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特許7479568肌パラメータ値を決定するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】肌パラメータ値を決定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240426BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G01N21/17 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023517752
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2021075147
(87)【国際公開番号】W WO2022063622
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】20197493.8
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ボアムファ マリウス イオシフ
(72)【発明者】
【氏名】フェルハーフェン リエコ
(72)【発明者】
【氏名】ファン アベーレン フランク アントン
(72)【発明者】
【氏名】ツマ キラン クマル
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080811(JP,A)
【文献】国際公開第2019/129796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための方法であって、前記方法は、
第1の光源によって放射された光が前記肌と相互作用した後で当該光を受信する第1の光センサによって出力される第1のセンサ信号を受信するステップであって、前記第1のセンサ信号は、前記第1の光源が光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作している間に出力され、放射される光は第1の中心波長を有する、受信するステップと、
前記第1のデューティサイクルと関連している第1の変調基準信号を受信するステップと、
第1の積分値を決定するために、前記第1のセンサ信号と前記第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を積分するステップと、
前記第1の積分値が第1の閾値を超えるために必要な、放射される光の第1のサイクル数を決定するステップと、
決定された前記第1のサイクル数に基づいて前記肌パラメータの前記値を決定するステップと、を有する、方法。
【請求項2】
前記第1の変調基準信号は前記第1のデューティサイクルの変調周期に対応する変調周期を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の変調基準信号と、前記第1のセンサ信号と前記第1の変調基準信号との前記関数とによって、前記第1の関数出力信号は、前記第1のデューティサイクルのうちの前記第1の光源が光を放射中である部分については前記第1のセンサ信号の第1の整数倍に対応し、前記第1のデューティサイクルのうちの前記第1の光源が光を放射していない部分については前記第1のセンサ信号の前記第1の整数倍の逆数に対応するものになる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のセンサ信号は前記第1の光センサによって出力されるアナログ信号であり、前記積分するステップは前記第1の関数出力信号をアナログドメインで積分するステップを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記積分するステップは前記第1の関数出力信号を1つ又は複数のアナログ電子積分器に入力することを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の積分値は前記1つ又は複数のアナログ電子積分器にかかる電圧である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記積分するステップは前記第1の関数出力信号をデジタルドメインで積分することを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の光源又は第2の光源によって放射された光が前記肌と相互作用した後で当該光を受信する前記第1の光センサ又は第2の光センサによって出力される、第2のセンサ信号を受信するステップであって、前記第2のセンサ信号は、前記第1の光源又は前記第2の光源が、前記第1の中心波長とは異なる第2の中心波長を有する光を間欠的に放射するための第2のデューティサイクルに従って動作している間に出力される、受信するステップと、
前記第2のデューティサイクルと関連している第2の変調基準信号を受信するステップと、
第2の積分値を決定するために、前記第2のセンサ信号と前記第2の変調基準信号との関数から得られる第2の関数出力信号を積分するステップと、
前記第2の積分値が第2の閾値を超えるために必要な、前記第2の中心波長を有する光の第2のサイクル数を決定するステップと、を更に有し、
前記肌パラメータの前記値を決定するステップは、決定された前記第1のサイクル数と決定された前記第2のサイクル数との関数に基づいて前記肌パラメータの前記値を決定するステップを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータ可読コードが具現化されているコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読コードは、好適なコンピュータ又はプロセッサによって実行されると前記コンピュータ又はプロセッサに請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための装置であって、前記装置は、
第1の光源によって放射された光が前記肌と相互作用した後で当該光を受信する第1の光センサによって出力される、第1のセンサ信号を受信し、前記第1のセンサ信号は、前記第1の光源が光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作している間に出力され、放射される光は第1の中心波長を有し、
前記装置は、
前記第1のデューティサイクルと関連している第1の変調基準信号を受信し、
第1の積分値を決定するために、前記第1のセンサ信号と前記第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を積分し、
前記第1の積分値が第1の閾値を超えるために必要な、前記放射される光の第1のサイクル数を決定し、
決定された前記第1のサイクル数に基づいて前記肌パラメータの前記値を決定する、装置。
【請求項11】
前記第1の変調基準信号は前記第1のデューティサイクルの変調周期に対応する変調周期を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の変調基準信号と、前記第1のセンサ信号と前記第1の変調基準信号との前記関数とによって、前記第1の関数出力信号は、前記第1のデューティサイクルのうちの前記第1の光源が光を放射中である部分については前記第1のセンサ信号の第1の整数倍に対応し、前記第1のデューティサイクルのうちの前記第1の光源が光を放射していない部分については前記第1のセンサ信号の前記第1の整数倍の逆数に対応するものになる、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は1つ又は複数のアナログ電子積分器を備え、前記装置は前記第1の関数出力信号を前記1つ又は複数のアナログ電子積分器に入力することによって前記第1の関数出力信号を積分する、請求項10、11、又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置はデジタルドメインで積分することによって前記第1の関数出力信号を積分する、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は更に、(i)前記第1の光源又は第2の光源によって放射された光が前記肌と相互作用した後で当該光を受信する前記第1の光センサ又は第2の光センサによって出力される、第2のセンサ信号を受信し、前記第2のセンサ信号は、前記第1の光源又は前記第2の光源が、前記第1の中心波長とは異なる第2の中心波長を有する光を間欠的に放射するための第2のデューティサイクルに従って動作している間に出力され、(ii)前記第2のデューティサイクルと関連している第2の変調基準信号を受信し、(iii)第2の積分値を決定するために、前記第2のセンサ信号と前記第2の変調基準信号との関数から得られる第2の関数出力信号を積分し、(iv)前記第2の積分値が第2の閾値を超えるために必要な、前記第2の中心波長を有する光の第2のサイクル数を決定し、前記装置は、決定された前記第1のサイクル数と決定された前記第2のサイクル数との関数に基づいて前記肌パラメータの前記値を決定する、請求項10から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか一項に記載の装置と、
前記第1の中心波長を有する光を間欠的に放射するための前記第1のデューティサイクルに従って動作する前記第1の光源と、
前記第1のセンサ信号を出力する前記第1の光センサと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肌パラメータの値を決定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのトリートメントデバイスにおいて、使用前、使用中、又は使用後に、肌パラメータの値を決定することが求められる。トリートメントデバイスによって使用される肌パラメータ値は、肌トーン、肌メラニン指標、及び肌の色、肌のパターン、又は肌の特徴(例えば体毛、ほくろ、瘢痕、ざ瘡等の存在)に関連する他の肌パラメータを含み得る。肌パラメータ値の決定を必要とし得るトリートメントデバイスの例としては、レーザ及び光療法(光脱毛又は高強度パルス光、IPLとして知られる)などの様々な技術を使用する、望まない体毛を除去するためのデバイスが挙げられる。更なる例としては、ざ瘡及び皮膚の病変を治療するためのデバイスが挙げられる。
【0003】
IPL技術は、限定するものではないが、光脱毛、病変治療、光再活性化、家庭内パーソナルケア、専門的パーソナルケア、及び医療環境など、多くの用途において広く使用されている解決法である。家庭環境における光脱毛の場合、IPL光脱毛デバイスは、体毛及び毛包中のメラニンを標的として、広いスペクトルの光を肌の表面に当てる。(成長サイクルの成長期にある)体毛及び毛包はこのエネルギーを吸収し、その休止期に入る。このことにより体毛の再成長が防止される。このIPL技術を体毛除去に効果的に(例えば肌の損傷、熱傷/火傷、又は炎症が最小限になるように)使用するために、IPL光脱毛デバイスのエネルギー設定を、肌の肌トーンに基づいて調整することができる。一部のIPL光脱毛デバイス、例えばPhilipsのLumea Prestigeは、処理前及び処理中に肌トーンを検出し、適切なエネルギー設定を選択することができる。肌トーンを検出し、異なる複数の、例えば6つのタイプのうちの1つに分類することが可能である。肌タイプ1~6は大まかに以下のようにラベル付けすることができる:「白色」、「ベージュ」、「薄茶色」、「中間の茶色」、「濃い茶色」、並びに「茶色がかった黒色及び更に暗い色」。一般にIPL光脱毛デバイスは比較的暗い肌に対して使用されるべきではないが、その理由は、体毛又は毛包よりもむしろ肌が光パルスのエネルギーを吸収することになるからである。その場合、例えば茶色がかった黒色及び更に暗い色の肌トーンが検出されれば、デバイスはフラッシュをトリガすべきでない。
【0004】
IPLデバイスにおける肌タイプ検出の現在の方法は例えば、Feather J.W.、Ellis D.J.、及びLeslie G.による、「A portable reflectometer for a rapid quantification of cutaneous haemoglobin and melanin」、Phys. Med. Biol. 1988、33巻、711~722頁に記載されているような反射分光法を使用する。この技術では、反射された2つの波長の間の比(赤色及び近赤外-メラニンはこれらの2つの波長において水及びヘモグロビンと比較してより高い吸収係数を有する)を使用してメラニン指標が演算され、これを使用して肌タイプが演算される。IPLデバイスにおいて現在使用されている肌トーンセンサの1つのタイプでは、2つの別個の波長(それぞれ640ナノメートル(nm)及び870nmの中心波長)で動作する、2つの発光ダイオード(LED)が利用される。これらの2つのLEDの光は肌に向けて放射され、反射される光を検出器が測定し、この結果、2つのLEDに関して対応する検出器信号S及びSが得られる。2つの波長に対する肌反射率のレベルに基づいて肌トーンを演算することができ、肌トーンは比S/Sの関数である。
【0005】
しかしながら、反射されたエネルギー信号は、温度、周囲光、及びIPLデバイスの導波路の影響を受ける。この方法の代替は、肌トーンを演算するために肌領域のスマートフォンカメラ画像を使用することである。このこともまた、肌の鏡面反射性、照明条件のばらつき、及び画像センサ特性のばらつきに起因して、非常に困難である。また更に、画像測定には色校正カードが必要となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの及び他の要因の結果として、肌トーン及び他の肌パラメータ値を決定するために反射分光法を利用する方法はその許容差が大きい。IPLトリートメントデバイスの場合、許容差が大きければ、デバイスが暗い肌タイプを除外すべき場合に除外しなくなるか、又はそのデバイスを使用できるはずの使用者の重要な部分を除外してしまう可能性がある。したがって、肌トーンなどの肌パラメータの決定に関する改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の特定の態様によれば、対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための方法が提供される。方法は、(i)第1の光源によって放射された光が肌と相互作用した後で当該光を受信するように配置されている第1の光センサによって出力される、第1のセンサ信号を受信するステップであって、第1のセンサ信号は、第1の光源が光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作している間に出力され、放射される光は第1の中心波長を有する、受信するステップと、(ii)第1のデューティサイクルと関連している第1の変調基準信号を受信するステップと、(iii)第1の積分値を決定するために、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を積分するステップと、(iv)第1の積分値が第1の閾値を超えるために必要な、放射される光の第1のサイクル数を決定するステップと、(v)決定された第1のサイクル数に基づいて肌パラメータの値を決定するステップと、を有する。このように、光を間欠的に放射すること及びセンサ信号と光放射のデューティサイクルと関連している変調基準信号との関数を積分することによって、方法は、センサ信号に対する周囲光の寄与を単純な方式で除去又は大幅に低減して、より信頼性の高い肌パラメータ値の決定を可能にし得ることを実現する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数は、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との積を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の変調基準信号は、第1のデューティサイクルの変調周期に対応する変調周期を有する。このことは、第1の変調基準信号と第1のセンサ信号との単純な関数を使用できるという利点を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の変調基準信号と、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数とによって、第1の関数出力信号は、第1のデューティサイクルのうちの第1の光源が光を放射中である部分については第1のセンサ信号の第1の整数倍に対応し、第1のデューティサイクルのうちの第1の光源が光を放射していない部分については第1のセンサ信号の第1の整数倍を反転したものに対応するものになる。このようにして、第1の関数出力信号が積分されると、第1のセンサ信号のうちの周囲光に対応する反転された部分によって、第1のセンサ信号のうちの第1の光源が光を放射していたときに対応する部分に対する周囲光の寄与が補償されることになる。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1のセンサ信号は、第1の光センサによって出力されるアナログ信号である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、積分するステップは、第1の関数出力信号をアナログドメインで積分するステップを有する。このことは、積分が、この関数又は第1のセンサ信号のアナログ-デジタル変換の一部として導入されるノイズを含まなくなるという利点を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、積分するステップは、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を、1つ又は複数のアナログ電子積分器に入力するステップを有する。これらの実施形態のうちのいくつかでは、第1の積分値は、1つ又は複数のアナログ電子積分器にかかる電圧である。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアナログ電子積分器は1つ又は複数のコンデンサであり、第1の閾値は1つ又は複数のコンデンサにかかる電圧に関する値である。このことは、肌パラメータ値を決定するために単純なアナログ電子構成要素を使用できるという利点を有する。
【0014】
代替の実施形態では、積分するステップは、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を、デジタルドメインで積分するステップを有する。これらの実施形態は、例えば第1のセンサ信号におけるノイズを低減するために、より複雑な信号処理技術を使用できるという利点を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の中心波長は、640nm(ナノメートル)、870nm、可視光に対応する波長、赤外光に対応する波長、600nm~700nmの範囲内の波長、又は800nm~900nmの範囲内の波長である。
【0016】
いくつかの実施形態では、肌パラメータは肌トーンである。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1のデューティサイクルは50%である。これらの実施形態は、(例えばアナログドメイン又はデジタルドメインでの)信号処理が単純化されるという利点を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の光源若しくは第2の光源によって放射された光が肌と相互作用した後で当該光を受信するように配置されている第1の光センサ又は第2の光センサによって出力される、第2のセンサ信号を受信するステップであって、第2のセンサ信号は、第1の光源又は第2の光源が、第1の中心波長とは異なる第2の中心波長を有する光を間欠的に放射するための第2のデューティサイクルに従って動作している間に出力される、受信するステップと、第2のデューティサイクルと関連している第2の変調基準信号を受信するステップと、第2の積分値を決定するために、第2のセンサ信号と第2の変調基準信号との関数から得られる第2の関数出力信号を積分するステップと、第2の積分値が第2の閾値を超えるために必要な、第2の中心波長を有する光の第2のサイクル数を決定するステップと、を更に有し、肌パラメータの値を決定するステップは、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数との関数に基づいて肌パラメータの値を決定することを有する。
【0019】
これらの実施形態のうちのいくつかでは、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数との関数は、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数の比である。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の中心波長は、640nm(ナノメートル)、870nm、可視光に対応する波長、赤外光に対応する波長、600nm~700nmの範囲内の波長、又は800nm~900nmの範囲内の波長である。
【0021】
いくつかの実施形態では、肌パラメータは肌トーンである。
【0022】
第2の態様によれば、コンピュータ可読コードが具現化されているコンピュータ可読媒体を備え、コンピュータ可読コードは、好適なコンピュータ又はプロセッサによって実行されるとコンピュータ又はプロセッサを第1の態様又はその任意の実施形態に従って動作させるように構成されている、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0023】
第3の態様によれば、対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための装置が提供される。装置は、(i)第1の光源によって放射された光が肌と相互作用した後で当該光を受信するように配置されている第1の光センサによって出力される、第1のセンサ信号を受信し、第1のセンサ信号は、第1の光源が光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作している間に出力され、放射される光は第1の中心波長を有し、(ii)第1のデューティサイクルと関連している第1の変調基準信号を受信し、(iii)第1の積分値を決定するために、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を積分し、(iv)第1の積分値が第1の閾値を超えるために必要な、放射される光の第1のサイクル数を決定し、(v)決定された第1のサイクル数に基づいて肌パラメータの値を決定するように、構成されている。このように、光を間欠的に放射すること及びセンサ信号と光放射のデューティサイクルと関連している変調基準信号との関数を積分することによって、方法は、センサ信号に対する周囲光の寄与を単純な方式で除去又は大幅に低減して、より信頼性の高い肌パラメータ値の決定を可能にし得ることを実現する。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数は、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との積を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の変調基準信号は、第1のデューティサイクルの変調周期に対応する変調周期を有する。このことは、第1の変調基準信号と第1のセンサ信号との単純な関数を使用できるという利点を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の変調基準信号と、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数とによって、第1の関数出力信号は、第1のデューティサイクルのうちの第1の光源が光を放射中である部分については第1のセンサ信号の第1の整数倍に対応し、第1のデューティサイクルのうちの第1の光源が光を放射していない部分については第1のセンサ信号の第1の整数倍を反転したものに対応するものになる。このようにして、第1の関数出力信号が積分されると、第1のセンサ信号のうちの周囲光に対応する反転された部分によって、第1のセンサ信号のうちの第1の光源が光を放射していたときに対応する部分に対する周囲光の寄与が補償されることになる。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1のセンサ信号は、第1の光センサによって出力されるアナログ信号である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、装置は、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を、アナログドメインで積分することによって積分するように構成されている。このことは、積分が、この関数又は第1のセンサ信号のアナログ-デジタル変換の一部として導入されるノイズを含まなくなるという利点を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、装置は、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を、第1の関数出力信号を1つ又は複数のアナログ電子積分器に入力することによって積分するように構成されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の積分値は、1つ又は複数のアナログ電子積分器にかかる電圧である。
【0030】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアナログ電子積分器は1つ又は複数のコンデンサであり、第1の閾値は1つ又は複数のコンデンサにかかる電圧に関する値である。このことは、肌パラメータ値を決定するために単純なアナログ電子構成要素を使用できるという利点を有する。
【0031】
代替の実施形態では、装置は、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を、デジタルドメインで積分することによって積分するように構成されている。これらの実施形態は、例えば第1のセンサ信号におけるノイズを低減するために、より複雑な信号処理技術を使用できるという利点を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の中心波長は、640nm(ナノメートル)、870nm、可視光に対応する波長、赤外光に対応する波長、600nm~700nmの範囲内の波長、又は800nm~900nmの範囲内の波長である。
【0033】
いくつかの実施形態では、肌パラメータは肌トーンである。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1のデューティサイクルは50%である。これらの実施形態は、(例えばアナログドメイン又はデジタルドメインでの)信号処理が単純化されるという利点を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、装置は更に、(i)第1の光源又は第2の光源によって放射された光が肌と相互作用した後で当該光を受信するように配置されている、第1の光センサ又は第2の光センサによって出力される、第2のセンサ信号を受信し、第2のセンサ信号は、第1の光源又は第2の光源が、第1の中心波長とは異なる第2の中心波長を有する光を間欠的に放射するための第2のデューティサイクルに従って動作している間に出力され、(ii)第2のデューティサイクルと関連している第2の変調基準信号を受信し、(iii)第2の積分値を決定するために、第2のセンサ信号と第2の変調基準信号との関数から得られる第2の関数出力信号を積分し、(iv)第2の積分値が第2の閾値を超えるために必要な、第2の中心波長を有する光の第2のサイクル数を決定するように構成されており、装置は、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数との関数に基づいて肌パラメータの値を決定するように構成されている。
【0036】
これらの実施形態のうちのいくつかでは、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数との関数は、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数の比である。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2の中心波長は、640nm(ナノメートル)、870nm、可視光に対応する波長、赤外光に対応する波長、600nm~700nmの範囲内の波長、又は800nm~900nmの範囲内の波長である。
【0038】
いくつかの実施形態では、肌パラメータは肌トーンである。
【0039】
第4の態様によれば、第3の態様又はその任意の実施形態に係る、対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための装置と、第1の中心波長を有する光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作するように構成されている第1の光源と、第1のセンサ信号を出力するように構成されている第1の光センサと、を備える、システム、が提供される。
【0040】
これらの及び他の態様は、以下に記載する実施形態から明らかになり、それらを参照して説明されることになる。
【0041】
ここで例示的な実施形態について以下の図面を参照して単なる例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明と共に使用可能な例示的なトリートメントデバイスの図である。
図2】様々な実施形態に係る、光源と光センサと装置とを備える例示的なシステムのブロック図である。
図3】本発明の例示的な実施形態を示す概略図である。
図4】本発明の様々な実施形態に係る、肌トーンを決定するための方法を説明するフローチャートである。
図5】対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための例示的な方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上で指摘したように、分光技術を使用した肌パラメータの値の決定は、許容差の大きい肌パラメータ値をもたらし得る。これらの大きい許容差に対する際立った寄与要因は、光センサによって測定される周囲光である。本開示は、周囲光への感受性がより低くあらゆる肌トーンに対して良好に機能する、肌パラメータ値を決定するための方法及び装置を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、肌パラメータは肌トーン又はメラニン指標である。ただし、決定される肌パラメータは必ずしも肌トーンである必要はないことが理解されるであろう。実際には、肌パラメータは、肌から反射又はそれ以外で受信された光から決定可能な、任意の肌パラメータであり得る。例えば、決定される肌パラメータは、肌の色、又は、肌のパターン若しくは肌の特徴の存在若しくは不在(例えば(暗色の)体毛、ほくろ、瘢痕、ざ瘡、等の存在)であり得る。
【0045】
この技術は、トリートメントデバイスの動作又は使用中に決定された肌パラメータを使用し得るトリートメントデバイスによって実施され得る。例示的な実施形態では、トリートメントデバイスは、体毛を除去する及び/又は体毛成長を抑制するために、光パルスを使用するものである。しかしながら、本明細書に記載する技術は、体毛を除去する及び/又は体毛成長を抑制するために光パルスを使用するトリートメントデバイスによる使用に制限されず、それらは他のタイプのトリートメントデバイスによって使用され得る。また更に、肌パラメータは必ずしも、トリートメントデバイスによって又はトリートメントデバイスと関連付けられた目的のために使用されなくてもよいことも、理解されるであろう。例えば本明細書で開示されている方法は、肌製品(例えば化粧品又はコンシーラ)を推薦及び/又は色素障害を評価するために使用可能な肌パラメータ(例えば肌タイプ及び/又はメラニン指標)を決定するために使用され得る。
【0046】
本開示は、光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作される、すなわち放射される光が時間ドメインで変調される、1つ又は複数のLEDユニットなどの光源を提供する。好ましい実施形態では、変調は矩形オン/オフ変調であるが(すなわち、光源は「オン」フェーズで光を放射し、また光源は「オフ」フェーズでは光を放射しない)、正弦波、三角波、のこぎり歯、又は任意の他の周期的信号などの、他の変調が可能である。好ましい実施形態では、光の変調は0と1との(オン状態とオフ状態との)間で変化するが、他の実施形態が可能である。変調された光のデューティサイクル(すなわちオン及びオフ状態の持続時間の比)は好ましくは50%であるが、他の値、例えば30%、40%、60%、70%、等をとり得る。肌と相互作用した(例えば肌によって反射された又は肌を通過した)後で、変調された光は光センサ(光検出器とも呼ばれる)に入射する。センサに入射する光は肌と相互作用した変調された光と(変調されていない)周囲光を組み合わせたものとなり、光センサによって生成される信号は検出器ノイズを更に含むことになる。
【0047】
本開示によれば、検出器信号と変調基準信号の関数の決定及び続くこの関数の時間ドメインでの積分に対する、変調されていない周囲光成分の寄与が、大きく低減され得る。好ましい実施形態では、変調基準信号は-1の状態と+1の状態との間で変化するが、変調基準信号が-Xの状態と+Xの状態との又は-Xの状態と+Yの状態との間で変化する、代替の実施形態が可能である。好ましい実施形態では、変調基準信号は、放射される光のデューティサイクルと一致して、+1(又は+X)の状態と-1(又は-X)の状態との間で変化する。言い換えれば、変調基準信号の変調周期は好ましくはデューティサイクルの変調周期と同じであり、関数の決定において変調基準信号はデューティサイクルと「同位相」であるが、このことは、デューティサイクルの「オン」期間が変調基準信号の+1(又は+X)期間に対応しており、デューティサイクルの「オフ」期間が変調基準信号の-1(又は-X)期間に対応していることを意味する。ただし代替の実施形態が可能である。いくつかの実施形態では、検出器信号と変調基準信号との関数は、検出器信号と変調基準信号との積である。いくつかの実施形態では、検出器信号は変調基準信号及び更なる補正係数と乗算され、その後積分されてもよい。検出器信号と変調基準との関数の積分によって、変調されていない周囲光の寄与が大きく低減される。
【0048】
本明細書では、積分値が事前に選ばれた閾値レベルに達するために必要な、放射される光の変調サイクル数を決定することが提案される。変調サイクル数Nは調査中の肌の反射率に比例する。例示的な実施形態では、肌の肌トーンは比N/Nの関数を使用して決定され、ここでN及びNは、中心波長の異なる2つの光源について決定される変調サイクルの数である。より暗い肌タイプはより低い反射率を有し、したがって閾値レベルに達するための積分時間はより明るい肌タイプよりも長くなる。比較的長い積分時間によって検出器信号の信号対ノイズ比が改善される。このように、本明細書で開示されている方法及び装置は、周囲光及び検出器ノイズの影響を大きく低減する。開示されている技術はまた、低レベルの反射光又は散乱光への感度がより高く、したがって、現在の方法及びデバイスよりも広範囲の肌トーンについて、肌トーン及び他の肌パラメータを決定するために使用することができる。
【0049】
図1は、肌のあるエリアに光パルスを適用するために使用可能な、例示的なトリートメントデバイス2の図である。図1のトリートメントデバイス2は単に本発明と共に使用できるトリートメントデバイス2の例として提示されており、トリートメントデバイス2が図1に示す形態に、又は手持ち式のトリートメントデバイスであることに限定されないことが理解されるであろう。上で指摘したように、本発明は同様に、トリートメントデバイス2における又はこれを用いた実施に限定されず、いくつかの実施形態では、本発明は肌パラメータ値を決定する目的で提供される装置において実施され得る。
【0050】
図1のトリートメントデバイス2は対象者(例えば人又は動物)の体に対して使用されるもので、使用中に使用者の片手又は両手に把持されることになる。トリートメントデバイス2は、トリートメントデバイス2が対象者の体の一部と接触しているときに、1つ又は複数の光パルスを使用して対象者の体の体毛に何らかのトリートメント処置を行うためのものである。
【0051】
例示的なトリートメントデバイス2は、少なくとも握り部分5とヘッド部分6とを含む、ハウジング4を備える。握り部分5は、使用者がトリートメントデバイス2を片手で把持することが可能になるような形状となっている。ヘッド部分6はヘッド端部8を有し、このヘッド端部8は、対象者の体又は肌に対してヘッド端部8が体又は肌と接触している位置においてトリートメント処置を行うために、対象者と接触するように設置されることになる。
【0052】
トリートメントデバイス2は光パルスを使用してトリートメント処置を行うためのものである。このため、図1では、ヘッド端部8は、開口10を対象者の肌と隣り合わせて又はその表面に(すなわち接触するように)設置できるようにハウジング4内に又は表面に配置されている、開口10を備える。トリートメントデバイス2は、開口10を介して対象者の肌に適用されることになる光パルスを生成しトリートメント処置を実施するためのものである、1つ又は複数の光源12を含む。1つ又は複数の光源12は、光パルスが1つ又は複数の光源12から開口10を通して提供されるように、ハウジング4内に配置されている。
【0053】
1つ又は複数の光源12は、任意の好適な又は所望の波長(若しくは波長の範囲)及び/又は強度の光パルスを生成し得る。1つ又は複数の光源12は、光のパルスを提供するように構成されている。すなわち、光源12は、短い持続時間(例えば1秒未満)の間、高強度の光を生成するように構成されている。光パルスの強度は、開口10と隣り合った肌又は体の一部に対してトリートメント処置を実施するのに十分な高さであるべきである。
【0054】
光ベースのトリートメント処置を実施するための1つ又は複数の光源12に加えて、デバイスはまた、対象者の肌に関する肌パラメータ、例えば肌トーンの値を決定するための、肌パラメータセンサ14も備える。肌パラメータセンサ14は、1つ又は複数の光源と、1つ又は複数の光センサと、を備える。光センサからの出力信号を使用して肌パラメータ値を決定するための装置が、トリートメントデバイス2内に、又はトリートメントデバイス2とは別個に提供される。
【0055】
図示されているトリートメントデバイス2はまた、要求されるトリートメント処置(例えば、1つ又は複数の光源12による1つ又は複数の光パルスの生成)が対象者の体に対して行われるようにトリートメントデバイス2を動作させるよう使用者が操作可能な、使用者制御部20も含む。使用者制御部20は、スイッチ、ボタン、タッチパッド、等の形態であり得る。
【0056】
図2は、本明細書に記載する技術に係る、肌パラメータ値を決定するための例示的なシステム40のブロック図である。図1のトリートメントデバイス2における肌パラメータセンサ14はシステム40の一例であり得る。システム40は、対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための装置42と、光を放射するための1つ又は複数の光源44と、入射光を測定するための1つ又は複数の光センサ46と、を備える。装置42は肌パラメータ値の決定専用のデバイス又は構成要素のセットであり得るが、他の実施形態では装置42は、好適にプログラム又は好適に構成された汎用デバイス、例えばスマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、携帯情報端末(PDA)、ラップトップ、デスクトップコンピュータ、リモートサーバ、スマートミラー、等であり得る。
【0057】
対象となる肌エリア(すなわち、肌パラメータ値が決定されることになる肌エリア)を照射するための、1つ又は複数の光源44が提供される。肌を照射するための光源44は、任意の好適な光源、例えば1つ又は複数のLEDとすることができ、対応する中心波長で、又は対応する特定の波長範囲内で、光を放射することができる。例えば肌トーンが決定されることになる例示的な実施形態では、光源44は2つの別個の中心波長で動作する2つのLEDを備える。例えば、LED1は640nmの中心波長を有してもよく、LED2は870nmの中心波長を有してもよい。
【0058】
システム40の使用中、光源44は、対象者の肌に向けて光を放射するように構成される。光センサ46は、光源によって放射された光が肌と相互作用した後で当該光を測定するように構成される。例えば、光は肌によって反射、透過、又は散乱され得る。1つ又は複数の光源44からの光を検出するための単一の光センサ46が存在してもよい。代替の実施形態では2つ以上の光センサ46が存在してもよく、例えば光源44ごとに対応する光センサ46が設けられてもよい。各光センサ46は入射光に応答し、各光センサ46はセンサ信号を出力し、これが装置42に供給される。
【0059】
装置42は以下で更に記載するように、センサ信号を受信し、センサ信号を使用して肌パラメータ値を決定する。いくつかの実施形態では、装置42は、アナログの電気回路及び構成要素を使用してアナログドメインで肌パラメータ値を決定してもよい。他の実施形態では、装置42はデジタルドメインで肌パラメータ値を決定してもよく、このため装置42は、装置42の動作を全般に制御し、装置42が本明細書に記載する方法及び技術の一部又は全部を実行することを可能にする、処理ユニットを備え得る。処理ユニット48は、本明細書に記載する様々な機能を実行するように、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、当業者に知られている多数の様式で実装され得る。
【0060】
図3は本開示の例示的な実施形態を示す。図3では、1つ又は2つのLED320、例えばLED1及び任意選択的に更なるLED2が存在し、示されているステップはLED320の一方又は両方に適用可能である。2つのLED320の場合、LED1によって放射される光の中心波長λは、LED2によって放射される中心波長λとは別個であり得る。
【0061】
LED320はLED電流310によって駆動される。図3に図示するように、LED320に光を間欠的に放射させるために、LED電流310は時間ドメインで、50%のデューティサイクルの矩形オン/オフ変調で変調される。この結果、LED320によって放射される光もまた、時間ドメインで、50%デューティサイクルの矩形オン/オフ変調で変調される。上で指摘したように、正弦波、三角波、のこぎり歯、又は任意の他の周期的な信号を含むLED320の他の変調が可能であり、駆動電流310はそれに応じて適合され得る。また更に、デューティサイクルは任意の他の値をとることができる。
【0062】
肌と相互作用(例えば反射、散乱、等)した後で、放射された光は光センサ330に入射し、そこでセンサ信号が生成される。センサ信号は光が光センサに入射する際に生成された電流によって形成され得る。光センサ330はLED320の動作の複数のサイクルにわたって入射光の測定値に対して演算を行い、この結果、光センサ330はLED320が光を放射中である期間及びLED320が光を放射していない期間の間にセンサ信号を生成する。LED320が光を放射しているときに光センサ330に入射する光は、肌、及び更に周囲光と相互作用した光を含む。LED320が光を放射していないときに光センサ330に入射する光は、周囲光を含むのみである。
【0063】
センサ信号は続いて変調基準信号340と乗算される。変調基準信号は、決定される肌パラメータ値に対する周囲光の影響を低減するために、センサ信号と組み合わせて使用される信号である。この場合、図3の例示的な実施形態では、変調基準信号340は-1の状態/値と+1の状態/値との間で変化する矩形波信号であり、変調された関連するLED320によって放射された光と同じ周期を有する。変調基準信号はセンサ信号と同位相であるが、このことは、センサ信号のうちのLED320によって光が放射されていたときに対応する部分が、変調基準信号の+1部分又は+X部分と乗算されていることを意味する。このことはまた、センサ信号のうちのLED320によって光が放射されていないときに対応する部分が、変調基準信号の-1又は-X部分と乗算されることも意味し、このことは、続くセンサ信号の分析から周囲光の影響を低減又は除去するように作用する。しかしながら他の実施形態も可能である。例えば、変調基準信号340は、-Xの状態と+Xの状態との又は-Xの状態と+Yの状態との間で変動し得る。センサ信号及び変調基準信号に、2つの信号の乗算350以外の代替の関数演算を適用できることが更に留意される。上で指摘したように、これは、図3に示されている例示的な実施形態における変調関数とは異なる変調関数を説明するスケーリング又は他の関数演算であり得る。
【0064】
続くステップにおいて、センサ信号と変調基準信号の積が積分モジュール360において積分されて、積分値が取得される。積分ステップの使用によって、(例えば反射された光のレベルが低いことに起因して)検出限度未満である信号を、検出限度を上回るレベルまで積分することが可能になる。このことにより、高レベルの背景(周囲)光の存在下で、より暗い肌トーンを測定することが可能になる。好ましい実施形態では、積分はアナログ電子積分器によってアナログドメインで行われる。これらの実施形態では、積分値はアナログ電子積分器にかかる電圧である。例えば、積分は、限定するものではないがセンサ信号と変調基準信号との関数がコンデンサに適用される際に電荷を蓄積するコンデンサなどの、アナログ電子デバイスによって行うことができる。積分値はコンデンサにかかる電圧である。アナログ積分は有益であるが、その理由はこれにより、ノイズを導入すると考えられるデジタルドメインへのセンサ信号(又はセンサ信号から導出される信号)の変換の必要がなくなるからである。代替の実施形態では、積分ステップはデジタルドメインで実行され得る。デジタル積分の使用は、図3に示す例示的な実施形態に示されている変調関数以外の(すなわち50%デューティサイクルの矩形オン/オフ変調とは異なる)変調関数を説明するための数学的補正が必要な実施形態において有益であり得る。ただし、デジタル積分によって更なるノイズが導入されることになることが留意される。
【0065】
図3の最終ステップにおいて、積分値が閾値を超えるために必要な変調サイクル数370が決定される。つまり、LED320が間欠的に動作しセンサ信号が取得される際に、センサ信号の関数が(例えば積信号をコンデンサなどのアナログ電子積分器に入力することによって)連続的に積分される。積分値はしたがって、LED320のいくつかの変調(オン/オフ)サイクルの過程の間に大きくなる。各サイクルによる積分値への寄与は肌の反射率に比例する。この場合、積分値が閾値を超えるために必要な変調サイクル数370も、肌の反射率に比例する。いくつかの実施形態では、閾値は、アナログ電子積分器(例えばコンデンサ)にかかる電圧に関する値である。
【0066】
肌パラメータが肌トーンであり且つ2つのLED320が使用される実施形態では、閾値を超えるために必要なサイクル370の数は、LED1についてN及びLED2についてNと示すことができる。肌トーンは比N/Nの関数として与えることができる。上で指摘したように、より暗い肌タイプはより明るい肌タイプよりも反射率が低く、したがってより暗い肌は、積分値が閾値を超えるために、より長い積分時間(すなわちより多くの変調サイクル)が必要となる。この比較的長い積分時間と、変調基準信号及び続く積分の使用による周囲光の除去又は低減とによって、信号対ノイズ比が改善される。このように、本発明は、周囲光の影響を受けず、且つあらゆる肌トーンに対して最適に機能し得る、肌トーンセンサを提供する。
【0067】
図4のフローチャートは、本発明の様々な実施形態に係る、肌トーンを決定するための方法を示す。方法は2つのLEDユニット、LED1及びLED2の変調を含む。ステップ410において、積分信号がリセットされる(例えば0にセットされる)。ステップ420において、変調された光信号がLED1によって放射され、対象者の肌に入射する。ステップ430において、肌と相互作用したLED1によって放射される光は光センサに入射し、対応する検出器信号(例えばセンサ信号)が変調基準信号と乗算される。この組み合わされた信号はいくつかの変調サイクルの過程にわたって積分され、積分値が閾値を超えるために必要な変調サイクル数が決定される。ステップ440及び450において、ステップ420及び430が(LED1とは異なる中心波長の光を放射する)LED2に対して繰り返される。ステップ460において、LED1及びLED2に関する決定されたサイクル数の比が取得される。最後にステップ470において、この比を使用して肌トーン分類が決定される。
【0068】
図5のフローチャートは、対象者の肌に関する肌パラメータの値を決定するための、本明細書に記載する技術に係る例示的な方法を示す。この方法は上記した装置42によって実行され得る。方法はステップ510において、第1の光センサによって出力される第1のセンサ信号を受信することで開始される。第1の光センサは、第1の光源によって放射される光を、放射された光が肌と相互作用した後で受信するように配置されている。ステップ510で受信された第1のセンサ信号は、第1の光源が第1の中心波長を有する光を間欠的に放射するための第1のデューティサイクルに従って動作している間に出力される。いくつかの実施形態では、第1の光源はLEDである。第1の中心波長は、640nm(ナノメートル)、870nm、可視光に対応する波長、赤外光に対応する波長、600nm~700nmの範囲内の波長、又は800nm~900nmの範囲内の波長であり得る。いくつかの実施形態では、第1のデューティサイクルは50%である。第1のセンサ信号は第1の光センサによって出力されるアナログ信号であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかでは、第1のセンサ信号は電流信号である。
【0069】
ステップ520において、第1のデューティサイクルと関連している第1の変調基準信号が受信される。第1の変調基準信号は好ましくは、第1の光源による光の間欠的な放射の変調周期に対応する変調周期を有する。
【0070】
ステップ530において、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数が積分されて、第1の積分値が決定される。いくつかの実施形態では、関数は第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との積を含む。第1のセンサ信号がアナログ信号である実施形態では、積分するステップはアナログドメインで実行され得る。いくつかの実施形態では、ステップ530は、第1のセンサ信号と第1の変調基準信号との関数から得られる第1の関数出力信号を、1つ又は複数のアナログ電子積分器に入力することを有し得る。これらの実施形態では、第1の積分値は、1つ又は複数のアナログ電子積分器にかかる電圧となる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアナログ電子積分器は1つ又は複数のコンデンサである。代替の実施形態では、積分するステップはデジタルドメインで行われる。
【0071】
ステップ540において、第1の積分値が第1の閾値を超えるために必要な、放射される光の第1のサイクル数が決定される。ステップ530がアナログドメインで行われるいくつかの実施形態では、第1の閾値は、1つ又は複数のアナログ電子積分器(例えばコンデンサ)にかかる電圧に関する値であり得る。
【0072】
ステップ550において、決定された第1のサイクル数に基づいて肌パラメータの値が決定され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、ステップ550は、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数との関数に基づいて肌パラメータの値を決定することを更に有する。これらの実施形態では、決定された第2のサイクル数は、第2の中心波長を有する光が肌に対して第2のデューティサイクルに従って間欠的に放射される間に出力される第2のセンサ信号に対して、ステップ510~540を繰り返すことによって取得される。第2のセンサ信号は第1の光センサによって出力されても第2の光センサによって出力されてもよい。第2の中心波長を有する光は第1の光源によって又は第2の光源によって放射され得る。第2の光源はLEDであってもよい。第2の中心波長は第1の中心波長とは異なる。第2の中心波長は、640nm、870nm、可視光に対応する波長、赤外光に対応する波長、600nm~700nmの範囲内の波長、又は800nm~900nmの範囲内のうちの、いずれかであり得る。いくつかの実施形態では(例えば肌パラメータが肌トーンである場合)、第1の中心波長及び第2の中心波長の一方が可視光に対応する波長(例えば640nm又は600nm~700nmの範囲内の波長)であり、第1の中心波長及び第2の中心波長の他方が赤外光に対応する波長(例えば870nm又は800nm~900nmの範囲内の波長)である。好ましい実施形態では、第2のデューティサイクルは50%である。
【0074】
これらの実施形態では、図5のステップ550は、第2のデューティサイクルと関連している第2の変調基準信号を受信することを更に有する。第2の変調基準信号は好ましくは、第2の中心波長を有する光の間欠的な放射の変調周期に対応する変調周期を有する。
【0075】
これらの実施形態では、ステップ550は、第2の積分値を決定するために、第2のセンサ信号と第2の変調基準信号との関数を積分することを更に有し得る。これらの実施形態のうちのいくつかでは、関数は第2のセンサ信号と第2の変調基準信号との積を含む。第2のセンサ信号がアナログ信号である実施形態では、積分するステップはアナログドメインで実行され得る。これらの実施形態のうちのいくつかでは、積分するステップは、第2のセンサ信号と第2の変調基準信号との関数から得られる第2の関数出力信号を、1つ又は複数のアナログ電子積分器に入力するステップを有し得る。第2の積分値は、1つ又は複数のアナログ電子積分器にかかる電圧となる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のアナログ電子積分器は1つ又は複数のコンデンサである。代替の実施形態では、積分するステップはデジタルドメインで実行される。
【0076】
これらの実施形態では、ステップ550は、上述した第2のサイクル数を、第2の積分値が第2の閾値を超えるために必要な、第2の中心波長を有する光のサイクル数として決定することを更に有し得る。積分がアナログドメインで行われる実施形態では、第2の閾値は、1つ又は複数のアナログ電子積分器(例えばコンデンサ)にかかる電圧に関する値であり得る。第2の閾値は第1の閾値と同じ値又は異なる値であり得る。
【0077】
これらの実施形態のうちのいくつかでは、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数との関数は、決定された第1のサイクル数と決定された第2のサイクル数の比であるか、又はそれを含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、決定される肌パラメータは肌トーンである。
【0078】
この結果、肌パラメータに関する値を決定するための改善された方法及び装置が提供される。
【0079】
本明細書に記載されている原理及び技術の実施に際して、当業者は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、開示される実施形態の変形形態を理解及び実現することができる。請求項において、単語「備える、含む、有する」は他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。単一プロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載されたいくつかの事項の機能を果たす場合がある。特定の手法が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手法の組合せが有利に使用され得ないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給され得る光学ストレージ媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体に保存又は分散されてもよいが、また他の形態で、例えばインターネット又は他の有線若しくはワイヤレスの電気通信システムを介して、分散されてもよい。請求項におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5