(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】車両の自動搬送車、及び車両の自動搬送システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240430BHJP
B60P 3/075 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G05D1/43
B60P3/075
(21)【出願番号】P 2020061911
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】生駒 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】松崎 孝士
(72)【発明者】
【氏名】飯田 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】朝間 淳一
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053082(JP,A)
【文献】特開2016-216936(JP,A)
【文献】特開2009-102824(JP,A)
【文献】特開2008-239019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0135328(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109263758(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
B60P 3/075
E04H 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地して駆動する駆動部と、
前記駆動部に動力を付与する動力付与部と、
車両の前輪及び後輪のうち何れか一方の車輪のみを搭載可能な搭載部とを備え、
前記駆動部及び前記動力付与部を制御することで操舵を伴う自動走行を可能とし
、
前記駆動部は二個の駆動輪であって、
前記二個の駆動輪の間に前記搭載部が設けられている、車両の自動搬送車。
【請求項2】
請求項
1に記載の自動搬送車と、
前記自動搬送車に取付けられる通信測位システムの受信部と、
前記自動搬送車の周囲の空間情報を検知する検知部と、
前記受信部を通じて前記通信測位システムにより得られた前記自動搬送車の位置情報と、前記検知部により得られた前記周囲の空間情報とに基づき、前記自動搬送車の前記駆動部及び前記動力付与部を制御する制御部とを備えた、完成車両の自動搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動搬送車、及び車両の自動搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造業界においても、来る高齢化社会に向けて、人手不足を補うための対策を講じる必要性が益々高まってきている。例えば工場で量産された自動車などの完成車両を出荷地など所定の場所まで効率よく輸送するための手段として、コンテナなどの積載容器に複数台の完成車両を積載した状態で、当該積載容器を大型トラックなどの輸送車両で目的地近傍の港まで陸上輸送し、然る後、積載容器を輸送用船舶に積み替えて目的地まで水上輸送を行う方法が一般的に採られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2には、無人自動運転による牽引車両により複数の台車を牽引して限定されたエリア内における所定の走行ルート上を走行する形式の搬送移動車両が、搬送対象である完成車両を台車上に搭載した状態で目的地まで搬送するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-123258号公報
【文献】特開2019-36036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、完成車両の輸送に際しては、工場ヤードに整列配置した完成車両を所定の積み替え用ヤードまで搬送した後、積み替えのために完成車両を一旦荷下ろしして、当該積み替え用ヤードに整列配置し直す必要が生じる。各ヤードでは、多数の完成車両を効率よく待機させるために、多数の完成車両が密集して配置されており、車体前後方向に隣接する完成車両同士の間隔又は車体幅方向に隣接する完成車両同士の間隔は非常に小さい。例えば特許文献1に記載の輸送手段だと、ヤード内で荷下ろしを行うためには、当該ヤードに輸送用トラックの停止スペースとコンテナの停止スペースと完成車両の荷下ろしスペースがそれぞれ必要になる。しかしながら、輸送用トラックやコンテナは非常に巨大であるため、荷下ろしスペースに加えて各々の停止スペースを設けるとなると、その分待機可能な完成車両の数を減らさざるを得ないため、現実的にヤード内での荷下ろしは難しい。また、この場合、輸送用トラックをヤードから離れた場所で停止させ、ヤード内に配置された完成車両を一台ずつ輸送用トラックに連結されたコンテナまで作業者が運転して移動させ、またヤードから離れた位置から完成車両を一台ずつ荷下ろしして、ヤード内の所定位置まで作業者が完成車両を運転して移動させる手間が生じる。これでは、完成車両の積載及び荷下ろしに多大な時間を要する。
【0006】
例えば特許文献2に記載の輸送手段では、無人搬送車両が、完成車両を搭載し互いに連結された複数の台車を牽引搬送するため、ヤード内で荷下ろしを行うためには、当該ヤードに牽引車両や複数の台車分の停止スペースがそれぞれ必要になる。しかしながら、この場合も、荷下ろしスペースに加えて各々の停止スペースを設けるとなると、その分待機可能な完成車両の数を減らさざるを得ないため、現実的にヤード内での荷下ろしは難しい。また、この場合も、各ヤードから離れた場所で完成車両を搭載し、かつ荷下ろしする必要が生じるため、全ての完成車両につきヤードまでの間の移動を作業者の運転により行う手間が生じる。これでは、特許文献1と同様、完成車両の積載及び荷下ろしに多大な時間を要する。
【0007】
以上に述べた問題は何も完成車両に限ったことではなく、例えば軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない架装前車両を輸送する場合にも同様に起こり得る。
【0008】
以上の事情に鑑み、本明細書では、車両の搭載及び荷下ろしをヤード内で可能とし、これにより多数の車両を短時間で効率よく輸送可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の解決は、本発明に係る車両の自動搬送車によって達成される。すなわち、この自動搬送車は、接地して駆動する駆動部と、駆動部に動力を付与する動力付与部と、車両の前輪及び後輪のうち何れか一方の車輪のみを搭載可能な搭載部とを備え、駆動部及び動力付与部を制御することで操舵を伴う自動走行を可能とした点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明に係る自動搬送車では、操舵を伴う自動走行機能を設けたので、車両の輸送を無人で行うことができる。また、本発明に係る自動搬送車に、車両の前輪及び後輪のうち何れか一方の車輪のみを搭載可能な搭載部を設けるようにした。従来の輸送手段に係る搭載部だと、コンテナや台車などのように車両全体を搭載するための大きさが必要となるため、荷下しに必要なスペースが非常に大きくならざるを得ない。これに対し、本発明に係る自動搬送車だと、車両の前輪及び後輪のうち何れか一方の車輪のみを搭載可能な大きさの搭載部があれば足りるため、搭載部を従来よりも小さくすることができる。また、無人で搬送車を走行させることができるので、キャビンの分だけ搬送車の省スペース化を図ることができる。以上より、少なくとも車両の搭載部及びキャビンの分だけ従来に比べて荷下ろしに必要なスペースを縮小することができ、これにより、ヤード内での車両の搭載及び荷下ろしを円滑に行うことが可能となる。また、自動搬送車自体の小型化により、ヤード内における自動搬送車の導線自由度を高めることができるので、これによってもヤード内での搭載及び荷下ろしを円滑に行うことができる。以上より、本発明に係る自動搬送車によれば、効率よく車両の輸送を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る自動搬送車において、駆動部は一個又は複数個の駆動輪であってもよい。また、この場合、駆動輪が二個で、二個の駆動輪の間に搭載部が設けられてもよい。あるいは、駆動輪が一個で、駆動輪と車体前後方向で異なる位置に二個の従動輪をさらに有すると共に、二個の従動輪の間に搭載部が設けられてもよい。
【0012】
このように、駆動部は一個又は複数個の駆動輪とすることが可能である。また、駆動輪を二個とし、二個の駆動輪の間に搭載部を設けることによって、各駆動輪を車両の搭載される側の車輪の幅方向外側に配置することができる。これにより、車両が搭載された状態の自動搬送車の全長(車体前後方向寸法)をさらに小さくすることができるので、搭載及び荷下ろしに必要なスペースをさらに縮小することが可能となる。なお、本構成をとる場合、駆動部が搭載部から車体前後方向にずれた位置に配設される場合と比べて、自動搬送車の幅方向寸法は増大するが、例えばヤード内の荷下ろし位置では、多数の車両が車体前後方向及び幅方向に一定の間隔を空けた状態で整列配置されるのが一般的である。そのため、幅方向で隣接する車両との空きスペースに駆動部(各駆動輪)を配置することで、自動搬送車で車両を無理なくヤード内の荷下ろしスペースに導入することが可能となる。
【0013】
また、駆動輪を一個とし、駆動輪と車体前後方向で異なる位置に二個の従動輪をさらに設けることで、駆動輪を最小限の個数として更なる低コスト化を図りつつも自動搬送車の姿勢、特に走行時の姿勢を安定化させて、安定的な車両の搬送を図ることが可能となる。また、二個の従動輪の間に搭載部を設けることによって、各従動輪を車両の搭載される側の車輪の幅方向外側に配置することができるので、これによっても、車両が搭載された状態の自動搬送車の全長を小さくして、搭載及び荷下ろしに必要なスペースを縮小することが可能となる。
【0014】
また、以上の説明に係る自動搬送車は、例えば上述した複数の自動搬送車と、各自動搬送車に取付けられる例えば衛星や基地局を活用した通信測位システムの受信部と、各自動搬送車の周囲の空間情報を検知する検知部と、受信部を通じて通信測位システムにより得られた各自動搬送車の位置情報と、検知部により得られた周囲の空間情報とに基づき、各自動搬送車の駆動部及び動力付与部を制御する制御部とを備えた、車両の自動搬送システムとして提供することも可能である。
【0015】
このように、車両の自動搬送システムを構築することによって、公道であっても、また遠距離であっても正確にかつ安全に車両を目的地まで輸送することができる。また、上述のように通信測位システムと周囲の空間情報を検知する検知部とを利用して自動搬送車の駆動(走行)を制御することによって、一度に多数の自動搬送車を干渉なく円滑に自動走行させることができるので、より効率よく多数の車両を輸送することが可能となる。
【0016】
また、この場合、本発明に係る自動搬送システムにおいては、搬送すべき車両1台につき自動搬送車を一つ備え、制御部は、自動搬送車の搭載部に車両の何れか一方の車輪を搭載し、かつ車両の他方の車輪を接地させた状態で、自動搬送車を所定の経路で自動走行させてもよい。
【0017】
このように自動搬送車を制御することによって、例えば二輪駆動の車両の四輪のうち駆動側の二輪のみを搭載した状態でかつ従動側の二輪を接地させた状態で、車両を自動搬送することができる。よって、車両の車輪を利用して効率よく車両を輸送することが可能となる。
【0018】
あるいは、本発明に係る自動搬送システムにおいては、搬送すべき車両1台につき自動搬送車を二つ備え、制御部は、二つの自動搬送車のうち一方の自動搬送車の搭載部に車両の前輪を搭載し、かつ他方の自動搬送車の搭載部に車両の後輪を搭載した状態で、各自動搬送車を同期して所定の経路で自動走行させてもよい。
【0019】
このように1台の車両につき二つの自動搬送車を利用することによって、例えば四輪駆動の車両の車輪全てを搭載した状態で、車両を自動搬送することができる。よって、不要な抵抗を車輪に与えることなく車両を安全に輸送することが可能となる。また、各自動搬送車は、互いに独立して例えば車両の車体前後方向に遠ざかる向きに又は近づく向きにそれぞれ移動させることができるので、二つの自動搬送車で一台の車両を搬送した場合であっても、搭載又は荷下ろしを円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、車両の搭載及び荷下ろしをヤード内で可能とし、これにより多数の車両を短時間で効率よく輸送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る車両の自動搬送システムの全体構成を示す図である。
【
図3】
図2中のA-A切断線に沿った自動搬送車の要部断面図である。
【
図4】
図1に示す自動搬送車に車両を搭載した状態を側面視した図である。
【
図5】
図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、車両を搭載した状態の自動搬送車がヤード内の所定位置に向けて移動している状態を示す図である。
【
図6】
図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、車両を搭載した自動搬送車がヤード内の所定位置で停止した状態を示す図である。
【
図7】
図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、自動搬送車から車両を荷下ろしした状態を示す図である。
【
図8】
図1に示す自動搬送車の荷下ろし後における駆動輪の姿勢を示す平面図である。
【
図9】
図1に示す自動搬送システムを用いた車両の荷下ろしの一例を説明するための図であって、荷下ろし後の自動搬送車の動作を説明するための図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係る車両の自動搬送システムの全体構成を示す図である。
【
図11】本発明の第三実施形態に係る車両の自動搬送システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一実施形態に係る車両の自動搬送システムの内容を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両の自動搬送システムの全体構成を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る自動搬送システム10は、自動搬送車11と、衛星測位システムの受信部12と、自動搬送車11の周囲の空間情報を検知する検知部13と、自動搬送車11の駆動を制御する制御部14とを備える。以下、自動搬送車11の構成を中心に各要素の詳細を説明する。
【0024】
自動搬送車11は、
図2に示すように、駆動部としての左右の駆動輪15と、各駆動輪15に動力を付与する動力付与部16と、車両1の前輪2と後輪3(後述する
図4を参照)のうち何れか一方の車輪(ここでは駆動側の車輪となる前輪2)のみを搭載可能な搭載部17とを有する。本実施形態では、各駆動輪15はそれぞれケーシング18に収容されている。また、これら二個のケーシング18は連結部19により互いに連結されている。この場合、連結部19上の幅方向所定位置、すなわち、搭載すべき車両1の前輪2に対応した二箇所の幅方向位置に搭載部17がそれぞれ設けられている。よって、この場合、搭載部17は、左右の駆動輪15の間に配設される。言い換えると、搭載部17は、左右の駆動輪15と車体前後方向で重複する位置に配設される(後述する
図4を参照)。なお、ここでいう幅方向とは、車両1を搭載した状態において車体前後方向に直交する向きを意味し、自動搬送車11でいえば左右の駆動輪15が互いに離れている向きに相当する。また、ここでいう車両1には、最終的に消費者が購入可能な状態にある完成車両のみならず、例えば量産される車両であって、軽トラックの開口荷台や箱状荷室などがない、言い換えると架装されていない状態の車両(架装前車両)などが含まれる。
【0025】
次に、駆動輪15の詳細を説明する。本実施形態では、左右の駆動輪15はそれぞれ、
図2及び
図3に示すように、互いに並列に配置された左右の車輪20で構成されている。各車輪20は、互いに独立して回転可能に構成されると共に、車輪20間に配設された回転軸21に回転可能に支持されている。回転軸21は、自動搬送車11の走行時において、その長手方向を鉛直方向に一致させた状態で配設され、これにより、例えば左右の車輪20を互いに逆方向に回転させることで、あるいは一方の車輪20のみを回転駆動させることで、左右の車輪20を有する駆動輪15が回転軸21まわりに回転し、自動搬送車11としての操舵が可能となる(操舵角を付与することができる)。なお、本実施形態では、左右の車輪20(駆動輪15)は、回転軸21まわりに360度回転可能とされているので、例えば後述する
図8に示すように、駆動輪15(左右の車輪20)を90度回転させ、幅方向に移動可能としている。
【0026】
本実施形態では、動力付与部16は、
図3に示すように、車輪20と同じ数だけ設けられ、各車輪20に回転駆動力を付与する複数のインホイールモータ22で構成されている。各インホイールモータ22は、ステータ23とロータ24とを有する。この場合、ステータ23が回転軸21に固定され、ロータ24は車輪20のホイール25に連結されている。これにより、インホイールモータ22を回転駆動してロータ24を軸回転させることで、ロータ24に連結されたホイール25及びタイヤ26がロータ24と共に回転可能となる。また、後述するように、各インホイールモータ22は独立して電気的に制御可能であるから、上述のように動力付与部16を構成することによって、左右に並列して配設された車輪20をそれぞれ独立して回転駆動できると共に、駆動輪15としてもそれぞれ独立して鉛直軸線まわりに回転し、かつ水平軸線まわりに回転駆動することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態では、連結部19の車体前方側に従動輪27が配設されている。詳細には、連結部19の車体前方側に板状の支持部28が延長して設けられると共に、支持部28の所定位置に二個の従動輪27が配設されている。この場合、従動輪27は、各駆動輪15よりも自動搬送車11の車体前方側で接地可能とされ、駆動輪15の接地状態における回転駆動に伴って従動的に回転(地面に対して転動)する。あるいは、後述するように車両1の前輪2が搭載部17に搭載された状態で自動搬送車11が走行する際、従動輪27は、駆動輪15の接地状態における回転駆動に伴って従動的に回転する。
【0028】
搭載部17は、搭載すべき車両1の車輪(ここでは前輪2)を保持可能な限りにおいて任意の構成をとることができる。例えば図示例では、輪止め29が搭載部17の車体前方側に設けられており、自動搬送車11の車体後方側から搭載される車両1の前輪2の車体前方側への移動を規制すると共に、車体前後方向への位置決めを図っている。なお、図示は省略するが、前輪2を搭載していない状態では、前輪2の搭載部17上への移動を許容するよう下方に位置し、前輪2が搭載部17上の所定位置に搭載された状態では、相対的に上方に位置し、前輪2の車体後方側への移動を規制する可動式の規制部を設けてもよい。もちろん、前輪2が搭載部17上の所定位置に搭載された時点で、作業者が前輪2の後方側に輪止めを配置してもよい。
【0029】
通信測位システムの受信部12は、例えばGPS等の衛星測位システム用の衛星(測位衛星)や基地局との円滑な通信のために、ポール30の先端に設けるなど、搭載される車両1が通信に与える影響も考慮して、適切な高さ位置に設置するのがよい。
【0030】
検知部13は、例えば光センサなどの物体検出装置31と、カメラ32とを有する。本実施形態では、自動搬送車11の前方側にそれぞれ左右二個の物体検出装置31とカメラ32とが設けられている。なお、これら検知部13の構成は一例に過ぎず、必要に応じて、検知部13を構成する要素の種類、数などを任意に設定することが可能である。
【0031】
制御部14は、左右の駆動輪15と動力付与部16を制御することで、自動搬送車11の操舵を伴う自動走行を可能としている。本実施形態では、制御部14は、複数の自動搬送車11(
図1では1台の自動搬送車11のみを示している。)の駆動輪15と動力付与部16の制御をそれぞれ行うことで、各自動搬送車11の操舵を伴う自動走行を可能としている。この場合、制御部14は、統括制御部33と、各自動搬送車11に設けられ統括制御部33との通信内容に基づいて、各自動搬送車11の駆動輪15及び動力付与部16を制御する端末制御部34とで構成される。各端末制御部34は、統括制御部33からの指令と、受信部12を通じて通信測位システムにより得られた対応する自動搬送車11の位置情報と、検知部13により得られた対応する自動搬送車11の周囲の空間情報とに基づき、対応する自動搬送車11の駆動輪15と動力付与部16とを制御することで、各自動搬送車11の操舵を伴う自動走行を可能としている。
【0032】
次に、上記構成の自動搬送車11を備えた自動搬送システム10の動作の一例を、主に
図5~
図8に基づいて説明する。
【0033】
まず、統括制御部33は、所定の自動搬送車11に指令を送り、自動搬送車11による車両1の搭載動作を開始する。指令を受けた自動搬送車11は、端末制御部34により駆動輪15と動力付与部16を制御して、図示しない搬送元エリア(例えば工場ヤード)に整列配置されている車両1に向けて移動し、前輪2と後輪3のうち何れか一方の車輪(ここでは前輪2)の車体前方側に隣接した位置で停止する。然る後、自動搬送車11の搭載部17上に車両1の前輪2を搭載する。本実施形態では、車両1が前進することで、前輪2を自動搬送車11の連結部19上に移動する。これにより、連結部19上の幅方向所定位置に配設された搭載部17上に車両1の前輪2が搭載されると共に、車両1の後輪3は接地した状態となる(
図4を参照)。
【0034】
次に、自動搬送車11は、車両1の一部(前輪2)を搭載した状態で目的地(例えば港の積み替え用ヤード)に向けて移動を開始する。この間の走行は、端末制御部34により、受信部12を通じて通信測位システムにより得られた自動搬送車11の位置情報と、検知部13(物体検出装置31、カメラ32)により得られた自動搬送車11の周囲の空間情報とに基づき、自動搬送車11の駆動輪15及び動力付与部16を制御することによって自動的に行われる。
【0035】
そして、車両1を搭載した自動搬送車11が目的地に到着すると、次に、目的地内の所定位置、ここでは
図5に示すように、ヤード35内の所定位置(搬送中の車両1の荷下ろしスペースP1)に向けて車両1を搬送する。ここで車両1の一部は、平面視した状態で自動搬送車11と重複した位置にある。そのため、例えば
図6に示すように、本来荷下ろしすべき位置(荷下ろしスペースP1と完全に重複する位置)よりも重複している分だけ車体前方側で車両1を停止させる。そして、この状態から車両1を後退させて、搭載部17上から車両1の前輪2を地面に降ろす(
図7に示す状態)。これにより、車両1の荷下ろしスペースP1への荷下ろしが完了する。
【0036】
このようにして荷下ろしが完了した後、自動搬送車11は、作業者からの指示(スイッチ等による何らかの操作)を受けて、又は搭載部17に作用する負荷の低下などを自ら検知して、ヤード35内からの退避を開始する。本実施形態のように、ヤード35内に既に荷下ろしされた複数の車両1’が存在する場合、これら複数の車両1’は車体前後方向及び幅方向に所定の間隔を空けた状態で整列配置されている(
図5等を参照)。そのため、自動搬送車11は、荷下ろしを終えた状態において、駆動輪15を回転軸21まわりに90度回転させる(
図8を参照)。然る後、駆動輪15を回転駆動させて、自動搬送車11の荷下ろし時の姿勢を維持した状態で幅方向に移動を開始する(
図9を参照)。この際、自動搬送車11の車体前後方向寸法(最大値)W1が、荷下ろしされた車両1’の車体前後方向の間隔(最小値)W2よりも小さいことが肝要である。もちろん、寸法W1が最大となる位置と間隔W2が最小となる位置とが高さ方向で異なる場合には、この限りではない。
【0037】
なお、上述した駆動輪15の回転は、本実施形態のようにインホイールモータ22によって各車輪20が独立駆動する場合、互いに逆向きに回転させることによって、又は一方の車輪20のみを回転駆動することによって可能となる。
【0038】
以上のようにして自動搬送車11のヤード35内からの退避が行われる。退避した自動搬送車11は、空荷状態(車両1を搭載していない状態)で操舵を伴う自動走行を行い、搬送元の場所に戻る。以上述べた一連の動作を繰り返し行うことで、繰り返した回数分の車両1が目的地に向けて自動搬送される。また、上述した一連の動作を他の自動搬送車11に対しても同時又は順次に行わせることで、使用した自動搬送車11の数と同数の車両1が順次目的地に向けて自動搬送される。この場合、複数の自動搬送車11の制御は、各自動搬送車11に設けられた端末制御部34と、統括制御部33との(無線)通信により行われる。
【0039】
以上述べたように、本実施形態に係る自動搬送車11及びこの自動搬送車11を用いた自動搬送システム10によれば、自動搬送車11に操舵を伴う自動走行機能を設けたので、車両1の輸送を無人で行うことができる。また、この自動搬送車11に、車両1の前輪2及び後輪3のうち何れか一方の車輪のみを搭載可能な搭載部17を設けるようにしたので、コンテナや台車など車両1全体を搭載する従来の搭載部に比べて、搭載部17を小さくすることができる。また、無人で自動搬送車11を走行させることができるので、キャビンが不要となり、当該キャビンの分だけ自動搬送車11の省スペース化を図ることができる。以上より、少なくとも車両1の搭載部17及びキャビンの分だけ従来に比べて搭載及び荷下ろしに必要なスペースを縮小することができ、これにより、車両1の搭載及び荷下ろしを円滑に行うことが可能となる。また、自動搬送車11自体の小型化により、ヤード35内における自動搬送車11の導線自由度を高めることができるので(ヤード35内を相対的に自由に移動できるようになるので)、これによってもヤード35内での荷下ろしを円滑に行うことができる。以上より、本発明に係る自動搬送車11によれば、搭載及び荷下ろしを含めた車両1の輸送を効率よく行うことが可能となる。
【0040】
また、本実施形態のように、駆動部を左右の駆動輪15として、これら左右の駆動輪15の間に搭載部17を設けることによって、各駆動輪15を車両1の前輪2の幅方向外側に配置することができる(
図5等を参照)。これにより、車両1が搭載された状態の自動搬送車11の全長(車体前後方向寸法)をさらに小さくすることができるので、搭載及び荷下ろしに必要なスペースをさらに縮小することが可能となる。なお、本構成をとる場合、駆動輪15が搭載部17から車体前後方向にずれた位置に配設される場合と比べて、自動搬送車11の幅方向寸法は増大するが、例えばヤード35内の荷下ろしスペースP1周辺では、多数の車両1’が車体前後方向及び幅方向に一定の間隔を空けた状態で整列配置されている。そのため、幅方向で隣接する車両1’との空きスペースに各駆動輪15を配置することができ、自動搬送車11で車両1を無理なくヤード35内の荷下ろしスペースP1に導入することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、駆動輪15を回転軸21まわりに90度回転して自動搬送車11を荷下ろし時の姿勢を維持した状態で幅方向に移動可能としたので、荷下ろし直後の姿勢のままで、既にヤード35内に荷下ろしされた他の車両1’の間のスペースを通ってヤード35内から円滑に退避することができる。また、この際、上述のように左右の駆動輪15の間に搭載部17を設けた構成とすることによって、自動搬送車11の車体前後方向寸法W1を、荷下ろしされた車両1’の間隔W2よりも容易に小さくできるので、ヤード35内から自動搬送車11を円滑に退避させることができる。そのため、荷下ろし後の自動搬送車11の退避のための導線を別途確保することなく、図示例のように車両1の前輪2を搭載した状態でヤード35内の荷下ろしスペースP1に向けて車両1を車体前方側から導入することができる。このように車両1を導入して荷下ろしできれば、荷下ろしした位置及び姿勢がそのまま車両1の整列配置時の位置及び姿勢となるため、荷下ろし後に車両1の向きを変える必要もない。以上より、上記構成によれば、極めて効率よく車両1の荷下ろし及び整列配置を行うことができる。
【0042】
以上、本発明の第一実施形態について述べたが、本発明に係る自動搬送車及び自動搬送システムは、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0043】
図10は、本発明の第二実施形態に係る自動搬送システム40の全体構成を示している。本実施形態に係る自動搬送システム40は、搬送すべき1台の車両1につき自動搬送車11a,11bを二つ備える。この場合、二つの自動搬送車11a,11bのうち一方の自動搬送車11aの搭載部17に車両1の前輪2を搭載し、かつ他方の自動搬送車11bの搭載部17に車両1の後輪3を搭載した状態で、車両1の自動搬送を行う。また、この場合、制御部14は、上述のように前輪2と後輪3とをそれぞれ本発明に係る自動搬送車11a,11b上に搭載した状態で、各自動搬送車11a,11bを同期して所定の経路で自動走行させるよう、各自動搬送車11a,11bの駆動輪15及び動力付与部16を制御する。そのため、本実施形態に係る自動搬送システム40は、車両1が四輪駆動車である場合に好適である。
【0044】
なお、
図10に示す自動搬送システム40では、各自動搬送車11a,11bに設けられた端末制御部34a,34bと、統括制御部33との間で通信を行うことにより、各自動搬送車11a,11bを同期して所定の経路で自動走行させるように制御する場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば双方の端末制御部34a,34b間で通信を行うことにより、各自動搬送車11a,11bを同期して自動走行させるように、各自動搬送車11a,11bの駆動輪15及び動力付与部16を制御するようにしてもかまわない。
【0045】
また、
図1に示す自動搬送システム10において、統括制御部33を省略し、端末制御部34のみで自動搬送車11の自動走行を制御してもかまわない。この場合、例えば予め搭載及び荷下ろしを伴う自動搬送に関するプログラムを端末制御部34に記憶させておき、作業者の所定の操作により上記プログラムに基づいて、駆動輪15及び動力付与部16を駆動制御するようにしてもよい。
【0046】
また、
図1に示す自動搬送システム10では、車両1の前輪2のみを搭載部17に搭載可能とした場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば図示は省略するが、車両1の前輪2と後輪3のうち後輪3のみを搭載部17に搭載可能に構成することも可能である。
【0047】
また、以上の説明では、自動搬送車11の駆動部を二個の駆動輪15とした場合を例示したが、もちろんこれには限られない。
図11は、その一例(本発明の第三実施形態)に係る車両の自動搬送システム50の全体構成を示している。
図11に示すように、本実施形態に係る自動搬送システム50は、自動搬送車51の構成において、第一実施形態に係る自動搬送システム10と相違する。すなわち、本実施形態に係る自動搬送車51は、駆動部としての一個の駆動輪15を有すると共に、この駆動輪15と車体前後方向で異なる位置に左右の従動輪52を有する。また、搭載部17との関係でいえば、搭載部17よりも自動搬送車51の車体前方側でかつ幅方向中央に一個の駆動輪15が配設されている。また、搭載部17よりも自動搬送車51の車体後方側でかつ前輪2の幅方向外側に二個の従動輪52が配設されている。なお、駆動輪15の構成及び駆動輪15を駆動させるための構成については、第一実施形態の場合と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
このように、駆動輪15を一個とし、駆動輪15と車体前後方向で異なる位置に左右の従動輪52を設けることで、駆動輪15を最小限の個数として更なる低コスト化を図りつつも自動搬送車51の姿勢、特に走行時の姿勢を安定化させて、安定的な車両1の搬送を図ることが可能となる。また、左右の従動輪52の間に搭載部17を設けることによって、各従動輪52を車両1の搭載される側の車輪(前輪2)の幅方向外側に配置することができるので、これによっても、車両1が搭載された状態の自動搬送車51の全長を小さくして、搭載及び荷下ろしに必要なスペースを縮小することが可能となる。
【0049】
なお、
図11に示す自動搬送車51において、左右の従動輪52を一個の駆動輪15に対して車体前後方向に近づけて、さらにいえば左右の従動輪52の間に搭載部17が位置するように、左右の従動輪52を配置してもよい。このように従動輪52を配置することで、自動搬送車51の車体前後方向寸法をより小さくすることができるので、例えば荷下ろし後に積み替えヤード内から退避する場合に有利となる。
【0050】
あるいは、図示は省略するが、駆動部を三個又は四個以上の駆動輪15としてもかまわない。同様に、以上の説明では、各駆動輪15を並列配置された左右の車輪20で構成した場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成をとることも可能である。駆動輪15の数によっては、駆動輪15を一個の車輪20で構成してもよい。さらにいえば、駆動部は必ずしも駆動輪15である必要はなく、接地して駆動可能な限りにおいて車輪以外の形状をとることも可能である。
【0051】
また、以上の説明では、動力付与部16として、複数のインホイールモータ22を設けた場合を例示したが、もちろんこれには限られない。駆動輪15に所定の動力(回転駆動力)を付与可能な限りにおいて、任意の構成の駆動源を動力付与部16として自動搬送車11に設けることが可能である。
【0052】
また、以上の説明では、搭載部17よりも自動搬送車11の車体前方側に左右の従動輪27を幅方向に並べて配設した構成(
図1を参照)や、搭載部17よりも自動搬送車51の車体後方側でかつ幅方向外側に左右の従動輪52を配設した構成(
図11を参照)を例示したが、従動輪27の構成は任意である。すなわち、何れも図示は省略するが、自動搬送車11,51は、一個又は三個以上の従動輪27,52を有するものであってもよい。また、自動搬送車11,51の車体前後方向の両側にそれぞれ一又は複数個の従動輪27,52を配設してもよい。あるいは、駆動輪15(駆動部)の形態によっては、従動輪27,52を省略してもよい。また、上述のように、要求される性能に応じて、従動輪27,52の外径寸法を適宜調整してもよい。
【0053】
また、以上の説明では、自動搬送車11,51は、車両1の前輪2又は後輪3のみを搭載可能とした場合を例示したが、本発明は、前輪2と後輪3以外の部分を自動搬送車11と非接触の状態で車両1を搭載する形態には限定されない。必要に応じて、例えば自動搬送車11,51に車両1の一部を上昇させるリフトアップ機構を設ける場合、このリフトアップ機構により車両1の前輪2と後輪3以外の部分を下方から支持して上昇させ得る構成をとることも可能である。もちろん、自動搬送車11,51にリフトダウン機構を設ける場合、このリフトダウン機構により車両1の前輪2と後輪3以外の部分を下方から支持した状態で下降させ得る構成をとることも可能である。また、この場合、リフトアップ機構はリフトダウン機構を兼ねるものであってもよい。
【0054】
なお、以上の説明に係る自動搬送車11,51は、車両1の前輪2又は後輪3を搭載部17に搭載した状態で車両1を自動搬送することを主たる役割とするものであるが、このことが、上記以外の態様で自動搬送車11,15を使用することを必ずしも否定するわけではない。例えば図示は省略するが、自動搬送車11,51が有する自動走行機能を利用して、自動搬送車11,51の車体後方側に、一台又は複数台の車両1を搭載可能なトレーラーを連結し、当該トレーラーを牽引して一台又は複数台の車両1を自動搬送することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 前輪
3 後輪
10,40,50 自動搬送システム
11,11a,11b,51 自動搬送車
12 受信部
13 検知部
14 制御部
15 駆動輪
16 動力付与部
17 搭載部
19 連結部
20 車輪
21 回転軸
22 インホイールモータ
25 ホイール
26 タイヤ
27,52 従動輪
28 支持部
29 輪止め
30 ポール
31 物体検出装置
32 カメラ
33 統括制御部
34,34a,34b 端末制御部
35 ヤード
P1 荷下ろしスペース