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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】氷核活性剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240430BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20240430BHJP
   C09K 3/24 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240430BHJP
   A23L 3/36 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
C09K3/00 Z
C09K5/06 Z
C09K3/24
A61K9/08
A61K47/46
A23L3/36 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023162994
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 修一
(72)【発明者】
【氏名】山田 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】河原 秀久
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055273(JP,A)
【文献】特開平07-203930(JP,A)
【文献】特開平04-299985(JP,A)
【文献】特開2010-059082(JP,A)
【文献】特開2019-006876(JP,A)
【文献】特開平11-054889(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104351282(CN,A)
【文献】米国特許第04601842(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09K 5/06
A23L 3/00- 3/3598
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣を有効量含有する氷核活性剤であって、前記植物破砕物は、チャノキ(Camellia sinensisL.)、又は、イネ(Oryza sativa)の破砕物であって、
前記植物破砕物は、425μm未満の破砕物である、氷核活性剤。
【請求項2】
チャノキ、又は、イネの破砕物は、煎茶、玄米茶、紅茶、又は、稲わらである、請求項1に記載の氷核活性剤。
【請求項3】
氷核形成温度が-2℃から0℃となるように用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の氷核活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷核活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍技術は、近年技術が向上しており、急速冷凍法や、より適切な冷凍温度のコントロールが可能となってきている。
【0003】
水の凍結現象は、氷結晶の形成段階と、氷結晶の成長段階の二段階に分けられ、純水においては、微小氷結晶の形成温度が-40℃~-70℃、その後の成長温度が0℃~-20℃程であり、凍結には過冷却と時間とを要する。そこで、この氷結晶の形成段階を触媒することができる氷核活性物質を加えることにより、より高いマイナスの温度で水が凍結するようになる。
【0004】
このような氷核活性物質としては、例えば、シュードモナス属の細菌、ヨウ化銀等が知られており、ヨウ化銀であれば、氷結晶の形成温度を-2℃~-4℃程度にまで高めることが可能であり、効率的な凍結を実現することができる。
【0005】
しかしながら、既存の氷核活性物質は、生体への安全性の観点から、利用分野が制限され、例えば、食品や医薬品等の生体に適用するような製品においては十分に活用できない状況にある。
【0006】
特許文献1では、シュウ酸カルシウムを有効成分として含む氷核活性剤が提案されており、水和状態によって、氷核活性が高まることが報告されている。しかしながら、シュウ酸カルシウムは、針状の結晶物であり生体に刺激感や損傷を与えるため、利用分野が制限され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-55273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生体に対してより安全性が高く、様々な分野において利用可能な氷核活性物質が求められているが、まだ十分な報告がなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣が氷核活性物質となり得ることを見い出し、これを有効量含有させることで、氷核活性剤を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる氷核活性剤を提供する。
【0011】
項1.
植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣を有効量含有する、氷核活性剤。
【0012】
項2.
前記植物が、チャノキ(Camellia sinensis L.)、イネ(Oryza sativa)、ココヤシ(Cocos nucifera)、ギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)、又は、アメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)である、項1に記載の氷核活性剤。
【0013】
項3.
前記抽出残渣が、煎茶、玄米茶、紅茶、稲わら(もみ殻)、又は、ヤシの果実若しくは葉の抽出残渣である、項1に記載の氷核活性剤。
【0014】
項4.
氷核形成温度が-2℃から0℃となるように用いられることを特徴とする、項1に記載の氷核活性剤。
【発明の効果】
【0015】
食経験の豊富な植物素材を用い、それらの植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣を有効量含有させることで、様々な分野において利用可能な氷核活性剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[氷核活性剤]
本発明の氷核活性剤は、植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣を有効量含有する。
【0017】
本明細書において植物破砕物とは、植物体に裁断や粉砕などの物理的な処理を施して、細かくした(破砕した)ものをいう。
【0018】
破砕物は、例えば、おが粉製造機、裁断装置、破砕機、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼等を用いて植物体を細かく破砕することで得ることができる。
【0019】
破砕された植物体は、必要に応じて篩にかけられ、適宜粒径を調整することが可能である。
【0020】
また、植物体は、破砕の前や後に乾燥されてもよい。植物破砕物の含水率は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0021】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、植物体の水分含量が10%以下、好ましくは5%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃~140℃、好ましくは80℃~130℃にて加温により植物体が変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0022】
植物破砕物に用いる植物体は、植物の葉、枝、樹木、花弁、茎、根、果肉、果皮及び種子等のいずれの部位を用いてもよいが、根を残して繰り返し収穫することの観点から、地表から露出している地上部を用いることが好ましい。
【0023】
用いられる植物としては、人体への安全性が確認されている植物であればよく、食経験のある植物であることが好ましい。植物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
植物の種類は、特に限定されないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば、ツバキ科、イネ科、ヤシ科、アオイ科、マメ科、ブドウ科、セリ科、タデ科等の植物が挙げられ、ツバキ属、イネ属、オオムギ属、ココヤシ属、アブラヤシ属、カカオ属、ラッカセイ属、ブドウ属、シシウド属、ソバ属等の植物が好ましく、チャノキ(Camellia sinensis L.)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ココヤシ(Cocos nucifera)、ギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)、アメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)、カカオ(Theobroma cacao)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ブドウ(Vitis spp.)、アシタバ(Angelica keiskei)、又は、ソバ(Fagopyrum esculentum)がより好ましく、茶葉、茶殻、稲わら、もみ殻、ヤシ殻、ヤシの葉、カカオの皮、ラッカセイの皮、ブドウの皮、アシタバの葉、ソバ殻、オオムギの種子が更に好ましい。
【0025】
本明細書において植物の抽出残渣とは、植物体を溶媒に浸漬して溶媒中に所望の成分を抽出(固-液抽出)した後、当該成分を含む溶媒(抽出液)をろ過等により分離した際に残る残渣をいう。
【0026】
植物の抽出においては、上述のように破砕機等で破砕物を得てから抽出処理に供することも可能である。また、抽出処理においては、必要に応じて、例えば、加熱又は撹拌を行ってもよい。
【0027】
抽出溶媒としては、例えば、水及び/又は有機溶媒(エチルアルコール、油等)が挙げられる。当該溶媒に、必要に応じてキレート剤、酸、アルカリ等の抽出剤を混合して用いることができる。
【0028】
植物の抽出残渣としては、特に限定されないが、例えば、茶葉から得られる茶殻、アブラヤシから得られるヤシ殻、コーヒー豆から得られるコーヒー粕、芋くず、焼酎粕、ブドウの皮、泡盛粕(もろみ粕)等が挙げられる。これらの抽出残渣は、茶、コーヒー飲料、焼酎、ワイン、泡盛等の製造工程において大量に排出される廃棄物であり、これらの再利用を行うことで、環境負荷を低減できる観点から好ましい。
【0029】
茶殻としては、茶葉から得られ、例えば、煎茶、玄米茶、紅茶、ほうじ茶、ウーロン茶等の製造において、例えば、熱水抽出後の茶殻等が挙げられる。
【0030】
ヤシ殻としては、アブラヤシ等の果実(パーム果実ともいう)から油分を抽出した後の残渣が挙げられる。
【0031】
上記以外の植物の抽出残渣であってもよく、例えば、稲わら、カカオの皮、ラッカセイの皮、ブドウの皮、アシタバの葉、ソバ殻、オオムギの種子等に対して、例えば、熱水抽出を行った後の残渣を用いることも可能である。
【0032】
上記植物の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上、110μm以上、120μm以上、130μm以上、140μm以上、150μm以上、160μm以上、170μm以上、180μm以上、190μm以上、200μm以上、210μm以上、220μm以上等が挙げられる。また、上記植物の平均粒子径は、例えば、500μm以下、450μm以下、425μm未満、420μm以下、410μm以下、400μm以下等が挙げられる。また、上記植物の平均粒子径は、例えば、10以上425μm未満、50以上425μm未満、60以上425μm未満、100以上425μm未満、110以上425μm未満、200以上425μm未満、210以上425μm未満、220以上425μm未満、10~420μm、50~420μm、60~420μm、100~420μm、110~420μm、200~420μm、210~420μm、220~420μm、10~210μm、50~210μm、60~210μm、100~210μm、110~210μm、10~110μm、50~210μm、60~210μm等が挙げられる。限定はされないが、本発明の製剤には、上記の平均粒子径の破砕物が含まれていることが好ましい。
【0033】
一つの実施形態において、上記植物の平均粒子径が425μm未満である粒子の含有量が、上記植物全量に対して、例えば、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上とすることができる。
【0034】
別の実施形態において、上記植物の平均粒子径が210以上425μm未満である粒子の含有量が、上記植物全量に対して、例えば、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、36質量%以上とすることができる。
【0035】
本発明の氷核活性剤において、植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣の含有量は、製剤の形態や、他の成分の種類や含有量等により適宜調整され、限定はされないが、例えば、製剤全量に対して、0.000001質量%以上とすることができ、0.000005質量%以上、0.00001質量%以上、0.00005質量%以上、0.0001質量%以上、0.0005質量%以上、0.001質量%以上等が挙げられる。また、植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣の含有量は、例えば、製剤全量に対して、99.999質量%以下とすることができ、99.9質量%以下、99.5質量%以下、99質量%以下、98.5質量%以下、98質量%以下等が挙げられる。別の実施態様において、液状製剤として調製される場合、限定はされないが、植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣の含有量は、例えば、製剤全量に対して、80質量%以下とすることができ、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下等が挙げられる。
【0036】
[用途]
本発明を用いることにより、過冷却を抑制し、氷核形成を促進させることができるため、氷核活性剤として用いることが好適である。本明細書において、氷核活性とは、液体から固体への相転移のし易さを表す指標をいう。氷核活性の活性度が高いほど、0℃に近い温度で凍結させることが可能となる。すなわち、氷核活性の活性度が高いほど、凍結に際して過冷却を抑制し、凍結に至るまでに要するエネルギーを低減することが可能となる。
【0037】
一つの実施態様において、氷核活性剤は、以下の用途に用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
(1)種々の物質の冷凍・凍結保存用途
(2)安全性が求められる食材等の冷凍・凍結用途
(3)冷凍装置、蓄冷装置、保冷装置等における省エネルギーや節電用途
(4)液体の凍結濃縮用途
(5)凍結濃縮を用いた分離方法
(6)より高いマイナスの温度での冷凍用途
(7)アイススラリー(シャーベット等)の製造用途
(8)野菜等の寒締め栽培用途
(9)廃棄物処理や清掃における凍結処理用途
(10)凍結検知(凍結インジケータ等)用途
(11)凍結防止用途
(12)人工降雨、人工降雪等の用途
【0038】
氷核活性の活性度は、公知の方法にて測定することができ限定はされないが、例えば、以下の方法により測定することができる。
【0039】
被検物質を含む所定量のサンプルを試験管(17.5×130m)に入れて、10mlの脱イオン水を添加させ、1本毎に温度センサー(温度取りJr.RTR-502、T&D社)を付けて、10本単位で-20℃の温度に設定した冷凍恒温槽に浸して徐々に温度を下げ、各チューブが何℃で氷核を形成するかを記録する。この方法を本明細書において、以後「試験管法」と呼ぶ。
【0040】
一般的に、氷核形成温度を測定する場合には、微水滴凍結法を用いて、1~2個のサンプルが測定でき、10μLずつの水滴30個のうち、50%が凍結する温度を氷核形成温度とし、同じ操作を3回は実施する。しかしながら、各サンプルの氷核活性を測定することが出来るが、他の温度、つまり、氷結晶が成長する温度や、すべての水が凍結し終わる時間などを測定することができない。
【0041】
本発明においては、被検物質を含むサンプルの試験管法による測定は、10本単位で3回は最低でも実施し、30回の測定結果の平均値を各サンプルの氷核形成温度とした。
【0042】
本発明は、例えば、冷凍装置、蓄冷装置又は保冷装置用として用いることにより、これらの過冷却を抑制し、電力消費を抑えることが可能となる。
【0043】
また、本発明は、例えば、上空に散布する等により、降雪促進又は降雨促進用として用いることも可能である。また、台風やサイクロン等に対して散布する等により、災害防止用として用いることが可能である。
【0044】
また、本発明は、例えば、土壌に対して散布する等により降霜を促し、除草用として用いることも可能である。
【0045】
また、本発明は、例えば、過冷却させた液体に対して作用させ、溶媒の氷核形成を促し、凍結した溶媒を除去することにより、凍結濃縮用として用いることも可能である。
【0046】
また、本発明は、例えば、過冷却を抑制し、適切な温度で対象物を凍結保存するために用いることも可能である。対象物としては、例えば、各種の水性溶液、気体、ヒト、動物、植物、昆虫、魚介類、微生物等の細胞や組織、培養物等の生物資源、揮発性の香味成分が重要な液体やアルコール飲料、野菜、鮮魚等の海鮮、冷凍食品等が挙げられる。
[製剤]
本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形製剤;または液剤、シロップ剤、クリーム、ローション、ペースト、エマルジョン、ゲル、懸濁液などの液状製剤として調製することもできる。固形製剤には、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤には、例えば、溶剤、溶解補助剤、乳化剤、乳化安定剤、増粘剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤などを用いることができる。
【実施例
【0047】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0048】
[試験例1.植物資源における氷核活性物質のスクリーニング]
各種の植物破砕物、及び、抽出残渣を用いて、氷核形成温度の評価を行った。試験に用いた各サンプルは以下に従って調製した。
【0049】
(各種の植物破砕物の調製1)
市販で購入した煎茶、玄米茶、又は、紅茶は、完全に乾燥させるために、ドライフードメーカー(アピックス社 AFD-550-WH)を用いて、クッキングシートを載せて、10時間で乾燥させた。乾燥後、マジックブレッドデラックス(コンパクトミキサー)を用いて、細かく粉砕化し、破砕物とした。以下においても、コンパクトミキサーを用いた粉砕処理は、各植物体で同等の条件で行った。
【0050】
(各種の植物破砕物の調製2)
市販で購入した稲わら、ヤシ殻、又は、おがくずは、そのままマジックブレッドデラックス(コンパクトミキサー)を用いて、細かく粉砕化し、破砕物とした。
【0051】
(各種の植物抽出残渣の調製1)
熱水抽出後の煎茶、玄米茶、又は、紅茶の植物抽出残渣は、ドライフードメーカー(アピックス社 AFD-550-WH)を用いて、クッキングシートを載せて、10時間で乾燥させた。乾燥後、マジックブレッドデラックス(コンパクトミキサー)を用いて、細かく粉砕化し、破砕物とした。
【0052】
(各種の植物抽出残渣の調製2)
熱水抽出した稲わら、ヤシ殻、又は、おがくずは、完全に乾燥させるために、ドライフードメーカー(アピックス社 AFD-550-WH)を用いて、クッキングシートを載せて、10時間で乾燥させた。乾燥後、マジックブレッドデラックス(コンパクトミキサー)を用いて、細かく粉砕化し、破砕物とした。
【0053】
具体的な試験方法は以下の通りである。
乾燥した被検物質を含む所定量のサンプル5mgを試験管(17.5×130m)に入れて、10mlの脱イオン水を添加させ、1本毎に温度センサー(温度取りJr.RTR-502、T&D社)10本単位で-20℃の温度に設定した冷凍恒温槽に浸して徐々に温度を下げ、各チューブが何℃で氷核を形成するかを記録した。
結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示される通り、チャノキ、及び、イネに由来する植物破砕物、並びに、チャノキ、イネ、及び、ヤシに由来する抽出残渣を用いたサンプルでは、マイナス2℃を超える氷核形成温度が確認された。従来技術では、マイナス2℃を超える氷核形成温度を示した報告が少なく、特に生体に対して安全性が高い植物体にて極めて高い氷核活性が認められたことは予想外の結果であった。
【0056】
[参考試験例.氷核活性要因の検討]
上記試験例1において、実施例5と比較例2とのサンプルを比較すると、同じヤシ殻に由来するサンプルであるにも関わらず、氷核形成温度には大きく違いが生じた。特許文献1においては、シュウ酸カルシウムの影響が報告されているため、実施例5と比較例2とのサンプルにおけるシュウ酸含量を測定した。
【0057】
具体的な試験方法は以下の通りである。
シュウ酸の定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により次の条件で行った。定量用の標準物質にはシュウ酸(関東化学(株)製)を用いた。
装置:LC-20AD(島津製作所社製)
カラム:Shodex RSpak KC-811x2(8.0mm I.D.×300mm,昭和電工社製)
溶離液:0.5w/v%りん酸
流速:1.0mL/min
カラム温度:30℃
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD-20AV(昭和電工社製)
結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
試験例1において、極めて高い氷核形成温度を示した一つの要因として、シュウ酸による影響を想定したが、参考試験例にて示された通り、実施例5及び比較例2の両サンプルでは、高速液体クロマトグラフ法でのシュウ酸含量は検出限界以下であり、シュウ酸のみが要因ではないことが確認された。
【0060】
未だ、試験例1の各実施例のサンプルにおいて極めて高い氷核形成温度を示した要因は明らかではないが、推測されるメカニズムとしては、以下が考えられる。氷核形成には、疎水性、電荷バランス、被験物質の粉体の粒形等が関与しており、試験例1の各実施例のサンプルでは疎水度が高く、表面電荷が水の等電点に近い素材であることが影響したものと推測される。
【0061】
[試験例2.植物の抽出残渣の平均粒子径が氷核活性に与える影響の検討]
上記の推測されるメカニズムのうち、平均粒子径が氷核活性に与える影響を確認した。上述の試験例1において、各植物体の破砕物も抽出残渣も破砕条件は同等であるため、一例として玄米茶の破砕物の平均粒子径と、粒子径分布毎の氷核形成温度を測定した。氷核形成温度の測定は、試験例1と同様である。
平均粒子径の具体的な測定方法は以下の通りである。
試験例1において調製した破砕物又は抽出残渣に関して、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960、株式会社堀場製作所製)を用い、体積基準の算術平均径を測定し、その測定結果を平均粒子径とした。結果を表3に示す
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示す通り、粒子径分布毎に氷核形成温度に違いがあり、平均粒子径が一定以下である場合に、氷核形成温度が高くなり氷核活性が向上することが見出された。一つの実施形態であり、限定はされないが、本発明の製剤は、例えば、平均粒子径が425μm未満の破砕物が含まれていることが好ましく、平均粒子径が210以上425μm未満の破砕物が含まれていることがより好ましい。
【要約】
【課題】
生体に対してより安全性が高く、様々な分野において利用可能な氷核活性物質が求められているが、まだ十分な報告がなされていない。
【解決手段】
植物破砕物、及び/又は、その抽出残渣を有効量含有する、氷核活性剤を調製する。
【選択図】なし