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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】シャワー装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/06 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
E03C1/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097978
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021188478
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 憲通
(72)【発明者】
【氏名】安立 義明
(72)【発明者】
【氏名】相原 豊
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翔太
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-81986(JP,A)
【文献】特開2020-33813(JP,A)
【文献】特開2021-155988(JP,A)
【文献】特開2000-319960(JP,A)
【文献】特開2004-131977(JP,A)
【文献】特開2003-119855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0190170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーヘッドを保持するシャワーハンガーを備えるシャワー装置であって、
前記シャワーハンガーは、
前記シャワーヘッドの筒状の基端部である被保持部が挿入され、前記シャワーヘッドを水平な軸まわりに水平に対して45度以下まで回動可能に保持する保持部と、
前記被保持部に接続され、前記被保持部を回動させて水平に対して45度以下まで傾けた状態のシャワーホースを左右から挟み込むクランプ部と、を備える、シャワー装置。
【請求項2】
前記シャワーハンガーの保持部は、一端開口から該一端開口よりも小径な他端開口にかけて形成され、前記シャワーヘッドを保持した状態で前記被保持部を囲む保持面と、有し、
前記シャワーハンガーの底面には、前記シャワーホースが挿通され、前記保持面に連通する挿通孔が形成されており、
前記クランプ部は、前記挿通孔の前側において切り欠きを形成する一対の突片によって形成される、請求項1に記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記一対の突片の間隔は、前記シャワーホースの径よりも小さい、請求項2に記載のシャワー装置。
【請求項4】
上下方向に延伸しているスライドバーをさらに備え、
前記シャワーハンガーが前記スライドバーに対してその延伸方向に摺動可能に取り付けられている、請求項1~3のいずれか一つに記載のシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、シャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャワーヘッドを水平な軸まわりに回動可能に保持し、使用者がシャワーヘッドを軸まわりに回動させることで、シャワーヘッドの傾倒が調整可能なシャワーハンガーを備えるシャワー装置が知られている。
【0003】
このようなシャワー装置では、シャワーハンガーは、たとえば、一端側において、シャワーヘッドの筒状の基端部である被保持部が筒状の保持部に挿入されることで、シャワーヘッドを保持し、他端側において、上下方向に延伸しているスライドバーに対してその延伸方向に摺動可能に取り付けられる(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この種のシャワーハンガーを利用して、シャワーヘッドを使用者の頭上まで移動させた上で、水平に近い角度まで傾倒させることで、頭上から吐水を浴びる、いわゆるオーバーヘッド浴を行うシャワー装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-111958号公報
【文献】特開2013-22384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したようなシャワーヘッドを水平に近づけるように傾けた状態、すなわち保持部を水平に対して45度以下となるように回動させた状態では、被保持部と保持部の内周面(保持面)との間の摩擦力に頼ってシャワーヘッドを保持する。この場合、被保持部の下部が保持面に当接して支点となり、被保持部の後部が保持面の上部に当接して作用点となる。
【0007】
しかしながら、上記したようなシャワーハンガーは、シャワーヘッドを最も傾けた状態では、作用点から支点までを結ぶ線が斜め下に向かうため、下方へのモーメントが大きくなり、たとえば、シャワーヘッドからの吐止水を切り替えた際に発生する振動や、シャワーハンガーがスライドバーに沿って摺動する際に発生する振動で被保持部が保持部から抜けてしまい、シャワーヘッドが脱落するおそれがある。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、シャワーヘッドの脱落を抑えることができるシャワー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係るシャワー装置は、シャワーヘッドを保持するシャワーハンガーを備えるシャワー装置であって、前記シャワーハンガーは、前記シャワーヘッドの筒状の基端部である被保持部が挿入され、前記シャワーヘッドを水平な軸まわりに水平に対して45度以下まで回動可能に保持する保持部と、前記被保持部に接続され、前記被保持部を回動させて水平に対して45度以下まで傾けた状態のシャワーホースを左右から挟み込むクランプ部と、を備える。
【0010】
このような構成によれば、シャワーヘッド(保持部)を最も水平に近づけるように傾けた状態、すなわち、保持部を水平に対して45度以下となるように回動させた状態にして、仮にシャワーヘッドの被保持部がシャワーハンガーの保持部から抜けても、被保持部に接続されるシャワーホースがクランプ部に引っ掛かり、シャワーホースを一時的に保持することができる。これにより、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【0011】
とくに、シャワーヘッドからの吐止水を切り替えた際には、シャワーヘッドに水圧が急に作用することになり、反力でシャワーヘッドが動いてしまうことによって、仮にシャワーヘッドの被保持部がシャワーハンガーの保持部から抜けても、このような構成によれば、シャワーホースを一時的に保持することができ、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【0012】
また、このような構成によれば、シャワーヘッドを水平に対して45度以下まで傾けた状態で、保持部を保持する使い方だけでなく、シャワーヘッドを保持部に保持した状態で、シャワーヘッドを水平に対して45度以下まで傾くよう回動させるような使い方をしても、クランプ部によって、シャワーホースを左右から挟み込むことができる。換言すると、使い方を限定せず、確実にシャワーホースを一時的に保持することができ、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【0013】
また、シャワー装置では、前記シャワーハンガーの保持部は、一端開口から該一端開口よりも小径な他端開口にかけて形成され、前記シャワーヘッドを保持した状態で前記被保持部を囲む保持面と、有し、記シャワーハンガーの底面には、前記シャワーホースが挿通され、 前記保持面に連通する挿通孔が形成されており、前記クランプ部は、前記挿通孔の前側において切り欠きを形成する一対の突片によって形成される。
【0014】
このような構成によれば、シャワーハンガーの底面の挿通孔を利用してクランプ部を形成することができ、簡単な構成で、シャワーホースを一時的に保持することができ、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【0015】
また、シャワー装置では、前記一対の突片の間隔は、前記シャワーホースの径よりも小さい。
【0016】
このような構成によれば、より確実にシャワーホースを一時的に保持することができ、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【0017】
また、シャワー装置では、上下方向に延伸しているスライドバーをさらに備え、前記シャワーハンガーが前記スライドバーに対してその延伸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0018】
このような構成によれば、シャワーハンガーをスライドバーに沿って移動させる際に発生する振動によって、仮にシャワーヘッドの被保持部がシャワーハンガーの保持部から抜けても、このような構成によれば、シャワーホースを一時的に保持することができ、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
実施形態の一態様によれば、シャワーヘッドの脱落を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係るシャワー装置を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るシャワーハンガーによるシャワーヘッドの保持状態を示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係るシャワーハンガーの保持部を示す側断面図(その1)である。
図4図4は、実施形態に係るシャワーハンガーの保持部を示す側断面図(その2)である。
図5図5は、実施形態(本例)に係るシャワーハンガーによるシャワーヘッドの保持状態において、シャワーヘッドに作用する支点および作用点の関係を示す説明図である。
図6図6は、比較例に係るシャワーハンガーによるシャワーヘッドの保持状態において、シャワーヘッドに作用する支点および作用点の関係を示す説明図である。
図7図7は、実施形態に係るシャワーハンガーのクランプ部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するシャワー装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
<シャワー装置>
図1および図2を参照して実施形態に係るシャワー装置10について説明する。図1は、実施形態に係るシャワー装置10を示す斜視図である。図2は、実施形態に係るシャワーハンガー30によるシャワーヘッド40の保持状態を示す側面図である。
【0023】
なお、図1および図2には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。このような直交座標系は、他の図にも図示している場合がある。また、以下では、X軸の正方向を右方、X軸の負方向を左方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定している。このため、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0024】
図1および図2に示すように、シャワー装置10は、たとえば、浴室BRに設置される。シャワー装置10は、スライドバー20と、シャワーハンガー30とを備える。スライドバー20は、たとえば、浴室BRの壁面WS(図2参照)に取り付けられる。スライドバー20は、バー本体21と、取付部22とを備える。
【0025】
バー本体21は、柱状であり、好ましくは円柱状である。バー本体21は、その延伸方向が上下方向に沿うように取り付けられる。すなわち、バー本体21は、壁面WSに取り付けた状態において、上下方向に延伸している。バー本体21は、たとえば、その上部が、上方に向かうにつれて壁面WSに向かうように、後方に向けて緩やかに湾曲している。
【0026】
取付部22は、バー本体21の上端部および下端部のそれぞれに設けられる。取付部22は、ビスなどの取付具221(図2参照)によって壁面WSに取り付けられることで、バー本体21を、壁面WSから所定の間隔をあけた位置に固定する。
【0027】
シャワーハンガー30は、後述するシャワーヘッド40を保持しつつ、スライドバー20に対して、バー本体21の延伸方向に沿って摺動可能に取り付けられる。シャワーハンガー30は、たとえば、一端側でシャワーヘッド40を保持し、他端側がバー本体21に取り付けられる。
【0028】
シャワーハンガー30は、ハンガー本体31と、操作部32と、保持部33と、スライドバー取付部34とを備える。
【0029】
シャワーハンガー30は、使用者が操作部32を手指で操作しながら(押しながら)ハンガー本体31を動かすことで、バー本体21を挿通させているスライドバー取付部34においてバー本体21の延伸方向に沿って摺動され、使用者が操作部32の操作を停止する(操作部32から手指を離して操作部32が元に戻る)ことで、バー本体21の延伸方向に対する位置、すなわち、上下方向の位置が固定される。なお、シャワーハンガー30の詳細については、図3以降を用いて後述する。
【0030】
シャワー装置10は、シャワーヘッド40やシャワーホース50を含んで構成されてもよい。図2に示すように、シャワーヘッド40は、吐水部41と、把持部42と、被保持部43とを備える。吐水部41は、吐水面411を有する。吐水面411には、複数の吐水孔411aが形成される。吐水部41は、図示しない水栓から供給される水や湯を吐水孔411aから吐出する。
【0031】
把持部42は、使用者がシャワーヘッド40を使用する場合に手で持つ部位であり、たとえば、円筒状に形成される。吐水部41および把持部42は、シャワーヘッド40の外観を構成する。
【0032】
被保持部43は、シャワーハンガー30に保持される筒状の部位であり、把持部42における吐水部41とは反対側の端部(基端部)に設けられる。被保持部43は、シャワーヘッド40の基端部であり、水栓から延びるシャワーホース50との接続部でもある。
【0033】
被保持部43は、たとえば、円筒状である。また、被保持部43は、たとえば、把持部42側となる基端側よりもシャワーホース50側となる先端側の方が小径となる先細り形状に形成される。
【0034】
図2に示すように、シャワーハンガー30は、シャワーヘッド40の被保持部43を後述する保持部33で保持することで、シャワーヘッド40を保持する。シャワーハンガー30は、筒(円筒)状の被保持部43が保持部33に挿入されることで、被保持部43を保持する。シャワーハンガー30は、保持部33においてシャワーヘッド40を水平な軸AXまわりに水平に対して45度以下まで回動可能に保持する。なお。軸AXは、シャワーハンガー30が傾くこともあるため、厳密な水平でなくてよく、略水平な軸も含むものである。
【0035】
図2に示すように、シャワーヘッド40を保持した状態では、シャワーヘッド40の自重による下向きの力Fが発生し、被保持部43の下部を支点P1として、シャワーヘッド40側の力点P2、被保持部43の後部の作用点P3の関係が成り立つ。
【0036】
ここで、シャワーヘッド40がシャワーハンガー30から脱落しないためには、支点P1よりも下方に作用点P3が位置している必要がある。すなわち、作用点P3から支点P1までを結んだ線(直線)Lの水平線Lに対する角度αが正となり、作用点P3から支点P1までを結んだ線Lが作用点P3から支点P1にかけて斜め上に向かう。
【0037】
一方、支点P1よりも上方に作用点P3が位置していると、すなわち、作用点P3から支点P1までを結んだ線Lの水平線Lに対する角度αが負となり、作用点P3から支点P1までを結んだ線Lが作用点P3から支点P1にかけて斜め下に向かうと、シャワーヘッド40がシャワーハンガー30から脱落するか、あるいは、脱落しやすい状態である。
【0038】
<シャワーハンガー>
次に、図3図7を参照してシャワーハンガー30について説明する。図3および図4は、実施形態に係るシャワーハンガー30の保持部33を示す側断面図である。なお、図3には、シャワーヘッド40の被保持部43を保持している状態を示し、また、図4には、保持部33のみを拡大して示している。
【0039】
図3および図4に示すように、保持部33は、保持面331と、スリット333と、前方当接部334(図4参照)と、後方当接部335とを有する。保持面331は、保持部33の内周面である。保持面331は、前側の一端開口332aから後側の他端開口332bにかけて形成された面である。保持面331は、シャワーヘッド40を保持した状態では、被保持部43を囲むとともに、被保持部43の外周面と接触する。
【0040】
スリット333は、保持面331の一部を開放させるように、被保持部43が挿入される方向に沿って形成される。
【0041】
図4に示すように、前方当接部334は、保持面331に形成される。前方当接部334は、シャワーヘッド40を保持した状態では、被保持部43の下部に当接する。前方当接部334は、被保持部43の下部に当接して、上記した支点P1(図2参照)となる。前方当接部334は、スリット333の保持面331との境界となる端縁部(上端縁部)333aであり、水平方向に並んだ2点であるため、被保持部43に対して左右方向に対称な2つの位置で当接する。
【0042】
後方当接部335は、前方当接部334と同様、保持面331に形成される。後方当接部335は、シャワーヘッド40を保持した状態では、被保持部43の後部に当接する。後方当接部335は、被保持部43の後部に当接して、上記した作用点P3(図3参照)となる。後方当接部335は、前方当接部334と同様、水平方向に並んだ2点である。
【0043】
このため、後方当接部335は、被保持部43に対して左右方向に対称な2つの位置で当接する。
【0044】
後方当接部335は、シャワーヘッド40を、軸AX(図1参照)を中心に回動させて、水平に近づけるように傾けた状態、すなわち、保持部30を、軸AXまわりに、水平に対して45度以下まで傾けた状態では、前方当接部334よりも下方で被保持部43に当接することで、シャワーヘッド40の脱落を抑えている。
【0045】
後方当接部335は、シャワーヘッド40(保持部30)を最も水平に近づけるように傾けた状態でも、前方当接部334よりも下方で被保持部43に当接する。このため、後方当接部335は、保持面331の突部335aによって形成される。
【0046】
突部335aは、保持面331の上部に凹部336が形成されることで、保持面331の他の部位よりも相対的に突出して、被保持部43に対して他の部位よりも先に当接する部位であり、凹部336の保持面331との境界となる、前方から後方に向けて線状に延びた端縁部である。
【0047】
後方当接部335は、このような線状の突部335aの所定の位置に形成される。後方当接部335は、図4に示すように、保持面331の後半部に位置する。なお、突部335aは、このような凹部336によって相対的に突出させたものに限定されず、たとえば、突起などのような、保持面331から実際に突出させたものでもよい。
【0048】
後方当接部335は、シャワーヘッド40(保持部30)を最も水平に近づくように傾けた状態でも、前方当接部334よりも下方で被保持部43に当接するため、シャワーヘッド40の脱落を抑えることができる。ここから、図5および図6を用いて、シャワーヘッド40の脱落を抑制するメカニズムについて説明する。
【0049】
図5は、実施形態(本例)に係るシャワーハンガー30によるシャワーヘッド40の保持状態において、シャワーヘッド40に作用する支点P1および作用点P3の関係を示す説明図である。図6は、比較例に係るシャワーハンガー30Aによるシャワーヘッド40の保持状態において、シャワーヘッド40に作用する支点P1および作用点P3の関係を示す説明図である。なお、図5および図6の左半部にはシャワーヘッド40の吐水部41を示しているが、両図とも右半部に示す作用点P3から支点P1までを結んだ線L1,L2と平行な線L1a,L2aを記載している。
【0050】
シャワーハンガー30は、被保持部43の外周面と保持部33の内周面、すなわち、保持面331との間の摩擦力に頼ってシャワーヘッド40を保持する。図5に示すように、本例の場合、シャワーヘッド40を最も傾けた状態でも、作用点P3から支点P1までを結んだ線L1の水平線Lに対する角度α1は正となり、作用点P3から支点P1までを結んだ線L1が作用点P3から支点P1にかけて斜め上に向かう。
【0051】
このような状態において、下向きに働く力(自重)Fはシャワーヘッド40を保持する向きに力が働いている。ここにシャワーヘッド40の吐水部41の点P4に吐水反力Fが加わると、被保持部43の外周面と後方当接部335(図4参照)との間の摩擦力が低下するが、下向きに働く力(自重)Fは、作用点P3から支点P1までを結んだ線L1(L1a)においてシャワーヘッド40を保持する向きに力F1aが働いているため、被保持部43には、保持部33に保持される向きの力F1が加わる。
【0052】
これに対し、図6に示すように、比較例の場合、シャワーヘッド40を最も傾けた状態では、作用点P3から支点P1までを結んだ線L2の水平線Lに対する角度α2は負となり、作用点P3から支点P1までを結んだ線L2が作用点P3から支点P1にかけて斜め下に向かう。
【0053】
このような状態において、下向きに働く力(自重)Fはシャワーヘッド40が脱落する向きに力が働いている。ここにシャワーヘッド40の吐水部41の点P4に吐水反力Fが加わると、被保持部43の外周面と後方当接部335(図4参照)との間の摩擦力が低下し、下向きに働く力(自重)Fは、作用点P3から支点P1までを結んだ線L2(L2a)においてシャワーヘッド40が脱落する向きに力F2aが働くため、被保持部43には、保持部33Aから脱落する向きの力F2が加わる。
【0054】
このように、上記した実施形態によれば、シャワーヘッド40(保持部30)を最も水平に近づけるように(水平に対して45度以下となるように)傾けた状態でも、作用点P3となる後方当接部335から支点P1となる前方当接部334までを結んだ線L1が斜め上に向かうため、シャワーヘッド40を保持した状態で被保持部43に加わる下方へのモーメントが小さくなり、被保持部43が保持部33から抜けにくい。これにより、シャワーヘッド40の脱落をより抑えることができる。
【0055】
また、作用点P3となる後方当接部335が被保持部43に対して左右対称な2つの位置で当接するため、後方当接部335(作用点P3)が1つの場合よりも安定して当接させることができる。
【0056】
また、シャワーヘッド40(保持部30)を傾けた状態で保持面331の凹部336によって、水平方向(左右方向)に並んだ2つの位置、すなわち、一対で当接するように作用点P3となる後方当接部335を形成することができる。このように、たとえば、ゴムなどで突部を別途設けることなく、後方当接部335(作用点P3)から支点P1となる前方当接部334までを結んだ線L1が斜め上に向かう構成を簡単に実現することができる。
【0057】
また、突部335aが前方から後方に向けて線状に延伸し、作用点P3となる後方当接部335が突部335aの所定の位置に形成されるため、シャワーハンガー30に保持されるシャワーヘッド40の位置が前後方向にずれても、すなわち、保持面331に当接する被保持部43の位置が変わった場合でも、支点P1となる前方当接部334よりも下方に後方当接部335(作用点P3)を位置させることができる。
【0058】
また、後方当接部335が保持面331の後半部に位置するため、突部335aが小さくても、支点P1となる前方当接部334よりも下方に作用点P3となる後方当接部335を位置させることができる。これにより、シャワーハンガー30の大型化を抑えることができ、さらには、シャワー装置10の大型化を抑えることができる。
【0059】
なお、上記した実施形態では、保持面331の凹部336を形成して他の部位よりも相対的に突出させることで突部335aを形成しているが、たとえば、保持面331にゴムなどで突起を設け、この突起で突部を形成してもよい。このように構成しても、作用点P3となる後方当接部335から支点P1となる前方当接部334までを結んだ線L1が斜め上に向かうようになる。また、ゴム製の突起の場合は、摩擦力が大きいため、シャワーヘッド40の保持力が高まる。
【0060】
また、上記した実施形態では、シャワーハンガー30がスライドバー20(バー本体21)の延伸方向に移動する、いわゆる可動式のものであるが、これに限定されず、たとえば、シャワーハンガー30が浴室BRの壁面WSに固定される、いわゆる固定式のものでもよい。シャワーハンガー30が固定式のものでも、シャワーヘッド40の吐水反力Fによる脱落を抑えることができる。
【0061】
また、ここから、図7を用いて、シャワーハンガー30のクランプ部35について説明する。図7は、実施形態に係るシャワーハンガー30のクランプ部35を示す斜視図である。図7に示すように、シャワーハンガー30は、クランプ部35をさらに備える。
【0062】
クランプ部35は、シャワーヘッド40において被保持部43(図2参照)に接続されるシャワーホース50を左右方向から挟み込む。シャワーハンガー30の底面には、シャワーヘッド40を保持する場合にシャワーホース50が挿通され、保持部33の保持面331に連通する挿通孔36が形成される。クランプ部35は、このようなハンガー本体31の底面に設けられる。
【0063】
クランプ部35は、挿通孔36の前側において切り欠きを形成する一対の突片351によって形成される。一対の突片351の間隔は、シャワーホース50の径よりも小さい。このため、シャワーホース50が下方に移動する場合には、その移動が規制される。すなわち、シャワーハンガー30の底面においてシャワーホース50を一時的に保持することができる。
【0064】
このように、上記した実施形態によれば、クランプ部35によって、仮に被保持部43が保持部33から抜けても、被保持部43に接続されているシャワーホース50がクランプ部35に引っ掛かるため、シャワーヘッド40の脱落を二重に抑えることができる。これにより、シャワーヘッド40の脱落をさらに抑えることができる。
【0065】
なお、上記した実施形態では、シャワーハンガー30の底面の挿通孔36を利用してクランプ部35を形成しているが、これに限定されず、たとえば、シャワーハンガー30の底面においてシャワーホース50を挟み込む機構を別途設けてもよい。このように構成しても、シャワーヘッド40の脱落を二重に抑えることができ、シャワーヘッド40の脱落をさらに抑えることができる。
【0066】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 シャワー装置
20 スライドバー
30 シャワーハンガー
33 保持部
331 保持面
332a 一端開口
332b 他端開口
334 前方当接部
335 後方当接部
335a 突部
336 凹部
35 クランプ部
40 シャワーヘッド
43 被保持部
50 シャワーホース
AX 軸
L,L1,L2 作用点から支点までを結んだ線
水平線
P1 支点
P3 作用点
α,α1,α2 作用点から支点までを結んだ線の水平線に対する角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7