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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9728 20170101AFI20240430BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240430BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61Q19/00
A61Q5/02
A61Q5/12
A61P17/16
A61K36/87
A61K36/064
A61K131:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020067229
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021161094
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第9回化粧品産業技術展CITE JAPAN 2019(展示日2019年5月15日から5月17日)で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】595134504
【氏名又は名称】株式会社テクノーブル
(73)【特許権者】
【識別番号】597038378
【氏名又は名称】ミヤコ化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
(72)【発明者】
【氏名】愛水 哲史
(72)【発明者】
【氏名】音喜多 貴
(72)【発明者】
【氏名】柳田 藤寿
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246350(JP,A)
【文献】特開2009-029732(JP,A)
【文献】Swiss Ice Wine Face & Neck Cream,ID 4543637,Mintel GNPD[online],2017年1月,[検索日2023.09.13],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】柳田 藤寿,et al.,3B22a14 幻の湖-富士六湖(赤池)からの発酵性酵母の分離とワイン醸造特性,日本農芸化学会2013年度大会講演要旨集(オンライン),2013年05月05日,p.1713
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K35/00-35/768
A61K36/06
A61K36/87
C12P
Mintel GNPD
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ果実の搾汁液又は抽出物の酵母(Saccharomyces cerevisiae)発酵物を有効成分とする皮膚外用剤であって、上記酵母がSaccharomyces cerevisiae YAK-1107又はSaccharomyces cerevisiae YAK-1110であることを特徴とする皮膚外用剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚(頭皮も含む)外用剤に配合可能なブドウ果実の酵母発酵物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚外用剤に配合する有効成分として様々な天然物由来の成分が研究開発されている。しかし、それらの天然物由来の成分は、皮膚外用剤の有効成分として利用する場合に、有効性等の点で課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明者らは、ブドウ果実を酵母により発酵して得られる発酵物が、紫外線によりダメージを受けた表皮細胞の回復効果を有し、皮膚外用剤の有効成分として有用であることを新たに見出した。
【0004】
従来、ブドウ果実抽出物又はブドウ果実の乳酸菌発酵物を皮膚外用剤の有効成分として使用することは、例えば、特許文献1~3により知られていた。しかし、ブドウ果実を酵母で発酵させて得られる発酵物が紫外線によりダメージを受けた表皮細胞の回復効果を有し、皮膚外用剤の有効成分として有用であることは知られていなかった。
【文献】特開2005-29490号
【文献】特開2006-8566号
【文献】特開2016-113386号
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ブドウ果実の酵母(Saccharomyces cerevisiae)発酵物を有効成分とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ブドウ果実の酵母(Saccharomyces cerevisiae)発酵物を有効成分とする皮膚外用剤であって、本発明によれば、有効成分である酵母発酵物が奏する紫外線によりダメージを受けた表皮細胞の回復効果を有し、これにより、肌荒れ改善用、保湿用、抗老化用、又は美白用として有用な皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のブドウ発酵物は、ブドウ果実を原料とするものであり、当該果実は果肉、果皮及び種子を含むことでもよい。また、ブドウの品種は特定に限定されるものではなく、例えば、「甲州」などが挙げられる。
【0008】
本発明で用いる酵母は、皮膚外用剤としての利用を考慮して、サッカロミセス属(Saccharomyces属)が好ましく、その中でも、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が好ましい。さらに、食品用途で有用なことが知られている酵母(山梨大学のワイン科学研究センターの柳田藤寿教授により富士六湖「赤池」で分離された酵母(「公益社団法人日本農芸化学会,2013年度(平成25年度)大会[仙台],大会講演要旨集[講演番号:3B22a14]に記載された酵母(YAK-1107, YAK-1110)であって、以下「赤池酵母」という)の使用が特に好ましい。
【0009】
ブドウ果実を資化源として発酵を行う場合は、果実を搾汁することで搾汁液を調製するか、または果実を溶媒に懸濁させて、抽出物を調製し、それらを酵母により発酵させる。果実を懸濁させるための溶媒としては、水或いは水と低級アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)若しくはグリコール類(エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、グリセリン等)との混液等が用いることができる。また、それら溶媒中にはグルコース、フルクトース、シュークロース等の糖類を添加してもよい。ここで、植物体と溶媒との混合比は、植物体の乾燥重量換算で一般に1:1~1:100、好ましくは1:10~1:50の範囲である。
【0010】
上述の搾汁液又は抽出物を酵母により発酵させるときには、発酵工程前に、殺菌を行って発酵の障害となる雑菌を除去する。この雑菌の殺菌除去方法としては、発酵素材を予め殺菌用エタノール等で洗浄した後、無菌水等の無菌溶媒に懸濁する方法を用いてもよく、又発酵素材を溶媒に懸濁した後、懸濁液を加熱殺菌等により殺菌する方法を用いてもよい。加熱殺菌処理としては、懸濁液を120~130℃で10~20分間加熱するオートクレーブ殺菌法や、80~90℃に60~120分間保持することを1日1回2~3日間繰り返す間断殺菌法といった一般的な加熱殺菌法を用いることでよい。
【0011】
無菌化した懸濁液を発酵タンクに入れ、これに酵母を植菌して発酵させる。酵母の接種量は10~10個/mLが適量である。接種量が上記の範囲より多くなっても発酵の進行時間は殆ど変わらず、一方上記の範囲より少なくなると発酵完了までに長時間を要することとなって好ましくない。
【0012】
発酵温度は、酵母の生育至適温度である25℃~30℃の範囲が好ましい。また、発酵日数は、至適温度に於いて一般に1~10日、好ましくは2~5日の範囲である。発酵日数が上記の一般的範囲より短くなると発酵が十分に行われず発酵物の有効性が低下する傾向にあり、一方10日を越えて長くしても有効性のそれ以上の上昇は認められないだけでなく、着色や発酵臭の増加が生ずることとなっていずれも好ましくない。
【0013】
ブドウ果実の発酵物を調製する際に、果実の成分が酵母の資化源としてより有効に利用されるようにするため、酵母の植菌前又は同時に搾汁液又は抽出物溶液に対して加水分解処理を行ってもよい。加水分解の処理方法としては、酸、アルカリ又は酵素による処理が挙げられる。
【0014】
酵素を用いて加水分解処理を行う場合、酵素としては、蛋白分解酵素、澱粉分解酵素、ペクチン質分解酵素、繊維素分解酵素、脂質分解酵素から選ばれた少なくとも1種の酵素が用いることができる。
【0015】
蛋白分解酵素としては、例えば、アクチナーゼ等のアクチナーゼ類、ペプシン等のペプシン類、トリプシン、キモトリプシン等のトリプシン類、パパイン、キモパパイン等のパパイン類、グリシルグリシンペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ等のペプチダーゼ類、ブロメライン等を用いることができる。
【0016】
澱粉分解酵素としては、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、β-ガラクトシダーゼ等を用いることができる。
【0017】
ペクチン質分解酵素としては、例えば、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンデメトキシラーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼ、ポリガラクチュロナーゼ等を用いることができる。
【0018】
繊維素分解酵素としては、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、アガラーゼ、マンナーゼ、キチナーゼ、キトサナーゼ、カラゲナーゼ、アルギナーゼ、フコイダナーゼ、イヌラーゼ、キシラナーゼ、リグニナーゼ等を用いることができる。
【0019】
脂質分解酵素としては、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ等を用いることができる。
【0020】
酵素の使用量は、懸濁液中のブドウ果実の固形分に対して、合計で0.01~10重量%が好ましく、0.1~1.0重量%がより好ましい。或いはブドウ果実の搾汁液又は抽出物の固形分に対して、合計で0.001~5重量%が好ましく、0.01~0.5重量%がより好ましい。温度、時間等の処理条件としては、酵素処理を発酵前に行うのであれば、各酵素の至適温度付近で1~24時間の処理を行うのがよく、一方、発酵と同時に行うのであれば、前記の発酵と同条件が適用される。
【0021】
以上の発酵終了後、微生物殺菌のため、又酵素処理を併用した場合であれば微生物の殺菌と酵素の失活を兼ねて、発酵液に70~100℃で10~120分程度の加熱殺菌処理を施した後、これをそのまま、或いは一般且つ好適にはろ過或いは遠心分離等の固液分離手段によって液相を分取し、必要ならばpHを通常の化粧料のpH領域であるpH6~8に調整し、さらに必要ならば希釈若しくは濃縮によって適宜の濃度とした上、化粧料の配合原料として供する。又、場合によっては、固液分離後の液相をスプレードライ法、凍結乾燥法等常法に従って粉末化した上で、皮膚外用剤に配合してもよい。
【0022】
本発明に係るブドウ果実の発酵物は、皮膚外用剤(化粧料、医薬部外品、外用医薬品)に配合することができる。皮膚外用剤としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉、洗顔料、ボディシャンプー、頭皮,頭髪用シャンプー、頭髪用コンディショナー、育毛,養毛用のシャンプー又はトニック、石けん等の清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明に係るブドウ果実の発酵物の配合量は、組成物の固形分として、例えば、基礎化粧料の場合は、0.002~1.0重量%(固形分重量%、以下同じ)の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、0.002~1.0重量%の範囲、又清浄用化粧料の場合は、0.002~10.0重量%の範囲である。また、毛髪用化粧料の場合は、組成物の固形分として、0.0001~5.0重量%の範囲である。
【0024】
本発明に係るブドウ果実の発酵物を配合した皮膚外用剤には、必須成分の発酵物のほかに、通常。皮膚外用剤に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、消炎剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、抗アクネ剤、細胞賦活剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、美白剤、抗シワ剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0025】
ここで、油性成分としては、例えば、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、ベルガモット油、ラベンダー油、バラ油、ベルガモット油、カミツレ油等の植物由来スクワラン等の植物由来の油脂類;ビタミンA油;ミンク油、タートル油等の動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン等の炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis-11-エイコセン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、パントテニルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2-エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)等の合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N、N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等のカチオン界面活性剤;N、N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N、N、N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′、N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等の両性界面活性剤等を使用することができる。
【0027】
乳化剤及び/又は乳化助剤としては、酵素処理ステビア等のステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素処理物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン等)、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀等)等を配合することもできる。
【0028】
保湿剤としては、保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース、ラフィノース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、ヒアルロン酸発酵液、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体等)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、コラーゲンペプチド、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、エストラジオール、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0029】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;ペクチン、アロエ多糖体等の多糖類;トラガントガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;カルボシキビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0030】
消炎剤としては、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ε-アミノカプロン酸、d-カンフル、dl-カンフル、酸化亜鉛、パンテノール、ピリドキシン塩酸塩、及びリボフラビン又はその誘導体等がある。
【0031】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ピリチオン亜鉛、塩化ベンザルコニウム、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、臭化アルキルイソキノリニウム、レゾルシン、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、トリクロロカルバニド、トリクロロヒドロキシジフェノールエーテル、ヒノキチオール、1、2-ペンタンジオール、プロパンジオール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、ハッカ油、ユーカリ油等の精油類、樹皮乾留物、大根発酵液、サトウキビ、トウモロコシ等の植物由来のエタノール又は1、3-ブチレングリコール等がある。
【0032】
細胞賦活剤としては、パントテニルアルコール、メントール、dl-メントール、及びγ-オリザノール等がある。
【0033】
抗アクネ剤としては、イオウ、サリチル酸又はその塩、感光素201号、ジカプリル酸ピリドキシン等がある。
【0034】
粉体成分しては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビ等)のパウダー、豆類(大豆、アズキ等)のパウダー等がある。
【0035】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0036】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスタキサンチン等のカロテノイド、ビタミンE及びその誘導体(例えば、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル)、ビタミンA又はその誘導体(パルミチン酸レチノール等)等がある。
【0037】
また、美白剤として、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5、5'-ジプロピル-ビフェニル-2、2’-ジオール)、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)から選択される1以上のものが挙げられる。
【0038】
レゾルシノール誘導体としては、例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、4-イソアミルレゾルシノール等が、2、5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2、5-ジアセトキシ安息香酸、2-アセトキシ-5-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-プロピオニルオキシ安息香酸等が、α-ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α-ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0039】
次に、製造例、試験例及び実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また、%はすべて重量%を意味する。
【0040】
製造例1.ブドウ果実酵母発酵物
ブドウ果実を圧搾して得られるブドウ果汁を精製水で希釈しBrixを10以下に調整した。その後4N NaOHで中和し、この液を調整済みブドウ果汁液とした。この調整済みブドウ果汁2.7kgを加熱滅菌し、予め準備しておいた赤池酵母(YAK-1110)の前培養液300mLを接種し、窒素気流下にて30℃で24時間攪拌培養した。培養終了後加熱殺菌し、培養液をろ過して、ブドウ果汁発酵物溶液4kg(固形分濃度1.26%)を得た。
【0041】
比較製造例1.ブドウ果汁液の調製
ブドウ果実を圧搾して得られるブドウ果汁を精製水で希釈しBrixを10以下に調整した。その後4N NaOHで中和し、この液を調整済みブドウ果汁液とした。調整済みブドウ果汁液100gを加熱滅菌し、30℃で24時間攪拌した。終了後加熱殺菌し、比較用ブドウ果汁液95g(固形分濃度4.53%)を得た。
【0042】
比較製造例2.乳酸菌発酵物の調製
製造例1の赤池酵母に変えて、乳酸菌(L. plantarum)を使用する他は、製造例1と同様の工程により、乳酸菌発酵物溶液200g(固形分濃度2.60%)を得た。
【0043】
比較製造例3.酵母発酵物(3)の調製
製造例1の赤池酵母に変えて、ワイン酵母(NBRC 104019T)を使用する他は、製造例1と同様の工程により、ワイン酵母発酵物溶液800g(固形分濃度1.50%)を得た。
【0044】
比較製造例4.酵母発酵物(4)の調製
製造例1の赤池酵母に変えて、パン酵母(NBRC 0555)を使用する他は、製造例1と同様の工程により、パン酵母発酵物溶液700g(固形分濃度1.50%)を得た。
【0045】
比較製造例5.酵母発酵物(5)の調製
製造例1の赤池酵母に変えて、清酒酵母(NBRC 2347)を使用する他は、製造例1と同様の工程により、清酒酵母発酵物溶液700g(固形分濃度1.50%)を得た。
【0046】
試験例1.保湿評価試験
正常ヒト表皮細胞を増殖添加剤含有HuMediaKG2[クラボウ社製]にて6×105個/mLに調製し、φ6cmシャーレに1mLを播種して、5.0%CO2、飽和水蒸気下、37℃で培養した。24時間培養後、紫外線照射を行った。その後、製造例1、比較製造例1及び比較製造例2を試料溶液として含む培養液(培養液全量に対して溶液として終濃度が2.0%となるように試料を添加したもの)を添加して培養した。また、比較対照として、試料に代えて、PBS(-)溶液のみを含んだ培養液[培養液全量に対するPBS(-)の終濃度を2%に調整したもの]を添加した試験区(コントロール区)を設定した。24時間培養後、それぞれの試験区の細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)1mLで回収した。回収した細胞に対してクロロホルム(和光純薬工業社製)200μL添加して撹拌混合し遠心分離機(TOMY社製/MX-160)で15,000rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離した後、水層のみを400μL分取した。回収した水層にイソプロパノール(和光純薬工業社製)500μLを添加して撹拌混合し、15,000rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離してtotalRNAの沈殿物を得た。totalRNAに75%エタノールを1mL添加して撹拌して洗浄し、15,000rpm、4℃条件下で15分間遠心分離して沈殿を回収した。回収したtotal RNAを所定のキット(PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製))を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。合成したcDNAをサンプルとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System Single(タカラバイオ社製)、及びSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(Perfect Real Time)[タカラバイオ社製]を用いて、IL-8またはClaudin遺伝子の発現と、内部標準物質βアクチン遺伝子の発現の検出を行った。ここで、βアクチンは、ハウスキーピング遺伝子(多くの組織や細胞中に共通して一定量発現する遺伝子であって、常に発現され,細胞の維持,増殖に不可欠な遺伝子である)の一つであり、発現量が常に一定とされていることから、PCRの実験では内部標準として用いられるものである。試験結果は、βアクチン遺伝子の発現量を一定とした場合の、それぞれの試験区でのIL-8(紫外線等により発現が亢進される炎症性因子)遺伝子及びClaudin(紫外線等により発現が低下するタイトジャンクションタンパク質)遺伝子の発現量を比較した。本試験系においては、コントロール区のそれぞれの遺伝子の発現量を100としたときの他の試験区でのその遺伝子の発現量の相対値を求めた。
【0047】
試験例1の結果を表1に示す。
[表1]
【0048】
表1に示すように、本発明に係る発酵物(製造例1)は、比較製造例1の抽出物及び比較製造例2の発酵物と比較して、格段にすぐれたIL-8の遺伝子発現抑制効果及びClaudin遺伝子発現亢進効果を奏することが確認された。IL-8は、炎症性因子であることから、この発現を抑えることで、お肌の炎症を抑制し、さらには炎症による色素沈着も抑制する効果が示唆される。また、Claudinは、細胞間結合の様式の1種であるタイトジャンクション(密着結合)の形成に関わる主要なタンパク質であることから、このタンパク質の合成を促進することで、皮膚バリア機能を健全化し、乾燥、肌あれ、炎症の予防、改善効果に寄与することが示唆される。
【0049】
試験例2.表皮細胞紫外線ダメージ抑制効果
ヒト表皮細胞NHEKを、HuMedia KG2培地(クラボウ社製)を入れた96穴マイクロプレートに5×103個/穴播種し、37℃,5.0%CO2の条件下に1日間プレ培養した。培地を除去し、PBS(-)で1回洗浄した後、PBS(-)を添加し、培養器底面からUV-Bランプ(Philips社製TL20W/12RS)を用いて約50mJ/cm2の紫外線照射を行った。その後、試料溶液として製造例1、比較製造例3~5のいずれかを含むHuMedia KG2培地を添加し、同条件でさらに2日間培養した。ここで、試料溶液の濃度は培地全量に対する溶液としての終濃度が1.0%,2.0%となるように調整した。その後培地を除去し、PBS(-)で1回洗浄後、PBS(-)で100倍希釈したhoechst33342試薬を100μL/穴添加し、37℃で1時間インキュベートし、DNAを蛍光染色した。その後、蛍光強度(励起:355nm、放射:460nm:蛍光マイクロプレートリーダー(フルオロスキャンアセント、Thermo Fisher Scientific社製))を測定し、DNA量を求めた。さらにその後、0.03%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンをイソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社製)を用いて波長570-630nmでMTT値を測定した。ここでMTT値をDNA量で割ることで、DNAあたりの呼吸活性とした。試料溶液に代えてPBS(-)を添加して紫外線を照射した試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたDNAあたりのMTT値に対する各試料添加時のDNAあたりのMTT値の相対値を求め、表皮細胞UVダメージ回復率(%)とした。
【0050】
試験例2の結果を表2に示す。
[表2]
【0051】
表2に示すように、本発明の製造例1に係る酵母発酵物は、比較製造例3~5の発酵物よりすぐれた表皮細胞UVダメージ回復効果を有することが確認された。
【0052】
処方例1.化粧水
[成分] 部
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
メチルパラベン 0.1
製造例1の発酵物 2.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸ナトリウム 0.2
精製水 全量が100部となる量
【0053】
処方例2.乳液
[成分] 部
スクワラン 5.0
ヘキサラン 3.0
ホホバ油 1.0
ツバキ油 1.5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.0
親油型ステアリン酸グリセリル 1.0
水添大豆レシチン 1.5
製造例1の酵母抽出物 3.0
L-アスコルビン酸-2-グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
キサンタンガム 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
【0054】
処方例3.乳液
処方例2の成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてニコチン酸アミド5.0部を用いるほかは処方例2と同様にして乳液を得た。
【0055】
処方例4.クリーム
[成分] 部
オリーブ油 5.0
ホホバ油 5.0
スクワラン 5.0
ベヘニルアルコール 2.0
パルミチン酸 2.5
製造例2の酵母抽出物粉末 2.0
乳酸菌発酵米 2.0
水素添加レシチン 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.3
アルギン酸ナトリウム 0.2
海藻抽出物 2.0
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
精製水 全量が100部となる量
【0056】
処方例5.クリーム
[成分] 部
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.5
セチルアルコール 3.0
モノステアリン酸グリセリル 1.0
スクワラン 5.0
オリーブ油 5.0
ジプロピレングリコール 3.0
製造例1の発酵物 2.0
甘草抽出物 2.0
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.2
精製水 全量が100部となる量
【0057】
処方例6.ヘアシャンプー
[成分] 部
N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0
ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
メチルパラベン 0.1
クエン酸 0.1
製造例1の発酵物 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
【0058】
実施例7.ヘアコンディショナー
[成分] 部
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油 1.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 1.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
セタノール 3.0
ステアリルアルコール 1.0
メチルパラベン 0.1
製造例1の発酵物 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
精製水 全量が100部となる量