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特許7479608複合酸化物セラミックスを含む抗菌・抗ウイルス性材料及び前記複合酸化物セラミックスの製造方法、並びに物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】複合酸化物セラミックスを含む抗菌・抗ウイルス性材料及び前記複合酸化物セラミックスの製造方法、並びに物品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/50 20060101AFI20240430BHJP
   C04B 35/495 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C04B35/50
C04B35/495
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020531310
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027882
(87)【国際公開番号】W WO2020017493
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018134810
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 章
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】松下 祥子
(72)【発明者】
【氏名】磯部 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】砂田 香矢乃
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1962460(CN,A)
【文献】GOUTENOIRE F. et al.,"Crystal Structure of La2Mo2O9, a New Fast Oxide-Ion Conductor",Chemistry of Materials,2000年,vol.12,pp.2575-2580
【文献】SHI Xiaofei et al.,"Selective Crystallization of Four Tungstates (La2W3O12, La2W2O9, La14W8O45, and La6W2O15) via Hydro,Inorganic Chemistry,2018年05月18日,vol.57,pp.6632-6640
【文献】垣花眞人,「錯体重合法による酸化物粉体の精密化学合成と高機能化」,粉体および粉末冶金,2007年,第54巻第1号,第32-38ページ
【文献】TANIMOTO Remi et al.,"Effects of storage atmosphere and surface roughness on the hydrophobicity of Gd2O3 thin film and sintered body",Journal of the Ceramic Society of Japan,日本,公益社団法人日本セラミックス協会,2017年,Vol.125, No.8,pp.638-642
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素と、
モリブデン
タングステンと、を含み、
表面における水の接触角が、88度~119度であり、
表面における、前記希土類元素と前記モリブデンと前記タングステンとの合計に対する炭素の割合が1.7atm%~2.1atm%である複合酸化物セラミックスを含み、
前記複合酸化物セラミックスが、La (Mo 2-y )O で表される(ただし、0.5≦y≦1.5である)、抗菌・抗ウイルス性材料。
【請求項2】
フィルム密着法による6時間経過後の細菌又はウイルスの減少率が99%以上である、請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性材料。
【請求項3】
表面の少なくとも一部に、請求項1又は2に記載の抗菌・抗ウイルス性材料を有する、物品。
【請求項4】
希土類含有化合物と、モリブデンと、タングステンと、を含む水溶液に、オキシカルボン酸及びグリコールを添加した後、加熱して前記オキシカルボン酸と前記グリコールとをエステル反応させてゲル化するゲル化工程と、
前記ゲル化工程で得られたゲルを乾燥させる乾燥工程と、
前記ゲルを乾燥することで得られた粉末を仮焼する仮焼工程と、
前記仮焼した後の粉末を成形する成形工程と、
前記成形した後の成形体を焼成する焼成工程と、を備え、
前記焼成工程において、水分及び有機物の濃度が1000ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で前記成形体を焼成する、
La (Mo 2-y )O で表される(ただし、0.5≦y≦1.5である)複合酸化物セラミックスの製造方法。
【請求項5】
前記希土類含有化合物として希土類硝酸塩を用い、
モリブデンを含有する化合物としてモリブデン酸アンモニウムを用いる、
請求項4に記載の複合酸化物セラミックスの製造方法。
【請求項6】
前記希土類含有化合物として硝酸ランタン六水和物を用い、
モリブデンを含有する化合物としてモリブデン酸アンモニウム四水和物を用いる、
請求項4又は請求項5に記載の複合酸化物セラミックスの製造方法。
【請求項7】
前記オキシカルボン酸がクエン酸であり、
前記グリコールがエチレングリコールである、
請求項4~6のいずれか一項に記載の複合酸化物セラミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合酸化物セラミックスを含む抗菌・抗ウイルス性材料及び前記複合酸化物セラミックスの製造方法、並びに当該抗菌・抗ウイルス性材料を備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌・抗ウイルス性の材料として、Ag(銀)やCu(銅)などの金属や、酸化チタン、チタンアパタイトなどの光触媒などが知られており、多くが実用化されている。しかし光触媒は光が照射しない環境では抗菌・抗ウイルス活性が発現しないという問題があった。一方、AgやCuは暗所でも活性を示すが、寿命が短く、また高コストになるという問題があった。
【0003】
近年、酸化モリブデンが、暗所で抗菌・抗ウイルス活性を発現することが報告されている(例えば、非特許文献1)。またランタンの酸化物についても抗菌活性が報告されている(例えば非特許文献2)。しかしながら、複合酸化物に関しては詳細な報告が行われていない。抗菌とともに抗ウイルス材料は、近未来のウイルスパンデミック対策として欠くことのできない開発課題であるが、未だ十分な検討は行われていないのが実情である。
【0004】
これとは別に、固体表面の撥水性は、水の付着が抑制されることにより、固体表面での抗菌性能を高めることが報告されている(例えば、非特許文献3)。
酸化チタン等の金属酸化物の多くは、イオン結合性の割合が大きく、その表面は通常、陽イオンより大きい酸素原子で覆われている。大気中ではその表面で解離した水分子のHが表面酸素と結合して水酸基を形成するとともに、解離したOHは金属に配位して水酸基に覆われており、その上に数分子程度以上の物理吸着水が存在することで一般に親水性を示す。
金属酸化物に撥水性を持たせるために、一般にワックスや撥水性シランなどの有機物を使用した表面処理が用いられている(例えば、非特許文献4)。しかしながら、有機物で表面処理された金属酸化物は、撥水性の持続性(耐久性)が低いという問題があり、耐久性に優れた撥水性を有する材料が求められている。
【0005】
本発明者らは、特許文献1において、有機物を用いることなく酸化物セラミックスの表面に撥水性を付与する手法を開示している。当該特許文献1によれば撥水耐久性に優れた酸化物セラミックスを得ることができる。
【0006】
しかしながら、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を併せ持つ酸化物セラミックス材料は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-140277号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】K Krishnamoorthy, M. Premanathan, M. Veerapandian, S. J. Kim, Nanostructured molybdenum oxide-based antibacterial paint: effective growth inhibition of various pathogenic bacteria, Nanotechnology 25, 315101(10pp) (2014)
【文献】J. Liu, G. Wang, L. Lu, Y. Guo, L. Yang, Facile shape-controlled synthesis of lanthanum oxide with different hierarchical micro/ nanostructures for antibacterial activity based on phosphate removal, RSC Adv., 7, 40965-40972 (2017).
【文献】X Zhang, L. Wang, E. Levanen, Superhydrophobic surfaces for the reduction of bacterial adhesion, RSC Adv., 3, 12003-12020 (2013)
【文献】A. Nakajima, K. Hashimoto, T. Watanabe, Recent studies on super-hydrophobic films. Monatsh. Chem., 132, 31-41 (2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を併せ持つ複合酸化物セラミックス及びその製造方法、並びに当該複合酸化物セラミックスを備え、撥水性と抗菌・抗ウイルス性能とを併せ持つ物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、希土類と、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素と、を含む複合酸化物を焼成することにより、有機物で表面処理することなく、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を併せ持つ新たな材料が得られるとの知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明に係る複合酸化物セラミックスの一実施形態は、希土類元素と、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素と、を含む、複合酸化物セラミックスである。
【0012】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、前記希土類元素が、La、Ce、及びGdから選択される少なくとも1種である。
【0013】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、(La2-xCe)(Mo2-y)Oで表される(ただし、x=0~2、y=0~2である)。
【0014】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、La(Mo2-y)Oで表される(ただし、y=0~2である)。
【0015】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、LaMoで表される。
【0016】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、Laで表される。
【0017】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、表面における水の接触角が、88度~119度である。
【0018】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、当該複合酸化物セラミックスの表面において、前記希土類元素と前記モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素との合計に対する炭素の割合が1.7atm%~2.1atm%である。
【0019】
上記複合酸化物セラミックスの一実施形態は、フィルム密着法による6時間後の菌又はウイルスの減少率が99%以上である。
【0020】
本発明に係る物品の一実施形態は、表面の少なくとも一部に、上記複合酸化物セラミックスを有する、物品である。
【0021】
本発明に係る複合酸化物セラミックスの製造方法の一実施形態は、
希土類含有化合物と、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素と、を含む水溶液にオキシカルボン酸及びグリコールを添加した後、加熱してオキシカルボン酸とグリコールとをエステル反応させてゲル化するゲル化工程と、
前記ゲル化工程で得られたゲルを乾燥させる乾燥工程と、
前記ゲルを乾燥することで得られた粉末を仮焼する仮焼工程と、
前記仮焼した後の粉末を成形する成形工程と、
前記成形した後の成形体を焼成する焼成工程と、を備える。
【0022】
上記製造方法の一実施形態は、前記焼成工程において、水分及び有機物の濃度が1000ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で前記成形体を焼成する。
【0023】
上記製造方法の一実施形態は、前記希土類含有化合物として希土類硝酸塩を用い、
モリブデンを含有する化合物としてモリブデン酸アンモニウムを用いる。
【0024】
上記製造方法の一実施形態は、前記希土類含有化合物として硝酸ランタン六水和物を用い、
モリブデンを含有する化合物としてモリブデン酸アンモニウム四水和物を用いる。
【0025】
上記製造方法の一実施形態は、前記オキシカルボン酸がクエン酸であり、
前記グリコールがエチレングリコールである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を併せ持つ複合酸化物セラミックス及びその製造方法、並びに当該複合酸化物セラミックスを備え、撥水性と抗菌・抗ウイルス性能とを併せ持つ物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】錯体重合法の一例を示すフローチャートである。
図2】沈殿法の一例を示すフローチャートである。
図3参考例1(LMO:錯体重合法)及び比較例1、2の接触角の変化を示すグラフである。
図4参考例1(LMO:錯体重合法)及び比較例1、2の表面炭素量の変化を示すグラフである。
図5参考例1(LMO:錯体重合法)の複合酸化物セラミックスのオゾン処理前後の接触角を示すグラフである。
図6】抗菌・抗ウイルス性評価の手順を示すフローチャートである。
図7】抗菌・抗ウイルス性評価の方法を示す模式図である。
図8参考例1(LMO:錯体重合法)及び比較例3、4の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
図9参考例2(LMO:沈殿法)の接触角の変化を示すグラフである。
図10参考例2(LMO:沈殿法)のオゾン処理前後の接触角を示すグラフである。
図11参考例2(LMO:沈殿法)の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
図12参考例3(LWO:沈殿法)の接触角の変化を示すグラフである。
図13参考例3(LWO:沈殿法)のオゾン処理前後の接触角を示すグラフである。
図14参考例3(LWO:沈殿法)の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
図15】実施例4(LMWO(Mo:W=1:1))の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
図16】実施例5(LMWO(Mo:W=0.5:1.5))の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
図17】実施例6(LMWO(Mo:W=1.5:0.5))の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
図18参考例7(LCMO:沈殿法)の接触角の変化を示すグラフである。
図19参考例7(LCMO:沈殿法)のオゾン処理前後の接触角を示すグラフである。
図20参考例7(LCMO:沈殿法)の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、希土類元素と、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素と、を含む複合酸化物セラミックスである。本実施形態の複合酸化物セラミックスは、希土類元素酸化物と、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、及びバナジウム酸化物から選択される少なくとも1種と、を有する複合酸化物を焼成して得られたセラミックスであり、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性とを有するものである。
【0029】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素を含むことにより、抗菌・抗ウイルス性を有するものと推測される。本実施形態の複合酸化物セラミックスが撥水性を発現する作用については未解明な部分もあるが、酸化チタンなどの金属酸化物と比較して、本実施形態の複合酸化物セラミックス表面には、大気中の水分よりも、有機物が優位に吸着することにより、撥水性が得られるものと推測される。
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、後述する実施例に示されるとおり、オゾンにより親水処理した場合であっても、経時的に撥水性が回復するものであり、撥水性の耐久性に優れている。また本実施形態の複合酸化物セラミックスは、イオンの漏出量が低く、抗菌・抗ウイルス性能の持続性にも優れている。このように、本実施形態の複合酸化物セラミックスは、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を併せ持ち、いずれも高い耐久性を備えている。
【0030】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、希土類元素と、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素と、を少なくとも含み、通常、更に酸素原子を含むものであり、効果を損なわない範囲で、更に他の元素を含んでいてもよいものである。以下、このような複合酸化物セラミックスの各構成について説明する。
【0031】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、希土類元素を含む。当該希土類元素は、通常、酸化物として含まれる。本実施形態において希土類元素は、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、及びランタノイド(原子番号57~71の元素)の総称であり、これらの中から1種単独で、又は2種以上の元素を組み合わせて用いることができる。本実施形態においては、撥水性の点から、希土類元素として、中でも、ランタノイドを含むことが好ましく、中でも、La(ランタン)、Ce(セリウム)、及びGd(ガドリニウム)から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、抗菌・抗ウイルス性の点から、希土類元素として、中でも、La、Ceを含むことが好ましく、特にLaを含むことが好ましい。LaとMoとの組合せにより、優れた抗菌・抗ウイルス性能が得られる。
【0032】
本実施形態の複合酸化物セラミックスはまた、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、及びV(バナジウム)から選択される少なくとも1種の元素を含む。Mo、W、Vは通常酸化物として含まれている。本実施形態の複合酸化物セラミックスは、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、及びバナジン酸塩から選択される少なくとも1種を含むことにより抗菌・抗ウイルス性能を有する。
【0033】
本実施形態において、希土類元素(元素A)と、Mo、W、及びVから選択される少なくとも1種の元素(元素B)との含有比率は特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。撥水性と抗菌・抗ウイルス性とを両立する点から、元素Aと元素Bがモル比で1:9~9:1の範囲であることが好ましく、3:7~7:3であることがより好ましく、1:1であることが特に好ましい。
【0034】
複合酸化物セラミックスの好ましい一実施形態は、(La2-xCe)(Mo2-y)Oで表される化学組成を有する。ただし、x=0~2、y=0~2である。
複合酸化物セラミックスの更に好ましい一実施形態は、La(Mo2-y)Oで表される化学組成を有する。ただし、y=0~2である。
一例を挙げると、本実施形態の複合酸化物セラミックスは、LaMo、La、La(Mo0.51.5)O、LaMoWO、La(Mo1.50.5)O、La1.8Ce0.2Moなどの化学組成を有する。
【0035】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、効果を損なわない範囲で更に他の元素を含有してもよい。他の元素としては、例えば、遷移金属元素などが挙げられる。遷移金属元素は、酸化物として含まれていてもよく、酸化物を構成せず、他の形態で含まれていてもよい。
本実施形態において、他の元素の含有割合は、他の元素を含む複合酸化物セラミックス全量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
【0036】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、単結晶体または多結晶体の結晶質であってもよく、ガラス状などの非晶質(アモルファス)であってもよく、結晶質部と非晶質部の組合せであってもよい。結晶の晶相は単相であってもよく、2以上の異なる相の組合せであってもよい。
【0037】
本実施形態の複合酸化物セラミックスの形状は、特に限定されず、用途に応じて所望の形状とすることができる。例えば、後述の方法により所望の形状に焼結した焼結体としてもよく、また、焼結体を粉砕して粉末状にしてもよい。また、後述の製造方法における焼結前の仮焼粉末も、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を奏する本実施の複合酸化物セラミックスの一実施形態である。本実施形態の複合酸化物セラミックスを粉末として用いることにより質量当たりの表面積が大きく、効率よく抗菌・抗ウイルス性を発現させることができる。
【0038】
本実施形態は、表面の少なくとも一部に前記複合酸化物セラミックスを有する物品を提供することができる。当該物品は、前記複合酸化物セラミックスを有する表面が、撥水性と抗菌・抗ウイルス性とを有する。本実施形態の物品は、撥水性と抗菌・抗ウイルス性とが求められる任意の物品に適用することができる。このような物品としては、例えば、パソコンやスマートフォンなどの電子機器の筐体;浴室、洗面所、キッチン等の水周り設備;マスクや白衣等の医療用品などに用いられる物品が挙げられる。本実施形態においては、当該物品の表面の一部が、前記複合酸化物セラミックスの焼結体であってもよく、物品の表面に前記複合酸化物セラミックスの粉末が担持されてなるものであってもよい。
【0039】
複合酸化物セラミックスの粉末を物品の表面に担持する方法は、当該物品に応じて適宜選択される。例えば、複合酸化物セラミックスの粉末をエアロゾルデポジション法などにより物品表面に噴射することにより、複合酸化物セラミックスの膜を形成してもよい。また、例えば、複合酸化物セラミックスの粉末と、公知のバインダー樹脂と、溶媒等とを組み合わせて、インク乃至ペーストとして、所望の物品の表面に塗布することにより、複合酸化物セラミックスを含む膜を形成することができる。塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法などの塗布方法や、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷方法を用いることができる。また、本実施形態の複合酸化物セラミックスの粉末を樹脂に混合し、この樹脂を成形することで所望の物品を形成してもよい。
【0040】
また、樹脂フィルム、紙、ガラス、金属等の基材を準備し、当該基材上に前述の方法により、一実施形態である複合酸化物セラミックスを含む膜を備えた積層体を形成してもよい。当該積層体は更に任意の物品に張り合わせて用いてもよい。
【0041】
例えば、前述の方法を用いて、布や不織布に複合酸化物セラミックスの粉末を塗布することで、撥水性と抗菌・抗ウイルス性に優れたマスクや白衣等を作製することができる。また、本実施形態の複合酸化物セラミックスは、光触媒(酸化チタンなど)と混合して用いてもよい。
【0042】
本実施形態の複合酸化物セラミックスは、後述する実施例に示されるように、公知の金属酸化物と比較して有機物が優位に吸着する傾向にある。一例として、本実施形態の複合酸化物セラミックスは、前記希土類元素(元素A)と、前記Mo、W、及びVから選択される少なくとも1種の元素(元素B)との合計に対する炭素の割合が1.7atm%~2.1atm%となる。また、このことが撥水性に寄与するものと推定される。本実施形態の複合酸化物セラミックスは、例えば、表面における水の接触角が88度~119度に達する。また、本実施形態の複合酸化物セラミックスは上記撥水性と、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、及びバナジン酸塩から選択される少なくとも1種に起因する抗菌・抗ウイルス活性との組合せにより、優れた抗菌・抗ウイルス性能を有する。一例として、本実施形態の複合酸化物セラミックスは、フィルム密着法による6時間経過後の細菌又はウイルスの減少率が99%以上である。
【0043】
本実施形態の複合酸化物セラミックスの製造方法は、特に限定されず、希土類元素と、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素と、を含む複合酸化物を形成し、焼成することにより得ることができる。好適な製造方法としては、特に後述する錯体重合法や沈殿法が挙げられるが、例えば後述する固相反応法やその他の製造方法により製造してもよい。以下、錯体重合法、沈殿法、及び固相反応法について説明する。
【0044】
<錯体重合法>
錯体重合法について図1を参照して説明する。図1は、錯体重合法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、一例として、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素として、モリブデンを用いた場合について説明する。
【0045】
本実施形態における錯体重合法は、希土類含有化合物とモリブデン含有化合物とを含む水溶液に、オキシカルボン酸及びグリコールを添加した後、加熱して前記オキシカルボン酸と前記グリコールとをエステル反応させてゲル化するゲル化工程(S1)と、
前記ゲル化工程で得られたゲルを乾燥させる乾燥工程(S2)と、
前記ゲルを乾燥することで得られた粉末を仮焼する仮焼工程(S3)と、
前記仮焼した後の粉末を成形する成形工程(S4)と、
前記成形した後の成形体を焼成する焼成工程(S5)と、を備える。
上記錯体重合法によれば、均一性に優れ、密度の高い複合酸化物セラミックスが比較的低温で得られるなどの利点がある。
【0046】
上記ゲル化工程(S1)では、まず、水への溶解性を有する希土類含有化合物とモリブデン含有化合物に水を加えて混合し、水溶液とする(S11)。次いで、当該水溶液にオキシカルボン酸を添加して金属オキシカルボン酸錯体を形成する(S12)。次いで、グリコールを添加して(S13)、オキシカルボン酸とグリコールとをエステル反応させることによりゲル化する(S14)。
【0047】
水への溶解性を有する希土類含有化合物としては、例えば、希土類硝酸塩などが挙げられる。また、水への溶解性を有するモリブデン含有化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモニウムなどが挙げられる。一例を挙げると、例えば、希土類含有化合物として硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)を、前記モリブデン含有化合物としてモリブデン酸アンモニウム四水和物((NHMo24・4HO)をそれぞれ用いることができる。
【0048】
オキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸などが挙げられる。また、グリコールとしては、エチレングリコールやプロピレングリコール等が挙げられる。
【0049】
得られたゲルは、乾燥工程(S2)において十分に乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、加熱乾燥が好ましい。次いで、ゲルを乾燥することで得られた粉末を仮焼する(仮焼工程:S3)。特に限定されないが、仮焼は500℃以上で行うことが好ましい。仮焼における雰囲気は特に限定されず、例えば大気中で行うことができる。仮焼後の粉末自体を本実施形態の複合酸化物セラミックスとして用いる場合には、撥水性能を向上する点から、水分及び有機物濃度が1000ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で仮焼することが好ましい。得られた粉末は一部が焼結している場合があるため、必要に応じて粉砕し微細な粉末としてもよい。粉砕方法は特に限定されないが、乾式粉砕が好ましい。粉砕機の方式等は特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0050】
次いで、得られた仮焼後の粉末(仮焼粉末)を所望の形状に成形する(成形工程:S4)。成形方法は特に限定されず、例えば、一軸加圧成形法など公知の成形法の中から適宜選択することができる。
次いで、得られた成形体を焼成することにより、複合酸化物セラミックスの焼結体を得ることができる(焼成工程:S5)。焼成方法は、特に限定されないが、撥水性能に優れた焼結体が得られる点から、例えば、水分及び有機物濃度が1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で、900℃程度で加熱する方法などが好適に挙げられる。
【0051】
<沈殿法>
次に、複合酸化物セラミックスの別の製造方法として沈殿法を説明する。図2は、沈殿法の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、一例として、モリブデン、タングステン、及びバナジウムから選択される少なくとも1種の元素として、モリブデンを用いた場合について説明する。
【0052】
本実施形態における沈殿法は、希土類含有化合物とモリブデン含有化合物とを含む水溶液を撹拌して混合し(S21)、その後、加熱しこれらを反応させて中間物質を得る工程(S22)と、
前記得られた中間物質を乾燥させる乾燥工程(S23)と、
前記乾燥することで得られた粉末を仮焼する仮焼工程(S24)と、
前記仮焼した後の粉末を成形する成形工程(S25)と、
前記成形した後の成形体を焼成する焼成工程(S26)と、を備える。
上記沈殿法によれば、均一性に優れ、密度の高い複合酸化物セラミックスが比較的低温で得られるなどの利点がある。
【0053】
具体的に説明すると、まず、水への溶解性を有する希土類含有化合物を蒸留水に溶解して希土類含有水溶液を準備する。また、水への溶解性を有するモリブデン含有化合物を蒸留水に溶解してモリブデン含有水溶液を準備する。次いで、これらの水溶液を常温で混合して撹拌する(S21)。そして、混合後の水溶液を所定の時間、加熱して(S22)、中間物質を得る。
【0054】
水への溶解性を有する希土類含有化合物としては、例えば、希土類硝酸塩などが挙げられる。また、水への溶解性を有するモリブデン含有化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモニウムなどが挙げられる。一例を挙げると、例えば、希土類含有化合物として硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)を、前記モリブデン含有化合物としてモリブデン酸アンモニウム四水和物((NHMo24・4HO)をそれぞれ用いることができる。
【0055】
得られた中間物質は、乾燥工程(S23)において十分に乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、加熱乾燥が好ましい。次いで、乾燥した中間物質(粉末)を仮焼して仮焼粉末を得る(仮焼工程:S24)。特に限定されないが、仮焼は500℃以上で行うことが好ましい。仮焼における雰囲気は特に限定されず、例えば大気中で行うことができる。仮焼後の粉末自体を本実施形態の複合酸化物セラミックスとして用いる場合には、撥水性能を向上する点から、水分及び有機物濃度が1000ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で仮焼することが好ましい。得られた粉末は一部が焼結している場合があるため、必要に応じて粉砕し微細な粉末としてもよい。粉砕方法は特に限定されないが、乾式粉砕が好ましい。粉砕機の方式等は特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0056】
次いで、得られた仮焼後の粉末(仮焼粉末)を所望の形状に成形する(成形工程:S25)。成形方法は特に限定されず、例えば、一軸加圧成形法など公知の成形法の中から適宜選択することができる。
次いで、得られた成形体を焼成することにより、複合酸化物セラミックスの焼結体を得ることができる(焼成工程:S26)。焼成方法は、特に限定されないが、撥水性能に優れた焼結体が得られる点から、例えば、水分及び有機物濃度が1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で、900℃程度で加熱する方法などが好適に挙げられる。
【0057】
<固相反応法>
次に、複合酸化物セラミックスの別の製造方法として固相反応法を説明する。固相反応法は、原料である希土類含有化合物の粉末と、酸化モリブデン(MoO)の粉末とを混合し、仮焼することにより仮焼粉末を得る方法である。原料である希土類含有化合物としては、酸化ランタン(La)など希土類酸化物などを用いることができる。酸化モリブデンは、例えば、モリブデン酸アンモニウムの粉末を熱分解することにより得ることができる。希土類含有化合物とモリブデン酸アンモニウムとの混合物を、例えば、900℃以上で仮焼することによりモリブデン酸ランタン単相の粉末が得られる。仮焼、焼成における雰囲気は、前記錯体重合法と同様にすることができる。また、成形法についても前記錯体重合法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
次いで、焼成工程において、得られた成形体を焼成することにより、複合酸化物セラミックスの焼結体を得ることができる。焼成方法は、特に限定されないが、撥水性能に優れた焼結体が得られる点から、例えば、水分及び有機物濃度が1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、且つ、酸素が0.1%以上含まれる雰囲気下で、1200℃程度で加熱する方法などが好適に挙げられる。
【実施例
【0058】
以下、本実施形態について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本実施形態を制限するものではない。
【0059】
参考例1:LMO(錯体重合法)]
図1のフローチャートに示す錯体重合法を用いて、参考例1にかかる複合酸化物セラミックス(LaMo(LMO))を製造した。まず、硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)の水溶液、及びモリブデン酸アンモニウム四水和物((NH)6Mo24・4HO)の水溶液を準備した。前記2つの水溶液を、LaとMoがモル比で1:1となるように混合した(S11)。当該溶液を80℃に温めた後、LaとMoとの合計と、クエン酸がモル比で1:2となるようにクエン酸水溶液を添加した(S12)。次に、クエン酸に対してエチレングリコールが2/3当量となるようにエチレングリコール溶液を加え(S13)、80℃の恒温槽中で撹拌しながら6時間保持することで、ゲルを得た(S14)。
次いで当該ゲルを200℃で24時間乾燥させて乾燥粉末を得た(S2)。得られた乾燥粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。大気雰囲気下、500℃で12時間保持することにより仮焼し(S3)、複合酸化物セラミックス(LaMo(LMO))の仮焼粉末を得た。得られた仮焼粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。この仮焼粉末を約0.15gずつ秤量し、成形助剤としてエチレングリコールを仮焼粉末に対して体積分率で2%程度加えて10分間混合し、ポリエステル製の篩にかけてから、直径1cmの金型と、油圧プレス機を用い、成形圧100MPaで3分間保持して成形体を得た(S4)。当該成形体を、900℃で12時間、純度99.9%の合成空気(N:約80%、O:約20%、且つ水分及び有機物の濃度が1000ppm以下)を毎分1L流しながら焼成し(S5)、LMOの焼結体を得た。得られた焼結体はα-LMOの単相(単斜晶系)で、相対密度が96%であった。
【0060】
[比較例1]
3%のイットリウム(Y)を含む二酸化ジルコニウム(ZrO)(以下、YSZということがある)粉末(東ソー株式会社製、TZ-3Y)を200℃で乾燥した後、参考例1と同様に成形体を形成し、参考例1と同様にYSZの焼結体を得た。
【0061】
[比較例2]
比較例1において、YSZ粉末の代わりに、酸化アルミニウム(Al)粉末(大明化学工業株式会社製、タイミクロンTM-DAR)を用いた以外は、比較例1と同様にして、Alの焼結体を得た。
【0062】
<撥水性評価>
参考例1及び比較例1~2で得られた焼結体をそれぞれ暗所に600時間保持し、下記の方法で接触角の変化と、焼結体表面の炭素量を観察した。
【0063】
(接触角の測定方法)
接触角(水接触角)は、協和界面科学株式会社製の接触角計(Dropmaster 500)を用い、蒸留水3μLを滴下してθ/2法により測定した。結果を図3に示す。
【0064】
(表面炭素量の測定方法)
Perkin Elmer製XPS(X-ray Photoelectron Spectrometer 5500MT)を用い、下記の条件で測定を行った。結果を図4に示す。
励起X線:AlKα300W-14kV(連続線)
中和方法:電子銃による帯電補正
サーベイ測定パスエネルギー:187.85eV,ステップ幅0.8eV,積算回数3回,繰り返し回数10回,範囲0-1000eV
マルチプレックス測定パスエネルギー:23.50eV,ステップ幅0.2eV
測定元素
LMO :La,Mo,O,C
Al:Al,O,C
YSZ :Y,Zr,O,C
【0065】
<撥水耐久性評価>
次いで、参考例1の焼結体表面にオゾン暴露を行い、焼結体表面の親水化処理を行った。具体的には172nmの真空紫外線を15分間照射してオゾンを発生させ、焼結体表面に吸着している炭化水素をオゾンの酸化力により酸化させる表面処理を行った。当該親水化処理前、処理後、及び処理後2週間経過後の接触角の測定を行った。結果を図5に示す。
【0066】
図3に示されるように、参考例1の焼結体は、比較例1及び2の焼結体よりも撥水性が高いことが示された。また、参考例1の焼結体は、徐々に撥水性が向上し、600時間後には接触角が93°まで上昇した。また、図4に示されるように焼結体表面は時間とともに炭素量が増大していた。
また図5に示されるように、オゾン暴露により親水化するものの、暗所で保管することにより再度疎水化した。これらの結果から、本実施の複合酸化物セラミックスは、空気中の有機物の吸着により撥水性が向上するものと示唆された。
【0067】
<抗菌・抗ウイルス性評価>
図6及び図7を参照して、抗菌・抗ウイルス性評価を説明する。図6は抗菌・抗ウイルス性評価の手順を示すフローチャートであり、図7は抗菌・抗ウイルス性評価の方法を示す模式図である。
参考例1で得られた粉砕後の仮焼粉末をエタノールに分散し、1mg/mlの分散液を調製した(S31)。当該分散液150μLを2.5cm角のガラス基板上に塗布し(S32、及び図7(a))、次いで乾燥させた(S33)。当該塗布及び乾燥を3回繰り返し、次いで滅菌処理を行い、複数の試験用基板を準備した。
これとは別に、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)、大腸菌(グラム陰性菌)をそれぞれ1/500NB培地に溶かして2.2×10CFU/ml程度の試験菌液を作製し、100倍希釈することによって2.0×10CFU/ml程度の溶液を調整した。また、バクテリオファージQβ(ノロウイルスの代替ウイルス)、バクテリオファージφ6(インフルエンザウイルスの代替ウイルス)をそれぞれ1/50NB培地に溶かして2.0×10PFU/ml程度の試験ウイルス液を作製し、100倍希釈することによって2.0×10PFU/ml程度の溶液を調整した。
【0068】
(抗菌試験:黄色ブドウ球菌、及び大腸菌)
前記試験用基板に各々前記試験菌液50μL(およそ10CFU)を滴下し(S34及び図7(b))、フィルムで密着させた後(図7(c))、アルミホイルで包み、暗所に静置した(S35及び図7(d))。所定の時間が経ったサンプルのうち残存している菌数(コロニー数)を数えるために、SCDLP培地で抗菌の増殖を抑えた後(S36)、0.01MのPBSで希釈し(S37)、コロニー数を数えるためにNA寒天培地に菌を含んだサンプル溶液を1ml加えて所定の時間放置した(S39)。その後コロニーカウント行い抗菌活性値を求めた(S40)。
【0069】
(抗ウイルス試験:バクテリオファージφ6、及びバクテリオファージQβ)
前記試験用基板に各々前記試験ウイルス液50μL(およそ10PFU)を滴下し(S34)、フィルムで密着させたあとアルミホイルで包み、暗所に静置した(S35)。所定の時間が経ったサンプルのうち残存しているファージ数(プラーク数)を数えるために、SCDLP培地でウイルス数の増殖を抑えた後(S36)、0.01MのPBSで希釈した(S37)。次いで、Qβを大腸菌に感染させ、φ6を緑膿菌に感染させた溶液を作製し(S38)、NA寒天培地が撒いてあるディッシュに加えてさらにナンカンを加え、所定の時間放置した後(S39)、プラーク数を記録し抗ウイルス活性値を求めた(S40)。
【0070】
[比較例3、4]
比較例3として酸化ランタン(La)粒子を、比較例4として酸化モリブデン(MoO)粒子をそれぞれ準備した。上記抗菌・抗ウイルス性評価において、参考例1で得られた粉砕後の仮焼粉末の代わりに上記酸化ランタン粒子及び酸化モリブデン粒子をそれぞれ用いた以外は上記の方法と同様にして、抗菌・抗ウイルス性評価を行った。
【0071】
上記抗菌試験及び上記抗ウイルス試験の結果を図8に示す。図8において縦軸はそれぞれの菌またはウイルスの生存率の対数を表し、2桁低下すれば、抗菌・抗ウイルス活性があると判断できる。
図8から明らかなように、参考例1の複合酸化物セラミックスはいずれの菌及びウイルスにおいても6時間以内に2桁以上の低下が確認され、優れた抗菌・抗ウイルス活性を有することが明らかとなった。酸化モリブデンはいずれの菌種、ウイルス種においても、良好な抗菌・抗ウイルス活性が得られているが、大腸菌及びQβでは、参考例1の複合酸化物セラミックスのほうがより優れた抗菌・抗ウイルス活性が示された。
【0072】
参考例2:LMO(沈殿法)]
図2のフローチャートに示す沈殿法を用いて、参考例2にかかる複合酸化物セラミックス(LaMo(LMO))を製造した。まず、5.8mmolの硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)を5mlの蒸留水に溶解した水溶液と、0.82mmolのモリブデン酸アンモニウム四水和物((NHMo24・4HO)を50mlの蒸留水に溶解した水溶液をそれぞれ準備した。そして、前記2つの水溶液を、LaとMoがモル比で1:1となるように常温で混合した(S21)。次に、70℃の恒温槽中で24時間保持することで中間物質を得た(S22)。
【0073】
次いで当該中間物質を120℃で12時間乾燥させて乾燥粉末を得た(S23)。得られた乾燥粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。大気雰囲気下、500℃で6時間保持することにより仮焼し(S24)、複合酸化物セラミックス(LaMo(LMO))の仮焼粉末を得た。このとき得られた仮焼粉末は、LMO単相で、比表面積は5.8m/gであった。
【0074】
得られた仮焼粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。この仮焼粉末を約0.15gずつ秤量し、成形助剤としてエチレングリコールを仮焼粉末に対して体積分率で2%程度加えて10分間混合し、ポリエステル製の篩にかけてから、直径1cmの金型と、油圧プレス機を用い、成形圧100MPaで3分間保持して成形体を得た(S25)。当該成形体を、900℃で12時間、大気下で焼成し(S26)、LMOの焼結体を得た。得られた焼結体はα-LMOの単相(単斜晶系)で、相対密度が95%であった。
【0075】
このようにして作製した参考例2にかかるLMOの接触角の経時的な変化を、上述の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定した。接触角の測定結果を図9に示す。図9に示されるように、参考例2にかかるLMOについても撥水性が高いことが示された。また、参考例2にかかるLMOは、徐々に撥水性が向上し、2400時間後には接触角88°まで上昇した。
【0076】
また、参考例2にかかるLMOのオゾン処理前後の接触角の変化を、上述の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定した。接触角の測定結果を図10に示す。図10に示されるように、参考例2にかかるLMOに関しても、オゾン暴露により親水化するものの、暗所で保管することにより再度疎水化した。よって、参考例2にかかるLMOに関しても、空気中の有機物の吸着により撥水性が向上するものと示唆された。
【0077】
以上の結果から、沈殿法を用いて作製した参考例2にかかるLMOにおいても、錯体重合法を用いて作製した参考例1にかかるLMOと同様に撥水性を示すことが確認された。
【0078】
また、上述の方法と同様の方法を用いて、参考例2にかかるLMOの抗菌・抗ウイルス性評価を行った。参考例2にかかるLMOの抗菌・抗ウイルス性評価の結果を図11に示す。図11から明らかなように、参考例2にかかるLMOはいずれの菌及びウイルスにおいても6時間以内に2桁以上の低下が確認され、優れた抗菌・抗ウイルス活性を有することが明らかとなった。
【0079】
参考例3:LWO(沈殿法)]
図2のフローチャートに示す沈殿法を用いて、参考例3にかかる複合酸化物セラミックス(La(LWO))を製造した。参考例3にかかるLWOは、参考例2にかかるLMOのMoをWで完全に置換した複合酸化物セラミックスである。
【0080】
まず、5.8mmolの硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)を5mlの蒸留水に溶解した水溶液と、0.48mmolの(NH10(H1242)・4HOを50mlの蒸留水に溶解した水溶液をそれぞれ準備した。そして、前記2つの水溶液を、LaとWがモル比で1:1となるように常温で混合した(S21)。次に、70℃の恒温槽中で24時間保持することで中間物質を得た(S22)。
【0081】
次いで当該中間物質を120℃で12時間乾燥させて乾燥粉末を得た(S23)。得られた乾燥粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。大気雰囲気下、400℃で6時間保持することにより仮焼し(S24)、複合酸化物セラミックス(La(LWO))の仮焼粉末を得た。このとき得られた仮焼粉末は、結晶性の低い状態であり、比表面積は4.5m/gであった。
【0082】
得られた仮焼粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。この仮焼粉末を約0.15gずつ秤量し、成形助剤としてエチレングリコールを仮焼粉末に対して体積分率で2%程度加えて10分間混合し、ポリエステル製の篩にかけてから、直径1cmの金型と、油圧プレス機を用い、成形圧100MPaで3分間保持して成形体を得た(S25)。当該成形体を、1400℃で3時間、大気下で焼成し(S26)、LWOの焼結体を得た。得られた焼結体はLWOの単相で、相対密度が90%であった。
【0083】
このようにして作製した参考例3にかかるLWOの接触角の経時的な変化を、上述の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定した。接触角の測定結果を図12に示す。図12に示されるように、参考例3にかかるLWOについても撥水性が高いことが示された。また、参考例3にかかるLWOは、徐々に撥水性が向上し、720時間後には接触角110°まで上昇した。
【0084】
また、参考例3にかかるLWOのオゾン処理前後の接触角の変化を、上述の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定した。接触角の測定結果を図13に示す。図13に示されるように、参考例3にかかるLWOに関しても、オゾン暴露により親水化するものの、暗所で保管することにより再度疎水化した。よって、参考例3にかかるLWOに関しても、空気中の有機物の吸着により撥水性が向上するものと示唆された。
【0085】
以上の結果から、参考例3にかかるLWOにおいてもLMOと同様に撥水性を示すことが確認された。
【0086】
また、上述の方法と同様の方法を用いて、参考例3にかかるLWOの抗菌・抗ウイルス性評価を行った。参考例3にかかるLWOの抗菌・抗ウイルス性評価の結果を図14に示す。図14から明らかなように、参考例3にかかるLWOはいずれの菌及びウイルスにおいても6時間以内に2桁以上の低下が確認され、優れた抗菌・抗ウイルス活性を有することが明らかとなった。
【0087】
[実施例4~6:LMWO(沈殿法)]
図2のフローチャートに示す沈殿法を用いて、実施例4~6にかかる複合酸化物セラミックス(La(Mo2-x)O(LMWO);x=0.5、1.0、1.5)を製造した。実施例4~6にかかるLMWOは、実施例2にかかるLMOのMoの一部をWで置換した複合酸化物セラミックスである。具体的には、実施例4の組成はLaMoWO(x=1.0)であり、実施例5の組成はLa(Mo0.51.5)O(x=1.5)であり、実施例6の組成はLa(Mo1.50.5)O(x=0.5)である。
【0088】
まず、5.8mmolの硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)を5mlの蒸留水に溶解した水溶液と、モリブデン酸アンモニウム四水和物((NHMo24・4HO)を溶解した水溶液と、(NH10(H1242)・4HOを溶解した水溶液をそれぞれ準備した。そして、これらの水溶液を上記組成(x=0.5、1.0、1.5)になるように常温でそれぞれ混合した(S21)。次に、70℃の恒温槽中で72時間保持することで中間物質を得た(S22)。
【0089】
次いで当該中間物質を120℃で24時間乾燥させて乾燥粉末を得た(S23)。得られた乾燥粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。大気雰囲気下、550℃で6時間保持することにより仮焼し(S24)、複合酸化物セラミックス(LMWO)の仮焼粉末を得た。このとき得られた仮焼粉末は、LMOと他の結晶相との混相であり、比表面積は実施例4(x=1.0)で4.0m/g、実施例5(x=1.5)で5.9m/g、実施例6(x=0.5)で4.4m/gであった。
【0090】
そして、得られた仮焼粉末(実施例4~6)に対して、上述の方法と同様の方法を用いて抗菌・抗ウイルス性評価を行った。なお、実施例4~6では、抗菌性の評価は黄色ブドウ球菌に対して行った。図15に、実施例4(LMWO(Mo:W=1:1))の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示す。図16に、実施例5(LMWO(Mo:W=0.5:1.5))の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示す。図17に、実施例6(LMWO(Mo:W=1.5:0.5))の抗菌・抗ウイルス性評価の結果を示す。
【0091】
図15図17から明らかなように、実施例4~6にかかるLMWOはいずれの菌及びウイルスにおいても6時間以内に2桁以上の低下が確認され、優れた抗菌・抗ウイルス活性を有することが明らかとなった。
【0092】
参考例7:LCMO(沈殿法)]
図2のフローチャートに示す沈殿法を用いて、参考例7にかかる複合酸化物セラミックス(La1.8Ce0.2Mo(LCMO))を製造した。参考例7にかかるLCMOは、参考例2にかかるLMOのLaの一部をCeで置換した複合酸化物セラミックスである。
【0093】
まず、5.2mmolの硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)と0.58mmolの硝酸セリウム六水和物(Ce(NO・6HO)とを5mlの蒸留水に溶解した水溶液と、0.82mmolのモリブデン酸アンモニウム四水和物((NHMo24・4HO)を50mlの蒸留水に溶解した水溶液をそれぞれ準備した。そして、これらの水溶液を常温で混合した(S21)。次に、70℃の恒温槽中で24時間保持することで中間物質を得た(S22)。
【0094】
次いで当該中間物質を120℃で24時間乾燥させて乾燥粉末を得た(S23)。得られた乾燥粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。大気雰囲気下、500℃で6時間保持することにより仮焼し(S24)、複合酸化物セラミックス(La1.8Ce0.2Mo(LCMO))の仮焼粉末を得た。このとき得られた仮焼粉末の比表面積は4.4m/gであった。
【0095】
得られた仮焼粉末をメノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1.0gずつ10分間の乾式粉砕をした。この仮焼粉末を約0.15gずつ秤量し、成形助剤としてエチレングリコールを仮焼粉末に対して体積分率で2%程度加えて10分間混合し、ポリエステル製の篩にかけてから、直径1cmの金型と、油圧プレス機を用い、成形圧100MPaで3分間保持して成形体を得た(S25)。当該成形体を、900℃で3時間、大気下で焼成し(S26)、LCMOの焼結体を得た。得られた焼結体はLMOの単相(単斜晶系)で、相対密度が94%であった。
【0096】
このようにして作製した参考例7にかかるLCMOの接触角の経時的な変化を、上述の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定した。接触角の測定結果を図18に示す。図18に示されるように、参考例7にかかるLCMOについても撥水性が高いことが示された。また、参考例7にかかるLCMOは、72時間後の接触角が119°まで上昇した。
【0097】
また、参考例7にかかるLCMOのオゾン処理前後の接触角の変化を、上述の接触角の測定方法と同様の方法を用いて測定した。接触角の測定結果を図19に示す。図19に示されるように、参考例7にかかるLCMOに関しても、オゾン暴露により親水化するものの、暗所で保管することにより再度疎水化した。よって、参考例7にかかるLCMOに関しても、空気中の有機物の吸着により撥水性が向上するものと示唆された。
【0098】
以上の結果から、参考例7にかかるLCWOにおいても、LMOと同様に撥水性を示すことが確認された。
【0099】
また、上述の方法と同様の方法を用いて、参考例7にかかるLCMOの抗菌・抗ウイルス性評価を行った。参考例7にかかるLCMOの抗菌・抗ウイルス性評価の結果を図20に示す。図20から明らかなように、参考例7にかかるLCMOはいずれの菌及びウイルスにおいても6時間以内に2桁以上の低下が確認され、優れた抗菌・抗ウイルス活性を有することが明らかとなった。
【0100】
以上の結果から、本実施形態の複合酸化物セラミックスが、自己撥水性と抗菌・抗ウイルス性能を併せ持つ複合酸化物セラミックスであることが明らかとなった。本実施形態の複合酸化セラミックスによれば、例えば、食器やガラス、建材等に、有機物原料を用いることなく、効果的に水滴除去性能と抗菌・抗ウイルス性能を付与することができ、省エネルギーや環境負荷低減だけでなく、ウイルスパンデミックに対応可能な材料を提供し得る。
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