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特許7479680防水通気フィルタ、及び、多孔質フィルムの製造方法
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  • 特許-防水通気フィルタ、及び、多孔質フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】防水通気フィルタ、及び、多孔質フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
C08J9/00 A CEW
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020100928
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195404
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】大森 貴文
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279359(JP,A)
【文献】特開平06-142178(JP,A)
【文献】特開2011-142680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンを含む多孔質フィルム単体の防水通気フィルタであって
前記多孔質フィルムの剛軟度が0.5mN・cm-20mN・cmの範囲内にあり、
前記多孔質フィルムのガーレ式通気度が1秒-100秒の範囲内にある防水通気フィルタ
【請求項2】
前記多孔質フィルムの厚みが50μm-500μmの範囲内にある請求項1に記載の防水通気フィルタ
【請求項3】
未焼成のポリテトラフルオロエチレンテープを準備することと、
前記ポリテトラフルオロエチレンテープを一軸延伸して、未焼成のポリテトラフルオロエチレンシートを得ることと、
未焼成の前記ポリテトラフルオロエチレンシートを、第1ロール対及び第2ロール対の間において通過させると共に50℃-330℃で熱処理して、前記ポリテトラフルオロエチレンシートを収縮させることと、
収縮後の前記ポリテトラフルオロエチレンシートを、340℃-440℃の環境下で焼成することと
を含み、
前記第1ロール対の回転速度は、前記第2ロール対の回転速度と比較して高い多孔質フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記一軸延伸は、1.5倍-30倍の延伸倍率で実施される請求項3に記載の多孔質フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質フィルム、及び、多孔質フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車電装部品、OA(オフィスオートメーション)機器、家電製品及び医療機器などでは、電子部品及び制御基板などを収容する筐体の内部と、外部との圧力差を解消するために、防水通気フィルタが用いられている。この防水通気フィルタは、筐体に設けられた開口を塞ぐように筐体に取り付けられて、通気を確保しつつ防塵及び防水を図るものである。防水通気フィルタとして、PTFE多孔質フィルムがよく用いられる。
【0003】
PTFE多孔質フィルムとして、微細な通気孔を有したPTFE多孔質フィルムと不織布とを一体化したフィルムが上市されているが、自動車の部品や一部のセンサなどでは、防水通気フィルタに耐熱性が要求されることがある。不織布は耐熱性に問題があることが多いため、不織布を省略することに対する市場からの要望がある。また、不織布が省略された単体のPTFE多孔質フィルムを、筐体などに直接接着したいという要望もある。
【0004】
単体のPTFE多孔質フィルムを筐体などに接着させる場合、一般的には、PTFE多孔質フィルムを、PET基材からなる剥離紙を備えた粘着テープに貼り付けて積層させた後に、この積層体を所望の形状に打ち抜き、剥離紙から多孔質フィルムを剥離して使用している。しかしながら、不織布と一体化されていない単体のPTFE多孔質フィルムの場合は、コシが不足してハンドリング性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-204006号公報
【文献】特開2011-177986号公報
【文献】特開2019-041407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コシが強く、通気性にも優れる多孔質フィルム、及び、多孔質フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面によると、ポリテトラフルオロエチレンを含む多孔質フィルム単体の防水通気フィルタであって該多孔質フィルムの剛軟度が0.5mN・cm-20mN・cmの範囲内にあり、該多孔質フィルムのガーレ式通気度が1秒-100秒の範囲内にある防水通気フィルタが提供される。
【0008】
本発明の第2側面によると、未焼成のポリテトラフルオロエチレンテープを準備することと、ポリテトラフルオロエチレンテープを一軸延伸して、未焼成のポリテトラフルオロエチレンシートを得ることと、未焼成の前記ポリテトラフルオロエチレンシートを、第1ロール対及び第2ロール対の間において通過させると共に50℃-330℃で熱処理して、ポリテトラフルオロエチレンシートを収縮させることと、収縮後のポリテトラフルオロエチレンシートを、340℃-420℃の環境下で焼成することとを含み、第1ロール対の回転速度は、第2ロールの回転速度と比較して高い多孔質フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、コシが強く、通気性にも優れる多孔質フィルム、及び、多孔質フィルムの製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る多孔質フィルムの一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来、コシが強いPTFE多孔質フィルムを得るために、例えば、多孔質フィルムの膜厚を大きくすることが知られている。一般的には、厚手の未焼成PTFEシートを一軸方向にのみ延伸して多孔質化させることにより、膜厚が大きい多孔質フィルムが得られる。しかしながら、多孔質フィルムの膜厚を大きくすると通気性が低下する傾向がある。通気性が低下した多孔質フィルムは、防水通気フィルタとして適さない可能性がある。そこで、通気性を向上させるために延伸倍率を高めることが考えられるが、そうすると膜厚が低下してコシが低下する。つまり、多孔質フィルムのコシの強さと、優れた通気性とを両立させるのが難しいという課題がある。
【0012】
本発明者は、未焼成PTFEシートを延伸した後、焼成(焼結)よりも前の段階として多孔質フィルムを収縮させる工程を実施し、その後に焼成することにより、コシが強く、通気性にも優れる多孔質フィルムを得ることに成功した。実施形態に係る多孔質フィルムの詳しい製造方法は後述する。
【0013】
実施形態に係る多孔質フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み、剛軟度が0.5mN・cm-20mN・cmの範囲内にあり、ガーレ式通気度が1秒-100秒の範囲内にある。剛軟度が上記数値範囲内にあり、且つ、ガーレ式通気度も上記数値範囲内にある多孔質フィルムは、コシが強く、通気性にも優れている。
【0014】
多孔質フィルムは、実質的にPTFEからなっていてもよい。多孔質フィルムは、撥液性材料、親水性材料、導電性材料、着色材料、帯電防止材料及び抗菌性材料からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含んでいてもよい。
【0015】
多孔質フィルムのコシの強さは、当該フィルムの剛軟度の高さで評価することができる。多孔質フィルムの剛軟度は、好ましくは0.7mN・cm-20mN・cmの範囲内にある。剛軟度が0.5mN・cm-20mN・cmの範囲内にある多孔質フィルムは、ハンドリング性に優れる。例えば、支持体として貼付した粘着テープから多孔質フィルムを剥離する際、支持体に多孔質フィルムが追従しないため、容易に剥離可能であるという利点がある。剛軟度の上限値は、10mN・cmであってもよく、5mN・cmであってもよく、3mN・cmであってもよい。
【0016】
多孔質フィルムの剛軟度は、JIS L 1913:2010に準じて測定することができる。剛軟度の測定に用いる装置としては、例えば、大栄科学精器製作所社製、カンチレバー形柔軟度試験機、又は、これに相当する機能を有する装置を使用することができる。
【0017】
多孔質フィルムの通気性は、ガーレ式通気度の高さで評価することができる。多孔質フィルムのガーレ式通気度は、好ましくは1秒-50秒の範囲内にある。ガーレ式通気度がこの範囲内にあると、より高い内圧調整機能を得ることができる。一例として、多孔質フィルムに防水性が要求される用途においては、十分な防水性を維持している限り、ガーレ式通気度の値は低い方が好ましい。多孔質フィルムを内圧調整用途に使用する場合、ガーレ式通気度は50秒以下であることが好ましい。ガーレ式通気度は10秒以下であってもよい。
【0018】
多孔質フィルムのガーレ式通気度は、JIS P 8117:2009に準じて測定することができる。ガーレ式通気度の測定に用いる装置としては、例えば、安田精機製作所株式会社製、自動ガーレ式デンソメーター、又は、これに相当する機能を有する装置を使用することができる。
【0019】
実施形態に係る多孔質フィルムの製造方法は後述するが、未焼成のPTFEシートを延伸した後に、収縮させる工程を経てから焼成する工程を実施することを含む方法により作製された多孔質フィルムは、膜厚が小さくてもコシが強いという特徴がある。未焼成のPTFEシートに対して、延伸による剪断力を与えると、複数のノード(結節)から複数のフィブリルが引き出されて網目構造が形成される。言い換えると、延伸された後のPTFEシートにおいては、複数のノード間が、複数のフィブリルにより連結された状態である。
【0020】
この後、延伸後のPTFEシートを収縮工程に供すると、通気性がそれほど低下すること無しに、複数のノード間の距離を縮めることができる。この結果、PTFEシートを収縮させない場合と比較して、同程度の膜厚でもコシの強い多孔質フィルムを得ることができる。
【0021】
実施形態に係る多孔質フィルムの厚みは、例えば50μm-500μmの範囲内にあり、好ましくは150μm-400μmの範囲内にある。厚みがこの範囲内にあると、通気性とコシの強さを両立することができる。
【0022】
実施形態に係る多孔質フィルムは、例えば、電子機器などの各種筐体内部において、温度変化などに起因して生じる内部の圧力変動を調節する用途(内圧調整)に使用することができる。
【0023】
図1は、本実施形態に係る多孔質フィルムの一例を概略的に示す断面図である。
【0024】
図1に、多孔質フィルム1を示す。多孔質フィルム1は、ノード及びフィブリルから構成される網目構造を有している。多孔質フィルム1は、網目構造の隙間として存在する無数の通気孔2を含んでいる。図1では、通気孔2が独立気孔である場合を示しているが、通気孔2は主に連通気孔として存在している。通気孔2は、独立気孔を含んでいてもよい。
【0025】
続いて、実施形態に係る多孔質フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0026】
PTFE樹脂を含んだファインパウダーを用意し、この粉末100質量部に対して、助剤としての炭化水素油を、例えば20-30質量部混合する。ファインパウダーとしては、例えば、平均粒子径が250μm-800μmのものを使用することができる。なお、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法に基づいて測定された粒度分布において、粒子数の積算値50%に相当する粒子径であるD50を意味する。
【0027】
この混合物を均一になるように攪拌した後、ペースト押し出しして、例えばロッド状に予備成形を行う。得られた予備成形物を、例えば、金属製の圧延ロールを用いて圧延する。次いで、助剤を取り除いて未焼成のPTFEテープを得る。未焼成のPTFEテープの厚みは、例えば50μm-600μmの範囲内にある。
【0028】
本願明細書及び特許請求の範囲において、「未焼成」とは、PTFE樹脂の融点以上の温度環境下での焼成が未実施であることを意味する。
【0029】
未焼成のPTFEテープを、融点未満の温度環境下で、先だって圧延した方向、即ち機械方向(MD方向)に1.5倍-30倍の延伸倍率で一軸延伸して、未焼成のPTFEシートを得る。延伸倍率を低くすると、得られる多孔質フィルムの剛軟度は高くなり、ガーレ式通気度の値が高くなる傾向がある。一方、延伸倍率を高くすると、得られる多孔質フィルムの剛軟度は低くなり、ガーレ式通気度の値が低くなる傾向がある。一軸延伸の際の温度は、例えば50℃-320℃の範囲内である。この融点未満の温度での延伸により、ノードとノードとの間にフィブリルが引き出される。その結果、上記PTFEテープ内に網目構造が形成されて、多孔質化された、未焼結状態のPTFEシートを得ることができる。得られるPTFEシートの厚みは、例えば50μm-500μmの範囲内にある。
【0030】
なお、剛軟度及びガーレ式通気度が上述した範囲内にある限り、MD方向に垂直なTD方向への延伸を追加で行ってもよい。但し、MD方向及びTD方向の二軸方向に延伸すると、厚みが小さくなり過ぎてコシが低下する可能性がある。それ故、一般的には、コシが要求される用途に使用される多孔質フィルムを作製する場合は、一軸にのみ延伸することが好ましい。
【0031】
ここで、一軸延伸に続く工程として、融点以上の温度での焼成を行うと、最終的に得られる多孔質フィルムとしては剛軟度が低い多孔質フィルム、即ちコシが低い多孔質フィルムが得られる傾向にあるため好ましくない。
【0032】
実施形態に係る多孔質フィルムを得るには、一軸延伸の後に続く工程として、PTFEシートを収縮させるための収縮工程を実施する。収縮工程は、例えば、2組のロール対間で未焼結状態のPTFEシートを通過させることにより行う。2組のロール対は、何れも熱ロール対であり得る。未焼結状態のPTFEシートは、第1熱ロール対を通過した後、第2熱ロール対を通過する。このとき、第1熱ロール対から第2熱ロール対までの間を通過するPTFEシートをたるませる。言い換えると、2組の熱ロール対間を通過するPTFEシートに掛かる張力を、PTFEシートがたるまない場合と比較して弱く設定する。この設定は、例えば、第1熱ロール対の回転速度を第2熱ロール対の回転速度と比較して高くすることにより達成できる。第1熱ロール対の回転速度を第2熱ロール対の回転速度と比較して高くすると、第1熱ロール対から送り出されるPTFEシートの送出し速度を、第2熱ロール対にてPTFEシートを回収する回収速度と比較して速くすることができる。
【0033】
この状態で、PTFEシートを、例えば50℃-330℃の環境下で、0.1秒-300秒に亘る熱処理に供することにより収縮工程がなされる。収縮工程は、未焼成のPTFEシートを静置した状態で熱処理することにより行われてもよい。収縮工程により、一軸延伸にて生じたPTFEシート内の応力が解放されてノード間の距離が縮まる。その結果、PTFEシート内において、疎な状態で存在していた網目構造を、相対的に密な状態の網目構造とすることができる。これにより、最終的に得られる多孔質フィルムの剛軟度を高めることができる。一方で、PTFEシートの通気性はそれほど低下しない。即ち、ガーレ式通気度が過度に高まることはない。収縮工程に供された後のPTFEシートの厚みは、例えば50μm-500μmの範囲内にある。
【0034】
続いて、収縮工程に供されたPTFEシートに対して、融点以上の温度での焼成を行う。この焼成は、例えば350℃-420℃の環境下で、0.1秒-600秒に亘り行う。この焼成により、PTFE樹脂が焼結して、多孔質フィルムを得ることができる。なお、焼結後の多孔質フィルムに対して収縮工程を実施してもノード間の距離はほとんど変化しないため、焼結後の多孔質フィルムを加工して、当該多孔質フィルム単体のコシを強くするのは困難である。
【0035】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
平均粒子径が500μmのPTFEファインパウダー100質量部に、助剤としての炭化水素油25質量部を均一に混合した。この混合物をペースト押出して、棒状に予備成形を行った。この予備成形物を一対の金属製圧延ロール間に通して、更に乾燥させることにより助剤を取り除いて、厚み350μm、幅200mmの長方形の未焼成テープを得た。
【0037】
次に、この未焼成テープを、ロール延伸機を用いて250℃の温度で、先だって圧延した方向、即ちMD方向に沿って5倍の倍率で一軸延伸した。一軸延伸後に得られたPTFEシートの厚みは340μmであった。
【0038】
その後、下記の通り収縮工程を実施した。収縮工程においては、2組の熱ロール対を準備し、一軸延伸により得られたPTFEシートが、これら熱ロール対の間を通過するようにPTFEシートを搬送させる。このとき、2組の熱ロール対の間において、PTFEシートにはたわみが生じている状態で搬送を行う。2組の熱ロール対を、いずれも250℃の温度に設定して、PTFEシートが30秒でこれら熱ロール対を通過するように搬送させることにより収縮工程を完了した。収縮工程を実施した後のPTFEシートの厚みは350μmであった。
【0039】
続いて、収縮させた後のPTFEシートを、380℃の温度で30秒に亘り焼成して、実施例1に係る多孔質フィルムを得た。この多孔質フィルムの厚みは320μmであった。
【0040】
実施例1に係る多孔質フィルムの剛軟度をJIS L 1913:2010に準じて測定したところ、0.7mN・cmであった。また、この多孔質フィルムの通気性の評価として、ガーレ式通気度をJIS P 8117:2009に準じて測定したところ2.4秒であった。
【0041】
(比較例1)
収縮工程を省略したことを除いて、実施例1と同様の方法で多孔質フィルムを作製した。この多孔質フィルムの厚みは320μmであった。
【0042】
比較例1に係る多孔質フィルムの剛軟度をJIS L 1913:2010に準じて測定したところ、0.2mN・cmであった。また、この多孔質フィルムの通気性の評価として、ガーレ式通気度をJIS P 8117:2009に準じて測定したところ2.2秒であった。
【0043】
実施例1に係る多孔質フィルムと比較例1に係る多孔質フィルムとを対比すると、厚みは略同一であり、ガーレ式通気度にはそれほど変化が無いが、実施例1の剛軟度は有意に向上していることが分かる。これは、収縮工程により多孔質フィルムが含む網目構造が引き締まり、ノード間の距離が縮まったためと考えられる。即ち、実施例1によれば、コシが強く、通気性にも優れる多孔質フィルムが提供されたことが分かる。
【0044】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ポリテトラフルオロエチレンを含み、
剛軟度が0.5mN・cm-20mN・cmの範囲内にあり、
ガーレ式通気度が1秒-100秒の範囲内にある多孔質フィルム。
[2] 厚みが50μm-500μmの範囲内にある[1]に記載の多孔質フィルム。
[3] 未焼成のポリテトラフルオロエチレンテープを準備することと、
前記ポリテトラフルオロエチレンテープを一軸延伸して、未焼成のポリテトラフルオロエチレンシートを得ることと、
未焼成の前記ポリテトラフルオロエチレンシートを、第1ロール対及び第2ロール対の間において通過させると共に50℃-330℃で熱処理して、前記ポリテトラフルオロエチレンシートを収縮させることと、
収縮後の前記ポリテトラフルオロエチレンシートを、340℃-440℃の環境下で焼成することと
を含み、
前記第1ロール対の回転速度は、前記第2ロール対の回転速度と比較して高い多孔質フィルムの製造方法。
[4] 前記一軸延伸は、1.5倍-30倍の延伸倍率で実施される[3]に記載の多孔質フィルムの製造方法。
【符号の説明】
【0045】
1…多孔質フィルム、2…通気孔。
図1