(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】耐薬品性に優れる積層体およびそれを製造するための転写フイルム
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20240430BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240430BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B44C1/17 A
B32B7/06
B32B27/26
(21)【出願番号】P 2022580741
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035323
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000156042
【氏名又は名称】株式会社麗光
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝也
(72)【発明者】
【氏名】前川 朋也
(72)【発明者】
【氏名】宮地 大介
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-056183(JP,A)
【文献】特開平11-048695(JP,A)
【文献】特開2021-037651(JP,A)
【文献】特開2021-160355(JP,A)
【文献】特開2020-163760(JP,A)
【文献】特開2000-328010(JP,A)
【文献】特開2021-160361(JP,A)
【文献】特開2021-122825(JP,A)
【文献】特開2014-198433(JP,A)
【文献】特開2022-11302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155548(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16- 1/175
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフイルム上に、少なくとも、機能層および接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であ
り、かつ、機能層が、少なくとも、保護層と中間層とからなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする転写フイルム。
a)少なくとも、
アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)
アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)
アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
【請求項2】
プラスチックフイルム上に、少なくとも、機能層および接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であり、かつ、機能層が、保護層、中間層、金属下地層、及び金属薄膜層からなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ金属下地層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上2μm以下であることを特徴とする転写フイルム。
a)少なくとも、アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
【請求項3】
機能層が、少なくとも、保護層と中間層と加飾層とからなる、請求項1に記載の転写フイルム。
【請求項4】
加飾層が、金属下地層、金属薄膜層、着色層および印刷層のうち少なくとも1層からなる請求項3に記載の転写フイルム。
【請求項5】
加飾層が、金属下地層と金属薄膜層とからなる、請求項4に記載の転写フイルム。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の転写フイルムを基材に転写して得られることを特徴とする積層体。
【請求項7】
基材上に、少なくとも、接着層、および機能層が順次形成されている積層体であって、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であ
り、かつ、機能層が、少なくとも、保護層と中間層とからなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする積層体。
a)少なくとも、
アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)
アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)
アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
【請求項8】
基材上に、少なくとも、接着層、および機能層が順次形成されている積層体であって、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であり、かつ、機能層が、保護層、中間層、金属下地層、及び金属薄膜層からなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ金属下地層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上2μm以下であることを特徴とする積層体。
a)少なくとも、アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物ポリイソシアネート化合物とからなる
b)アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
【請求項9】
機能層が、少なくとも、保護層と中間層と加飾層とからなる請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
加飾層が、金属下地層、金属薄膜層、着色層および印刷層のうち少なくとも1層からなる請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
加飾層が、金属下地層と金属薄膜層とからなる、請求項10に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐薬品性に優れる積層体およびそれを得ることができる転写フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックフイルム上に、離型層、機能層(保護層、着色層、印刷層、ハードコート層、反射防止層、金属薄膜層等)、及び接着層が順次形成された転写フイルムを使用し、該転写フイルムの離型層上に形成された上記、機能層、及び接着層(以下、これらの層をまとめて転写層という。)を、転写フイルムの離型層上から被転写物表面に転写加工することで、被転写物表面に転写層が形成され、金属光沢や図柄等の意匠性、ハードコート性、反射防止性等の各種機能が付与された積層体を得る方法が広く一般に使用されている。
そして、該積層体は、家電製品や自動車の部品、雑貨、紙器、ラベル等の各種製品として利用されている。
【0003】
積層体を自動車内外装用途に適用する場合、一般的に耐薬品性、例えば日焼け止め化粧料やガソリンといった試験剤を積層体表面に塗布し、80℃の高温下で10分間静置する耐薬品性試験を実施しても外観に不具合を生じない、といった性能を求められる。また、自動車メーカーは耐薬品性について各社独自の規格を設定しており、それらのいずれにも対応可能な優れた耐薬品性を備えることがより望ましい。
【0004】
特許文献1には、箔バリ(転写部分との近傍における被転写部分の転写層の全部または一部が、転写層と接続したまま基材シートから剥離してしまう現象)の少ない転写シート(転写フイルム)として、基材シート(プラスチックフイルム)上に、離型層、保護層、意匠層(加飾層)、および接着層が順次形成された構成からなり、保護層が、ポリオール化合物とイソシアヌレート変性イソシアネート化合物とからなることを特徴とする転写シートが開示されている。この転写シートは箔バリの発生を少なくすることを目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の転写フイルムを使用して積層体を得る場合、保護層が従来から一般的な、ポリオール化合物とイソシアヌレート変性イソシアネート化合物とからなる為、転写加工時に箔バリの発生が少なく、また、比較的安価に積層体が得られる。しかしながら、特許文献1に記載の転写フイルムを使用して得られた積層体は、保護層が、従来の一般的なポリオール化合物とイソシアヌレート変性イソシアネート化合物とからなるため強靭な層とならず、耐擦傷性などの一定の表面物性を得ることができるものの、該積層体に耐薬品性試験を実施した際に、転写層表面から試験剤が浸透し、転写層全体および基材に膨れや亀裂が生じ、外観が悪くなる問題点があった。特に、この問題点は試験剤に日焼け止め化粧料やガソリンを使用した場合に顕著であった。以上のことから、本発明は上記の問題点のすべてを解決する積層体および、その製造に適した転写フイルムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、転写フイルムの離型層上(転写層側)に特定の組成の熱硬化性樹脂からなる機能層を設けることにより、耐薬品性を向上するとともに、箔バリの発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち上記課題を解決する本発明の転写フイルムおよび積層体には以下の構成を含む。
【0008】
[項1]
プラスチックフイルム上に、少なくとも、機能層および接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であり、かつ、機能層が、少なくとも、保護層と中間層とからなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする転写フイルム。
a)少なくとも、アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
[項2]
プラスチックフイルム上に、少なくとも、機能層および接着層が順次形成されている転写フイルムにおいて、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であり、かつ、機能層が、保護層、中間層、金属下地層、及び金属薄膜層からなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ金属下地層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上2μm以下であることを特徴とする転写フイルム。
a)少なくとも、アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
[項3]
機能層が、少なくとも、保護層と中間層と加飾層とからなる、項1に記載の転写フイルム。
[項4]
加飾層が、金属下地層、金属薄膜層、着色層および印刷層のうち少なくとも1層からなる項3に記載の転写フイルム。
[項5]
加飾層が、金属下地層と金属薄膜層とからなる、項4に記載の転写フイルム。
[項6]
項1から項5に記載の転写フイルムを基材に転写して得られることを特徴とする積層体。
[項7]
基材上に、少なくとも、接着層、および機能層が順次形成されている積層体であって、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であり、かつ、機能層が、少なくとも、保護層と中間層とからなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする積層体。
a)少なくとも、アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
[項8]
基材上に、少なくとも、接着層、および機能層が順次形成されている積層体であって、
少なくとも、機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であり、かつ、機能層が、保護層、中間層、金属下地層、及び金属薄膜層からなり、かつ保護層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ中間層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上5μm以下であり、かつ金属下地層が、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが0.5μm以上2μm以下であることを特徴とする積層体。
a)少なくとも、アクリルポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)アクリルポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)アクリルポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
[項9]
機能層が、少なくとも、保護層と中間層と加飾層とからなる項7に記載の積層体。
[項10]
加飾層が、金属下地層、金属薄膜層、着色層および印刷層のうち少なくとも1層からなる項9に記載の積層体。
[項11]
加飾層が、金属下地層と金属薄膜層とからなる、項10に記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は機能層の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であることを特徴とする。
a)少なくとも、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)ポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
【0010】
機能層を上記の組成とすることで、耐薬品性試験で用いられる種々の成分に対し浸透されにくい転写層が得られる。結果、本発明の積層体は耐薬品性試験後に、転写層全体および基材に、膨れや亀裂の生成といった損傷が発生することによる外観の悪化の発生が少ない。
【0011】
本発明の転写フイルムは上記の組成からなる機能層を備えるため、本発明の転写フイルムを用いて得られる本発明の積層体は耐薬品性試験後の膨潤や著しい亀裂の生成といった損傷が発生することによる外観の悪化が発生しにくい。また、本発明の機能層は転写部と被転写部の境界での破断が容易であり、転写加工時に箔バリが発生しにくい。
従って、本発明の転写フイルムは、本発明の積層体を製造するために最適な転写フイルムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】プラスチックフイルム上に、離型層、保護層、中間層、金属下地層、金属薄膜層および接着層が順次形成されている本発明の転写フイルムの一形態の断面構造の模式図である。
【
図2】基材上に、接着層、金属薄膜層、金属下地層、中間層および保護層が順次形成されている本発明の積層体の一形態の断面構造の模式図である
【
図3】プラスチックフイルム上に、離型層、保護層、中間層および接着層が順次形成されている本発明の転写フイルムの一形態の断面構造の模式図である
【
図4】基材上に、接着層、中間層および保護層が順次形成されている本発明の積層体の一形態の断面構造の模式図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の転写フイルムについて説明する。
【0014】
(プラスチックフイルム)
本発明の転写フイルムに使用するプラスチックフイルムは、一般に転写フイルムに使用するプラスチックフイルムであれば、特に制限すること無く使用でき、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリカーボネートフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリアミドフイルム等、各種従来公知のプラスチックフイルムが使用できる。
【0015】
プラスチックフイルムは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸の何れでもよく、また、帯電防止剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤を含んでいても構わない。プラスチックフイルムの種類は、所望の用途、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0016】
さらに、プラスチックフイルムには、本発明の転写フイルムを意匠性に富んだものとする目的で、プラスチックフイルムの表面(離型層を形成する側の面)に、ヘアライン加工、マット加工、エンボス加工等の凹凸加工が施されていてもよい。
【0017】
本発明の転写フイルムに使用するプラスチックフイルムの厚さは、特に限定されないが、12~250μmであるのが好ましい。プラスチックフイルムの厚さが12μmよりも薄いと、プラスチックフイルム上に離型層等を形成する場合や、本発明の転写フイルムを取り扱う場合に、カールしやすくなるだけでなく、折れシワが発生しやすくなり、取り扱いにくくなるおそれがある為、好ましくない。プラスチックフイルムの厚さが250μmよりも厚いと、いわゆるコシが強くなり、本発明の転写フイルムを使用し転写加工を行なう場合に、被転写物である基材の表面に載置しにくくなる等、取り扱いにくくなる場合がある為、好ましくない。
【0018】
(離型層)
本発明の転写フイルムは離型層が形成されていてもよい。後述の保護層が離型性を満足するものであれば、離型層は形成されなくともよい。離型層は、本発明の転写フイルムを使用して転写加工を行う場合に、本発明の転写フイルムの離型層上から、転写層を剥離させやすくする目的で、プラスチックフイルム上に形成されている層である。また、離型層は、転写加工時に、被転写物表面に転写、形成されず、被転写物からプラスチックフイルムとともに除去される。
【0019】
前記離型層は、樹脂からなる層である。離型層に使用する樹脂は、上記目的を達成することができるものであれば特に制限なく、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等、従来公知の樹脂が使用でき、これらのいずれか1種、または2種以上の混合樹脂としてもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
離型層の厚さは、前記目的を達成することができる範囲で、適宜選択すればよく、0.5~5μmの範囲とすることが好ましい。
また、離型層を形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
(機能層)
本発明の機能層は下記の条件を満たす層の厚さが3μm以上8μm以下となるよう形成される。
a)少なくとも、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる
b)ポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である
c)ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である
【0022】
上記ポリオール化合物としては、特に限定されるものではなく、例えばアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、水酸基含有フッ素系樹脂等を、それぞれ単独で、若しくは複数種類を任意に混合して使用することができる。特に耐薬品性に加え、さらに耐候性も付与する観点からはアクリルポリオール化合物を使用することが最も望ましい。
【0023】
上記イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート化合物や、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)等の脂環式ジイソシアネート化合物等を、それぞれ単独で、若しくは複数種類を任意に混合して使用することができる。上記の条件を満たす樹脂を以下の明細書内では、本発明の特徴である樹脂と表現する。
【0024】
また、機能層には上記の条件を満たさない層が含まれてもよく、その材料としてはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等、従来公知の樹脂が使用でき、これらのいずれか1種、または2種以上の混合樹脂としてもよく、当該層を形成する目的に応じて、適宜選択すればよい。さらにイソシアネート化合物等の硬化剤が含まれていてもよい。
【0025】
上記本発明の特徴である樹脂におけるポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であることが好ましい。20mgKOH/gより小さいと十分な架橋密度が得られず、耐薬品性が悪くなる。また60mgKOH/gより大きいと箔バリが生じやすくなる。また、ポリオールに含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下であることが好ましい、0.5より小さいと十分な架橋密度が得られず、耐薬品性が悪くなる。また3.0より大きくても耐薬品性が悪くなる場合がある。また機能層のうち本発明の特徴である樹脂からなる層の総厚さは3μm以上8μm以下であることが好ましい。3μmより薄いと、耐薬品性試験で試験剤が浸透しやすくなり、外観の悪化を起こしやすくなる。また8μmより厚いと、転写加工を行った際に箔バリが発生しやすくなる。
【0026】
本発明の機能層の構成として、例として以下のような組み合わせが挙げられる。
(離型層)/保護層/中間層/(接着層)、
(離型層)/保護層/着色層/(接着層)、
(離型層)/保護層/中間層/着色層/(接着層)、
(離型層)/保護層/中間層/金属下地層/金属薄膜層/(接着層)、
(離型層)/保護層/中間層/着色層/金属下地層/金属薄膜層/(接着層)
上記の例示では括弧内に示される層は例示された機能層の厚み方向の上下に位置する層を示すものである。もちろんこれ以外の組み合わせであっても所望の目的に応じて、任意の層を適用することができる。これら層のうち任意の組み合わせの層が、本発明の特徴である樹脂からなってよい。例えば、保護層と中間層とが本発明の特徴である樹脂からなる層であり、他の層が本発明の特徴である樹脂でない樹脂からなる組み合わせ、あるいは着色層と金属下地層とが本発明の特徴である特定の樹脂からなる層であり、他の層が、本発明の特徴である樹脂でない樹脂からなる組み合わせであってもよい。任意の組み合わせであっても本発明の特徴である樹脂からなる層の厚さが合計で3μm以上であれば、耐薬品性を得ることができる。
【0027】
(保護層)
本発明の保護層は本発明の転写フイルムの離型性を安定させる目的で転写層側のプラスチックフイルムまたは離型層上に形成される。転写時には、プラスチックフイルムまたは離型層と、保護層との界面で剥離する。その結果、被転写物表面に転写、形成され、得られた積層体の転写層を保護する。
【0028】
保護層には上記機能層で説明した樹脂を使用することができる。さらに、保護層は、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、硬化剤等の各種添加剤を1種類以上添加してもよく、各種添加剤の添加量は、目的に応じて適宜選択すればよい。本発明の特徴である樹脂を保護層として用いる場合、上述の離型層を設けることが、剥離性の観点から望ましい。離型層を設けない場合または離型層のみでは剥離性が安定しない場合、本発明の特徴である樹脂が剥離性の観点から使用できない場合がある。その際は本発明の特徴である樹脂でない離型性の良い樹脂を使用することができる。離型性の良い樹脂は耐薬品性が悪い場合があるが、その際は保護層の厚さを1μm以下となるようにするとともに、後述する中間層等に本発明の特徴である樹脂を使用することで、外観の劣化を実使用上支障ない程度に抑制することができる。
【0029】
保護層の厚さは、前記目的を達成することができる範囲で、適宜選択すればよく、0.5~5μmの範囲とすることが好ましい。
また、保護層を形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0030】
(中間層)
本発明の転写フイルムの中間層は、中間層以外の機能層の耐薬品性を補完する目的で保護層上に形成される層である。すなわち、中間層以外の機能層が本発明の特徴である樹脂からなり、耐薬品性を備える場合には中間層は形成される必要はない。また中間層以外の機能層における本発明の特徴である樹脂からなる層の厚さが不十分である場合、本発明の特徴である樹脂からなる中間層を設けて耐薬品性を得ることができる。上記あるいは下記される保護層、金属下地層、着色層、または印刷層がその目的に照らして、前記の本発明の特徴のある樹脂を使用できない場合には、本発明の特徴である樹脂からなる層の厚さを3μm以上とするために、中間層を形成することが好ましい。
【0031】
中間層には上記機能層で説明した本発明の特徴である樹脂を使用することができる。
さらに、中間層は、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、硬化剤等の各種添加剤を1種類以上添加してもよく、各種添加剤の添加量は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
中間層の厚さは、前記目的を達成することができる範囲で、適宜選択すればよく、0.5~5μmの範囲とすることが好ましい。
また、中間層を形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0033】
(加飾層)
本発明の転写フイルムは、被転写物に意匠性を付与する目的で形成される着色剤を使用した着色層、印刷層および金属薄膜層が形成されていても構わない。
【0034】
(着色層および印刷層)
着色層は、樹脂に顔料あるいは染料を添加して、本発明の転写フイルムの全面あるいは一部の所望の部位に形成した層である。印刷層は同様に着色部を所望の図柄状に形成した層である。着色層および印刷層には上記機能層で説明した樹脂を使用することができる。着色層および印刷層には本発明の特徴である樹脂を用いてもよい。また、着色層および印刷層には本発明の特徴である樹脂を用いることができない場合、本発明の特徴である樹脂からなる中間層を設けることが好ましい。さらに必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、硬化剤等の各種添加剤を1種類以上添加してもよく、各種添加剤の添加量は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
着色層および印刷層の厚さは、所望する着色層および印刷層の効果を得ることができる厚さであればよく、それぞれ0.5~5μmの範囲とすることが好ましく、着色層および印刷層を形成する目的に応じて、適宜選択すればよい。また、着色層および印刷層を形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等、従来公知のコーティング方法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0036】
(金属下地層)
金属下地層は本発明の転写フイルムに後述する金属薄膜層を形成する構成とする際に、保護層、中間層、着色層あるいは印刷層と、金属薄膜層とを密着させる目的で形成される層である。
【0037】
金属下地層には上記機能層で説明した樹脂を使用することができる。
また、金属下地層に本発明の特徴のある樹脂を用いる場合、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)を1.0以上とした樹脂を金属下地層とすることで、金属薄膜層との密着が強くなりより好ましい。また、金属下地層には本発明の特徴である樹脂を用いることができない場合、本発明の特徴である樹脂からなる中間層を設けることが好ましい。必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、硬化剤等の各種添加剤を1種類以上添加してもよく、各種添加剤の添加量は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0038】
金属下地層の厚さは、前記目的を達成することができる範囲で、適宜選択すればよく、0.5~2μmの範囲とすることが好ましい。
また、金属下地層を形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0039】
(金属薄膜層)
前記金属薄膜層は、被転写物に主に金属光沢を付与する目的で形成される層であり、転写加工を行なった場合に、接着層とともに被転写物表面に転写、形成される層である。さらに金属薄膜層に後述の金属化合物を用いることで、金属光沢に加え、あるいは金属光沢に代えて、バリア性や導電性等の特性を付与してもよい。
【0040】
金属薄膜層に使用する金属は、アルミニウム、クロム、錫、金、銀、銅、亜鉛、珪素、ニッケル、インジウム等の従来公知の各種金属または、上記従来公知の金属の酸化物、硫化物、窒化物等の金属化合物を使用することができ、所望の目的により適宜選択すればよい。
また、金属薄膜層は、1層であっても2層以上の複数層としても構わず、金属薄膜層を2層以上の複数層とする場合には、各層に使用する金属は各層間で異なっていてもよく同種であってもよい。
【0041】
金属薄膜層の厚さは、10~200nmの範囲が好ましい。10nmよりも薄いと、本発明の転写フイルムに所望の金属光沢等を付与することができなくなるおそれがある為、好ましくなく、200nmよりも厚いと、金属薄膜層を形成する際の熱や転写加工時の熱によってプラスチックフイルムが変形、変質してしまうおそれがあり、本発明の転写フイルムに所望の金属光沢等を付与することができなくなるおそれがある為、好ましくない。
【0042】
金属薄膜層を形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、化学気相蒸着法(CVD法)等、従来公知の金属薄膜層を形成する方法が使用でき、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0043】
そして、本発明の転写フイルムに、加飾層を形成する場合に、形成する金属薄膜層、着色層、印刷層、金属下地層の種類、形成される順序は、目的に応じて適宜選択すればよい。また、金属薄膜層、着色層、印刷層、金属下地層、及び後述する接着層は、保護層上の全面に形成されていても部分的に形成されていても構わず、形成される位置は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
(接着層)
本発明の転写フイルムに形成されている接着層は、一般に転写フイルムに使用される熱可塑性の樹脂であれば特に制限はなく、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等、従来公知の樹脂が使用でき、これらのいずれか1種、または2種以上の混合樹脂や、これら2種以上の共重合樹脂であってもよく、使用する被転写物に応じて適宜選択すれば良い。また、被転写物に使用する樹脂と相溶性の良い樹脂を使用すれば被転写物との相性もよく好ましい。
【0045】
接着層の厚さは、前記目的を達成することができる範囲で、適宜選択すればよく、0.5~10μmの範囲とすることが好ましい。
また、接着層を形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
本発明の積層体は被転写物である基材上に上記の各層を順次形成して得ることができる。
また、本発明の積層体を得るには本発明の転写フイルムを用いて基材上に各層を形成する方法が最適である。
【0047】
(基材)
基材は所望の目的に応じて、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等、従来公知の材料を用いることができ、これらのいずれか1種、または2種以上の混合樹脂や、これら2種以上の共重合樹脂であってもよい。またこれらの基材は透明であってもよく、着色されていてもよい。
【実施例】
【0048】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1~11・比較例1~8]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~4を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、中間層、および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、熱可塑性アクリル樹脂をバーコート法でコーティングして
厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
アクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を混合しバーコート法でコーティングし中間層を形成した。
この際、アクリルポリオールの水酸基価、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)、および中間層の厚さは表1の通りとした。
(工程4)上記中間層上に、
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムをABS基材上に接着層が基材側となるよう載置し、プラスチックフイルム側からロール転写機を用いて加圧および加熱を行い、転写温度200℃、転写速度50mm/秒で転写加工を行った後、速やかに離型層を含むプラスチックフイルムを剥離し、積層体を得た。
【0050】
[実施例12]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~6を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、中間層、金属下地層、金属薄膜層および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、熱可塑性アクリル樹脂をバーコート法でコーティングして
厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.8となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの中間層を形成した。
(工程4)上記中間層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が2.0となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ1μmの金属下地層を形成した。
(工程5)上記金属下地層上に、
クロムを真空蒸着法で形成し、厚さ50nmのクロム薄膜層を形成した。
(工程6)上記クロム薄膜層上に
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。
【0051】
[実施例13]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~4を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、中間層、および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、熱可塑性アクリル樹脂をバーコート法でコーティングして
厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.8となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ3μmの中間層を形成した。
(工程4)上記中間層上に
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。
【0052】
[実施例14]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~4を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、着色層、および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、熱可塑性アクリル樹脂をバーコート法でコーティングして
厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.8となるよう混合し、さらに黒色顔料を樹脂に対して重量比で10%添加したものをバーコート法でコーティングし、厚さ3μmの着色層を形成した。
(工程4)上記着色層上に
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。
【0053】
[実施例15]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~5を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、金属下地層、金属薄膜層および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、熱可塑性アクリル樹脂をバーコート法でコーティングして
厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が2.0となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ3μmの金属下地層を形成した。
(工程4)上記金属下地層上に、
クロムを真空蒸着法で形成し、厚さ50nmのクロム薄膜層を形成した。
(工程5)上記クロム薄膜層上に
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。
【0054】
[実施例16]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~6を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、着色層、金属下地層、金属薄膜層および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.8となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.8となるよう混合し、さらに黒色顔料を樹脂に対して重量比で10%添加したものをバーコート法でコーティングし、厚さ1μmの着色層を形成した。
(工程4)上記着色層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が2.0となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ1μmの金属下地層を形成した。
(工程5)上記金属下地層上に、
クロムを真空蒸着法で形成し、厚さ50nmのクロム薄膜層を形成した。
(工程6)上記クロム薄膜層上に
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。
【0055】
[比較例7]
[転写フイルムの作成]
以下の工程1~5を順に行い、ポリエチレンテレフタレートフイルム上に、離型層、保護層、金属下地層、金属薄膜層および接着層が順次形成された転写フイルムを得た。
(工程1)厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、熱硬化型アクリルメラミン樹脂をバーコート法でコーティングして厚さ0.5μmの離型層を形成した。
(工程2)上記離型層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.8となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ1μmの保護層を形成した。
(工程3)上記保護層上に、
水酸基価 24mgKOH/gであるアクリルポリオール樹脂とHDI系ポリイソシアネート化合物を、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が2.0となるよう混合しバーコート法でコーティングし、厚さ1μmの金属下地層を形成した。
(工程4)上記金属下地層上に、
クロムを真空蒸着法で形成し、厚さ50nmのクロム薄膜層を形成した。
(工程5)上記金属薄膜層上に
アクリル系樹脂と酢酸ビニル系樹脂との共重合樹脂をバーコート法でコーティングし、厚さ2μmの接着層を形成した。
[積層体の作成]
上記工程を行い、得られた転写フイルムを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。
【0056】
[実施例17~20]
[転写フイルムおよび積層体の作成]
実施例1の工程3におけるポリオール化合物およびポリイソシアネート化合物を表3のように組み合わせた以外は実施例1と同様に積層体を得た。
【0057】
[実施例21~29・比較例8~14]
[転写フイルムの作成]
本発明の機能層(保護層、中間層、着色層、金属下地層、金属薄膜層)について、表3のように組み合わせて積層し、転写フイルムを作成した。なお積層順はプラスチックフイルム/離型層/保護層/中間層/着色層/金属下地層/金属薄膜層/接着層の順である。すなわち、表4に示される本発明の機能層を構成する各層は表の左側から順に形成した。各層の形成方法は実施例1~16に準じ、転写フイルムを作成した。この際、アクリルポリオールの水酸基価、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)、および各層の厚みは表3の通りとした。但し、厚さが0μmと記載される層は当該層を形成していないものである。実施例21~25、比較例8~12および比較例14の保護層は実施例1の工程2(保護層)と同じ熱可塑性アクリル樹脂を使用した。比較例9では中間層として、熱可塑性アクリル樹脂を用い、バーコート法で厚さ1μmの中間層を形成した。さらに。着色層として、熱可塑性アクリル樹脂に、黒色顔料を樹脂に対して重量比で10%添加したものを用い、バーコート法で厚さ6μmの着色層を形成した。表中のAl、Cr、Inはそれぞれアルミニウム、クロム、インジウムを示し、金属薄膜層はいずれも真空蒸着法で、厚さ50nmとなるよう形成した。
[積層体の作成]
上記のように得られた転写フイルムを用いて、実施例1と同様に積層体を得た。
【0058】
[各転写フイルムおよび積層体の評価]
実施例1~29および比較例1~14で得た転写フイルムとそれを用いて得た積層体について、下記の耐薬品性評価および、箔バリ性の評価を行った。結果を表1~3に示す。
[耐薬品性試験(日焼け止め化粧料)]
上記で得られた積層体の表面(保護層面)に対して、縦50mm×横50mmの部分に市販の日焼け止め化粧料0.15gを均一に塗布した。これを55℃の恒温槽内に24時間放置した。積層体を取り出し、洗浄液で日焼け止め化粧料を洗い流した後、日焼け止め化粧料を塗布した部分(試験表面)の状態を目視で観察して、以下の基準で評価した。日焼け止め化粧料は、市販のSPF50のものを使用した。
◎:膨れ、亀裂、変色など外観に変化が無い。
〇:膨れ、亀裂、変色など外観にわずかな変化があるが、実使用上支障ない。
△:膨れ、亀裂、変色など外観に変化がある。
×:膨れ、亀裂、変色など外観に著しい変化がある。
【0059】
[耐薬品性試験(ガソリン)]
以下の3種類の条件で耐薬品試験を実施した。いずれもガソリンはJIS-K-2202に規定される自動車用レギュラーガソリンを使用した。
(1)積層体の表面(保護層側)に対して、25℃の条件下、0.1ml滴下し揮発後5分間経過後のガソリンを滴下した部分(試験表面)外観を評価した。
(2)(1)の試験後、さらにそこから80℃の恒温槽内に静置し、10分間経過した後のガソリンを滴下した部分(試験表面)外観を評価した。
(3)25℃の条件下で浸漬させ、30分経過した後の、試験表面の外観を評価した。
◎:(1)~(3)のいずれの試験でも、膨れ、亀裂、変色など外観に変化が無い。
○:(1)~(3)のいずれかの試験で、膨れ、亀裂、変色など外観にわずかな変化があるが、実使用上支障ない。
△:(1)~(3)のいずれかの試験で、膨れ、亀裂、変色など外観に変化がある。
×:(1)~(3)のいずれかの試験で、膨れ、亀裂、変色など外観に著しい変化がある。
【0060】
[箔バリ性評価]
転写フイルムを用いて積層体を作成する際に、箔バリの発生があるかどうか評価した。
◎:箔バリが生じない。
〇:箔バリがわずかに生じるが、実使用上支障ない。
×:箔バリが生じる。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
以上のように、本発明の転写フイルムによれば、箔バリの発生の少なく、耐薬品性の良い積層体を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 プラスチックフイルム
2 離型層
3 保護層
4 中間層
5 金属下地層
6 金属薄膜層
7 接着層
8 基材
10 転写層
11 転写フイルム
12 積層体
【要約】
【課題】耐薬品性を向上した積層体、及びそれを箔バリの発生を抑制しつつ作成するための転写フイルムを得る。
【解決手段】基材1上に離型層2、保護層3、中間層4、金属下地層5、金属薄膜層6および接着層7が順次形成される転写フイルム11であって、保護層3、中間層4、金属下地層5および金属薄膜層6などを含む機能層10のうち、機能層10の厚さのうち、下記a、bおよびcの条件を満たす厚さが3μm以上8μm以下であることを特徴とする転写フイルム。
a)少なくとも、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とからなる。
b)ポリオール化合物の水酸基価が20mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である。
c)ポリオール化合物に含まれる水酸基の総数に対するポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総数の比率([NCO]/[OH]比)が0.5以上3.0以下である。
【選択図】
図1