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  • 特許-圧縮繊維構造材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】圧縮繊維構造材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B22F3/02 G
B22F3/02 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020187710
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2021075795
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2019204479
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】中山 昇
(72)【発明者】
【氏名】常前 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 琢幹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 崇
(72)【発明者】
【氏名】三村 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】小口 拓也
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-246966(JP,A)
【文献】特開2012-067334(JP,A)
【文献】特開2012-172179(JP,A)
【文献】米国特許第04693721(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103352133(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/062,3/02,3/03,3/17
C22C 1/08,14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の金属繊維を容器に入れる収容工程と、前記収容工程後に常温環境下で前記容器内の前記金属繊維を所定の圧縮方向に圧縮して圧縮繊維構造材を成形する圧縮工程とを備え、
前記圧縮工程では、前記圧縮方向を回転の軸方向として回転する圧縮工具によって前記金属繊維を前記圧縮方向に圧縮することを特徴とする圧縮繊維構造材の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工具は、前記圧縮方向において前記容器内の前記金属繊維の一方側に配置され、
前記圧縮工程は、前記金属繊維の一方の面に前記圧縮工具を押し当てる第1圧縮工程と、前記第1圧縮工程後に前記圧縮方向において前記金属繊維を反転させて前記金属繊維の他方の面に前記圧縮工具を押し当てる第2圧縮工程とを備えることを特徴とする請求項1記載の圧縮繊維構造材の製造方法。
【請求項3】
前記金属繊維は、純チタンまたはチタン合金からなるチタン繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の圧縮繊維構造材の製造方法。
【請求項4】
前記収容工程では、前記金属繊維以外の所定量の粉体または繊維を所定量の前記金属繊維と一緒に前記容器に入れることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の圧縮繊維構造材の製造方法。
【請求項5】
前記圧縮工程後に行われる除去工程を備え、
前記除去工程で、前記粉体または前記繊維を除去することを特徴とする請求項4記載の圧縮繊維構造材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属繊維を圧縮することで成形される圧縮繊維構造材の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
従来、生体親和性繊維を常温圧縮せん断加工して、薄板状の圧縮繊維構造材を成形する圧縮繊維構造材の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の圧縮繊維構造材の製造方法では、生体親和性繊維として、チタン繊維等の金属繊維が用いられている。また、この製造方法では、常温および大気雰囲気中で、平均径が5~50μmでアスペクト比が20~500の生体親和性繊維に圧縮荷重とせん断荷重とを加えることで薄板状の圧縮繊維構造材を製造している。
【0003】
特許文献1に記載の圧縮繊維構造材の製造方法では、平均空孔径が60μm以上100μm以下で空隙率が25%以上50%以下の範囲となる薄板状の圧縮繊維構造材を製造することが可能となっている。すなわち、この圧縮繊維構造材の製造方法では、生体骨に近い機械的特性を持ち、骨芽細胞を増加させやすい薄板状の圧縮繊維構造材を製造することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-78556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の圧縮繊維構造材の製造方法では、平均空孔径が比較的大きく、かつ、空隙率が比較的高い薄板状の圧縮繊維構造材を製造することが可能である。しかしながら、本願発明者の検討によると、特許文献1に記載の圧縮繊維構造材の製造方法では、厚さが1mm未満の薄板状の圧縮繊維構造材を製造することは可能であるが、厚さが1mmを大幅に超える厚みのある立体的な圧縮繊維構造材を製造することはできないことが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、平均空孔径が比較的大きく、かつ、空隙率が比較的高い圧縮繊維構造材であって、厚みのある立体的な圧縮繊維構造材を製造することが可能となる圧縮繊維構造材の製造方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願発明者は圧縮繊維構造材の種々の製造方法を検討した。その結果、本願発明者は、圧縮繊維構造材を製造する際に、容器に収容された金属繊維を常温環境下で所定の圧縮方向に圧縮して圧縮繊維構造材を成形する圧縮工程において、圧縮方向を回転の軸方向として回転する圧縮工具によって金属繊維を圧縮方向に圧縮することで、平均空孔径が比較的大きく、かつ、空隙率が比較的高い圧縮繊維構造材であって、厚みのある立体的な圧縮繊維構造材を製造することが可能であることを知見するに至った。
【0008】
本発明の圧縮繊維構造材の製造方法は、かかる新たな知見に基づくものであり、所定量の金属繊維を容器に入れる収容工程と、収容工程後に常温環境下で容器内の金属繊維を所定の圧縮方向に圧縮して圧縮繊維構造材を成形する圧縮工程とを備え、圧縮工程では、圧縮方向を回転の軸方向として回転する圧縮工具によって金属繊維を圧縮方向に圧縮することを特徴とする。
【0009】
本発明の圧縮繊維構造材の製造方法では、常温環境下で容器内の金属繊維を所定の圧縮方向に圧縮して圧縮繊維構造材を成形する圧縮工程において、圧縮方向を回転の軸方向として回転する圧縮工具によって金属繊維を圧縮方向に圧縮している。そのため、本発明の製造方法では、平均空孔径が比較的大きく、かつ、空隙率が比較的高い圧縮繊維構造材であって、厚みのある立体的な圧縮繊維構造材を製造することが可能になる。
【0010】
本発明において、圧縮工具は、圧縮方向において容器内の金属繊維の一方側に配置され、圧縮工程は、金属繊維の一方の面に圧縮工具を押し当てる第1圧縮工程と、第1圧縮工程後に圧縮方向において金属繊維を反転させて金属繊維の他方の面に圧縮工具を押し当てる第2圧縮工程とを備えることが好ましい。このように構成すると、圧縮工具が、圧縮方向において容器内の金属繊維の一方側に配置されていても、金属繊維の圧縮方向(すなわち、圧縮繊維構造材の厚さ方向)における圧縮繊維構造材の平均空孔径のばらつき、および、金属繊維の圧縮方向における圧縮繊維構造材の空隙率のばらつきを抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、金属繊維は、たとえば、純チタンまたはチタン合金からなるチタン繊維である。この場合には、優れた生体親和性、強度および耐食性を有する圧縮繊維構造材を製造することが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、収容工程では、金属繊維以外の所定量の粉体または繊維を所定量の金属繊維と一緒に容器に入れる。この場合には、異なる材料を組み合わせて、任意の位置に任意の機械的性質を備える圧縮繊維構造材を製造することが可能になる。
【0013】
本発明において、圧縮繊維構造材の製造方法は、圧縮工程後に行われる除去工程を備え、除去工程で、粉体または繊維を除去することが好ましい。このように構成すると、除去工程を行うことで、粉体または繊維の大きさに応じた大きさの空孔を圧縮繊維構造材の中に形成することが可能になる。すなわち、圧縮繊維構造材の中に形成される空孔径を制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の圧縮繊維構造材の製造方法で圧縮繊維構造材を製造すれば、平均空孔径が比較的大きく、かつ、空隙率が比較的高い圧縮繊維構造材であって、厚みのある立体的な圧縮繊維構造材を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は、本発明の実施の形態にかかる圧縮繊維構造材の製造方法で製造される圧縮繊維構造材の平面図であり、(B)は、(A)に示す圧縮繊維構造材の側面図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる圧縮繊維構造材の製造方法で使用される製造装置の構成を説明するための概略図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる圧縮繊維構造材の製造方法で実際に製造された圧縮繊維構造材の機械的特性を示すグラフであり、(A)は、圧縮工程において金属繊維に加える圧縮応力と圧縮繊維構造材の相対密度との関係を示すグラフ、(B)は、圧縮工程において金属繊維に加える圧縮応力と圧縮繊維構造材の縦弾性係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(圧縮繊維構造材の構成、および、圧縮繊維構造材の製造装置の構成)
図1(A)は、本発明の実施の形態にかかる圧縮繊維構造材の製造方法で製造される圧縮繊維構造材1の平面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す圧縮繊維構造材1の側面図である。図2は、本発明の実施の形態にかかる圧縮繊維構造材の製造方法で使用される製造装置3の構成を説明するための概略図である。
【0019】
本形態の圧縮繊維構造材の製造方法で製造される圧縮繊維構造材1は、金属繊維2が焼結されずに圧縮されて形成された構造材である。本形態の金属繊維2は、純チタンまたはチタン合金からなるチタン繊維である。金属繊維2の平均径は、たとえば、5~80μmであり、金属繊維2のアスペクト比は、たとえば、20~500である。圧縮繊維構造材1は、円柱状に形成されている。円柱状に形成される圧縮繊維構造材1の直径dは、たとえば、12mmであり、圧縮繊維構造材1の厚さ(高さ)tは、たとえば、12mmである。
【0020】
圧縮繊維構造材1は、生体骨に近い機械的特性を備えている。より具体的には、圧縮繊維構造材1は、皮質骨に近い機械的特性を備えている。圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は、たとえば、5~50GPaである。圧縮繊維構造材1の空隙率は、たとえば、10%以上50%以下となっており、圧縮繊維構造材1の平均空孔径は、たとえば、60μm以上100μm以下となっている。すなわち、圧縮繊維構造材1の空隙率は、比較的高くなっている。また、圧縮繊維構造材1の平均空孔径は、比較的大きくなっている。本形態では、圧縮繊維構造材1の箇所によって、圧縮繊維構造材1の内部の空隙率に差異がある。
【0021】
圧縮繊維構造材1の製造時には、製造装置3が使用される。製造装置3は、ダイ4と、ダイ4に固定される下パンチ5と、ダイ4に対して昇降する圧縮工具としての上パンチ6と、上パンチ6を回転させながら昇降させるパンチ駆動機構(図示省略)とを備えている。ダイ4は、厚肉の円筒状に形成される上側ダイ7と、上側ダイ7を下側から支持する下側ダイ8とから構成されている。上側ダイ7は、円筒状に形成される上側ダイ7の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。
【0022】
下パンチ5は、円柱状に形成されている。下パンチ5は、下パンチ5の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。下パンチ5の上端部は、上側ダイ7の下端部の内周側に配置されている。下パンチ5の外径は、上側ダイ7の内径よりもわずかに小さくなっている。下パンチ5の上端面は、上下方向に直交する平面となっている。下パンチ5には、金属繊維2を圧縮する際の圧縮力を測定するための圧力センサ(ひずみゲージ)9が取り付けられている。
【0023】
上パンチ6は、段付き円柱状に形成されている。上パンチ6は、上パンチ6の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。上パンチ6は、上側ダイ7の内周側に上側から挿入可能となっている。上パンチ6の下端部の外径は、下パンチ5の外径と等しくなっている。上パンチ6の下端面は、上下方向に直交する平面となっている。上パンチ6は、上下方向を回転の軸方向として回転可能となっている。パンチ駆動機構は、たとえば、上下方向を回転の軸方向として上パンチ6を回転させる回転機構と、回転機構と一緒に上パンチ6を昇降させる昇降機構とを備えている。
【0024】
圧縮繊維構造材1を製造する際には、所定量の金属繊維2を上側ダイ7の内周側に上側から入れて下パンチ5の上面に載置した後、上パンチ6を上側ダイ7の内周側に上側から挿入する。すなわち、下パンチ5は、金属繊維2の下側に配置され、上パンチ6は、金属繊維2の上側に配置されている。本形態では、下パンチ5と上側ダイ7とによって、所定量の金属繊維2が収容される容器10が構成されている。
【0025】
(圧縮繊維構造材の製造方法)
圧縮繊維構造材1は、所定量の金属繊維2を容器10に入れる収容工程と、収容工程後に常温環境下で容器10の中の金属繊維2を所定の圧縮方向に圧縮して圧縮繊維構造材1を成形する圧縮工程とを備える製造方法によって製造される。本形態では、圧縮工程において、容器10の中の金属繊維2を上下方向(鉛直方向)に圧縮する。すなわち、本形態の上下方向は、圧縮方向である。
【0026】
収容工程および圧縮工程は、常温環境下で行われる。また、収容工程および圧縮工程は、大気雰囲気中で行われる。本明細書において、「常温」とは、積極的に加熱しないという意味であり、20℃~100℃程度の範囲を包含する意味で「常温」の文言を使用しているが、通常、常温は、20℃~80℃程度である。また、本明細書において、「大気雰囲気」とは、コントロールされていない雰囲気の意味であり、加圧も減圧もされていない空気雰囲気のことであるが、同様の雰囲気であれば、加圧や減圧を行っている空気雰囲気等も、大気雰囲気に含まれる。
【0027】
収容工程では、所定量の金属繊維2を上側ダイ7の内周側に入れて下パンチ5の上面に載置する。圧縮工程では、上下方向を回転の軸方向として回転する上パンチ6によって金属繊維2を上下方向に圧縮する。すなわち、圧縮工程では、上パンチ6を回転させながら下側に移動させて容器10の中の金属繊維2を下パンチ5と上パンチ6とによって円柱状に圧縮する。圧縮工程では、上パンチ6が上下方向を回転の軸方向として回転しているため、金属繊維2の内部に、圧縮力に加えてせん断力が作用する。圧縮工程が終了すると、圧縮繊維構造材1が形成される。
【0028】
本形態の圧縮工程では、まず、金属繊維2の一方の面(具体的には、収容工程で容器10に収容されたときの金属繊維2の上面)に上パンチ6を押し当てる第1圧縮工程を行う。また、圧縮工程では、第1圧縮工程後に、上パンチ6を上側に移動させてから、金属繊維2を上側ダイ7の内周側から抜き取るとともに、抜き取った金属繊維2を上下方向において反転させて上側ダイ7の内周側に挿入し、金属繊維2の他方の面(具体的には、収容工程で容器10に収容されたときの金属繊維2の下面)に上パンチ6を押し当てる第2圧縮工程を行う。
【0029】
すなわち、本形態の圧縮工程は、第1圧縮工程と第2圧縮工程とを備えている。第1圧縮工程および第2圧縮工程では、たとえば、50~200rpmで上パンチ6を回転させる。また、第1圧縮工程および第2圧縮工程では、たとえば、1~10kNの押圧力で上パンチ6を金属繊維2に押し付ける。すなわち、第1圧縮工程および第2圧縮工程では、たとえば、1~10kNの圧縮力で金属繊維2を圧縮する。また、第1圧縮工程および第2圧縮工程は、たとえば、1~60秒間行われる。上パンチ6の押圧力は、圧力センサ9の測定値に基づいて設定される。
【0030】
上述のように、本形態では、圧縮繊維構造材1の箇所によって、圧縮繊維構造材1の内部の空隙率に差異がある。具体的には、圧縮繊維構造材1の内部の空隙率は、圧縮繊維構造材1の上端面から下端面に向かうにしたがって、次第に高くなっている。すなわち、回転運動を行う上パンチ6が接触する圧縮繊維構造材1の上端面から距離が離れる程、圧縮繊維構造材1の内部の空隙率が高くなっている。このように、本形態では、圧縮繊維構造材1の内部の空隙率に差異があり、その特性により圧縮繊維構造材1は何らかの機能を持った機能性傾斜材となっている。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、常温環境下で容器10の中の金属繊維2を圧縮して圧縮繊維構造材1を成形する圧縮工程において、上下方向を回転の軸方向として回転する上パンチ6によって金属繊維2を上下方向に圧縮している。そのため、本形態の製造方法では、平均空孔径が比較的大きく、かつ、空隙率が比較的高い圧縮繊維構造材1であって、厚みのある立体的な圧縮繊維構造材1を製造することが可能になる。
【0032】
本形態では、圧縮工程において、金属繊維2の一方の面に上パンチ6を押し当てる第1圧縮工程と、第1圧縮工程後に金属繊維2を上下反転させて金属繊維2の他方の面に上パンチ6を押し当てる第2圧縮工程とを行っている。そのため、本形態では、回転する上パンチ6が金属繊維2の上側のみに配置されていても、上下方向(すなわち、圧縮繊維構造材1の厚さ方向)における圧縮繊維構造材1の平均空孔径のばらつき、および、圧縮繊維構造材1の厚さ方向における圧縮繊維構造材1の空隙率のばらつきを抑制することが可能になる。
【0033】
本形態では、金属繊維2は、純チタンまたはチタン合金からなるチタン繊維である。そのため、本形態では、優れた生体親和性、強度および耐食性を有する圧縮繊維構造材1を製造することが可能になる。
【0034】
(実施例)
図3は、本発明の実施の形態にかかる圧縮繊維構造材の製造方法で実際に製造された圧縮繊維構造材1の機械的特性を示すグラフであり、(A)は、圧縮工程において金属繊維2に加える圧縮応力と圧縮繊維構造材1の相対密度との関係を示すグラフ、(B)は、圧縮工程において金属繊維2に加える圧縮応力と圧縮繊維構造材1の縦弾性係数との関係を示すグラフである。
【0035】
上述した圧縮繊維構造材の製造方法で圧縮繊維構造材1を実際に製造すると、図3に示す機械的特性を有する圧縮繊維構造材1が製造された。この実施例では、チタン繊維である金属繊維2を3g使用して、圧縮繊維構造材1を製造した。金属繊維2は、株式会社日工テクノ製のチタン繊維であり、金属繊維2の平均径は、20μmまたは80μmである。また、金属繊維2の長さは、10mmである。また、この実施例では、圧縮工程において、内径が12mmとなっている上側ダイ7を使用した。また、この実施例では、圧縮工程において、上パンチ6の回転数を74rpmとして、第1圧縮工程と第2圧縮工程とを1回ずつ行った。
【0036】
また、この実施例では、まず、平均径が20μmの金属繊維2を用い、第1圧縮工程および第2圧縮工程のそれぞれにおいて、44.2MPa、66.3MPa、88.4MPa、132.6MPa、176.8MPaの圧縮応力を10秒間、金属繊維2に加えた。また、この実施例では、平均径が20μmの金属繊維2を用い、第1圧縮工程および第2圧縮工程のそれぞれにおいて、66.3MPaの圧縮応力を60秒間、金属繊維2に加えた。さらに、この実施例では、平均径が80μmの金属繊維2を用い、第1圧縮工程および第2圧縮工程のそれぞれにおいて、66.3MPaの圧縮応力を10秒間、金属繊維2に加えた。
【0037】
この実施例で製造された圧縮繊維構造材1の相対密度(圧縮繊維構造材1の体積と質量から算出される圧縮繊維構造材1の密度をチタンの密度で除した値)は、図3(A)に示すように変動した。また、この実施例で製造された圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は、図3(B)に示すように変動した。図3において、白抜きの丸は、平均径が20μmの金属繊維2を用い、第1圧縮工程および第2圧縮工程において、10秒間、金属繊維2に圧縮応力を加えたときの圧縮繊維構造材1の相対密度や縦弾性係数を示し、黒塗りの丸は、平均径が20μmの金属繊維2を用い、第1圧縮工程および第2圧縮工程において、60秒間、金属繊維2に圧縮応力を加えたときの圧縮繊維構造材1の相対密度や縦弾性係数を示し、黒塗りの三角は、平均径が80μmの金属繊維2を用い、第1圧縮工程および第2圧縮工程において、10秒間、金属繊維2に圧縮応力を加えたときの圧縮繊維構造材1の相対密度や縦弾性係数を示している。
【0038】
この実施例では、相対密度が約0.5~約0.9となっている圧縮繊維構造材1が製造された。また、圧縮繊維構造材1の相対密度が約0.5~約0.9となっているため、この実施例では、空隙率が10~50%となっている圧縮繊維構造材1が製造されたことがわかる。
【0039】
また、この実施例では、金属繊維2に加える圧縮応力が44.2MPaのときに、圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約10GPaとなり、金属繊維2に加える圧縮応力が88.4MPaのときに、圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約17GPaとなり、金属繊維2に加える圧縮応力が132.6MPaのときに、圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約22GPaとなり、金属繊維2に加える圧縮応力が176.8MPaのときに、圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約45GPaとなった。
【0040】
また、この実施例では、金属繊維2に加える圧縮応力が66.3MPaの場合には、金属繊維2の平均径が20μmで、第1圧縮工程および第2圧縮工程において、10秒間、金属繊維2に圧縮応力を加えたときの圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約14GPaとなり、金属繊維2の平均径が20μmで、第1圧縮工程および第2圧縮工程において、60秒間、金属繊維2に圧縮応力を加えたときの圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約16GPaとなり、金属繊維2の平均径が80μmで、第1圧縮工程および第2圧縮工程において、10秒間、金属繊維2に圧縮応力を加えたときの圧縮繊維構造材1の縦弾性係数は約12GPaとなった。
【0041】
すなわち、この実施例では、縦弾性係数が約10~約45GPaとなっている圧縮繊維構造材1が製造された。皮質骨の縦弾性係数は、10~30GPaとなっている。そのため、この実施例から、第1圧縮工程および第2圧縮工程において金属繊維2に加える圧縮応力を44~133MPaとすれば、製造された圧縮繊維構造材1の縦弾性係数を皮質骨の縦弾性係数と同程度にすることができることがわかった。なお、この実施例では、JISH7902「ポーラス金属の圧縮試験方法」に基づいた圧縮繊維構造材1の圧縮試験を行って、圧縮繊維構造材1の応力-ひずみ曲線を求めた後、圧縮繊維構造材1の応力-ひずみ曲線から圧縮繊維構造材1の縦弾性係数を算出した。
【0042】
(他の実施の形態)
上述した形態において、収容工程で、金属繊維2以外の所定量の粉体または繊維を所定量の金属繊維2と一緒に容器10に入れても良い。たとえば、収容工程で、所定量の純銅または銅合金の粉体、あるいは、所定量の純銅または銅合金の繊維を金属繊維2と一緒に容器10に入れても良い。この場合には、異なる材料を組み合わせて、任意の位置に任意の機械的性質を備える圧縮繊維構造材1を製造することが可能になる。
【0043】
また、上述した形態において、収容工程で、所定量の樹脂の粉体を所定量の金属繊維2と一緒に容器10に入れても良い。この場合には、たとえば、圧縮工程後に、樹脂の粉体を除去する除去工程が行われる。除去工程では、圧縮工程後の金属繊維2を、樹脂の融点を超える温度であって、かつ、金属繊維2の融点よりも大幅に低い温度で加熱して、金属繊維2を焼結させることなく、樹脂の粉体を溶かして除去する。この場合には、樹脂の粉体の大きさに応じた大きさの空孔を圧縮繊維構造材1の中に形成することが可能になる。すなわち、圧縮繊維構造材1の中に形成される空孔径を制御することが可能になる。
【0044】
また、上述した形態において、収容工程で、金属繊維2とは異なる種類の金属の所定量の粉体または繊維を所定量の金属繊維2と一緒に容器10に入れても良い。この場合には、たとえば、圧縮工程後に、金属の粉体または繊維を除去する除去工程が行われる。この場合であっても、金属の粉体または繊維の大きさに応じた大きさの空孔を圧縮繊維構造材1の中に形成することが可能になる。すなわち、圧縮繊維構造材1の中に形成される空孔径を制御することが可能になる。
【0045】
たとえば、収容工程で、所定量のマグネシウムの粉体を所定量の金属繊維2と一緒に容器10に入れても良い。この場合には、圧縮工程後の除去工程において、圧縮工程後の金属繊維2に含まれるマグネシウムの粉体を水に溶かして除去する。この場合には、マグネシウムの粉体の大きさに応じた大きさの空孔を圧縮繊維構造材1の中に形成することが可能になる。
【0046】
上述した形態において、金属繊維2は、チタン繊維以外のものであっても良い。たとえば、金属繊維2は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム繊維であっても良いし、純銅または銅合金からなる銅繊維であっても良いし、純鉄からなる鉄繊維であっても良い。また、上述した形態において、収容工程で2種類以上の金属繊維2が容器10に収容されても良い。また、上述した形態において、圧縮繊維構造材1の内部の空隙率は、圧縮繊維構造材1の全体において均一になっていても良い。
【0047】
上述した形態において、下パンチ5は、上下方向を回転の軸方向として回転しても良い。すなわち、容器10の中の金属繊維2の上下方向の両側に、回転する上パンチ6と回転する下パンチ5とが配置されていても良い。この場合には、下パンチ5の回転方向は、上パンチ6の回転方向の逆方向となる。また、この場合の下パンチ5は、圧縮工具である。また、上述した形態において、上パンチ6が回転せずに、下パンチ5が回転しても良い。
【0048】
上述した形態において、第2圧縮工程が行われずに第1圧縮工程のみが行われても良い。また、上述した形態では、上下方向が金属繊維2の圧縮方向となっているが、水平方向が金属繊維2の圧縮方向となっていても良いし、上下方向と水平方向とに傾いた方向が金属繊維2の圧縮方向となっていても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 圧縮繊維構造材
2 金属繊維
6 上パンチ(圧縮工具)
10 容器
図1
図2
図3