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特許7479604機械学習を用いた退院日予測方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】機械学習を用いた退院日予測方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240430BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240430BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20240430BHJP
【FI】
G16H20/00
G06Q10/04
G16H50/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019141844
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021026358
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595062034
【氏名又は名称】都築電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195970
【弁理士】
【氏名又は名称】本夛 伸介
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岩永 和久
(72)【発明者】
【氏名】小野 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 正樹
(72)【発明者】
【氏名】林 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏之
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008159(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126109(WO,A1)
【文献】熊岡 穣,DPCデータおよび重症度、医療・看護必要度を用いた在院日数の推定,商大ビジネスレビュー,第6巻, 第2号,2016年09月30日,p.95-109
【文献】菖蒲澤 幸子,病院に貢献する DWHの有用性 DWHからの「重症度、医療・看護必要度」データ分析を用いた病床管理,月刊新医療 New Medicine in Japan,第43巻,株式会社エム・イー振興協会,2016年02月01日,p.49-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析データとしてDPC情報を含む一般的共通情報、かつ重症度、医療・看護必要度評価情報を含む日々入力する情報、及び患者情報を含む個人ごとに異なる情報の三種のデータをコンピューターが利用して、前記日々入力する情報の入力を契機として退院日の予測を行う退院日予測方法であって、
前記三種のデータを用いて、機械学習を利用しMDCコード毎の予測モデルを作成して退院日の予測を行うことを特徴とした退院日予測方法。
【請求項2】
前記予測モデル作成に用いた機械学習アルゴリズムは、CHAIDアルゴリズムであり、決定木分析による予測モデルを作成して入院日数を予測する請求項1項記載の退院日予測方法。
【請求項3】
前記三種のデータは予測モデルの作成及び予測を行う際には追加で変数を作成し、一部をフラグ型の変数へと変換することを特徴とする請求項2項記載の退院日予測方法。
【請求項4】
分析データとしてDPC情報を含む一般的共通情報、かつ重症度、医療・看護必要度評価情報を含む日々入力する情報、及び患者情報を含む個人ごとに異なる情報の三種のデータをコンピューターが利用して、前記日々入力する情報の入力を契機として退院日の予測を行い、決定木分析モデルを通して出力された入院日数予測結果をサーバへ格納し、電子カルテシステムが入院日数予測結果を取得することで結果を表示する退院日予測装置であって、
入院情報、患者情報、DPC情報を記憶する患者情報記憶部、重症度、医療・看護必要度を記憶する看護必要度記憶部、上記の2つの記憶部から出力されたデータを基に機械学習を行いMDCコード毎の作成されたモデルを利用して入院日数を予測するAI退院日予測部、AI退院日予測部から出力されたデータを受け取り、予測退院日を表示させる予測退院日表示部を備えた退院日予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院において入院病棟の病床の効率を向上するために、種々のデータから機械学習によってより正確な退院日を予測する予測方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本において少子高齢化に伴い医療ニーズが増大していく中で、医療費の増大及び医療従事者の不足が深刻な社会課題となっている。この背景のもと、病院は医療リソースを維持したままで病院における看護業務や病床管理業務のオペレーション効率を向上させることが求められている。
【0003】
病院における医療費のうち、最大を占めているものは、入院医療費である。従来の入院医療費を計算する方法として、入院期間中の診療行為の費用を積算して、入院医療費を計算する出来高払い制度がある。さらに、入院期間中に医療資源を最も投入した「傷病名」と、入院期間中に提供される手術、処置、化学療法などの「診療行為」の組み合わせにより分類される患者群であるDPC(Diagnosis Procedure Combination:診断群分類)ごとに設定される1日当たりの定額医療費(包括評価部分)と出来高払い制度(出来高評価部分)の合計額を入院医療費とするDPC制度がある。
しかし、従来の出来高払い制度に比べDPC制度においては在院日数が増えるほど一日当たりの点数が逓減するため、病院は増収を目指すために在院日数の短縮によって回転率を上げつつ稼働率を保たなければいけなくなった。
【0004】
オペレーション効率を向上させ入院患者の稼働率を上げるためには、入院患者の退院日を予測し、病床管理を効率化させることが必要であり、様々な研究がされている。しかしながら、入院患者の回復状態などによりバリアンスが発生することもあり、入院患者の退院日を予測することが難しい場合がある。
【0005】
前述のとおり1日当たりの診療報酬額は入院期間によって異なり,入院期間I(各DPCの25パーセンタイル値に相当する在院日数まで),入院期間II(入院期間Iを超え平均在院日数まで),入院期間III(入院期間IIを超え平均在院日数+2×標準偏差まで)の3段階の逓減性が採用されている。そこで従来は在院日数予測の参考値として平均在院日数である入院期間IIを用いていたが、入院患者の症例や重症度、施設類ごとによって予測結果とのバリアンスが発生していた。(非特許文献1参照)
【0006】
そこで、従来の予測の問題点を解消するために特定の疾患に対して退院長期化の原因や在院日数について研究を行っていた。(非特許文献2~4参照)
【0007】
また、これまでの特定疾患の研究だけに留まらず、DPC情報及び重症度、医療・看護必要度を用いて作成された自己組織化マップによる予測についての研究も行われている。(非特許文献5参照)
【0008】
しかし、自己組織化マップによる予測は、重症度、医療・看護必要度を用いているが、モニタリング及び処置などを記録したA項目の合計点、患者の状態などを記録したB項目の合計点のみ使用しており、処置・観察項目を考慮できていない。また、入院初日のデータを用いて予測を行うため、入院中の患者の変化に対応する予測が難しいと考えられる。
【0009】
自己組織化マップによる研究の後、Webシステム化を試みているが、システムでの予測を行う際には入院情報や患者情報を使用していないため個人に適した予測結果が算出されないといった問題点が存在した。(非特許文献6参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-252092
【非特許文献】
【0011】
【文献】首相官邸 医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループ(第2回)資料3 DPCデータに基づく病院類型別の在院日数のバラツキの分析(厚生労働省提出資料)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/shakaihoshoukaikaku/wg_dai2/siryou3.pdf
【文献】人工膝関節全置換術後患者における術後入院期間予測のノモグラム,苑田会人工関節センター病院https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_1127/_pdf/-char/ja
【文献】整形外科患者の入院期間に影響を及ぼす要因,新宮市立医療センター,臨床研究支援センターhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/38/3/38_20150722346/_pdf/-char/ja
【文献】ディシジョンツリー分析を用いた人工股関節全置換術後在院日数予測モデルの構築https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0125/_pdf/-char/ja
【文献】DPC データおよび重症度、医療・看護必要度を用いた 在院日数の推定,兵庫県立大学,神戸大学医学部附属病院リハビリテーション部, 神戸大学大学院医学研究科https://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/6-2/095.pdf
【文献】データマイニングにおける二値データ解析--決定木とロジスティック回帰分析,流通経済大学, 奥 喜正,本村 猛能,前鶴 政和,内桶 誠二http://id.nii.ac.jp/1473/00003031/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、入院期間IIの平均在院日数を基にした予測や自己組織化マップを利用した予測はDPCを導入する病院において稼働率を上げるための参考値となってきた。しかし、それらは入院患者の症例や重症度、施設類ごとの変化についての考慮はできない。また、算出された予測日数から業務で多忙な看護師が退院日を判断し、日々手入力することは困難であり、退院日を判断することが難しいため、未入力が発生していた。
【0013】
また、入院中の処置・観察項目の変化なども考慮されていないため、入院中の患者の変化に対応した日々の予測は困難であった。
【0014】
さらに、入院情報や患者情報を使用していないため個人単位での予測が難しく入院患者の稼働率向上には限界があった。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、DPC情報、医療・看護必要度評価情報、個人データなどの病院総合システムのデータを基に、機械学習を用いて予測モデル化することで、入院患者個人単位の退院日を変化に応じて日々予測することができる予測方法、予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に関わる退院日予測方法及び装置は、以下のものを提供する。
(1)分析データとしてDPC情報などの一般的共通情報、かつ重症度、医療・看護必要度評価情報などの日々入力する情報、及び患者情報などの個人ごとに異なる情報の三種を利用することを特徴とした退院日予測方法。
本発明によれば、患者一人一人に対応した予測を行うことができる。
【0017】
(2)(1)に記載した三種のデータを用いて、機械学習を利用し予測モデルを作成して退院日の予測を行う(1)記載の退院日予測方法。
本発明によれば、医師や看護師が行う予測より早いタイミングで、より正確な予測ができる。
【0018】
(3)(2)における予測モデル作成に用いた機械学習アルゴリズムは、CHAIDアルゴリズムであり、決定木分析による予測モデルを作成して入院日数を予測する請求項2項記載の退院日予測方法。
本発明によれば、データセットが多い場合の計算時間の短縮と量的変数を利用した予測ができる。
【0019】
(4)(1)におけるデータは予測モデルの作成及び予測を行う際には追加で変数を作成し、一部をフラグ型の変数へと変換することを特徴とする(3)記載の退院日予測方法。
本発明によれば、分析結果の解釈が行いやすくなる。また、数値データしか取り扱えない機械学習などに対し、数値変換(ダミー変数化)してしまうと数値データとして誤って処理されてしまうことを防ぐことができる。
【0020】
(5)分析データとしてDPC情報などの一般的共通情報、重症度、医療・看護必要度評価情報などの日々入力する情報、患者情報などの個人ごとに異なる情報の三種を利用し、決定木分析モデルを通して出力された入院日数予測結果をサーバへ格納し、電子カルテシステムが入院日数予測結果を取得することで結果を表示する退院日予測装置。
本発明によれば、入院患者個人単位の入院日数を変化に応じて日々予測することができる。
【0021】
(6)退院日予測結果を自動的に入力することで、医師や看護師の退院日を予測する業務を支援するための(5)記載の退院日予測装置。
本発明によれば、医師や看護師の退院日予測業務の負荷を軽減し、退院日未入力を防ぐことができるができる。
【0022】
(7)入院情報、患者情報、DPC情報を記憶する患者情報記憶部、重症度、医療・看護必要度を記憶する看護必要度記憶部、上記の2つの記憶部から出力されたデータを基に機械学習を行い作成されたモデルを利用して入院日数を予測するAI退院日予測部、AI退院日予測部から出力されたデータを受け取り、予測退院日を表示させる予測退院日表示部を備えた請求項5項記載の退院日予測装置。
本発明によれば、従来に比べて精度が高く入院患者個人単位の退院日を変化に応じて日々予測することで病院のベットコントロールの効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、DPCコードによって行っていた入院日数の算出を、病院総合システムの持つDPC情報などの一般的共通情報、かつ重症度、医療・看護必要度評価情報などの日々入力する情報、及び患者情報などの個人ごとに異なる情報の三種のデータなどを使用して、機械学習による分析モデルを利用することで、従来に比べてより精度が高く入院患者個人単位の退院日を変化に応じて日々予測することができ、病院のベットコントロールの効率化を図ることができる退院日予測方法、退院日予測装置を提供する。
【0024】
予測モデル作成おいては急性期病棟2年分のデータを使用して作成することで病院全体を対象としたほとんどの患者を対象に予測ができる。
また、予測モデルで使用されていない変数のデータを取り除いて退院予測日を算出することにより、性能の低い学習器を1つずつ順番に構築し組み合わせて、高性能な学習器を作る勾配ブースティングやニューラルネットワークを多層にして用いることで、データに含まれる特徴を段階的により深く学習するディープラーニングなどを使用するより計算量を削減し、処理の高速化を図ることができる。
【0025】
入院患者一覧画面ではモニタリング及び処置などを記録したA項目の合計点、患者の状態などを記録したB項目の合計点、手術等の医学的状況を記録したC項目の算定可能期間を表示し、退院予定照会画面で医師が予測した退院予定日、看護師が予測した退院予定日、AI予測の退院予定日の3つを参照することにより、より精度の高い退院日を予測することができる。
【0026】
さらに、病院総合システムと連携し、退院予測患者数と入院予約患者数を対比することで効率的な病床コントロールを行うことができる。また、曜日ごとの平均入院患者数と比較を行うことで、緊急入院患者を想定した空き病床数を確保することができ、稼働率を下げることなく運用を行うことができる。
一週間の予測結果を俯瞰的に表示し、7日間の退院予測患者数と入院予約患者数を病棟の業務量の参考値として使用し、直近5日間の退院予測患者数と入院予約患者数を入退院促進の参考値として病床コントロールを行う。
このように退院予測患者数と入院予約患者数を段階的に確認することで、入院患者の稼働率を下げることなく回転率を上げることが容易になる。(図6参照)
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る手順説明のフロー図である。
図2】本発明の実施形態に係るシステム構成図である。
図3】本発明の実施形態に係るデータの説明図で、日々入力されているデータを基に、決定木分析モデル作成に利用するデータを抽出している。
図4】本発明の実施形態に係るデータの説明図で、図3のデータを加工し決定木分析モデルの作成に利用する目的変数と説明変数に分けたものである。
図5】本発明の実施形態に係る分析手法の説明図で、CHAIDにより作成された決定木の一部である。
図6】本発明の実施形態に係るシステムの画面説明図で、AI退院予測数と入院予約数の対比を行う退院予測数照会画面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0029】
図1における本発明に係る手順の実施例を示す。図1は、本実施形態の退院日予測プログラム及び退院日予測装置のフローチャート図である。
【0030】
看護師は患者入院時にはステップS1入院情報の入力を行い、患者の個人情報等を記録する。
【0031】
看護師は3営業日以内にステップS2のDPC情報を入力する。
【0032】
看護師は日々の看護業務において変化をチェックしステップS3に重症度、医療・看護必要度評価情報の入力を行う。
【0033】
ステップS4として、ステップS1、S2、S3にて入力した情報が記録された電子診療レコードから図3の予測モデル作成に必要なデータを抽出する。
【0034】
ステップS5で、AI分析用PCは抽出されたデータを受け取る。本実施例では、夜間に1日分の図3に示すデータをバッチ処理によりAI分析用PCに受け渡しを行っている。
【0035】
受け取ったデータをステップS6として加工を行い、複数の変数についての派生データを生成する。加工を行う内容は、図2における本発明に係る装置の実施例にて説明を行う。
【0036】
本実施例では、CHAIDによる決定木分析を用いる。ステップS6にて加工されたデータを利用しCHAIDを用いて決定木分析モデルの作成を行う。(ステップS7)
【0037】
ステップS7にて作成された決定木分析モデルはAI分析用PCに配置され、ステップS1、S2、S3で日々入力されたデータを決定木分析モデルへと入力することで入院日数の予測結果が出力される。(ステップS8)
【0038】
ステップS8にて出力された予測結果のデータは院内の病院総合システムへと取り込まれる。取り込まれた入院日数の予測結果は画面に表示するにあたり退院予測日へと変換が行われる。(ステップS9)
【0039】
変換された退院予測日は、患者個々の退院予測日として病院総合システムにて表示される。(ステップS10)さらに、医師及び、看護師の入力した退院予定日との比較をすることができる。
【0040】
また、図6で示す通り各日の退院予測数の集計と入院の予約患者数の対比をする画面を表示することができる。(ステップS11)
【0041】
医師及び看護師は、ステップS10、S11の画面を参考に入退院促進を行う。(ステップS12)これにより本発明は効率的な病床管理業務のサポートを行うことができる。そして、病院の入院患者稼働率の向上に寄与することができる。
【0042】
続いて、図2における本発明に係る装置の実施例を示す。
図2は、本実施形態の退院日予測プログラム及び退院日予測装置の概略構成図である。それぞれの記憶部などの装置は、特に図示しないが、CPU、RAM、ハードディスク、入出力装置、通信手段等を備えた一般的なコンピュータである。
【0043】
図2においてはそれぞれのデータが貯められたサーバ、及びデータベース5、データベース6からデータを出力しAI分析用PC3でAIデータ7の取り込みを行っている。
【0044】
患者情報記憶部9と、看護必要度記憶部10はネットワークを介して、患者の受付・照会・登録処理が行われる患者受付処理部、医師による電子カルテ作成処理などが行われる診察処理部、あるいは患者の医事会計処理を行う医事会計処理部など(いずれも図示せず) にも接続されており、全体として病院総合システム2を形成している。
【0045】
図3においては図2の患者情報記憶部9と、看護必要度記憶部10のそれぞれに保存されたデータからAI分析用PC3へと渡されるデータの内容を示している。これらのデータは日々の看護業務の際に入力され保存されている。
【0046】
これらのデータは予測モデルの作成を行う前に変数の作成を行い、MDC(Major Diagnostic Category:主要診断群)コードごとにモデルの作成を行う。
【0047】
まず変数の作成にあたり、看護支援登録日の空白を入院日で埋め、看護支援登録時間を出力する。また看護支援登録時間の空白を”00:00:00“で埋める。
【0048】
看護支援登録日が入院日より以前になっているデータを除外する。
【0049】
入院日と看護支援登録日との差を変数として作成し、2日以上乖離しているレコードを除外する。
【0050】
日勤、準夜・深夜区分が空白になっているものを準深に置き換える。
【0051】
入院日、評価日からそれぞれの曜日を算出し変数を作成する。
【0052】
包括状態にあるDPCコードの先頭2桁をMDCコードとして切り出す。
包括状態にあるDPCコードの1桁目から6桁目までを疾患コードとして切り出す。
包括状態にあるDPCコードの7桁目を病態等分類として切り出す。
包括状態にあるDPCコードの8桁目を年齢・出生時体重等として切り出す。
包括状態にあるDPCコードの9桁目から10桁目までを手術として切り出す。
包括状態にあるDPCコードの11桁目を手術・処理等1として切り出す。
包括状態にあるDPCコードの12桁目を手術・処理等2として切り出す。
包括状態にあるDPCコードの13桁目を副傷病として切り出す。
包括状態にあるDPCコードの14桁目を重症度等として切り出す。
【0053】
生年月日と入院日の差を計算し、入院時の年齢を変数として作成する。入院時の年齢を10歳区切りで世代分けし、入院時の年齢層として変数を作成する。入院日から入院月を算出して変数を作成する。
【0054】
入院日を月の上旬、中旬、下旬に分け旬_入院日として変数を作成する。
評価日を月の上旬、中旬、下旬に分け旬_評価日として変数を作成する。
【0055】
評価日と退院日の差から実際の入院期間を算出し変数を作成する。患者番号が重複しているものを削除し、入院期間IIがnullになっているものを除外する。実際の入院期間が入院期間IIIより長い長期入院患者のレコードを除外する。
【0056】
カテゴリ型変数をフラグ型の変数へ変換する。
【0057】
看護必要度のA項目、B項目、C項目のそれぞれの評価項目に対して前日との比較を行った変数を作成する。モニタリング及び処置などを記録したA項目の合計点、患者の状態などを記録したB項目の合計点、手術等の医学的状況を記録したC項目の合計点の総計が0の場合は真、それ以外は偽となるフラグ型の変数を作成する。
【0058】
加工されたデータは8割を学習用に使用し、残りの2割をテスト用のデータとして使用する。
【0059】
図4では加工が行われたデータを目的変数と説明変数に分けて示している。
目的変数は予測装置から予測が行われる部分であり、説明変数は目的変数を説明するための変数となる。
【0060】
本実施例では、CHAIDによる決定木分析を用いる。決定木は、特定の特徴がよく現れるようなデータのかたまりを見つけ、その分類ルールを生成する機械学習の手法であり、目的変数と説明変数を設定し、目的変数の特徴的な領域が固まって存在するようなデータグループを見つけていく。CHAIDでは一度に複数の分岐ができ分岐の指標にはカイ2乗統計量が使われる。
【0061】
決定木分析においてCHAIDとCARTとC5.0のアルゴリズムは一般的に利用されているが、CARTはデータセットが多いと計算時間が長くなる傾向がある。また、C5.0は扱える目的変数が質的変数のみである。そのためCHAIDを使うことにより大量のデータセットを短時間で計算し、量的変数を予測することを可能にしている。
【0062】
また、本実施例ではプロセスを段階的ではなく徹底的な全数探索を行うことで、単一のペアのみが残るまで任意の類似ペアをマージするExhaustive CHAIDを利用する。これにより任意の分岐停止基準のもとで最善の分岐が保証される。
【0063】
決定木で生成されるツリーの深さは最大20に設定し、分岐した枝葉の親枝葉が最小レコード数2、小枝葉は最小レコード数1になった時点で分岐を停止するように設定する。
【0064】
本実施例では、このような決定木に入力するデータは、患者情報記憶部9と、看護必要度記憶部10に保存された図3のデータから上述の加工を行い、説明変数と目的変数に分類した図4のデータである。CHAIDの具体的な計算方法は、非特許文献6など、公知の技法を用い、これによってモデル化を行う。ここでいうモデル化とは、変数間の定量的な関係を定式化した数理モデルを構築することを指し、そのモデルを用いることで一方の変数から他方の変数の状態を計算することができる。
【0065】
図5では、本実施例において作成されたモデルの決定木の一部である。例示されているのはMDCコード02の眼科であり、手術有無という説明変数によって最初の分岐が行われていることがわかる。
【0066】
決定木モデルはMDCコード別に作成され、本実施例においては図2のAI分析用PC3に配置される。
【0067】
本実施例では、夜間に1日分の図3に示すデータをバッチ処理によりAI分析用PC3に受け渡し、それぞれの決定木へデータを通すことで入院日数の予測結果を出力している。ここでは日々予測結果を出力することで、入院中の処置・観察項目の変化など考慮され、入院中の患者の変化に対応できる予測が可能になっている。
【0068】
出力された予測結果のデータは院内の病院総合システム2へと取り込まれる。取り込まれたデータは入院日数から退院日へと変換され患者個々の退院予測日として表示されるほか、医師及び、看護師の入力した退院予定日との比較をすることができる。
【0069】
また、図6で示す通り各日の退院予測数の集計と入院の予約患者数の対比をすることで効率的な病床管理業務のサポートを行うことができる。これにより病院の入院患者稼働率の向上に寄与することができる。
【0070】
なお、医療制度の改定により看護必要度項目が変更になった場合、使用されるデータは上述した実施形態の看護必要度項目に限らない。
【0071】
また、本発明について上述した実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、本発明は、上記の実施形態で説明したフローチャートの処理手順が開示する分析方法であるとしてもよい。また、一台の分析装置において各手段による処理を実行させたが、このような態様に限らず、複数の分析装置にて各手段を分散して実行させてもよい。
【符号の説明】
【0072】
図1において、
S1 入院情報の入力ステップ
S2 DPC情報の入力ステップ
S3 重症度、医療・看護必要度評価情報の入力ステップ
S4 予測モデル作成に必要なデータの抽出ステップ
S5 AI分析用PCが抽出されたデータを受け取るステップ
S6 複数の変数についての派生データを生成するステップ
S7 CHAIDによる決定木分析モデルを作成するステップ
S8 入院日数の予測結果の出力ステップ
S9 退院予測日へと変換するステップ
S10 退院予測日として病院総合システムにて表示するステップ
S11 退院予測数の集計と入院の予約患者数の対比をする画面を表示するステップ
S12 医師及び看護師がS10とS11の画面を参考に入退院促進するステップ、を、それぞれ表し、
図2において、
1 システム構成
2 病院総合システム
3 AI分析用PC
4 電子カルテシステム
5 電子診療レコード データベース
6 重症度、医療・看護必要度評価システム データベース
7 AIデータ
8 退院日予測モデル
9 患者情報記憶部
10 看護必要度記憶部
を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6