタービーズを50倍希釈することによって)。5μlのアクセプターミックスを各ウェルに添加し、プレートをTopseal A接着フィルムで封止し、室温で2時間インキュベーションした。使用直前に、ドナーミックスを調製した(希釈緩衝液にドナービーズを20倍希釈することによって)。2μlのドナーミックスを薄明かりの下でウェルに添加した。プレートをTopseal A接着フィルムで再度封止し、室温で2時間インキュベーションした。プレートをAlpha Technology-適合性プレートリーダーで読み取った。
【0183】
Graphpad Prismを使用してデータ分析を実施した。まず、PrismにおいてLog(化合物)対反応-可変スロープ(4p)分析を使用して非線形回帰を行った。ヒルスロープを1に拘束した。次いで対照化合物(Hisタグ付きhIL-22またはhIL-22のいずれか)からのY=最高値をPrismにおいて正規化のために使用した。各データセットにおいて0%を最小値に設定し、100%を上記非線形回帰(対照について)からのY=最高値に設定した。非線形回帰を上述したように繰り返し、試験された誘導体の%活性/wt及びEC50をそれぞれ最高値及びEC50下の結果において読み取った。
【0184】
結果
表11は、IL-22受容体媒介STAT3活性化についてのBHK細胞レポーター遺伝子アッセイで測定された重要な誘導体及び比較物のEC50を示している。
【0185】
【0186】
BHK細胞アッセイは高量のアルブミンを含有していたので、測定されたEC50は、誘導体を試験した場合にアルブミン結合の効果を組み込んでいた。
【0187】
骨格バリエーションのみを有するIL-22バリアントである比較物4は、hIL-22と同等効力であることが示された。比較物4と同じ骨格を有するが、中親和性アルブミン結合剤(C16二酸)に共有結合した誘導体3は、効力がhIL-22と比較して4分の1の減少を示した。この場合も同じ骨格を有するが、高親和性アルブミン結合剤(C18二酸)に共有結合した誘導体1は、効力がhIL-22と比較して7分の1の減少しか示さなかった。
【0188】
アルキル化位置及び骨格バリエーションのスキャンを、誘導体6~9の結果を比較することによって35Q、64Qバックグラウンド(すなわち、変異した3つのIL-22グリコシル化部位のうち2つ)におけるオフセットを用いて実施した。これらの誘導体における共有結合部位は、表面露出していることが予測され、受容体結合に関与しない位置を同定するIL-22構造の分析に基づいて選択された。これらの誘導体で得られた結果は、Cys置換及び脂肪酸共有結合がいくつかの(選抜)位置で許容され得ることを実証し、これは発明者にとって驚くべきことであった。
【0189】
表12は、pSTAT3についてのHepG2細胞アッセイで測定された重要な誘導体及び比較物のEC50を示している。
【0190】
【0191】
受容体が内因性発現レベルであり、シグナル増幅がほとんどなく、アルブミンなしのHepG2細胞アッセイにおいて、誘導体1は、hIL-22と比較して2.5分の1に減少した効力(誘導体1と同じ骨格を有するが脂肪酸を有さないhIL-22バリアントである比較物4と類似する)を有していた。
【0192】
表13は、N末端伸長における脂肪酸共有結合及びグリコシル化部位の変異を評価するためにBHK及びHepG2細胞アッセイの両方の結果を並べている。ND=未決定。
【0193】
【0194】
誘導体6は、追加のN35Q及びN64Q置換(変異した3つのグリコシル化部位のうちの2つ)によって誘導体1とは異なるが、それらは同等効力である(誘導体6については効力をわずかに低下させる傾向を有する)。
【0195】
誘導体2及び4は、15-merのN末端伸長部を有し、伸長部において脂肪酸結合のためのCys残基(-7C)を有するが、これは、驚くべきことに良好に許容されることが示されている。
【0196】
結論
試験された本発明の誘導体における脂肪酸共有結合で観察された効力減少は主に、アルブミン結合によって促進され、骨格置換はほとんど寄与しなかった。これは、比較物4及びhIL-22の驚くべき同等効力によって実証された。比較において、前述したように、Genentechは、IL-22のそのFc融合体についてin vitro効力の34分の1の減少を報告している。
【0197】
極めて低いアルブミンレベルでのHepG2細胞アッセイにおいて、誘導体1(BHKアッセイ(アルブミン結合を伴う)において7分の1の効力減少を示したIL-22の誘導体)は、hIL-22と比較して効力が2.5分の1の減少しか示さなかった。
【0198】
誘導体1及び6の同等効力(表13)は、35Q及び64Q変異が驚くべきことに効力に対する影響を伴わずに許容されることを示した。
【0199】
よって、IL-22の誘導体は、アルブミンの存在下で高い効力を維持し、アルブミンの非存在下でhIL-22とほぼ同等効力である。Cys置換及び脂肪酸共有結合は、いくつかの位置において許容される。
【0200】
よって、データは、本発明の誘導体が良好なバイオアベイラビリティ及び効力を示し、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓及び皮膚の疾患、障害及び病態を含む多様な範囲の適応症のための新規かつ改善された処置を提供する。
【0201】
実施例3-糖尿病におけるin vivo有効性研究
この研究は、糖尿病マウスモデルにおける8~16日間の本発明の誘導体の1日1回の投薬の効果を調査するために設計された。研究は、投薬が開始する前に糖尿病病理が発症したことを意味する、処置(予防ではない)様式で行われた。マウスモデルは脂肪肝臓(レプチン受容体ノックアウト)を有するので、それはまた、肝臓疾患の代謝モデルとして機能する。
【0202】
方法
7~8週齢の雄のC57BKS db/dbマウスをCharles River Laboratoriesから入手し(-10日目)、実験の開始前の少なくとも1週間馴化させた。到着から1週間後(-3日目)、マウスを無作為化し、10匹の群で(または食物摂取研究の場合は単独で)飼育した。-3日目、及び研究の1~16日目の各々で、血中グルコース及び食物摂取を測定した。
【0203】
IL-22の誘導体(誘導体1)を、比較物としてのIL-22のFc融合体(hFc-hIL-22)及び陰性対照としてのビヒクルのみと並行して試験した。各薬剤を、糖尿病db/dbマウス(各群においてn=6~10)において1~16日目の各々で0.1、0.25、0.5または1.0mg/kgの1日1回用量で皮下投与した。誘導体/比較物/対照投薬の後に食物摂取を減少させた。
【0204】
研究期間にわたって毎日、血中グルコースを測定した。麻酔したマウスにおいて終了時に眼血液サンプルを採取した。500μlの血液をEDTAチューブ内に収集した。サンプルを氷上で維持し、20分以内に6000Gで4℃で5分間遠心分離した。血漿を0.75mlのマイクロニックチューブに分け、後の成分濃度の測定のために直ちに凍結した。
【0205】
誘導体または比較物濃度を測定することに加え、標的係合バイオマーカー(肝臓由来急性期タンパク質、ハプトグロビン及び血清アミロイドP成分(SAP)、及び腸由来ペプチドYY(PYY))の血漿レベルを研究終了時に測定した。ハプトグロビンは、製造業者の指示書に従って市販のキットを用いてCOBAS装置(Roche Diagnostics)で測定した。PYYは、製造業者の指示書に従ってマウス及びラットPYYを認識する市販のELISAアッセイ(ALPCO)を用いて測定した。SAPは、製造業者の指示書に従ってマウスペントラキシン2/SAPを認識する市販のELISAアッセイ(R&D Systems)を用いて測定した。
【0206】
結果
研究期間にわたる血中グルコースレベルが
図5及び6Aに示されている。
【0207】
図5から分かるように、hIL-22及び骨格バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較物3)は、ビヒクル対照と比較して研究の過程にわたって血中グルコースを減少させなかった。
【0208】
図6Aから分かるように、誘導体1及びhFc-hIL-22はいずれとも、特定の研究においてより高い定常状態曝露レベルを反映するhFc-hIL-22のより高い標的係合にもかかわらず、研究の最終日において誘導体1のわずかにより高い有効性を伴って正常レベルに向かって同等に血中グルコースを減少させた。処置された動物においてビヒクル対照と比較して食物摂取の減少が観察された(
図6B参照)。よって、試験された誘導体は、hFc-hIL-22と同様にdb/dbモデルにおいて血中グルコースを正常化した;上記のとおり、そのような効果はhIL-22または比較物3では観察されなかった。
【0209】
研究終了時に測定された標的係合バイオマーカーであるハプトグロビン、SAP及びPYYのレベルが
図7A~Cにそれぞれ示されている。グラフで分かるように、3つすべての標的係合バイオマーカーは、試験された誘導体及びhFc-hIL-22によって上方制御され、誘導体1よりもhFc-hIL-22によってより上方制御された。
【0210】
図8は、誘導体6(本発明の別の誘導体、それは、2つのグリコシル化部位における追加の置換以外は誘導体1と同じである)についての用量-反応データを示している。試験された3つすべての用量(0.1、0.25及び0.5m/kg)は、血中グルコースを経時的に減少させるのに有効であり、濃度の増加と共に次第により減少した。
【0211】
結論
試験された誘導体及びhFc-hIL-22の両方は、db/dbモデルにおいて血中グルコースを正常化し、それによりin vivo治療効果を実証している。重要なことに、そのような効果は、hIL-22の投薬では見られず、長期作用性の誘導体及びFc融合体で得られた慢性曝露が治療効果に必要であることを実証している。抗糖尿病効果のための作用の様式はまだ十分に解明されていないが、肝臓に対するIL-22の効果(肝臓糖新生及び脂質生成)が主要な要因であると考えられる。
【0212】
食物摂取もまた、本発明の誘導体での処置によって減少することが示され、よって、肥満処置としての有効性を実証している。
【0213】
標的係合バイオマーカーもまた、誘導体及びhFc-hIL-22によって上方制御されることが観察された。db/dbマウスにおいて測定された特定のバイオマーカーは、ヒトに変換できることが知られている。
【0214】
皮下投与されたhFc-hIL-22の循環半減期(T
1/2)は、特にマウスにおいて、誘導体1よりも長いことに留意することが重要である(それぞれ20時間及び8時間のT
1/2;表7参照)。そのため、hFc-hIL-22の曝露は定常状態で高い。このことは、標的係合バイオマーカー(ハプトグロビン、SAP及びPYY)が、hFc-hIL-22群において誘導体1群よりも高かった(
図7)という観察によってさらに裏付けられ、示された実験においてより高い標的係合それ自体を実証している。よって、より高い曝露及び標的係合にもかかわらず、Fc融合体(hFc-hIL-22)の有効性は、16日間の投薬研究の最後の3日間において、本発明の誘導体(誘導体1)と比較して劣っていた。
【0215】
よって、データは、本発明の誘導体が、糖尿病及び肝臓疾患のマウスモデルにおいて良好な治療的有効性を実証している。db/dbマウスにおいて測定された特定のバイオマーカーは、ヒトに変換できることが知られているので、そのような治療的有効性が同様に変換できることを予測するのは妥当である。
【0216】
実施例4-肝臓傷害におけるin vivo有効性研究(i)
この研究は、肝臓傷害マウスモデルにおける本発明の誘導体の投薬の効果を調査するために設計された。研究は、肝臓傷害が投薬が開始された後に初めて誘導されたことを意味する、予防様式で行われた。
【0217】
方法
10週齢のC57Bl/6Rjマウスを入手し、研究開始前の1週間馴化させた。肝臓傷害をAPAPの単回腹腔内用量(300mg/kg、20ml/kg)で誘導した。IL-22の試験誘導体(誘導体1及び6)をビヒクル対照(n=5~10)と並行して、APAP投薬の2時間前に1.5mg/kgで皮下に投薬した。研究は、APAP投薬から24時間後に終了した。血漿アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の測定のために最終的出血を確保した。
【0218】
血液サンプルをヘパリン化チューブ内に収集し、血漿を分離し、分析まで-80℃で保存した。ALT及びASTは、製造業者の指示書に従ってCOBAS c501自動分析機で市販のキット(Roche Diagnostics)を使用して測定した。
【0219】
肝臓を、組織学的分析のためにホルマリン固定及びパラフィン包埋に供した。
【0220】
ki67免疫組織化学(IHC)染色を介して増殖を測定した。VISソフトウェア(Visiopharm,Denmark)を使用して画像分析によってIHC陽性染色を定量した。
【0221】
末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイでアポトーシスを測定した。簡潔には、パラフィン包埋された切片を有するスライドをキシレン中で脱パラフィン化し、一連の段階的なエタノールで再水和した。スライドをプロテイナーゼKで前処理し、内因性ペルオキシダーゼ活性を過酸化水素でブロックした。TUNEL混合物(in situ細胞死検出キット、POD、Roche)をスライドに添加し、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で増幅させ、ジアミノベンジジン(DAB)(Chromogen)によって可視化した。最後に、スライドをヘマトキシリン中で対比染色し、カバーガラスで覆った。
【0222】
結果
研究の終了時のALT及びASTの血漿レベルが
図9A及び9Bにそれぞれ示されている。ALT及びASTの量は、誘導体1または6で処置されたマウスにおいてビヒクル/APAP対照と比較して肝臓傷害の前に有意に減少することが示された。
【0223】
研究終了時のTUNEL陽性細胞及びki67陽性細胞の数が
図10A及び10Bにそれぞれ示されている。TUNEL陽性細胞の量は、誘導体1または6で処置されたマウスにおいてビヒクル/APAP対照と比較して肝臓傷害の前に有意に減少することが示された。ki67陽性細胞の量は、APAP処置群間で同等であった。
【0224】
結論
ALT及びASTは、肝臓損傷の指標として使用される肝臓酵素である。よって、誘導体1及び6は、APAPによって誘導された傷害に対して肝臓を保護することが示された。
【0225】
TUNELアッセイの結果は、誘導体1及び6が、ビヒクル/APAP対照と比較して、肝臓傷害によって引き起こされたアポトーシスに対して保護したことを示した。しかしながら、細胞増殖は、IL-22のこれらの誘導体によって影響を受けなかった。増殖は、傷害に対する反応として生理的に上方制御されるので(対照で見られるように)、結果は、傷害の減少に増殖の減少が続かない(傷害に対する増殖の比が増加する)ので誘導体1及び6の増殖作用を実証している。
【0226】
よって、データは、本発明の誘導体が、マウスモデルにおける肝臓傷害に対する保護において良好な有効性を実証することを示している。マウスで測定された特定のバイオマーカーは、ヒトに変換できることが知られているので、観察された保護が同様に変換できるであろうということを予測するのは妥当である。
【0227】
実施例5-肺傷害におけるin vivo有効性研究
この研究は、肺傷害ラットモデルにおける本発明の誘導体の投薬の効果を調査するために設計された。研究は、投薬が肺傷害が誘導される前に開始され、その後も継続されたことを意味する、予防及び処置様式の両方で行われた。
【0228】
方法
肺傷害を誘導するために、1日目に単回用量として口腔咽頭吸入によって100μlのブレオマイシンを雄のSprague Dawleyラットの肺に投与した(群2~6)。生理食塩水を陰性対照として投与した(群1)。
【0229】
群3、4及び5における動物に(皮下注射によって)誘導体6をそれぞれ0.5、1.5または4.5mg/kgで-1日目から3日目まで1日1回投薬した。群6における動物には(経口摂取によって)プレドニゾロンを10mg/kgで-1日目から3日目まで1日1回投薬した。
【0230】
ラットからの気管支肺胞洗浄液(BALF)における可溶性コラーゲンを測定するために、添加プロテアーゼ阻害剤カクテル含む滅菌PBS(カルシウム及びマグネシウムを有さない)で肺を洗浄し(3×4ml)、動物当たりの洗浄物を1つのチューブに入れた。可溶性コラーゲンアッセイSircol S1000(Biocolor)(Charles River Laboratories)を使用してBALF上清における可溶性コラーゲンを測定した。
【0231】
4日目にすべての動物を剖検のために提供した(最終的安楽死)。組織病理学的試験のためにすべての動物から右肺を収集し、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)で膨張固定してから、NBF中で浸漬固定した。右尾側肺葉から3つの平行な縦断切片を切り出し、カセット01に搭載した。右肺の前葉、中葉及び副葉も縦断切片化し、カセット02に搭載した。
【0232】
各カセットから2つのスライドを作製し;一方のスライドをヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色したのに対し、他方をヘマトキシリン及びピクロシリウスレッド(H&PSR)で染色した。
【0233】
次いで各スライドに乱数発生機を使用して乱数を割り当てた。検索表をMicrosoft Excelスプレッドシートに記録し、コピーをスライド評価後に研究病理学者に提供した。そのため、1つの肺当たり6つの切片をブラインドで読み取った。
【0234】
次いで獣医学病理学者が炎症の重症度についての各々のH&E染色スライドについて各切片をスコア化した(0=なし、1=最小、2=軽度、3=中程度及び4=重度)。群当たりの平均及び中央値スコアを計算した。病理学者はまた、線維症の重症度について各々のH&PSR染色スライドについて各切片をスコア化した(0=低から8=高までの改変Ashcroftスコアを使用した)。1群当たりの平均及び中央値スコアを計算し、ノンパラメトリックANOVA、クラスカル・ウォリス検定後分析に供した。
【0235】
結果
顕微鏡的知見の概要が表14に示されており、各群の炎症及び線維症についての平均及び中央値スコアが明らかにされている。
【0236】
【0237】
表14における群1及び2を比較するによって明らかになるように、ブレオマイシンは、ラットモデルにおいて肺炎症及び線維症の両方を誘導した。平均及び中央値スコアは、群3~5、すなわち、本発明の誘導体である誘導体6で処置されたラットにおいてより低かった。これらのより低いスコアは、プレドニゾロンで処置されたラット(群6)で見られたものと同等であった。
【0238】
研究における各動物についての炎症及び線維症スコアの中央値も
図11A及び11Bにそれぞれ示されている。
【0239】
図11Aに示されるように、炎症スコアの群中央値は、陰性対照(群1)と比較してブレオマイシン/ビヒクル対照(群2)で増加した。炎症スコアの群中央値は、ブレオマイシン/ビヒクル対照と比較して、誘導体6で処置されたラット(高用量群5において有意に低下した)及びプレドニゾロンで処置されたラット(群6)において低下した。
【0240】
図11Bに示されるように、線維症スコアの群中央値は、陰性対照(群1)と比較してブレオマイシン/ビヒクル対照(群2)で増加した。しかしながら、線維症スコアの群中央値は、ブレオマイシン/ビヒクル対照と比較して、誘導体6で処置されたラットにおいて低下した(また、高用量群5において有意に低下した)が、対照プレドニゾロンと比較すると低下しなかった。
【0241】
図11Cに示されるように、ブレオマイシン誘導性肺傷害の後のBALFにおける可溶性コラーゲンの量は、ブレオマイシン/ビヒクル対照(群2)において陰性対照(群1)と比較して増加し、これはプレドニゾロンでの処置では減少しなかった(群6)。しかしながら、誘導体6で処置されたラットからのBALFでは(試験されたすべての用量にわたって)、ブレオマイシン/ビヒクル対照と比較して有意に減少した量の可溶性コラーゲンが観察された。BALFにおける可溶性コラーゲンは線維症についての読み取り値であるため、これらの結果は、上記で直ちに報告された組織学データを即座に確認するものである。
【0242】
結論
顕微鏡的研究の結果は、本発明の誘導体が、ラットモデルにおいてブレオマイシン誘導性肺炎症及び線維症を予防及び/または減少させることができることを示した。炎症に関して見られた効果は、肺炎症を処置するために知られているコルチコステロイドであるプレドニゾロンで観察されたものと同等であった。しかしながら、本発明の誘導体は、プレドニゾロンでは見られない、線維症に対する独自の作用を有していた。
【0243】
実施例6-大腸炎におけるin vivo有効性研究
この研究は、大腸炎マウスモデルにおける本発明の誘導体の投薬の効果を調査するために設計された。研究は、投薬が結腸炎が誘導された日と同じ日に開始され、その後も継続されたことを意味する、予防及び処置様式の両方で行われた。
【0244】
方法
食餌が与えられた雌のC57Bl/6JRjマウスを体重に基づいて5つの群(1群当たりn=8)に無作為化した。5群のうち4群においてDSSを使用して大腸炎を誘導した。これらのマウスは、研究0日目から6日目までの7日間、それらの飲料水中のDSSを摂取した。5つ目の群では、動物はDSSを有さない水を摂取し、よって、健康な対照として機能した。研究0日目から、DSSマウスをビヒクル、IL-22の試験誘導体(誘導体6;0.35mg/kgまたは1mg/kgで腹腔内に投薬した)または比較物としてのIL-22-Fc融合体(hFc-hIL-22;0.5mg/kgで腹腔内に投薬した)を10日間で1日1回処置した。体重、食物及び水の摂取を毎日モニタリングした。
【0245】
研究10日目に、血液サンプルをマウスからEDTAチューブに収集し、血漿を分離し、分析まで-80℃で保存した。再生膵島由来タンパク質3ガンマ(Reg3g)をELISAキット(Cloud-Clone Corp)を使用して製造業者の指示書にしたがって二重に測定した。Reg3gは、IL-22の標的係合マーカーである。
【0246】
終了時に、腸を立体解析学的分析のために除去した。したがって、腸を氷冷生理食塩水でフラッシュし、その内容物を穏やかに除去してからサンプリングした。
【0247】
腸をホルマリン中で一晩浸漬し(Tissue-Tek VIP)、その後、パラフィンのブロックに包埋した。次いでホルマリン固定された腸を、体系的均一ランダムサンプリング(SURS)原理を使用して近位から遠位方向にサンプリングし、合計で4つのスラブを得、マルチカセットに入れた。すべての組織スラブを、個々のスラブの特定がより後の段階で可能となるような方法で配置した。パラフィンブロックをトリミングし、5μmの上部切片を切断し、Superfrost+対物レンズに載せた。大きな腸の場合、上部切片まで500μmの長さで別の切片を切断し、これにより各動物から合計で8つの結腸切片を得た。
【0248】
結腸炎体積を立体学的に、すなわち、結腸の二次元横断面の三次元解釈を使用して測定した。スキャンされたH&E染色スライドに対してnewCASTシステム(Visiopharm)を使用して立体学的体積推定を実施した。総腸体積、粘膜の体積、粘膜下層及び筋層の体積ならびに炎症組織の体積を、適切なサイズのグリッドシステムを使用してポイント計数によって推定し、その場合、対象となる構造に当たるすべてのポイントを計数した。対象となる構造に当たるポイントの数を以下の数学的関係性に従って体積に変換した:
【0249】
【0250】
式中、A(p)はポイント当たりの面積であり、pは対象となる構造に当たるポイントの総数であり、tは断面間の距離である。1群当たりの平均炎症体積を計算し、統計的分析に供した。
【0251】
終了時にH&E染色スライドを観察することによって結腸形態も評価した。
【0252】
結果
結腸炎体積は
図12に示されている。炎症は、ビヒクル対照(DSSも含有する)と比較して、誘導体6で処置されたマウスにおいて、いずれの用量でも予防されたことが示された。特に、炎症は、健康な対照(DSSを有さないビヒクル)として処置された群について同じ結腸炎体積から明らかなように、誘導体6で処置された群では正常なレベルで維持された。hFc-hIL-22で処置された群についても同じであった。
【0253】
終了時の結腸形態の代表的なH&E染色画像が
図13に示されている。DSS処置の後、粘膜上皮創傷がビヒクルで処置された動物で確認することができるが(黒色の矢印によって示されている)、誘導体6でいずれかの用量で処置されたまたはhFc-hIL-22で処置された動物では確認することはできない。このことは、上皮組織に対する保護的効果を実証する。
【0254】
血漿Reg3gレベルが
図14に示されている。DSS処置は、基礎的Reg3gレベルの増加を誘導した(ビヒクルとDSSなしビヒクルとの比較)。低用量(0.35mg/kg)誘導体6群ではさらなる増加は検出可能ではなかったが、より高い用量(1mg/kg)の誘導体6群及びhFc-hIL-22群では検出可能であった。誘導体6(1mg/kg)群と比較してhFc-hIL-22(0.5mg/kg)群におけるより高いReg3gレベルは、より低い用量にもかかわらず、より高い標的係合を示し、これは、hFc-hIL-22のマウスにおけるより長い半減期と関連している可能性が高かった(hFc-hIL-22の30時間対誘導体6の9.1時間のT1/2)。
【0255】
結論
よって、データは、本発明の誘導体がマウスモデルにおける大腸炎及び粘膜上皮創傷に対する保護において良好な有効性を実証することを示している。このことは、腸の疾患、障害及び病態のための新規かつ改善された処置が見出されたことを示している。特に、その知見は、炎症性腸疾患などの粘膜上皮損傷を特徴とする疾患を処置する潜在性を実証している。
【0256】
実施例7-肝臓傷害におけるin vivo有効性研究(ii)
この研究は、第2の肝臓傷害マウスモデル(第1は実施例4で上述されている)における本発明の誘導体の投薬の効果を調査するために設計された。研究は、肝臓傷害が投薬が開始された後に初めて誘導されたことを意味する、予防様式で行われた。
【0257】
方法
C57Bl6/6j雄マウスを5群(1群当たりn=8)に分けた。ConA処置に対して-26時間及び-2時間で5群のうち2群においてIL-22の試験誘導体(誘導体1)を1mg/kgで腹腔内に投薬した。別の2群は、これらの時点でビヒクルのみを摂取した。ConAを15mg/kgの用量で30秒間にわたって静脈内ボーラスとして4群すべてに与えて肝臓傷害を誘導した。5つ目の群は、健康な対照としてConAを摂取しなかった(上記のようにビヒクルのみ)。
【0258】
ConA注射の8または24時間後、マウスをイソフルラン麻酔下に置き、最大体積の血液を心穿刺によって採取した(凝固活性化剤を含有するポリプロピレン血清ゲルチューブを使用した)。処置を受けなかったマウス(群5)を8時間の時点で屠殺した。血液を各チューブ内でチューブを数回反転させることによって凝固活性化剤と混合した。チューブを15分間室温で維持し、次いで2000gで10分間4℃で遠心分離した。血清サンプルにおけるALT及びASTを自動化システム(Konelab 20)を使用して製造業者の指示書に従って測定した。
【0259】
結果
研究の終了時のALT及びASTの血漿レベルが
図15A及び15Bにそれぞれ示されている。ALT及びASTの量は、肝臓傷害の前に誘導体1で処置されたマウスでは、ビヒクル/ConA対照と比較して、試験された両方の時点で減少したことが示された。
【0260】
結論
ALT及びASTは、肝臓損傷の指標として使用される肝臓酵素である。よって、誘導体1は、実施例4においてAPAPによって誘導される傷害に対するものとちょうど同じように、ConAによって誘導される傷害に対して肝臓を保護することが示された。マウスで測定された特定のバイオマーカーは、ヒトに変換できることが知られているので、観察された保護が同様に変換できるであろうということを予測するのは妥当である。
【0261】
実施例8-肥満及びNASHにおけるin vivo有効性研究
この研究は、肥満及びNASHマウスモデルにおける本発明の誘導体の投薬の効果を調査するために設計された。研究は、投薬が開始する前に肥満及びNASH病理が発症したことを意味する、処置(予防ではない)様式で行われた。
【0262】
方法
食餌誘導性肥満マウスモデルは、実験前の少なくとも30週間高脂肪食餌が供給された雄のC57BL/6JRjマウスに基づいていた。食餌は、脂肪(40%)、フルクトース(22%)及びコレステロール(2%)が高かった(Research Diets D09100310)。これにより、肥満、NAFLD及び最終的にNASHがもたらされた。
【0263】
動物を試験誘導体(または他のもの)の最初の投薬前に6日間単独で飼育し、体重を実験を通して毎日モニタリングした。マウスを6つの群(1群当たりn=12)に分けた。投薬を研究0日目に開始し(
図16において点線で示されている)、以下の用量で1日1回皮下投与した。
【0264】
長期作用型GLP-1受容体アゴニストであるセマグルチドを第1群において陽性対照として使用し、また、第2群においてIL-22の試験誘導体(誘導体6)と組み合わせて調査した。セマグルチドの投薬は、以下のスケジュールに従って徐々に漸増した:0.6nmol/kg 0日目-1.2nmol/kg 1日目-2.4nmol/kg 2日目-4.8nmol/kg 3日目-12nmol/kg 4日目-30nmol/kg 5日目。組み合わせの群では、セマグルチド投薬を0日目で開始し、体重減少がセマグルチド処置群においてプラトーになった後に誘導体6の投薬を12日目で開始した(
図16において点線で示されている)。
【0265】
第3の「高用量」群における誘導体6の投薬は、以下のスケジュールに従って徐々に漸増した:0.05mg/kg 0日目-0.1mg/kg 1日目-0.15mg/kg 2日目-0.2mg/kg 3日目-0.25mg/kg 4日目。用量を14日目で0.25mg/kgから0.1mg/kgに変更した(
図16において点線で示されている)。第4の「低用量」群において、誘導体6の投薬は、0.05mg/kgで開始し、さらなる漸増をしなかった。
【0266】
第5の群において、比較物としてのIL-22-Fc融合体(hFc-hIL-22)の投薬は、以下のスケジュールに従って徐々に漸増した:0.02mg/kg 0日目-0.04mg/kg 1日目-0.06mg/kg 2日目-0.08mg/kg 3日目-0.1mg/kg 4日目。hFc-hIL-22の用量は、実施例6で見られるように(
図14参照)、より長い半減期に基づく標的係合、及びそれに応じて誘導体6と比較してより高い標的係合について0.25mg/kgの誘導体6群と一致するように選択した。
【0267】
第6の群は、陰性対照としてビヒクルのみが投薬された。
【0268】
血漿トリグリセリド(TG)レベルを、ベースライン(-2日目)、投薬開始後2週目(14日目)及び4週目(28日目)で測定した。具体的には、適切な抗凝固剤で処置された開口Microvette(100μlまたは200μl)チューブ内に尾血液体積を200μlまたはそれ未満で圧入することによって尾血液サンプルを分析のため収集した。血液を、3000gで10分間遠心分離するまで4℃で放置した。血漿上清を新たなチューブに移し、ドライアイス上ですぐに凍結し、-80℃で保存した。cobas(登録商標)c501分析機で市販のキット(Roche Diagnostics)を使用して製造業者の指示書に従ってTGレベルを測定した。
【0269】
結果
実験の過程にわたる体重が
図16に示されている。
【0270】
研究は、肥満マウスモデルの体重の減少において誘導体6の用量依存的な高い有効性を実証した。さらに、それはGLP-1受容体アゴニスト(セマグルチド)に対する相加性を実証し、これは肥満処置についての後期臨床試験において調査されている。データは、体重減少の誘導においてhFc-hIL-22と比較して誘導体6の優位性を示唆していた。重要なことに、hFc-hIL-22は、マウスにおいて誘導体6よりも長い半減期を有し、誘導体6の半分の用量で投薬された場合であってもより高い標的係合を実証した。よって、この研究において使用された0.1mg/kgのhFc-hIL-22の用量は、0.25mg/kgの誘導体6群と類似する標的係合のために選択された。
【0271】
ここで食餌誘導性肥満マウスで観察される誘導体6によって誘導される体重減少に対する感受性は、痩せたマウスでは観察されない。例えば、1日1回の投薬での10日間のDSS誘導性大腸炎研究(実施例6)において、研究開始時の体重は、DSS/ビヒクル群及びDSS/誘導体6(0.35mg/kg)群の両方で19.0gであった。研究終了時では、体重は、DSS/ビヒクル群では17.6グラムであったのに対し、DSS/誘導体6(0.35mg/kg)群では17.4グラムであり、これらは異なる(対応のないスチューデントのt検定でp=0.82)。比較により、本研究において10日目のビヒクル群及び誘導体6(0.25mg/kg)群におけるマウスは、それぞれ43.5g及び35.2gの体重を有していた。よって、ビヒクル群と比較して誘導体6群において有意な体重減少が観察された(10日目の体重について対応のないスチューデントのt検定でp<0.0001)。研究開始時では、体重は、ビヒクル群対誘導体6群において同様であった(それぞれ44.3g及び44.1g)。
【0272】
ベースライン(-2日目)、投薬開始後2週目(14日目)及び4週目(28日目)で測定された血漿TGレベルが表15に示されている。
【0273】
【0274】
デルタは、示された処置及び時点についてのベースラインからのTGレベル(nmol/l)の変化を指す。表15から分かるように、レベルの変化は、ビヒクル群では上がった(増加した)が、すべての他の群では下がった(減少した)。
【0275】
誘導体6は、TGレベルの低下においてセマグルチドによりも高い有効性を低用量でも有し、セマグルチドよりも体重減少を起こしにくい(例えば、セマグルチドについては-0.14±0.066、誘導体6(0.05mg/kg)については-0.30±0.034及び誘導体6(0.25/0.1mg/kg)については-0.35±0.052)の4週目のデルタTGレベル(nmol/l))。結果は、誘導体6が、体重減少効果とは部分的に無関係に、TG低下における高い有効性を有していたことを示している。さらに、セマグルチドに加えて誘導体6の効果の完全な相加性が存在した。4週目において、デルタTGとして計算されるTGレベル(nmol/l)の低下は、誘導体6(0.05mg/kg)では-0.30±0.034、セマグルチドでは-0.14±0.066及びセマグルチド+誘導体6(0.05mg/kg)では-0.53±0.042であった。研究の過程にわたって増加するビヒクル群のTGレベルにもかかわらず、ベースラインと比較してTGが低下する結果(デルタTG)となった。
【0276】
結論
研究は、本発明の誘導体(誘導体6)が、陽性対照として使用されたセマグルチド-長期作用型GLP-1受容体アゴニストで見られたものと少なくとも同等のレベルまで、肥満マウスにおいて用量依存的に体重減少を誘導し得ることを実証した。さらに、セマグルチド及び誘導体6の組み合わせを使用して体重減少に対する相加的効果が存在した。体重減少の誘導における誘導体6の有効性は、同様のレベルの標的係合を提供するために選択された用量を用いてhFc-IL-h22で観察されたものよりも高かった。食餌誘導性肥満マウスにおいて誘導体6によって誘導された体重減少は、DSSで処置された痩せたマウスでは見られず、肥満マウスが誘導体6誘導性体重減少に対してより感受性であることを実証している。食餌誘導性肥満マウスにおいて観察された体重減少は、ヒトにおいて使用されるであろうものと同じ読み取り値であるため、観察された体重減少が同様に変換できるであろうということを予測するのは妥当である。
【0277】
誘導体6はまた、TGレベルの低下において高い有効性を示した。誘導体6は、試験された用量の両方で、セマグルチドよりも高い有効性を示し、組み合わせ投薬における有効性に対する完全な相加性が観察された。0.05mg/kg用量の誘導体6が、より少ない体重減少にもかかわらずセマグルチドよりも高い有効性を有していたことを考慮すると、誘導体6のTG低下効果は、少なくとも体重減少とは部分的に無関係であったことが結論付けられ得る。さらに、誘導体6は、試験された用量の両方でhFc-hIL-22比較物よりも優れていた。食餌誘導性肥満マウスにおいて観察されたTG低下は、ヒトにおいて使用されるであろうものと同じ読み取り値であったため、観察された効果が同様に変換できるであろうということを予測するのは妥当である。よって、結果は、高いTGレベルを特徴とする障害及び病態のための新たな処置が見出されたことを示している。
【0278】
本発明の所定の特徴が本明細書で例示及び記載されているが、多くの改変及び均等物が当業者に明らかになる。そのため、特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に入るそのような改変及び均等物のすべてを包含することが意図されている。
【配列表】