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特許7479590導光ユニット、吸光度測定装置、およびインキュベータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】導光ユニット、吸光度測定装置、およびインキュベータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20240430BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240430BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240430BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 D
C12M3/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022007939
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023106925
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄太
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054561(WO,A1)
【文献】特開2020-201140(JP,A)
【文献】特表2017-504789(JP,A)
【文献】特表2005-516596(JP,A)
【文献】特開2019-180342(JP,A)
【文献】特開平10-221242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
C12M 1/00-C12M 1/42
C12M 3/00ーC12M 3/10
C12Q 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入光側から入る光を出光側へ導出する導光ユニットであって、
前記入光側に第1面、前記出光側に第2面を有し前記光を通過させる基板部と、
前記基板部の前記第2面から突出し前記光を通過させる導光部と、
前記基板部の前記第1面に形成され前記導光部と対応する位置に第1アパーチャを有する第1遮光層と、
前記基板部の前記第2面および前記導光部の外周面に形成された第2遮光層とを有し、
前記第2遮光層には、前記導光部の先端面を露出させる第2アパーチャが形成され、
前記導光部の前記外周面は、前記導光部の基端側から前記先端面に向けて、前記導光部の中心線に接近するように傾斜しており、
前記導光部の屈折率は、前記基板部の屈折率よりも高いことを特徴とする導光ユニット。
【請求項2】
前記導光部の前記中心線と、前記導光部の前記外周面とがなす傾斜角度は、0.1°~30°であることを特徴とする請求項1に記載の導光ユニット。
【請求項3】
前記第1アパーチャの直径D1は、前記第1アパーチャから前記第2アパーチャまでの前記基板部に垂直な光路長Lの1%~30%の比率であり、前記第2アパーチャの直径D2は、前記光路長Lの1%~30%の比率であることを特徴とする請求項1または2に記載の導光ユニット。
【請求項4】
前記第1遮光層および前記第2遮光層は、前記基板部および前記導光部を形成する透明材料に、前記光に対する吸光度の高い顔料を添加した材料で形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の導光ユニット。
【請求項5】
前記基板部には、前記導光部が複数整列して形成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の導光ユニット。
【請求項6】
前記導光部は、截頭円錐状または截頭角錐状であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の導光ユニット。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の導光ユニットと、
前記導光ユニットの前記第1面上において、前記第1アパーチャと対向する位置にウェルを有するマイクロプレートを支持する支持部と、
前記ウェルに照射光を照射する発光部と、
前記導光ユニットの前記第2アパーチャから導出される光を受けて電気信号に変換する受光部とを具備する吸光度測定装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の導光ユニットと、
前記導光ユニットの前記第1面上において、前記第1アパーチャと対向する位置にウェルを有するマイクロプレートを支持する支持部と、
前記ウェルに照射光を照射する発光部と、
前記導光ユニットの前記第2アパーチャから導出される光を受けて電気信号に変換する受光部と、
これらを内部空間に収容する筐体と、
前記内部空間の温度を調整する調整機構とを有するインキュベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光度測定装置などに使用される導光ユニット、それを用いた吸光度測定装置およびインキュベータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、吸光度測定装置としてのマイクロプレートリーダを内蔵したインキュベータが記載されている。このインキュベータは、培養環境をコントロールする恒温機能を備えた気密性を有する筐体と、この筐体に収容されたマイクロプレートリーダ(吸光度測定装置)とを有する。
【0003】
前記マイクロプレートリーダは、培養すべき細胞が収容される多数のウェルが形成されたマイクロプレートと、マイクロプレートの上方から個々のウェルへ照射光を照射するLED基板と、マイクロプレートの下方に配置され個々のウェルを通過した光を下方へ導く導光ユニットと、導光ユニットの下方に配置され、各ウェルを通過した光の強度をそれぞれ電気信号に変換する受光基板とを有する。
【0004】
前記導光ユニットは、前記LED基板が生じる不要な外乱光を排除するための空間フィルターであり、黒色に着色された樹脂プレートの内部に、各ウェルと対応する箇所に円柱状の透明な導光路を形成したものである。これにより、LED基板の各LEDからの照射光は各ウェル内の細胞培地を通過し、前記導光路で不要な外乱光を低減された後、前記受光基板の各受光素子で受光され、培養細胞によって生じる吸光度変化が検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-180342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたインキュベータでは、導光ユニットによる外乱光の除去効果を十分に得るには、導光路の長さを大きく、すなわち導光ユニットの厚みを十分に大きくする必要があり、装置の小型化の支障になっていた。また、導光ユニットを薄くすると外乱光の除去が不足するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一態様は、入光側から入る光を出光側へ導出する導光ユニットであって、前記入光側に第1面、前記出光側に第2面を有し前記光を通過させる基板部と、前記基板部の前記第2面から突出し前記光を通過させる導光部と、前記基板部の前記第1面に形成され前記導光部と対応する位置に第1アパーチャを有する第1遮光層と、前記基板部の前記第2面および前記導光部の外周面に形成された第2遮光層とを有し、前記第2遮光層には、前記導光部の先端面を露出させる第2アパーチャが形成され、 前記導光部の前記外周面は、前記導光部の基端側から前記先端面に向けて、前記導光部の中心線に接近するように傾斜している。
【0008】
この導光ユニットによれば、前記導光部の前記外周面が、前記導光部の基端側から前記先端面に向けて、前記導光部の中心線に接近するように傾斜している、すなわち、例えば前記導光部の基端側から前記先端面に向けて窄まる形状を有することにより、前記第1アパーチャから入光した外乱光が前記導光部の外周面と前記第2遮光層の境界面で一部反射したとしても、反射の度に反射面の傾斜によって前記第1アパーチャ側へ外乱光の進行方向が屈折する。前記導光部の内部で反射された外乱光は、前記第2遮光層および第1遮光層に当たる度に一部が吸収されるため、導光路が単純な円柱形状である場合に比して、第2アパーチャを通過して導出される外乱光の量を減らすことができる。
【0009】
また、外乱光の量を減らすことができるから、外乱光による問題を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、導光ユニットの小型化、ひいては導光ユニットが組み込まれる装置の小型化を図ることが可能となる。
【0010】
前記導光部の前記中心線と、前記導光部の前記外周面とがなす傾斜角度は0.1°~30°であってもよい。なお、本明細書において「A~B」と表記した場合には、「A以上かつB以下」であることを示すものとする。このような傾斜角度の範囲であれば、外乱光の量を減らす効果が得られる。前記傾斜角度は、0.1、0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30°であってもよく、これら数値から選択される異なる二つの数値の小さい方を最小値とし、大きい方を最大値とする範囲内であってもよい。
【0011】
前記導光部の前記中心線と、前記導光部の前記外周面とがなす傾斜角度は、前記導光部の中心線方向に連続的または段階的に変化していてもよい。前記傾斜角度が連続的に変化する場合は前記導光部の前記外周面は曲面となる。前記傾斜角度が段階的に変化する場合は前記導光部の前記外周面は屈折することになる。
【0012】
前記第1アパーチャの直径D1は、前記第1アパーチャから前記第2アパーチャまでの前記基板部に垂直な光路長Lの1%~30%の比率であってもよい。前記比率は、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30%であってもよく、これら数値から選択される異なる二つの数値の小さい方を最小値とし、大きい方を最大値とする範囲内であってもよい。
【0013】
同様に、前記第2アパーチャの直径D2は、前記光路長Lの1%~30%の比率であってもよい。前記比率は、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30%であってもよく、これら数値から選択される異なる二つの数値の小さい方を最小値とし大きい方を最大値とする範囲内であってもよい。前記第1アパーチャの直径D1と、前記第2アパーチャの直径D2は同じ値であってもよいし、前記D1,D2それぞれの範囲内においてD1<D2またはD1>D2であってもよい。D1/D2の値は限定されないが、0.6~1.5であってもよく、0.6~0.98であってもよく、あるいは、1.02~1.5であってもよい。
【0014】
前記第1遮光層および前記第2遮光層は、前記基板部および前記導光部を形成する透明材料、例えば透明樹脂に、前記光に対する吸光度の高い顔料、例えば黒色顔料を添加した材料で形成されていてもよい。この場合には、前記基板部および前記導光部と前記第1遮光層および前記第2遮光層との界面での屈折率変化を減らし、前記界面での外乱光の反射を少なくすることができる。
【0015】
前記導光部の屈折率は、前記基板部の屈折率よりも高くされていてもよい。前記導光部と前記基板部の間には、屈折率境界面が存在していてもよい。この場合には、第1アパーチャから入射した外乱光が、屈折率境界面を通過する際に導光部中心線に対してより大きな傾斜角度となるように屈折する。これにより、前記導光部の外周面と外乱光の光路がなす角度が大きくなり、導光部の外周面での光吸収率が高くなるとともに、吸収されなかった一部の外乱光も導光部の外周面で第1アパーチャにより近い方向へ反射される。したがって、外乱光が第1遮光層で吸収または第2遮光層と第1遮光層の間に閉じ込められる傾向が増し、第2アパーチャを通過する外乱光をより少なくすることができる。
【0016】
前記基板部には、前記導光部が複数整列して形成されていてもよい。この場合には、多数の光を同時に導出することができる。一方、前記基板部には、前記導光部が一つだけ形成されていてもよい。
【0017】
前記導光部は、截頭円錐状または截頭角錐状であってもよい。この場合には、導光部の設計が簡単で、金型からの離型もよいので、製造が容易である。前記導光部は、截頭楕円錐状または截頭四角錐状や截頭六角錐状であってもよい。
【0018】
本発明の他の態様に係る吸光度測定装置は、前記のいずれかに記載の導光ユニットと、 前記導光ユニットの前記第1面上において、前記第1アパーチャと対向する位置にウェルを有するマイクロプレートを支持する支持部と、前記ウェルに照射光を照射する発光部と、 前記導光ユニットの前記第2アパーチャから導出される光を受けて電気信号に変換する受光部とを具備する。
【0019】
この吸光度測定装置によれば、前記導光ユニットにより外乱光が受光部へ到達する量を減らすことができるから、外乱光による測定誤差を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、吸光度測定装置の小型化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明の他の態様に係るインキュベータは、前記導光ユニットと、前記導光ユニットの前記第1面上において、前記第1アパーチャと対向する位置にウェルを有するマイクロプレートを支持する支持部と、前記ウェルに照射光を照射する発光部と、前記導光ユニットの前記第2アパーチャから導出される光を受けて電気信号に変換する受光部と、これらを内部空間に収容する筐体と、前記内部空間の温度や湿度等の雰囲気を調整する調整機構とを有する。
【0021】
このインキュベータによれば、前記導光ユニットにより外乱光が受光部へ到達する量を減らすことができるから、培養細胞についての外乱光による測定誤差を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、インキュベータの小型化を図ることが可能となる。また、筐体の内部空間を小さくできるから、調整機構にかかるエネルギーコストや製造コストを削減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、導光路が単純な円柱形状である場合に比して、第2アパーチャを通過して導出される外乱光の量を減らすことができ、外乱光による問題を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、導光ユニットの小型化、ひいては導光ユニットが組み込まれる装置の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態のインキュベータおよび吸光度測定装置を示す縦断面図である。
図2】前記インキュベータおよび吸光度測定装置の要部を示す縦断面図である。
図3】前記インキュベータおよび吸光度測定装置の導光ユニットの平面図である。
図4】前記導光ユニットの底面図である。
図5】前記導光ユニットの縦断面図である。
図6】導光ユニットの他の実施形態を示す縦断面図である。
図7】導光ユニットの他の実施形態を示す縦断面図である。
図8】導光ユニットの立体形状の一例を示す斜視図である。
図9】導光ユニットの立体形状の一例を示す斜視図である。
図10】導光ユニットの他の実施形態を示す縦断面図である。
図11】導光ユニットの他の実施形態を示す縦断面図である。
図12】導光ユニットの他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のインキュベータ1を示す縦断面図であり、インキュベータ1は、開閉可能かつ内部空間4を気密的に封止できる例えば箱型の筐体2を有する。筐体2は筐体上部2Aと筐体下部2Bに分割されており、筐体上部2Aは筐体下部2Bに対して開閉可能とされ、筐体上部2Aを閉じると内部空間4が気密的に保たれる。筐体2の内部空間4には、吸光度測定装置であるマイクロプレートリーダ3が収容されている。マイクロプレートリーダ3は、筐体下部2B内の底面に沿って配置された受光基板6と、受光基板6上に設けられた導光ユニット16と、導光ユニット16上に支持板19を介して着脱可能に設置されたマイクロプレート20と、マイクロプレート20を固定する図示しない支持機構と、マイクロプレート20上に配置され筐体上部2Aに固定された発光基板12とを有する。受光基板6、導光ユニット16、マイクロプレート20、および発光基板12は、筐体上部2Aを閉じた状態では互いに平行に配置されており、筐体2内で水平に設置されている。
【0025】
受光基板6は、上面に縦列および横列に整列された多数の受光センサ8を備え、各受光センサ8の光軸は上方へ向けられている。受光センサ8の上面には、図2に示すように、受光部34が設けられ、受光部34で受けた光の強度を電気信号へ変換し、図示しない制御装置へ伝達する。受光部34を構成する受光素子としては、従来用いられているいかなる種類であってもよく、赤色、青色、緑色のそれぞれの受光量を検知することができるカラーセンサ、イメージセンサ、CMOSセンサ、光電効果型センサ、フォトトランジスタ、フォトダイオード、CCD、フォトレジスタ、CdSセル、中赤外領域用のHgCdTeセルなどいかなる光電センサであってもよく、反応する波長も、赤外線、可視光線、紫外線など必要に応じていずれであってもよい。受光素子は、カラーセンサのように複数の波長に反応して複数の信号を同時に出力するものであってもよいし、画像信号出力が可能なものでもよい。
【0026】
受光基板6上には導光ユニット16が載置され、さらに導光ユニット16上には、発光素子14の発する光に対し透明な平板状の支持板19が載置され、支持板19の周縁は筐体下部2Bに固定された周壁部21に対し、着脱可能に固定されている。支持板19と周壁部21によって、受光基板6および導光ユニット16は、高湿度環境となる内部空間4から気密的に隔離され保護されている。支持板19を取り外せば、受光基板6および導光ユニット16の交換が可能となる。また、インキュベータ1には、内部空間4の温度、湿度、および炭酸ガス濃度を調整する調整機構が内部もしくは外部に設けられ、培養すべき細胞に適した環境、例えば、温度37℃前後、相対湿度97%前後、二酸化炭素濃度5%前後に調整できるようになっている。
【0027】
一方、発光基板12の下面には、受光基板6の受光センサ8とそれぞれ対向する位置に、受光センサ8と同数の発光素子14が固定され、発光基板12に対して垂直かつ下方へ向けて照射光24を発生する。発光素子14としては、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)が一般的であるが、その他の発光素子を用いてもよい。発光素子14が発光する波長も、受光部34に対応して、赤外線、可視光線、紫外線など必要に応じていずれであってもよい。受光素子は、受光部34の受光波長に対応して、複数の波長域の光を同時に、もしくは測定対象に応じて切り替え可能にいずれかの波長の光を出力するものであってもよい。発光基板12には周壁部10を介して、発光素子14の発する光に対し透明な平板状のカバー11が固定され、発光基板12と周壁部10とカバー11により発光素子14は高湿度環境となる内部空間4から気密的に隔離されている。
【0028】
マイクロプレート20は、上面に開口する多数の窪んだウェル22を有し、それぞれのウェル22が発光素子14および受光センサ8と対応する位置に配置される。発光素子14および受光センサ8の光軸はウェル22の中央を通過する。ウェル22の個数は限定されず、例えば6、24、96、384などいかなる数であってもよい。発光素子14からの照射光24がカバー11を通過して、ウェル22の内部にそれぞれ照射される。ウェル22の底部は一般に水平面もしくは窪んだ曲面とされていることが好ましいが、限定はされない。ウェル22の平面視した形状は通常は円形、四角形、または六角形などであるが限定はされない。ウェル22の内部には、培地および培養すべき細胞が配置でき、インキュベータ1内で細胞を培養することが可能である。
【0029】
マイクロプレート20は、受光センサ8が反応する光を透過する材質からなり、一般には透明な各種樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリスチレンなどで形成されるが、他の樹脂やガラスや透明なセラミックスで形成することも可能である。
【0030】
導光ユニット16は、本発明の主特徴となるものであり、入光側に第1面(上面)、出光側に第2面(下面)を有し、光を通過させる厚さ一定で矩形状の基板部17と、基板部17の第2面から中心線が第2面に垂直になるように突出し光を通過させる導光部18とを有している。この実施形態の導光部18は、図8に示すように截頭円錐形をなし、その中心線が発光素子14および受光センサ8の中心線と一致するように、基板部17と一体に多数形成されている。導光部18を基板部17とは別に成形して、基板部17の第2面に接着または融着することも可能であるが、同じ素材で一体成形されているほうが両者の界面における反射を防ぐ観点および製造コスト低下の観点から好ましい。
【0031】
基板部17および導光部18の材質は限定されないが、発光素子14が発する光に対して透明度の高い透明樹脂が好ましく、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリスチレンなどで形成されてもよい。
基板部17の厚さは限定されないが、一般には0.1~10mm程度であってもよく、例えば、1~5mm程度であってもよい。
【0032】
導光ユニット16は、ウェル22の口径(内容積)や透過波長に応じて、複数種類が用意され、測定すべき対象や光波長に応じて交換可能に、筐体2内の支持部(図示略)に着脱可能に支持されていてもよい。
【0033】
基板部17の第1面には第1遮光層26が形成され、第1遮光層26には、各導光部18と対応する位置に、中心線Oと同軸に、この実施形態では円形の第1アパーチャ30がそれぞれ形成されている。第1アパーチャ30は第1遮光層26の開口部である。図3は、導光ユニット16における第1アパーチャ30の配列状態の一例を示す平面図であり、図4は、導光ユニット16における導光部18の配列状態の一例を示す平面図である。ただし、本発明はこれら図に示す縦横に格子状に整列された配列状態に限定されるものではなく、第1アパーチャ30および導光部18は一列ごとに交互に半位相ずらして、より高密度に配置されていてもよい。また、第1アパーチャ30の形状は円形だけに限定されず、四角形や六角形など他の形状であってもよい。
【0034】
基板部17の第2面および導光部18の外周面には、図2図5および図8に示すように、第2遮光層28が形成されている。第2遮光層28には、導光部18の先端面のみを露出させる第2アパーチャ32が形成されている。第1アパーチャ30は第1遮光層26の開口部である。第2遮光層28の材質は、第1遮光層26と同様であることが好ましいが、必要であれば異なっていてもよい。
【0035】
第1遮光層26および第2遮光層28は、発光素子14が発する光に対し吸収率が高くかつできるだけ反射率は低い材料で形成されている。例えば、樹脂バインダー中に黒色等の顔料を添加した塗料などを、基板部17および導光部18に塗布して形成されていてもよい。第1遮光層26および第2遮光層28は、基板部17および導光部18とともに2色成形されていてもよい。
【0036】
第1遮光層26および第2遮光層28の樹脂バインダーは、好ましくは、基板部17および導光部18を構成する樹脂材料と同じ樹脂材料(例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリスチレンなど)、もしくは、光屈折率が近似する樹脂材料であるとよい。その場合、第1遮光層26および第2遮光層28と基板部17および導光部18との接合界面での光反射率を小さくすることができ、光吸収率を高めて導光ユニット16としての外乱光の透過率をさらに下げることが可能である。
【0037】
発光素子14が発する光に対し吸収率が高く反射率は低い黒色等の顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、複合酸化物ブラックなどを例示できるが、これらに限定されることはない。また、必要な吸収率を満たすことができれば、黒色でなくても使用可能である。顔料は単一種に限らず、複数種を混合して使用することも可能である。顔料の粒径は限定されないが、発光素子14が発する光に対し吸収率が高く反射率は低くなるような粒径を選択することが好ましい。
【0038】
第1遮光層26および第2遮光層28は、単一の層でなくてもよく、必要に応じては顔料の濃度や樹脂の種類、もしくは反射率および吸収率が互いに異なる複数の層を二層または三層以上に積層し、第1遮光層26および第2遮光層28としての反射率を下げ吸収率を高める工夫をしてもよい。
【0039】
導光部18の外周面は、導光部18の基端側から先端面に向けて、導光部18の中心線Oに接近するように傾斜している。導光部18の中心線Oと、導光部18の外周面とがなす傾斜角度θ1は、本発明では限定されないが、0.1°~30°であってもよい。このような傾斜角度の範囲であれば、外乱光の量を減らす効果が得られる。前記傾斜角度θ1は、0.1、0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30°であってもよく、これら数値から選択される異なる二つの数値の小さい方を最小値とし、大きい方を最大値とする範囲内であってもよい。傾斜角度θ1を大きくすると外乱光に含まれる斜光成分をカットする効果が高まるが、あまり大きくしすぎると導光部18の径が太くなって配置上の問題が生じる。傾斜角度θ1は、例えば前記の範囲内で、導光部18の中心線O方向に連続的または段階的に変化していてもよい。傾斜角度θ1が連続的に変化する場合は導光部18の外周面は曲面となる。傾斜角度θ1が段階的に変化する場合は導光部18の外周面は屈折することになる。
【0040】
第1アパーチャ30の直径D1と、前記第2アパーチャ32の直径D2は、本実施形態では限定されないが、例えば第1アパーチャ30の直径D1は、第1アパーチャ30から第2アパーチャ32までの基板部17に垂直な光路長Lの1%~30%の比率であってもよい。前記比率(D1/L)は、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30%であってもよく、これら数値から選択される異なる二つの数値の小さい方を最小値とし、大きい方を最大値とする範囲内であってもよい。
【0041】
同様に、第2アパーチャ32の直径D2は、光路長Lの1%~30%の比率であってもよい。前記比率(D2/L)は、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30%であってもよく、これら数値から選択される異なる二つの数値の小さい方を最小値とし大きい方を最大値とする範囲内であってもよい。第1アパーチャ30の直径D1と、第2アパーチャ32の直径D2は同じ値であってもよいし、D1,D2それぞれの範囲内においてD1<D2またはD1>D2であってもよい。D1/D2の値は限定されないが、0.6~1.5であってもよく、0.6~0.98であってもよく、あるいは、1.02~1.5であってもよい。比率D1/D2が小さいほど、外乱光に含まれる斜光成分をカットする効果が高まるが、あまり小さくしすぎると、導光部18の効果が乏しくなる。
【0042】
上記構成からなる導光ユニット16、マイクロプレートリーダ3、およびインキュベータ1によれば、導光部18の外周面が、導光部18の基端側から先端面に向けて、中心線Oに接近するように傾斜し、導光部18が先端側に向けて径が縮小する截頭円錐状を有することにより、第1アパーチャ30から入光した外乱光が導光部18の外周面と第2遮光層28の境界面で一部反射したとしても、反射の度に反射面の傾斜によって第1アパーチャ30側へ向けて外乱光の進行方向が屈折する。このように導光部18の内部で反射された外乱光は、第2遮光層28および第1遮光層26に当たる度に一部が吸収され、さらに一部は第2遮光層と第1遮光層の間に閉じ込められるため、導光路が単純な円柱形状である場合に比して、最終的に第2アパーチャ32を通過して導出される外乱光の量を減らすことができる。
【0043】
また、外乱光の量を減らすことができるから、外乱光による問題を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニット16の厚さを小さくすることができ、導光ユニット16の小型化、ひいては導光ユニット16が組み込まれるマイクロプレートリーダ3およびインキュベータ1の小型化を図ることが可能となる。
【0044】
また、導光ユニット16は基板部17と導光部18を一体的に金型により成形して、第1遮光層26および第2遮光層28を塗布形成することができるから、前記のように良好な光学特性を有しながら低コストで製造できる利点を有する。導光部18は截頭円錐形なので金型から離型させやすいメリットも有する。
【0045】
また、導光ユニット16の第1アパーチャ30は、第1遮光層26を形成するときに塗料をマスクするだけで自在な形状および寸法に形成することができるから、光学特性を低コストでコントロールすることが可能である。
【0046】
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態の導光ユニット16を示し、この例では、導光部18が単純な截頭円錐形ではなく、導光部18の高さの途中から先端側では、外周面の中心線Oに対する傾斜角度が大きくなっている。すなわち、導光部18は、外周面の中心線Oに対する傾斜角度θ2が相対的に小さい截頭円錐形の第1部18Aと、外周面の中心線Oに対する傾斜角度θ3が相対的に大きい截頭円錐形の第2部18Bとからなる。
【0047】
この第2実施形態によれば、受光センサ8に近い側の第2部18Bにおいて、反射面の傾斜によって第1アパーチャ30側へ向けて外乱光の進行方向を屈折させる効果が高くなる。よって、第2遮光層28および第1遮光層26に当たる度に一部が吸収されるとともに、一部は第2遮光層と第1遮光層の間に閉じ込められるため、第2アパーチャ32を通過する外乱光を減らすことができる。
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態の導光ユニット16を示し、この例でも、導光部18が単純な截頭円錐形ではなく、導光部18の高さの途中から先端側では、外周面の中心線Oに対する傾斜角度が小さくなっている。すなわち、導光部18は、外周面の中心線Oに対する傾斜角度θ2が相対的に大きい截頭円錐形の第1部18Aと、外周面の中心線Oに対する傾斜角度θ3が相対的に小さい截頭円錐形の第2部18Bとからなる。
【0048】
この第3実施形態によれば、マイクロプレート20に近い側の第1部18Aにおいて、反射面の傾斜によって第1アパーチャ30側へ向けて外乱光の進行方向を屈折させる効果が高くなる。
第1実施形態、第2実施形態、および第3実施形態の導光ユニット16は、導光ユニット16へ入射する外乱光の入射角分布などに応じて、使い分ければよい。
【0049】
[第4実施形態]
図9は、本発明の第4実施形態の導光ユニット16を示し、この例では、導光部18が截頭円錐形ではなく、截頭四角錐形とされている。これに対応して、第1アパーチャ30および第2アパーチャ32の形状も四角形とされている。マイクロプレート20のウェル22の平面視形状が四角形である場合には、それに対応して導光部18が截頭四角錐形であると、ウェル22の底面全面からの光を効率よく導光部18へ導くことができる。
【0050】
同様に、ウェル22の平面視形状が六角形(特に正六角形)である場合には、導光部18を截頭六角錐形(特に截頭正六角錐形)とするとともに、第1アパーチャ30および第2アパーチャ32の形状も六角形(特に正六角形)としてもよい。
【0051】
[第5~第7実施形態]
図10図12は、本発明の第5~第7実施形態を示し、これらは第1~第3実施形態において、導光部18を構成する透明材料の屈折率を、基板部17を構成する透明材料の屈折率よりも大きくしたことを特徴とする。これにより、各導光ユニット16の内部には、導光部18と基板部17の間に屈折率境界面Sが形成されている。なお、明瞭な屈折率境界面Sがなく、導光部18と基板部17の間の一定厚さの領域で、厚さ方向に連続的に屈折率が変化する構成としてもよい。
【0052】
このような第5~第7実施形態によれば、図10に例示するように、第1アパーチャ30から入射した外乱光Pが、屈折率境界面Sを通過する際に中心線Oに対してより大きな傾斜角度となるように屈折する。これにより、導光部18の外周面と入射光Pの光路がなす角度が大きくなり、導光部18の外周面での光吸収率が高くなるとともに、吸収されなかった一部の外乱光Pも導光部18の外周面で第1アパーチャ30により近い方向へ反射される。したがって、外乱光Pが第1遮光層26で吸収または第2遮光層28と第1遮光層26の間に閉じ込められる傾向が増し、第2アパーチャ32を通過する外乱光Pをより少なくすることができる。
【0053】
[第8実施形態]
上記実施形態では、いずれも導光ユニット16に多数の導光部18を形成したものであったが、マイクロプレート20に形成されたウェル22が一つである場合には、導光ユニット16に一つだけの導光部18を形成した構成としてもよい。この場合、マイクロプレートリーダ3およびインキュベータ1も単一のウェル22内の資料の吸光度を測定できるポータブル型のものとなる。この第5実施形態においても、外乱光による問題を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニット16の厚さを小さくすることができ、導光ユニット16の小型化、ひいては導光ユニット16が組み込まれるポータブル形のマイクロプレートリーダ3およびインキュベータ1の小型化を図ることが可能となる。
【0054】
本発明は、上記説明した実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態相互の構成を組み合わせることも可能であるし、特許請求の範囲に記載された範囲において、必要に応じて各部構成の変更、省略、および追加を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、導光ユニットの導光路が単純な円柱形状である場合に比して、第2アパーチャを通過して導出される外乱光の量を減らすことができ、外乱光による問題を低減できるだけでなく、十分な外乱光除去効果を得るために必要な導光ユニットの厚さを小さくすることができ、導光ユニットの小型化、ひいては導光ユニットが組み込まれる装置の小型化を図ることが可能となる。したがって、産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 インキュベータ
2 筐体
2A 筐体上部
2B 筐体下部
3 マイクロプレートリーダ(吸光度測定装置)
4 内部空間
6 受光基板
8 受光センサ
10 周壁部
11 カバー
12 発光基板
14 発光素子
16 導光ユニット
17 基板部
18 導光部
18A 第1部
18B 第2部
19 支持板
O 中心線
20 マイクロプレート
21 周壁部
22 ウェル
24 照射光
26 第1遮光層
28 第2遮光層
30 第1アパーチャ
32 第2アパーチャ
34 受光部
D1 第1アパーチャ径
D2 第2アパーチャ径
θ1 傾斜角度
θ2 第1部傾斜角度
θ3 第2部傾斜角度
S 屈折率境界面
P 外乱光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12