(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】消臭防臭袋
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20240430BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240430BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240430BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240430BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B65D30/02
A61L9/00 Z
A61L9/01 E
B65D65/40 D
B32B27/00 H
B32B27/00 B
(21)【出願番号】P 2020095272
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】393000881
【氏名又は名称】株式会社マルアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡明 周作
(72)【発明者】
【氏名】毛利 英希
(72)【発明者】
【氏名】石川 直人
(72)【発明者】
【氏名】生松 萌
(72)【発明者】
【氏名】武井 勝士
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502984(JP,A)
【文献】登録実用新案第3087610(JP,U)
【文献】特開2010-099875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/02
A61L 9/00
A61L 9/01
B65D 65/40
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムで形成され、
前記多層フィルムは、
フィルム外面となる外層である消臭層、中間層であるガスバリア層、及びフィルム内面となる内層を含み、
前記消臭層は、硫酸アルミニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、銅酸化物、及び銀から選ばれる少なくとも2種類の消臭成分を含有する、接着性マスターバッチを含んでもよいポリエチレンで形成された層であり、
前記ガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体で形成された層であり、
前記内層は、ヒートシール性の樹脂層である、消臭防臭袋。
【請求項2】
前記消臭層は、前記消臭成分の添加量が、前記消臭層を基準として0.5~20質量%である
請求項1に記載の消臭防臭袋。
【請求項3】
前記多層フィルムは、層数が3~7である
請求項1又は2に記載の消臭防臭袋。
【請求項4】
前記多層フィルムは、共押出インフレーションにより形成されたフィルムである
請求項1~3のいずれか一項に記載の消臭防臭袋。
【請求項5】
前記多層フィルムの厚みが15~100μmである
請求項1~4のいずれか一項に記載の消臭防臭袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭防臭袋に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や事業所での保管や外出時の処置において、使用済みおむつ、生ゴミ、ペットの散歩時における糞便等を袋に収容して廃棄する際には、臭いが周囲に出にくいことが望まれている。特に近年では、臭いのある廃棄物を収容する袋には、外出時におむつと一緒に持ち歩き、すぐに捨てることができないときや、キッチンの生ゴミを袋に入れておく際に、臭いの漏れを極力抑え、臭いを感じることのない機能が求められている。
【0003】
従来、袋を構成するフィルムのガス透過を抑制することで防臭機能を付与した袋として、ポリエチレンで形成された内層と外層の間に、ナイロンやEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)のようにガスバリア性の高い素材を中間層として設けた多層フィルムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、防臭機能を付与するのみでは、悪臭はほとんど袋から漏れ出ないが、ナイロンやEVOHのようなガスバリア性の高い素材を中間層として設けても、僅かに漏れ出た臭いはそのままになってしまい、さらに袋の外側にある臭いに防臭機能は効果が無く悪臭を感じてしまう。そのため蓋付のゴミ箱に防臭袋を使用するなど、フィルムを透過して外部に漏れ出た悪臭が滞留し易い環境下では、ゴミを袋に収容すると漏れた臭いが外部で滞留し、例えばゴミ箱内に溜まり蓋を開けた時に溜まった悪臭を感じてしまう。
【0006】
ガス透過を抑制するために、袋を構成する層の一つにアルミ箔や金属蒸着フィルムを使用すれば、臭いをほぼ完全に遮断できる。しかし、各フィルムの張り合わせや製袋等のコスト面、及び近年における環境負荷への対応を考慮すると、これらを配慮した技術が望まれている。
【0007】
別のアプローチとして、尿や汗のアンモニア、腐敗魚のトリメチルアミン、腐敗卵の硫化水素、生ゴミのメチルメルカプタン等の悪臭と反応して化学的に分解する消臭成分をフィルムに添加し、消臭機能を付与することが考えられる。しかしながら、このような消臭機能を付与するのみでは全ての悪臭成分には対応できない。また、消臭剤と未反応の悪臭成分を無くすことはできず、そのまま悪臭が袋から漏れ出て臭いを感じてしまう。
【0008】
従来技術では、防臭性能を十分なものとすることと、袋の外側へ僅かに漏れ出た臭いを消臭することの両方の観点から、袋の外側で臭いを感じないようにすることは考慮されていなかった。
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、使用済みおむつ、生ゴミ等の廃棄物を収容しても、袋内部からはほとんど悪臭を外部へ拡散させず、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭し、外部では臭いを感じない消臭防臭袋を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の消臭防臭袋は、多層フィルムで形成され、多層フィルムは、樹脂で形成された少なくとも1つのガスバリア層、及び消臭成分を含有する樹脂で形成された少なくとも1つの消臭層を含み、ガスバリア層よりも袋の外面側に、少なくとも1つの前記消臭層を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用済みおむつ、生ゴミ等の廃棄物を収容しても、袋内部からはほとんど悪臭を外部へ拡散させず、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭し、外部では臭いを感じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例及び比較例におけるフィルム形状による消臭試験の結果を示す。(A)は悪臭成分がアンモニア、(B)はトリメチルアミンの場合を示す。
【
図2】実施例及び比較例における防臭試験の結果を示す。(A)は悪臭成分がアンモニア、(B)はトリメチルアミンの場合を示す。
【
図3】実施例及び比較例における袋形状による消臭試験の結果を示す。(A)は悪臭成分がアンモニア、(B)はトリメチルアミンの場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の消臭防臭袋は、多層フィルムで形成される。多層フィルムは、少なくとも1つのガスバリア層、及び少なくとも1つの消臭層を含む。そしてガスバリア層よりも袋の外面側に、少なくとも1つの消臭層を有する。
【0014】
ガスバリア層は、本発明の消臭防臭袋に防臭機能を付与し、ガス透過の抑制による遮蔽能で消臭袋内の悪臭成分が外部に漏れ出るのを抑制する。
【0015】
ガスバリア層は、樹脂で形成されている。本発明の消臭防臭袋は、アルミ箔や金属蒸着フィルム等をガスバリア層に使用せずとも、ガスバリア層よりも袋の外面側に少なくとも1つの消臭層を有することで、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭し、外部では臭いを感じない。従って、簡易かつ低コストで、製造に要するエネルギー、CO2排出量、廃棄時の分別回収等の観点より環境負荷を低減しつつ、高性能な消臭及び防臭性能を発揮できる。
【0016】
ガスバリア層を形成する樹脂としては、特に限定されないが、一般にガスバリア性を有するフィルムとして使用されている、(ガス)バリアフィルムとも称される合成樹脂フィルム、及びこれらと同等のガス透過性能を持つ合成樹脂フィルムを用いることができる。ここでガス透過性能は、例えば、酸素バリア性、水蒸気バリア性が指標の一つとされる。例えば、ポリエチレン等の内層よりもガス透過性が低い合成樹脂を使用できる。ガスバリア層は、JIS K 7126-1 2006に準拠して測定される酸素透過率が300cc/m2・24hrs・atm以下であることが好ましく、10cc/m2・24hrs・atm以下であることがより好ましい。
【0017】
ガスバリア層を形成する樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの中でも、高いガスバリア性を示す観点から、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。EVOHは、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化して得られる。
【0018】
ガスバリア層の厚みは、多層フィルムの層数等にもよるが、1~10μmが好ましく、1~4μmがより好ましい。
ガスバリア層の厚さは、電子顕微鏡を用いて測定することができる。具体的には、500~3000倍の倍率で樹脂フィルムの断面を観察し、ガスバリア層においてランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの測定値を算術平均することにより求めることができる。
【0019】
(消臭層)
消臭層は、本発明の消臭防臭袋に消臭機能を付与し、悪臭成分との化学反応によって悪臭成分を分解し、袋内面側の防臭層による悪臭成分の遮蔽能と相俟って、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭し、外部では臭いを感じない。消臭層は、本発明の効果を得る点においては外層であることが好ましい。
【0020】
消臭層は、消臭成分を含有する樹脂で形成されている。消臭層における消臭成分は、特に限定されないが、例えば、一般に使用されている汎用の消臭剤を悪臭成分に応じて組み合わせて使用できる。悪臭成分としては、例えば、尿や汗等のアンモニア、腐敗魚等のトリメチルアミン、生魚等のメチルアミン、腐敗卵等の硫化水素、生ゴミ等のメチルメルカプタン、糞便等のインドール、刺激臭の酢酸等が挙げられる。
【0021】
消臭層は、金属化合物及び金属から選ばれる少なくとも2種類の消臭成分を含有することが好ましい。これにより、目的とする悪臭成分に応じて消臭効果を高めることができる。
【0022】
消臭成分の金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸アルミニウム、ミョウバン、硫酸銅、硫酸亜鉛等の硫酸塩、酸化カルシウム、酸化亜鉛、銅酸化物(CuO、CuO2等)、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の金属酸化物、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩、炭酸亜鉛等の炭酸塩、塩化亜鉛等のハロゲン化物、その他、ニッケル、スズ、鉛、コバルト、白金、パラジウム、銀、モリブデン、ルテニウム、ストロンチウム等の化合物等が挙げられる。アンモニア等は硫酸アルミニウム等、硫化水素やメチルメルカプタンは硫酸銅等、酢酸は酸化カルシウム等が消臭に効果がある。
【0023】
消臭成分の金属としては、特に限定されないが、例えば、銀、亜鉛、銅などの抗菌作用のある金属等が挙げられる。
【0024】
消臭成分の添加量は、消臭層を基準として0.5~20質量%が好ましい。消臭成分の添加量が適度に多いことで、防臭層による防臭機能を補い、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭できる。消臭成分の添加量が適度に少ないことで、安定的なインフレーション成形が行える等、消臭袋の製造時における適性を良好なものとすることができる。
【0025】
消臭層の厚みは、5~50μmが好ましく、5~16μmがより好ましい。消臭層の厚さは、ガスバリア層の厚さと同様にして測定する。
【0026】
消臭層を形成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、後述の内層や外層を形成する樹脂等を挙げることができる。その中でも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンが好ましい。
【0027】
本発明の消臭防臭袋において、多層フィルムの層数は、特に限定されないが、3~7層が好ましく、3~5層がより好ましい。層数がこのような範囲であると、袋内部からはほとんど悪臭を外部へ拡散させず、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭し、外部では臭いを感じないという本発明の効果に適し、更に多層フィルムの成形性や強度、フィルム間の接着力、ヒートシール性を高めることができる。本発明の消臭袋における多層フィルムの層構成としては、例えば、次のような例が挙げられる。
<3層>
外層(消臭層)/中間層(ガスバリア層:防臭層)/内層
外層と内層には接着性マスターバッチを添加する。
<5層>
外層(消臭層)/中間層(接着層)/中間層(ガスバリア層:防臭層)/中間層(接着層)/内層
外層(消臭層)/中間層(接着層)/中間層(ガスバリア層:防臭層)/中間層(接着層)/内層(消臭層)
<7層>
外層(消臭層)/中間層(樹脂層)/中間層(接着層)/中間層(ガスバリア層:防臭層)/中間層(接着層)/中間層(樹脂層)/内層
外層(消臭層)/中間層(樹脂層)/中間層(接着層)/中間層(ガスバリア層:防臭層)/中間層(接着層)/中間層(樹脂層)/内層(消臭層)
【0028】
本発明の消臭防臭袋において、内層を形成する樹脂は、消臭防臭袋に成形性や強度、ヒートシール性を付与するものが好ましい。内層を形成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、合成樹脂である高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のエチレン共重合体、アイオノマー樹脂、ホットメルト樹脂等が挙げられる。これらの中でも、消臭防臭袋に強度、ヒートシール性を付与する点から、HDPE、LDPE、LLDPE等のポリエチレンを用いることが好ましい。
【0029】
内層の厚みは、5~50μmが好ましく、5~16μmがより好ましい。内層の厚みは、ガスバリア層の厚さと同様にして測定する。
【0030】
本発明の消臭防臭袋において、外層を形成する樹脂は、消臭袋に成形性や強度を付与するものが好ましい。外層を形成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、内層を形成する樹脂と同様のものを用いることができる。外層に含まれる樹脂としては、消臭防臭袋に強度を付与することやコストの点から、HDPE、LDPE、LLDPE等のポリエチレンを用いることが好ましい。
【0031】
外層の厚みは、5~50μmが好ましく、5~16μmがより好ましい。外層の厚みは、ガスバリア層の厚さと同様にして測定する。
【0032】
本発明の消臭防臭袋は、内層と外層の間に中間層として接着層を設けてもよい。接着層は、これを挟む各層間に接着性を付与する。特にガスバリア層と内層、ガスバリア層と外層は、共押出インフレーション成形による製膜加工でも接着強度が弱い場合があるため、この両層の間には接着層を設けることが好ましい。
【0033】
接着層を形成する樹脂としては、接着層を挟む各層の種類に応じて、酸変性ポリオレフィン等の各種の合成樹脂を用いることができる。例えば、接着性を付与する公知の樹脂として、エチレン-無水マレイン酸共重合体、各種ポリオレフィンに、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性不飽和脂肪酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の二塩基性不飽和脂肪酸又はこれらの無水物をグラフトさせたもの(例えばマレイン酸グラフト化EVA、マレイン酸グラフト化エチレン-α-オレフィン共重合体等)、EVA、EAA、EEA、エチレン-メタクリレート-グリシジルアクリレート三元共重合体等が挙げられる。これらの中でも、接着層を形成する樹脂としては、ガスバリア層と内層、ガスバリア層と外層の接着性を高める点から、酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。
【0034】
接着層の厚みは、0.5~5μmが好ましく、1~3μmがより好ましい。接着層の厚みは、ガスバリア層の厚さと同様にして測定する。
【0035】
内層や外層等には、予め接着層を形成する樹脂と同様の樹脂を高濃度に含有する接着性マスターバッチを調製し、このマスターバッチと、内層や外層等を形成する樹脂を、これらのペレットをブレンドする等の手段により混合、混練して、これらの層を形成してもよい。接着性マスターバッチは、例えば、接着層を形成する樹脂が所定の配合比となるように、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合した後、一軸又は二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダ等の混練機により溶融混練し、次いで、この混練物を常法に従ってペレット等に加工することにより得られる。内層や外層等に接着性マスターバッチを添加することで、接着層を設けずとも、隣接するガスバリア層等との接着力を高めることができる。
【0036】
本発明の消臭防臭袋において、各層を形成する樹脂には、樹脂材料において従来公知の添加剤など各種の添加剤を添加してもよい。具体的には、例えば、着色剤、スリップ剤、AB剤、耐光安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0037】
本発明の消臭防臭袋において、多層フィルムの厚みは15~100μmが好ましい。多層フィルムが薄すぎるとフィルム強度が弱くなり、多層フィルムが厚すぎると袋として硬くなってしまう。多層フィルムの厚みは、ガスバリア層の厚さと同様にして測定する。
【0038】
本発明の消臭防臭袋において、多層フィルムは、例えば、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、空冷式又は水冷式の共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等が挙げられる。これらの中でも、共押出インフレーション法が好ましい。これらの他、各層のフィルムを別々に製造してからラミネーター等により接合してもよい。
【0039】
空冷式又は水冷式の共押出インフレーション成形装置を用いた消臭防臭袋の製造においては、加熱溶融した樹脂を円筒状に押出し、その中に空気を吹き込んで膨らませ、これを折りたたんで多層フィルムを巻き取る。得られた多層フィルムは、例えばガゼット袋、三方シール袋、ボトムシール袋等の袋体に加工される。消臭防臭袋には、手提げ加工や印刷等を施してもよい。
【0040】
消臭防臭袋の製品形態としては、例えば、1枚ずつ取り出しやすいBOXタイプ、結んで使用できる手提げ付きレジ袋タイプ、中身が見えにくい色付きタイプ、蓋付バケツ用等が挙げられる。本発明の実施には、消臭防臭袋を収容する製品の箱や消臭防臭袋等に印刷して消臭機能を表示したり、製品の広告やカタログ等で消臭機能を表示したりする場合が含まれる。
【0041】
以上に説明した本発明の消臭防臭袋によれば、廃棄物を収容しても、袋内部からはほとんど悪臭を外部へ拡散させず、僅かに外部へ拡散した臭いも消臭し、外部では臭いを感じない。
【0042】
従って、本発明の消臭防臭袋は、家屋や事業所での保管や外出時の処置において、育児や介護における使用済みおむつ、生ゴミ、ペットの散歩時における糞便等を袋に収容して廃棄する際に好適である。例えば、外出時におむつと一緒に持ち歩き、すぐに捨てることができないときや、キッチンの生ゴミを袋に入れておく際に、臭いを感じることのない機能を与える。
【0043】
その他にも、悪臭成分として、例えば、尿や汗等のアンモニア、腐敗魚等のトリメチルアミン、生魚等のメチルアミン、腐敗卵等の硫化水素、生ゴミ等のメチルメルカプタン、糞便等のインドール、刺激臭の酢酸等のような成分を含む廃棄物の処理においても同様に、外部では臭いを感じない効果が得られる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
以下において、樹脂材料は次のものを用いた。
PE:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、日本ポリエチレン社製 UF420、MFR 0.9g/10min
EVOH:クラレ社製 エバールF171B、エチレン含有率32%
接着層:変性ポリオリフィン樹脂、三井化学社製 アドマーNF528
接着性マスターバッチを添加したPE:アドマーNF528を上記LLDPEに添加
【0046】
実施例1
共押出インフレーション機を用いて5層の多層フィルムからなる袋を作製した。多層フィルムにおける層の構成は、外層から内層へ順に次のとおりである。
外層(消臭層)
厚み8μm、消臭成分の組成:硫酸アルミニウム3質量%、酸化カルシウム0.1質量%、酸化亜鉛0.5質量%、PE 96.4質量%
中間層(接着層)
厚み2μm
中間層(防臭層)
厚み2μm、EVOH
中間層(接着層)
厚み2μm
内層
厚み8μm、PE
【0047】
実施例2
実施例1において、袋に厚みを持たせるため、PEで構成される内層の厚みを8μmから16μmに変更した。それ以外は実施例1と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0048】
実施例3
実施例1において、袋に厚みを持たせるため、消臭成分を含むPEで構成される外層と、PEで構成される内層の厚みをそれぞれ8μmから16μmに変更した。それ以外は実施例1と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0049】
実施例4
実施例1において、外層(消臭層)における消臭成分として更に銅酸化物0.5質量%を加え、外層の組成を硫酸アルミニウム3質量%、酸化カルシウム0.1質量%、酸化亜鉛0.5質量%、銅酸化物0.5質量%、PE 95.9質量%に変更した。それ以外は実施例1と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0050】
実施例5
実施例1において、EVOHで構成される防臭層の厚みを2μmから4μmに変更した。それ以外は実施例1と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0051】
実施例6
実施例1において、内層にも外層(消臭層)と同様の組成で消臭成分を添加し、厚み8μm、消臭成分の組成:硫酸アルミニウム3質量%、酸化カルシウム0.1質量%、酸化亜鉛0.5質量%、PE 96.4質量%の内層とした。それ以外は実施例1と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0052】
実施例7
実施例1において、EVOHとの接着力を高める接着性マスターバッチを内層及び外層に添加して接着層を無くし、内層及び外層の厚みはそれぞれ10μmとし、それ以外は実施例1と同様に3層の多層フィルムからなる袋を作製した。多層フィルムにおける層の構成は、外層から内層へ順に次のとおりである。
外層(消臭層)
厚み10μm、消臭成分の組成:硫酸アルミニウム3質量%、酸化カルシウム0.1質量%、酸化亜鉛0.5質量%、接着性マスターバッチを添加したPE 96.4質量%
中間層(防臭層)
厚み2μm、EVOH
内層
厚み10μm、接着性マスターバッチを添加したPE
【0053】
比較例1
押出インフレーション機を用いて、PEの単層フィルムからなる袋を作製した。単層フィルムの厚みは、実施例1における多層フィルムの厚みと同じ22μmとした。
【0054】
比較例2
実施例1において、外層に消臭成分を添加せず、PEのみで構成される層とした。それ以外は実施例1と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0055】
比較例3
比較例2において、EVOHで構成される防臭層の厚みを2μmから4μmに変更した。それ以外は比較例2と同様に5層の多層フィルムからなる袋を作製した。
【0056】
比較例4
押出インフレーション機を用いて、実施例1における外層(消臭層)の単層フィルムからなる袋を作製した。単層フィルムの厚みは、実施例1における多層フィルムの厚みと同じ22μmとした。
【0057】
比較例5
実施例1において、外層(消臭層)と内層を入れ替え、5層の多層フィルムからなる袋を作製した。多層フィルムにおける層の構成は、外層から内層へ順に次のとおりである。
外層
厚み8μm、PE
中間層(接着層)
厚み2μm
中間層(防臭層)
厚み2μm、EVOH
中間層(接着層)
厚み2μm
内層(消臭層)
厚み8μm、消臭成分の組成:硫酸アルミニウム3質量%、酸化カルシウム0.1質量%、酸化亜鉛0.5質量%、PE 96.4質量%
【0058】
実施例及び比較例のサンプルについて、消臭試験、防臭試験を次の手順で行った。以下にはアンモニアガスを用いた場合を示しているが、トリメチルアミンを用いた場合も下記に準じて行った。
【0059】
1.フィルム形状による消臭試験
消臭層が内層であるか外層であるかに消臭性能が依存しない、フィルム形状のサンプルを用意して検知管による試験を行い、消臭剤の消臭性能を評価した。
1)サンプルシートを別の8Lガラス容器に入れ、一定量のアンモニアガスを注入し密栓
2)5分~15分おきにガラス容器を上下逆さにし、容器内のガスが均一になる用に撹拌
3)設定時間ごとにガラス容器内のアンモニア濃度を「JIS K 0804 2014 検知管式測定法」により測定
・注入アンモニアガス量
28%アンモニア水5mLを300mL密閉容器に入れ10分間放置し容器内にガスを発生させる
容器内のガスを注射器で吸引し、各サンプルを入れたガラス瓶に5mLずつ注入
・設定時間 アンモニア注入直後、0.5時間後、2時間後、24時間後
・使用検知管
(株)ガステック社製No.3L(測定範囲 0.5ppm~78ppm)
(株)ガステック社製No.3La(測定範囲 2.5ppm~200ppm)
【0060】
上記試験の結果を
図1(A)に示す。またアンモニアガスに代えてトリメチルアミンを用いた場合の結果を合わせて
図1(B)に示す。表2にはフィルム形状での容器内消臭性能の総合評価を〇と×の2段階で示した。
【0061】
2.防臭試験
2-1.防臭性能の検知管による評価
ゴミ箱内での使用を想定し、悪臭の発生源を袋内に入れ悪臭が発生し続けている状態の袋内から容器内に悪臭がどのくらい漏れるかを評価した。
1)悪臭元を袋内に入れ、口をシールする。
2)シールした袋を8Lガラス容器に入れ、密栓。
3)5分~15分おきにガラス容器を上下逆さにし、容器内に漏れ出たガスが均一になるように撹拌
4)設定時間ごとにガラス容器内のアンモニア濃度を「JIS K 0804 2014 検知管式測定法」により測定
・悪臭元
アンモニア水で浸した紙タオル
(0.28%アンモニア水溶液を1mL)
・設定時間 アンモニア注入直後、0.5時間後、2時間後、24時間後
・使用検知管
(株)ガステック社製No.3L(測定範囲 0.5ppm~78ppm)
(株)ガステック社製No.3La(測定範囲 2.5ppm~200ppm)
【0062】
上記試験の結果を
図2(A)に示す。またアンモニアガスに代えてトリメチルアミンを用いた場合の結果を合わせて
図2(B)に示す。表2には総合評価を〇と△と×の3段階で示した。
【0063】
2-2.防臭性能の官能評価
次に、実施例及び比較例のサンプルについて官能評価を行った。
1)悪臭元を袋内に入れ、口をシールする。
2)シールした袋を8Lガラス容器に入れ、密栓。
3)24時間後ガラス容器内の官能評価を行い、臭気強度の評価を行った。)
・悪臭元
アンモニア水で浸した紙タオル
(0.28%アンモニア水溶液を1mL)
4名のパネルにより、以下の基準に基づき臭気強度の評価を行い、平均値を算出した。
・臭気強度
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:何のにおいであるかわかる弱いにおい
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
【0064】
上記試験の結果を表1に示す。また表2には総合評価を〇と△と×の3段階で示した。
【0065】
【0066】
3.袋形状による消臭試験
ゴミ箱内にすでに臭いがある状態、もしくは、漏れでた臭いが充満してしまう状態を想定して評価した。この試験では特に、実施例1~7のように外側に消臭層があることの効果を比較例5と対比して検討している。
1)シールした袋を別の8Lガラス容器に入れ、一定量のアンモニアガスを注入し密栓
2)5分~15分おきにガラス容器を上下逆さにし、容器内のガスが均一になる用に撹拌
3)設定時間ごとにガラス容器内のアンモニア濃度を「JIS K 0804 2014 検知管式測定法」により測定
・注入アンモニアガス量
28%アンモニア水5mLを300mL密閉容器に入れ10分間放置し容器内にガスを発生させる
容器内のガスを注射器で吸引し、各サンプルを入れたガラス瓶に5mLずつ注入
・設定時間 アンモニア注入直後、0.5時間後、2時間後、24時間後
・使用検知管
(株)ガステック社製No.3L(測定範囲 0.5ppm~78ppm)
(株)ガステック社製No.3La(測定範囲 2.5ppm~200ppm)
【0067】
上記試験の結果を
図3(A)に示す。またアンモニアガスに代えてトリメチルアミンを用いた場合の結果を合わせて
図3(B)に示す。表2には袋形状での容器内消臭性能の総合評価を〇と×の2段階で示した。
【0068】
上記各試験の総合評価は表2のとおりであった。
【0069】
【0070】
実施例1~7は、24時間後に悪臭は感じられず、消臭性、防臭性共に良好であった。
比較例1は、PEの単層フィルムからなる袋であるが、悪臭が漏れ消臭もされておらず、そして袋内部から漏れた臭いには効果がない。
比較例2は、消臭層がないため、防臭層が悪臭の漏れを若干防いでいるが、漏れた分は消臭されない。
比較例3は、防臭層を厚くしたが、防臭層が悪臭の漏れを防ぐものの漏れた分は消臭されない。
比較例4は、消臭層の単層フィルムからなる袋であるが、悪臭を消臭するものの、消臭しきれない分は漏れてしまう。漏れた臭いには効果はあるが、ガスバリア層がないため、悪臭発生源から出続ける臭いには消臭効果が追いつかない。
比較例5は、実施例1の外層(消臭層)と内層を入れ替えたが、悪臭を消臭し防臭しているものの、漏れてしまったにおいは消臭しない。内側に消臭層を設けることで内側の悪臭濃度を下げ、ガスバリア層で漏れを防ぐ目的のサンプルであるが、悪臭発生源が内側にあるため、内側の消臭剤では消臭効果が追いつかず、漏れた臭いには効果がない。
図1(A)、(B)のフィルム形状による消臭試験では、フィルム形状のため外層と内層の差がなく実施例1~7と比較例5に差は見られない。
図2(A)、(B)では、袋の内部からの漏出を防いでいるかの防臭試験を行い、実施例1~7は24時間後で測定下限以下であり、検知されなかった。比較例1は24時間後で20ppm以上の漏出が見られ、比較例2~5は2~10ppmのアンモニアが検出され、漏出し残存していることが確認された。表1の官能評価では、実施例1~7においては臭気強度が0~0.1と臭いを感じなかった。比較例では、比較例2~5において感知できる臭いであり、ガスバリア層のみ(比較例2、3)、及び内面への消臭剤添加(比較例5)では完全な防臭は難しい。
図3(A)、(B)の袋形状による消臭試験では、臭いが充満した容器内に密閉した袋にして投入し容器内の臭いが消臭できるかを評価した。内側に消臭層がある比較例5では、ガスバリア層があるため、容器内の臭いについては消臭されない。