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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】流路切換弁および流路切換システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20240430BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20240430BHJP
   F16K 11/065 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
F16K31/122
F16K11/065 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020071513
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167645
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
(72)【発明者】
【氏名】森田 紀幸
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-090248(JP,U)
【文献】特開2008-075760(JP,A)
【文献】特開昭63-015056(JP,A)
【文献】特開2016-098968(JP,A)
【文献】特開2014-211181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/074
F16K 31/122
F16K 11/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が塞がれた円筒状の本体ケースと、
前記本体ケースの他端を塞ぐように配置された弁座と、
前記弁座に設けられた複数のポートの接続を切り換える回転弁体と、
前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置された推進用ピストンと、
前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記推進用ピストンより前記他端側に配置された駆動用ピストンと、
前記駆動用ピストンの前記軸方向の移動に応じて前記回転弁体を回転させる動力伝達機構と、を有する流路切換弁であって、
前記本体ケースは、前記駆動用ピストンによって区画された、前記一端側から前記他端側に向かって順に並ぶ第1ピストン室と、第2ピストン室と、を有し、
前記推進用ピストンは、第1ベース位置と、前記第1ベース位置より前記他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能であり、
前記推進用ピストンは、コイルばねによって前記他端側に押されており、
前記駆動用ピストンは、
前記第1ピストン室に低圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に高圧の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンを前記一端側に押して前記第1ベース位置に位置づける第1停止位置に移動され、
前記駆動用ピストンが前記第1停止位置にある状態で前記第1ピストン室と前記第2ピストン室とに同一圧力の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンが前記コイルばねに押されて前記第1ベース位置から前記第2ベース位置に移動することに伴って前記第1停止位置より前記他端側にある第2停止位置に移動され、
前記第1ピストン室に高圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に低圧の流体が導入されたとき、前記第2停止位置より前記他端側にある第3停止位置に移動されることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
前記回転弁体における前記弁座に接する面は、平面視円弧形状または平面視扇形状に形成され、
前記回転弁体における前記弁座に接する面には、前記複数のポートを接続可能な平面視円弧形状の凹部である流体通路と、前記流体通路の端部に連なり、前記ポートを通過する際に当該ポートを塞ぐシール部と、が設けられている、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
一端および他端が塞がれた円筒状の本体ケースと、
前記本体ケースの内側に配置された推進用ピストンと、
前記本体ケースの一端を塞ぐ壁部に固定され、前記推進用ピストンを軸方向に移動可能に支持するシリンダと、
前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記推進用ピストンより前記他端側に配置された第1ピストンと、
前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記第1ピストンより前記他端側に配置された第2ピストンと、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとを連結する連結部材と、
前記本体ケースの内側で前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置された弁座と、
前記連結部材によって前記軸方向に移動され、前記弁座に設けられた複数のポートの接続を切り換える弁体と、を有する流路切換弁であって、
前記本体ケースは、前記第1ピストンおよび前記第2ピストンによって区画された、前記一端側から前記他端側に向かって順に並ぶ第1ピストン室と、弁室と、第2ピストン室と、を有し、
前記推進用ピストンは、第1ベース位置と、前記第1ベース位置より前記他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能であり、
前記推進用ピストンは、コイルばねによって前記他端側に押されており、前記シリンダによって前記第2ベース位置より前記他端側に移動することを規制され、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンは、
前記第1ピストン室に低圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に高圧の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンを前記一端側に押して前記第1ベース位置に位置づける第1停止位置に移動され、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが前記第1停止位置にある状態で前記第1ピストン室と前記第2ピストン室とに同一圧力の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンが前記コイルばねに押されて前記第1ベース位置から前記第2ベース位置に移動することに伴って前記第1停止位置より前記他端側にある第2停止位置に移動され、
前記第1ピストン室に高圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に低圧の流体が導入されたとき、前記第2停止位置より前記他端側にある第3停止位置に移動されることを特徴とする流路切換弁。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の流路切換弁と、第1ピストン室制御弁と、第2ピストン室制御弁と、を有する流路切換システムであって、
前記第1ピストン室制御弁は、
前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの低圧の流体が流れる低圧ポートとを接続する第1ピストン室低圧接続状態と、
前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの高圧の流体が流れる高圧ポートとを接続する第1ピストン室高圧接続状態と、を切り換え、
前記第2ピストン室制御弁は、
前記第2ピストン室と前記低圧ポートとを接続する第2ピストン室低圧接続状態と、
前記第2ピストン室と前記高圧ポートとを接続する第2ピストン室高圧接続状態と、を切り換えることを特徴とする流路切換システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を用いて流路を切り換える流路切換弁およびその流路切換弁を有する流路切換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流路切換弁の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の流路切換弁は、主弁内を流通する高圧流体と低圧流体との差圧を利用したアクチュエータを有している。このアクチュエータは、作動室と、作動室に収容された運動変換機構と、を有している。運動変換機構は、有底円筒状の受圧移動体と、受圧移動体の内側に配置された回転駆動体と、を有している。受圧移動体は、作動室内の流体圧力に応じて軸方向に移動する。回転駆動体は、受圧移動体の軸方向の移動に伴って軸周りに回転される。流路切換弁は、回転駆動体の回転を利用して主弁体を回転させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-89902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の流路切換弁は、作動室内の流体圧力に応じて受圧移動体が2つの停止位置の間を移動するものである。そのため、主弁体についても2つの回転位置の間を移動するものであった。これにより、流路切換弁の流路接続パターンは2つとなる。そして、より多くの流路接続パターンを提供可能な流路切換弁が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、流体圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供可能な流路切換弁および流路切換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る流路切換弁は、一端が塞がれた円筒状の本体ケースと、前記本体ケースの他端を塞ぐように配置された弁座と、前記弁座に設けられた複数のポートの接続を切り換える回転弁体と、前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置された推進用ピストンと、前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記推進用ピストンより前記他端側に配置された駆動用ピストンと、前記駆動用ピストンの前記軸方向の移動に応じて前記回転弁体を回転させる動力伝達機構と、を有する流路切換弁であって、前記本体ケースは、前記駆動用ピストンによって区画された、前記一端側から前記他端側に向かって順に並ぶ第1ピストン室と、第2ピストン室と、を有し、前記推進用ピストンは、第1ベース位置と、前記第1ベース位置より前記他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能であり、前記推進用ピストンは、コイルばねによって前記他端側に押されており、前記駆動用ピストンは、前記第1ピストン室に低圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に高圧の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンを前記一端側に押して前記第1ベース位置に位置づける第1停止位置に移動され、前記駆動用ピストンが前記第1停止位置にある状態で前記第1ピストン室と前記第2ピストン室とに同一圧力の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンが前記コイルばねに押されて前記第1ベース位置から前記第2ベース位置に移動することに伴って前記第1停止位置より前記他端側にある第2停止位置に移動され、前記第1ピストン室に高圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に低圧の流体が導入されたとき、前記第2停止位置より前記他端側にある第3停止位置に移動されることを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記回転弁体における前記弁座に接する面は、平面視円弧形状または平面視扇形状に形成され、前記回転弁体における前記弁座に接する面には、前記複数のポートを接続可能な平面視円弧形状の凹部である流体通路と、前記流体通路の端部に連なり、前記ポートを通過する際に当該ポートを塞ぐシール部と、が設けられていることが好ましい。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る流路切換弁は、一端および他端が塞がれた円筒状の本体ケースと、前記本体ケースの内側に配置された推進用ピストンと、前記本体ケースの一端を塞ぐ壁部に固定され、前記推進用ピストンを軸方向に移動可能に支持するシリンダと、前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記推進用ピストンより前記他端側に配置された第1ピストンと、前記本体ケースの内側に軸方向に移動可能に配置されかつ前記第1ピストンより前記他端側に配置された第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとを連結する連結部材と、前記本体ケースの内側で前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置された弁座と、前記連結部材によって前記軸方向に移動され、前記弁座に設けられた複数のポートの接続を切り換える弁体と、を有する流路切換弁であって、前記本体ケースは、前記第1ピストンおよび前記第2ピストンによって区画された、前記一端側から前記他端側に向かって順に並ぶ第1ピストン室と、弁室と、第2ピストン室と、を有し、前記推進用ピストンは、第1ベース位置と、前記第1ベース位置より前記他端側にある第2ベース位置と、の間を移動可能であり、前記推進用ピストンは、コイルばねによって前記他端側に押されており、前記シリンダによって前記第2ベース位置より前記他端側に移動することを規制され、前記第1ピストンおよび前記第2ピストンは、前記第1ピストン室に低圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に高圧の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンを前記一端側に押して前記第1ベース位置に位置づける第1停止位置に移動され、前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが前記第1停止位置にある状態で前記第1ピストン室と前記第2ピストン室とに同一圧力の流体が導入されたとき、前記推進用ピストンが前記コイルばねに押されて前記第1ベース位置から前記第2ベース位置に移動することに伴って前記第1停止位置より前記他端側にある第2停止位置に移動され、前記第1ピストン室に高圧の流体が導入されかつ前記第2ピストン室に低圧の流体が導入されたとき、前記第2停止位置より前記他端側にある第3停止位置に移動されることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る流路切換システムは、上記流路切換弁と、第1ピストン室制御弁と、第2ピストン室制御弁と、を有する流路切換システムであって、前記第1ピストン室制御弁は、前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの低圧の流体が流れる低圧ポートとを接続する第1ピストン室低圧接続状態と、前記第1ピストン室と前記複数のポートのうちの高圧の流体が流れる高圧ポートとを接続する第1ピストン室高圧接続状態と、を切り換え、前記第2ピストン室制御弁は、前記第2ピストン室と前記低圧ポートとを接続する第2ピストン室低圧接続状態と、前記第2ピストン室と前記高圧ポートとを接続する第2ピストン室高圧接続状態と、を切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る流路切換弁では、第1ピストン室に低圧の流体が導入されかつ第2ピストン室に高圧の流体が導入されたとき、駆動用ピストンが、推進用ピストンを本体ケースの一端側に押して第1ベース位置に位置づける第1停止位置に移動される。駆動用ピストンが第1停止位置にある状態で第1ピストン室と第2ピストン室とに同一圧力の流体が導入されたとき、駆動用ピストンが、推進用ピストンがコイルばねに押されて第1ベース位置から第2ベース位置に移動することに伴って第1停止位置より本体ケースの他端側にある第2停止位置に移動される。第1ピストン室に高圧の流体が導入されかつ第2ピストン室に低圧の流体が導入されたとき、駆動用ピストンが、第2停止位置より本体ケースの他端側にある第3停止位置に移動される。回転弁体は、動力伝達機構によって、駆動用ピストンにおける本体ケースの軸方向の移動に応じて回転される。このようにしたことから、回転弁体が、駆動用ピストンの第1停止位置、第2停止位置および第3停止位置に対応する3つの回転位置に位置づけられる。したがって、流体圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供できる。
【0011】
また、本発明の他の一態様に係る流路切換弁では、第1ピストン室に低圧の流体が導入されかつ第2ピストン室に高圧の流体が導入されたとき、第1ピストンおよび第2ピストンが、推進用ピストンを本体ケースの一端側に押して第1ベース位置に位置づける第1停止位置に移動される。第1ピストンおよび第2ピストンが第1停止位置にある状態で第1ピストン室と第2ピストン室とに同一圧力の流体が導入されたとき、第1ピストンおよび第2ピストンが、推進用ピストンがコイルばねに押されて第1ベース位置から第2ベース位置に移動することに伴って第1停止位置より本体ケースの他端側にある第2停止位置に移動される。第1ピストン室に高圧の流体が導入されかつ第2ピストン室に低圧の流体が導入されたとき、第1ピストンおよび第2ピストンが、第2停止位置より本体ケースの他端側にある第3停止位置に移動される。弁体は、第1ピストンと第2ピストンとを連結する連結部材によって移動される。このようにしたことから、回転弁体が、駆動用ピストンの第1停止位置、第2停止位置および第3停止位置に対応する3つの位置に位置づけられる。したがって、流体圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例に係る流路切換システムを示す図である。
図2図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である(駆動用ピストンが第1停止位置にある状態)。
図3図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である(駆動用ピストンが第2停止位置にある状態)。
図4図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である(駆動用ピストンが第3停止位置にある状態)。
図5】流路切換弁の弁体が複数のポートの接続を切り換える様子を示す断面図である。
図6】本発明の第2実施例に係る流路切換弁の断面図である(第1ピストンおよび第2ピストンが第1停止位置にある状態)。
図7図6の流路切換弁の断面図である(第1ピストンおよび第2ピストンが第2停止位置にある状態)。
図8図6の流路切換弁の断面図である(第1ピストンおよび第2ピストンが第3停止位置にある状態)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例に係る流路切換システムについて、図1図5を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施例に係る流路切換システムを示す図である。図1では、流路切換弁、第1ピストン室制御弁および第2ピストン室制御弁を断面図で示している。図1では、流路切換弁、第1ピストン室制御弁および第2ピストン室制御弁の接続関係を二点鎖線で模式的に示している。図2図4は、図1の流路切換システムが有する流路切換弁の断面図である。図2図4は、駆動用ピストンが第1停止位置、第2停止位置、第3停止位置にある状態を示している。図5は、流路切換弁の弁体が複数のポートの接続を切り換える様子を示す断面図である。図5(a)は、駆動用ピストンが第1停止位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(b)は、駆動用ピストンが第1停止位置と第2停止位置との間の位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(c)は、駆動用ピストンが第2停止位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(d)は、駆動用ピストンが第2停止位置と第3停止位置との間の位置にあるときのポートの接続の様子を示す。図5(e)は、駆動用ピストンが第3停止位置にあるときのポートの接続の様子を示す。
【0015】
本実施例の流路切換システムは、例えば、ヒートポンプ式冷暖房システムにおいて、流体としての冷媒の流路を切り換えるために用いられる。
【0016】
図1に示すように、流路切換システム1は、流路切換弁5と、第1ピストン室制御弁80と、第2ピストン室制御弁90と、を有している。
【0017】
流路切換弁5は、本体ケース10と、弁座30と、回転弁体40と、推進用ピストン50と、駆動用ピストン60と、動力伝達機構70と、を有している。
【0018】
本体ケース10は、略円筒状に形成されている。本体ケース10は、一端10a側から他端10b側に向かって順に並ぶ駆動用ピストン収容部11と、中間部12と、弁体収容部13と、を有している。駆動用ピストン収容部11と、中間部12と、弁体収容部13と、は軸線L方向に連なっている。本体ケース10の一端10aは、円板状の壁部14によって塞がれている。本体ケース10の他端10bは、円板状の壁部15によって塞がれている。
【0019】
本体ケース10の内側には、円環板状の隔壁17が設けられている。隔壁17は、中間部12と弁体収容部13とを仕切るように配置されている。中間部12の内側には、有底筒状の軸受18が配置されている。軸受18は、隔壁17の内縁に連設されている。軸受18は、周壁部18aと、周壁部18aの他端10b側の端部に連設された底壁部18bと、を有している。周壁部18aは、軸線Lと直交する方向の断面形状の外周が多角形状(例えば、正六角形状)である。底壁部18bは、動力伝達機構70の弁軸75が挿通される軸受孔18cを有している。軸受18の周壁部18aの一端10a側の端面は、ストッパ面19となる。
【0020】
駆動用ピストン収容部11の内側には、駆動用ピストン60が軸線L方向に移動可能に配置される。本体ケース10は、駆動用ピストン60によって区画された第1ピストン室21と、第2ピストン室22と、を有している。第1ピストン室21と、第2ピストン室22と、は一端10a側から他端10b側に向かって順に並んでいる。また、第2ピストン室22と、弁体収容部13の内側の弁室24とは、隔壁17によって区画されている。
【0021】
弁座30は、円板状に形成されている。弁座30の外径は、弁体収容部13の内径と同一である。弁座30は、本体ケース10の内側に他端10bを塞ぐように配置されている。
【0022】
弁座30は、高圧ポートpAと、第1入出ポートpB1と、第2入出ポートpB2と、低圧ポートpCと、を有している。第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとは、同一の大きさの円形状に形成されている。高圧ポートpAは、第1入出ポートpB1より小さい円形状に形成されている。高圧ポートpAと第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとは、それぞれの中心が同一の円E1(図5(a)に示す)上に配置されている。軸線Lは、円E1の中心を通る。
【0023】
高圧ポートpAは、高圧導管Aを通じて図示しない圧縮機の吐出口に接続される。第1入出ポートpB1は、第1入出導管B1を通じて図示しない第1熱交換器に接続される。第2入出ポートpB2は、第2入出導管B2を通じて図示しない第2熱交換器に接続される。低圧ポートpCは、低圧導管Cを通じて図示しない図示しない圧縮機の吸入口に接続される。
【0024】
回転弁体40は、略扇形柱状(略半円柱状)に形成されている。回転弁体40は、弁室24に配置されている。回転弁体40は、扇形状の要に相当する部分を軸線Lが通るように配置されている。回転弁体40は、軸線L周りに回転可能である。回転弁体40は、弁座30の弁座面31に接する面である摺動面41を有している。摺動面41は、円E1に沿う平面視円弧形状(略C字状)に形成されている。摺動面41には、流体通路42と、第1シール部43および第2シール部44と、が設けられている。摺動面41は、平面視扇形状でもよい。回転弁体40は、軸線L周りに回転することにより、弁座30に設けられた複数のポートの接続を切り換える。
【0025】
流体通路42は、円E1に沿う平面視円弧形状の凹部である。流体通路42は、弁室24と区画されている。流体通路42は、第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続可能に形成されている。回転弁体40の回転位置に応じて、流体通路42は、図5(a)に示すように第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとを接続する(第1回転位置RP1)。または、流体通路42は、図5(c)に示すように第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する(第2回転位置RP2)。または、流体通路42は、図5(e)に示すように第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する(第3回転位置RP3)。
【0026】
第1シール部43は、摺動面41における流体通路42の一方の端部に連なる部分である。第1シール部43は、第1入出ポートpB1を通過する際に当該第1入出ポートpB1を塞ぐように形成されている。
【0027】
第2シール部44は、摺動面41における流体通路42の他方の端部に連なる部分である。第2シール部44は、第2入出ポートpB2を通過する際に当該第2入出ポートpB2を塞ぐように形成されている。
【0028】
なお、本実施例では、第1シール部43が、所定位置において第1入出ポートpB1を完全に塞ぐようにしている。これ以外にも、第1シール部43が、若干のバイパス流量(第1入出ポートpB1を介して弁室24と流体通路42との間を流れる冷媒の流量)を確保するように、第1入出ポートpB1を少しの隙間を残して塞ぐようにしてもよい。第2シール部44についても同様である。
【0029】
高圧ポートpAは、常に弁室24に開口している。弁室24には高圧の冷媒が流れる。低圧ポートpCは、常に流体通路42に開口している。流体通路42には低圧の冷媒が流れる。第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2は、回転弁体40の回転位置に応じて、弁室24または流体通路42に開口する。
【0030】
推進用ピストン50は、円筒部51と、円筒部51の他端10b側の端部を塞ぐ円板部52と、円筒部51の一端10a側の端部に径方向外方に突出するように設けられたフランジ部53と、を一体的に有している。推進用ピストン50は、壁部14に固定された円筒状のシリンダ55によって軸線L方向に移動可能に支持されている。シリンダ55は、他端10b側の端部に円環状のストッパ部56を有している。ストッパ部56の内径は、円筒部51の外径と同一または当該外径より若干大きい。推進用ピストン50は、円板部52と壁部14との間に配置されたコイルばね57によって、一端10a側から他端10b側に向かって押されている。シリンダ55の内側と外側とは、流通孔55aによって連通されている。
【0031】
推進用ピストン50は、第1ベース位置BP1と、第2ベース位置BP2と、の間を移動可能である。第1ベース位置BP1は、図2に示すように、円板部52とストッパ部56とが同じ位置になるまで推進用ピストン50がシリンダ55の内側に押し込まれた位置である。第2ベース位置BP2は、図3図4に示すように、フランジ部53がストッパ部56に当接して、推進用ピストン50がそれ以上は他端10b側に移動できない位置である。第2ベース位置BP2は、推進用ピストン50がコイルばね57によってシリンダ55から最大限押し出された位置でもある。第2ベース位置BP2は、第1ベース位置BP1より他端10b側にある。
【0032】
駆動用ピストン60は、駆動用ピストン収容部11に推進用ピストン50より他端10b側に配置されている。駆動用ピストン60は、ピストン部61と、ピストン部61の他端10b側に連設されたガイド部62と、を有している。ピストン部61の外径は、駆動用ピストン収容部11の内径と同一である。ガイド部62は、略円柱状に形成されている。ガイド部62の他端10b側の端面には、ガイド穴63が設けられている。ガイド穴63は、軸線Lと直交する方向の断面形状が多角形状(例えば、正六角形状)である。ガイド穴63には軸受18が嵌合される。軸受18は、ガイド穴63の内側において軸線L方向に相対移動可能である。駆動用ピストン60は、軸受18によって軸線L周りの回転が規制される。駆動用ピストン60の内部には、雌ねじ面64が設けられている。
【0033】
駆動用ピストン60は、第1停止位置SP1と、第2停止位置SP2と、第3停止位置SP3と、の間を移動可能である。第1停止位置SP1は、図2に示すように、駆動用ピストン60がストッパ部56に接する位置である。駆動用ピストン60は、第1停止位置SP1において、推進用ピストン50をシリンダ55の内側に押し込めて第1ベース位置BP1に位置づける。第2停止位置SP2は、図3に示すように、駆動用ピストン60が第2ベース位置BP2にある推進用ピストン50に接する位置である。駆動用ピストン60は、推進用ピストン50に押されることによって、第1停止位置SP1から第2停止位置SP2まで移動される。第2停止位置SP2は、第1停止位置SP1より他端10b側にある。第3停止位置SP3は、図4に示すように、駆動用ピストン60が推進用ピストン50から離れ、軸受18のストッパ面19に接する位置である。第3停止位置SP3は、第2停止位置SP2より他端10b側にある。
【0034】
動力伝達機構70は、回転駆動軸71と、弁軸75と、を有している。回転駆動軸71は、略円柱状に形成されている。回転駆動軸71の外周面には、雄ねじ面74が設けられている。回転駆動軸71は、雄ねじ面74が駆動用ピストン60の雌ねじ面64に接するように配置されている。雄ねじ面74と雌ねじ面64とは螺合している。駆動用ピストン60が軸線L方向に移動すると、雌ねじ面64と雄ねじ面74とのねじ送り作用によって回転駆動軸71が軸線L周りに回転される。弁軸75は、略円柱状に形成されている。弁軸75は、軸受18の軸受孔18cに挿通されている。弁軸75は、軸受18によって軸線L周りに回転可能に支持されている。弁軸75と軸受18との間には、封止部材であるOリング76が配置されている。なお、Oリング76に代えて、他の種類の封止部材を用いてもよい。弁軸75は、回転弁体40の扇形状の要に相当する部分に取り付けられている。弁軸75と回転弁体40との間に、回転弁体40に対して弁座30に押し付ける力を加えるコイルばね77が配置されている。弁軸75の一端10a側の端部は、回転駆動軸71に取り付けられている。弁軸75は、回転駆動軸71とともに回転される。弁軸75が回転されると回転弁体40も回転される。動力伝達機構70は、回転駆動軸71と弁軸75との間に複数の歯車からなる減速機構を有していてもよい。
【0035】
本体ケース10、弁座30、回転弁体40の扇形状の要に相当する部分、推進用ピストン50、駆動用ピストン60、回転駆動軸71および弁軸75のそれぞれの軸は、軸線Lと一致する。すなわち、これらは全て同軸に配置されている。
【0036】
第1ピストン室制御弁80は、コイル81と、コイル81が発生する磁界に応じて移動するプランジャー82と、プランジャー82に連結された弁体83と、を有する電磁弁である。弁体83は、弁座84上に配置されている。弁座84は、第1ポート85と、第2ポート86と、を有している。第1ポート85は、細管S1を通じて低圧導管Cに接続されている。第2ポート86は、細管S2を通じて第1ピストン室21に接続されている。第1ピストン室制御弁80は、細管S3を通じて高圧導管Aに接続された弁室88を有している。
【0037】
弁体83は、コイル81に通電しない状態(第1ピストン室制御弁80:オフ)で、第1ポート85と第2ポート86とを接続する位置に移動される。第1ピストン室制御弁80は、第1ピストン室21と低圧導管Cとを接続する第1ピストン室低圧接続状態となる。
【0038】
弁体83は、コイル81に通電した状態(第1ピストン室制御弁80:オン)で、第1ポート85のみ覆う位置に移動され、第2ポート86が弁室88に開口する。第1ピストン室制御弁80は、第1ピストン室21と高圧導管Aとを接続する第1ピストン室高圧接続状態となる。
【0039】
第2ピストン室制御弁90は、コイル91と、コイル91が発生する磁界に応じて移動するプランジャー92と、プランジャー92に連結された弁体93と、を有する電磁弁である。弁体93は、弁座94上に配置されている。弁座94は、第1ポート95と、第2ポート96と、を有している。第1ポート95は、細管T1を通じて低圧導管Cに接続されている。第2ポート96は、細管T2を通じて第2ピストン室に接続されている。第2ピストン室制御弁90は、細管T3を通じて高圧導管Aに接続された弁室98を有している。
【0040】
弁体93は、コイル91に通電しない状態(第2ピストン室制御弁90:オフ)で、第1ポート95と第2ポート96とを接続する位置に移動される。第2ピストン室制御弁90は、第2ピストン室22と低圧導管C(低圧ポートpC)とを接続する第2ピストン室低圧接続状態となる。
【0041】
弁体93は、コイル91に通電した状態(第2ピストン室制御弁90:オン)で、第1ポート95のみを覆う位置に移動され、第2ポート96が弁室98に開口する。第2ピストン室制御弁90は、第2ピストン室22と高圧導管A(高圧ポートpA)とを接続する第2ピストン室高圧接続状態となる。
【0042】
流路切換システム1の動作の一例について、図2図5を参照して説明する。図5(a)~(e)は、弁座面31(図1のX-X線で示す箇所)に沿う断面図である。図5(a)~(e)において、摺動面41をハッチングで模式的に示している。
【0043】
流路切換システム1では、高圧導管Aに圧縮機の吐出口から吐出された高圧の冷媒が流れる。低圧導管Cに圧縮機の吸入口に向かう低圧の冷媒が流れる。流路切換システム1は、以下の3つの流路接続パターンを提供する。
【0044】
パターン1:高圧ポートpAと第2入出ポートpB2とを接続し、第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとを接続する。
パターン2:第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する。
パターン3:高圧ポートpAと第1入出ポートpB1とを接続し、第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する。
【0045】
(パターン1)
第1ピストン室制御弁80をオフにする。第2ピストン室制御弁90をオンにする。第1ピストン室制御弁80によって、第1ピストン室21と低圧導管Cとが接続される。第2ピストン室制御弁90によって、第2ピストン室22と高圧導管Aとが接続される。これにより、第1ピストン室21に低圧の冷媒が導入される。第2ピストン室22に高圧の冷媒が導入される。
【0046】
第1ピストン室21の冷媒と第2ピストン室22の冷媒との差圧によって、駆動用ピストン60を一端10a側に移動させる力F1が生じる。駆動用ピストン60は、一端10a側に移動して推進用ピストン50に接する。推進用ピストン50は、コイルばね57によって他端10b側に移動させる力F2が加えられている。力F2より力F1の方が大きくなるようにコイルばね57のばね定数や駆動用ピストン60の外径(受圧面積)が設定されている。推進用ピストン50は、駆動用ピストン60に押されて一端10a側に移動する。駆動用ピストン60が、ストッパ部56に突き当たる。これにより、図2に示すように、推進用ピストン50が第1ベース位置BP1に位置づけられ、駆動用ピストン60が第1停止位置SP1に位置づけられる。そして、駆動用ピストン60の移動に応じて、回転弁体40が図5(a)に示す第1回転位置RP1に位置づけられる。図5(a)に示す状態において、高圧ポートpAと第2入出ポートpB2とが弁室24によって接続される。第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとが流体通路42によって接続される。
【0047】
(パターン2)
図5(a)に示す状態において、第1ピストン室制御弁80をオフにする。第2ピストン室制御弁90をオフにする。第1ピストン室制御弁80によって、第1ピストン室21と低圧導管Cとが接続される。第2ピストン室制御弁90によって、第2ピストン室22と低圧導管Cとが接続される。これにより、第1ピストン室21に低圧の冷媒が導入される。第2ピストン室22に低圧の冷媒が導入される。
【0048】
第1ピストン室21の冷媒と第2ピストン室の冷媒とが同一圧力であるため、冷媒圧力による駆動用ピストン60を移動させる力が生じない。推進用ピストン50は、上記力F2によって、第1ベース位置BP1からフランジ部53がストッパ部56に突き当たるまで他端10b側に移動する。駆動用ピストン60は、推進用ピストン50に押されて他端10b側に移動する。これにより、図3に示すように、推進用ピストン50が第2ベース位置BP2に位置づけられ、駆動用ピストン60が第2停止位置SP2に位置づけられる。そして、駆動用ピストン60の移動に応じて、回転弁体40が図5(a)に示す第1回転位置RP1から、図5(b)に示す回転位置を経由して、図5(c)に示す第2回転位置RP2に位置づけられる。図5(c)に示す状態において、第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとが流体通路42によって接続される。高圧ポートpAは、第1入出ポートpB1、第2入出ポートpB2および低圧ポートpCのいずれにも接続されない。
【0049】
回転弁体40が第1回転位置RP1から第2回転位置RP2に移動する途中で、図5(b)に示すように、第2入出ポートpB2は、弁室24から外れて第2シール部44に塞がれる。そして、回転弁体40が第2回転位置RP2に移動すると、第2入出ポートpB2は流体通路42に開口する。これにより、回転弁体40が第1回転位置RP1から第2回転位置RP2に移動する途中で、第2入出ポートpB2を通じて、流体通路42と弁室24とが接続されることがない。そのため、弁室24内にある高圧の冷媒が低圧側へ流れることを抑制できる。
【0050】
(パターン3)
図5(c)に示す状態において、第1ピストン室制御弁80をオンにする。第2ピストン室制御弁90をオフにする。第1ピストン室制御弁80によって、第1ピストン室21と高圧導管Aとが接続される。第2ピストン室制御弁90によって、第2ピストン室22と低圧導管Cとが接続される。これにより、第1ピストン室21に高圧の冷媒が導入される。第2ピストン室22に低圧の冷媒が導入される。
【0051】
第1ピストン室21の冷媒と第2ピストン室22の冷媒との差圧によって、駆動用ピストン60を他端10b側に移動させる力F3が生じる。駆動用ピストン60は、他端10b側に移動してストッパ面19に突き当たる。これにより、図4に示すように、推進用ピストン50が第2ベース位置BP2に位置づけられ、駆動用ピストン60が第3停止位置SP3に位置づけられる。そして、駆動用ピストン60の移動に応じて、回転弁体40が図5(c)に示す第2回転位置RP2から、図5(d)に示す回転位置を経由して、図5(e)に示す第3回転位置RP3に位置づけられる。図5(e)に示す状態において、高圧ポートpAと第1入出ポートpB1とが弁室24によって接続される。第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとが流体通路42によって接続される。なお、上記パターン3から上記パターン2に移行するためには、上記パターン1を経由する必要がある。
【0052】
回転弁体40が第2回転位置RP2から第3回転位置RP3に移動する途中で、図5(d)に示すように、第1入出ポートpB1は、流体通路42から外れて第1シール部43に塞がれる。そして、回転弁体40が第3回転位置RP3に移動すると、第1入出ポートpB1は弁室24に開口する。これにより、回転弁体40が第2回転位置RP2から第3回転位置RP3に移動する途中で、第1入出ポートpB1を通じて、流体通路42と弁室24とが接続されることがない。そのため、弁室24内にある高圧の冷媒が低圧側へ流れることを抑制できる。
【0053】
以上より、本実施例の流路切換システム1の流路切換弁5では、第1ピストン室21に低圧の冷媒が導入されかつ第2ピストン室22に高圧の冷媒が導入されたとき、駆動用ピストン60が、推進用ピストン50を一端10a側に押して第1ベース位置BP1に位置づける第1停止位置SP1に移動される。駆動用ピストン60が第1停止位置SP1にある状態で第1ピストン室21と第2ピストン室22とに同一圧力(低圧)の冷媒が導入されたとき、駆動用ピストン60が、推進用ピストン50がコイルばね57に押されて第1ベース位置BP1から第2ベース位置BP2に移動することに伴って第1停止位置SP1より他端10b側にある第2停止位置SP2に移動される。第1ピストン室21に高圧の冷媒が導入されかつ第2ピストン室22に低圧の冷媒が導入されたとき、駆動用ピストン60が、第2停止位置SP2より他端10b側にある第3停止位置SP3に移動される。回転弁体40は、動力伝達機構70によって、駆動用ピストン60の軸線L方向の移動に応じて回転される。このようにしたことから、回転弁体40が、駆動用ピストン60の第1停止位置SP1、第2停止位置SP2および第3停止位置SP3に対応する第1回転位置RP1、第2回転位置RP2および第3回転位置RP3に位置づけられる。したがって、冷媒圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供できる。
【0054】
また、回転弁体40の摺動面41は、平面視円弧形状に形成されている。摺動面41には、流体通路42と、第1シール部43と、第2シール部44と、が設けられている。流体通路42は、第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続可能な平面視円弧形状の凹部である。第1シール部43は、流体通路42の一方の端部に連なる摺動面41の一部分である。第1シール部43は、第1入出ポートpB1を通過する際に当該第1入出ポートpB1を塞ぐように形成されている。第2シール部44は、流体通路42の他方の端部に連なる摺動面41の一部分である。第2シール部44は、第2入出ポートpB2を通過する際に当該第2入出ポートpB2を塞ぐように形成されている。このようにしたことから、回転弁体40を回転させて流路を切り換える際に、第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2を通じて、流体通路42と弁室24とが接続されることがない。そのため、弁室24内にある高圧の冷媒が低圧側へ流れることを抑制できる。
【0055】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施例に係る流路切換弁について、図6図8を参照して説明する。
【0056】
図6図8は、本発明の第2実施例に係る流路切換弁の断面図である。図6図8は、第1ピストンおよび第2ピストンが第1停止位置、第2停止位置、第3停止位置にある状態を示している。
【0057】
本実施例の流路切換弁は、例えば、上述した第1実施例の流路切換システム1において、流路切換弁5に代えて用いられる。
【0058】
図6図8に示すように、流路切換弁105は、本体ケース110と、弁座130と、弁体140と、推進用ピストン150と、ピストンユニット160と、を有している。
【0059】
本体ケース110は、略円筒状に形成されている。本体ケース110の一端110aは、円板状の壁部114によって塞がれている。本体ケース110の他端110bは、円板状の壁部115によって塞がれている。本体ケース110は、軸線L方向の中央付近の箇所に高圧ポートpAを有している。
【0060】
本体ケース110は、ピストンユニット160が有する第1ピストン161および第2ピストン162によって区画された第1ピストン室121と、弁室124と、第2ピストン室122と、を有している。第1ピストン室121と、弁室124と、第2ピストン室122と、は一端110a側から他端110b側に向かって順に並んでいる。
【0061】
弁座130は、軸線L方向に延在する柱状に形成されている。本体ケース110の内側で軸線L方向の中央付近に配置されている。
【0062】
弁座130は、第1入出ポートpB1と、低圧ポートpCと、第2入出ポートpB2と、を有している。第1入出ポートpB1と低圧ポートpCと第2入出ポートpB2とは、同一の大きさの円形状に形成されている。高圧ポートpAは、第1入出ポートpB1より小さい円形状に形成されている。第1入出ポートpB1と低圧ポートpCと第2入出ポートpB2とは、弁座面上に一端110a側から他端110b側に向かって順に並んで配置されている。
【0063】
高圧ポートpAは、高圧導管Aを通じて図示しない圧縮機の吐出口に接続される。第1入出ポートpB1は、第1入出導管B1を通じて図示しない第1熱交換器に接続される。第2入出ポートpB2は、第2入出導管B2を通じて図示しない第2熱交換器に接続される。低圧ポートpCは、低圧導管Cを通じて図示しない図示しない圧縮機の吸入口に接続される。
【0064】
弁体140は、略半楕円球状に形成されている。弁体140は、弁室124に配置されている。弁体140は、軸線L方向に移動可能である。弁体140は、摺動面141を有している。摺動面141は、弁座130の弁座面131に接する面である。摺動面141には、流体通路142が設けられている。弁体140は、軸線L方向に移動することにより、弁座130に設けられた複数のポートの接続を切り換える。
【0065】
流体通路142は、軸線L方向に延在する平面視長円形状の凹部である。流体通路142は、弁室124と区画されている。流体通路142は、第1入出ポートpB1と低圧ポートpCと第2入出ポートpB2とを接続可能に形成されている。弁体140の停止位置に応じて、流体通路142は、図6に示すように第1入出ポートpB1と低圧ポートpCとを接続する(第1停止位置SP1)。または、流体通路142は、図7に示すように第1入出ポートpB1と第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する(第2停止位置SP2)。または、流体通路142は、図8に示すように第2入出ポートpB2と低圧ポートpCとを接続する(第3停止位置SP3)。
【0066】
高圧ポートpAは、常に弁室124に開口している。弁室124には高圧の冷媒が流れる。低圧ポートpCは、常に流体通路142に開口している。流体通路142には低圧の冷媒が流れる。第1入出ポートpB1および第2入出ポートpB2は、弁体140の停止位置に応じて、弁室124または流体通路142に開口する。
【0067】
推進用ピストン150は、円柱部151と、円柱部151の他端110b側の端部に取り付けられた円板部152と、円柱部151の一端110a側の端部に径方向外方に突出するように設けられたフランジ部153と、を有している。推進用ピストン150は、壁部114に固定された円筒状のシリンダ155によって軸線L方向に移動可能に支持されている。シリンダ155は、一端110a側の端部に径方向外方に突出するように設けられた取付部155aを有している。取付部155aは、壁部114に固定されている。シリンダ155は、他端110b側の端部に円環板状のストッパ部156を有している。ストッパ部156の内径は、円柱部151の外径と同一または当該外径より若干大きい。推進用ピストン150は、円板部152とシリンダ155の取付部155aとの間に配置されたコイルばね157によって、一端110a側から他端110b側に向かって押されている。シリンダ155の内側と外側とは、流通孔155bによって連通されている。
【0068】
推進用ピストン150は、第1ベース位置BP1と、第2ベース位置BP2と、の間を移動可能である。第1ベース位置BP1は、図6に示すように、円板部152がストッパ部156に接する位置になるまで推進用ピストン150がシリンダ155の内側に押し込まれた位置である。第2ベース位置BP2は、図7図8に示すように、フランジ部153がストッパ部156に当接して、推進用ピストン150がそれ以上は他端110b側に移動できない位置である。第2ベース位置BP2は、推進用ピストン150がコイルばね157によってシリンダ155から最大限押し出された位置でもある。第2ベース位置BP2は、第1ベース位置BP1より他端110b側にある。
【0069】
ピストンユニット160は、第1ピストン161と、第2ピストン162と、連結部材163と、を有している。第1ピストン161は、壁部114と弁座130との間に配置される。第2ピストン162は、壁部115と弁座130との間に配置される。つまり、第1ピストン161と第2ピストン162との間の弁室124に、弁座130が配置される。連結部材163は、略平板状に形成されている。連結部材163の一端110a側の端部には第1ピストン161が取り付けられる。連結部材163の他端110b側の端部には第2ピストン162が取り付けられる。連結部材163は、第1ピストン161と第2ピストン162とが一体的に移動するようにこれらを連結する。また、連結部材163は、弁体140と一体的に移動するように、弁体140に接続されている。具体的には、連結部材163は、弁体140の形状に沿うように形成された弁体挿入孔164を有しており、この弁体挿入孔164に弁体140が挿入されている。
【0070】
第1ピストン161および第2ピストン162は、第1停止位置SP1と、第2停止位置SP2と、第3停止位置SP3と、の間を移動可能である。第1停止位置SP1は、図6に示すように、第1ピストン161とストッパ部156との間に円板部152を挟む位置である。第1ピストン161および第2ピストン162は、第1停止位置SP1において、推進用ピストン150をシリンダ155の内側に押し込めて第1ベース位置BP1に位置づける。第2停止位置SP2は、図7に示すように、第1ピストン161が第2ベース位置BP2にある推進用ピストン150に接する位置である。第1ピストン161および第2ピストン162は、推進用ピストン150に押されることによって、第1停止位置SP1から第2停止位置SP2まで移動される。第2停止位置SP2は、第1停止位置SP1より他端110b側にある。第3停止位置SP3は、図8に示すように、第1ピストン161が推進用ピストン150から離れ、第2ピストン162が壁部115に接する位置である。第3停止位置SP3は、第2停止位置SP2より他端110b側にある。
【0071】
本体ケース110、推進用ピストン150、第1ピストン161および第2ピストン162のそれぞれの軸は、軸線Lと一致する。すなわち、これらは全て同軸に配置されている。
【0072】
第2実施例の流路切換弁105においても、上述した第1実施例の流路切換弁5と同様に、第1ピストン室121の冷媒圧力および第2ピストン室122の冷媒圧力に応じて、上記パターン1~パターン3の流路接続パターンを提供できる。
【0073】
以上より、本実施例の流路切換弁105では、第1ピストン室121に低圧の冷媒が導入されかつ第2ピストン室122に高圧の冷媒が導入されたとき、第1ピストン161および第2ピストン162が、推進用ピストン150を一端110a側に押して第1ベース位置BP1に位置づける第1停止位置SP1に移動される。第1ピストン161および第2ピストン162が第1停止位置SP1にある状態で第1ピストン室121と第2ピストン室122とに同一圧力(低圧)の冷媒が導入されたとき、第1ピストン161および第2ピストン162が、推進用ピストン150がコイルばね157に押されて第1ベース位置BP1から第2ベース位置BP2に移動することに伴って第1停止位置SP1より他端110b側にある第2停止位置SP2に移動される。第1ピストン室121に高圧の冷媒が導入されかつ第2ピストン室122に低圧の冷媒が導入されたとき、第1ピストン161および第2ピストン162が、第2停止位置SP2より他端110b側にある第3停止位置SP3に移動される。弁体140は、第1ピストン161と第2ピストン162とを連結する連結部材163によって移動される。このようにしたことから、弁体140が、第1ピストン161および第2ピストン162の第1停止位置SP1、第2停止位置SP2および第3停止位置SP3に対応する3つの位置に位置づけられる。したがって、冷媒圧力を用いて3つの流路接続パターンを提供できる。
【0074】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
(第1実施例)
1…流路切換システム、5…流路切換弁、10…本体ケース、10a…一端、10b…他端、11…駆動用ピストン収容部、12…中間部、13…弁体収容部、14、15…壁部、17…隔壁、18…軸受、18a…周壁部、18b…底壁部、18c…軸受孔、19…ストッパ面、21…第1ピストン室、22…第2ピストン室、24…弁室、30…弁座、31…弁座面、40…回転弁体、41…摺動面、42…流体通路、43…第1シール部、44…第2シール部、50…推進用ピストン、51…円筒部、52…円板部、53…フランジ部、55…シリンダ、55a…流通孔、56…ストッパ部、57…コイルばね、60…駆動用ピストン、61…ピストン部、62…ガイド部、63…ガイド穴、64…雌ねじ面、70…動力伝達機構、71…回転駆動軸、74…雄ねじ面、75…弁軸、76…Oリング、77…コイルばね、80…第1ピストン室制御弁、81…コイル、82…プランジャー、83…弁体、84…弁座、85…第1ポート、86…第2ポート、88…弁室、90…第2ピストン室制御弁、91…コイル、92…プランジャー、93…弁体、94…弁座、95…第1ポート、96…第2ポート、98…弁室、pA…高圧ポート、pB1…第1入出ポート、pB2…第2入出ポート、pC…低圧ポート、A…高圧導管、B1…第1入出導管、B2…第2入出導管、C…低圧導管、S1~S3…細管、T1~T3…細管
(第2実施例)
105…流路切換弁、110…本体ケース、110a…一端、110b…他端、121…第1ピストン室、122…第2ピストン室、124…弁室、130…弁座、131…弁座面、140…弁体、141…摺動面、142…流体通路、150…推進用ピストン、151…円柱部、152…円板部、153…フランジ部、155…シリンダ、155a…取付部、155b…流通孔、156…ストッパ部、157…コイルばね、160…ピストンユニット、161…第1ピストン、162…第2ピストン、163…連結部材、164…弁体挿入孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8