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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】抗血小板粘着性を示す生分解性共重合体
(51)【国際特許分類】
   A61L 33/06 20060101AFI20240430BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20240430BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240430BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20240430BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20240430BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20240430BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240430BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20240430BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
A61L33/06 300
A61L27/34
A61L27/58
A61L29/08 100
A61L29/14 500
A61L31/10
A61L31/14 500
C08G63/08
C08L101/16 ZBP
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019174742
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2020056020
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018188697
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】寺境 光俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】廣川 誠
(72)【発明者】
【氏名】植木 重治
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 啓太
(72)【発明者】
【氏名】竹田 麻央
(72)【発明者】
【氏名】工藤 滉平
(72)【発明者】
【氏名】福岡 玲
(72)【発明者】
【氏名】疋田 正喜
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 希望
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273812(JP,A)
【文献】特開平09-132639(JP,A)
【文献】特開2000-237297(JP,A)
【文献】特開平03-139361(JP,A)
【文献】特開平02-203861(JP,A)
【文献】特表2009-542263(JP,A)
【文献】米国特許第04470416(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
C08G
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性成分と親水性成分との共重合体である脂肪族ポリエスルであって、
該親水性成分が、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)、または、ポリエチレンオキシドの少なくとも1つを含み、
該親水性成分のモル比が5%以上85%以下であり、
0.5μm以上の親水性成分のドメイン構造が形成されていないミクロ相分離構造が形成されている、抗血小板粘着性を示す生分解性マルチブロック共重合体からなる膜
【請求項2】
前記疎水性成分が、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、または、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の
【請求項3】
疎水性成分と親水性成分との共重合体である脂肪族ポリエステルであって、
該親水性成分が、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)、または、ポリエチレンオキシドの少なくとも1つを含み、
該親水性成分のモル比が5%以上85%以下であり、
0.5μm以上の親水性成分のドメイン構造が形成されていないミクロ相分離構造が形成されている、抗血小板粘着性を示す生分解性マルチブロック共重合体からなる成形体。
【請求項4】
前記疎水性成分が、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、または、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の成形体
【請求項5】
請求項1の膜または請求項3の成形体が、生体組織に接触する箇所に設けられている医療用具。
【請求項6】
請求項1の膜または請求項3の成形体が、生体組織に接触する箇所に設けられているカテーテル。
【請求項7】
請求項1の膜または請求項3の成形体が、生体組織に接触する箇所に設けられている癒着防止膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血小板粘着性を示す生分解性共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
抗血栓性材料(抗血小板粘着性を示す材料)の研究では日本が世界をリードしており、すでに生体膜を模倣したMPCポリマー(特許文献1)と、ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(特許文献2)が一部用途に対して実用化されている。
また、最近では、山形大学の田中、福島らが、脂肪族ポリカーボネートを主鎖とし、側鎖に親水性を付与した重合体を報告している(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-280398
【文献】特開2013-121430
【文献】特開2017-203062
【文献】特開2014-161675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、文献1、2の材料は、ビニルモノマーからの炭素-炭素結合を主鎖とする高分子であり、生分解性を示さない。このため、将来、取り出しの再手術を必要としない、生分解性と抗血栓性をあわせもつ材料の開発が世界的に求められている。
また、特許文献3、4の重合体は、生分解性と抗血栓性とを併せ持つ材料ではあるが、側鎖に親水性部位を有する共重合体であり、本開示の共重合体とは異なるコンセプトによる重合体である。
また、文献1、2、および、特許文献3、4の材料は、いずれも室温で柔らかく水を吸湿すると粘着性のある材料であり、形状安定性の点で課題がある。
以上、本願は、生分解性と抗血栓性とを併せ持ち、また、形状安定性に優れた、これまでにない新規構造の抗血小板粘着性を示す生分解性共重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を得た。
(1)脂肪族ポリエステルは、生分解性や生体吸収性を示すことが知られているが、親水性成分としてポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)(以下、PDXOという場合がある。)、ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)(以下、PDOという場合がある)、または、ポリエチレンオキシド(以下、PEOという場合がある。)の少なくとも1つを含む脂肪族ポリエステル共重合体が、さらに、低い血小板粘着性を示し、抗血栓性材料としてきわめて有望である。
なお、最も一般的な生分解性高分子であるポリ乳酸やポリ乳酸-ポリグルコール酸共重合体は抗血小板粘着性を示さない。また、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)は、親水性脂肪族ポリエステルであり、その合成自体は1989年に報告されていたが、これまで抗血小板粘着性は報告されていなかった。
(2)上記特定の親水性成分を含む脂肪族ポリエステル共重合体上では細胞培養が可能である。該共重合体は、生分解性、抗血栓性、および、細胞接着性をあわせもつ材料である。
(3)該共重合体は、生体内埋め込み材料へのコーティング、再生医療分野への細胞培養基材としての応用など、医療分野への様々な展開が期待される。
(4)該共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、または、マルチブロック共重合体(ランダムマルチブロック共重合体、交互マルチブロック共重合体)のいずれの形態であってもよく、いずれであっても、抗血栓性を示す。
(5)該共重合体において、PDXO、PDO、または、PEO成分が所定のモル比にて導入されていると、より良好な抗血栓性を示す。
(6)該共重合体はミクロ相分離構造を形成している場合に、より良好な抗血栓性を示す。
(7)該共重合体がブロック共重合体またはマルチブロック共重合体である場合、において、PDXOセグメント、PDOセグメント、または、PEOセグメントが所定の長さの場合に、より良好な抗血栓性を示す。
【0006】
上記知見に基づいて、本願は上記課題を解決するために、第1の形態として、疎水性成分と親水性成分との共重合体である脂肪族ポリエステルであって、該親水性成分が、ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)、または、ポリエチレンオキシドの少なくとも1つを含み、該親水性成分のモル比(該共重合体を構成する単量体全体における、親水性成分を構成する単量体の割合)が5%以上85%以下である、抗血小板粘着性を示す生分解性共重合体を開示する。
【0007】
第1の形態において、前記疎水性成分は、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、または、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0008】
第1の形態において、前記親水性成分と疎水性成分との結合は、ランダム、ブロック、マルチブロックのいずれかであることが好ましい。
【0009】
第1の形態において、親水性成分の結合様式はランダムでもブロックでもよいが、結合様式がブロックの場合は親水性成分のセグメント長は5量体以上であることが好ましい。
【0010】
本願は、上記課題を解決するために、第2の形態として、第1の形態の共重合体からなる、抗血小板粘着性および生分解性を有する薄膜を開示する。
【0011】
本願は、上記課題を解決するために、第3の形態として、第1の形態の共重合体からなる、抗血小板粘着性および生分解性を有する成形体を開示する。
【0012】
本願は、上記課題を解決するために、第4の形態として、第2または第3の形態の薄膜または成形体が、生体組織に接触する箇所に設けられている医療用具を開示する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の共重合体は、生分解性および抗血小板粘着性を示す。また、本開示の共重合体上では、細胞培養が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図2】実施例1で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図3】実施例2で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図4】実施例2で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図5】実施例3で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図6】実施例3で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図7】実施例3で得られた材料の原子間力顕微鏡(AFM)による位相像である。
図8】実施例4で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図9】実施例4で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図10】実施例4で得られた材料の原子間力顕微鏡(AFM)による形状像と位相像である。
図11】実施例5で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図12】実施例5で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図13】実施例6で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図14】実施例6で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図15】実施例7で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図16】実施例8で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図17】実施例9で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図18】実施例9で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図19】実施例10で得られた材料の顕微鏡観察画像(暗視野)である。
図20】実施例10で得られた材料の血小板粘着数を示したグラフである。
図21】実施例11(細胞培養試験、Hela細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上でのHeLa細胞培養の様子を示す画像である。
図22】実施例11(細胞培養試験、Hela細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上での、セルカウントによるHeLa細胞の培養挙動を示すグラフである。
図23】実施例11(細胞培養試験、Hela細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上での、WST試験によるHeLa細胞の培養挙動を示すグラフである。
図24】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上でのHUVEC細胞培養の様子を示す画像である。
図25】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上での、セルカウントによるHUVEC細胞の培養挙動を示すグラフである。
図26】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上での、WST試験によるHUVEC細胞の培養挙動を示すグラフである。
図27】実施例11(細胞培養試験、HeLa細胞、PLGA-PDO 交互MBC)で得られた材料上でのHeLa細胞培養の様子を示す画像である。
図28】実施例11(細胞培養試験、HeLa細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上でのHeLa細胞培養の様子を示す画像である。
図29】実施例11(細胞培養試験、HeLa細胞、PLGA-PDXO 交互MBC,PLGA-PDO 交互MBC)で得られた材料上での、セルカウントによるHeLa細胞の培養挙動を示すグラフである。
図30】実施例11(細胞培養試験、HeLa細胞、PLGA-PDXO 交互MBC,PLGA-PDO 交互MBC)で得られた材料上での、WST試験によるHeLa細胞の培養挙動を示すグラフである。
図31】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDO 交互MBC)で得られた材料上でのHUVEC細胞培養の様子を示す画像である。
図32】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)で得られた材料上でのHUVEC細胞培養の様子を示す画像である。
図33】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC,PLGA-PDO 交互MBC)で得られた材料上での、セルカウントによるHUVEC細胞の培養挙動を示すグラフである。
図34】実施例11(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC,PLGA-PDO 交互MBC)で得られた材料上での、WST試験によるHUVEC細胞の培養挙動を示すグラフである。
図35】実施例12で得られた材料の、加水分解による接触角変化を示すグラフである(pH7.4)。
図36】実施例12で得られた材料の、加水分解による残存成分の分子量変化を示すグラフである(pH7.4)。
図37】実施例13で得られた共重合体からなる自立膜の画像である。
図38】実施例13で得られた共重合体からなる自立膜の応力-ひずみ曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<抗血小板粘着性を示す生分解性共重合体>
本開示の共重合体は、疎水性成分と親水性成分とを構成成分として有する脂肪族ポリエスエル共重合体である。
抗血小板粘着性とは、材料表面に血小板が粘着しにくい性能であり、所定の血小板溶液を材料表面に接触させ、所定温度、所定時間インキュベートした後、材料上の血小板の数を、顕微鏡画像上でカウントすることにより、評価することができる。
本願の共重合体の抗血小板粘着性は、血小板濃度5.0×10platelets/mLの血小板溶液を接触させて、37℃、1時間インキュベートし、洗浄などの所定の処理を行った後の材料表面の血小板の数を顕微鏡画像上でカウントすることにより評価しているが、血小板の粘着数は使用した血小板溶液の状態により異なるため、粘着数の絶対値では評価できない。本願での血小板粘着試験ではコントロール(血小板がつきやすい表面PLGA-PCL 交互MBCと血小板が付きにくい表面PMEA)と同時に実験を行い、有意差検定を行って評価した。
【0016】
生分解性とは、加水分解、酵素分解、微生物分解等の作用により化学的に分解することが可能であることをいう。本開示の共重合体は、例えば、リン酸緩衝液(pH7.4)における加水分解試験において、14週後に好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上の重量減少を示す。
【0017】
(親水性成分)
本開示の共重合体は、親水性成分として、以下の式(1)で示すポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)、以下の式(2)で示すポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)、または、以下の式(3)で示すポリエチレンオキシドを含み、あるいは、これらから選ばれる複数を含んでいてもよい。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
(疎水性成分)
本開示の共重合体は、疎水性成分として、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)、または、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)の少なくとも1つを含む。
【0022】
(共重合体の結合形式)
前記親水性成分と疎水性成分との結合形式は、ランダム、ブロック(ジブロック、トリブロック)、マルチブロック(ランダムマルチブロック、交互マルチブロック)のいずれであってもよい。
ただし、親水性成分と疎水性成分とは共重合している必要があり、親水性成分からなる重合体と疎水性成分からなる重合体とのポリマーブレンドでは、本発明の効果を奏しない。
【0023】
(親水性成分のモル比)
本開示の共重合体における前記親水性成分のモル比(該共重合体を構成する単量体全体における、親水性成分を構成する単量体の割合)は、下限は、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは19%以上、特に好ましくは29%以上であり、上限は、好ましくは85%以下、より好ましくは74%以下、さらに好ましくは60%以下、である。一般的に、親水性成分のモル比を大きくすると、抗血小板粘着性が向上する傾向があるが、上記上限を超えると、抗血小板粘着性が大きく低下する。これは、親水性成分のドメイン径が大きくなり、所定のミクロ相分離構造を維持できなくなったためだと考えられる。
【0024】
(共重合体の表面構造)
本開示の共重合体は、良好な抗血小板粘着性を示す点から、疎水性成分と親水性成分とが、均一な表面構造、または、ミクロ相分離構造を有していることが好ましく、ミクロ相分離構造を形成していることがより好ましい。
共重合体中に、親水性成分(PDXO、PDO、または、PEOから選ばれる一種以上)が導入されていれば、共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、親水性成分からなる重合体のみの場合、または、親水性成分からなる重合体と疎水性成分からなる重合体のブレンドの場合は、抗血小板粘着性が劣っており、例えば、図7に示したように、0.5μm以上の親水性成分の大きなドメイン構造が形成されていると好ましくないことが分かっている。
【0025】
(親水性成分のセグメント長)
また、本開示の共重合体がブロック共重合体またはマルチブロック共重合体である場合、前記親水性成分のセグメント長は5量体以上であることが好ましく、10量体以上であることがより好ましい。親水性成分のセグメント長を5量体以上とすることにより、良好な抗血小板粘着性を示すことができる。
【0026】
(分子量)
本開示の共重合体の数平均分子量は、好ましくは10,000~150,000、より好ましくは20,000~100,000、さらに好ましくは30,000~80,000である。分子量を上記下限以上とすることにより、力学特性を良好なものとすることができ、分子量を上記上限以下とすることにより、加水分解性を良好にすることができる。
【0027】
<共重合体の製造方法>
本願の共重合体は、親水性成分を形成する単量体として、1,5-ジオキセパン-2-オン、または、1,4-ジオキサン-2-オンの少なくとも1つを用いて、開環重合を行って形成することができる。また、親水性成分であるポリエチレンオキシドは、エチレングリコールを重合して形成してもよいし、市販のポリエチレンオキシドを使用してもよい。また、疎水性成分を形成する単量体としては、L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、グリコール酸、またはこれらの混合物を用いて、脱水縮合を行って形成してもよいし、L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド、グリコリド、または、これらの混合物を用いて、開環重合を行って形成してもよい。
重合方法は特に限定されず、ランダム、ブロック、マルチブロックなど、所望の重合形態となるように、適宜、公知の重合方法(開始剤、溶媒、重合温度等)を採用することができる。
【0028】
<膜、抗血栓性材料>
本開示の共重合体は、該共重合体が溶解可能な溶媒として、例えば、クロロホルムに溶解させ溶液を調整し、該溶液を適当な手段により、基体(例えば、ガラス基板)上に略均一の厚みにキャストし、溶液中の溶媒を除去するために、適宜、真空オーブン等を使用して乾燥させることにより製膜することが可能である。膜の厚みは特に限定されず、必要とされる用途により適宜調整することができるが、概ね、好ましくは0.5~60μmとすることができる。また、乾燥時間は、該厚みにより適宜調整される。
上記膜は、基体とともに、抗血栓材料として使用してもよいし、また、基体から膜を単離して自立膜として使用してもよい。
また、膜以外にも、本開示の共重合体を用いて、種々の立体形状に成形することが可能であり、成形体としても使用することができる。成形体の形状は特に限定されず、用途に応じて、種々の形態とすることが可能である。各種成形体への成形方法については、公知の樹脂材料の成形方法を採用することができる。
(用途)
本開示の膜、抗血栓材料の用途としては、生体内組織や血液に接して使用されたときに、分解されるまでの間、血液や組織に対して異物反応を抑制するための用途であり、例えば、止血剤、生体組織の粘着剤、組織再生用の補修材、癒着防止膜、薬物徐放システムの担体、細胞工学用の足場のためのマトリックス、ステント材料の表面コーティング、繊維系人工血管のシール剤等が挙げられる。
【0029】
(力学特性)
本開示の共重合体を含む膜、または、成形体は、共重合体組成やセグメント長により様々な力学特性を示す。特に10量体以上の疎水性セグメントをもつ共重合体はミクロ相分離構造を形成し,自立膜の作成が可能となり以下の力学特性を示す。
・ヤング率(25℃)が、好ましくは5MPa以上、より好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上である。
・破断伸び(25℃)が、好ましくは100%以上、より好ましくは300%以上、さらに好ましくは500%以上である。
・引張強度(25℃)が、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上である。
以上のように、本開示の共重合体からなる膜および成形体は、室温(25~45℃)、特に体温(35から40℃)において、自立膜が作成可能であり、取扱いが容易であり、よく伸び、タフな膜である。よって、本開示の共重合体からなる膜および成形体は、生体適合材料として好適な力学特性を備えている。
【0030】
<医療用具>
本開示の共重合体からなる薄膜または成形体を、医療用具における生体組織に接触する箇所に設けることができる。医療用具としては、例えばカテーテル、ステント、人工血管、癒着防止膜、人工臓器、生体内埋め込み型装置等を挙げることができる。中でも、本開示の薄膜または成形体は、生分解性と抗血小板粘着性を併せ持つ観点から、生体埋め込み用の人工血管、癒着防止膜、ステントの表面コーティング材料、繊維系人工血管のシール剤に適用することがより好ましい。
また、本開示の薄膜または成形体は、これら用具において血液と接触する部分の材料として、特に、血液と接触する部分の一部、好ましくは全部の材料として、用いることが好ましい。
【実施例
【0031】
<合成例1>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)25量体交互マルチブロック共重合体(PLGA-PDXO 交互MBC)の合成(工程1)ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマー25量体の合成
【0032】
【化4】
【0033】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にDPP(ジフェニルフォスフェート)(0.344g、1.37mmol)を加え、脱水トルエン32mLを加え溶解させた。これにDXO(3.98g、34.3mmol)とベンジルアルコール(144μL、1.37mmol)を加えて室温で18h反応させた。反応後アンバーリストA21を加えて30min振とうし、ろ過によりアンバーリストA21を取り除いた。ろ液をエバポレーターで乾固して40℃で一晩乾燥させ、ベンジル末端を持つポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマー25量体を得た(収量:4.31g、収率:104%、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.14、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):7.38(m、5H、ArH)、5.14(s、2H、ArCH 2 )、4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O))。
【0034】
(工程2)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)25量体ジブロック共重合体の合成と脱保護
【0035】
【化5】
【0036】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にL-ラクチド(1.266g、8.78mmol)、グリコリド(0.113g、0.98mmol)、チオウレア(0.180g、0.49mmol)を加えた。エッペンドルフチューブにベンジル末端を持つPDXOオリゴマー25(1.00g、0.39mmol)を入れ脱水ジクロロメタン2mLで溶解させたものをシュレンク管に加えたのち、脱水ジクロロメタン3mLで溶解させ、MeTREN(124.8μL、0.49mmol)を加えて室温で3h反応させた。反応後安息香酸0.12gを加えてクエンチし、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過をした後40℃で一晩真空乾燥し、白色固体としてポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)25量体ジブロック共重合体を得た(収量:1.97g、収率:82%、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.12、1H NMR(500 MHz、CDCl3):7.38(m、5H、ArH)、5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、5.14(s、2H、ArCH 2 )、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))。
【0037】
ジブロック共重合体1.8gをTHF80mLに溶解させてPd/Cを0.18g加えた。これを窒素置換したのち、水素雰囲気下,室温で24h反応させた。これを窒素置換し、セライトろ過によりPd/Cを取り除いたのち、ろ液をエバポレーターで濃縮してメタノール再沈殿をし、吸引ろ過により回収した後40℃で真空乾燥させ、脱保護したジブロック共重合体を得た(収量:1.74g、収率:91%、1H NMR(m、500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))。
【0038】
(工程3)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)25量体交互マルチブロック共重合体の合成
【0039】
【化6】
【0040】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)25量体ジブロック共重合体(1.00g、0.138mmol)、ジメチルアミノピリジン p-トルエンスルホン酸(8.8mg、0.028mmol)、ジメチルアミノピリジン(7.4mg、0.055mmol)を加えて、脱水ジクロロメタン3mLを加えて溶解させた。その後脱水のためモレキュラーシーブを加え一晩振とうさせ、DIPCI(40.9μL、0.276mmol)を加えて室温で24h振とうにより反応させた。反応後、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過の後40℃で真空乾燥し目的物を得た(収量:0.699g、収率:68%、GPC(CDCl3):Mw=72,000、Mw/Mn=1.84、1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))。
【0041】
<合成例2>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)ランダムマルチブロック共重合体(PLGA-PDXO RMBC 50:50)の合成
(工程1)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)共重合体オリゴマー25量体の合成
【0042】
【化7】
【0043】
ヒートガンで空焼きし、窒素置換したシュレンク管にL-ラクチド(5.295g、36.7mmol)、グリコリド(0.473g、4.07mmol)、チオウレア(0.765g、2.04mmol)を加え、脱水ジクロロメタン30mLを加えて溶解させた。ここにベンジルアルコール(144μL、1.38mmol)を加え溶解させたのち、MeTREN(522μL、1.86mmol)を加えて室温で1h反応させた。反応後、安息香酸0.5gを加えてクエンチし、メタノールに再沈殿した後40℃で真空乾燥させて白色固体としてベンジル末端を持つポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)共重合体(PLGA)オリゴマー25量体を得た(収量:5.09g、収率:86%、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.17、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):7. 38(m、5H、ArH)、5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、5.14(s、2H、ArCH 2 )、4.81(m、2H、COCH 2 O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))。
【0044】
(工程2)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)共重合体オリゴマー25量体の脱保護
【0045】
【化8】
【0046】
ベンジル末端を持つPLGAオリゴマー2.5gをTHF 100mLに溶解させ、Pd/C 0.25gを加えた。これを窒素置換したのち、水素雰囲気下,室温で48h反応させた。これを窒素置換したのちセライトろ過・メンブレンろ過によりPd/Cを取り除き、ろ液をエバポレーターで乾固した後、クロロホルム15mLで再溶解させ、氷浴メタノールで再沈殿した後40℃で真空乾燥させ、白色固体としてベンジル末端を外したポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)共重合体オリゴマー25量体(PLGA25)を得た(収量:2.32g、収率:92%、1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))。
【0047】
(工程3)ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマー25量体の合成(脱保護)
【0048】
【化9】
【0049】
合成例1工程1で合成したベンジル末端を持つPDXOオリゴマー4.3gをTHF 180mLに溶解させ、Pd/C 0.43gを加えた。これを窒素置換したのち、水素雰囲気下,室温で24h反応させた。これを窒素置換したのち、セライトろ過によりPd/Cを取り除き、ろ液をエバポレーターで乾固した後40℃で一晩真空乾燥させ、ベンジル末端を外したポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマー25量体(PDXO25)を得た(収量:4.72g、収率:110%、1H NMR(500 MHz、CDCl3):4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O))。
【0050】
(工程4)仕込み比50:50のポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)25量体ランダムマルチブロック共重合体(PLGA-PDXO RMBC 50:50)の合成
【0051】
【化10】
【0052】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にPLGA25(0.5g、0.138mmol)、脱保護したPDXO25(0.388g、0.138mmol)を加えたのち、ジメチルアミノピリジン p-トルエンスルホン酸(15.6mg、0.055mmol)、ジメチルアミノピリジン(13.1mg、0.110mmol)を加えて脱水ジクロロメタン3mLで溶解した。その後脱水のためモレキュラーシーブを加えて一晩振とうし、ジイソプロピルカルボジイミド(82.9μL、0.552mmol)を加えて室温で24h振とうさせて反応させた。反応後、メタノールにより再沈殿を行い、吸引ろ過により回収した後40℃で真空乾燥させて白色繊維状固体として目的物を得た(収量:0.70g、収率:80%、GPC(CHCl3):Mw=89,000、Mw/Mn=1.67、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:64/36)。
【0053】
以下の仕込み比の異なるランダムマルチブロック共重合体はPLGA25とPDXO25の仕込み比を変えて合成した。
PLGA-PDXO RMBC 13:87(収量:0.48g、収率:58%、GPC(CHCl3):Mw=52,000、Mw/Mn=1.98、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:13:87)。
【0054】
PLGA-PDXO 26:74(収量:0.59g、収率:75%、GPC(CHCl3):Mw=65,000,Mw/Mn=1.48、
1H NMR(500 MHz,CDCl3):5.18(q,1H,COCH(CH3)O),4.81(m,2H,COCH 2 O), 4.25(t,2H,OCH2CH 2 O),3.78(t,2H,COCH2CH 2 O)3.66(t,2H,OCH 2 CH2O),2.62(t,2H,COCH 2 CH2O),1.58(d,3H,COCH(CH 3 )O),PLGA/PDXO比:26:74)。
【0055】
PLGA-PDXO RMBC 40:60(収量:0.27g、収率:63%、GPC(CHCl3):Mw=65,000、Mw/Mn=1.76、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:40/60)。
【0056】
PLGA-PDXO RMBC 50:50(収量:0.33g、収率:75%、GPC(CHCl3):Mw=55,000、Mw/Mn=1.55、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:50/50)。
【0057】
PLGA-PDXO RMBC 71:29(収量:0.34g、収率:74%、GPC(CHCl3):Mw=68,000、Mw/Mn=1.57、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:71/29)。
【0058】
PLGA-PDXO RMBC 81:19(収量:0.40g、収率:85%、GPC(CHCl3):Mw=123,000、Mw/Mn=1.65、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:81/19)。
【0059】
PLGA-PDXO RMBC 94:6(収量:0.83g、収率:79%、GPC(CHCl3):Mw=78,000、Mw/Mn=1.96、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、 4.25(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.78(t、2H、COCH2CH 2 O)3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLGA/PDXO比:94/6)。
【0060】
<合成例3>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)ジブロック共重合体(PLGA-PDXO DBC)の合成
(工程1)Bn-OH(ベンジルアルコール)を開始剤としたポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマーの合成
【0061】
【化11】
【0062】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイアフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。DXO(815μL、7.75mmol)、触媒としてDPP(ジフェニルフォスフェート)(19.4mg、0.078mmol)、開始剤としてBn-OH(8.03μL、0.078mmol、脱水トルエン10倍希釈)を加え、オイルバス中で80℃で7.5時間攪拌し反応させた。反応終了後、アンバーリストA21、ジクロロメタンを入れ、30分振とうさせた。その後、ろ過、ジクロロメタン洗浄し、エバポレーターで濃縮し、氷浴中でナス型フラスコにヘキサン再沈殿した。その後デカンテーションし、フラスコごと100℃で1時間真空乾燥し、その後室温に戻しながら一晩真空乾燥させて液状のポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン) オリゴマーを得た。(収量:0.905g、 収率: 100%)。1H NMR (500MHz、 CDCl3) : 7.35 (m、5H、C6 H 5 )、5.13 (s、2H、C6H5CH 2 O)、4.23(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.75(t、2H、COCH2 CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2)、重合度n=110(NMR)。
【0063】
(工程2)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)ジブロック共重合体(PLGA-PDXO DBC)の合成
【0064】
【化12】
【0065】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイヤフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。開始剤として工程1で合成したベンジル末端を持つポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマー(重合度110、0.905g、0.703mmol)、モノマーとしてL-ラクチド(1.00g、6.96mmol)及びグリコリド(897mg、0.773mmol)、触媒としてDBU(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)(58.9μL、0.386mmol)、脱水THF(4ml)を入れ、室温で1時間攪拌し、反応させた。その後、安息香酸(53.9mg、0.445mmol)を入れ10分間撹拌し、DBUを失活した後、氷浴中でメタノール再沈殿し、吸引ろ過、40℃で一晩真空乾燥し、白色粉末状固体としてベンジル末端を持つポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)ジブロック共重合体を得た。(収量: 1.77g、収率: 88.5%)
1H NMR (500MHz、CDCl3): 7.35(m、5H、C6 H 5 )、5.16(q、1H、COCH(CH3)O)、4.83(m、2H、COCH 2 O)、4.23(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.76(t、2H、COCH2 CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、 重合度n=125、x=112、y=12(NMR)
【0066】
(工程3)PLGA-PDXO DBCの脱保護
【0067】
【化13】
【0068】
ナスフラスコにベンジル末端を持つPLGA-PDXO DBC(1.77g)、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)(75ml)、Pd/C(0.20g)を入れ、ダイヤフラムポンプを用いて脱気および窒素置換、水素置換した。その後水素風船をつけて、室温で一晩激しく攪拌した。反応終了後、エバポレーター乾固し、クロロホルムに溶媒置換して3時間撹拌した。その後セライトろ過し、ろ液を減圧濃縮し、氷浴メタノールに再沈殿、吸引ろ過、40℃で一晩真空乾燥し、ベンジル末端を外したPLGA-PDXO DBCの白色粉状の固体を得た。(収量:1.65g、収率:93.2%)
1H NMR (500MHz、CDCl3): 5.16(q、1H、COCH(CH3)O)、4.83(m、2H、COCH 2 O)、4.23(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.76(t、2H、COCH2 CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.66(t、2H、COCH 2 CH2)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)
【0069】
<合成例4>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)-ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)トリブロック共重合体(PLGA-PDXO-PLGA TBC)の合成
(工程1) 2-メチル-1,3-プロパンジオールを開始剤とした両末端OH ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマーの合成
【0070】
【化14】
【0071】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイアフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。DXO(815μL、7.75mmol)、触媒としてDPP(ジフェニルフォスフェート)(3.88mg、17.2mmol)、開始剤として2-メチル-1,3-プロパンジオール(9.70mg、3.88×10-5mol、THFで10倍希釈)加え、80℃で7.5時間攪拌し、反応させた。反応終了後、アンバーリストA21、ジクロロメタンを入れ、30分振とうさせた。その後、ろ過、ジクロロメタンで洗浄し、エバポレーターで濃縮、氷浴ヘキサン再沈殿した。再沈殿後、デカンテーションし、エバポレーター乾固した。その後、減圧下でオイルバスで100℃まで加熱し、3時間乾燥させたのち、室温で一晩真空乾燥させ、液状の両末端OH ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマーを得た。(収量: 0.780g、収率: 86.7%)
1H NMR (500MHz、CDCl3): 4.23(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.75(t、2H、COCH2 CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2)、0.99(d、3H、 CH2CH(CH 3 )CH2)、重合度2n=295(NMR)
【0072】
(工程2)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)-ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)トリブロック共重合体(PLGA-PDXO-PLGA TBC)の合成
【0073】
【化15】
【0074】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイヤフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。開始剤として両末端OH ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)オリゴマー(0.719g、0.0212mmol)、モノマーとしてL-ラクチド(823mg、5.71mmol)及びグリコリド(73.1mg、0.634mmol)、触媒としてDBU(48.3μL、0.317mmol)、脱水THF(4ml)を入れ、室温で1時間攪拌し、反応させた。その後、安息香酸(77.4mg、0.635mmol)を入れ10分間撹拌し、DBUを失活した後、氷浴中でメタノール再沈殿し、吸引ろ過、40℃で一晩真空乾燥し、白色粉末のPLGA-PDXO-PLGA TBCを得た。(収量:1.54g、収率:95.2%)
1H NMR (500MHz、CDCl3): 5.17 (q、1H、COCH(CH3)O)、4.83 (m、2H、COCH 2 O)、4.23(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.76(t、2H、COCH2 CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、0.99(d、3H、CH2CH(CH 3 )CH2)、重合度n=300、m=262、l=28.1(NMR)
【0075】
<合成例5>
ポリ(L-ラクチド)-ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)ランダム共重合体(PLLA-PDXO RC)の合成
【0076】
【化16】
【0077】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイアフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。DXO(583μL、5.55mmol)、L-ラクチド(0.800g、5.55mmol)、触媒としてSn(Oct)(5.08μL、L-ラクチド×0.4wt%)を加え、オイルバス中で100℃で0.5時間攪拌した。その後130℃で8時間撹拌し、反応させた。反応終了後、酢酸を数滴とクロロホルムを4ml加え触媒を失活させた。その後氷浴中でジエチルエーテル再沈殿した。その後デカンテーションし、室温で一晩真空乾燥させて粘性のある半液状のPLLA-PDXO RCを得た。(収量:1.28g、収率: 88.8%)
1H NMR (500MHz、CDCl3): 5.16(m、1H、COCH(CH3)O)、4.29 (m, 2H, OCH2CH 2 O)、4.23(t、2H、OCH2CH 2 O)、3.76(t、2H、COCH2 CH 2 O)、3.66(t、2H、OCH 2 CH2O)、2.68(m, 2H, COCH 2 CH2)、2.62(t、2H、COCH 2 CH2)、1.59(d、3H、COCH(CH 3 )O)、1.52(m、3H、COCH(CH 3 )O)、Mw=53000、Mw/Mn=1.65(GPC)
【0078】
<合成例6>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)交互マルチブロック共重合体(PLGA-PDO 交互MBC)の合成
(工程1)Bn-OH(ベンジルアルコール)を開始剤としたポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)オリゴマーの合成
【0079】
【化17】
【0080】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイアフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。1,4-ジオキサン-2-オン(2.8 mL、34.7mmol)、触媒としてDPP(ジフェニルフォスフェート)(434.6mg、1.74 mmol)、開始剤としてBn-OH(179.5μL、1.74 mmol)を加え、オイルバス中で110℃で1時間攪拌し反応させた。反応終了後、アンバーリストA21、ジクロロメタンを入れ、30分振とうさせた。その後、ろ過によりアンバーリストを取り除き、ろ液をエバポレーターで濃縮し、メタノールに再沈殿し、ろ過により回収した。40℃で12時間真空乾燥させてポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)(PDO) オリゴマーを得た。(収率: 66%)。1H NMR (500MHz、 CDCl3) : 7.36 (m、5H、C6 H 5 )、5.18 (s、2H、C6H5CH 2 O)、4.35(t、2H、OCH2CH 2 OCO)、4.18(s、2H、COCH 2 O)、3.79(t、2H、OCH 2 CH2OCO)、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.47、重合度n=22.5(NMR)。
【0081】
(工程2)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)ジブロック共重合体の合成と脱保護
【0082】
【化18】
【0083】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にベンジル末端をもつPDOオリゴマー(重合度22.5、1.843 g、0.767mmol)、L-ラクチド(2.633g、18.27mmol)、グリコリド(0.2356g、2.03mmol)、脱水ジクロロメタン10mLを加えた。ドライヤーでシュレンク管を温めながらかくはんすることですべてを溶解させ、室温に冷やしてから触媒としてDBU(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)(147.7μL、1.02mmol)を加え、室温で1時間攪拌し、反応させた。反応後安息香酸0.12gを加えてクエンチし、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過をした後40℃で一晩真空乾燥し、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)ジブロック共重合体を得た(収率:83%、1H NMR(500 MHz、CDCl3):7.35 (m、5H、C6 H 5 )、5.18 (s、2H、C6H5CH 2 O)、5.16 (q、1H、COCH(CH3)O)、4.83(m、2H、COCH 2 OCO)、4.35(t、2H、OCH2CH 2 OCO)、4.18(s、2H、COCH 2 O)、3.79(t、2H、OCH 2 CH2OCO)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.48。PDO重合度(n)=21.5、PLGA重合度(x+y)=23.1(NMR)
ナスフラスコにベンジル基をもつジブロック共重合体4.789gをヘキサフルオロイソプロパノール200mLに溶解させてPd/Cを0.479g加えた。これを窒素置換したのち、水素雰囲気下,室温で20h反応させた。反応終了後、窒素置換してからエバポレーターで濃縮乾固し、クロロホルムを加えて溶媒置換した。これをセライトろ過してPd/Cを取り除いたのち、ろ液をエバポレーターで濃縮して氷浴メタノール再沈殿をし、吸引ろ過により回収した。40℃で12時間真空乾燥させ、脱保護したジブロック共重合体(PLGA-PDO DBC)を得た(収率:81%、1H NMR(500 MHz、CDCl3): 5.16 (q、1H、COCH(CH3)O)、4.83(m、2H、COCH 2 OCO)、4.35(t、2H、OCH2CH 2 OCO)、4.18(s、2H、COCH 2 O)、3.79(t、2H、OCH 2 CH2OCO)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.30。
【0084】
(工程3)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)-ポリ(1,4-ジオキサン-2-オン)交互マルチブロック共重合体の合成
【0085】
【化19】
【0086】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にPLGA-PDO DBC(1.00g)、ジメチルアミノピリジン p-トルエンスルホン酸(8.7mg)、ジメチルアミノピリジン(2.2mg)、脱水ジクロロメタン10mLを加えて溶解させた。その後脱水のためモレキュラーシーブを加え一晩振とうさせ、DIPCI(55.4μL)を加えて室温で3h振とうにより反応させた。反応後、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過の後40℃で12時間真空乾燥し目的物を得た(収率:96%、GPC(CDCl3):Mw=120,000、Mw/Mn=1.63、1H NMR(500 MHz、CDCl3): 5.16 (q、1H、COCH(CH3)O)、4.83(m、2H、COCH 2 OCO)、4.35(t、2H、OCH2CH 2 OCO)、4.18(s、2H、COCH 2 O)、3.79(t、2H、OCH 2 CH2OCO)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O))。
【0087】
<合成例7>
ポリ(L-ラクチド)50量体-ポリエチレンオキシド共重合体(PLLA-PEO 交互MBC)の合成
(工程1)ポリ(L-ラクチド)25量体-ポリエチレンオキシド-ポリ(L-ラクチド)25量体トリブロック共重合体(PLLA25-PEO-PLLA25 TBC)の合成
【0088】
【化20】
【0089】
ヒートガンで空焼きし窒素置換した100mLシュレンク管にポリエチレングリコール(分子量2050)(1.424g、0.694mmol)を加え、オイルバス中100℃で一晩攪拌し、脱水した。これを室温まで冷却した後、L-ラクチド(5.00g、34.7mmol)を加え、脱水ジクロロメタン25mLを加え溶解させた。これに触媒としてDBU(ジアザビシクロウンデセン)(260μL、0.175mmol)を加え、室温で1時間攪拌し、反応させた。反応後安息香酸(0.423g、0.347mmol)を加えて10分間攪拌し、DBUを失活させた後、ジエチルエーテル再沈殿し、吸引ろ過、40℃で一晩真空乾燥し、白色粉末固体として、ポリ(L-ラクチド)25量体-ポリエチレンオキシド-ポリ(L-ラクチド)25量体トリブロック共重合体(PLLA25-PEO-PLLA25 TBC)を得た。(収量:4.77 g、収率:74.4 %、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.19、1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.16(q、1H、COCH(CH3)O)、3.64(s、4H、OC2 H 4 )、1.59(d、3H、COCH(CH 3 )O)重合度m=51(1H NMR、乳酸単位))。
【0090】
(工程2)無水コハク酸を末端導入したポリ(L-ラクチド)25量体-ポリエチレンオキシド-ポリ(L-ラクチド)25量体トリブロック共重合体(HOOC-PLLA25-PEO-PLLA25-COOH TBC)の合成
【0091】
【化21】
【0092】
ヒートガンで空焼きし窒素置換した50mLシュレンク管に(工程1)で合成したトリブロック共重合体(2.0g、0.216mmol)、トリエチルアミン(75.2μL、0.540mmol)、無水コハク酸(0.054g、0.540mmol)、DMAP(ジメチルアミノピリジン)(2.00mg、0.0173mmol)を加え、そこへ脱水ジクロロメタン10mLを加え、室温で12時間攪拌し、反応させた。その後、反応溶液をクロロホルム100mLで希釈し、蒸留水100mLで3回、0.5wt%クエン酸溶液で3回、500mL分液漏斗を用いて分液を行った。その後、クロロホルム溶液を回収し、エバポレーターを用いて乾固させ、40℃で真空乾燥し、白色粉末固体として、無水コハク酸を末端導入したポリ(L-ラクチド)25量体-ポリエチレンオキシド-ポリ(L-ラクチド)25量体トリブロック共重合体(HOOC-PLLA25-PEO-PLLA25-COOH TBC)を得た。(収量:1.67 g、収率:84.2 %、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.22)1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.16(q、1H、COCH(CH3)O)、3.64(s、4H、OC2 H 4 )、2.73(t、4H、OCO(CH 2 )2COOH)1.59(d、3H、COCH(CH 3 )O)
【0093】
(工程3)ポリ(L-ラクチド)50量体-ポリエチレンオキシド共重合体(PLLA50-PEO 交互MBC)の合成
【0094】
【化22】
【0095】
ヒートガンで空焼きし窒素置換した20mLシュレンク管に、(工程1)で合成したトリブロック共重合体(0.5g、0.0541mmol)、(工程2)で合成したトリブロック共重合体(0.511g、0.0541mmol)、DPTS(ジメチルアミノピリジン p-トルエンスルホン酸)(2.64mg、0.0108mmol)、DMAP(ジメチルアミノピリジン)(2.64mg、0.0216mmol)を加え、そこへ脱水ジクロロメタン5mLを加えて攪拌し、溶解させた。その後、DIPCI(N,N´-ジイソプロピルカルボジイミド)(25.0μL、0.162mmol)を加えて15時間攪拌し、反応させた。反応後、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過、40℃で真空乾燥させ、白色の繊維状の固体として、ポリ(L-ラクチド)50量体-ポリエチレンオキシド共重合体(PLLA50-PEO 交互MBC(PLLA:PEO=78:22))を得た。(収量:0.797 g、収率:79.2 %、GPC(CHCl3): Mw=113000、Mw/Mn=1.73)1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.16(q、1H、COCH(CH3)O)、3.64(s、4H、OC2 H 4 )、2.73(t、4H、OCO(CH 2 )2COOH)1.59(d、3H、COCH(CH 3 )O)、PLLA/PEOの重量比:78/22、
【0096】
以下に示す異なるマルチブロック共重合体は、PLLAとPEOの重量比を変えて合成した。
PLLA26-PEO 交互MBC(PLLA:PEO=64:36)(収量:0.860 g、収率:86.0 %、GPC(CHCl3): Mw=137000、Mw/Mn=1.86)1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.16(q、1H、COCH(CH3)O)、3.64(s、4H、OC2 H 4 )、2.73(t、4H、OCO(CH 2 )2COOH)1.59(d、3H、COCH(CH 3 )O)
PLLA/PEO重量比:64/36
【0097】
<比較合成例1>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(ε-カプロラクトン)25量体交互マルチブロック共重合体(PLGA-PCL 交互MBC)の合成
(工程1)ポリ(ε-カプロラクトン)オリゴマー25量体の合成
【0098】
【化23】
【0099】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にDPP(ジフェニルフォスフェート)(0.45g、1.79mmol)を加え、脱水トルエン25mLを加え溶解させた。
これにε-カプロラクトン(5mL、44.6mmol)とベンジルアルコール(187μL、1.79mmol)を加えて室温で3h反応させた。反応後アンバーリストA21を加えて30min振とうし、ろ過によりアンバーリストA21を取り除いた。ろ液をエバポレーターで濃縮し、氷浴ジエチルエーテルで再沈殿した後40℃で一晩乾燥させ、白色固体としてベンジル末端を持つポリ(ε-カプロラクトン)オリゴマー25量体を得た(収量:4.66g、収率:83%、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):7.19(m、5H、ArH)、5.34(s、2H、ArCH 2 )、4.08(t、2H、CH2CH 2 O)、2.31(t、2H、COCH 2 CH2)、1.66(m、4H、COCH2CH 2 CH2、CH2CH 2 CH2O)、1.39(m、2H、COCH2CH2CH 2 CH2CH2O))。
【0100】
(工程2)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(ε-カプロラクトン)25量体ジブロック共重合体の合成と脱保護
【0101】
【化24】
【0102】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にL-ラクチド(2.12g、14.7mmol)、グリコリド(0.190g、1.64mmol)、チオウレア(0.302g、0.744mmol)、ベンジル末端を持つPCLオリゴマー25(1.64g、0.512mmol)を加え、脱水ジクロロメタン8mLで溶解させ、MeTREN(209μL、0.744mmol)を加えて室温で3h反応させた。反応後、安息香酸0.10gを加えてクエンチし、氷浴メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過をした後40℃で一晩真空乾燥し、白色固体としてポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(ε-カプロラクトン)25量体ジブロック共重合体を得た(収量:3.81g、収率:96%、GPC(CHCl3):Mw/Mn=1.11、
1H NMR(500 MHz、CDCl3):7.38(m、5H、ArH)、5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、5.14(s、2H、ArCH 2 )、4.81(m、2H、COCH 2 O)、4.08(t、2H、CH2CH 2 O)、2.31(t、2H、COCH 2 CH2)、1.66(m、4H、COCH2CH 2 CH2、CH2CH 2 CH2O)、1.39(m、2H、COCH2CH2CH 2 CH2CH2O)。
ジブロック共重合体2.0gをTHF80mLに溶解させてPd/Cを0.20g加えた。これを窒素置換したのち、水素雰囲気下,室温で24h反応させた。これを窒素置換し、溶媒をクロロホルムに置換して3h撹拌させた後セライトろ過によりPd/Cを取り除いた。ろ液をエバポレーターで濃縮してメタノール再沈殿をし、吸引ろ過により回収した後40℃で真空乾燥させ、脱保護したジブロック共重合体を得た(収量:1.86g、収率:91%、1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、4.08(t、2H、CH2CH 2 O)、2.31(t、2H、COCH 2 CH2)、1.66(m、4H、COCH2CH 2 CH2、CH2CH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、1.39(m、2H、COCH2CH2CH 2 CH2CH2O))。
【0103】
(工程3)ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(ε-カプロラクトン)25量体交互マルチブロック共重合体(PLGA-PCL 交互MBC)の合成
【0104】
【化25】
【0105】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体-ポリ(ε-カプロラクトン)25量体ジブロック共重合体(1.00g、0.138mmol)、ジメチルアミノピリジン p-トルエンスルホン酸(8.8g、0.028mmol)、ジメチルアミノピリジン(7.4g、0.055mmol)を加えて、脱水ジクロロメタン3mLを加えて溶解させた。その後脱水のためモレキュラーシーブを加え一晩振とうさせ、DIPCI(40.9μL、0.276mmol)を加えて室温で24h振とうにより反応させた。反応後、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過の後40℃で真空乾燥し目的物を得た(収量:0.95g、収率:94%、GPC(CHCl3):Mw=320,000、Mw/Mn=1.73、1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、4.08(t、2H、CH2CH 2 O)、2.31(t、2H、COCH 2 CH2)、1.66(m、4H、COCH2CH 2 CH2、CH2CH 2 CH2O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)、1.39(m、2H、COCH2CH2CH 2 CH2CH2O))。
【0106】
<比較合成例2>
ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)(PDXO単独重合体)の合成
【0107】
【化26】
【0108】
20mlシュレンク管をヒートガンを用いて加熱乾燥した後、ダイアフラムポンプを用いて脱気、窒素置換した。DXO(1.357mL)、触媒としてSn(Oct)(4.80μL)を加え、オイルバス中で100℃で0.5時間攪拌した。その後130℃で8時間撹拌し、反応させた。反応終了後、酢酸を数滴とクロロホルムを4ml加えて触媒を失活させた。その後氷浴中でジエチルエーテル再沈殿した。吸引ろ過により回収し室温で真空乾燥した。(収量:1.44g、 収率: 95.8%、GPC(CHCl3):Mw=128,000、Mw/Mn=6.48)
1H NMR(500 MHz、CDCl3):4.23(t、2H、OCH2CH 2 OCO)、3.76(t、2H、OCOCH2CH 2 O)、3.67(t、2H、OCH 2 CH2OCO)、2.62(t、2H、OCOCH 2 CH2O)。
【0109】
<比較合成例3>
ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA単独重合体)の合成
【0110】
【化27】
【0111】
ヒートガンで空焼きし窒素置換したシュレンク管にポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)25量体(0.50g,0.138mmol)、ジメチルアミノピリジン p-トルエンスルホン酸(8.8g,0.028mmol)、ジメチルアミノピリジン(7.4g,0.055mmol)を加えて、脱水ジクロロメタン2mLを加えて溶解させた。その後脱水のためモレキュラーシーブを加え一晩振とうさせ、DIPCI(40.9μL,0.276mmol)を加えて室温で24h振とうにより反応させた。反応後、メタノール再沈殿を行い、吸引ろ過の後40℃で真空乾燥し目的物を得た(収量:0.46g、収率:90 %、
GPC(CHCl3):Mw=180,000,Mw/Mn=、1.49、1H NMR(500 MHz、CDCl3):5.18(q、1H、COCH(CH3)O)、4.81(m、2H、COCH 2 O)、1.58(d、3H、COCH(CH 3 )O)。
【0112】
以上の合成例および比較合成例により合成したポリマーの15mg/mLのクロロホルム溶液を調製し、ガラス基板にキャストすることで薄膜を作製した。ポリ(1,5-ジオキセパン-2-オン)とポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)の単独重合体の混合膜は比較合成例2、3で合成した各単独共重合体7.5mgを1mLのクロロホルム中で混合し、上記と同様にガラス基板にキャストすることで薄膜を作製した。
【0113】
<ヒト血小板粘着試験>
遠沈管にクイックアイパートナー(クエン酸ナトリウム:抗凝固剤(ニプロ株式会社))を6本加え、ヒト血液6.7mLを採取し撹拌した。これを900rpm、10minで遠心分離し上清(PRP(=platelet rich plasma、血小板が多い血しょう))を回収した。その後条件を3000rpm、10minで遠心分離し上清(PPP(=platelet poor plasma、血小板が少ない血しょう))を回収した。このPRP、PPP両方の血小板数をカウントした(PRP=7.08×10platelets/mL、PPP=1.50×10pletelets/mL)。これを血小板濃度5.0×10platelets/mLとなるよう、PRPは0.1mL、PPPは1.9mL加えて2mLの血小板試料を調製した。
【0114】
サンプル薄膜をキャストしたガラス基板にリキッドブロッカーで疎水性サークルを描き、調整した血小板試料を約200μL滴下した。これを37℃で1hインキュベートし、インキュベート後のガラス基板をPBS(リン酸緩衝液水溶液)で洗浄し、1%グルタルアルデヒド溶液(固定化用試薬、和光純薬工業株式会社から購入した20%グルタルアルデヒド溶液をPBSで希釈して調製)を約200μL滴下して再び37℃で30minインキュベートした。インキュベート後のガラス基板を洗浄し、BD Perm/Wash溶液(透過用試薬、Becton,Dickinson and Companyから購入したものをPBSで10倍に希釈して調製)を膜に約200μL滴下して室温で10min静置した。その後ActinGreen溶液(BD Perm/Wash溶液1mLにActinGreen 2滴を加えたもの、ActinGreenはLife Technologies Corporationから購入)を調製し約200μL滴下し、遮光して室温で30min静置した。静置したガラス基板をPBSで洗浄し、顕微鏡で観察した。顕微鏡で得られた画像から接着した血小板の数をカウントし、Studentのt検定によって有意差検定を行った。有意水準はP=0.01とした。
【0115】
<実施例1>
図1、2に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例1)の結果を示した。
図1に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図2に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0116】
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 50:50)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 50:50からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO 交互MBC)
合成例1において得られたPLGA-PDXO 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0117】
「PLGA-PDXO 交互MBC」、「PLGA-PDXO RMBC 50:50」はともに血小板粘着数が、「PLGA-PCL交互MBC」より少なかった。また、「PLGA-PDXO 交互MBC」と「PLGA-PDXO RMBC 50:50」では血小板粘着数に大きな違いは見られなかった。
【0118】
<実施例2>
図3、4に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例2)の結果を示した。
図3に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図4に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0119】
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 13:87)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 13:87からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 40:60)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 40:60からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 50:50)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 50:50からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 64:36)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 64:36からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 71:29)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 71:29からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 81:19)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 81:19からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 94:6)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 94:6からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0120】
「PLGA-PDXO RMBC 94:6」においても血小板粘着数は「PLGA-PCL 交互MBC」より少ないことが観察された。PDXOセグメント比の増加とともに血小板粘着数は少なくなった。一方、「PLGA-PDXO MBC 13:87」では、「PLGA-PCL 交互MBC」と同等の血小板粘着数を示した。
【0121】
<実施例3>
図5、6に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例3)の結果を示した。
図5に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図6に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0122】
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PDXO単独重合体)
比較合成例2において得られたPDXO単独重合体からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 13:87)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 13:87からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO RMBC 26:74)
合成例2において得られたPLGA-PDXO RMBC 26:74からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA PDXO混合物)
比較合成例2において得られたPDXO単独重合体と比較合成例3において得られたPLGA単独重合体の混合物からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0123】
「PLGA-PDXO RMBC 26:74」は血小板粘着数が少ないが、「PLGA-PDXO13:87」は血小板粘着数が多かった。「PDXO単独重合体」、「PLGA-PDXO混合物」ではいずれも血小板粘着数は多かった。
【0124】
この理由については膜表面の状態の違いにあると考えられる。図7に各試料の原子間力顕微鏡(AFM)による位相像を示す。明るい部分がPDXO成分から形成されるドメインである。血小板粘着数が少ない「PLGA-PDXO RMBC 26:74」は両成分がミクロ相分離構造を形成していることがわかる。「PLGA-PDXO RMBC 13:87」ではPDXO成分が大部分を占め、PLGAセグメントのドメインが分散していた。「PLGA-PDXO混合物」においてはPDXO成分の凝集体が大きなドメインを形成していることがわかる。「PDXO単独重合体」ではPDXOの均一な表面が観察された。これらより、PDXO成分そのもの、またはPDXOの大きなドメインが表面に形成されると血小板粘着が起こり、これがミクロ相分離構造になると抑制されると考えられる。
【0125】
<実施例4>
図8、9に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例4)の結果を示した。
図8に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図9に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0126】
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(MBC5)
合成例1と同様の方法で合成したPLGA-PDXO 交互MBC(セグメント長5量体)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(MBC10)
合成例1と同様の方法で合成したPLGA-PDXO 交互MBC(セグメント長10量体)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(MBC25)
合成例1と同様の方法で合成したPLGA-PDXO 交互MBC(セグメント長25量体)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
「MBC5」であっても、「PLGA-PCL 交互MBC」より血小板粘着数は少なかった。セグメント長の増加とともに粘着数は低下した。
【0127】
各試料の表面状態についてAFM測定を行った(図10)。「MBC10」、「MBC25」では表面にミクロ相分離構造が観察され、これが血小板粘着抑制に効果的であると考えられる。一方、「MBC5」では均一な膜表面となった。PDXO成分の効果により血小板粘着は抑制されるが、ミクロ相分離構造を形成する表面よりは粘着数が多かったと考えられる。
【0128】
<実施例5>
図11、12に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例5)の結果を示した。
図11に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図12に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0129】
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(DBC)
合成例3において得られたPLGA-PDXO DBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(TBC)
合成例4において得られたPLGA-PDXO-PLGA TBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(MBC)
合成例1において得られたPLGA-PDXO 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0130】
「DBC」、「TBC」の血小板粘着数は少なく、その数は「MBC」と同等であった。
【0131】
<実施例6>
図13、14に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例6)の結果を示した。
図13に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図14に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0132】
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(DL)
合成例1と同様の方法で、ハードセグメントにD-乳酸とL-乳酸を用いたPDLLA(25量体)とPDXO(25量体)の交互マルチブロック共重合体を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(RC)
合成例5において得られた、PLLAとPDXOのランダム共重合体(RC)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0133】
「DL」、「RC」のいずれも血小板粘着数は比較対象の「PLGA-PCL 交互MBC」より少なかった。
【0134】
<実施例7>
図15に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例7)の結果を示し、マルチブロック共重合体におけるハードセグメント分子構造と血小板粘着数の関係を示した。
「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0135】
(PLGA-PCL交互MBC)
比較合成例1と同様の方法によりPLGA-PCL交互MBC(Mw=142,000)を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO交互MBC)
合成例1と同様の方法により、PLGA-PDXO交互MBC(Mw=129,000)を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLLA-PDXO交互MBC)
合成例1と同様の方法により、ハードセグメントにL-乳酸を用いたPLLA(25量体)とPDXO(25量体)の交互マルチブロック共重合体(Mw=54,000)を作製し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0136】
「PLGA-PDXO交互MBC」と「PLLA-PDXO交互MBC」の血小板粘着数はともに「PLGA-PCL交互MBC」より少なく、PLGA系とPLLA系には大きな差は観察されなかった。
【0137】
<実施例8>
図16に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例8)の結果を示し、マルチブロック共重合体におけるハードセグメント分子構造と血小板粘着数の関係を示した。
「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0138】
(PLGA-PCL交互MBC)
比較合成例1と同様の方法によりPLGA-PCL交互MBC(Mw=142,000)を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PDLLA-PDXO交互MBC)
合成例1と同様の方法で、ハードセグメントにD-乳酸とL-乳酸を用いたPDLLA(25量体)とPDXO(25量体)の交互マルチブロック共重合体(Mw=37,000)を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PDLA-PDXO交互MBC)
合成例1と同様の方法で、ハードセグメントにD-乳酸を用いたPDLA(25量体)とPDXO(25量体)の交互マルチブロック共重合体(Mw=116,000)を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成、Mw=365,000)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0139】
「PDLLA-PDXO交互MBC」、「PDLA-PDXO交互MBC」についても血小板粘着数は少なく、ハードセグメントとしてPLGA、PLLA、PDLLA、PDLAいずれも有効であることが示された。
【0140】
<実施例9>
図17、18に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験(実施例9)の結果を示した。
図17に、顕微鏡観察画像(暗視野)を示した。また、図18に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL交互MBC」は、血小板が粘着し易い表面を有する例として挙げた。
【0141】
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDXO 交互MBC)
合成例1と同様の方法により、PLGA-PDXO 交互MBC(Mw=130,000、Mw/Mn=1.22)を合成し、この薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PDO 交互MBC)
合成例6において得られたPLGA-PDO 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0142】
これらの結果から、PLGA-PDO 交互MBCに対する血小板粘着数はPLGA-PCL 交互MBCより少なく、抗血栓性材料として利用可能であることが確認された。
【0143】
<実施例10>
(ヒト血小板粘着試験)
以上の合成例により合成したポリマーの10mg/mLのクロロホルム溶液を調製し、ガラス基板にキャストすることで薄膜を作製した。その後、上記ヒト血小板粘着試験に示す方法により、作製したフィルムについて、血小板粘着試験を行い、抗血栓性材料としての使用用途について検討を行った。
【0144】
(PMEA)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)(ラジカル重合により合成)からなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLLA50-PEO 交互MBC)
合成例7において得られたPLLA50-PEO 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLLA26-PEO 交互MBC)
合成例7において得られたPLLA26-PEO 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
(PLGA-PCL 交互MBC)
比較合成例1において得られたPLGA-PCL 交互MBCからなる薄膜を用いて、上記試験を行った。
【0145】
図19、20に、上記に従って行ったヒト血小板粘着試験の結果を示した。図19に、顕微鏡観察試験画像(暗視野)を示した。また、図20に、得られた血小板粘着数の結果を示した。「PMEA」は、血小板が粘着しづらい表面を有する例として、「PLGA-PCL 交互MBC」は、血小板が粘着しやすい表面を有する例として挙げた。これらの結果から、PLLA50-PEO 交互MBC、PLLA26-PEO 交互MBCについて、どちらも血小板粘着数はPLGA-PCL 交互MBCより少なく、抗血栓性材料として利用可能であることが確認された。
【0146】
<実施例11>
(細胞培養試験、Hela細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)
上記合成例1で合成したPLGA-PDXO 交互MBC、及び対比のため、ポジティブコントロールとしてCellmatrix Type I-C(新田ゼラチン株式会社、Collagen、TypeI、3mg/mL、pH3.0)、ネガティブコントロールとしてLIPIDURE(登録商標)-CM5206(MPCポリマー)を準備した。ヒト子宮頸癌由来の細胞であるHeLa細胞の培養を経過観察し、細胞を播種してから1日後、2日後、3日後にセルカウント、及びWST試験を行い、細胞の増殖挙動を評価した。
オートクレーブ滅菌したガラスシャーレにクリーンベンチ内(無菌状態)でPLGA-PDXO 交互MBCのクロロホルム溶液(4.75mg/250μL)を直接キャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥してPLGA-PDXO 交互MBCでコーティングしたシャーレを作製した。LIPIDURE(登録商標)-CM5206のメタノール溶液(4.75mg/250μL)を同様にキャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥して、LIPIDURE(登録商標)-CM5206でコーティングしたシャーレを作製した。Cellmatrix Type I-CをHCl水溶液で10倍希釈し、オートクレーブ滅菌したガラスシャーレ上にいれて30分以上静置した後、Minimum Essential Media(MEM)培地で3~4回洗浄してから使用した。
【0147】
調製したHeLa細胞液(4.0×10cells/mL)1mLをPLGA-PDXO 交互MBC、Cellmatrix TypeI-C、および、LIPIDURE(登録商標)-CM5206をコーティングしたシャーレ上にそれぞれ滴下し、37℃で培養した。セルカウントの場合、1日後、2日後、3日後での細胞数を血球計算盤を使用して計数した。WST試験の場合、Cell Couting Kit-8(WST-1)を50μL細胞培養中のガラスシャーレに加え、3時間37℃で培養したのち、150μLを96wellプレートに入れ、450nmにおける吸光度を測定した。図21に72時間後の培養の様子、図22にセルカウントの結果、図23にWST試験の結果を示す。いずれの結果からもPLGA-PDXO 交互MBC上でHeLa細胞が増殖しており、細胞培養可能な基材であることが確認された。
【0148】
(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDXO 交互MBC)
上記合成例1で合成したPLGA-PDXO 交互MBC、及び対比のため、ポジティブコントロールとしてCellmatrix Type I-C(新田ゼラチン株式会社、Collagen、TypeI、3mg/mL、pH3.0)、ネガティブコントロールとしてLIPIDURE(登録商標)-CM5206(MPCポリマー)を準備した。試験に使用する細胞であるヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC細胞は継代数5~7の細胞を使用し、培養時には培地EGM(登録商標)-2 SingleQuots(登録商標)(ロンザジャパン株式会社、0.2mL Hydrocortisone solution、0.5mL GA-1000、10mL Fetal Bovine Serum、2mL Human Fibroblast Growth Factor basic(hFGFb)、0.5mL Human Vascular Endothelial Growth Factor(hVEGF)、0.5mL Analog of Human Insulin-Like Growth Factor-1. Long R3-IGF-1、0.5mL Ascorbic Acid Solution、0.5mL Human Epidermal Growth Factor(hEGF)、0.5mL Heparinを含む)を使用した。試験開始後、HUVEC細胞の増殖を経過観察し、細胞を播種してから1日後、2日後、3日後にセルカウント、及びWST試験を行い、細胞の増殖挙動を評価した。
【0149】
オートクレーブ滅菌したガラスシャーレにクリーンベンチ内(無菌状態)でPLGA-PDXO 交互MBCのクロロホルム溶液(4.75mg/250μL)を直接キャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥してPLGA-PDXO 交互MBCでコーティングしたシャーレを作製した。LIPIDURE(登録商標)-CM5206のメタノール溶液(4.75mg/250μL)を同様にキャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥して、LIPIDURE(登録商標)-CM5206でコーティングしたシャーレを作製した。Cellmatrix Type I-CをHCl水溶液で10倍希釈し、オートクレーブ滅菌したガラスシャーレ上にいれて30分以上静置した後、Minimum Essential Media(MEM)培地で3~4回洗浄してから使用した。
【0150】
調整したHUVEC細胞懸濁液(2.0×10cells/mL)1mLをPLGA-PDXO 交互MBC、Cellmatrix TypeI-C、および、LIPIDURE(登録商標)-CM5206をコーティングしたシャーレ上にそれぞれ滴下し、37℃で培養した。セルカウントの場合、1日後、2日後、3日後での細胞数をそれぞれ血球計算盤を使用して計数した。WST試験の場合、Cell Counting Kit-8(WST-8)を50μL細胞培養中のガラスシャーレに加え、4時間37℃で培養したのち、上澄み150μLを96wellプレートに入れ、450nmにおける吸光度を測定した。図24に72時間後の培養の様子、図25にセルカウントの結果、図26にWST試験の結果を示す。いずれの結果からもPLGA-PDXO 交互MBC上でHUVEC細胞が増殖しており、細胞培養可能な基材であることが確認された。
【0151】
(細胞培養試験、HeLa細胞、PLGA-PDO 交互MBC)
上記合成例6で合成したPLGA-PDO 交互MBC、及び対比のため、ポジティブコントロールとしてCellmatrix Type I‐C(新田ゼラチン株式会社、Collagen、TypeI、3mg/mL、pH3.0)、ネガティブコントロールとしてLIPIDURE(登録商業)-CM5206(MPCポリマー)、比較対象として合成例1で合成したPLGA-PDXO 交互MBCを準備した。
本実施例では、ヒト子宮頸癌由来の細胞であるHeLa細胞の培養を経過観察し、細胞を滴下したから1日後、2日後、3日後でセルカウント、及びWST試験を行い、細胞培養基材としての使用用途について検討を行った。
オートクレーブ滅菌したガラスシャーレにクリーンベンチ内(無菌状態)でPLGA-PDO 交互MBCのクロロホルム溶液(12.5mg/250μL)を直接キャストし、シャーレのふたを閉めて、ホットプレート上で40℃で加熱しながら1時間静置後、一晩真空乾燥してPLGA-PDO 交互MBCでコーティングしたシャーレを作製した。また、オートクレーブ滅菌したガラスシャーレにクリーンベンチ内(無菌状態)でPLGA-PDXO 交互MBCのクロロホルム溶液(4.75mg/250μL)を直接キャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥してPLGA-PDXO 交互MBCでコーティングしたシャーレを作製した。LIPIDURE(登録商標)-CM5206のメタノール溶液(4.75mg/250μL)を同様にキャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥して、LIPIDURE(登録商標)-CM5206(MPCポリマー)でコーティングしたシャーレを作製した。Cellmatrix Type I-CをHCl水溶液で10倍希釈し、オートクレーブ滅菌したガラスシャーレ上にいれて30分以上静置した後、Minimum Essential Media(MEM)培地で3~4回洗浄してから使用した。
【0152】
細胞培養試験に用いた細胞溶液は、HeLa細胞が培養されている10cmディッシュ上の培地を除去し、トリプシン/エチレンジアミンテトラ酢酸イオン(EDTA)酵素溶液を2mL入れ、37℃で3分間インキュベートした。その後、培地8mLを入れて酵素のはたらきをとめた後、1500rpmで3分間遠心分離した。上澄みを除去後、顕微鏡にて細胞数をカウントし、培地を加え、播種密度が2.0×10cells/mLになるように細胞溶液を調製した。
調製したHeLa細胞懸濁液(2.0×10cells/mL)1mLをPLGA-PDO 交互MBC、PLGA-PDXO 交互MBC、および、LIPIDURE(登録商標)-CM5206(MPCポリマー)をキャストしたシャーレと、Cellmatrix Type1-Cをコーティングしたシャーレ上にそれぞれ滴下し、37℃で培養した。セルカウントの場合、1日後、2日後、3日後での細胞数をそれぞれ血球計算盤を使用して計数した。WST試験の場合、Cell Counting Kit-8(WST-8)を50μL細胞培養中のガラスシャーレに加え、4時間37℃で培養したのち、上澄み150μLを96wellプレートに入れ、450nmにおける吸光度を測定した。図27、28に72時間後の培養の様子、図29にセルカウントの結果、図30にWST試験の結果を示す。いずれの結果からもPLGA-PDO 交互MBC上でHeLa細胞が増殖しており、細胞培養可能な基材であることが確認された。
【0153】
(細胞培養試験、HUVEC細胞、PLGA-PDO 交互MBC)
上記合成例6で合成したPLGA-PDO 交互MBC、及び対比のため、ポジティブコントロールとしてCellmatrix Type I‐C(新田ゼラチン株式会社、Collagen、TypeI、3mg/mL、pH3.0)、ネガティブコントロールとしてLIPIDURE(登録商業)-CM5206(MPCポリマー)、比較対象として合成例1で合成したPLGA-PDXO 交互MBCを準備した。
試験に使用する細胞であるヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC細胞は継代数5~7の細胞を使用し、培養時には培地EGM(登録商標)‐2 SingleQuots(登録商標)(ロンザジャパン株式会社、0.2mL Hydrocortisone solution、0.5mL GA‐1000、10mL Fetal Bovine Serum、2mL Human Fibroblast Growth Factor basic(hFGFb)、0.5mL Human Vascular Endothelial Growth Factor(hVEGF)、0.5mL Analog of Human Insulin‐Like Growth Factor‐1. Long R3‐IGF‐1、0.5mL Ascorbic Acid Solution、0.5mL Human Epidermal Growth Factor(hEGF)、0.5mL Heparinを含む)を使用した。試験開始後、HUVEC細胞の増殖を経過観察し、細胞を播種してから1日後、2日後、3日後にセルカウント、及びWST試験を行い、細胞の増殖挙動を評価した。
【0154】
オートクレーブ滅菌したガラスシャーレにクリーンベンチ内(無菌状態)でPLGA-PDO 交互MBCのクロロホルム溶液(12.5mg/250μL)を直接キャストし、シャーレのふたを閉めて、ホットプレート上で40℃で加熱しながら1時間静置後、一晩真空乾燥してPLGA-PDO 交互MBCでコーティングしたシャーレを作製した。また、オートクレーブ滅菌したガラスシャーレにクリーンベンチ内(無菌状態)でPLGA-PDXO 交互MBCのクロロホルム溶液(4.75mg/250μL)を直接キャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥してPLGA-PDXO 交互MBCでコーティングしたシャーレを作製した。LIPIDURE(登録商標)-CM5206のメタノール溶液(4.75mg/250μL)を同様にキャストし、3時間静置後、一晩真空乾燥して、LIPIDURE(登録商標)-CM5206(MPCポリマー)でコーティングしたシャーレを作製した。Cellmatrix Type I-CをHCl水溶液で10倍希釈し、オートクレーブ滅菌したガラスシャーレ上にいれて30分以上静置した後、Minimum Essential Media(MEM)培地で3~4回洗浄してから使用した。
【0155】
細胞培養試験に用いた細胞溶液は、HUVEC細胞が培養されている10cmディッシュ上の培地を除去し、MEM培地を2mL程度入れて一回洗浄し、MEM培地を除去した後、トリプシン/エチレンジアミンテトラ酢酸イオン(EDTA)酵素溶液を2mL入れ、37℃で3分間インキュベートした。その後、培地8mLを入れて酵素のはたらきをとめた後、1500rpmで3分間遠心分離した。上澄みを除去後、顕微鏡にて細胞数をカウントし、培地を加え、播種密度が2.0×10cells/mLになるように細胞溶液を調製した。
調整したHUVEC細胞懸濁液(2.0×10cells/mL)1mLをPLGA-PDO 交互MBC、PLGA-PDXO 交互MBC、および、LIPIDURE(登録商標)-CM5206(MPCポリマー)をキャストしたシャーレと、Cellmatrix TypeI-Cをコーティングしたシャーレ上にそれぞれ滴下し、37℃で培養した。セルカウントの場合、1日後、2日後、3日後での細胞数をそれぞれ血球計算盤を使用して計数した。WST試験の場合、Cell Counting Kit-8(WST-8)を50μL細胞培養中のガラスシャーレに加え、4時間37℃で培養したのち、上澄み150μLを96wellプレートに入れ、450nmにおける吸光度を測定した。図31、32に72時間後の培養の様子、図33にセルカウントの結果、図34にWST試験の結果を示す。いずれの結果からもPLGA-PDO 交互MBC上でHUVEC細胞が増殖しており、細胞培養可能な基材であることが確認された。
【0156】
<実施例12>
(加水分解挙動)
図35図36に合成例1で合成したPLGA-PDXO交互マルチブロック共重合体(セグメント重合度25、Mw=129,000、Mw/Mn=2.03)のリン酸緩衝液(pH7.4)における加水分解挙動を示す。加水分解の進行に伴い、接触角の減少、重量減少、分子量低下が観察された。図35では初期の70°前後の比較的疎水性の表面から加水分解の進行に伴い接触角が10-20°と極めて親水性になっていることがわかる。加水分解に伴いゆっくりと重量減少が確認され、14週後では24%の重量減少が見られた。図36に残存成分の分子量を示す。残存成分の分子量は25,000-30,000程度であった。
【0157】
<実施例13>
(力学特性)
図37に合成例1で合成したPLGA-PDXO交互マルチブロック共重合体(セグメント長25量体)の自立膜を示す。クロロホルム溶液からキャストした膜はガラス基板からはがしても自立性を示し、取り扱いやすい状態であった。図38にこの膜の引張り試験による応力-ひずみ曲線を、表1に力学特性データを示す。応力-ひずみ曲線の初期勾配から算出した高いヤング率(弾性率)はマルチブロック共重合体特有であり、自立膜としての扱いやすさを反映している(弾性率5MPa以下では柔らかすぎで扱いにくい)。破断伸びの平均は800%を超えており、よく伸び、タフな膜であることが確認された。これらの特性は従来の抗血栓性材料であるPMEA、PMPC、ポリトリメチレンカーボネートなどのガラス転移温度が室温以下の高分子では達成できない性質である。
【0158】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38