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  • 特許-ヘアカラー剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ヘアカラー剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20240430BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240430BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/19
A61K8/44
A61K8/49
A61Q5/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017140409
(22)【出願日】2017-07-19
(65)【公開番号】P2019019098
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-05-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】赤澤 高之
【審判官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-88502号公報
【文献】特開2012-246229号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q5/00-12
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性染料と、HC染料と、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有し、かつ、パラフェニレンジアミンを含有しないヘアカラー剤組成物であって、前記アミノ酸は、L-アルギニン、L-リシン、又はそれらの塩類であり、前記アミノ酸の量は、組成物の合計量に対して、0.01~0.5質量%であり、前記増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロースであり、前記pH調整剤は、炭酸水素アンモニウムであり、前記pH調整剤の量は、組成物の合計量に対して、0.7~1質量%であり、前記湿潤剤は、グリセリンであり、かつ、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8~7.5であるヘアカラー剤組成物。
【請求項2】
前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57),塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項3】
前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項4】
前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンである請求項1~3のいずれか1項に記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項5】
前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムである請求項4記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項6】
前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンである請求項4記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のヘアカラー剤組成物を含むヘアカラ―剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカラー剤組成物に関し、特に、皮膚障害を低減可能なヘアカラー剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ;(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤;並びに、(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平11-501947
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1も含め、従来技術においては、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている以外に、近年、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因で皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
そこで、本発明は、パラフェニレンジアミンフリーで、皮膚障害を低減可能なヘアカラー剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラートリートメントについて鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0009】
すなわち、本発明のヘアカラー剤組成物は、塩基性染料と、HC染料と、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有し、かつ、パラフェニレンジアミンを含有しないヘアカラー剤組成物であって、前記アミノ酸は、L-アルギニン、L-リシン、又はそれらの塩類であり、前記アミノ酸の量は、組成物の合計量に対して、0.01~0.5質量%であり、前記増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロースであり、前記pH調整剤は、炭酸水素アンモニウムであり、前記pH調整剤の量は、組成物の合計量に対して、0.7~1質量%であり、前記湿潤剤は、グリセリンであり、かつ、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8~7.5であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57),塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のヘアカラー剤は、本発明のヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヘアカラー剤組成物によれば、パラフェニレンジアミンを含まず、かぶれで困っている方や接触性皮膚炎を心配される方などに適し、かつ高齢化でヘアカラーの使用期間が長くなる可能性を秘めているため安心して使える色持ちの良く、また施術する側でも安心して頭皮への付着を気にせず新生部まで塗布出来るヘアカラー製品を提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施態様によるヘアカラー剤を適用した場合の色落ち具合を示す図である。毛髪の毛束は、株式会社ビューラックス製の黒髪と白髪の比率が50%(品番:BM2-M-50)(15cm X 2g)を用いた。図1(a)は未処理の毛束、(b)は洗髪1回、(c)は洗髪5回、(d)は洗髪10回、(e)は洗髪20回、(f)は洗髪30回の毛束を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のヘアカラー剤組成物は、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8以上であることを特徴とする。本発明のヘアカラー剤組成物においては、pH6.8以上にすることによって、キューティクルを開き易くすることが判明し、同時にL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、またその塩類といった塩基性アミノ酸を毛髪内部に送り込み、痛みで流出した塩基性アミノ酸を補って補修しながらカラートリートメント出来る製品であることが分かった。すなわち、ヘアカラートリートメント等では、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあったが、本発明のヘアカラ―剤組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、ひいては、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0021】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、キューティクルを開き易くしpHを6.8以上に調整するという観点から、前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を挙げることができる。弱アルカリ性で毛髪への残留が少ないという観点から、好ましくは、前記pH調整剤としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0022】
キューティクルを効率よく開き、色もちを良好に発揮し得るという観点から、本発明のヘアカラー剤組成物のpH値としては、好ましくは、6.8以上、より好ましくは、7.0~9.0、さらに好ましくは、pH7.3~8.0に調整することができる。
【0023】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0024】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57),塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、染色力は強くないが毛髪へのダメージが少ないという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは、0.1~1質量%とすることができる。
【0025】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記HC染料の量としては、特に限定されないが、HC染料は毛髪内を染色するため、より深みのある発色を呈するという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%とすることができる。
【0026】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、毛髪に与える感触をさらに向上させるという観点から、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。また、前記カチオン界面活性剤の量としては、特に限定されないが、塩基性染料の毛髪染着力の向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%とすることができる。
【0027】
その他、本発明のヘアカラー剤組成物には、増粘剤、湿潤剤、油剤等を含むことができる。本発明においては、これら増粘剤等について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。増粘剤としては、製品の安定性という観点から、例えばヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポリエチレングリコール等を挙げることが出来る。また、前記増粘剤の量としては、特に限定されないが、製品の安定性向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%、さらに好ましくは0.2~0.4質量%とすることができる。
【0028】
また、湿潤剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコールを挙げることが出来る。また、前記湿潤剤の量としては、特に限定されないが、製品の塗布のしやすさという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%とすることができる。
【0029】
また、油剤としては、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等を挙げることができる。また、前記油剤の量としては、特に限定されないが、塗布放置時間の乾燥を防ぐとともに製品の安定性という観点から、好ましくは、1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0030】
また、本発明のヘアカラー剤は、本発明のヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。所望により、又はヘアカラー剤の用途によって、ヘアカラー剤に適宜本発明のヘアカラー剤組成物を含めることができる。
【実施例
【0031】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0032】
実施例1~2
アルカリ剤(pH調整剤)に関しては、弱アルカリ性で皮膚刺激が起きにくいという観点から、本実施例においては、炭酸水素アンモニウムを一例として、試験を行った。
【0033】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン,L-リシン,L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷すると流出することが知られており、塩基性アミノ酸およびその塩類を0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0034】
表1は本発明の一実施態様における一例のヘアカラー剤組成物の成分を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
調整方法は以下の通りである。
【0037】
調整方法:
1.表1の水相を75~77℃まで撹拌しながら加温する。
2.表1の油相を77~79℃まで加熱しながら撹拌し、均一にする。
3.75~77℃までに加熱した水相に色素を加えて均一にし、前記油相を加えて乳化し、均一になるまで撹拌する。
4.内容物をゆっくりと冷却し、43℃以下になったら防腐剤および清涼成分、消炎成分、アミノ酸群を加えて均一になるまで撹拌し、32℃以下になるまで冷却する。
【0038】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-52((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9611((株)堀場製作所)
【0039】
また、表2は、用いた各成分の詳細を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
また、実際に本発明のヘアカラー剤組成物を含むヘアカラ―剤を調整して、毛束に色落ち試験をおこなった。結果を、図1に示す。図1は、本発明の一実施態様によるヘアカラー剤を適用した場合の色落ち具合を示す図である。毛髪の毛束は、株式会社ビューラックス製の黒髪と白髪の比率が50%(品番:BM2-M-50)(15cm X 2g)を用いた。図1(a)は未処理の毛束、(b)は洗髪1回、(c)は洗髪5回、(d)は洗髪10回、(e)は洗髪20回、(f)は洗髪30回の毛束を、それぞれ示す。この結果、本発明のヘアカラー剤は、色落ちに極めて優れていることが判明した。
【0042】
従来、パラフェニレンジアミンを含まない「ヘアカラートリートメント」を塗布し放置すると、このカラートリートメントのベースカラ―は、酸化染料に比べて安全性が高いとされている塩基性染料およびHC染料であるが、毛髪に染着するために染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすいという欠点かあった。しかしながら、以上の結果から、ベースカラ―が浸透しやすくなるばかりではなく、酸性染料を含まないために頭皮への付着を気にせず新生部から毛先まで塗布できることが判明した。
【0043】
このように、本発明においては、毛髪染料を行う上で、従来のヘアカラー及びヘアマニキュアと比較し、1)染色を繰り返すことで毛髪が傷んでいる方は毛髪強度が低下し、弾力が無くなり、毛髪が細化する(ヘアカラー)、2)頭皮のかぶれが発生しているとかぶれ部分が染色してかなり取れにくい(ヘアマニキュア)といった上記1)及び2)の問題が無く、より色持ちと浸透染着力が良い毛髪化粧料を提供することが判明した。すなわち、本発明においては、色持ち以外に、安全性も備わっていることも判明した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によると、色もちがよくなかったヘアカラー処理に対して、色もちを改善することが可能であり、広範囲において、産業上利用価値が高い。
図1