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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】成形品搬送モジュール
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/08 20060101AFI20240430BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20240430BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20240430BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240430BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20240430BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20240430BHJP
【FI】
B30B11/08 Z
B30B11/08 B
B30B15/00 B
B65G47/86 G
G01B11/24 K
G01N21/3563
G01N21/359
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018045634
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019155423
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000141543
【氏名又は名称】株式会社菊水製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-47687(JP,A)
【文献】特開2014-106084(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132281(WO,A1)
【文献】特開2016-55340(JP,A)
【文献】特開2011-95133(JP,A)
【文献】特開2005-289584(JP,A)
【文献】特開平10-263896(JP,A)
【文献】特開2017-104902(JP,A)
【文献】特開2011-156576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - 21/85
G01B 11/00 - 11/28
B30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式粉体圧縮成形機に連結して同成形機とともに稼働し、同成形機により粉体を圧縮して成形された成形品を当該成形機から順次取り出して搬送する成形品搬送モジュールであって、当該成形品搬送モジュール内に、
前記成形品を捕捉する捕捉部を有し、前記回転式粉体圧縮成形機の回転盤と同期して運動し前記捕捉部を変位させる運動を通じて成形品を移送する移送体と、
前記移送体の捕捉部に捕捉されて移送される成形品で反射した光若しくは電磁波又は同成形品を透過した光若しくは電磁波を受光するセンサを介して当該成形品の密度を計測する密度計測装置と、
前記移送体の捕捉部に捕捉されて移送される前記成形品で反射した光若しくは電磁波を受光するセンサを介して当該成形品の体積を計測する体積計測装置と、
成形品の搬送の終端位置よりも上流に設けられ、前記密度計測装置により計測した密度及び前記体積計測装置により計測した体積に基づいて知得される重量が異常である不良の成形品を、終端位置に到達する前に排除する排除装置とを具備し、
前記回転式粉体圧縮成形機に当該成形品搬送モジュールが連結され、それら両者が連結している成形品受け渡し位置で成形品を回転式粉体圧縮成形機から順次取り出し、そうして取り出した複数個の成形品をその順番を維持したまま前記移送体により搬送するものであり、
その連結された当該成形品搬送モジュール内に前記密度計測装置、前記体積計測装置及び前記排除装置をおしなべて配設し、前記複数個の成形品をその順番を維持したまま順次検査し、なおかつ、当該成形品搬送モジュールによる成形品の搬送の終端位置の手前で重量が異常である不良の成形品を排除装置により排除するものとし、
前記移送体を一個有する一つの搬送装置における、当該一個の移送体が前記成形品を捕捉して移送する経路の中途に、前記密度計測装置と前記体積計測装置との両方を備えており、
前記密度計測装置は品質検査装置を兼ねており、当該品質検査装置により前記成形品に含有される成分に関する品質に関する検査を実行でき、
前記体積計測装置は形状検査装置を兼ねており、当該形状検査装置により前記成形品の表面形状に関する検査を実行でき、
一つの前記搬送装置内で前記密度計測装置及び前記体積計測装置の機能を用いて前記成形品の重量を測定できる成形品搬送モジュール。
【請求項2】
前記密度計測装置の要素である前記センサが、前記成形品で反射した近赤外光又は同成形品を透過した近赤外光を受光する請求項1記載の成形品搬送モジュール。
【請求項3】
前記密度計測装置が、近赤外分光分析により前記成形品の密度を計測する請求項2記載の成形品搬送モジュール。
【請求項4】
前記体積計測装置の要素である前記センサが、前記成形品で反射した近赤外光を受光する請求項1、2又は3記載の成形品搬送モジュール。
【請求項5】
前記体積計測装置が、光切断法により前記成形品の外面の形状及び位置を検出することを通じて当該成形品の体積を計測する請求項1、2、3又は4記載の成形品搬送モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された成形品を搬送しながら光学的な検査を実施することのできるモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
回転盤のテーブルに臼孔を設けるとともに、各臼孔の上下に上杵及び下杵をそれぞれ摺動可能に保持させておき、テーブル及び杵をともに水平回転させて、上杵及び下杵の対が上ロール及び下ロールの間を通過するときに臼孔内に充填された粉体を圧縮成形(又は、打錠)する回転式の粉体圧縮成形機が公知である。この種の粉体圧縮成形機は、医薬品の錠剤や食品、電子部品等を製造するために利用される。
【0003】
成形品に対しては、その外面の異常の有無の検査、含有成分の検査、異物の混入の有無の検査等が行われる。近時では、成形品の検査その他の後工程の処理を実施するための装置(又は、機器)を粉体圧縮成形機の下流に連結し、成形品の成形から後工程までを一括して実行することが試みられている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0004】
また、成形品を粉体圧縮成形機において成形した順序を維持したまま整列状態で移送できるモジュールも開発されるようになった(例えば、下記特許文献2を参照)。このものは、垂直軸回りに水平回転する移送体(回転体)の外周部に多数の孔を開設しており、そのそれぞれの孔に一個ずつ成形品を捕捉することにより、成形品を回転軌道に沿って搬送する。そして、成形品の移動の軌跡である回転軌道上の所定位置に検査装置を付設すれば、搬送される個々の成形品を順次検査することができる。
【0005】
一方で、粉体圧縮成形機には、臼孔内に充填された粉体を圧縮する際に杵に作用する圧力の大きさを検出するためのセンサ(典型的には、ロードセル)が予め設置されており(例えば、下記特許文献1及び3を参照)、成形品の圧縮成形時の圧力からその成形品の密度や硬度を推測することができる。従来より、密度又は硬度が適正でない成形品、即ち圧縮成形時の圧力が異常であった成形品については、これを排除している。
【0006】
しかしながら、圧縮成形時の圧力が正常であったとしても、対象の成形品が不良でないと断定することはできない。粉体の圧縮後に臼孔又は杵に粉体が付着したまま残留する打錠傷害、いわゆるバインディングやスティッキングが起こった場合、成形品に欠けが生じてその形状、寸法又は重量が不良となるが、圧縮成形時の圧力の大きさからはこのような打錠傷害による成形品の不良を感知できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-164786号公報
【文献】特開2017-104902号公報
【文献】特開2010-260100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成形品を搬送しながらその成形品の良否を効率的に検査することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、回転式粉体圧縮成形機に連結して同成形機とともに稼働し、同成形機により粉体を圧縮して成形された成形品を当該成形機から順次取り出して搬送する成形品搬送モジュールであって、当該成形品搬送モジュール内に、前記成形品を捕捉する捕捉部を有し、前記回転式粉体圧縮成形機の回転盤と同期して運動し前記捕捉部を変位させる運動を通じて成形品を移送する移送体と、前記移送体の捕捉部に捕捉されて移送される成形品で反射した光若しくは電磁波又は同成形品を透過した光若しくは電磁波を受光するセンサを介して当該成形品の密度を計測する密度計測装置と、前記移送体の捕捉部に捕捉されて移送される前記成形品で反射した光若しくは電磁波を受光するセンサを介して当該成形品の体積を計測する体積計測装置と、成形品の搬送の終端位置よりも上流に設けられ、前記密度計測装置により計測した密度及び前記体積計測装置により計測した体積に基づいて知得される重量が異常である不良の成形品を、終端位置に到達する前に排除する排除装置とを具備し、前記回転式粉体圧縮成形機に当該成形品搬送モジュールが連結され、それら両者が連結している成形品受け渡し位置で成形品を回転式粉体圧縮成形機から順次取り出し、そうして取り出した複数個の成形品をその順番を維持したまま前記移送体により搬送するものであり、その連結された当該成形品搬送モジュール内に前記密度計測装置、前記体積計測装置及び前記排除装置をおしなべて配設し、前記複数個の成形品をその順番を維持したまま順次検査し、なおかつ、当該成形品搬送モジュールによる成形品の搬送の終端位置の手前で重量が異常である不良の成形品を排除装置により排除するものとし、前記移送体を一個有する一つの搬送装置における、当該一個の移送体が前記成形品を捕捉して移送する経路の中途に、前記密度計測装置と前記体積計測装置との両方を備えており、前記密度計測装置は品質検査装置を兼ねており、当該品質検査装置により前記成形品に含有される成分に関する品質に関する検査を実行でき、前記体積計測装置は形状検査装置を兼ねており、当該形状検査装置により前記成形品の表面形状に関する検査を実行でき、一つの前記搬送装置内で前記密度計測装置及び前記体積計測装置の機能を用いて前記成形品の重量を測定できる成形品搬送モジュールを構成した。このようなものであれば、成形品搬送モジュール内で搬送中に成形品の密度及び体積を計測することができる。そして、これらに基づく成形品の良否の検査を実施することができる。
【0010】
前記密度計測装置の要素である前記センサは、例えば、前記成形品で反射した近赤外光又は同成形品を透過した近赤外光を受光する。即ち、密度計測装置が、近赤外光を用いて成形品の密度の計測を行う。特に、密度計測装置は、近赤外分光分析により前記成形品の密度を計測することがある。近赤外光は、可視光、紫外線、X線等と比較して成形品が含有する有効成分等を破壊することが少ない。それ故、計測を経た成形品の商品価値が失われず、これをそのまま製品として市場に供給することが可能である。また、紫外線や放射線は人体に有害であり防護が必要となるが、近赤外光にはそのようなデメリットがない。
【0011】
並びに、前記体積計測装置の要素である前記センサは、例えば、前記成形品で反射した近赤外光を受光する。即ち、体積計測装置が、近赤外光を用いて成形品の体積の計測を行う。特に、体積計測装置は、光切断法により前記成形品の外面の形状及び位置を検出することを通じて、当該成形品の体積を計測することがある。近赤外線を用いることによる効用は、上に述べたとおりである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形品を搬送しながらその成形品の良否を効率的に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の回転式粉体圧縮成形機の縦断面図。
図2】同実施形態の粉体圧縮成形機及び成形品取出装置の要部平面図。
図3】同実施形態の粉体圧縮成形機の円筒図。
図4】同実施形態の取出装置の要部平面図。
図5】同実施形態の取出装置の要部縦断面図。
図6】同実施形態の取出装置の要部縦断面図。
図7】同実施形態の取出装置及び粉塵除去装置の要部縦断面図。
図8】同実施形態の成形品搬送装置の要部平面図。
図9】同実施形態の搬送装置の要部縦断面図。
図10】同実施形態の搬送装置及び検査装置の要部縦断面図。
図11】同実施形態の搬送装置及び検査装置の要部縦断面図。
図12】同実施形態の成形品搬送装置の要部平面図。
図13】同実施形態の搬送装置の要部縦断面図。
図14】同実施形態の搬送装置及び検査装置の要部縦断面図。
図15】同実施形態の搬送装置及び排除装置の要部縦断面図。
図16】同実施形態の搬送装置及び検査装置の要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、本実施形態における回転式粉体圧縮成形機(以下「成形機」という)Aの全体概要を述べる。成形機Aは、上下に貫通した臼孔4の上下に上杵5及び下杵6が上下摺動可能に保持され、その臼孔4内に充填された粉体を上杵5と下杵6とで圧縮することにより、成形品P例えば医薬品の錠剤等を成形するものである。ここで、粉体とは、微小個体の集合体であり、いわゆる顆粒などの粒体の集合体と、粒体より小なる形状の粉末の集合体とを含む概念である。臼孔4及び上下の杵5、6は、成形品Pを成形するための型となる。
【0015】
図1に示すように、本成形機Aのフレーム1内には、回転軸となる立シャフト2を設立し、その立シャフト2の上部に接続部を介して回転盤3を取り付けている。
【0016】
回転盤3は、立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち自転する。回転盤3は、テーブル(臼ディスク)31と、上杵保持部32と、下杵保持部33とからなる。図2に示すように、テーブル31は、回転盤3の回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなしている。そして、その外周部に、回転方向(周方向)に沿って所定間隔で複数の臼孔4を設けてある。臼孔4は、テーブル31を上下方向に貫通している。テーブル31は、複数のプレートに分割するものでもよい。また、テーブル31自体に直接臼孔4を穿ち形成するのではなく、テーブル31とは別体をなしテーブル31に対して着脱可能な複数個の臼部材をテーブル31に装着し、それら臼部材の各々に上下方向に貫通した臼孔を穿っている構成としてもよい。
【0017】
各臼孔4の上下には、上杵5及び下杵6を配置する。上杵5及び下杵6は、上杵保持部32及び下杵保持部33により、それぞれが個別に臼孔4に対して上下方向に摺動可能であるように保持させる。上杵5の杵先53は、臼孔4に対して出入りする。下杵6の杵先63は、常時臼孔4に挿入してある。上杵5及び下杵6は、回転盤3及び臼孔4とともに立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち公転する。
【0018】
立シャフト2の下端側には、ウォームホイール7を取り付けている。ウォームホイール7には、ウォームギア10が噛合する。ウォームギア10は、モータ8により駆動されるギア軸9に固定している。モータ8が出力する駆動力は、ベルト11によってギア軸9に伝わり、ウォームギア10、ウォームホイール7を介して立シャフト2ひいては回転盤3及び杵5、6を回転駆動する。
【0019】
成形品Pの原料即ち構成材料となる粉体は、フィードシューXから臼孔4に充填する。フィードシューXの種類には、攪拌フィードシューとオープンフィードシューがあり、そのうちの何れを採用しても構わない。フィードシューXへの粉体の供給には、粉体供給装置を使用する。その粉体供給装置に対する粉体の供給は、ホッパ19から行う。ホッパ19は、成形機Aに対して着脱することができる。
【0020】
図2及び図3に示すように、杵5、6の立シャフト2の軸回りの公転軌道上には、杵5、6を挟むようにして上下に対をなす予圧上ロール12及び予圧下ロール13、本圧上ロール14及び本圧下ロール15がある。予圧上ロール12及び予圧下ロール13、並びに本圧上ロール14及び本圧下ロール15は、臼孔4内に充填された粉体を杵先53、63の先端面を以て上下から圧縮するべく、上下両杵5、6を互いに接近させる方向に付勢する。
【0021】
上杵5、下杵6はそれぞれ、ロール12、13、14、15によって押圧される頭部51、61と、この頭部51、61よりも細径な胴部52、62とを有する。回転盤3の上杵保持部32は、上杵5の胴部52を上下に摺動可能に保持し、下杵保持部33は、下杵6の胴部62を上下に摺動可能に保持する。胴部52、62の先端部位即ち杵先53、63は、臼孔4内に挿入可能であるように、それ以外の部位と比べて一層細く、臼孔4の内径に略等しい直径である。杵5、6の公転により、ロール12、13、14、15は杵5、6の頭部51、61に接近し、頭部51、61に乗り上げるようにして接触する。さらに、ロール12、13、14、15は上杵5を下方に押し下げ、下杵6を上方に押し上げる。ロール12、13、14、15が杵5、6上の平坦面に接している期間は、杵5、6が臼孔4内の粉体に対して一定の圧力を加え続ける。
【0022】
本圧上ロール14及び本圧下ロール15による加圧位置から、回転盤3及び杵5、6の回転方向に沿って先に進んだ位置に、成形品Pの受け渡し位置16が存在する。受け渡し位置16までに、下杵6の杵先63の上端面が臼孔4の上端即ちテーブル31の上面と略同じ高さとなるまで下杵6が上昇し、臼孔4内にある成形品Pを臼孔4から押し出す。臼孔4から押し出された成形品Pは、受け渡し位置16において成形機Aに連結した成形品処理システム(以下「処理システム」という)Sに移送される。
【0023】
本実施形態の成形機A及び処理システムS(の各モジュールB、C、D)の制御を司る制御装置は、プロセッサ、記憶デバイスであるメインメモリ及び補助記憶デバイス(例えば、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等)、入出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステム、パーソナルコンピュータ又はワークステーション、あるいはプログラマブルコントローラである。この制御装置は、予め補助記憶デバイスに格納されているプログラムをメモリを介してプロセッサに読み込み、プロセッサにおいて解読して、成形機A及び処理システムSの制御を遂行する。
【0024】
図2図4図8及び図12に示すように、本実施形態において成形機Aに付帯する処理システムSは、成形品Pに対する何らかの後工程の処理を実施するためのモジュールB、C、Dを複数配列したものである。
【0025】
成形機Aの下流に直結するモジュールBは、成形機Aにおいて成形品Pを成形した順番を維持したままで成形機Aから成形品Pを順次取り出す取出装置B1を有している。取出装置B1は、成形品Pを受け渡し位置16にて取り出し、成形品Pに対して次の工程を実施する処理装置B2に向けて搬送する。図2図4ないし図7に示すように、取出装置B1は、成形機Aの回転盤3及びテーブル31と同期して垂直軸回りに水平回転する移送体たる回転体17と、回転体17の直下にあって回転体17と対向する保持体18と、回転体17の外周部における保持体18と対向する下面から保持体18に向かって下方に突出する複数の突起171と、回転体17の外周部に近接し突起171と突起171との間の空隙を外側方から閉鎖する外側のガイド20と、回転体17の外周部よりも内方にあって突起171と突起171との間の空隙を内側方から閉鎖する内側のガイド21とを主たる構成要素とする。
【0026】
回転体17は、図中反時計回りに回転するテーブル31に対して、図中時計回りに回転する。テーブル31の回転と回転体17の回転とを同期させるためには、回転体17を回転させるモータをサーボモータ又はステッピングモータとし、かつロータリエンコーダ等の角位置センサを用いて回転盤3及び回転体17の各々の回転角度及び回転速度を検出して、両者の回転が同期するようにモータの回転速度をフィードバック制御する。あるいは、回転盤3と回転体17とを、歯車伝動機構や巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させるようにしてもよい。
【0027】
回転体17は、当該回転体17の回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなしている。この回転体17に設けた複数の突起171は、回転体17の外周縁に沿って、即ち回転体17の回転軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に配置されている。これらの突起171は、回転体17と一体となって回転することは言うまでもない。成形機Aが成形した成形品Pは、回転体17の突起171に捕捉され、突起171と突起171との間の空隙に収容された状態で移送される。
【0028】
周方向に沿って隣り合う突起171と突起171との間の空隙の大きさWは、成形機Aが成形する成形品Pの最も長い外寸よりも大きい。ここに言う最も長い外寸とは、平面視において成形品Pの外縁(輪郭)上のある点から当該成形品Pの重心又は幾何中心に向かって伸び、同重心又は幾何中心を通過して成形品Pの外縁上の別の点に到達する線分の長さのうち、最も大きいものを指す。成形品Pが平面視楕円形状をなす場合には、その長軸又は長径が最も長い外寸に該当する。
【0029】
図5に示すように、回転体17の下面と、保持体18の上面とは、上下方向に沿って所定距離を隔てて対向している。回転体17の下面は、成形機Aのテーブル31の上面よりも高位置にある。その上で、回転体17の外周部の一部が、成形機Aのテーブル31に上方から重なる。回転体17の下面から突出する突起171の先端は、保持体18の上面及びテーブル31の上面に極近接する。テーブル31及び回転体17の同期回転に伴い、各臼孔4と、各突起171間の空隙とは、成形品Pの受け渡し位置16において一時的に重なり合う。
【0030】
回転体17と異なり、保持体18は回転せず、回転体17の外周部に下方から重なるように配置される。保持体18は、成形機Aのテーブル31に隣接し、その上面がテーブル31の上面と略等しい高さにある。回転体17の突起171間の空隙内に捕捉された成形品は、突起171とともに水平回転しながら、この保持体18の上面を摺動又は滑走する。つまり、保持体18は、移送される成形品を下方から支持する。テーブル31との干渉を避けるべく、保持体18における、テーブル31と回転体17とが平面視重なり合う受け渡し位置16に対応する部位は、テーブル31の外周縁に沿って円弧状に切り欠いてある。保持体18の当該部位の端縁は、テーブル31の外周縁に極近接しており、成形品Pが成形機Aのテーブル31の上面から取出装置B1の保持体18の上面に円滑に移乗することができる。
【0031】
回転体17の下面と保持体18の上面との離間距離Hは、成形機Aが成形する成形品Pの上下方向に沿った厚みと同程度又はこれよりも大きく、なおかつ成形品Pの最も短い外寸よりも小さく設定する。ここに言う最も短い外寸とは、平面視において成形品Pの外縁上のある点から当該成形品Pの重心又は幾何中心に向かって伸び、同重心又は幾何中心を通過して成形品Pの外縁上の別の点に到達する線分の長さのうち、最も小さいものを指す。成形品Pが平面視楕円形状をなす場合には、その短軸又は短径が最も短い外寸に該当する。成形品Pの厚みは、成形機Aにおいて臼孔4内に充填された粉体の圧縮が完了するときの上杵5の杵先53と下杵6の杵先63との上下方向に沿った距離に略等しい。
【0032】
外側のガイド20は、回転体17の外周縁に隣接し、平面視回転体17を取り巻く略円弧状をなすように拡張している。このガイド20は、回転体17の回転軸と直交する径方向に沿った外側方に開口している突起171間の空隙を外側方より閉塞し、成形品Pが遠心力により空隙から外側方に飛び出すことを抑止する。外側のガイド20の始端部201は、成形機Aのテーブル31に向かって突き出し、テーブル31に上方から重なるようにして臼孔4の水平回転の軌跡の直上に位置しており、テーブル31の上面まで押し出された成形品Pを受け渡し位置16において掻き取り取出装置B1に取り込むダンパ(又は、スクレーパ)としての役割を担う。
【0033】
また、内側のガイド21は、回転体17の突起171の径方向に沿った内側方の端縁に隣接し、回転体17の外周部の内側で平面視略円弧状をなすように拡張している。このガイド21は、回転体17の径方向に沿った内側方に開口している空隙を内側方より閉塞し、成形品が意図せず内側方に変位することを抑止する。内側のガイド21は、保持体18に対して固定され、又は保持体18と一体化していることがある。なお、回転体17における、内側のガイド21の上面が面する部位の下面は、回転体17の外周部の空隙に面する(即ち、突起171を設けていない箇所の)下面よりも若干上方に凹んでいる。そして、内側のガイド21の上面は、後述する粉塵除去装置B2が設けられている区域を除き、回転体17の外周部の空隙に面する下面よりも若干ながら高い位置にある。これにより、成形品Pが回転体17の下面と内側のガイド21の上面との間隙に入り込むことを防止する。
【0034】
既に述べた通り、成形機Aにおいては、成形品Pを包有する臼孔4が受け渡し位置16に至るまでの間に、下杵6が上昇して成形品Pを臼孔4から押し出す。押し出された成形品Pは、受け渡し位置16においてテーブル31の回転に伴って外側のガイド20に当接し、外側のガイド20に沿って移動して、テーブル31上から保持体18上へと遷移する。このとき、成形品Pは、回転体17から下方に突出している突起171により捕捉され、回転体17と保持体18との間の領域における、突起171と突起171との間の空隙に入り込む。成形品Pは、一つ一つの空隙に一個ずつ収容される。これにより、成形機Aのテーブル31の臼孔4が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各空隙に一個ずつ成形品Pを順番に並べて収容することができる。しかも、成形機Aのテーブル31からモジュールBの取出装置B1の回転体17への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることがない。
【0035】
突起171間の空隙内に捕捉された成形品Pは、回転体17の回転方向に沿って後方にある突起171と当接し、この突起171に押されながら、突起171の回転の軌跡に沿って、保持体18上を摺動又は滑走しつつ移送される。各成形品Pは、各空隙内において、突起171に対する相対位置が略一定となる。成形品Pは、回転体17の回転により遠心力の作用を受け、空隙内で回転体17の径方向に沿った内側方から外側方へと変位する。だが、その成形品Pは、外側のガイド20の内側方の縁辺に当接してそれ以上の変位が阻まれ、空隙から外側方に飛び出すことはない。また、空隙の上方は回転体17により閉塞されているので、空隙内に捕捉した成形品Pが不意に跳ねて空隙から脱出してしまうこともない。
【0036】
回転体17の突起171に捕捉された成形品Pは、その移送の終端位置である受け渡し位置23まで移送される。保持体18における、受け渡し位置23に対応する部位は、後述する搬送装置C1の回転体24との干渉を避けるべく、回転体24の外周縁に沿って円弧状に切り欠いてある。即ち、受け渡し位置23では、回転体17の外周部と保持体18とが平面視重なり合わない。従って、受け渡し位置23に到達した各成形品Pは、保持体18による下方からの支持を失い、突起171間の空隙から脱落して、モジュールBの下流に直結するモジュールCの搬送装置C1にその順番を崩すことなく受け渡される。
【0037】
回転体17の外周部における、受け渡し位置16から受け渡し位置23までの成形品Pの搬送区間内の一部の区域には、モジュールBにおける処理装置として、成形品Pに付着している粉塵を除去する粉塵除去装置B2を設置している。
【0038】
回転体17には予め、突起171間の空隙を外部に連通せしめる連通孔172が穿たれている。連通孔172は、各空隙よりも回転体17の径方向に沿って内側方に所在し、回転体17を上下方向に沿って貫通し、回転体17の周方向に沿って拡張した長孔である。連通孔172の数は、空隙の数と同数である。粉塵除去装置B2は、連通孔172、突起171間の空隙、及び回転体17と外側のガイド20との境界部位に上方から覆い被さっており、回転体17の周方向に沿って拡張している。
【0039】
図7に示すように、粉塵除去装置B2は、連通孔172の直上に位置しており図示しないポンプから供給される圧縮空気Kを連通孔172に向けて下方に噴出させる噴出ノズル221と、回転体17と外側のガイド20との境界部位の直上に位置しており図示しないポンプにより空気Kを上方に吸引する集塵口222とを具備している。圧縮空気Kは、予め除電器によりイオン化されていてもよく、またパルス状に噴出させてもよい。噴出ノズル221から供給される圧縮空気Kは、回転体17の下面と内側のガイド21の上面との間隙を通じて突起171間の空隙内に至り、この空隙に収容されている成形品Pの外面に吹き付けられて、成形品Pの外面に付着している粉塵を成形品Pから吹き飛ばして除去する。成形品Pに吹き当たった後の粉塵を含む空気Kは、回転体17と外側のガイド20との間隙から上方に漏出し、集塵口222に吸引される。
【0040】
モジュールBに後続するモジュールCの搬送装置C1は、成形品Pの受け渡し位置23にて取出装置B1から成形品Pを受け取り、成形品Pに対して次の工程を実施する処理装置C21、C22、C3、C4に向けて搬送する。取出装置B1と搬送装置C1との間で成形品Pを受け渡しする際にも、成形機Aにおいて成形品Pを成形した順番は依然として維持される。図8ないし図11に示すように、搬送装置C1は、取出装置B1の回転体17と同期して垂直軸回りに水平回転する移送体たる回転体24を主体とする。
【0041】
回転体24は、図中時計回りに回転する回転体17に対して、図中反時計回りに回転する。回転体17の回転と回転体24の回転とを同期させるためには、例えば、回転体17の回転軸と回転体24の回転軸とを、歯車伝動機構又は巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させるようにする。あるいは、回転体24を回転させるモータをサーボモータ又はステッピングモータとし、かつロータリエンコーダ等の角位置センサを用いて回転体17及び回転体24の各々の回転角度及び回転速度を検出して、両者の回転が同期するようにモータの回転速度をフィードバック制御することとしてもよい。
【0042】
回転体24は、当該回転体24の回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなす。より具体的には、この回転体24は、外径の大きさの異なる二枚の円板体240、241を、外径がより小さい円板体240を外径がより大きい円板体241の上に重ね合わせ、両者240、241を剛結し一体化することによって構成される。従って、当該回転体24の基部即ち上方の円板体240の外周縁から、下方の円板体241の外周部242が、回転体24の回転軸と直交する径方向に沿って外側方に張り出す。この外周部242が、当該回転体24のフランジとなる。
【0043】
回転体24の基部240の外周面には、径方向に沿って内側方に凹みかつ外側方に開口するポケット243を形成している。基部240の外周縁は、概ね円形状をなしつつも、ポケット243の部分だけ回転体24の回転軸に近づく方向に凹む。そして、フランジ242における、回転軸の方向に沿った一方側即ち下方からポケット243に臨む位置に、周縁の閉じた吸着孔244を開設している。吸着孔244は、回転体24において成形品Pを捕捉する捕捉部として機能する。回転体24を上下方向から見て、吸着孔244は、その少なくとも一部がポケット243と重なり合い、ポケット243に向けて上方に開口する。平面視において、吸着孔244の内側方の周縁は、ポケット243の内壁面に沿っている。また、吸着孔244は、フランジ242を上下方向に貫通している貫通孔である。
【0044】
ポケット243及び吸着孔244は、回転体24の外に沿って、即ち回転体24の回転軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に配置されている。これらポケット243及び吸着孔244は、回転体24と一体となって回転することは言うまでもない。モジュールBの取出装置B1からモジュールCの搬送装置C1に受け渡される成形品Pは、回転体24のポケット243及び吸着孔244に係合し、吸着孔244に捕捉された状態で移送される。
【0045】
図9に示すように、搬送装置C1の回転体24の外周部のフランジ242の上面は、モジュールBの取出装置B1の回転体17の下面よりも低位置にあり、保持体18の上面と略等しい高さ位置にある。そして、回転体24の基部240の外周及びポケット243が、回転体17の突起171間の空隙と水平方向に対向するようにこれと略等しい高さ位置にある。その上で、平面視回転体24のフランジ242の一部が回転体17の一部に下方から重なり、両者が上下方向に対向する。回転体17の下面から突出する突起171の先端は、保持体18の上面及びフランジ242の上面に極接近する。回転体17及び回転体24の同期回転に伴い、各突起171間の空隙と、吸着孔244とは、受け渡し位置23において一時的に重なり合う。
【0046】
回転体24のフランジ242との干渉を避けるべく、保持体18における、フランジ242と回転体17とが平面視重なり合う受け渡し位置23に対応する部位は、フランジ242の外周縁に沿って円弧状に切り欠いてある。保持体18の当該部位の端縁は、フランジ242の外周縁に極近接しており、成形品Pが取出装置B1の保持体18の上面から搬送装置C1の回転体24のフランジ242の上面に円滑に移乗することができる。
【0047】
受け渡し位置23では、回転体17の突起171間の空隙内に収容され突起171に押されながら移送されていた成形品Pが、回転体17の回転に伴って、保持体18上から回転体24のフランジ242上へと遷移する。このとき、成形品Pは、回転体24に形成されているポケット243に入り込み、かつ吸着孔244に捕捉される。成形品Pは、一つ一つの吸着孔244に一個ずつ収容される。これにより、取出装置B1の回転体17の突起171間の空隙が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各吸着孔244に一個ずつ成形品Pを順番に係合させることができる。取出装置B1の回転体17から搬送装置C1の回転体24への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることはない。
【0048】
吸着孔244に捕捉された成形品Pは、回転体24の回転に伴い、吸着孔244の回転の軌跡に沿って移送される。各成形品Pは、各吸着孔244内において、回転体24及び吸着孔244に対する相対位置が略一定となる。成形品Pは、回転体24の回転により遠心力の作用を受けるが、吸着孔244に吸着してその変位が阻まれ、外側方に飛び出さない。また、成形品Pの移送の過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返らない。
【0049】
最終的に、吸着孔244に捕捉された成形品Pは、その移送の終端位置である受け渡し位置27まで移送される。受け渡し位置27に到達した成形品Pは、モジュールCの搬送装置C1から、当該モジュールCの下流に直結するモジュールDの搬送装置D1に受け渡される。
【0050】
以降、回転体24のポケット243及び吸着孔244に成形品Pを吸着する機構について述べる。ポケット243内及び吸着孔244内にはそれぞれ負圧が供給され、これにより成形品Pをポケット243及び吸着孔244に吸着することができる。図8ないし図11に示すように、回転体24には予め、ポケット243内に負圧を供給するための吸引通路2451、2452が穿たれている。吸引通路2451、2452は、その始端がポケット243の内壁面における最も内側方の箇所に開口し、そこから回転体24の内部を回転体24の回転軸に向かって内側方に伸長する内部通路2451と、内部通路2451の終端に向けて回転体24をその下面から上方に掘削することで内部通路2451を回転体24の下面側に開通させる吸引孔2452とを有する。詳細には、内部通路2451は、回転体24の基部である上方の円板体240の下面に形成した下方に開口する溝である。この溝245は、円板体240の下面に接合する円板体241によって下方から閉塞される。そして、吸引口2452は、下方の円板体241における内部通路2451の終端の直下に位置する部位を上下方向に貫通している貫通孔である。この吸引通路2451、2452により、ポケット243内が、回転体24の下面におけるポケット243よりも内側方に偏倚した吸引口2452の位置に連通することとなる。吸引通路2451、2452の数は、ポケット243及び吸着孔244の組の数と同数である。
【0051】
ポケット243内に負圧を供給するためには、吸引口2452から内部通路2451及びポケット243内の雰囲気を吸引すればよい。回転体24の下方には、平面視回転体24の外周に沿って半円弧状をなすように拡張した、負圧供給用のダクト25を設置している。ダクト25は、回転体24の下面に極近接する頂壁251と、頂壁251の内側端及び外側端からそれぞれ垂下する側壁252と、それら側壁252の下端同士を連接する底壁253とで、その内部空間を囲繞している筒状体である。このダクト25の内部空間は、図示しないポンプにより吸引されて負圧化している。
【0052】
ダクト25の頂壁251における、吸引口2452の直下に位置する部位には、平面視回転体24の回転軸を中心とした部分円弧状をなす二つのスロット孔254、256を形成してある。スロット孔254、256は何れも、頂壁251を上下方向に貫通している。各スロット孔254、256は、回転体24の回転に伴い各吸込口2452が移動する軌跡に沿って拡張している。前者のスロット孔254の拡張範囲は、回転体24の回転方向に沿って、取出装置B1から成形品Pを受け取る受け渡し位置23よりも上流側から、同受け渡し位置23の下流の所定位置までの範囲に亘る。後者のスロット孔254の拡張範囲は、回転体24の回転方向に沿って、取出装置D1に成形品Pを受け渡す受け渡し位置27よりも上流側から、同受け渡し位置27の直前の位置までの範囲に亘る。
【0053】
ポケット243内に負圧が供給される、即ちポケット243内が吸引されるのは、ポケット243と接続している吸引通路2451、2452の吸引口2452が何れかのスロット孔254、256の直上に所在している時期、即ち負圧化したダクト25の内部空間とポケット243内とが連通している時期に限られる。吸引口2452がスロット孔254、256の存在しない位置にあるときには、ダクト25の内部空間と吸引口2452との間に頂壁251が介在し、ダクト25の内部空間とポケット243とが隔絶されて、ポケット243内が吸引されない。
【0054】
そして、ダクト25は、吸着孔244内に負圧を供給する役割をも担っている。ダクト25の頂壁251における、吸着孔244の直下に位置する部位には、平面視回転体24の回転軸を中心とした部分円弧状をなすスロット孔255を形成してある。スロット孔255もまた、頂壁251を上下方向に貫通している。スロット孔255は、回転体24の回転に伴い各吸着孔244が移動する軌跡に沿って拡張している。スロット孔255の拡張範囲は、回転体24の回転方向に沿って、取出装置B1から成形品Pを受け取る受け渡し位置23の直後の位置から、取出装置D1に成形品Pを受け渡す受け渡し位置27の直前の位置までの範囲に亘る。
【0055】
吸着孔244内に負圧が供給される、即ち吸着孔244内が吸引されるのは、吸着孔244がスロット孔255の直上に所在している時期、即ち負圧化したダクト25の内部空間と吸着孔244内とが連通している時期に限られる。吸着孔244がスロット孔255の存在しない位置にあるときには、頂壁251によりダクト25の内部空間と吸着孔244とが隔絶されて、吸着孔244内が吸引されない。
【0056】
搬送装置C1の回転体24のポケット243及び吸着孔244の組に、取出装置B1の回転体17の突起171間の空隙に捕捉された成形品Pを受け渡す過程では、まず、受け渡し位置23の上流にあって成形品Pを保持していないポケット243及び吸着孔244の組が受け渡し位置23に向かって移動する。そして、これらが受け渡し位置23の直前の位置に至った時点で、そのポケット243と内部通路2451を介して接続している吸引口2452がスロット孔254の直上に到達し、負圧供給用のダクト25による当該ポケット243内の吸引が開始される。この時点で、当該ポケット243と組になっている吸着孔244は未だスロット孔255の直上には到達しておらず、吸着孔244内は吸引されない。
【0057】
成形品Pの受け渡し位置23に至ったポケット243及び吸着孔244の組のうち、ポケット243内は吸引されているが、吸着孔244内は吸引されていない。従って、回転体17の突起171間の空隙に捕捉されて受け渡し位置23に到着した成形品Pは、ポケット243に向かって、回転体24の回転軸に接近する内側方に吸引されて、ポケット243に係合する。これにより、当該成形品Pが、吸着孔244に対して一定の相対位置に位置決めされる。
【0058】
成形品Pを吸着したポケット243及びこれと組となる吸着孔244が、受け渡し位置23から下流に移動すると、その吸着孔244がスロット孔255の直上に到達し、負圧供給用のダクト25による当該吸着孔244内の吸引が開始される。結果、ポケット243に吸着している成形品Pが、吸着孔244にも吸着する状態となる。この時点では、ポケット243と内部通路2451を介して接続している吸引口2452が依然としてスロット孔254の直上に位置しており、ポケット243及び吸着孔244の双方に負圧が供給されている。
【0059】
回転体24が回転し、成形品Pを吸着したポケット243及び吸着孔244がさらに下流に移動すると、当該ポケット243と内部通路2451を介して接続している吸引口2452がスロット孔254の直上から離脱するため、ポケット243内は吸引されなくなり、よって成形品Pはポケット243には吸着しなくなる。一方で、成形品Pを吸着している吸着孔244は依然としてスロット孔255の直上に位置しているので、成形品Pは当該吸着孔244に吸着しながら捕捉され続ける。
【0060】
成形品Pを吸着した吸着孔244が下流に移動して、取出装置D1に成形品Pを受け渡す受け渡し位置27に近づくと、当該吸着孔244と組となっているポケット243と内部通路2451を介して接続している吸引口2452がスロット孔256の直上に到達し、負圧供給用のダクト25による当該ポケット243内の吸引が開始され、一時的ではあるが成形品Pが当該ポケット243にも吸着する状態となる。
【0061】
その後、成形品Pを吸着したポケット243及び吸着孔244が受け渡し位置27の直前の位置に至った時点で、その吸着孔244がスロット孔255の直上から離脱し、吸着孔244内が吸引されなくなり、成形品Pは吸着孔244に吸着しなくなる。そして、それと略同時ないしその直後の時点で、成形品Pを吸着したポケット243と内部通路2451を介して接続している吸引口2452がスロット孔256の直上から離脱し、ポケット243内が吸引されなくなり、成形品Pはポケット243にも吸着しなくなる。この状態で、搬送装置C1の回転体24から搬送装置D1の回転体28への成形品Pの受け渡しが行われる。
【0062】
回転体24の外周部における、受け渡し位置23から受け渡し位置27までの成形品Pの搬送区間内の一部の区域には、モジュールCにおける処理装置として、成形品Pへの異物の混入の有無を検査する異物検査装置C21、成形品Pの含有成分その他の品質を検査する品質検査装置C22、成形品Pの外面の画像を撮影してその状態を検査する外面検査装置C3、及び成形品Pの外面の形状及び位置を検出する形状検査装置C4を設置している。なお、品質検査装置C22は成形品Pの密度を計測する密度計測装置を構成し、形状検査装置C4はモジュールDの形状検査装置D4とともに成形品Pの体積を計測する体積計測装置を構成する。
【0063】
図10に示すように、異物検査装置C21は、搬送装置C1が搬送する成形品Pの移動の軌跡と平面視重なり合う位置に設置した受光素子であるセンサ262及び光源261の組を要素とする。センサ262及び光源261は、成形品P及び成形品Pを搬送する回転体24を挟んで、回転体24の回転軸の方向である上下方向に沿って対向するように配置される。そして、光源261から放たれた光若しくは電磁波(レーザであることがある)のうち成形品Pを透過した透過光L1を信号光としてセンサ262に入射させ、その信号光L1を分析することで、成形品Pに異物が混入していないかを検査する。検査の具体的手法については、既知のそれを採用することが可能である。例えば、透過光L1をセンサ262で受光して得られる透過光像の中で、異物が成形品Pとは異なる色または画素値の影として映るならば、これを画像解析により検出することで、成形品Pに混入した異物の存在を感知できる。
【0064】
品質検査装置C22は、異物検査装置C21と同一の区域に所在する。品質検査装置C22は、搬送装置C1が搬送する成形品Pの移動の軌跡と平面視重なり合う位置に設置した受光素子であるセンサ263及び光源261の組を要素とする。品質検査装置C22の光源261は、異物検査装置C21の光源261と共通するものであってもよく、異物検査装置C21の光源261とは別個のものであってもよいが、図示例では共通のものとしている。品質検査装置C22は、光源261から放たれた光若しくは電磁波のうち、吸着孔244に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば上面で反射した反射光L2を信号光としてセンサ263に入射させ、その信号光L2を分析することで、成形品Pの成分その他の品質が適正であるか否を検査する。検査の具体的手法については、既知のそれを採用することが可能である。例えば、センサ263で受光した反射光L2の分光スペクトルを得、その分光スペクトルを参照して、換言すれば成形品Pによる光の吸収及び/又は散乱を計測して、成形品Pに含まれる有効成分(又は、主薬、主剤)の濃度や、有効成分に添加されている添加剤(賦形剤、滑沢剤、粉体同士を結合させる結合剤、水分を吸収することで成形品Pを崩れやすくする崩壊剤等)の濃度、有効成分と添加剤との割合、有効成分と添加剤との混合の度合い(粉体の均一性、偏析が生じていないかどうか)、成形品Pの密度、成形品Pの硬度、その他の定性的又は定量的な分析を行う。
【0065】
使用する光若しくは電磁波の波長、つまりは光源261から供給する光若しくは電磁波としては、例えば、賦形剤や滑沢剤のピークがなく有効成分の特異的な吸収ピークである波長帯を利用する。この光若しくは電磁波は、近赤外光であることがある。その場合、品質検査装置C22は、近赤外分光分析法によって成形品Pの品質を分析することができる。また、異物検査装置C21において、成形品Pに混入した毛髪や虫等の生体由来の異物を検出することが容易となる。無論、異物検査装置C21により、金属その他の異物を検出することを妨げるものではない。近赤外光は、可視光又は紫外線、X線等と比較して、成形品Pが含有する有効成分等を破壊することが少ない。それ故、品質検査を経た成形品Pの商品価値が失われず、これをそのまま製品として市場に供給することが可能である。紫外線や放射線は人体に有害であり防護が必要となるが、近赤外光にはそのようなデメリットがない。
【0066】
図10に示しているように、側面視又は側断面視において、異物検査装置C21のセンサ262と、品質検査装置C22のセンサ263とは、成形品P及び成形品Pを搬送する回転体24を挟むようにして、上下方向に沿って対向するように配置される。そして、一方のセンサ262が成形品Pの移動の軌跡における特定の位置を通過する成形品Pからの透過光L1を受光するのと同時若しくは略同時に、他方のセンサ263が当該位置を通過する同じ成形品Pからの反射光L2を受光し、又は、成形品Pの移動の軌跡に沿って当該位置のすぐ上流若しくはすぐ下流の位置を通過する別の成形品P(特に、当該位置を通過する成形品Pの近隣の成形品P、即ち当該位置を通過する成形品Pが係合している吸着孔244に隣接するかその付近にある吸着孔244に係合している成形品P)からの反射光L2を受光する。その上で、異物検査装置C21が当該位置を通過する成形品Pへの異物の混入の有無を検査するのと同時若しくは略同時に、品質検査装置C22が同じ成形品P又はその近隣の成形品Pの含有成分その他の品質を検査する。
【0067】
図11に示すように、外面検査装置C3は、吸着孔244に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば上面を撮影し、その画像を取得するカメラセンサを有する。取得した画像は、成形品Pの外面の状態の検査に使用することができる。即ち、撮影した画像を解析し、又は正常な成形品Pの画像と比較する等して、成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかを判定することができる。
【0068】
外観検査装置C3のカメラは、成形品Pの上面を撮影するに限らず、成形品Pの下面をも撮影するようにしてもよい。成形品Pの上面/下面を撮影した画像を解析し、成形品Pの幅、長さ、直径、面積等を測定することもできる。また、成形品Pの側面を撮影し、その状態が正常であるか不良であるかを判定することもできる。成形品Pの側面を撮影した画像を解析し、成形品Pの厚み(又は、高さ)寸法を測定することもできる。外観検査装置C3における処理は、これらのうち何れかひとつを採用するに限らず、複数の処理を併合するようにしてもよい。
【0069】
成形品Pを捕捉する吸着孔244は、回転体24のフランジ242を上下に貫通しており、光源261とセンサ262とのうちの一方がフランジ242の直上に、他方がフランジ242の直下に位置している。さらに、上下方向から見た平面視において、吸着孔244の周縁は一周連続して閉じており、その周縁がこれに吸着される成形品Pの外縁よりも内に収まる寸法及び形状をなしている。成形品Pを捕捉する吸着孔244が異物検査装置C21及び品質検査装置C22、並びに外面検査装置C3の所在する区域を通過するときには、当該吸着孔244の内にダクト25から負圧が供給されていることから、成形品Pが当該吸着孔244にぴったりと付着して、吸着孔244の周縁と成形品Pの外縁との間に隙間が生じない。
【0070】
このため、異物検査装置C21においては、成形品Pを透過した信号光L1が吸着孔244を通じて適切にセンサ262に入射する一方、信号光L1以外の迷光即ち成形品Pを透過しなかった光は回転体24及びフランジ242によって遮蔽され、センサ262に入射することが抑制される。吸着孔244に吸着されて保定された成形品Pは、回転体24の回転方向に沿って搬送されながらも、回転体24及び吸着孔244に対する相対的な位置が一定化する。このことは、成形品Pに光若しくは電磁波を照射して成形品Pを透過した信号光L1を分析する処理や、成形品Pで反射した反射光L2を分析する処理、成形品Pをカメラで撮影して外面検査をする処理等のために有効である。
【0071】
形状検査装置C4は、吸着孔244に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば上面の形状及び位置を検出する。本実施形態にあって、形状検査装置C4は、既知の光切断法により、成形品Pの上面の形状及び位置の測定を実行する。図16に示すように、形状検査装置C4は、移送される成形品Pの上面に向けてスリット状又はライン状の光若しくは電磁波であるラインビーム(レーザであることがある)を照射する光源264と、そのラインビームにより照明される結果成形品Pの上面に現れる光切断線(輝線)PL、即ち成形品Pの上面におけるラインビームの反射光により(センサ265にとって)輝いて見える箇所を撮影する受光素子であるカメラセンサ265とを有する。当該センサ265を介して一時に撮影される画像上には、対象の成形品Pの上面の表面形状に沿って湾曲又は屈曲した輝く光切断線PLが映し出される。この画像内の光切断線PLの位置座標を基に、成形品Pの上面における、成形品Pの移動方向と交差又は直交する方向に伸びる一次元領域上の(一本の光切断線PL分の)各所の三次元位置座標を得ることができる。
【0072】
しかして、回転体24の回転に伴い、吸着孔244とともにこれに補足されている成形品Pが、その回転軌跡に沿って、形状検査装置C4の光源264及びセンサ265に対して相対的に所定方向に移動する。その移動方向は一定であり、局所的に見て略直線方向とみなすことも可能である。結局、成形品Pの上面がラインビーム及び光切断線PLによって走査され、その過程でセンサ265が短周期で反復的に光切断線PLを含む撮影画像を取得することにより、成形品Pの上面全体の各所の三次元位置座標を得る。結果として、形状検査装置C4が、微細な凹凸を含む、成形品Pの上面の形状及び高さ位置を測定することとなる。
【0073】
尤も、形状検査装置C4が、光切断法により成形品Pの上面の形状及び高さ位置を検出するとは限られない。例えば、成形品Pの上面の各所に向けてコヒーレントな光若しくは電磁波であるレーザを出射し、成形品Pで反射したレーザをセンサで受光するまでに要した時間を計測する態様の距離計(レーザ測距計)を利用して、成形品Pの上面の形状及び高さ位置を測定することもできる。形状検査装置C4が、位相シフト法、空間コード化法、モアレ法、ステレオマッチング法等によって成形品Pの上面の形状及び高さ位置を検出することも考えられる。
【0074】
形状検査装置C4が使用する光若しくは電磁波の波長、つまりは光源264から供給する光若しくは電磁波は、近赤外光であることがある。既に述べたとおり、近赤外光は、成形品Pが含有する有効成分等を破壊することが少ない上、人体に有害でなく防護が必要とならない。
【0075】
成形機Aのテーブル31、モジュールBの取出装置B1の回転体17、モジュールCの搬送装置C1の回転体24は、互いに同期して回転する。本実施形態の成形機A及び処理システムSの制御装置は、成形機Aの回転盤3、取出装置B1の回転体17又は搬送装置C1の回転体24に付随する角位置センサ(ロータリエンコーダ等)が出力する信号を参照することで、回転体24の回転軸回りの周方向に沿って配列されている吸着孔244の各々が現在どの位置にあるのかを知得することができる。さらに言えば、成形機Aのテーブル31における何番目の臼孔4内で圧縮成形された成形品Pが、現在モジュールC内のどの位置にあるのかを知得することができる。これは、今異物検査装置C21や品質検査装置C22のセンサ262、263の前を通過した、今外面検査装置C3のカメラの前を通過した、又は今形状検査装置C4のセンサ の前を通過した成形品Pが、つまりは異物検査、品質検査、外面検査又は形状検査を行った成形品Pが、何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかが分かるということを意味する。制御装置は、異物検査装置C21、品質検査装置C22、外面検査装置C3又は形状検査装置C4を介して成形品Pの検査又は測定を行った結果に係る情報(対象の成形品Pに異物が混入していないかどうか、対象の成形品Pの品質に異常がないか、対象の成形品Pの外面の状態や形状が正常であるか不良であるか等の判定結果を含む)を、その対象の成形品Pが何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0076】
モジュールCに後続するモジュールDの搬送装置D1は、成形品Pの受け渡し位置27にて搬送装置C1から成形品Pを受け取り、成形品Pに対して次の工程を実施する処理装置D2、D4に向けて搬送する。搬送装置C1と搬送装置S1との間で成形品Pを受け渡しする際にも、成形機Aにおいて成形品Pを成形した順番は依然として維持される。図12ないし図15に示すように、搬送装置D1は、搬送装置C1の回転体28と同期して垂直軸回りに水平回転する移送体たる回転体28を主体とする。
【0077】
回転体28は、図中反時計回りに回転する回転体28に対して、図中時計回りに回転する。回転体24の回転と回転体28の回転とを同期させるためには、例えば、回転体24の回転軸と回転体28の回転軸とを、歯車伝動機構42又は巻掛伝動機構等を介して機械的に接続して連動させるようにする。あるいは、回転体28を回転させるモータをサーボモータ又はステッピングモータとし、かつロータリエンコーダ等の角位置センサを用いて回転体24及び回転体28の各々の回転角度及び回転速度を検出して、両者の回転が同期するようにモータの回転速度をフィードバック制御することとしてもよい。
【0078】
回転体28は、当該回転体28の回転軸の方向即ち上下方向から見た平面視において略円板状をなす。より具体的には、この回転体28は、外径の大きさの異なる二枚の円板体280、281を、外径がより大きい円板体281を外径がより小さい円板体280の上に重ね合わせ、両者280、281を剛結し一体化することによって構成される。従って、当該回転体28の基部即ち下方の円板体280の外周縁から、上方の円板体281の外周部282が、回転体28の回転軸と直交する径方向に沿って外側方に張り出す。この外周部282が、当該回転体28のフランジとなる。
【0079】
回転体28の基部280の外周面には、径方向に沿って内側方に凹みかつ外側方に開口するポケット283を形成している。基部280の外周縁は、概ね円形状をなしつつも、ポケット283の部分だけ回転体28の回転軸に近づく方向に凹む。そして、フランジ282における、回転軸の方向に沿った他方側即ち上方からポケット283に臨む位置に、周縁の閉じた吸着孔284を開設している。吸着孔284は、回転体28において成形品Pを捕捉する捕捉部として機能する。回転体28を上下方向から見て、吸着孔284は、その少なくとも一部がポケット283と重なり合い、ポケット283に向けて下方に開口する。平面視において、吸着孔284の内側方の周縁は、ポケット283の内壁面に沿っている。また、吸着孔284は、フランジ282を上下方向に貫通している貫通孔である。
【0080】
ポケット283及び吸着孔284は、回転体28の外に沿って、即ち回転体28の回転軸回りの周方向に沿って、所定の間隔を隔てて間欠的に配置されている。これらポケット283及び吸着孔284は、回転体28と一体となって回転することは言うまでもない。モジュールCの搬送装置C1からモジュールDの搬送装置D1に受け渡される成形品Pは、回転体28のポケット283及び吸着孔284に係合し、吸着孔284に捕捉された状態で移送される。
【0081】
図13に示すように、搬送装置D1の回転体28の外周部のフランジ282の下面は、モジュールCの搬送装置C1の回転体24の外周部のフランジ242の上面よりも高位置にある。そして、回転体28の基部280の外周及びポケット283が、回転体24の基部240及びポケット243と水平方向に対向するようにこれと略等しい高さ位置にある。その上で、平面視回転体28のフランジ282の一部が回転体24のフランジ242の一部に上方から重なり、両者が上下方向に対向する。回転体24及び回転体28の同期回転に伴い、吸着孔244と吸着孔284とは、受け渡し位置27において一時的に重なり合う。回転体24の基部240の上面は回転体28のフランジ282の下面よりも若干低く、回転体24のフランジ242の上面は回転体28の基部280の下面よりも若干低いため、回転体24と回転体28とは干渉し合わない。
【0082】
受け渡し位置27では、回転体24の吸着孔244に捕捉されて移送されていた成形品Pが、回転体24のフランジ242上から回転体28のフランジ282の直下へと遷移する。このとき、成形品Pは、回転体28に形成されているポケット283に入り込み、かつ吸着孔284に捕捉される。成形品Pは、一つ一つの吸着孔284に一個ずつ収容される。これにより、搬送装置C1の回転体24の吸着孔244が並ぶ順番に、換言すれば成形機Aにおいて成形品Pを圧縮成形した順番を崩さずに、各吸着孔284に一個ずつ成形品Pを順番に係合させることができる。搬送装置C1の回転体24から搬送装置D1の回転体28への成形品Pの受け渡しの過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返ることはない。
【0083】
吸着孔284に捕捉された成形品Pは、回転体28の回転に伴い、吸着孔284の回転の軌跡に沿って移送される。各成形品Pは、各吸着孔284内において、回転体28及び吸着孔284に対する相対位置が略一定となる。成形品Pは、回転体28の回転により遠心力の作用を受けるが、吸着孔284に吸着してその変位が阻まれ、外側方に飛び出さず、かつ吸着孔284から落下しない。また、成形品Pの移送の過程で、成形品Pの上面と下面とが裏返らない。
【0084】
最終的に、吸着孔284に捕捉された成形品Pは、後述する排除装置D3によって排除されない限り、搬送装置D1による移送の終端位置Eまで移送される。そして、この終端位置Eにて回転体28の吸着孔284から離脱し、成形品Pに対して次の工程を実施する装置に受け渡され、あるいは成形品Pを回収する容器等に向けて流下することとなる。
【0085】
以降、回転体28のポケット283及び吸着孔284に成形品Pを吸着する機構について述べる。ポケット283内及び吸着孔284内にはそれぞれ負圧が供給され、これにより成形品Pをポケット283及び吸着孔284に吸着することができる。図12ないし図15に示すように、回転体28には予め、ポケット283内に負圧を供給するための吸引通路2851、2852が穿たれている。吸引通路2851、2852は、その始端がポケット283の内壁面における最も内側方の箇所に開口し、そこから回転体28の内部を回転体28の回転軸に向かって内側方に伸長する内部通路2851と、内部通路2851の終端に向けて回転体28をその上面から下方に掘削することで内部通路2851を回転体28の上面側に開通させる吸引孔2852とを有する。詳細には、内部通路2851は、回転体28の基部である下方の円板体280の上面に形成した上方に開口する溝である。この溝285は、回転体280の上面に接合する円板体281によって上方から閉塞される。そして、吸引口2852は、上方の円板体281における内部通路2851の終端の直上に位置する部位を上下方向に貫通している貫通孔である。この吸引通路2851、2852により、ポケット283内が、回転体28の上面におけるポケット283よりも内側方に偏倚した吸引口2852の位置に連通することとなる。吸引通路2851、2852の数は、ポケット283及び吸着孔284の組の数と同数である。
【0086】
ポケット283内に負圧を供給するためには、吸引口2852から内部通路2851及びポケット283内の雰囲気を吸引すればよい。回転体28の上方には、平面視回転体28の外周に沿って半円弧状をなすように拡張した、負圧供給用のダクト29を設置している。ダクト29は、回転体28の上面に極近接する底壁291と、底壁291の内側端及び外側端からそれぞれ起立する側壁292と、それら側壁292の上端同士を連接する頂壁293とで、その内部空間を囲繞している筒状体である。このダクト29の内部空間は、図示しないポンプにより吸引されて負圧化している。
【0087】
ダクト29の底壁291における、吸引口2852の直上に位置する部位には、平面視回転体28の回転軸を中心とした部分円弧状をなすスロット孔294を形成してある。スロット孔294は、底壁291を上下方向に貫通している。スロット孔は、回転体28の回転に伴い各吸込口2852が移動する軌跡に沿って拡張している。スロット孔294の拡張範囲は、回転体28の回転方向に沿って、搬送装置C1から成形品Pを受け取る受け渡し位置27よりも上流側から、同受け渡し位置27の下流の所定位置までの範囲に亘る。
【0088】
ポケット283内に負圧が供給される、即ちポケット283内が吸引されるのは、ポケット283と接続している吸引通路2851、2852の吸引口2852がスロット孔294の直下に所在している時期、即ち負圧化したダクト29の内部空間とポケット283内とが連通している時期に限られる。吸引口2852がスロット孔294の存在しない位置にあるときには、ダクト29の内部空間と吸引口2852との間に底壁291が介在し、ダクト29の内部空間とポケット283とが隔絶されて、ポケット283内が吸引されない。
【0089】
そして、ダクト29は、吸着孔284内に負圧を供給する役割をも担っている。ダクト29の底壁291における、吸着孔284の直上に位置する部位には、平面視回転体28の回転軸を中心とした部分円弧状をなすスロット孔295を形成してある。スロット孔295もまた、底壁291を上下方向に貫通している。スロット孔295は、回転体28の回転に伴い各吸着孔284が移動する軌跡に沿って拡張している。スロット孔295の拡張範囲は、回転体28の回転方向に沿って、搬送装置C1から成形品Pを受け取る受け渡し位置27から、搬送装置D1による成形品Pの搬送の終端位置Eの直前の位置までの範囲に亘る。
【0090】
吸着孔284内に負圧が供給される、即ち吸着孔284内が吸引されるのは、吸着孔284がスロット孔295の直下に所在している時期、即ち負圧化したダクト29の内部空間と吸着孔284内とが連通している時期に限られる。吸着孔284がスロット孔295の存在しない位置にあるときには、底壁291によりダクト29の内部空間と吸着孔284とが隔絶されて、吸着孔284内が吸引されない。
【0091】
搬送装置D1の回転体28のポケット283及び吸着孔284の組に、搬送装置C1の回転体24のポケット243及び吸着孔244に捕捉された成形品Pを受け渡す過程では、まず、受け渡し位置27の上流にあって成形品Pを保持していないポケット283及び吸着孔284の組が受け渡し27に向かって移動する。そして、これらが受け渡し位置27の直前の位置に至った時点で、そのポケット283と内部通路2851を介して接続している吸引口2852がスロット孔294の直下に到達し、負圧供給用のダクト29による当該ポケット283内の吸引が開始される。この時点で、当該ポケット283と組になっている吸着孔284は未だスロット孔295の直下には到達しておらず、吸着孔284内は吸引されない。
【0092】
他方、搬送装置C1においては、受け渡し位置27の上流にあって成形品Pを保持しているポケット243及び吸着孔244の組が受け渡し27に向かって移動する。そして、これらが受け渡し位置27の直前の位置に至った時点で、その吸着孔244がダクト25のスロット孔255の直上から離脱し、吸着孔244内が吸引されなくなり、成形品Pは吸着孔244に吸着しなくなる。さらに、それと略同時ないしその直後の時点で、成形品Pを吸着したポケット243と吸引通路2451、2452を介して接続している吸引口2452がスロット孔256の直上から離脱して、ポケット243内が吸引されなくなり、成形品Pはポケット243にも吸着しなくなる。従って、受け渡し位置27に到着した成形品Pは、搬送装置C1の回転体24のフランジ242に載せ置かれただけの、ポケット243にも吸着孔244にも拘束されていない状態となっている。
【0093】
搬送装置D1において、成形品Pを保持していないポケット283及び吸着孔284の組が成形品Pの受け渡し位置27に至った時点で、その吸着孔284がスロット孔295の直下に到達し、負圧供給用のダクト29による当該吸着孔284内の吸引が開始される。この時点では、ポケット283と内部通路2851を介して接続している吸引口2852が依然としてスロット孔294の直下に位置しており、ポケット283及び吸着孔284の双方に負圧が供給される。結果、受け渡し位置27にて、搬送装置C1の回転体24のフランジ242上の成形品Pが、搬送装置D1の回転体28のポケット283に向かって、回転体28の回転軸に接近する内側方に吸引されてフランジ284下に遷移し、ポケット283に係合する。これにより、当該成形品Pが、吸着孔284に対して一定の相対位置に位置決めされる。さらには、この成形品Pが、ポケット283だけでなく吸着孔284にも吸着する状態となる。
【0094】
回転体28が回転し、成形品Pを吸着したポケット283及び吸着孔284の組が受け渡し位置27から一定以上下流に移動すると、当該ポケット283と内部通路2851を介して接続している吸引口2852がスロット孔294の直下から離脱するため、ポケット283内は吸引されなくなり、よって成形品Pはポケット283には吸着しなくなる。一方で、成形品Pを吸着している吸着孔284は依然としてスロット孔295の直下に位置しているので、成形品Pは当該吸着孔284に吸着しながら捕捉され続ける。
【0095】
その後、成形品Pを吸着した吸着孔284が終端位置Eの直前の位置に至った時点で、その吸着孔284がスロット孔295の直下から離脱し、吸着孔284内が吸引されなくなり、成形品Pは吸着孔284に吸着しなくなる。従って、成形品Pが回転体28の吸着孔284から離脱してフランジ282から落下し、成形品Pに対して次の工程を実施する装置に受け渡され、あるいは成形品Pを回収する容器等に向けて流下する。
【0096】
回転体28の外周部における、受け渡し位置27から終端位置Eまでの成形品Pの搬送区間内の一部の区域には、モジュールDにおける処理装置として、成形品Pの外面の画像を撮影してその状態を検査する外面検査装置D2、及び成形品Pの外面の形状及び位置を検出する形状検査装置D4を設置している。なお、形状検査装置D4はモジュールCの形状検査装置C4とともに成形品Pの体積を計測する体積計測装置を構成する。
【0097】
図14に示すように、外面検査装置D2は、吸着孔284に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば下面を撮影し、その画像を取得するカメラセンサを有する。取得した画像は、成形品Pの外面の状態の検査に使用することができる。即ち、撮影した画像を解析し、又は正常な成形品Pの画像と比較する等して、成形品Pの外面の状態が正常であるか不良であるかを判定することができる。
【0098】
外観検査装置D2のカメラは、成形品Pの下面を撮影するに限らず、成形品Pの上面をも撮影するようにしてもよい。成形品Pの上面/下面を撮影した画像を解析し、成形品Pの幅、長さ、直径、面積等を測定することもできる。また、成形品Pの側面を撮影し、その状態が正常であるか不良であるかを判定することもできる。成形品Pの側面を撮影した画像を解析し、成形品Pの厚みを測定することもできる。外観検査装置D2における処理は、これらのうち何れかひとつを採用するに限らず、複数の処理を併合するようにしてもよい。
【0099】
上下方向から見た平面視において、吸着孔284の周縁は一周連続して閉じており、その周縁がこれに吸着される成形品Pの外縁よりも内に収まる寸法及び形状をなしている。その上で、成形品Pを捕捉する吸着孔284が外面検査装置D2の所在する区域を通過するときには、当該吸着孔284の内にダクト29から負圧が供給されていることから、成形品Pが当該吸着孔284にぴったりと付着して、吸着孔284の周縁と成形品Pの外縁との間に隙間が生じない。吸着孔284に吸着されて保定された成形品Pは、回転体28の回転方向に沿って搬送されながらも、回転体28及び吸着孔284に対する相対的な位置が一定化する。このことは、成形品Pをカメラで撮影して外面検査をする処理等のために有効である。
【0100】
形状検査装置D4は、吸着孔284に捕捉されて移送される各成形品Pの所定の面、例えば下面の形状及び位置を検出する。本実施形態にあって、形状検査装置D4は、既知の光切断法により、成形品Pの下面の形状及び位置の測定を実行する。形状検査装置D4の仕組み及び機能は、モジュールCの形状検査装置C4のそれと同様であり、ちょうど図16を上下反転させたような構造をなすものであるので、ここでは説明を割愛する。
【0101】
尤も、形状検査装置D4が、光切断法により成形品Pの下面の形状及び高さ位置を検出するとは限られない。例えば、成形品Pの下面の各所に向けてコヒーレントな光若しくは電磁波であるレーザを出射し、成形品Pで反射したレーザをセンサで受光するまでに要した時間を計測する態様の距離計を利用して、成形品Pの下面の形状及び高さ位置を測定することもできる。形状検査装置D4が、位相シフト法、空間コード化法、モアレ法、ステレオマッチング法等によって成形品Pの下面の形状及び高さ位置を検出することも考えられる。
【0102】
形状検査装置D4が使用する光若しくは電磁波の波長、つまりは光源から供給する光若しくは電磁波は、近赤外光であることがある。既に述べたとおり、近赤外光は、成形品Pが含有する有効成分等を破壊することが少ない上、人体に有害でなく防護が必要とならない。
【0103】
成形機Aのテーブル31、モジュールBの取出装置B1の回転体17、モジュールCの搬送装置C1の回転体24、そしてモジュールDの搬送装置の回転体28は、互いに同期して回転する。成形機A及び処理システムSの制御装置は、成形機Aの回転盤3、取出装置B1の回転体17、搬送装置C1の回転体24又は搬送装置D1の回転体28に付随する角位置センサ(ロータリエンコーダ等)が出力する信号を参照することで、回転体28の回転軸回りの周方向に沿って配列されている吸着孔284の各々が現在どの位置にあるのかを知得することができる。さらに言えば、成形機Aのテーブル31における何番目の臼孔4内で圧縮成形された成形品Pが、現在モジュールD内のどの位置にあるのかを知得することができる。これは、今外面検査装置D2のカメラの前を通過した、又は今形状検査装置D4のセンサの前を通過した成形品Pが、つまりは外面検査又は形状検査を行った成形品Pが、何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかが分かるということを意味する。制御装置は、外面検査装置D2又は形状検査装置D4を介して成形品Pの検査又は測定を行った結果に係る情報(対象の成形品Pの外面の状態や形状が正常であるか不良であるか等の判定結果を含む)を、その対象の成形品Pが何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0104】
モジュールCの品質検査装置C22は、個々の成形品Pの密度を計測する密度計測装置として働く。並びに、モジュールCの形状検査装置C4及びモジュールDの形状検査装置D4は、個々の成形品Pの体積を計測する体積計測装置として働く。即ち、形状検査装置C4が成形品Pの上面の形状及び高さ位置を測定し、かつ形状検査装置D4が同じ成形品Pの下面の形状及び高さ位置を測定することから、両者の測定結果を突き合わせることで、対象の成形品Pの厚みが判明し、当該成形品Pの体積を算出することができる。さらに、成形品Pの密度及び体積から、重量計を使用せずとも、当該成形品Pの重量を推算することができる。
【0105】
成形機A及び処理システムSの制御装置は、上記の密度計測装置及び体積計測装置を介して成形品Pの密度、体積及び重量を計測又は算出した結果に係る情報(対象の成形品Pの密度、体積及び/又は重量が正常であるか不良であるか等の判定結果を含む)を、その対象の成形品Pが何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて、記憶デバイスに記憶保持する。
【0106】
搬送装置D1の回転体28の吸着孔284に捕捉された成形品Pは、通常、その移送の終端位置Eまで移送される。しかしながら、特定の成形品P、例えば不良品やサンプリング品を、終端位置Eまで移送する成形品P群から選り分けて排除又は回収したいという要望も存在する。
【0107】
そこで、図12及び図15に示すように、モジュールDの搬送装置D1における、終端位置Eへと至る吸着孔284及び成形品Pの回転移動の軌跡の中途に、特定の成形品Pを排除するための排除装置D3を設置しておくことも好ましい。排除装置D3は、吸着孔284に係合している成形品Pに向けて圧縮空気Kを噴射する噴射ノズル301と、圧縮空気Kによって吹き飛ばされた成形品Pが落とし込まれるシュート302とを要素とする。噴射ノズル301及びシュート302は、成形品Pを吸着している吸着孔284を挟んで上下に対向するように配置されており、噴射ノズル301から噴射した圧縮空気Kにより吸着孔284に保持された成形品Pを吸着孔284から脱離させ、回転体28のフランジ282から剥落する当該成形品Pをシュート302で受けて回収する。この圧縮空気Kの噴射量(単位時間あたりの流量)及び噴射圧力は、僅かでよい。なお、噴射ノズル301の回転体28に対する相対的な位置や、噴射ノズル301から圧縮空気Kを噴射する向きは、成形品Pをフランジ282から剥落させることができる限りにおいて任意である。
【0108】
成形機A及び処理システムSの制御装置は、回転体28の各吸着孔284に係合している成形品Pが、成形機Aにおける何番目の臼孔4内で成形されたものであるのかを把握している。そして、制御装置は、成形品Pに対する各種の検査の結果、即ち圧縮成形時の圧縮圧力の異常の有無、異物の混入の有無、品質、外面、形状、密度、体積又は重量の異常の有無、等の情報を、各成形品P毎に、当該成形品Pが成形機Aにおける何番目の臼孔4で成形されたのかを示すID番号に関連づけて記憶している。従って、制御装置は、回転体28の各吸着孔284に係合している成形品Pがそれそれ正常品であるか不良品であるかを認識しており、不良の成形品Pが係合している吸着孔284の現在位置を知得することができる。
【0109】
制御装置は、不良の成形品Pを捕捉した吸着孔284が噴射ノズル301の近傍を通過するときに、圧縮空気Kの流通を制御するバルブ(噴射ノズル301に内蔵されていることがある)を開弁する制御信号を与え、噴射ノズル301から不良の成形品Pに向けて圧縮空気Kを噴射し、当該成形品Pを回転体28から脱落させて排除する。シュート302に落ちた成形品Pは、終端位置Eには到達することができない。
【0110】
吸着孔284に吸着している成形品Pは、回転体28の回転方向に沿って搬送されながらも、回転体28及び吸着孔284に対する相対的な位置が一定化する。このことは、特定の吸着孔284に係合する成形品Pに圧縮空気Kを噴射してこれを排除又は抽出する処理のためにも有効である。
【0111】
本実施形態において、取出装置B1の回転体17の回転軸、搬送装置C1の回転体24の回転軸、及び搬送装置D1の回転体28の回転軸は、歯車伝動機構を介して接続されており、これらは同期して回転する。回転体17、24、28を回転駆動するモータは一基存在し、このモータは取出装置B1の回転体17の回転軸に直結している。モータが出力する駆動力は、取出装置B1の回転体17を回転させるとともに、歯車伝動機構を介して搬送装置C1、D1の回転体24、28の回転軸にも伝達されて、回転体24、28を回転させる。
【0112】
成形品Pを移送するモジュールC、Dでは、個々の成形品Pに対して光学的な検査を実施する。モジュールC、Dにおける品質検査装置C22や外面検査装置C3、D2、形状検査装置C4、D4は、照明光源261、264から放射され、回転体24、28の吸着孔244、284に捕捉されている成形品Pの表層で反射した照明光若しくは電磁波L2、L3、PLを受光するセンサ263、265を備える。これに対し、モジュールCにおける異物検査装置C21は、光源261から放射され、回転体24の吸着孔244に捕捉されている成形品Pを透過した透過光若しくは電磁波L1を受光するセンサ262を備える。これら検査装置C21、C22、C3、C4、D2、D4による検査の精度を高めるためには、成形品Pの反射光L2、L3、PL又は透過光L1以外の光、特に回転体24、28に当たって乱反射した光が、検査装置C21、C22、C3、C4、D2、D4の要素である光学的なセンサ262、263、265に入射することを抑制することが要求される。
【0113】
そこで、本実施形態では、モジュールC、Dの搬送装置C1、D1の要素である回転体24、28における、少なくとも吸着孔244、284の周囲の部位の表面(特に、吸着孔244、284の内周面及びその開口縁に連なる円板体241、281の上下面、吸着孔244、284に臨むポケット243、283の内周面、ポケット243の周辺に位置する円板体240の上面、ポケット283の周辺に位置する円板体280の下面)に、光若しくは電磁波の反射を抑制する反射防止層を設けている。
【0114】
反射防止層は、例えば、回転体24、28を構成する部材である円板体240、241、280、281の表面に、光若しくは電磁波を吸収しその反射を低減する既知の反射防止効果のある塗料又は染料を塗布する(あるいは、円板体240、241、280、281を反射防止剤でコーティングする)ことで形成できる。ここで、塗布とは、円板体240、241、280、281の一部又は全部を反射防止塗料又は染料の溶解液中に浸漬することを含む。円板体240、241、280、281の略全体に反射防止塗料又は染料を塗布して、回転体24、28の略全域に反射防止層を設けることも好ましい。
【0115】
円板体240、241、280、281の素材がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、その表面に反射防止層を形成する処理は黒色アルマイト処理であることがある。周知の通り、アルマイト処理は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面を陽極酸化処理して酸化皮膜を生成するもので、その皮膜には無数の微細な孔が形成される。この皮膜に反射防止塗料又は染料を塗布することで、皮膜の表面のみならず微細孔の内にも反射防止効果のある着色剤(色素、顔料又は染料)が入り込んで付着する。このようなアルマイト着色では、塗料又は染料の塗布のみでは皮膜の微細孔の口が開いたままである可能性があるので、その孔を閉塞する封孔処理を別途施すことが好ましい。
【0116】
無論、反射防止塗料又は染料を塗布する代わりに、既知の反射防止フィルム又はシートを円板体240、241、280、281の表面に貼付して反射防止層を形成しても構わない。反射防止塗料、反射防止染料、反射防止フィルム又はシートは通常、黒色であるので、反射防止層を設けた回転体24、28の外表面は黒色となる。加えて、反射防止層の表面は、光若しくは電磁波の鏡面反射が抑制されて光沢のない、いわゆる艶消し状態となる。
【0117】
反射防止層を設けていない回転体24、28(の円板体240、241、280、281)の表面と比較して、反射防止層は、外面検査装置C3、D2の照明光源から放射される照明光の属する波長帯の光の反射率を低減し、異物検査装置C21若しくは品質検査装置C22の光源261から放射される光の属する波長帯の光の反射率を低減し、並びに、形状検査装置C4、D4の光源264から放射されるラインビームの属する波長帯の光の反射率を低減する。要するに、反射防止層は、可視光及び/又は赤外光の反射率を小さくする。反射防止層は、検査装置C21、C22、C3、C4、D2、D4の光源261、264から放たれる光以外の環境光を吸収してその反射を抑制する働きもする。
【0118】
回転体17及び保持体18を含む取出装置B1、回転体24、28及び吸引ダクト25、29を含む搬送装置C1、D1、取出装置B1及び搬送装置C1、D1の駆動源となるモータ、粉塵除去装置B2、異物検査装置C21、品質検査装置C22、外面検査装置C3、D2、形状検査装置C4、D4、並びに排除装置D3は、単一の支持体511に支持されて一個のユニットを構成している。そして、このユニットが、スライドレール機構を介して架台に支持されている。架台の下方には、床面に接地して転動するキャスタを装着しており、ユニットとともに架台を容易に移動させることができる。要するに、モジュールB、モジュールC及びモジュールDがユニット及び架台を介して一体化され、これらモジュールB、C、Dが一体となって成形機Aに対して着脱される。
【0119】
取出装置B1において成形品Pを収容する突起171間の空隙の寸法は、成形品Pそのものと比較して大きい。このため、成形機Aのテーブル31から取出装置Bの回転体17への成形品Pの受け渡しの位置精度が厳しくならない。よって、モジュールB、C、Dの架台及びユニットの成形機Aに対する据え付け位置の精度が顕著に高くなくとも、適正に成形品Pの取り出し及び移送を実行することができる。
【0120】
成形機Aは、封じ込め(コンテインメント)容器内に収められる。また、処理システムSの各モジュールB、C、Dも、封じ込め容器に収容されている。成形機Aの封じ込め容器とモジュールB、C、Dの封じ込め容器とは、ジョイントを介して接続する。このジョイントは、成形機Aを収容する封じ込め容器の内部空間と、モジュールB、C、Dを収容する封じ込め容器の内部空間とを連通させるとともに、前者の封じ込め容器と後者の封じ込め容器とを任意に着脱することができるものとなっている。成形機Aのテーブル31と取出機構B1の回転体17とが平面視重なり合う成形品取出位置16及びその周辺部位は、ジョイント内に収容される。
【0121】
封じ込め容器及びジョイントは、成形機A及び各モジュールB、C、Dを収容している内部空間の雰囲気の封じ込め容器外への意図せざる漏洩を抑止する。成形品Pの成形、成形機AとモジュールBとの間及び各モジュールB、C、D間での成形品Pの受け渡し、並びに成形品Pに対する後工程の処理、例えば成形品Pに付着した粉塵の除去や成形品Pの検査等は、おしなべて封じ込め容器内で実施される。後工程の処理の実施のために、成形品Pを系外排出する必要はない。従って、粉体を含む雰囲気が外部に漏出しない封じ込め環境を実現することができ、特に高薬理活性物質を含有する成形品Pの生産において有用となる。また、成形品Pへの汚染(コンタミネーション)も抑制することができる。
【0122】
モジュールB、C、Dに設けられる、成形品Pに対する後工程の処理を実施するための装置は、上述した例に限定されないことは言うまでもない。そのような装置の具体例としては、成形品Pにレーザ光を照射することでその外面に彫刻やレーザマーキングを施すレーザ加工機型の印字装置や、成形品Pの表面にインクジェット印刷を行うインクジェットプリンタ型の印刷装置、成形品PをPTP(Press Through Pack)包装シートやESOP(Easy Seal Open Pack)包装シート等に包装する包装装置、等を挙げることができる。
【0123】
本実施形態では、成形品Pを捕捉する捕捉部(吸着孔)244、284を有しその捕捉部244、284を変位させる運動を通じて成形品Pを移送する移送体24、28と、前記移送体24の捕捉部244に捕捉されて移送される成形品Pで反射した光若しくは電磁波L2を受光するセンサ263を介して当該成形品Pの密度を計測する密度計測装置(品質検査装置)C22と、前記移送体24、28の捕捉部244、284に捕捉されて移送される前記成形品Pで反射した光若しくは電磁波PLを受光するセンサ265を介して当該成形品Pの体積を計測する体積計測装置(形状検査装置)C4、D4とを具備する成形品搬送モジュールC、Dを構成した。本実施形態によれば、成形品搬送モジュールC、D内で搬送中の成形品Pの密度及び形状、体積ひいては重量の検査を同時期に実行でき、一個一個の成形品Pに対するその良否の検査を効率的に実施することができる。
【0124】
前記密度計測装置C22の要素である前記センサ263や、前記体積計測装置C4、D4の要素である前記センサ265は、前記成形品Pで反射した近赤外光L2、PLを受光する。即ち、密度計測装置C22及び体積計測装置C4、D4がそれぞれ、近赤外光を用いて成形品Pの密度及び体積の計測を行う。近赤外光は、可視光、紫外線、X線等と比較して成形品Pが含有する有効成分等を破壊することが少ないため、計測及び検査を経た成形品Pの商品価値が失われず、これをそのまま製品として市場に供給することが可能である。また、紫外線や放射線は人体に有害であり防護が必要となるが、近赤外光にはそのようなデメリットがない。
【0125】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、密度計測装置たる品質検査装置C22が、成形品Pで反射した光若しくは電磁波L2を基に成形品Pの含有成分に関する検査及び密度の計測を行っていた。これに対し、密度計測装置たる品質検査装置が、成形品を透過した光若しくは電磁波を基に、成形品の含有成分に関する検査及び密度の計測を行うこともあり得る。
【0126】
透過光を参照する成形品の品質検査及び密度の計測では、反射光を参照するそれと同様に、センサで受光した透過光の分光スペクトルを得、その分光スペクトルを参照して、換言すれば成形品による光の吸収及び/又は散乱を計測して、成形品に含まれる有効成分の濃度や添加剤の濃度、有効成分と添加剤との割合、有効成分と添加剤との混合の度合い、成形品の密度、成形品の硬度、その他の定性的又は定量的な分析を行う。
【0127】
本発明が対象とする成形品は、粉体圧縮成形機Aにより粉体を圧縮して成形される成形品Pには限定されない。原料を型に注入し、又は型の内で原料を加圧したり加熱したりする等して一定の形に加工した成形品一般に対して、本発明を適用することができる。
【0128】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【符号の説明】
【0129】
24…移送体(回転体)
244…捕捉部(吸着孔)
263、265…センサ
C、D…成形品搬送モジュール
C22…密度計測装置(品質検査装置)
C4、D4…体積計測装置(形状検査装置)
P…成形品
図1
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