(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】CT装置、CTシステムおよびCT方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A61B6/03 510
A61B6/03 530C
(21)【出願番号】P 2020089881
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三好 寿顕
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0172023(US,A1)
【文献】特開2004-180755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 ー 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタと、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射す
る複数のX線照射部と、
前記フラットパネルディテクタおよび前記X線照射部を支持する筒形状の構造体であって、筒内に被検者が入ることができ、入った当該被検者の周囲を囲む筒形状の構造体と、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタが撮像したX線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部と、を備
え、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタは、被検者を囲むように、前記筒形状の構造体に設けられている、CT装置。
【請求項2】
前記3枚以上のフラットパネルディテクタは、前記X線透視画像を同時に撮像する、請求項1に記載の
CT装置。
【請求項3】
前記3枚以上のフラットパネルディテクタは、前記X線透視画像を連続して撮像し、
前記内部画像生成部は、前記被検者の内部構造の経時的変化を示す画像データを生成する、請求項2に記載の
CT装置。
【請求項4】
前記被検者の内部構造を示す画像データは、前記被検者の断面を示す画像データである、請求項1~3のいずれか一項に記載の
CT装置。
【請求項5】
測定ユニットと、前記測定ユニットと通信可能なコンピュータと、を備え、
前記測定ユニットは、
筒内に被検者が入ることができ、入った当該被検者の周囲を囲むように構成された筒形状の構造体に支持され、被検者を囲む
ように前記筒形状の構造体に設けられた3枚以上のフラットパネルディテクタと、
前記筒形状の構造体に支持され、前記3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射す
る複数のX線照射部と、を備え、
前記コンピュータは、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタが撮像したX線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部を備える
CTシステム。
【請求項6】
筒内に被検者が入ることができ、入った当該被検者の周囲を囲むように構成された筒形状の構造体に支持された3枚以上のフラットパネルディテクタであって、被検者を囲む
ように、前記筒形状の構造体に設けられている3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して
、前記筒形状の構造体に支持された複数のX線照射部から前記被検者を介してX線を照射し、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタがX線透視画像を撮像し、
コンピュータが前記X線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成することを含む
CT方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易型CT装置、簡易型CTシステムおよび簡易CT方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、X線CT(Computed Tomography)装置の需要が非常に高まっている。また、X線CT装置は新型コロナウィルス肺炎だけでなく、その他の肺炎や、悪性腫瘍等を診断するためにも用いることができる。しかし、X線CT装置は比較的高価であり、放射線への被ばくがあり、スペースをとるため、限られた病院や診療所などにしか設置されていないのが現状である。
【0003】
ところで、近年、X線診断技術の一つとして、フラットパネルディテクタが開発されている(特許文献1)。フラットパネルディテクタは、2次元アレイ方式のX線センサによって、X線透視画像を撮像するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、X線透視画像を撮像することができるが、CT装置のように被検者の内部構造を示す画像(例えば、断面画像)を生成することはできない。
【0006】
本発明の一態様は、被検者の内部構造を示す画像を生成することができる非侵襲の医療機器であって、従来のX線CT装置に比べ、省コスト、省被ばくおよび省スペースの少なくとも一つを実現する医療機器を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る簡易型CT装置は、被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタと、前記3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射する1または複数のX線照射部と、前記3枚以上のフラットパネルディテクタが撮像したX線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る簡易型CTシステムは、測定ユニットと、前記測定ユニットと通信可能なコンピュータと、を備え、前記測定ユニットは、被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタと、前記3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射する1または複数のX線照射部と、を備え、前記コンピュータは、前記3枚以上のフラットパネルディテクタが撮像したX線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係る簡易CT方法は、被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射し、前記3枚以上のフラットパネルディテクタがX線透視画像を撮像し、コンピュータが前記X線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、被検者の内部構造を示す画像を生成することができる非侵襲の医療機器であって、従来のX線CT装置に比べ、省コスト、省被ばく、省スペースおよび省スペースの少なくとも一つを実現する医療機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る簡易型CT装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る簡易型CT装置の使用時の形態の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る簡易型CT装置の使用時の形態の他の例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1におけるフラットパネルディテクタの構造の一例を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態1におけるフラットパネルディテクタの細部の構造の一例を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る簡易型CT装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態1における内部画像生成部の処理の概要を説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態1の変形例に係る6枚のフラットパネルディテクタを備える簡易型CT装置の構成例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態1の変形例に係る被検者が伏した状態で検査を行う簡易型CT装置の構成例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態1の変形例に係るX線照射部の配置のバリエーションを示す簡易型CT装置100の構成例を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る簡易型CT装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態3に係る簡易型CTシステムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(簡易型CT装置)
図1は、実施形態1に係る簡易型CT装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、簡易型CT装置100は、3枚以上のフラットパネルディテクタ110(110a、110b、110c、…)と、1または複数のX線照射部120(120a、120b、120c、…)と、表示部130と、主制御部150とを備える。主制御部150は、撮像制御部151、内部画像生成部152および出力制御部153を備える。
【0014】
図2および
図3は、簡易型CT装置100の使用時の形態の例を模式的に示す図である。
図2および
図3に示す例では、フラットパネルディテクタ110は3枚(フラットパネルディテクタ110a~c)であり、X線照射部120は3個(120a~c)である。
【0015】
図2および
図3に示す例では、簡易型CT装置100は、フラットパネルディテクタ110およびX線照射部120を支持する構造体140または140aを備えている。構造体140および140aの形状および構造体140および140aを構成する物質は特に限定されないが、
図2に示す例では、構造体140は、三角筒形状であり、フラットパネルディテクタ110a~cの各々が構造体140の各側面に設けられている。また、
図3に示す例では、構造体140aは、六角筒形状であり、フラットパネルディテクタ110a~cの各々が構造体140aの連続する3つの側面に設けられている。
【0016】
また、簡易型CT装置100を用いた検査の対象は、従来のX線CT装置を用いた検査の対象と同様である。例えば、検査対象部位としては、特に限定されないが、被検者Aの胸部または腹部を検査するものであってもよい。また、検査対象の疾患としては、特に限定されないが、新型コロナウィルス肺炎、高齢者誤嚥性肺炎等の肺炎、悪性腫瘍などが挙げられる。
【0017】
(フラットパネルディテクタ)
フラットパネルディテクタ110は、DR(Digital Radiography)方式のX線撮像装置であり、X線を光に変換するX線変換膜と、複数の光検出素子とを備え、X線変換膜によりX線を光に変換して、光検出素子によって検出することにより、X線透視画像を撮像する装置である。
【0018】
図2および
図3に示すように、フラットパネルディテクタ110a~cは、それぞれ構造体140または140aに設置されており、被検者Aを囲む位置に配置されている。被検者Aを囲む位置とは、被検者Aを中心としてその周りの位置を指す。フラットパネルディテクタ110a~cは、それぞれ被検者Aに略正対するように配置されていることが好ましいが、本実施形態はこれに限定されず、被検者Aに対して斜めに配置されていてもよい。なお、フラットパネルディテクタ110は、
図2に示す例のように、被検者Aを囲む位置の全周に亘って配置されていてもよいが、
図3に示す例のように、被検者Aを囲む位置の半周に亘って配置されていてもよい。X線透視画像は透視画像であるため、ある方向から撮像したものと、その反対側から撮像したものは基本的には同じ画像になる。そのため、
図3に示す例のように、フラットパネルディテクタ110が被検者Aを囲む位置の半周に亘って配置されている構成であっても、フラットパネルディテクタ110が被検者Aを囲む位置の全周に亘って配置されている構成と同等の効果を得られる。
【0019】
図4は、フラットパネルディテクタ110の構造の一例を示す模式図であり、
図5は、フラットパネルディテクタ110の細部の構造の一例を示す模式図である。
【0020】
図4に示すように、フラットパネルディテクタ110は、カバー層111、X線変換膜112、TFT(Thin Film Transistor)アレイ基板113およびTFTアレイ基板113上にマトリクス状に設けられた光検出素子114を備えている。また、
図5に示すように、光検出素子114は、電荷変換収集層115およびTFT素子116によって構成されており、TFT素子116は、TFTアレイ基板113上に配線されたデータライン117およびゲートライン118に接続されている。データライン117は、デジタル変換回路119に接続されている。
【0021】
カバー層111は、X線を透過する物質で形成されており、X線変換膜112を保護する。X線変換膜112は、X線を光に変換するものであり、例えば、CsIが成膜されたものである。電荷変換収集層115は、X線変換膜112によって生じた光子を電荷に変換する。デジタル変換回路119は、データライン117およびTFT素子116を介して電荷変換収集層115において光子が電荷に変換されたことを検出し、X線透視画像を生成する。デジタル変換回路119は、X線透視画像について、例えば、低ノイズ化処理および高精細化処理を施してもよい。
【0022】
(X線照射部)
X線照射部120は、X線管を備え、X線を照射する装置である。
【0023】
図2および
図3に示すように、X線照射部120a~cは、フラットパネルディテクタ110a~cの各々に対して被検者Aを介してX線を照射するように配置されている。すなわち、X線照射部120aは、被検者Aを介してフラットパネルディテクタ110aにX線を照射し、X線照射部120aは、被検者Aを介してフラットパネルディテクタ110aにX線を照射し、X線照射部120aは、被検者Aを介してフラットパネルディテクタ110aにX線を照射するように配置されている。
【0024】
なお、被検者AにおいてX線が照射される位置は、被検者Aの検査部位に応じて設定することが好ましい。例えば、検査部位が被検者Aの胸部である場合には、X線照射部120は、被検者Aの胸部を介してフラットパネルディテクタ110にX線を照射することが好ましい。
【0025】
また、
図2および
図3に示す例では、X線照射部120a~cの配置位置は、フラットパネルディテクタ110a~cよりも高い位置であるが、本実施形態はこれに限定されず、フラットパネルディテクタ110a~cと重なる位置、または、フラットパネルディテクタ110a~cよりも低い位置に配置されていてもよい。
【0026】
(表示部)
表示部130は、画像データを表示可能なものであればよく、例えば、一般的な液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置、量子ドットディスプレイ装置等を用いることができる。
【0027】
(主制御部)
主制御部340は、簡易型CT装置100の各構成を統括的に制御する。
【0028】
撮像制御部151は、フラットパネルディテクタ110およびX線照射部120を制御して、各X線照射部120にX線を照射させるとともに、各フラットパネルディテクタ110にX線透視画像を撮像させ、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像を取得する。
【0029】
内部画像生成部152は、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像から被検者Aの内部構造を示す画像データを生成する。
【0030】
出力制御部153は、内部画像生成部152が生成した画像データを表示部130に表示させる。
【0031】
(動作の流れ)
続いて、簡易型CT装置100の動作を説明する。
図6は、簡易型CT装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0032】
まず、撮像制御部151は、各X線照射部120に、各フラットパネルディテクタ110に対して被検者Aを介してX線を照射させるとともに、各フラットパネルディテクタ110に被検者AのX線透視画像を撮像させる(ステップS10)。そして、撮像制御部151は、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像を取得し、内部画像生成部152に提供する。
【0033】
一態様において、撮像制御部151は、ステップS10において、全てのフラットパネルディテクタ110が、同時にX線透視画像を撮像するように制御してもよい。当該構成の効果については後述する。
【0034】
次に、内部画像生成部152は、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像から被検者Aの内部構造を示す画像データを生成する(ステップS11)。被検者Aの内部構造を示す画像データとしては、例えば、被検者Aの断面を示す画像データ、被検者Aの内部構造を3次元的に示す画像データ等が挙げられる。
【0035】
図7は、内部画像生成部152の処理の概要を説明する図である。
図7の上段に、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像10を示す。なお、フラットパネルディテクタ110aが撮像したX線透視画像10をX線透視画像10aとし、フラットパネルディテクタ110bが撮像したX線透視画像10をX線透視画像10bとし、フラットパネルディテクタ110cが撮像したX線透視画像10をX線透視画像10cとする。
【0036】
図7の上段に示すように、各X線透視画像10には、特徴部位15が含まれているものとする。一態様において、特徴部位15には、病変部位が含まれていてもよい。内部画像生成部152は、各X線透視画像10に含まれる特徴部位15を検出し、SFM(Structure From Motion)等の公知のアルゴリズムを用いて、
図7の下段に示すような、被検者Aの内部構造を示す3次元モデル11を生成する。
【0037】
一態様において、内部画像生成部152は、3次元モデル11から、
図7の下段左部において破線で示す部位で切断した被検者Aの断面を示す画像データ12(画像データ12a、画像データ12b、画像データ12c、…)を生成する。また、他の一態様において、内部画像生成部152は、3次元モデル11を複数の方向から観察した画像データを、被検者Aの内部構造を3次元的に示す画像データとして生成してもよい。
【0038】
ここで、ステップS10において、全てのフラットパネルディテクタ110が、同時にX線透視画像を撮像することで、画像処理上問題となるアーティファクト(被検者Aが体を動かすことにより生じる画像のブレ、呼吸による画像のブレ、等)を最小とすることができる。そのため、各X線透視画像10は、ほぼ同一事象を違う角度から撮像したものとなり、内部画像生成部152は、3次元モデル11をより正確に生成することができ、被検者Aの内部構造を示す画像データをより正確に生成することができる。また、特に肺炎等で被検者Aの呼吸の能力が落ちている場合、呼吸を止めるのが良くないと想定されるが、一度に同時に撮像することで被検者Aの負担を大幅に減らすことができる。
【0039】
次に、出力制御部153は、内部画像生成部152が生成した画像データを表示部130に表示させる。一態様において、出力制御部153は、内部画像生成部152が生成した画像データを任意の記録媒体に記録してもよい。
【0040】
以上により、簡易型CT装置100によれば、被検者Aの内部構造を示す画像データを生成することができる。当該画像データは、新型コロナウィルス感染症の診断を含む各種の診断に用いることができる。また、簡易型CT装置100は、従来のX線CT装置のように、X線管および検出器を可動する可動部を必要としない為、コストおよび設置スペースを低減することができる。また、簡易型CT装置100によれば、従来のX線CT装置のようにX線管および検出器を動かしながら検出を行うのではないため、X線の被ばく量を抑えることができる。
【0041】
(変形例1)
なお、
図2および
図3に示す例では、フラットパネルディテクタ110が3枚である場合について説明しているが、本実施形態はこれに限定されず、フラットパネルディテクタ110は3枚以上であればよく、4枚以上であってもよく、5枚以上であってもよく、6枚以上であってもよく、7枚以上であってもよく、8枚以上であってもよい。フラットパネルディテクタ110の数が増加すれば、内部画像生成部152が被検者Aの内部構造を示す画像データを生成するために、より多くの角度から被検者Aを撮像したX線透視画像を参照することができるため、被検者Aの内部構造を示す画像データをより正確に生成することができる。
【0042】
図8は、6枚のフラットパネルディテクタ110を備える簡易型CT装置100aの構成例を示す図である。
図8に示すように、簡易型CT装置100aは、構造体140aが六角筒形状であり、フラットパネルディテクタ110a~fの各々が構造体140aの各側面に設けられている。
【0043】
また、簡易型CT装置100aは、フラットパネルディテクタ110a~fの各々に対して、被検者Aを介してX線を照射するX線照射部120a~fを備えている。
【0044】
以上の構成により、簡易型CT装置100aによれば、被検者Aの内部構造を示す画像データをより正確に生成することができる。
【0045】
(変形例2)
また、
図2および
図3に示す例では、簡易型CT装置は、被検者Aが座った状態で検査を行うものであるが、本実施形態はこれに限定されず、被検者Aが立った状態で検査を行うものであってもよいし、被検者Aが伏した状態で検査を行うものであってもよい。簡易型CT装置は、検査対象部位または被検者Aの体調等に応じた体勢で検査を行うものであればよい。
【0046】
図9は、被検者Aが伏した状態で検査を行う簡易型CT装置100bの構成例を示す図である。
図9に示すように、フラットパネルディテクタ110a~cは、伏した状態の被検者Aを囲む位置に配置されている。これにより、簡易型CT装置100bによれば、伏した状態の被検者Aの内部構造を示す画像データを生成することができる。
【0047】
(変形例3)
また、
図2および
図3に示す例では、X線照射部120とフラットパネルディテクタ110とが一対一対応になっているが、本発明はこれに限定されず、X線照射部120の数は、フラットパネルディテクタ110の各々に対して被検者Aを介してX線を照射することができれば特に限定されない。
【0048】
すなわち、一つのX線照射部120が、複数のフラットパネルディテクタ110に被検者Aを介してX線を照射してもよいし、複数のX線照射部120が、同じフラットパネルディテクタ110に被検者Aを介してX線を照射してもよい。
【0049】
図10は、X線照射部120の配置のバリエーションを示す簡易型CT装置100cの構成例を示す図である。
図10に示すように、簡易型CT装置100cでは、X線照射部120bおよびX線照射部120cに代えて、フラットパネルディテクタ110bおよびフラットパネルディテクタ110cに対して被検者Aを介してX線を照射するX線照射部120dを備えている。X線照射部120dのX線放射角度が十分に大きければ、このような構成をとることができる。
【0050】
(変形例4)
また、X線照射部120は、X線の照射角度を変更可能になっており、撮像制御部151は、X線照射部120におけるX線の照射角度を変更させながら、各フラットパネルディテクタ110に複数のX線透視画像を撮像させてもよい。
【0051】
これにより、内部画像生成部152が被検者Aの内部構造を示す画像データを生成するために、より多くの角度から被検者Aを撮像したX線透視画像を参照することができるため、被検者Aの内部構造を示す画像データをより正確に生成することができる。
【0052】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0053】
実施形態2に係る簡易型CT装置100の構成は実施形態1と同様であり、各フラットパネルディテクタ110が、X線透視画像を連続して撮像し、内部画像生成部152が被検者Aの内部構造の経時的変化を示す画像データを生成する点において実施形態1と異なっている。
【0054】
図11は、実施形態2に係る簡易型CT装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、撮像制御部151は、各X線照射部120に、各フラットパネルディテクタ110に対して被検者Aを介してX線を照射させるとともに、全てのフラットパネルディテクタ110に同時に被検者AのX線透視画像を撮像させる(ステップS20)。そして、撮像制御部151は、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像を取得し、内部画像生成部152に提供する。
【0056】
次に、内部画像生成部152は、実施形態1と同様に、各フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像から被検者Aの内部構造を示す画像データを生成する(ステップS21)。
【0057】
続いて、撮像制御部151は、フラットパネルディテクタ110の撮像が開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS22)。所定時間が経過していない場合(ステップS22のNO)、ステップS20に戻って、撮像制御部151は、再度、フラットパネルディテクタ110にX線透視画像を撮像させる。これにより、各フラットパネルディテクタ110は、X線透視画像を連続して撮像することができる。なお、フラットパネルディテクタ110がX線透視画像を連続して撮像する際の撮像の間隔は特に限定されず、フラットパネルディテクタ110および主制御部150の性能に応じて数マイクロ秒~数秒間隔で撮像してもよい。また、撮像制御部151は、他の手段(図示しないカメラなど)を使って被験者Aの呼吸の状態を判定し、被験者Aの呼吸の状態が特定の状態になったときにX線撮像するようにしてもよい。
【0058】
また、所定時間が経過した場合(ステップS22のYES)、内部画像生成部152は、それまでに生成した被検者Aの内部構造を示す画像データを対比して、被検者Aの内部構造の経時的変化を示す画像データを生成する。被検者Aの内部構造の経時的変化を示す画像データとしては、例えば、被検者Aの内部構造を示す画像データを時系列に沿って表示する動画データや、被検者Aの内部構造を示す画像データにおいて、各部位の経時的変化の大きさを色で表した画像データ等が挙げられる。
【0059】
例えば、肺炎などにおいて、病変部位に水分が溜まることがある。その場合、病変部位が重くなる。そのため、肺が呼吸に伴って変動する場合に、病変部位の動きが小さくなることがある。したがって、被検者の内部構造の経時的変化を示す画像データは、被検者の疾患を発見するために有用である。
【0060】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
実施形態3に係る簡易型CTシステム1は、実施形態1の簡易型CT100と同等の機能をシステムとして実現している点において実施形態1と異なっている。
【0062】
図12は、実施形態3に係る簡易型CTシステム1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図12に示すように、簡易型CTシステム1は、測定ユニット101と、測定ユニット101と通信可能な分析ユニット(コンピュータ)200と、を備えている。
【0063】
測定ユニット101は、被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタ110(110a、110b、110c、…)と、フラットパネルディテクタ110の各々に対して被検者を介してX線を照射する1または複数のX線照射部120(120a、120b、120c、…)と、主制御部150と、分析ユニット200とネットワークNWを介して通信するための通信部160とを備えている。主制御部150は、撮像制御部151を備えている。
【0064】
分析ユニット200は、測定ユニット101とネットワークNWを介して通信するための通信部210、表示部220および主制御部230を備えている。主制御部230は、フラットパネルディテクタ110が撮像したX線透視画像から被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部231と、内部画像生成部231が生成した画像データを表示部220に表示させる出力制御部232とを備えている。
【0065】
以上のように、実施形態1の簡易型CT100の機能を分散した簡易型CTシステム1によっても、同様の効果を奏する。
【0066】
なお、さらに、表示部220を分析ユニット200から分離し、分析ユニット200と通信可能な表示ユニットとして構成してもよい。
【0067】
〔ソフトウェアによる実現例〕
簡易型CT装置100および分析ユニット200の制御ブロック(特に主制御部150および230)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0068】
後者の場合、簡易型CT装置100および分析ユニット200は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0069】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
〔付記事項〕
上述の各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0071】
(付記1)
被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタと、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射する1または複数のX線照射部と、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタが撮像したX線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部と、を備える簡易型CT装置。
【0072】
(付記2)
前記3枚以上のフラットパネルディテクタは、前記X線透視画像を同時に撮像する、付記1に記載の簡易型CT装置。
【0073】
(付記3)
前記3枚以上のフラットパネルディテクタは、前記X線透視画像を連続して撮像し、
前記内部画像生成部は、前記被検者の内部構造の経時的変化を示す画像データを生成する、付記2に記載の簡易型CT装置。
【0074】
(付記4)
前記被検者の内部構造を示す画像データは、前記被検者の断面を示す画像データである、付記1~3のいずれか一つに記載の簡易型CT装置。
【0075】
(付記5)
測定ユニットと、前記測定ユニットと通信可能なコンピュータと、を備え、
前記測定ユニットは、
被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタと、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射する1または複数のX線照射部と、を備え、
前記コンピュータは、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタが撮像したX線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成する内部画像生成部を備える簡易型CTシステム。
【0076】
(付記6)
被検者を囲む位置に配置された3枚以上のフラットパネルディテクタの各々に対して前記被検者を介してX線を照射し、
前記3枚以上のフラットパネルディテクタがX線透視画像を撮像し、
コンピュータが前記X線透視画像から前記被検者の内部構造を示す画像データを生成することを含む簡易CT方法。
【符号の説明】
【0077】
簡易型CTシステム 1
簡易型CT装置 100
測定ユニット 101
フラットパネルディテクタ 110
X線照射部 120
表示部 130、220
主制御部 150、230
撮像制御部 151
内部画像生成部 152、231
出力制御部 153、232
構造体 140
通信部 151、210
分析ユニット 200