(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】特別な面取り部の形状および高強度を有する超薄ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20240426BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C19/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093757
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2020544733の分割
【原出願日】2018-05-15
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】512139847
【氏名又は名称】ショット グラス テクノロジーズ (スゾウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT GLASS TECHNOLOGIES (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】79 Huoju Road, Science & Technology Industrial Park, Suzhou New District, Suzhou, Jiangsu 215009, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニン ダー
(72)【発明者】
【氏名】フオン ホー
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194785(WO,A1)
【文献】特開2018-067709(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088868(WO,A1)
【文献】特開2015-197784(JP,A)
【文献】特開2015-093822(JP,A)
【文献】特表2016-539067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00 - 23/00
C03B 17/06
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.4mm以下の厚さ(t)、第1の表面(2)および第2の表面(3)、および少なくとも100MPaの圧縮応力(CS)によって定義される圧縮応力領域、および前記第1の表面(2)と前記第2の表面(3)とをつなぐ少なくとも1つの端部(4)を有する、化学強化されたガラス物品において、前記少なくとも1つの端部(4)が、面取り部の幅(A)と面取り部の高さ(B)とを有する少なくとも1つの面取り部(5)を有し、
(i) 前記面取り部(5)が、面取り部の幅/面取り部の高さの比(A/B)
3.0~20を有し、且つ、
前記面取り部(5)が、面取り部の幅/ガラスの厚さの比(A/t)少なくとも0.5を有する、
または
(ii) 前記面取り部(5)が、面取り部の幅/面取り部の高さの比(A/B)1.5~20を有し、且つ、
前記面取り部(5)が、面取り部の幅/ガラスの厚さの比(A/t)>1.2を有する、
前記化学強化されたガラス物品。
【請求項2】
前記ガラス物品(1)が、厚
さ≦0.21m
m且つ/または≧0.005mmを有する、請求項1に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項3】
前記ガラス物品(1)が、厚さ≦0.1mmを有する、請求項1に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項4】
前記(i)については前記比A/Bが
3.25~15であるか、または前記(ii)については前記比A/Bが1.5~1
5である、請求項1
から3までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項5】
前記少なくとも1つの端部(4)が、比A/Bを有する前記第1の表面(2)に向かう第1の面取り部(5)と、比A’/B’を有する第2の表面(3)に向かう第2の面取り部(5’)とを有し、前記第1の面取り部(5)および前記第2の面取り部(5’)がガラス物品(1)の両側上で本質的に対称である、請求項1から
4までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項6】
A/BとA’/B’との間の差が、30%未
満である、請求項
5に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項7】
前記(i)については前記比A/t
が>0.6
であるか、
または前記(ii)については前記比A/tが>1.3である、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項8】
前記(i)については前記比A/tが>0.8であるか、または前記(ii)については前記比A/tが>1.4である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項9】
CSが、>200MP
a、且つ/または2000MPa未満である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項10】
DoLが>1μm~<40μmである、請求項1から
9までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項11】
前記ガラス物品(1)が、曲げ強さ(BS)>700MP
aを有する、請求項1から
10までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項12】
前記ガラス物品(1)が、差(BS-CS)少なくと
も300MP
aを有する、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項13】
前記ガラス物品(1)が、
【数1】
[式中、「a」は≧
4である定数である]
よりも高い平均曲げ強さ(BS)を有する、請求項1から
12までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項14】
前記ガラス物品(1)の平均破壊曲げ半径が、
【数2】
[式中、「a」は≧
4である定数である]
よりも小さい、請求項1から
13までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項15】
前記ガラス物品(1)が、破壊することなく
【数3】
[式中、「a」は≧
4である定数である]
よりも小さい曲げ半径を有する、請求項1から
14までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項16】
前記端部(4)が、複数の丸められた実質的に半球形の凹み(9)を有する構造化された区域を有する、請求項1から
15までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項17】
前記端部(4)が、前記第1の表面(2)および前記第2の表面(3)に対して垂直に向いている面である終端区域(6)を含む、請求項1から16までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項18】
前記ガラス物品(1)が、少なくとも1つの表面で、有機または無機材料の被覆されたまたは貼り合わせられた層を含む、請求項1から
17までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品。
【請求項19】
フレキシブルおよび折りたたみ可能な電子製品、例えばイメージセンサ、ディスプレイカバー、スクリーンプロテクタのためのカバーおよび基板の分野における、請求項1から
18までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品の使用。
【請求項20】
ディスプレイの基板およびカバー、壊れやすいセンサ、指紋センサモジュールの基板またはカバー、半導体のパッケージ、薄膜電池の基板およびカバー、折りたたみディスプレイの用途における、請求項1から
18までのいずれか1項に記載の化学強化されたガラス物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.4mm以下の厚さ、第1の表面、第2の表面、および少なくとも100MPaの圧縮応力によって定義される圧縮応力領域、および前記第1の表面と前記第2の表面とをつなぐ少なくとも1つの面取りされた端部を有する、化学強化されたガラスに関する。本発明は、フレキシブルおよびプリンテッド・エレクトロニクスにおけるフレキシブルユニバーサル基板、タッチ制御パネルのためのセンサ、指紋センサ、薄膜電池の基板、モバイル電子機器、半導体インターポーザ、フレキシブル且つ曲げることができるディスプレイ、太陽電池、または高い化学的安定性と、温度安定性と、低いガス透過性と、柔軟性と、薄い厚さとの組み合わせが必要とされる他の用途としての、前記化学強化されたガラス物品の使用にも関する。消費者用および産業用の電子機器のほかに、前記発明は、産業上の生産または測定における保護用途のためにも使用できる。
【背景技術】
【0002】
種々の組成を有する薄ガラスは、透明性、高い化学的耐性および耐熱性、および定義された化学的特性および物理的特性が重要である多くの用途のために適した基板材料である。例えば、無アルカリガラスは、ディスプレイパネルのために、およびウェハ形式における電子的なパッケージング材料として使用され得る。アルカリ含有シリケートガラスは、フィルタコーティング基板、タッチセンサ基板および指紋センサモジュールのカバーのために使用される。
【0003】
アルミノシリケート(AS)ガラス、リチウムアルミノシリケート(LAS)ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびソーダライムガラスは、指紋センサ(FPS)用のカバー、保護カバーおよびディスプレイカバーなどの用途のために幅広く使用されている。それらの用途において、前記ガラスは通常、特別な試験、例えば2点曲げ(2PB)、球の落下、ペンの落下、鋭利物衝撃耐性、鋭利物接触耐性、引掻耐性およびその他によって測定される高い機械的強度を達成するために化学強化される。
【0004】
化学強化は、例えばディスプレイ用途のためのカバーガラスとして使用されるソーダライムガラスまたはアルミノシリケート(AS)ガラスまたはリチウムアルミノシリケート(LAS)ガラスまたはホウケイ酸ガラスなどのガラスの強度を高めるための周知の方法である。この状況下で、表面圧縮応力(CS)は典型的には100~1000MPaであり、且つイオン交換層の深さは典型的には30μmを上回り、好ましくは40μmを上回る。輸送または航空における安全保護用途のためには、ASガラスは100μmを上回る交換層を有することがある。通常、高いCSと高いDoLとを兼備するガラスは、それら全ての用途を目的としており、且つガラスの厚さは通常約0.5mm~10mmの範囲である。
【0005】
現在、製品の新たな機能性およびより広い用途分野についての継続的な要請により、高い強度と柔軟性とを有するさらにより薄く且つ軽いガラス基板が必要とされている。超薄ガラス(UTG)が典型的に適用される分野は、精密電子機器、つまりフレキシブル且つ折りたたみ可能なディスプレイなどの保護カバーである。現在、製品の新たな機能性に対する高まる要請、および新規且つ広範な用途の探索により、新たな特性、例えば柔軟性を有するより薄く且つより軽いガラス基板が必要とされている。UTGの柔軟性に起因して、そのようなガラスは、例えばスマートホン、タブレット、時計および他のウェアラブル機器などの機器のためのカバーガラスおよびディスプレイとして調査および開発されてきた。そのようなガラスは、指紋センサモジュールのカバーガラスとして、およびカメラのレンズカバーとしても使用され得る。
【0006】
しかしながら、ガラスシートが0.5mmより薄くなってくると、主に、破壊をもたらす欠陥、例えばクラックおよびガラス端部での欠けに起因して、取り扱いがどんどん困難になる。また、全体の機械的強度、つまり曲げ強さまたは衝撃強さに反映される強度が著しく低下する。通常、より厚いガラスの端部はCNC(コンピュータ数値制御)研削されて欠陥が除去され得るが、その機械的研削を0.3mm未満の厚さを有する超薄ガラスに適用するのは難しい。端部でのエッチングは、超薄ガラスの欠陥を除去するための1つの解決策であり得るが、薄いガラスシートの柔軟性は、ガラス自体の低い曲げ強さによって制限されたままである。従って、薄いガラスについてガラスを強くすることは極めて重要である。しかしながら、超薄ガラスを強くすることは、ガラスの高い内部引張応力に起因して、自己破壊のリスクを常に伴う。
【0007】
典型的には、0.5mm未満の厚さの超薄板ガラスは、直接的な熱間成型方法、例えばダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法、または特別なフロート法によって製造され得る。リドロー法も可能である。化学的な方法または物理的な方法によって後処理された(例えば研削および研磨を介して製造された)薄いガラスと比較して、直接的に熱間成型された薄いガラスは、遙かに良好な表面均一性および表面粗さを有し、なぜなら、表面が高温溶融状態から室温へと冷却されるからである。ダウンドロー法を使用して、0.3mmより薄い、またはさらには0.1mmより薄いガラス、例えばアルミノシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、アルカリホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスまたは無アルカリアルミノホウケイ酸ガラスを製造できる。
【0008】
UTGの化学強化は、いくつかの発明によって記載されている。米国特許出願公開第2015/183680号明細書(US2015183680)は、限定的な範囲の内部引張応力の範囲および30μmを上回るDoLを有する0.4mm未満のガラスの強化を記載している。しかしながら、DoLが30μmを上回ると、強化された超薄ガラスにおける脆性および自己破壊などの問題が生じる。さらには、0.4mm未満の厚さのガラスをどのように製造するかは、この特許出願においては説明されていない。国際公開第2014/036267号(WO2014036267)は、高い屈曲強さを有するためには、ガラスは21000μm・MPaよりも大きい、圧縮応力と層深さとの積を有するべきであることを主張している一方で、そのような高いCSおよびDoLは超薄ガラスには適用されない。
【0009】
米国特許出願公開第2010/0279067号明細書(US20100279067)および国際公開第2016/186936号(WO2016186936)は、明らかな面取り部を有さない端部がガラスの高い強度をもたらし得ることを主張している。これに対し、国際公開第2015/095089号(WO2015095089)は、ガラス端部上を面取りして鋭利な端部上でのストレスの集中を低減するためのレーザー加工方法を記載している。米国特許出願公開第2013/0288010号明細書(US20130288010)は、面取り部の角度を調整することによって0.1~3mm厚の強化ガラスの強度を改善するためのいくつかの例を示しており、且つその端部は特定の形状へと研削される。米国特許第8110279号明細書(US 8110279)は、2mm厚のガラスの端部と表面との間の面取り部の角度を機械的に丸めることによるガラスの端部強度の改善方法を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2015/183680号明細書
【文献】国際公開第2014/036267号
【文献】米国特許出願公開第2010/0279067号明細書
【文献】国際公開第2016/186936号
【文献】国際公開第2015/095089号
【文献】米国特許出願公開第2013/0288010号明細書
【文献】米国特許第8110279号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、最大で0.4mmの厚さを有し且つ改善された曲げ強さを有する化学強化されたガラス物品を提供することである。他の課題は、強化された超薄ガラス物品の曲げ強さおよび曲げ半径を予測する方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
技術用語の説明
ガラス物品: ガラス物品は、任意のサイズのものであってよい。例えばそれは、巻かれた長い超薄ガラスリボン(ガラスロール)、またはガラスロールから切り出された単独のより小さいガラス部材、または別個のガラスシート、または単独の小さいガラス物品(例えばFPSまたはディスプレイのカバーガラス)等であってよい。
【0013】
超薄ガラス: 本発明に関し、超薄ガラスは、厚さ0.4mm以下、好ましくは0.14mm以下、特により好ましくは0.1mm以下を有するガラスである。
【0014】
厚さ(t): ガラス物品の厚さは、測定される試料の厚さの算術平均である。
【0015】
圧縮応力(CS): ガラスの表面層上でイオン交換後にガラスの網目間で誘導される圧縮。そのような圧縮は、ガラスの変形によって緩和され得ず、応力として維持される。市販の試験機、例えばFSM6000(株式会社ルケオ、日本、東京)は、導波管の機構によってCSを測定できる。
【0016】
層深さ(DoL): CSが存在するガラスの領域のイオン交換層の厚さ。市販の試験機、例えばFSM6000(株式会社ルケオ、日本、東京)は、導波管の機構によってDoLを測定できる。
【0017】
内部引張応力(CT): CSが1枚のガラスシートの片側または両側上で誘導される場合、ニュートンの法則の第三原理に従って応力を均衡させるために、ガラスの中心領域では引張応力が誘導されなければならず、それが内部引張応力と称される。CTは、測定されたCSとDoLとから計算できる。
【0018】
表面粗さ(Ra): 表面組織の尺度。これは実際の表面の理想的な形態からの垂直方向のずれによって定量化される。慣例的に、振幅パラメータが、粗さプロファイルの中心線からの垂直方向のずれに基づいて表面を特徴付ける。Raは、それらの垂直方向のずれの絶対値の算術平均である。
【0019】
曲げ強さ(BS): 超薄ガラスの曲げ強さは2点曲げ法によって測定され、ここで、超薄ガラスの片を2つの平行なプレートの間に置き、ガラスが破壊されるまでその2つのプレートを動かして互いに平行に近付け、破壊の際のプレート間の距離を記録する。
【0020】
【0021】
ここで、σは、試験された超薄ガラス表面の一部が、2つのプレス用プレートの表面と接触している場合の曲げ強さである。該試験において、試料の長さは、破壊の際にガラス表面が2点曲げにおける上部および下部のプレート表面と接触することを確実にするように注意深く選択され、そうでなければ、曲げ強さを上述の式によって計算できない。tはガラスの厚さであり、且つEはガラスのヤング率であり、且つdは破壊の際の2つのプレート間の距離であり、且つvはガラスのポアソン比である。
【0022】
曲げ強さは、UTM(万能試験機)を使用して、小さい試料上で、約20℃の室温および約50%の相対湿度で測定される。ガラス物品が曲げ位置に持ち込まれ、その反対の端部は2つの平行なプレート(鋼板)の間に配置される。次いで、プレート間の距離を連続的に低下させて、破壊されるまでガラス物品の曲げ半径が減少し、ここで負荷速度は60mm/分である。超薄ガラス物品がよれる、または損傷する、または2つまたは複数の破片へと破壊される際のプレート間の距離を記録し、それはUTMソフトウェアの信号によって測定される。その距離から、破壊の時点でのガラス物品の相応の曲げ半径を計算し、ひいては曲げ強さを計算できる。
【0023】
破壊曲げ半径(BBR): 破壊曲げ半径(mmで示される)は、ガラス物品がよれる、または損傷する、または破壊される前に最大のたわみに達するところの、曲げ位置での円弧の最小半径(r)である。それは、ガラス材料の曲げ位置での内側の曲率として測定される。半径が小さいほど、ガラスの柔軟性およびたわみが大きいことを意味する。曲げ半径は、ガラスの厚さ、ヤング率、およびガラスの強度に依存するパラメータである。化学強化された超薄ガラスは非常に薄い厚さ、低いヤング率、および高い強度を有する。3つ全ての要素が、小さい曲げ半径およびより良好な柔軟性に寄与する。BBRは曲げ強さから計算できる:
【数2】
【0024】
本発明の詳細な説明
本発明の1つの態様によれば、0.4mm以下の厚さ(t)、第1の表面および前記第1の表面に対向する第2の表面、および少なくとも100MPaの圧縮応力(CS)によって定義される圧縮応力領域、および前記第1の表面と前記第2の表面とをつなぐ少なくとも1つの端部を有する、化学強化されたガラス物品において、前記少なくとも1つの端部が、面取り部の幅(A)と面取り部の高さ(B)を有する少なくとも1つの面取り部を有する。前記面取り部は、面取り部の幅/面取り部の高さの比(A/B)1.5~20を有し、且つ前記面取り部は、面取り部の幅/ガラスの厚さの比(A/t)少なくとも0.5を有する。本発明に関して、面取り部は傾斜面または曲がった表面であってよい。
【0025】
そのような本発明によるガラス物品は改善された曲げ強さを有する。意外なことに、ガラスの種類にかかわらず、端部形状に関する本発明の特徴、つまりA/BおよびA/tは、超薄ガラス物品の曲げ強さ性能に強い影響を及ぼすことが判明した。端部の曲率を最適化することによりUTGの性能を改善しようとした従来技術とは対照的に、本発明者らは、本発明の特定の比が、薄いガラス物品の高い曲げ強さをもたらすために非常に重要であることを見出した。圧縮応力(化学強化によってもたらされる)と端部の幾何学的形状との本発明の組み合わせは、ガラス物品の曲げ強さを非常に高度に改善する。
【0026】
本発明による超薄ガラス物品は、厚さ400μm以下、好ましくは330μm以下、また好ましくは250μm以下、さらに好ましくは210μm以下、好ましくは180μm以下、また好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下を有する。特に好ましい実施態様は、厚さ100μm以下、より好ましくは80μm以下、より好ましくは75μm以下、より好ましくは70μm以下、より好ましくは65μm以下、より好ましくは60μm以下、より好ましくは55μm以下、さらに好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下を有する。そのような特に薄いガラス物品が、上記の様々な用途のために望ましい。特に、厚さが薄いとガラスの柔軟性が与えられる。厚さは少なくとも5μmであってよい。
【0027】
本発明による比A/Bは、≧1.5~20の範囲である。意外なことに、本発明者らは、前記の比が高くなると曲げ強さが大々的に増加することを見出した。従って、前記の比A/Bについての有利な下限は、>1.5、好ましくは≧1,75、好ましくは≧2.0、また好ましくは≧2.25、好ましくは≧2.5、より好ましくは≧2.75、より好ましくは≧3.0、また好ましくは≧3.25、さらに好ましくは≧3.5、また好ましくは≧3.75、好ましくは≧4.0であることができる。しかしながら、高すぎる比A/Bは曲げ強さをさらに増加させることの助けにはならない。従って、比A/Bは最大20である。比A/Bについての有利な上限は、≦19、好ましくは≦18、好ましくは≦17、好ましくは≦16、好ましくは≦15、好ましくは≦14、好ましくは≦13、好ましくは≦12、好ましくは≦11、好ましくは≦10、好ましくは≦9、好ましくは≦8であることができる。比A/Bについての有利な範囲は1.5~20、1.5~15、2~10、3~8または4~8であることができる。
【0028】
有利な実施態様によれば、化学強化されたガラス物品の少なくとも1つの端部は、第1の表面に向かう比A/Bを有する第1の面取り部、および第2の表面に向かう比A’/B’を有する第2の面取り部を有する。従って、該ガラス物品は両側上で面取りされている。この特徴は、特に第1の面取り部および第2の面取り部がガラス物品の両側上で本質的に対称である場合に、曲げ強さを増加させる。本発明の有利な態様において、A/BとA’/B’との間の差は30%未満、好ましくは20%未満、また好ましくは10%未満である。これは、ガラス物品の曲げ特性をさらに改善することを助ける。
【0029】
さらに、本発明者らは、面取り部の幅/ガラスの厚さの比(A/t)は、それが≧0.5、好ましくは>0.5である場合に曲げ強さを増加させることを見出した。有利な実施態様において、比A/tは>0.6、好ましくは>0.7、より好ましくは>0.8、また好ましくは>0.9、また好ましくは>1.0、さらに好ましくは>1.1、また好ましくは>1.2である。いくつかの態様は、好ましくは比A/t>1.3、また好ましくは>1.4、さらに好ましくは>1.5を有する。
【0030】
本発明によるガラス物品の表面圧縮応力(CS)は、少なくとも100MPaである。好ましくは、CSは200MPaを上回り、より好ましくは300MPaを上回り、より好ましくは400MPaを上回り、より好ましくは500MPaを上回り、より好ましくは600MPaを上回る。本発明の好ましい実施態様によれば、CSは、700MPaであるかまたはそれを上回り、より好ましくは800MPaを上回り、より好ましくは900MPaを上回り、さらに好ましくは1000MPaを上回る。しかしながら、CSは、非常に高くてはならず、なぜなら、そうでなければガラスが自己破壊しやすいことがあるからである。好ましくは、CSは2000MPa以下、好ましくは1600MPa以下、有利には1500MPa以下、より好ましくは1400MPa以下である。いくつかの有利な態様はさらに、1300MPa以下、または1200MPa以下のCSを有する。
【0031】
前記ガラス物品の層深さ(DoL)は、有利な実施態様において>1μm~<40μmである。好ましくは、DoLは≦30μm、好ましくは≦20μmである。DoLは好ましくは≧3μm、好ましくは≧5μm、好ましくは≧7μmである。最大100μmの厚さを有する超薄ガラスに関し、好ましくは、DoLは≦17μm、好ましくは≦15μm、また好ましくは≦13μm、さらに好ましくは≦11μm、また好ましくは≦10μmである。
【0032】
ガラス物品の1つの表面だけが化学強化されれば十分であることができる。好ましくは、第1の表面と第2の表面との両方が上述のとおり化学強化されるので、ガラス物品の両側上にDoLがある。
【0033】
本発明による化学強化されたガラス物品は改善された曲げ強さ(BS)を有する。有利な実施態様によれば、ガラス物品は曲げ強さ(BS)>700MPa、好ましくは>800MPa、好ましくは>900MPa、好ましくは>1000MPaを有する。いくつかの有利な態様は、BS>1100MPa、好ましくは>1200MPa、また好ましくは>1300MPa、さらに好ましくは>1400MPaを有する。これは、高い曲げ強さおよび柔軟性を確実にする。
【0034】
本発明によって達成される曲げ性能の質および量を、ガラス物品の曲げ強さ(BS)と圧縮応力(CS)との間の差によって記載することもできる。さらなる実施態様によれば、ガラス物品は差(BS-CS)少なくとも150MPa、好ましくは少なくとも200MPa、より好ましくは少なくとも300MPa、また好ましくは少なくとも400MPa、また好ましくは少なくとも500MPaを有する。
【0035】
本発明の有利な態様によれば、本発明者らは、ガラス物品の平均曲げ強さ(BS)が、
【数3】
[式中、「a」は≧4、好ましくは≧6、より好ましくは≧8、また好ましくは≧10である定数(係数)である]
よりも高い場合、前記ガラス物品が大々的に改善された曲げ性能を有することを見出した。
【0036】
化学強化されたガラス物品が、
【数4】
[式中、「a」≧4、好ましくは≧6、より好ましくは≧8、また好ましくは≧10である定数である]
よりも小さい平均破壊曲げ半径を有する場合が、さらに有利である。
【0037】
化学強化されたガラス物品が、破壊することなく、
【数5】
[式中、「a」は≧4、好ましくは≧6、より好ましくは≧8、また好ましくは≧10である定数である]
よりも小さい平均破壊曲げ半径を有する場合が、さらに有利である。
【0038】
破壊曲げ半径は、UTM(万能試験機)を使用して、約20℃の室温および約50%の相対湿度で測定される。ガラス物品が曲げ位置に持ち込まれ、その反対の端部は2つの平行なプレート(鋼板)の間に配置される。次いで、プレート間の距離を低下させて、ガラス物品の曲げ半径が減少し、ここで負荷速度は60mm/分である。超薄ガラス物品がよれる、または損傷する、または2つまたは複数の破片へと破壊される際のプレート間の距離を記録し、それは肉眼で測定される。その距離から、破壊時点でのガラス物品の相応の曲げ半径を計算する。この2点曲げ試験は、超薄ガラス物品に適合されており、且つそれに特に適しており、且つ非常に単純な方法で上記の問題、つまり負荷がかかる際のガラス物品(例えばFPSまたはタッチディスプレイまたはフレキシブルディスプレイ)の曲げを再現する。これに関し、2点曲げ法は、他の公知の曲げ強さ試験、例えば3点および4点曲げ試験よりも、超薄ガラスについてはより信頼性がある。
【0039】
上記のとおり、本発明による化学強化されたガラス物品は、非常に様々なサイズを有し得る。従って、曲げ強さおよび破壊曲げ半径などの特性を測定する過程で、以下を考慮しなければならない:
【0040】
比較的大きなガラス物品(例えばガラスロールまたは大きなガラスシート)の場合、複数の試料を測定する。このために、ランダムな試料のN個の値が取得される。Nは、統計学的に確実な平均値を得るために十分に高くなければならない。好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30の試料が試験される。試料数は、試験されるガラス物品のそれぞれのサイズに依存する。測定された値を平均して、その平均値が曲げ強さを表すために採用される。
【0041】
しかしながら、小さいガラス物品(例えば個々の小さなカバーガラス)の場合、曲げ強さの単独の測定値で十分であり、それが曲げ強さを表すために採用される。
【0042】
破壊曲げ半径については、平均値を計算できる。これを行うために、ランダムな試料のN個の値が取得される。試料数は、評価されるガラス物品のそれぞれのサイズに依存する。好ましくは、Nは、統計学的に確実な平均値を得るために十分に高くなければならない。好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30の試料が試験される。従って、ランダムな試料のN個の値が破壊曲げ半径R
1…R
Nについて取得され、それらのランダムな試料の値について、平均値
【数6】
および分散
【数7】
が計算される。
【0043】
その平均破壊曲げ半径が、特許請求される破壊曲げ半径を表すために採用される。しかしながら、小さいガラス物品(例えば個々の小さなカバーガラス)の場合、破壊曲げ半径の単独の測定値で十分であり、それが特許請求される破壊曲げ半径を表すために採用される。
【0044】
本発明のガラス物品の有利な態様によれば、端部は、複数の丸められた本質的に半球型の凹みを有する構造化された区域を有する。
【0045】
本発明のさらに有利な態様によれば、化学強化されたガラス物品は、該ガラス物品上にさらなる材料を堆積または貼り合わせて、またはさらなる材料を堆積または貼り合わせないで、20mmよりも高いペン落下破壊高さに耐えることができる。ペン落下耐性、つまり、直径0.7mm以下の炭化タングステンボールを有する約5グラムの重量のペンがガラス表面上に垂直に落下される際の破壊に対するガラス物品の耐性は、超薄ガラスの強さの重要な特徴である。この発明における面取り加工および使用される幾何学的形状は、超薄ガラスのペン落下性能を保つ。面取り加工された超薄ガラスが厚さ100μmのPEフィルム上に設置される場合、ペン落下の破壊高さは20mmよりも高い。前記のペン落下破壊高さを、1つ以上の材料、例えば金属、セラミック、他の層のガラスおよび/またはポリマーを超薄ガラス物品の表面上に貼り合わせるかまたは堆積することによってさらに改善できる。
【0046】
有利な実施態様において、化学強化されたガラス物品は、少なくとも1つの表面で、有機または無機材料の被覆されたまたは貼り合わせられた層を含んで、例えば衝撃耐性を改善する。適した材料は下記である。
【0047】
1つの実施態様において、前記ガラスはアルカリ含有ガラス、例えばアルカリアルミノシリケートガラス、アルカリシリケートガラス、アルカリホウケイ酸ガラス、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス、アルカリホウ素ガラス、アルカリゲルマン酸ガラス、アルカリボロゲルマン酸ガラス、アルカリソーダライムガラスおよびそれらの組み合わせである。
【0048】
本発明のこの態様および他の態様は、以下の説明、添付の図および特許請求項の範囲から明らかとなる。
【0049】
以下は、添付の図面における図の説明である。図面は必ずしも縮尺通りではなく、明確性および簡潔性のために縮尺においてまたは模式的に強調して示される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、本発明による第1の例示的な端部の種類を示す、化学強化されたガラス物品の一部の断面である。
【
図2】
図2は、本発明による第2の例示的な端部の種類を示す、化学強化されたガラス物品の一部の断面である。
【
図3】
図3は、本発明による第3の例示的な端部の種類を示す、化学強化されたガラス物品の一部の断面である。
【
図4】
図4は、本発明による第4の例示的な端部の種類を示す、化学強化されたガラス物品の一部の断面である。
【
図5】
図5は、本発明による第5の例示的な端部の種類を示す、化学強化されたガラス物品の一部の断面である。
【
図6】
図6は、本発明のガラス物品の端部の垂直断面の光学顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、比較例および実施例について、前記の差(曲げ強さ-CS)を面取り部の幅/面取り部の厚さの比に対して示すプロットである。
【
図8】
図8は、比較例および実施例について、前記の差(曲げ強さ-CS)を面取り部の幅/面取り部の高さの比に対して示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1~6に、本発明による化学強化されたガラス物品の種々の好ましい実施態様を断面図で示す。各々の場合において、ガラス物品1は0.4mm未満の厚さt、第1の表面2、第2の表面3、および前記第1の表面2と第2の表面3とをつなぐ少なくとも1つの端部4を有する。ガラスの全体の厚さはtである。第1の表面2と端部4との間の接続部に、面取り部の幅Aおよび面取り部の高さBを有する面取り部5がある。第2の表面3と端部4との間の接続部に、面取り部の幅A’および面取り部の高さB’を有する他の面取り部5’がある。第1の表面2から、ガラス物品中の第1の深さ(DoL)へと延伸する圧縮応力領域があり、その領域は圧縮応力(CS)によって定義され、ここでCSは前記第1の表面で少なくとも100MPaである。好ましくは、第2の表面3から、ガラス物品中の第2の深さ(DoL)へと延伸する圧縮応力領域があり、その領域は圧縮応力(CS)によって定義され、ここでCSは前記第2の表面で少なくとも100MPaである。ガラス物品1は、面取り部の幅/面取り部の高さの定義された面取り部の比(A/B、A’/B’)および面取り部の幅/ガラスの厚さの定義された比(A/t、A’/t)を有する。各々の場合において、面取り部の幅A、A’は、面取り部の高さB、B’よりも遙かに大きく、従ってその比は1より大きい。比A/B、A’/B’は、≧1.5~20、好ましくは1.5~15、好ましくは2~10、さらに好ましくは3~8、好ましくは4~8である。面取り部は両側上でほぼ対称であり、つまりA/BとA’/B’との間の差は30%、20%および10%より小さい。面取り部の幅A、A’とガラスの厚さtとの間の比は>0.5、>0.6、>0.8、>1である。化学強化されたガラス物品の曲げ強さを、この特別な端部の幾何学的形状によって大々的に改善できる。
【0052】
CS値と面取り部の形状との両方が、曲げ強さに影響し、且つ曲げ半径を決定する。超薄ガラスの平均曲げ強さはCS+10×a×A/B-a×(A/B-1)2+20×a×A/tよりも高く、ここで「a」はa≧4、好ましくは≧6、好ましくは≧8、好ましくは≧10の定数(係数)である。本発明者らによって、超薄ガラスの場合において、上述のパラメータが実現される場合、そのようなガラスは極めて高い曲げ強さに達することができることが判明した。
【0053】
図1~5は化学強化されたガラス物品の一部の有利な断面の種々の図を模式的に示す。ここで、面取り部5、5’は両側上で対称であり、これが好ましい設計である。
【0054】
各々の場合において、ガラス物品1の全体の厚さはtである。第1の表面2と端部4との間の接続部に、幅Aおよび高さBを有する面取り部5がある。幅Aおよび高さBを定義するために、2つの表面をまず定義する必要がある。
図1および2において、面取り部5は第1の表面2に対して傾斜した面、または関数y=f
1(x)を使用することによる曲がった表面であってよい。それらの実施態様において、端部4は終端区域6も含み、これはここでは垂直の区域であり、つまり第1の表面2および第2の表面3に対して垂直に向いている面である。第2の表面3と端部4との間の接続部に、幅A’および高さB’を有する他の面取り部5’がある。
図1および2に示すとおり、AまたはA’は曲線y=f
1(x)をx軸上に投影した長さによって定義できる一方で、BまたはB’は曲線y=f
1(x)をy軸上に投影した長さによって定義できる。
【0055】
図3において、面取り部5、5’は連続的な曲がった表面であり、端部4の終端区域6は明確な垂直区域を含まない。面取り部の幅および面取り部の高さの境界点7は、曲線のy軸に対する接線8の角度が45°より大きいところで定義される。次いで、第1の表面2から境界点7までの曲がった表面を、高さおよび幅のベースとして採用する。次いで、A、A’およびB、B’を、
図1および2に関して記載された方法に従って決定できる。
【0056】
図4および5において、端部4の面取り部5、5’と終端区域6との両方は、2つの不連続な曲がった表面である。2つの表面の境界点7(または、3次元的に考える場合は境界線)を、二次微分の不等式f
1
’’(x)≠f
2
’’(x)の点で定義する。次いで、
図4および5に示される面取り部5、5’の幅Aおよび高さBを、
図1および2に関して記載された方法に従って決定できる。
【0057】
A/BおよびA/tの比(上述の方法によって決定)はさらに重要であり且つガラス物品の曲げ強さを評価するために使用される。好ましくは、超薄ガラスの測定された平均の曲げ強さは
【数8】
[式中、「a」はa≧4、好ましくは≧6、好ましくは≧8、好ましくは≧10である係数である]
より高い。有利なことに、超薄ガラスの平均破壊曲げ半径は、
【数9】
よりも小さい。さらに、全ての超薄ガラス物品は、有利なことに、破壊することなく
【数10】
の曲げ半径に達する。
【0058】
これらの基準によって、強くされた超薄ガラス物品が、それぞれの用途のために使用するために十分に適切に強く且つフレキシブルであるかどうかを、それが製品の一部になる前に判断でき、なぜなら、より薄いガラスは曲げおよび/または硬く且つ鋭利な物体との接触によって引き起こされる破壊に対して特に敏感だからである。
【0059】
図6は、本発明のガラス物品1の端部4の終端区域6の光学顕微鏡写真を示す。端部4が、エッチングの後、複数の丸められた実質的に半球形の凹み9を有する構造化された垂直区域を有することが理解できる。この種の端部は非常に高い強度を有する。丸められた構造は、表面上で生じる引っ張り応力を、該表面の最下点、つまり実質的に半球形の凹み9の最下点まで散逸させるために特に有利な形状である。これは、表面内での可能な欠陥のところでのクラックの成長を効果的に抑制する。そのような丸められた実質的に半球形の凹み9は、全ての端部形状にとって有利であり得る。
【0060】
ガラス物品を切断するためにレーザーを使用することは、後のエッチングと合わせて、そのような丸められた凹みの形成を高めることができる。例えば、超短パルスレーザーを使用でき、これは切断されるべきガラス中でパルス、または少なくとも2つの連続的なレーザーパルスを有するパルスパケットを放射して割れ目を生成する。バーストモードで(すなわち、レーザーのエネルギーが単独のパルスとして供給されるのではなく、一連のパルスとして供給され、それは互いに短い間隔で続いて、一緒にパルスパケットを形成する)、パルスパケットの内向きの放射でレーザーを使用することは、延伸する均一な割れ目を達成するために特に有利であることがあり、例えば波長1064nmを有するネオジムドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザーを使用できる。この段階の後、切断されたガラスをエッチング媒体に晒し、ガラスから材料を除去し、丸められた実質的に半球形の凹みを端部表面に生成し、これが水平区域および/または面取りされた区域となり得る。ゆっくりとしたエッチング工程が好ましいことがある。適したエッチング媒体は下記である。代替的に、レーザー切断の代わりに、端部を機械的に、例えば切断ホイールまたはダイシングによって切断し、端部表面でマイクロクラックを生成することもできる。さらに代替的に、そのようなマイクロクラックを、CNCによって端部表面を研削することによって誘導できる。この段階の後、切断されたガラスをエッチング媒体に晒し、ガラスから材料を除去し、丸められた実質的に半球形の凹みを端部表面に生成する。
【0061】
意外なことに、本発明者らは、
図7および8に示されるとおり、超薄ガラス物品の曲げ強さがA/B、A’/B’とA/t、A’/tとの間の比に非常に関係することを見出した。その強さ(曲げ強さ(BS)と圧縮強さCS)との間の差によって表現される)は、特定の範囲内でA/BおよびA/tの増加に伴ってほぼ線形に増加する。しかしながら、A/tが小さすぎると、A/Bが非常に高くても超薄ガラス物品は比較的低い強さを有することも判明した。以下でA/Bについての値0は、顕著な面取り部がないことを意味する。当然、同じことがA’/B’およびA’/tの比に該当する。
【0062】
さらに意外なことに、面取り部の形状、CSおよび曲げ強さの関係は、ガラスの種類および端部の処理方法とは比較的無関係であることが判明し、ガラスはアルミノシリケート、リチウムアルミノシリケート、ソーダライム、ホウ素アルミノシリケート、ボロシリケートの種類のいずれかであるか、または端部は機械的な研削、ブラシ研磨、化学的エッチングまたは互いの組み合わせによって処理される。
【0063】
ガラスまたはガラス物品の切断/分離を、あらゆる適した方法によって、例えばレーザー、ホイールによる切断およびスクライブ、エッチング、研削によって行うことができる。特別に設計された面取り部の形状を、化学的なエッチング、機械的研削、レーザー加工、ホイール切断または上述の加工方法の組み合わせによって生成できる。1つの実施態様において、面取り部の形状を中間段階の間に形成でき、次の工程段階を、割れ目を減らすためだけに使用する。他の実施態様において、面取り部の形状を、最も後の工程段階の間に作り出すことができる。
【0064】
1つの有利な実施態様において、超薄ガラスを切断(例えばホイールによって切断およびスクライブ)して、好ましくは両方の表面を表面保護層、例えばポリマーまたは樹脂で被覆して、それにより後の端部の機械的研削工程における破壊を防ぐ。この貼り合わせられた超薄ガラスをCNCで端部研削して、所望の面取り部の幾何学的形状(幅および高さ)を得る。任意に、端部/面取り部を化学的にエッチングして、CNCでの端部研削工程の間に生成した割れ目を除去する。代替的に、まずUTGを少なくとも1つの保護層で被覆し、次いでより小さな片へと切断してもよい。
【0065】
他の有利な実施態様において、超薄ガラスを切断(例えばホイールによって切断およびスクライブ)し、UTGのいくつかの片をポリマーまたは樹脂、例えばエポキシまたはPMMA接着剤によって一緒に貼り合わせる。その積層物の端部をCNCによって機械的に研削し、それにより、一緒に積層された面取り部のない超薄ガラスが製造される。その積層物を次に、エッチング溶液中に浸漬する。ガラスと接着剤との境界の表面近くでのエッチング速度はより速く、エッチング溶液の濃度、時間、温度および接着剤の特性を注意深く調節することによって所望の形状を有する面取り部を生成できる。
【0066】
他の代替的な有利な実施態様において、より大きなサイズのいくつかのUTGの片をポリマーまたは樹脂、例えばエポキシまたはPMMA接着剤によって一緒に貼り合わせる。次いで、大きなサイズの積層物を切断(例えば切断ホイール、レーザー)によって分離し、任意にCNC研削し、先述の実施態様において記載したエッチング工程が続く。
【0067】
他の有利な実施態様において、超薄ガラスを所望の最終形状でパターン形成し、エッチング剤に耐性のある接着剤またはフィルムで印刷または貼り合わせる。パターン形成された超薄ガラスをエッチング溶液中に浸漬し、ガラスをエッチングする。エッチング溶液濃度、時間、温度を調節することによって、所望の形状に達するように面取り部の形状を調整する。
【0068】
エッチングが適用される場合、エッチング溶液が好ましい。従って、この実施態様においては、エッチングを湿式化学的に行う。これは、エッチングの間にガラスの構成成分を表面から除去するために有利である。エッチング溶液として、酸溶液とアルカリ溶液との両方を使用することができる。酸のエッチング媒体として、HF、HCl、H2SO4、重フッ化アンモニウム、HNO3溶液またはこれらの酸の混合物が特に適している。アルカリのエッチング媒体については、KOHまたはNaOH溶液が好ましい。材料除去のより大きな速度は、典型的には酸のエッチング溶液を使用することによって達成できる。しかしながら、ゆっくりとした材料除去しか求められない場合は塩基性溶液を適用できる。
【0069】
良好な化学強化性能を達成するために、前記ガラスはかなりの量のアルカリ金属イオン、好ましくはNa2Oを含有すべきであり、さらには、少量のK2Oをガラス組成物に添加することも、化学強化速度を改善できる。さらには、Al2O3をガラス組成物に添加すると、ガラスの強化性能を著しく改善できることが判明している。
【0070】
SiO2は、本発明のガラスにおける主たるガラスの網目形成成分である。さらには、Al2O3、B2O3およびP2O5もガラスの網目形成成分として使用され得る。SiO2、B2O3およびP2O5の合計の含有率は、慣例的な製造方法のためには40%未満であってはならない。そうでなければ、ガラスシートは形成が困難になることがあり、且つ、脆くなり且つ透明性を失うことがある。高いSiO2含有率は、ガラスの製造の高い溶融温度および作業温度を必要とし、それは通常、90%未満であるべきである。好ましい実施態様において、ガラス中のSiO2含有率は、40~75質量%、より好ましくは50~70質量%、さらにより好ましくは55~68質量%である。他の好ましい実施態様において、ガラス中のSiO2含有率は、55~69質量%、より好ましくは57~66質量%、さらにより好ましくは57~63質量%である。さらなる好ましい実施態様において、ガラス中のSiO2含有率は、60~85質量%、より好ましくは63~84質量%、さらにより好ましくは63~83質量%である。他のさらなる好ましい実施態様において、ガラス中のSiO2含有率は、40~81質量%、より好ましくは50~81質量%、さらにより好ましくは55~76質量%である。B2O3およびP2O5をSiO2に添加すると、網目特性を修飾でき且つガラスの溶融温度および作業温度を低下させることができる。ガラスの網目形成成分も、ガラスのCTEに大きな影響を及ぼす。
【0071】
さらには、ガラスの網目中のB2O3は、2つの異なる多面体構造を形成し、そのことにより、外側からかかる力に対する適合性が増す。B2O3の添加は通常、より低い熱膨張およびより低いヤング率をもたらすことができ、そのことが良好な熱衝撃耐性およびよりゆっくりとした化学強化速度をみちびき、それを通じて低いCSおよび低いDoLを容易に得ることができる。従って、B2O3の超薄ガラスへの添加は、化学強化処理のウィンドウおよび超薄ガラスを大々的に改善でき、且つ、化学強化された超薄ガラスの実用上の用途を広げることができる。好ましい実施態様において、本発明のガラス中のB2O3の量は、0~20質量%、より好ましくは0~18質量%、より好ましくは0~15質量%である。いくつかの実施態様において、B2O3の量は0~5質量%、好ましくは0~2質量%であってよい。他の実施態様において、B2O3の量は5~20質量%、好ましくは5~18質量%であってよい。B2O3の量が多すぎると、ガラスの融点が高くなりすぎることがある。さらには、化学強化性能は、B2O3の量が多すぎると低下する。B2O3不含の態様が好ましいことがある。
【0072】
Al2O3は、ガラスの網目形成成分とガラスの網目修飾成分との両方として作用する。[AlO4]四面体および[AlO6]六面体が、ガラスの網目中でAl2O3の量に依存して形成され、それらは、ガラスの網目内部のイオン交換のための空間のサイズを変化させることによってイオン交換速度を調節できる。一般に、この成分の含有率は、それぞれのガラスの種類に依存して変化する。従って、本発明のいくつかのガラスは好ましくは、Al2O3を少なくとも2質量%の量、より好ましくは少なくとも10質量%、さらには少なくとも15質量%の量で含む。しかしながら、Al2O3の含有率が高すぎると、ガラスの溶融温度および作業温度も非常に高くなり、且つ結晶が形成されやすくなり、ガラスが透明性および柔軟性をなくす。従って、本発明のいくつかのガラスは好ましくは、最大30質量%、より好ましくは最大27質量%、より好ましくは最大25質量%の量のAl2O3を含む。いくつかの有利な実施態様は、Al2O3を、最大20質量%、好ましくは最大15質量%または最大10質量%、またはさらに好ましくは最大8質量%、好ましくは最大7質量%、好ましくは最大6質量%、好ましくは最大5質量%の量で含んでよい。いくつかのガラスの態様は、Al2O3不含であってよい。他の有利なガラスの態様は、少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも18質量%のAl2O3、および/または最大25質量%、好ましくは最大23質量%、より好ましくは最大22質量%のAl2O3を含んでよい。
【0073】
アルカリ酸化物、例えばK2O、Na2OおよびLi2Oは、ガラスの網目修飾成分として作用する。それらは、ガラスの網目を破壊し、ガラスの網目内部で非架橋酸化物を形成できる。アルカリを添加することで、ガラスの作業温度を低下させ且つガラスのCTEを高めることができる。Na+/Li+、Na+/K+、Li+/K+のイオン交換は強化のために必須の段階であるので、ナトリウムおよびリチウム含有率は、化学強化可能である超薄フレキシブルガラスにとって重要であり、アルカリ自体が含有されなければガラスは強化されない。しかしながら、ナトリウムはリチウムよりも好ましく、なぜなら、リチウムはガラスの拡散率を著しく低減しかねないからである。従って、本発明のいくつかのガラスは好ましくは、Li2Oを最大7質量%、好ましくは最大5質量%、より好ましくは最大4質量%、より好ましくは最大2質量%、より好ましくは最大1質量%、より好ましくは最大0.1質量%の量で含む。いくつかの好ましい実施態様はLi2O不含ですらある。ガラスの種類に依存して、Li2Oについての下限は3質量%、好ましくは3.5質量%であってよい。
【0074】
本発明のガラスは好ましくは、Na2Oを少なくとも4質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも6質量%、より好ましくは少なくとも8質量%、より好ましくは少なくとも10質量%の量で含む。ナトリウムは化学強化性能のために非常に重要であり、なぜなら、化学強化は好ましくは、ガラス中のナトリウムと、化学強化媒体中のカリウムとのイオン交換を含むからである。しかしながら、ナトリウム含有率も高すぎてはならず、なぜなら、ガラスの網目が酷く悪化することがあり、且つガラスが極めて形成されにくくなることがあるからである。他の重要な要因は、超薄ガラスが低いCTEを有するべきであることであり、そのような要請に合致するためにガラスは多すぎるNa2Oを含有すべきではない。従って、ガラスは好ましくは、Na2Oを最大30質量%、より好ましくは最大28質量%、より好ましくは最大27質量%、より好ましくは最大25質量%、より好ましくは最大20質量%の量で含む。
【0075】
本発明のガラスはK2Oを含み得る。しかしながら、ガラスは好ましくは、ガラス中のナトリウムイオンと化学強化媒体中のカリウムイオンとを交換することにより化学強化されるので、ガラス中の多すぎる量のK2Oは化学強化性能を損なうことがある。従って、本発明のガラスは好ましくは、K2Oを最大10質量%、より好ましくは最大8質量%の量で含む。いくつかの好ましい実施態様は、最大7質量%含み、他の好ましい実施態様は、最大4質量%、より好ましくは最大2質量%、より好ましくは最大1質量%、より好ましくは最大0.1質量%含む。いくつかの好ましい実施態様はK2O不含ですらある。
【0076】
しかし、ガラスの網目が酷く悪化することがあり且つガラスが極めて形成しにくくなることがあるので、アルカリ含有率の総量は、好ましくは35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下、より好ましくは27質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下であるべきである。いくつかの態様は、最大16質量%、好ましくは最大14質量%のアルカリ含有率を有する。他の重要な要因は、超薄ガラスが低いCTEを有するべきであることであり、そのような要請に合致するためにガラスは多すぎるアルカリ元素を含有すべきではない。しかしながら、上述のとおり、化学強化を容易にするためには、ガラスはアルカリ元素を含有すべきである。従って、本発明のガラスは好ましくは、アルカリ金属酸化物を少なくとも2質量%、より好ましくは少なくとも3質量%、より好ましくは少なくとも4質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも6質量%の量で含む。
【0077】
アルカリ土類酸化物、例えばMgO、CaO、SrO、BaOは網目修飾成分として作用し、且つガラスの形成温度を低下させる。それらの酸化物を添加して、ガラスのCTEおよびヤング率を調節できる。アルカリ土類酸化物は、特別な要請に合致させるためにガラスの屈折率を変えることができるという非常に重要な機能を有する。例えば、MgOはガラスの屈折率を低下させることができ、BaOは屈折率を高めることができる。アルカリ土類酸化物の質量含有率は、好ましくは40質量%以下、好ましくは30質量%以下、好ましくは25質量%以下、また好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、より好ましくは12質量%以下であるべきである。ガラスのいくつかの態様は、最大10質量%、好ましくは最大5質量%、より好ましくは最大4質量%のアルカリ土類酸化物を含んでよい。アルカリ土類酸化物の量が多すぎると、化学強化性能が悪化することがある。アルカリ土類酸化物についての下限は、1質量%または5質量%であってよい。さらには、アルカリ土類酸化物の量が多すぎると、結晶化傾向が高まることがある。いくつかの有利な態様は、アルカリ土類酸化物不含であることがある。
【0078】
ガラス内のいくつかの遷移金属酸化物、例えばZnOおよびZrO2は、アルカリ土類酸化物と類似した機能を有し、いくつかの実施態様において含まれることがある。他の遷移金属酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、TiO2、CuO、CeO2およびCr2O3は、特定の光学的機能またはフォトニック機能を有するガラス、例えばカラーフィルタまたは光変換器を製造するための着色剤として機能する。As2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として、0~2質量%の量で添加することもできる。希土類酸化物を0~5質量%の量で添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0079】
以下の有利な組成は、強化前の様々な種類のガラスに関する。
【0080】
1つの実施態様において、超薄フレキシブルガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含むアルカリ金属アルミノシリケートガラスである:
【表1】
【0081】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。As2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として、0~2質量%の量で添加することもできる。希土類酸化物を0~5質量%の量で添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0082】
本発明のアルカリ金属アルミノシリケートガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表2】
【0083】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0084】
最も好ましくは、本発明のアルカリ金属アルミノシリケートガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表3】
【0085】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0086】
1つの実施態様において、超薄フレキシブルガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含むソーダライムガラスである:
【表4】
【0087】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0088】
この発明のソーダライムガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表5】
【0089】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0090】
この発明のソーダライムガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表6】
【0091】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0092】
この発明のソーダライムガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表7】
【0093】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0094】
最も好ましくは、本発明のソーダライムガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表8】
【0095】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0096】
最も好ましくは、本発明のソーダライムガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表9】
【0097】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0098】
1つの実施態様において、超薄フレキシブルガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含むリチウムアルミノシリケートガラスである:
【表10】
【0099】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。As2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として、0~2質量%の量で添加することもできる。希土類酸化物を0~5質量%の量で添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0100】
本発明のリチウムアルミノシリケートガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表11】
【0101】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0102】
最も好ましくは、本発明のリチウムアルミノシリケートガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表12】
【0103】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0104】
1つの実施態様において、超薄フレキシブルガラスは、以下の成分を示された量(質量%)で含むホウケイ酸ガラスである:
【表13】
【0105】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0106】
本発明のホウケイ酸ガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表14】
【0107】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0108】
本発明のホウケイ酸ガラスは好ましくは、以下の成分を示された量(質量%)で含む:
【表15】
【0109】
任意に、着色酸化物、例えばNd2O3、Fe2O3、CoO、NiO、V2O5、MnO2、CuO、CeO2、Cr2O3を添加できる。0~2質量%のAs2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Clおよび/またはFを清澄剤として添加することもできる。0~5質量%の希土類酸化物を添加して、ガラスシートに磁性またはフォトニックまたは光学的機能を付加することもできる。
【0110】
典型的には、本発明による超薄ガラスを、より厚いガラスから研磨により薄くするかまたはエッチングすることによって製造できる。それら2つの方法は経済的ではなく、且つ例えばRa粗さによって定量化される粗悪な表面品質をもたらす。
【0111】
直接的な熱間成型製造、例えばダウンドロー法、オーバーフローフュージョン法が量産には好ましい。リドロー法も有利である。これらの述べられた方法が経済的であり且つガラス表面の品質が高い。
【0112】
強くすることは強化とも称され、カリウムイオンを有する溶融塩浴中にガラスを浸漬するか、またはカリウムイオンまたは他のアルカリ金属イオンを含有するペーストによってガラスを被覆し、高温で特定の時間加熱することによって行うことができる。塩浴またはペースト中のより大きなイオン半径を有するアルカリ金属イオンが、ガラス物品中のより小さな半径を有するアルカリ金属イオンと交換され、イオン交換に起因して表面圧縮応力が形成される。
【0113】
本発明の化学強化されたガラス物品は、化学強化可能なガラス物品を化学的に強化することにより得られる。超薄ガラス物品を、一価のイオンを含有する塩浴中に浸漬して、ガラス内部のアルカリイオンと交換することによって、強化工程を行うことができる。塩浴中の一価のイオンは、ガラス内部のアルカリイオンよりも大きな半径を有する。ガラスへの圧縮応力は、より大きなイオンがガラスの網目中に割り込むことに起因して、イオン交換後に形成される。イオン交換後、超薄ガラスの強さおよび柔軟性は意外なことに、著しく改善される。さらに、化学強化によって誘導されるCSは、強化されたガラス物品の曲げ特性を改善し、ガラスの引っ掻き耐性および衝撃耐性を高め得るので、強化されたガラスは簡単には引っ掻き傷がつかず、且つDoLは引っ掻き許容度を高めることができ、ガラスが引っ掻かれたとしても破壊しにくい。
【0114】
化学強化のために最も使用される塩は、Na+含有溶融塩またはK+含有溶融塩、またはそれらの混合物である。慣例的に使用される塩は、NaNO3、KNO3、NaCl、KCl、K2SO4、Na2SO4、Na2CO3およびK2CO3である。添加剤、例えばNaOH、KOHおよび他のナトリウム塩またはカリウム塩を使用して、化学強化の間のイオン交換の速度、CSおよびDoLをより良好に制御することもできる。Ag+含有またはCu2+含有塩浴を使用して、超薄ガラスに抗菌機能を付加することができる。
【0115】
化学強化は一段階に限定されない。それは、より良好な強化性能を達成するための、様々な濃度のアルカリ金属イオンを有する塩浴中での多段階を含み得る。従って、本発明による化学強化されたガラス物品を、1段階、または複数の段階、例えば2段階の過程で強化することができる。
【0116】
本発明による化学強化されたガラス物品は、第1の表面からガラス物品内の第1の深さ(DoL)までに及ぶ圧縮応力領域が存在する1つだけの表面(第1の表面)を有することができ、前記領域は圧縮応力(CS)によって定義される。この場合、ガラス物品は強化された側を1つだけ含む。好ましくは本発明によるガラス物品は、第2の表面からガラス物品内の第2の深さ(DoL)までに及ぶ第2の圧縮応力領域が存在する、(前記第1の表面に対向する)第2の表面も含み、前記領域は圧縮応力(CS)によって定義される。この好ましいガラス物品は両側上で強化されている。
【0117】
CSは主にガラスの組成に依存する。より高いAl2O3の含有率は、より高いCSを達成するために役立ち得る。強化後、超薄ガラスは、高い強度を達成するために十分に高いCSを有するべきである。従って、CSは100MPa以上であり、好ましくは100MPaを上回り、好ましくは200MPaを上回り、より好ましくは300MPaを上回り、また好ましくは400MPaを上回り、さらに好ましくは500MPaを上回る。特に好ましい実施態様において、CSは、600MPaを上回り、さらに好ましくは700MPaを上回り、より好ましくは800MPaを上回る。
【0118】
一般に、DoLはガラスの組成に依存するが、それは強化時間および強化温度の増加に伴ってほぼ無限に増加し得る。強化されたガラスの安定な強度を確実にするためには定義されたDoLが必須であるが、高すぎるDoLは、超薄ガラス物品が圧縮応力下にある際の自己破壊率および強度性能を高めるので、DoLは好ましく制御されるべきである。
【0119】
いくつかの実施態様においては、ベアガラスの高い鋭利物接触耐性が必要とされ、低いDoLが好ましい。定義された低いDoLを達成するために、強化温度および/または強化時間を減少させる。本発明によれば、より低い強化温度が好ましいことがあり、なぜなら、DoLは温度に対してより敏感であり、より長い強化時間を量産の間に設定するのは容易であるからである。しかしながら、ガラス物品のDoLを低下させるために、強化時間を減らすことも可能である。
【0120】
DoLの有利な値は、各々の場合において、それぞれのガラス物品のガラス組成、厚さおよび適用されるCSに依存する。一般に、上記の有利な実施態様によるガラス物品は非常に低いDoLを有する。DoLを減少させることで、CTが減少する。そのような実施態様において鋭利な物体によって高い衝撃および/または押付荷重がかけられると、生じる欠陥はガラス表面上だけにある。CTが著しく低下されているので、生じる欠陥はガラス物品の内部強度を乗り越えることができず、従ってガラス物品は2つまたは複数の破片へと破壊されない。低いDoLを有するそのようなガラス物品は、改善された鋭利物接触耐性を有する。
【0121】
本発明のいくつかの有利な実施態様によれば、強化されたガラス物品はCT1000MPa以下、より好ましくは700MPa以下を有し得る。CT300MPa以下、より好ましくは200MPa以下、より好ましくは100MPa以下を有するガラス物品が好ましい。いくつかの有利な実施態様は、65MPa以下のCTを有することができる。他の有利な実施態様は、45MPa以下のCTを有することができる。いくつかの態様は、25MPa以下のCTを有することすらある。
【0122】
上述のとおり、CS、DoLおよびCTは、ガラス組成(ガラスの種類)、ガラスの厚さおよび強化条件に依存する。
【0123】
衝撃耐性を改善するために、化学強化されたガラス物品は好ましくは少なくとも1つの表面で、有機または無機材料の被覆されたまたは貼り合わせられた層を含む。
【0124】
有利な実施態様によれば、強化されたガラス物品は、少なくとも1つの貼り合わせられたポリマー層を含み、ここでポリマー層は少なくとも1μm、好ましくは少なくとも5μm、さらに好ましくは少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも20μm、最も好ましくは少なくとも40μmの厚さを有して、改善された鋭利物接触力を達成する。ポリマー層の厚さの上限は200μmであってよい。貼り合わせを種々の公知の方法によって実施できる。
【0125】
貼り合わせの場合、ポリマー材料を例えば、シリコーンポリマー、ゾルゲルポリマー、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリイミド(PI)、無機シリカ/ポリマーハイブリッド、シクロオレフィンコポリマー、ポリオレフィン、シリコーン樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリプロピレンポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(PA)、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、テトラフルオロエチレン製のターポリマー、ヘキサフルオロプロピレン製のターポリマー、およびフッ化ビニリデン(THV)製のターポリマーまたはポリウレタンまたはそれらの混合物からなる群から選択することができる。ポリマー層を、化学強化された超薄ガラス物品上に任意の公知の方法によって施与できる。
【0126】
種々の方法、例えば化学気相堆積法(CVD)、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット、キャスティング、スクリーン印刷、塗装および噴霧による保護層のコーティングが、特に加工後の最終層として有利であり得る。しかしながら、本発明はそれらの方法に限定されない。適した材料も当該技術分野で公知である。例えば、それらはフェノプラスト、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アミノプラスト、ウレアホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェナクリレート(phenacrylate)樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、架橋ポリウレタン樹脂、ポリメタクリレート反応樹脂およびポリアクリレート反応樹脂からなる群から選択されるポリマーであるデュロプラスチック反応樹脂を含み得る。
【0127】
前記ガラス物品を、例えば反射防止、傷防止、指紋防止、抗菌、防眩、およびそれらの機能の組み合わせのために、さらに被覆できる。
【0128】
前記ガラス物品を、フレキシブルおよび折りたたみ可能な電子製品、例えばイメージセンサ、ディスプレイカバー、スクリーンプロテクタのためのカバーおよび基板の分野において使用できる。さらに、それを、例えば以下の用途分野: ディスプレイの基板または保護カバー保護カバー、指紋センサカバー、一般的なセンサの基板またはカバー、消費者用電子機器のカバーガラス、ディスプレイおよび他の表面、特に曲げられた表面の保護カバーにおいて使用できる。さらには、前記ガラス物品を、ディスプレイの基板およびカバー、指紋センサモジュールの基板またはカバー、半導体のパッケージ、薄膜電池の基板およびカバー、折りたたみ可能なディスプレイの用途においても使用できる。特定の実施態様において、前記ガラス物品を、抵抗スクリーン用のカバーフィルム、およびディスプレイスクリーン、携帯電話、カメラ、ゲーム用ガジェット、タブレット、ラップトップ、TV、鏡、窓、航空機の窓、家具および白物家電用の使い捨て保護フィルムとして使用できる。
【0129】
本発明は、ディスプレイの基板およびカバー、壊れやすいセンサ、指紋センサモジュールの基板またはカバー、半導体のパッケージ、薄膜電池の基板およびカバー、折りたたみディスプレイの用途において使用するために特に適している。さらに、それを、薄く、軽量で且つフレキシブルな特性を備えたフレキシブル電子機器(例えば曲がったディスプレイ、ウェアラブル機器)において使用できる。そのようなフレキシブル機器はまた、例えば部品を保持または搭載するためのフレキシブル基板を必要とする。さらに、高い接触耐性および小さな曲げ半径を有するフレキシブルディスプレイが可能である。
【0130】
本発明によるガラス物品の製造方法であって、以下の段階:
a) 所望のガラスのための原料の組成物を準備する段階、
b) 前記組成物を溶融する段階、
c) 板ガラス工程においてガラス物品を製造する段階、
d) 特別な面取り部の形状を有するガラス物品をサイズに切断して製造する段階、
e) 前記ガラス物品を化学強化する段階、および
f) 任意に、前記物品の少なくとも1つの表面を被覆層で被覆する段階、
g) 任意に、前記物品の少なくとも1つの表面をポリマー層と貼り合わせる段階
を含み、ここで強化温度および/または強化時間が低減される、前記方法も本発明による。当然、有利または望ましい場合、段階d~gを異なる順で実施してよい。
【0131】
好ましくは、板ガラス工程は、ダウンドロー工程またはリドロー工程である。
【0132】
有利には、化学強化工程はイオン交換工程を含む。量産のためには、イオン交換工程が、一価のカチオンを含有する塩浴中にガラス物品または該ガラス物品の一部を浸漬することを含む場合が好ましい。好ましくは、一価のカチオンはカリウムイオンおよび/またはナトリウムイオン(soda ion)である。
【0133】
特別な面取り部の形状を、化学的なエッチング、機械的研削、レーザー加工、ホイール切断または上述の加工を一緒に組み合わせることによって生成できる。
【0134】
さらに、ガラス物品または該ガラス物品の一部を塩浴中に温度340℃~480℃で30秒~48時間浸漬することが有利である。
【0135】
いくつかのガラスの種類について、化学強化が2つの連続した強化段階を含み、ここで第1の段階が第1の強化剤での強化を含み、且つ第2の段階が第2の強化剤での強化を含む場合が好ましいことがある。好ましくは第1の強化剤および第2の強化剤は、KNO3および/またはNaNO3および/またはそれらの混合物を含むか、またはそれらからなる。
【0136】
製造および強化方法のさらなる詳細は既に上述されている。
【実施例】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
実施態様の説明
表1は、化学強化可能である超薄ガラスを直接的に熱間成型するいくつかの典型的な実施態様の組成を示す。
【0142】
様々なガラスの種類のガラス物品をダウンドロー工程で製造し、化学強化して、化学強化された超薄ガラス物品を形成した。各々の超薄ガラス物品は、第1の表面と第2の表面とを有する。示される実施態様において、ガラス物品である各々の試料は両側上で強化されている。従って、ガラス物品の各々の側の上で特定の深さ(DoL)を有する圧縮応力領域がある。ここで、面取りされた端部をまず生成し、続いて化学強化した。比較例(表2)および実施例(表3)の特性を測定するため、各々の種類の少なくとも15個の試料を製造して試験した。
【0143】
比較例1、2、4、7、8は様々な厚さおよびガラスの種類のガラスであり、ほぼ面取り部を有さない。面取り部を有さない端部を、レーザー切断、ホイール切断およびスクライビング、および端部研削、場合により引き続くエッチングによって製造できる。それらの比較例の曲げ強さBSは、CSの値よりもわずかに高いだけであり、且つ
図7および8の左右の角に位置している。
【0144】
比較例3、5、6および9は厚いガラスの端部の加工と同じように模倣する面取り部のサイズを有し、つまり、面取り部の幅対面取り部の高さの比は1に近く(45°の面取り部と同様)、且つ曲げ強さはCSよりも著しく高くない。薄いガラスの破壊を回避し且つ欠けのサイズを低減するために、100μmのエポキシ保護フィルムをガラスの両側上に堆積した後、CNC端部研削(比較例3、6)を行い、且つエポキシ保護層をアセトンで洗い落とした後、さらなる洗浄および強化工程を行う。保護フィルムとして適している他の材料は上記に記載されている。CNC研削工程の後、わずかな化学エッチングを適用して、機械的研削工程中に生じた欠陥を補修することができる。
【0145】
以下において、実施例は単に「例」と称される。例1はアルミノシリケートガラスであり、比較例3と同じ端部加工によって加工する一方で、異なる研削ホイールを使用して、比較例(特に比較例3)より高い面取り部の幅/面取り部の高さの比を有し、曲げ強さが比較例(特に比較例3)より著しく高い。
【0146】
例2は他のアルミノシリケートガラスであり、異なる技術を使用して所望の面取り部の形状を得る。サイズに切断するために、薄いガラスをUV硬化性PMMAまたはエポキシ系接着剤によって一緒に貼り合わせる。10片の薄いガラスを一緒に貼り合わせて十分な堅さを得た後、その貼り合わせ物を硬化させて堅さをさらに改善する。次に、貼り合わせ物をCNC研削によって加工して、面取り部のない垂直な端部を得る。次に、貼り合わせ物を希釈HF溶液中で特定の時間の間、消耗の面取り部のサイズが得られるまで化学的にエッチングする。次に、貼り合わせ物をベークして接着剤の貼り合わせ力を低減させ、単独の片の超薄ガラスを貼り合わせ物から剥離する。通常の洗浄および強化加工を後に適用する。面取り部の幅/高さのさらに高い比が得られ、試料のCS値よりも遙かに高い曲げ強さの値が得られる。
【0147】
例3はさらに他のアルミノシリケートガラスの種類であり、さらに異なる技術を使用して好ましい面取り部の形状を得る。ここで、大きな片の超薄ガラスは耐酸インクで両側がパターン形成されており、そのインクは所望の最終的な試料サイズに相応する相応するエリアを覆っている。パターン形成された超薄ガラスを化学薬品中に浸漬させて、インクが堆積されていないところの厚さをエッチングする。得られた試料は、面取り部の幅/高さの高い比および高い曲げ強さも有する。
【0148】
例4はさらに異なるアルミノシリケートガラスの種類であり、例2から修正された技術を使用して好ましい面取り部の形状を得る。ガラスを最終製品よりも遙かに大きなサイズに貼り合わせる。硬化後、貼り合わせ物をホイールによって切断して、最終製品の形状に近付け、次にCNC端部研削を実施する。面取り部のサイズは、調整されたエッチング溶液および時間によって定義されるままである。
【0149】
例5および6はリチウムアルミノシリケートガラスの種類およびソーダライムガラスの種類であり、且つ例1と同じ面取り加工を使用する。例6は、例1~4と同様のDoLを達成するためにより長い強化時間を必要とする。
【0150】
例7は例3と同じガラスの種類であるが、例4と同じ面取り部の加工を有する。例7と例3との両方は、異なる面取り加工にもかかわらず高いBSを有する。
【0151】
例8は例2と同じガラスの種類であり且つ同じ加工を有するが、厚さがより高い。
【0152】
例9は高いホウ素含有ホウケイ酸ガラスであり、より低いDoLを有する。しかしながら、例4と同じ面取り部の加工および強化後、その曲げ強さはまた、この発明において主張される知見に従う。これは、本発明に記載される面取り部の形状と曲げ強さとの関係がガラスの種類に関わらず一般に適用可能であることの証拠である。
【0153】
例10はさらに異なる面取り加工を使用する。その物品は最終的な厚さ70μmを有する一方で、出発時の厚さは210μmである。その210μmのガラスを切断し、次にCNC研削して、比較例4と同じ面取り部の形状を得る。研削された210μmのガラス試料を次に、表面または端部の保護をしないでエッチング溶液に浸漬する。厚さを70μmに低減した後、面取り部の幅/高さの間の比も変わる。強化後の曲げ強さも、比較例3、5または6に比して著しく上昇する。
【0154】
例11は例1と同じガラスの種類であり且つ例4と同じ加工を有するが、厚さがより高い。
【0155】
例12は特殊な例であり、
図7および
図8のプロットには含まれない。それは面取り部の幅/高さの非常に高い比を有する一方で、曲げ強さは面取り部の幅/高さの比の増加に匹敵するような程度には増加しない。従って、面取り部の幅/高さの比を、20未満、好ましくは15未満、好ましくは10未満、またはさらに好ましくは8未満に調整して、最良の曲げ強さを達成するべきである。
【0156】
例13は例12と同じ種類のガラスであり、且つ同じ加工を有するが、面取り部の幅/高さの比がより小さい。理解できるとおり、例13の曲げ強さは例12に比して高い。