(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】コンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
E01D 1/00 20060101AFI20240426BHJP
E01D 2/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
E01D1/00 D
E01D2/04
(21)【出願番号】P 2023087863
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506045118
【氏名又は名称】NEXCO西日本コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 辰男
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 省吾
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祐典
(72)【発明者】
【氏名】角本 周
(72)【発明者】
【氏名】久松 健一
(72)【発明者】
【氏名】井隼 俊也
(72)【発明者】
【氏名】俵 綾子
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275375(JP,A)
【文献】特開2017-082404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00
E01D 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物であって、
水平な第1方向を長手方向とするプレキャスト製の複数のプレキャストセグメント桁が一体化された床版桁を備え、
前記プレキャストセグメント桁は、中空断面の下面が開放された断面逆U字状となって
おり、
前記プレキャストセグメント桁の開放された下面に面した内側の角部は、面取り成形されていること
を特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記プレキャストセグメント桁の長さ方向の一部は、中空断面の下面が閉塞されていること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
複数の前記プレキャストセグメント桁は、緊張材により前記第1方向又は前記第1方向と直交且つ水平な第2方向にポストテンション方式でプレストレスが付与されて一体化されていること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
複数の前記プレキャストセグメント桁は、前記第1方向の一方又は両方に張り出したフランジを有し、前記第1方向と直交且つ水平な第2方向を長手方向とするプレキャスト製の複数の横梁を介して他のコンクリート構造物上に載置されていること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
前記横梁と前記プレキャストセグメント桁とは、無収縮モルタル、感圧硬化ゴム、樹脂、又はこれらが複合されたものを介して一体化されていること
を特徴とする請求項
4に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
複数の前記プレキャストセグメント桁は、所定の間隔で水平力に対抗する隔壁で一体化されていること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
複数の前記プレキャストセグメント桁のうち一番外側に位置する外桁は、内側に位置する中桁と比べて前記所定の間隔より短い間隔により隔壁で一体化されていること
を特徴とする請求項
6に記載のコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定形状のプレキャストセグメント桁を備えたコンクリート構造物に関し、より詳しくは、特定形状のプレキャストセグメント桁を備えた橋梁の上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量化のためにコンクリートより遥かに軽いドラム缶のような中空材を埋設した梁を持たない中空床版桁の橋梁が知られている。また、プレテンション方式又はポストテンション方式により緊張材でプレストレスを負荷し、軽量化のために中心部に発泡スチロール等を埋設して断面矩形の中空状としたホロー桁も知られている。その他、桁断面がT形状をしたT桁のT桁橋や、大規模橋梁に採用される中空材を用いず、橋梁内に大きな空洞を作って軽量化した箱桁からなる箱桁橋も知られている。
【0003】
また、このような予め工場や現場ヤードで分割して製作した種々の断面形状のプレキャスト部材(セグメント)を架橋地点で接合し、プレストレスを与えて一体化して橋梁を構築する工法は、プレキャストセグメント工法と呼ばれている。特に、プレキャストセグメント工法で構築されるプレキャストセグメント桁の橋梁のなかでも、断面矩形中空状のホロー桁は、重量に比して断面性能が優れており、中規模橋梁では、コストパフォーマンスが良好なため、採用される事例が多くなっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、プレテンション方式でプレストレスが導入されたプレテンホロー桁を横締めPC鋼材で一体化したプレテンホロー桁橋が開示されている(特許文献1の明細書の段落[0019]~[0027]、図面の
図3,
図4等参照)。しかし、特許文献1に記載のプレテンホロー桁は、複数あるホロー桁と橋脚との間にそれぞれ比較的高価な支承を設ける必要があり、支承の設置コストが嵩むという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するべく、特許文献2には、下部構造物4上に橋軸直角方向視で1点の支承装置5を介して橋軸直角方向に延長するようにプレキャスト横桁1を設け、プレキャスト横桁1は、橋軸直角方向に連続すると共に橋軸方向に張り出す縦桁支承フランジ6を備え、プレキャスト横桁1の縦桁支承フランジ6の上にプレキャスト縦桁2が並列に複数架設され、プレキャスト横桁1と各プレキャスト縦桁2の端部とが一体化された橋梁が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0018]~[0028]、図面の
図2等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の断面ロの字状のプレテンホロー桁や特許文献2に記載のプレテンホロー桁である断面ロの字状のプレキャスト縦桁は、中空部分が橋梁完成後に容易に点検できず、経年劣化していることを発見しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-169731号公報
【文献】特開2009-256873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、経年劣化を目視、静止画、動画等により容易に確認することができるプレキャストセグメント桁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係るコンクリート構造物は、コンクリート構造物であって、水平な第1方向を長手方向とするプレキャスト製の複数のプレキャストセグメント桁が一体化された床版桁を備え、前記プレキャストセグメント桁は、中空断面の下面が開放された断面逆U字状となっており、前記プレキャストセグメント桁の開放された下面に面した内側の角部は、面取り成形されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係るコンクリート構造物は、請求項1に係るコンクリート構造物において、前記プレキャストセグメント桁の長さ方向の一部は、中空断面の下面が閉塞されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係るコンクリート構造物は、請求項1に係るコンクリート構造物において、複数の前記プレキャストセグメント桁は、緊張材により前記第1方向又は前記第1方向と直交且つ水平な第2方向にポストテンション方式でプレストレスが付与されて一体化されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係るコンクリート構造物は、請求項1に係るコンクリート構造物において、複数の前記プレキャストセグメント桁は、前記第1方向の一方又は両方に張り出したフランジを有し、前記第1方向と直交且つ水平な第2方向を長手方向とするプレキャスト製の複数の横梁を介して他のコンクリート構造物上に載置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係るコンクリート構造物は、請求項4に係るコンクリート構造物において、前記横梁と前記プレキャストセグメント桁とは、無収縮モルタル、感圧硬化ゴム、樹脂、又はこれらが複合されたものを介して一体化されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係るコンクリート構造物は、請求項1に係るコンクリート構造物において、複数の前記プレキャストセグメント桁は、所定の間隔で水平力に対抗する隔壁で一体化されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係るコンクリート構造物は、請求項6に係るコンクリート構造物において、複数の前記プレキャストセグメント桁のうち一番外側に位置する外桁は、内側に位置する中桁と比べて前記所定の間隔より短い間隔により隔壁で一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1~7に係る発明によれば、経年劣化を目視、静止画、動画等により容易に確認することができる。また、請求項1~7に係る発明によれば、角部は、直線状又は曲線状に面取り成形されているので、プレキャストセグメント桁の内部が、目視、静止画、又は動画により観察し易くなり、より経年劣化を発見し易くなり、補修等も容易となる。
【0019】
特に、請求項2に係る発明によれば、プレキャストセグメント桁の長さ方向の一部は、中空断面の下面が閉塞されているので、隔壁を設けなくても地震、風力、波力、衝突荷重などの外力として作用する水平力に対抗することができる。
【0020】
特に、請求項3に係る発明によれば、ポストテンション方式でプレストレスが付与されて一体化されているので、橋梁をより強度及び耐久性が高いものとすることができる。
【0021】
特に、請求項4及び5に係る発明によれば、比較的高価な支承の数を大幅に低減して支承の設置コストを削減することができる。
【0022】
特に、請求項6及び7に係る発明によれば、隔壁により、地震、風力、波力、衝突荷重などの外力として作用する水平力に対抗することができる。
【0023】
特に、請求項7に係る発明によれば、衝突荷重等の水平力が直接作用する外桁をさらに強固な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物である床版桁橋の上部構造を橋軸直角方向に沿った鉛直面で切断した状態で示す断面図である。
【
図2】
図2は、同上の上部構造を橋軸直角方向に沿って水平に見た立面図である。
【
図3】
図3は、同上の上部構造を上下方向に沿って鉛直に見た平面図である。
【
図4】
図4は、同上の上部構造のプレキャストセグメント桁単体を橋軸直角方向に沿った鉛直面で切断した状態で示す断面図である。
【
図5】
図5は、同上の上部構造の横梁を示す斜視図であり、(a)が下部構造である橋台上に設置する横梁を示し、(b)が橋脚上に設置する横梁を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るコンクリート構造物の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1~
図5を用いて、本発明の実施形態に係る特定形状のプレキャストセグメント桁を備えたコンクリート構造物について説明する。なお、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物として、床版桁からなる橋梁10の橋台11aと橋脚11bとからなる2径間の下部構造11間に支承装置12を介して架け渡された橋梁10の上部構造1を例示して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る床版桁橋の上部構造1を橋軸直角方向に沿った鉛直面で切断した状態で示す断面図であり、
図2は、上部構造1を橋軸直角方向に沿って水平に見た立面図である。また、
図3は、上部構造1を上下方向に沿って鉛直に見た平面図である。なお、図中のX方向は、水平な第1方向である橋軸方向Xであり、Y方向は、X方向と直交する水平な第2方向である橋軸直角方向Yである。また、Z方向は、上下方向Zを示している。
【0028】
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物である橋梁の上部構造1(以下単に上部構造1ともいう)は、水平な第1方向である橋軸方向Xを長手方向とするプレキャスト製の複数のプレキャストセグメント桁2,・・・,2が一体化された床版桁3を備えている。これらのプレキャストセグメント桁2は、プレキャスト製の複数の横梁4を介して下部構造11である橋台11aや橋脚11bの上に載置されている。このため、従来、プレキャストセグメント桁2ごとに必要であった比較的高価な支承12の数を大幅に低減して支承12の設置コストを削減することができる。
【0029】
(床版桁)
次に、
図1~
図4を用いて、床版桁3及び特定形状のプレキャストセグメント桁2について説明する。
図4は、上部構造1のプレキャストセグメント桁2単体を橋軸直角方向Yに沿った鉛直面で切断した状態で示す断面図である。床版桁3は、
図1~
図3に示すように、プレキャストセグメント桁2同士の隙間の間詰め部7にコンクリートが打設されて硬化した後、
図1に示すように、複数の特定形状のプレキャストセグメント桁2が緊張材であるPC鋼材13により橋軸直角方向Yにポストテンション方式でプレストレスが付与されて一体化されている。但し、状況に応じて適宜、橋軸方向Xにポストテンション方式でプレストレスを付与することも可能である。
【0030】
(プレキャストセグメント桁)
また、
図4に示すように、このプレキャストセグメント桁2は、通常のプレテンションホロー桁と同様の断面矩形状の外形と同様の桁本体20から主に形成されている。このため、従来の型枠をそのまま使用することができ、コスト増を防ぐことができる。但し、従来のホロー桁は、断面五角形状の中空部分の内部の錆びやひび割れの発生の有無を目視等で点検することができないという問題があった。
【0031】
そこで、本実施形態に係るプレキャストセグメント桁2の桁本体20は、
図4に示すように、通常のプレテンションホロー桁の断面五角形状の中空部21に外部と連通する所定幅(図示形態ではD1=120mm)の開口溝22が形成されており、断面矩形状の外形の桁本体20の下面が開放された断面逆U字状となっている。このため、桁本体20は、中空部21の内部の経年劣化を目視や、ドローン等を用いて静止画、又は動画により容易に確認することができる。
【0032】
また、
図4に示すように、プレキャストセグメント桁2は、従来のプレテンホロー桁と同様に、桁本体20に複数のPC鋼材23が挿通されてプレテンション方式でプレストレスが付与されたプレテンション・プレキャスト(PCPCa)桁である。勿論、桁のスパンが短い場合は、プレテンション方式でプレストレスを付与しなくてもよい。また、プレキャストとは、工場等で予めコンクリートを打設して製造する場合に限られず、現地近くの別ヤードで3Dプリンター等を含め有人又は無人で予めコンクリートを打設して製造する場合も含むものである。
【0033】
図4に示すように、桁本体20の複数のPC鋼材23は、D10などの鋼材からなるスターラップ筋24で囲まれて囲繞されており、曲げ剛性が担保されている。なお、PC鋼材23の間隔は、緊張アバットの寸法を変えないように、従来のプレテンホロー桁と同じにしている。これにより、既存の施設を活用でき、この点でも製造コストを低減することができる。
【0034】
また、前述のように、桁本体20の下面には、開口溝22が形成されているため、中空部21の天井面21aは、目視等で確認が容易となっている。しかし、
図4に示す中空部21のハンチ上面21bは、ハンチの傾斜角度が、図示形態では、D2=140mm×D2=140mmの45度となっており、破線矢印で示す目線角度では、開口溝22の幅D1だけでは見え難い角度となっている。このため、本実施形態に係るプレキャストセグメント桁2では、断面逆U字状の開放された下面に面した内側の角部25は、ハンチの傾斜角度に応じた直線状に面取り成形されている。勿論、この角部25は、直線状に面取り成形されているものに限られず、曲面状に面取り成形されていても構わない。いずれでも、開口溝22の幅D1を抑えて所定の強度を確保しつつ、中空部21のハンチ上面21bの視認性が向上するからである。
【0035】
(横梁)
次に、
図1~
図3,
図5を用いて、横梁4について説明する。
図5は、上部構造1の横梁4を示す斜視図であり、(a)が下部構造である橋台上に設置する横梁4を示し、(b)が橋脚上に設置する横梁4’を示している。本実施形態に係る横梁4は、橋台11aや橋脚11bなどの橋の各下部構造11上に設置されるプレキャストコンクリート製の部材である、
図5(a)に示すように、橋台11a上に設置される長手方向と直交する鉛直断面において断面L字状の横梁4と、橋脚11b上に設置される長手方向と直交する鉛直断面において断面凸字状の横梁4’の2種類の形態がある。
【0036】
この横梁4は、
図5(a)に示すように、鉛直断面が縦長な長方形状の梁本体40と、この梁本体40から橋軸方向Xの一方に張り出した長手方向の端部を支持するフランジ41を備えている。また、この梁本体40の梁成(梁の高さ)は、フランジ41にプレキャストセグメント桁2を載置したときに、梁本体40の上面とプレキャストセグメント桁2の上面とが略同じ高さとなるように設定されている(
図2参照)。
【0037】
また、横梁4’は、
図5(b)に示すように、鉛直断面が縦長な長方形状の梁本体40’と、この梁本体40’から橋軸方向Xの両方に張り出したプレキャストセグメント桁2の長手方向の端部を支持するフランジ41’,42’を備えている。また、この梁本体40’の梁成(梁の高さ)は、フランジ41’,42’にプレキャストセグメント桁2,2を載置したときに、プレキャストセグメント桁2,2同士を一体化するコンクリートを打設するスペースがとれるように、梁本体40’の上面がプレキャストセグメント桁2の上面より低くなるように設定されている(
図2参照)。
【0038】
なお、本実施形態に係る横梁としてプレキャストコンクリート製の物を例示して説明したが、プレキャスト製ではなく場打ちの通常の鉄筋コンクリート製としても構わない。プレキャスト製の横梁と比べて現場打ちの場合多少工期は掛かるものの、横梁を介して橋脚上に主桁を設置することで、主桁ごとに必要であった支承装置12の数を低減できることは明らかである。
【0039】
(隙間材)
なお、前述の横梁4(4’)のフランジ41(フランジ41’,42’)間にプレキャストセグメント桁2を架け渡す際には、プレキャストセグメント桁2の長手方向の端部をフランジ41(フランジ41’,42’)上に載置する前に、図示しない隙間材をフランジ41(フランジ41’,42’)上に敷設して置くことが好ましい。そうすることで、フランジ41(フランジ41’,42’)の上面やプレキャストセグメント桁2の下面に反りや凹凸があった場合でも、横梁4(4’)とプレキャストセグメント桁2の間に生じる隙間を埋めて、活荷重等の上部構造1に作用する応力を、下部構造11に均等に伝達することができる。このため、上部構造1の耐久性が向上する。
【0040】
隙間材としては、手間を掛けずに隙間を確実に埋めることができるため感圧硬化ゴムやセルフレベリング材などの無収縮モルタル等が好ましい。また、隙間材としては、高分子系材料などの樹脂であっても構わないし、感圧硬化ゴム、無収縮モルタル、樹脂のうちの2種又はそれ以上のものを複合・積層したものも適用することができる。
【0041】
(床版及び高欄)
また、
図1に示すように、複数のプレキャストセグメント桁2からなる床版桁3の上には、平板状の床版5が形成され、床版5の橋軸直角方向Yの端部である縁沿いに壁高欄6が設けられている。但し、
図1に示す床版5及び高欄6は、一般的な現場打ちの鉄筋コンクリート製のものであり、詳細な説明は省略する。
【0042】
(間詰め部)
図1、
図3等に示すように、橋軸直角方向Yに隣接するプレキャストセグメント桁2と他のプレキャストセグメント桁2との間の橋軸方向Xに沿ったスペース(間)が間詰め部7である。この間詰め部7には、現場においてコンクリートが打設され、打設されたコンクリートが硬化して間詰めコンクリートが形成されることにより、橋軸直角方向Yに隣接する複数のプレキャストセグメント桁2同士が一体化されている。
【0043】
なお、間詰め部7に間詰めコンクリートが打設される場合を例示して説明したが、間詰め部7には、コンクリートだけでなくモルタルや石膏などの水和反応により硬化する物質を始め、充填されて経時的に硬化して間詰め部7に作用する圧縮力に対抗しうる経時硬化性物質からなる充填材であれば用いることができる。特に、間詰め部7の幅が狭い場合には、接着樹脂などのコンクリートより養生期間(硬化するまでの時間)が短い経時硬化性物質を用いると養生期間及び施工期間を短縮できるため好ましい。
【0044】
(隔壁)
また、
図2,
図3に示すように、橋軸直角方向Yに並設された複数のプレキャストセグメント桁2同士は、所定の間隔で現場打ちの鉄筋コンクリートからなる水平力に対抗する隔壁8で一体化されている。つまり、プレキャストセグメント桁2が、中空断面の下面が開放されて断面逆U字状となっている部分は、桁の長さ方向の一部となっており、換言するとプレキャストセグメント桁2の桁の長さ方向の一部は、断面逆U字状が閉塞され、矩形断面となっている。
【0045】
具体的には、一番外側に位置する外桁2’を除く、内側に位置する中桁である一般部のプレキャストセグメント桁2は、橋軸方向Xの長さ15mごとに隔壁8が設けられている。そして、一番外側に位置する外桁2’は、それより短い間隔で隔壁8が設けられている。
【0046】
図示形態では、一番外側に位置する外桁2’は、所定間隔内に2倍の2以上の隔壁8が設けられている。外桁2’は、中桁である一般部のプレキャストセグメント桁2に比べて風荷重や衝突荷重などの横荷重が直接かかるからである。このように隔壁8を設けることにより、従来のホロー桁と比べて、強度的に弱い断面矩形状の外形の桁本体20の下面が開放された断面逆U字状とした場合でも、風荷重や衝突荷重などの横荷重に対抗することができる。
【0047】
(打ち継ぎコンクリート)
なお、
図2,
図3に示すように、橋脚11b上のプレキャストセグメント桁2同士の橋軸方向Xの接続は、所定の配筋がされた上、打ち継ぎコンクリート9が打設されて接続されている。この打ち継ぎコンクリート9も間詰め7の間詰めコンクリート同様にコンクリート以外の経時硬化性物質からなる充填材とすることも可能である。
【0048】
以上説明した実施形態に係るコンクリート構造物である床版桁3を備えた橋梁10の上部構造1によれば、従来のホロー桁と相違して、中空部21に外部と連通する開口溝22が形成されており、断面矩形状の外形の桁本体20の下面が開放された断面逆U字状となっているので、中空部分の内部の錆びやひび割れの発生の有無を目視等で点検することができ、経年劣化を目視、静止画、動画等により容易に確認することができる。
【0049】
また、上部構造1のプレキャストセグメント桁2の角部25は、面取り成形されているので、プレキャストセグメント桁2の中空部21の内部が、さらに目視、静止画、又は動画により観察し易くなり、より経年劣化を発見し易くなり、補修等も容易となる。
【0050】
その上、上部構造1によれば、床版桁3のプレキャストセグメント桁2同士がポストテンション方式でプレストレスが付与されて一体化されているので、橋梁10をより強度及び耐久性が高いものとすることができる。
【0051】
また、上部構造1は、下部構造11と上部構造1のプレキャストセグメント桁2との間に横梁4(4’)を介して支承装置12を設置できるため、桁ごとに必要であった高価な支承装置12の数を低減することができ、橋の上部構造1の施工費を削減することができる。
【0052】
それに加え、上部構造1によれば、内側に位置する一般部のプレキャストセグメント桁2は、橋軸方向Xの長さ15mなどの所定間隔ごとに隔壁8が設けられており、一番外側に位置する外桁2’は、それより短い間隔で隔壁8が設けられているので、プレキャストセグメント桁2の下面に開口溝22を形成しても、地震、風力、波力、衝突荷重などの外力として作用する水平力に対抗することができる。
【0053】
また、上部構造1のプレキャストセグメント桁2に、長さ方向の全長に亘って開口溝22を設けるのではなく、桁の長さ方向の一部を閉塞して長さ方向の一部のみに開口溝22を設けることで、隔壁8を現場打ちで打設して設けることなく、隔壁8と同様に、外力として作用する水平力に対抗することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態に係る特定形状のプレキャストセグメント桁を備えたコンクリート構造物について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0055】
特に、コンクリート構造物として、床版桁3からなる橋梁10の橋台11aと橋脚11bとからなる2径間の下部構造11間に支承装置12を介して架け渡された橋梁10の上部構造1を例示して説明したが、本発明に係るコンクリート構造物は、橋梁の上部構造に限られない。例えば、本発明は、桟橋等の人工地盤などの床版桁3を備えたコンクリート構造物にも適用することができる。このため、橋軸方向Xを水平な第1方向と称し、橋軸直角方向Yを、第1方向と直交する水平な第2方向と称している。
【符号の説明】
【0056】
10:橋梁(コンクリート構造物)
11:下部構造物
11a:橋台(下部構造物)
11b:橋脚(下部構造物)
12:支承
13:PC鋼材(緊張材)
1:上部構造(コンクリート構造物)
2:プレキャストセグメント桁(床版桁)
20:桁本体
21:中空部
21a:天井面
21b:ハンチ上面
22:開口溝
23:PC鋼材
24:スターラップ筋
25:角部
3:床版桁
4,4’:横梁
40,40’:梁本体
41,41’,42’:フランジ
5:床版
6:壁高欄
7:間詰め部
8:隔壁
9:打ち継ぎコンクリート
【要約】
【課題】経年劣化を目視、静止画、動画等により容易に確認することができるプレキャストセグメント桁を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物において、水平な第1方向を長手方向とするプレキャスト製の複数のプレキャストセグメント桁が一体化された床版桁を備え、前記プレキャストセグメント桁を、中空断面の下面が開放された断面逆U字状とする。また、プレキャストセグメント桁2の断面逆U字状の開放された下面に面した内側の角部25を面取り成形する。
【選択図】
図1