(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】画像生成方法、画像生成プログラムおよび画像生成装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/13 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
A61B8/13
(21)【出願番号】P 2020138622
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520147108
【氏名又は名称】株式会社Luxonus
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】関口 博之
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 恭史
(72)【発明者】
【氏名】長永 兼一
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-244204(JP,A)
【文献】特開2014-068755(JP,A)
【文献】特開2016-101415(JP,A)
【文献】特開2012-157387(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044075(WO,A1)
【文献】特開2011-120765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0148683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する工程と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記仮の測定画像の画素サイズを前記関心領域画像の画素サイズよりも大きくすることにより、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成方法。
【請求項2】
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
複数の関心領域の指定を受け付ける
請求項
1に記載の画像生成方法。
【請求項3】
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
請求項
2に記載の画像生成方法。
【請求項4】
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
請求項
2に記載の画像生成方法。
【請求項5】
前記関心領域画像を再構成する工程では、
実空間での位置関係と等しい位置関係で画像再構成したときの前記複数の関心領域同士の間隔よりも近づけて、前記複数の関心領域画像を所定の画面上に表示させる
請求項2~4のいずれか1項に記載の画像生成方法。
【請求項6】
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記音速パラメータの任意の変更を受け付けながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、前記関心領域画像を順次再構成する
請求項1~
5のいずれか1項に記載の画像生成方法。
【請求項7】
前記関心領域画像を再構成する工程は、
前記音速パラメータの変更範囲および変更幅のうち少なくともいずれかの変更条件を受け付ける工程と、
前記変更条件下で前記音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、前記関心領域画像を順次再構成する工程と、
を有する
請求項1~
5のいずれか1項に記載の画像生成方法。
【請求項8】
前記関心領域画像を再構成する工程では、
予め設定された変更範囲および変更幅で前記音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、前記関心領域画像を順次再構成する
請求項1~
5のいずれか1項に記載の画像生成方法。
【請求項9】
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記仮の測定画像を再構成する工程で用いられた前記音響波の第1信号データの一部を共通データとして含む前記音響波の第2信号データを用いる
請求項1~8のいずれか1項に記載の画像生成方法。
【請求項10】
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する手順と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記仮の測定画像を再構成する手順では、
前記仮の測定画像の画素サイズを前記関心領域画像の画素サイズよりも大きくすることにより、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成プログラム。
【請求項11】
前記関心領域画像を再構成する手順では、
前記仮の測定画像を再構成する工程で用いられた前記音響波の第1信号データの一部を共通データとして含む前記音響波の第2信号データを用いる
請求項10に記載の画像生成プログラム。
【請求項12】
前記関心領域の指定を受け付ける手順では、
複数の関心領域の指定を受け付ける
請求項10または11に記載の画像生成プログラム。
【請求項13】
前記関心領域画像を再構成する手順では、
実空間での位置関係と等しい位置関係で画像再構成したときの前記複数の関心領域同士の間隔よりも近づけて、前記複数の関心領域画像を所定の画面上に表示させる
請求項12に記載の画像生成プログラム。
【請求項14】
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する処理と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する処理と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記仮の測定画像を再構成する処理では、
前記仮の測定画像の画素サイズを前記関心領域画像の画素サイズよりも大きくすることにより、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成装置。
【請求項15】
前記関心領域画像を再構成する処理では、
前記仮の測定画像を再構成する工程で用いられた前記音響波の第1信号データの一部を共通データとして含む前記音響波の第2信号データを用いる
請求項14に記載の画像生成装置。
【請求項16】
前記関心領域の指定を受け付ける処理では、
複数の関心領域の指定を受け付ける
請求項14または15に記載の画像生成装置。
【請求項17】
前記関心領域画像を再構成する処理では、
実空間での位置関係と等しい位置関係で画像再構成したときの前記複数の関心領域同士の間隔よりも近づけて、前記複数の関心領域画像を所定の画面上に表示させる
請求項16に記載の画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成方法、画像生成プログラムおよび画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて画像を再構成する画像生成装置が開発されている。
【0003】
例えば、光源(レーザーなど)からの光を生体などの被検体に照射し、該被検体の内部の情報を可視化する画像生成装置の研究が医療分野で積極的に進められている。このような光による可視化技術の一つとして、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー、光超音波トモグラフィーと称することもある)がある。光音響トモグラフィーを用いたイメージング装置では、照射した光が被検体内を伝播し、拡散した光のエネルギーを吸収した光吸収性を有する生体組織から発生される音響波(典型的に超音波である)を、被検体を取り囲む複数の箇所で検出する。そして、得られた信号を数学的に解析処理し、被検体内部の光学特性値、特に吸収係数分布に関連した情報を可視化する。近年、この光音響トモグラフィー装置を用いて、小動物の血管像をイメージングする非臨床研究や、この原理を乳がんなどの画像診断あるいは形成外科領域の術前計画に応用するための臨床研究が積極的に進められている。臨床研究用光音響トモグラフィー装置として、例えば内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACTプログラム)で研究開発された非特許文献1の装置が、良好な画質の三次元画像を提供できる装置として知られている。
【0004】
このような光音響イメージング装置や、従来から医療分野で使われている超音波診断装置(生体内で反射した音響波を検出し、画像を再構成する装置)では、通常、被検体の平均的な音速(被検体内部における音響波の伝播速度)を用いて、画像が再構成される。一般的に、音響波の伝播速度は経験的な値や文献値などにより決定される。しかしながら、伝播速度には個体差があり、また、伝播速度は同一被検体であったとしても被検体の体温など撮影時の状況により変化する。そのため、画像再構成時に用いた速度と実際の伝播速度が異なる場合、装置固有の分解能が得られないだけでなく、画像コントラストも低下する、形状の再現性が低下するなどの現象が起き、画質が大きく劣化するという課題があった。
【0005】
このような課題の解決方法は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の技術では、超音波伝搬速度を変更し得る速度値変更手段と、この手段による速度値変更に従って送受信回路における遅延時間を修正する遅延時間修正手段とを具備することで、最適音速に設定することが可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、超音波Bモード画像を撮影しながら速度値変更手段であるボタンを押して最適値を探索する手法となる。一般にプローブを把持して画像を取得する超音波診断装置では超音波診断技師の技量によって画像が左右されることが課題として挙げられる。それに加えて音速も撮影者の技量に依存する構成とすると、さらなる画質の技師による差異が増加することが課題となる。
【0007】
別の解決方法は、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2に開示の技術では、整相された複数の受信信号に基づいて設定音速と実際の媒質音速との誤差を推定し、その誤差に基づいて媒質音速を推定する処理を被検体の複数の計測領域について行なう。この計測により得られた複数の媒質音速推定値について確からしさを評価し、最も評価の高い媒質音速推定値を複数の計測領域に対する共通の設定音速として設定する。これによって、整相処理に用いる設定音速を実際の媒質音速と同一又は近い値に自動的に調整することが可能である。
【0008】
自動調整であれば技師依存の課題は解決されるが、特許文献2に開示の技術は、いわゆるイテレーション処理と称される反復計算技術である。このような技術は、一般に計算リソースが大きいため、リアルタイム処理には不向きである。そのため超音波検査技師が患者を超音波検査しながら、その場で最適音速の画像を得るのは難しい。
【0009】
また本発明者らの検討により、以下の知見が得られている。
【0010】
非特許文献1に記載した光音響イメージング装置では、撮影を行いながらリアルタイムで画像再構成が行われ、画像が操作パネル上に表示される。この画像再構成の際に、計算に用いる音速が実際の値とずれていると、フォーカスが合わずに、ぼやけた画像になってしまう。この装置では、被検体からセンサに至るまでの音響伝搬媒体(音響整合材)として水を使用している。このため、撮影時の温度を計測して、その温度に対応した水の音速を計算に用いることによって、おおよそ適切な音速が設定される。
【0011】
しかしながら、この装置の持つ分解能はサブミリメートルオーダーである。より正確に音速を調整しないと、装置が持つ解像度の画像を提供することができない。すなわち、皮下直下の血管の画像を再構成する場合であっても、単に水の音速を適用するだけでは、ぼやけた画像が再構成されてしまう。この理由として、水の層の中で温度分布が存在する影響で、温度センサの値が全体の水の平均水温を反映しない可能性がある。または、皮膚の音速が水の音速と異なるために、音速の違いが皮下の血管のイメージング性能に影響する可能性がある。
【0012】
そのため、この装置を用いた臨床研究を行う場合には、いわゆる「オフライン画像再構成」を行っている。すなわち、撮影しながらリアルタイムで表示される画像を参照するとともに、取得された光音響信号の生データを保存する。一通りの撮影が終了してから、音速を変えて画像再構成する。このオフライン画像再構成では、正確な音速は事前にわからない。このため、複数の音速を設定し、バッチ処理による画像再構成を行い、事後的に最適な音速を知り画像を得る。
【0013】
しかしながら、例えば画像のサイズを非特許文献1に記載の最大サイズである横180mm、縦270mmの範囲とし、画像再構成の最小単位である立方体(ボクセル)の一辺を0.125mmとした場合、一つの音速条件で、画像再構成の時間は約10分以上を要する。したがって、複数の音速条件をバッチ処理する場合は、画像再構成の時間は数時間を要することもある。
【0014】
そして、被検体の位置によって最適な音速が異なるので、診断や治療に特に影響する関心領域で適した音速が用いられることが期待される。また、皮下直下で最適な音速が設定されたとしても、例えば皮下1cm以上の深部では別の音速が最適となることがある。一つの音速条件では、被検体全体として音速が最適だと言えない場合がある。このような場合では、一般的なカメラにおける被写界深度が狭い場合と同様の現象が生じる可能性がある。例えば、生体の深部方向に対して限定された深さのみでフォーカスが合い、それ以外の深さではぼやけてしまうという現象が発生する。
【0015】
したがって、最適な音速をいち早く求めることが望まれる。また、被検体の関心領域の画像再構成が適切な音速を用いて行われ、高画質の画像を再現できることが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】Nagae K, Asao Y, Sudo Y et al. Real-time 3D Photoacoustic Visualization System whith a Wide Field of View fwor Imaging Human Limbs. F1000Research 2019, 7:1813
【特許文献】
【0017】
【文献】特開平2-274235号公報
【文献】特開2002-143153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、関心領域について画質が特に良好な音響画像を早く再構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する工程と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成方法が提供される。
【0020】
本発明の他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
画像生成方法が提供される。
【0021】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
画像生成方法が提供される。
【0022】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する手順と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記仮の測定画像を再構成する手順では、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成プログラムが提供される。
【0023】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記関心領域の指定を受け付ける手順では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する手順では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する手順では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
画像生成プログラムが提供される。
【0024】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記関心領域の指定を受け付ける手順では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する手順では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
画像生成プログラムが提供される。
【0025】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する処理と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する処理と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記仮の測定画像を再構成する処理では、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成装置が提供される。
【0026】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する処理と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記関心領域の指定を受け付ける処理では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する処理では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する処理では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
画像生成装置が提供される。
【0027】
本発明のさらに他の態様によれば、
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記関心領域の指定を受け付ける処理では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する処理では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
画像生成装置が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、関心領域について画質が特に良好な音響画像を早く再構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光音響イメージング装置を示す概略模式図である。
【
図2】処理部およびそれに接続される各部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る画像生成方法を示すフローチャートである。
【
図6】仮の測定画像において関心領域の指定を受け付ける拡大図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る画像生成方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る画像生成方法を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る画像生成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<用語>
本明細書における用語は、例えば、以下のように定義される。
【0031】
「被検体(被験体)100」とは、例えば、検査対象の生体(人体)である。被検体100となる人のことを「被検者」という。
「被検部位(被験部位)110」とは、被検体100を構成する所定部位であって、音響波を測定(検出)する部位のことを意味する。被検部位110は、例えば、手、足、顔、体幹部、乳房などである。
「撮影領域」とは、被検部位110内で音響波を測定(撮影、撮像)した実空間としての領域のことを意味する。「撮影領域」は、被検部位110の一部であってもよいし、被検部位110の全体であってもよい。
「ユーザ」とは、画像生成装置を操作する人のことを意味し、装置の操作のみを行う人に必ずしも限られない。被検者自身が装置を操作する場合は、当該被検者をユーザとして考えてもよい。
【0032】
「音響波」とは、所定の媒体を伝播する弾性波(粗密波)のことを意味する。
「光音響効果」とは、以下の現象のことを意味する。すなわち、被検体100の所定の被検部位110に対して光を照射する。被検部位110の組織で光が吸収されると、光を吸収した部分が熱を放出し、体積膨張によって音響波を発生させる。このようにして音響波が生じる現象のことを「光音響効果」という。
「光音響波」とは、光音響効果により発生する音響波のことを意味し、「光超音波」と称されることもある。
音響波の「信号」または「検出信号S(i,t)」とは、検出(受信)した音響波を変換した電気信号(例えばデジタル信号)のことを意味し、「音響信号」ということもある。
「信号データ」とは、音響信号の電子データのことを意味し、「信号強度データ」ともいう。光音響波の信号データを「光音響信号データ」ともいう。
「信号データ量」とは、信号データが含む情報量のことを意味し、「データ容量」ということもある。「信号データ量」は、例えば、画像再構成するときの画素サイズ、同一画素22の再構成に用いる信号の重畳数、被検部位110の所定方向における信号データの範囲、信号を受信したセンサ数(チャンネル数)などに依存する。
「計算量」とは、例えば、画像再構成するためにコンピュータ709が計算する処理量のことを意味する。「計算量」は、例えば、信号データ量、処理方法および処理数などに依存する。
【0033】
「音響画像」とは、音響波の信号データに基づいて再構成した2次元または3次元の画像のことを意味する。「音響画像」は、光音響波の信号データに基づいて再構成した「光音響画像」、および超音波の信号データに基づいて再構成した「超音波画像」を含んでいる。このような画像は「再構成画像」とも呼ばれる。なお、再構成画像が3次元画像(ボクセルの集合体)の場合には、再構成画像はボリュームデータとも呼ばれる。
また、「音響画像」は、例えば、被検部位110内における2次元または3次元の特性情報分布を示している。具体的な「特性情報」としては、例えば、音響波の発生源の位置、被検部位110内の初期音圧、初期音圧に基づいて求められるエネルギー吸収密度ならびに吸収係数、被検部位110の組織を構成する物質の濃度などが挙げられる。具体的な「特性情報分布」としては、例えば、初期音圧分布、エネルギー吸収密度分布、吸収係数分布、酸素飽和度分布などが挙げられる。
【0034】
「仮の測定画像20」とは、関心領域24の指定を受け付けるために用いられる簡易的な音響画像のことを意味する。
「関心領域24」とは、仮の測定画像20内でユーザが関心を持っている領域のことを意味する。
「関心領域画像40」とは、関心領域24において再構成した音響画像のことを意味する。
「広域画像50」とは、関心領域24よりも広い領域を有する音響画像のことを意味する。
これらについては、具体的な実施形態において詳細を説明する。
【0035】
「画素22」(ボクセルまたはピクセル)とは、被検部位110内の単位空間領域の特性情報を、音響画像内に所定の画素値(輝度値)で表した単位領域のことを意味する。つまり、音響画像内の画素22と、被検部位110内の単位空間領域とが相互に対応している。
「解像度」とは、再構成した音響画像における画素22の密度(単位体積当たりの画素数)のことを意味する。例えば、「低解像度」または「高解像度」とは、それぞれ、画素22の密度が低いこと、または画素22の密度が高いことを意味する。
「画質」とは、コントラスト、解像度、アーチファクト(虚像)の程度、所定の注目部位の見え方などのことを意味する。
【0036】
「音速」とは、所定の媒体内を伝播する音響波の伝播速度のことを意味する。
「音速パラメータ」とは、音速に関連したパラメータのことを意味する。当該パラメータが音速に関連していれば、音速パラメータは「音速」に限られるものではない。音速以外の音速パラメータとしては、例えば、単位時間当たりに伝播する音響波の距離である「波長」(音速を所定のサンプリング周波数(固定値)で除したパラメータ)、単位長当たりの波の個数である「波数」(上記パラメータの逆数)などが挙げられる。
「音速パラメータの適切な値」とは、所定の条件下で適切であると判断された音速パラメータの特定値のことを意味する。
【0037】
「XY方向」とは、センサ340側から被検部位110を見たときの縦横に直交する水平方向のことを意味し、音響画像では、沿面方向(画面の画素配列方向)に相当する。
「Z方向」とは、センサ340側から被検部位110を見たときの深さ方向のことを意味し、音響画像では、奥行方向(画面の法線方向)に相当する。
【0038】
<本発明の第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0039】
(1)光音響イメージング装置
図1に示すように、本実施形態に係る光音響イメージング装置10は、例えば、画像生成装置の一態様として構成され、所定の被検部位110に光を照射して測定した光音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成するよう構成されている。具体的には、光音響イメージング装置10は、例えば、支持台(基台)200と、センサユニット(検出ユニット、受信ユニット)300と、光源620と、光学系640と、走査機構(移動機構)380と、分離部400と、処理部700と、表示部720と、入力部740と、を備えている。
【0040】
(支持台)
支持台200は、例えば、被検体100が載置される基台として構成されている。具体的には、支持台200は、例えば、支持面210と、開口220と、を有している。
【0041】
支持面210は、例えば、被検体100のうち被検部位110以外の部分を支持している。支持台200の支持面210の下には、空間があけられており、後述のセンサユニット300などが設けられている。
【0042】
開口220は、例えば、被検体100の所定の被検部位110を測定するために、支持面210に開設されている。開口220は、所定の被検部位110からの音響波を測定するため、被検部位110よりも広く設けられている。開口220の平面形状は、例えば、四角形である。
【0043】
(分離部)
分離部400は、例えば、被検体100側とセンサユニット300側とを分離するよう構成されている。本実施形態では、分離部400は、例えば、分離フィルム420を有している。
【0044】
分離フィルム420は、例えば、音響整合材310を浸透させないよう構成されている。また、分離フィルム420は、例えば、光源620からの光を透過するよう構成されている。さらに、分離フィルム420は、例えば、被検部位110からの音響波を伝播させることができるように、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。具体的には、上述の要件を満たす分離フィルム420の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。
【0045】
分離フィルム420の厚さは、被検部位110からの音響波の周波数帯域と分離フィルム420内の縦波音速とに基づいて決定される。
【0046】
分離フィルム420は、例えば、支持台200の開口220を塞ぐ(覆う)ように設けられ、支持台200に固定されている。分離フィルム420は、例えば、凹部(符号不図示)を有し、音響整合材410を凹部内に収容可能に構成されている。
【0047】
音響整合材410は、例えば、液状またはゲル状であり、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。本実施形態でいう音響インピーダンスが「被検体100と整合する」とは、被検体100の音響インピーダンスと完全に一致する場合だけでなく、被検体100の音響インピーダンスに所定の誤差で近似される場合も含んでいる。具体的には、「被検体100と整合する音響インピーダンス」は、例えば、被検体100の音響インピーダンスの0.5倍以上2倍以下の範囲内である。具体的な音響整合材310としては、例えば、水、油などである。
【0048】
分離フィルム420は、例えば、後述の容器320内に収容された音響整合材310に接触している。
【0049】
(センサユニット)
センサユニット300は、例えば、被検体100の所定の被検部位110からの音響波を受信するよう構成されている。本実施形態のセンサユニット300は、例えば、容器320と、センサ(探触子、変換素子)340と、素子保持部360と、を有している。
【0050】
[容器]
容器320は、例えば、支持面210よりも鉛直下側に設けられている。容器320は、例えば、音響整合材310を収容(貯留)可能に構成されている。
【0051】
音響整合材310は、例えば、音響整合材410と同様に、液状であり、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。具体的な音響整合材310としては、例えば、水、油などである。
【0052】
本実施形態では、容器320は、例えば、音響整合材310を固定せず不定形に変化させることが可能な状態で音響整合材310を収容しており、すなわち、流動性を有する状態で音響整合材310を収容している。
【0053】
また、本実施形態では、容器320内において、分離フィルム420に接する位置まで、音響整合材310が充填される。これにより、被検部位110からセンサ340までの音響波の伝播経路に空気が介在することを抑制することができる。
【0054】
[センサ]
センサ340は、例えば、支持面210よりも鉛直下側に設けられている。センサ340は、例えば、被検部位110から発生する音響波を受信するよう構成されている。
【0055】
また、センサ340は、例えば、受信した音響波を電気信号に変換するよう構成されている。センサ340は、例えば、100kHz以上1000MHz以下の周波数を有する音響波を受信可能に構成されている。より好ましくは、センサ340は、例えば、100kHz以上50MHz以下の周波数を有する音響波を受信可能に構成されている。具体的なセンサ340としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などからなる圧電素子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの高分子圧電膜材料、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)、ファブリペロー干渉計などが挙げられる。
【0056】
本実施形態では、センサ340は、例えば、複数設けられている。複数のセンサ340により音響波を受信することで、測定精度を向上させることができる。例えば、被検部位110内の特性情報の測定位置精度を向上させることができる。
【0057】
[素子保持部]
素子保持部360は、例えば、複数のセンサ340を保持している。素子保持部360は、例えば、鉛直下側に向けて凹んだ半球状(お椀状)に構成されている。ここでいう「半球状」とは、平坦な断面で分割された真円球の形状、平坦な断面で分割された楕円球の形状、またはそれらに所定の誤差で近似される形状のことを意味している。素子保持部360が構成する球面の中心角は、例えば、140°以上180°以下である。
【0058】
素子保持部360は、例えば、複数のセンサ340のそれぞれの指向軸が半球面の曲率中心付近に集中するように、半球面に沿ってアレイ状に複数のセンサ340を保持している。これにより、半球面の曲率中心付近において、高分解能を得ることができる。
【0059】
本実施形態では、例えば、後述の音響整合材410の中に被検部位110を浸漬させたとき、または音響整合材410の中に被検部位110を載置させたとき、素子保持部360の半球面の曲率中心が被検部位110内に位置するように設定されている。これにより、所定の被検部位110内で高分解能の測定を行うことができる。
【0060】
本実施形態では、素子保持部360は、例えば、容器320の底部に設けられ、容器320に一体として固定されている。素子保持部360内には、上述の音響整合材310が収容される。これにより、センサ340は、音響整合材310を介して音響波を受信するようになっている。
【0061】
また、本実施形態では、上述のように容器320が、流動性を有する状態で音響整合材310を収容していることで、素子保持部360が複雑な形状を有していても、素子保持部360内に、空気を介在させることなく音響整合材310を密に充填することができる。
【0062】
(光源)
光源620は、例えば、所定の被検部位110に対して光を照射するよう構成されている。光源620は、例えば、パルス光を出射可能に構成されている。具体的には、光源620は、例えば、レーザ、発光ダイオード、またはフラッシュランプである。レーザとしては、例えば、ガスレーザ、固体レーザ、色素レーザ、半導体レーザなどが挙げられる。
【0063】
光源620は、例えば、光音響効果が得られる条件下で、光を出射するよう構成されている。
【0064】
光源620から出射される光の波長は、例えば、被検部位110の組織を構成する所定の吸収体に吸収される波長であり、かつ、被検部位110の内部まで伝播可能な波長である。具体的には、光の波長は、例えば、500nm以上1200nm以下である。
【0065】
なお、光源620は、例えば、異なる波長の光を出射可能に構成されていてもよい。異なる波長の光を被検部位110に照射することで、異なる波長における吸収係数の違いに基づいて特性情報の分布を得ることができる。例えば、酸素飽和度分布などを得ることができる。
【0066】
光源620から出射される光のパルス幅は、いわゆる熱閉じ込め条件およびストレス閉じ込め条件の両方を満たしている。すなわち、パルス幅は、被検部位110内の所定の吸収体から熱が伝播して逃げる前に光照射が終了する時間幅であり、かつ、音響波が吸収体内を通過する前に光照射が終了する時間幅である。具体的には、パルス幅は、例えば、1ns以上100ns以下である。
【0067】
(光学系)
光学系640は、例えば、光源620からの光を伝送するよう構成されている。光学系640は、例えば、レンズならびにミラーなどの光学部品、光ファイバなどにより構成されている。
【0068】
光学系640の終端における光出射口660は、光源620から伝送された光を被検部位110に向けて出射するよう構成されている。光出射口660は、例えば、素子保持部360の底部に設けられている。光出射口660がセンサ340とともに素子保持部360に設けられていることで、被検部位110内の広い範囲における光音響波を測定することができる。
【0069】
光出射口660は、例えば、出射される光量が、生体としての被検体100に照射可能な光エネルギーの最大許容露光量(Maximum Permissive Exposure、MPE)を超えないように、光学的に設計されていることが好ましい。具体的には、光出射口660は、例えば、凹レンズなどを有することで、照射範囲が広げられていることが好ましい。
【0070】
(走査機構)
走査機構380は、例えば、支持台200上に載置された被検体100に対して、センサ340を相対的に走査(移動)させるよう構成されている。本実施形態では、走査機構380は、例えば、容器320とセンサ340とを有するセンサユニット300を一体として走査させるよう構成されている。
【0071】
走査機構380は、少なくとも所定の1方向にセンサ340を走査させるよう構成されている。走査機構380がセンサ340を走査させる方向は、例えば、2次元方向(XY方向)であっても、または3次元方向(XYZ方向)であってもよい。走査の方向は一方向の直線的な動きに限らず、回転させる動きを採用してもよい。本実施形態では、走査機構380は、例えば、支持面210に平行な水平面上をXY方向にセンサ340を走査させるよう構成されている。
【0072】
本実施形態では、上述のように容器320が、流動性を有する状態で音響整合材310を収容していることで、走査機構380によりセンサユニット300を走査させても、センサ340が音響整合材310と接した状態を維持することができる。
【0073】
(供給部)
供給部(図示せず)は、例えば、容器320内に供給管を介して音響整合材310を供給するよう構成されている。供給管は、例えば、素子保持部360の一部に接続されている。供給部からの音響整合材310の供給により、容器320内の音響整合材310の上面が所定位置に維持される。
【0074】
(処理部)
処理部700は、例えば、光音響イメージング装置10の各部を制御し、取得した信号データに基づいて画像を再構成するよう構成され、すなわち、被検部位110内の特性情報を処理するよう構成されている。
【0075】
図2に示すように、処理部700は、例えば、コンピュータ709および信号処理部710を有している。具体的には、コンピュータ709は、例えば、CPU701(Central Processing Unit)、GPU702(Graphics Processing Unit)、RAM703(Random Access Memory)、記憶装置704、およびI/Oポート705を有している。RAM703、記憶装置704、およびI/Oポート705は、CPU701とデータ交換可能に構成されている。I/Oポート705は、例えば、所定の増幅器、AD変換器および演算回路などの信号処理部710を介してセンサ340のそれぞれに接続され、さらに、光源620、走査機構380、表示部720および入力部740に接続されている。
【0076】
記憶装置704は、例えば、光音響波測定に係るプログラム、画像再構成に係るプログラム(画像生成プログラム)、信号データ、および被検部位110内の特性情報などを記憶するよう構成されている。記憶装置704は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどである。RAM703は、CPU701またはGPU702によって記憶装置704から読み出される情報やプログラム等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0077】
CPU701は、記憶装置704に格納された所定のプログラムを実行することで、光音響イメージング装置10の各部を制御し、光音響波測定に係る処理および信号処理などを実行するように構成されている。GPU702は、記憶装置704に格納された所定のプログラムを実行することで、画像再構成に係る処理などを実行するように構成されている。なお、GPU702は、画像再構成に係る処理を単独で実行してもよいし、CPU701と連携して実行してもよい。
【0078】
表示部720は、例えば、所定のプログラムの実行によって再構成された音響画像などを表示するよう構成されている。表示部720は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(OLED)ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、直視型立体ディスプレイなどである。
【0079】
入力部740は、例えば、ユーザが所定の操作を行う情報をコンピュータ709に入力可能に構成されている。入力部740は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、タッチパネル、マイク、視線入力デバイスなどである。
【0080】
なお、本実施形態における画像生成プログラムは、音響画像の再構成を高速に行うために高性能なコンピュータ709を用いることが好ましい。特に近年では、GPUの発展が目覚ましく、GPUを汎用演算に用いるGPGPU(General-Purpose computing on GPU)が広く用いられる。本実施形態においてGPU702としてGPGPUを用いることによって、データ量の多いボリュームデータを再構成する場合であっても、1ショット当たり数十ミリ秒以内で計算することが可能となる。
【0081】
(2)画像再構成の原理
次いで、
図3を用い、画像再構成の原理について説明する。
図3において、音響画像を再構成したときの画素22を被検部位110と重ね合わせて示している。また、
図3において、所定の音響波を発生させる音源120の1つを黒点として示している。各センサ340は、被検体100内部から伝播してくる音響波を検出して、検出信号を出力する。なお、センサ340の数はN(Nは2以上の整数)個とする。
【0082】
音響波(超音波)を利用した画像生成装置では、複数のセンサ340iから得られる複数の検出信号S(i,t)に基づいて被検体100内部の特性情報を表す画像を再構成する。再構成画像の各画素22(ボクセル)の輝度値(または画素値)は、各センサ340からその画素22に対応する位置(単位空間領域)までの距離と被検体100内の音速とにより位相が調整された検出信号に基づいて算出される。なお、検出信号S(i,t)において、iはセンサ340の番号(0からN-1の範囲の整数)、tは時間を示す。
【0083】
以下、画像再構成法の一例であるタイムドメイン法について具体的に説明する。まず、センサ340毎に、i番目のセンサ340から再構成画像内の或る画素22に対応する位置までの距離を伝播速度(音速)で除算する。それにより、その画素22に対応する位置で音響波が発生した場合において、該音響波がセンサ340iに到達するまでの時間τi(遅延時間)を算出する(発生時刻をt=0とする)。そして、センサ340毎に、時間τiのときの検出信号(の強度)S(i,τi)を算出し、それらを足し合わせることにより、再構成画像の画素値を生成する。同様に複数の位置について画素22を生成することにより、再構成画像が生成される。本実施形態では、例えば、光音響イメージング装置10のタイムドメインでの画像再構成法の一つであり、以下の式(1)で表されるUniversal back-projection(UBP)法を使用できる。
【0084】
【0085】
ここで、r0は再構成する位置(再構成位置、注目位置とも呼ぶ)を示す位置ベクトル、p0(r0,t)は再構成する位置の初期音圧、cは伝搬経路の音速を示す。また、ΔΩiは再構成する位置からi番目のセンサ340を見込む立体角、Nは再構成に用いるセンサ340の個数を示す。式(1)は、受信信号p(ri,t)に微分等の処理を行い、それらに立体角の加重をかけて整相加算すること(逆投影)を示している。式(1)のtは、注目位置とセンサ340とを結ぶ音線を光音響波が伝搬する時間(伝搬時間)である。なお、b(ri、t)の計算においては、他にも演算処理を施してもよい。他の演算処理としては、例えば、周波数フィルタリング(ローパス、ハイパス、バンドパス等)、デコンボリューション、包絡線検波、ウェーブレットフィルタリング、等が挙げられる。また、本発明においては、センサ340と注目位置とを結ぶ音線の伝搬時間を求めて再構成する方法であれば、どのような再構成アルゴリズムを用いても良い。例えば、タイムドメインでの逆投影法として、Filtered back-projectionなどを採用してもよい。タイムドメインではなく、フーリエドメインで再構成してもよい。
【0086】
(3)画像生成方法
次いで、本実施形態に係る画像生成方法について説明する。
【0087】
[光音響イメージング装置10による基本的な画像生成方法]
光音響イメージング装置10によって得られた光音響信号データを処理部700内にある記憶装置704に保存する。光音響信号データは、サンプリング時間とサンプリング周波数の積によってデータ数が決まる1チャンネル(1センサ)当たりの信号強度データ、及びこれとセンサ数との積のデータ容量を有する1ショットデータ、及びこれとトータルショット数との積のデータ容量を有する全体のスキャンデータからなる。すなわち、光音響イメージング装置10では、光源620としてのレーザを1回照射すると、被検体100から光音響波が発生し、当該光音響波を複数チャンネルのセンサ340で受信することによって、1ショットのレーザ照射によって得られるN個分の信号強度データを得ることができる。1ショットデータを取得したのち、走査機構380によりセンサユニット300の位置を変化させて、別の位置での1ショットデータを取得する。これらを繰り返すことによって、撮影領域全体の信号データ(スキャンデータ)を完成させる。このようにして得られた信号データは、例えば、センサユニット300の位置を示す座標情報と関連づけられている。
【0088】
1ショットデータに基づいて画像再構成することによって、所定の範囲(Field of view,FOV)のボリュームデータを生成することができる。センサユニット300の位置を変化させたのちに、別の1ショットデータに基づいて画像再構成することによって、別の場所のボリュームデータを生成することができる。これら二つのボリュームデータが部分的にでもオーバーラップしていれば、センサユニット300の位置情報を参照しながら、ボリュームデータ同士を加算させて音響画像を構成する。この加算効果によってアーチファクトを減少させ、高画質な音響画像を得ることができる。このように、センサユニット300の位置情報を参照しながら、すべての信号データを重ね合わせることによって、広い範囲で高画質なボリュームデータを作成することができる。
【0089】
[本実施形態の概略]
本実施形態では、音速パラメータの適切な値を決定するにあたり、まず関心領域24を指定し、その関心領域24の画像を見ながらユーザが即時的に音速パラメータの適切な値を探索する方法を採用する。すなわち、音速パラメータを変更するのに応じて画像を再構成し、再構成画像を表示し、更なる変更に応じて同様に再構成および表示を行うことにより、即時的に音速パラメータの適切な値を探索することができる。
【0090】
[本実施形態の具体的な画像生成方法]
以下、
図4~
図8を用い、本実施形態の具体的な画像生成方法について説明する。
【0091】
図4に示すように、本実施形態の画像生成方法は、例えば、信号データ準備工程S120~S140、仮の測定画像再構成工程S220~S240、関心領域指定受付工程S320、関心領域画像再構成工程S420~S460、適切値決定工程S480、および広域画像再構成工程S540を有している。各工程における処理は、処理部700により実行される。
【0092】
(S120~140:信号データ準備工程)
まず、所定の被検部位110を測定した音響波の信号データを準備する。
【0093】
本実施形態では、例えば、信号データとして、同一の画素22に再構成される位置に複数の信号が重畳されたデータを準備する。また、例えば、信号データとして、複数のセンサ340により受信した複数の信号を含むデータを準備する。
【0094】
具体的には、例えば、上述の光音響イメージング装置10を用い、被検体100の所定の被検部位110に対して光を照射し、被検部位110から発生する音響波をセンサ340により受信することで、光音響信号を取得する(S120)。光音響信号を取得したら、信号データを記憶装置704に保存する(S140)。
【0095】
(S220~S240:仮の測定画像再構成工程)
次に、
図5に示すように、上述の信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像20を再構成する。
【0096】
具体的には、記憶装置704から信号データを読み出し(S220)、信号データに基づいて仮の測定画像20を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる(S240)。
【0097】
このとき、本実施形態の仮の測定画像20は、後述の関心領域24の指定を受け付けるために用いられる。仮の測定画像20において、関心領域24の位置(例えば、所定の血管などの注目位置)を把握できればよいため、画質を低くして(粗くして)仮の測定画像20を再構成する。
【0098】
すなわち、本実施形態では、例えば、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの信号データ量を、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの信号データ量よりも少なくする。ここでいう「単位面積」とは、音響画像を平面視したとき(すなわち実空間でXY面を見たときに相当)の単位面積のことを意味する。このように仮の測定画像20を再構成するときの信号データ量を少なくすることで、単位面積当たりの計算量を少なくすることができる。その結果、仮の測定画像20を早く再構成することができる。
【0099】
具体的には、例えば、仮の測定画像20の同一画素22の再構成に用いる信号データの重畳数を少なくする。例えば、センサユニット300の位置を移動させながら所定の測定間隔で取得した全信号データから、測定間隔よりも広い間隔で信号データを減少させる。なお、このとき、画素サイズは変化させない。上述のような方法により、同一画素22の再構成に用いる信号データの重畳数を少なくすることができる。これにより、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの信号データ量を少なくすることができる。その結果、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの計算量を少なくすることができる。
【0100】
このとき、仮の測定画像20として再構成される領域を、例えば、関心領域24の指定を受け付けることが可能な程度に広い領域とする。
【0101】
具体的には、例えば、
図5に示すように、撮影領域の全体に亘って、仮の測定画像20を再構成する。ここでいう「撮影領域の全体」とは、再構成可能な信号データを得た全ての単位空間領域のうちで、最も外側の単位空間領域によって囲まれた範囲内のことを意味する。また、「撮影領域の全体に亘って画像を再構成する」とは、最も外側の単位空間領域によって囲まれた範囲内で画像を再構成することを意味し、全ての単位空間領域から得られた全信号データに基づいて画像を再構成することに限定されるものではない。
【0102】
なお、仮の測定画像20が関心領域24の指定を受け付けることが可能な程度に広ければ、必ずしも撮影領域の全体に亘って仮の測定画像20を再構成しなくてもよく、撮影領域の一部に基づいて仮の測定画像20を再構成してもよい。
【0103】
また、このとき、仮の測定画像20を再構成するときの音速パラメータは、厳密性(正確性)を欠いても構わない。例えば、仮の測定画像20を再構成するときの音速パラメータとして、既知の水の音速パラメータを用いてもよい。
【0104】
また、このとき、後述の関心領域24を指定しやすくするために、仮の測定画像20として、例えば、最大強度投影法(Maximum Intensity Projection,MIP)による2次元画像を生成し、表示部720の画面上に表示させてもよい。
【0105】
(S320:関心領域指定受付工程)
次に、
図6に示すように、仮の測定画像20内で、部分的な関心領域24の指定を受け付ける。
【0106】
本実施形態の画像生成プログラムは、上述の方法で得た仮の測定画像20をユーザが見ながら、関心領域24の指定をユーザから受け付けるビューワ機能およびグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)機能を有する。関心領域24指定の手段は、入力部740を用いる。入力部740による関心領域24の具体的な指定方法としては、例えば、マウス、トラックボール、あるいはジョイスティックで指定する方法、タッチパネルに指でタッチして指定する方法、キーボードで入力して指定する方法、マイクにより音声入力して指定する方法、視線入力デバイスを利用して指定する方法などが挙げられる。
【0107】
このとき、仮の測定画像20内で、例えば、連続する複数の画素22を含む関心領域24の指定を受け付ける。関心領域24が複数の画素22を含むことで、所定の血管などの注目部位を確実に関心領域24内に含めることができる。
【0108】
また、このとき、仮の測定画像20内で、例えば、仮の測定画像20のサイズよりも小さい任意のサイズ(大きさ)を有する関心領域24の指定を受け付ける。これにより、所定の血管などの注目部位を確実に関心領域24内に含めること、および、後述の関心領域画像40を早く再構成することなどの、ユーザが優先する条件に応じて、関心領域24を指定することができる。
【0109】
なお、このとき、関心領域24は、固定されたサイズで位置だけを指定してもよい。
【0110】
また、このとき、仮の測定画像20内で、例えば、任意の形状を有する関心領域24の指定を受け付けてもよい。関心領域24の形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。
【0111】
また、このとき、仮の測定画像20内で、例えば、複数の関心領域24の指定を受け付ける。これにより、ユーザが注目する部位が離れた位置にあっても、画質が良好となるように音速パラメータを調整することができる。また、複数の関心領域24の一部を重ね合わせることで、結合された複数の関心領域24全体として、上述の例として挙げた形状に限られない任意の形状に関心領域24を調整することができる。
【0112】
(S420~S460:関心領域画像再構成工程)
次に、
図7に示すように、関心領域24において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像40を順次再構成する。
【0113】
具体的には、所定の音速パラメータに基づいて関心領域画像40を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる(S420)。関心領域画像40以外の領域は再構成せず、表示部720には、例えば、黒色を表示させる。なお、最初のS420においては、後述するユーザによる音速パラメータの指定を受け付けてもよいし、予め設定された音速パラメータを用いてもよい。次に、再構成された関心領域画像40の画質をユーザにより判断する(S440)。関心領域画像40の画質がNGである場合には(S440でNG)、音速パラメータの任意の変更をユーザから受け付ける(S460)。なお、関心領域画像40の画質がOKである場合には(S440でOK)、後述の適切値決定工程S480に進む。
【0114】
上述のように、本実施形態では、音速パラメータの任意の変更を受け付けながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、関心領域画像40を順次再構成する。これにより、ユーザが関心領域画像40を視認しながら、音速パラメータを調整することができる。
【0115】
このとき、本実施形態では、関心領域画像40を、例えば、仮の測定画像20の画質よりも高画質に再構成する。すなわち、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの信号データ量を、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの信号データ量よりも多くする。例えば、センサユニット300の位置を移動させながら所定の測定間隔で取得した関心領域24内のそのままの信号データに基づいて、すなわち、関心領域24内の信号データを減少させることなく、関心領域画像40を再構成する。したがって、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの計算量を、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも多くすることとなる。
【0116】
このとき、ユーザによって指定された関心領域画像40は、センサ340の位置が異なる複数ショットでのオーバーラップ領域がある場合、ボリュームデータの重ね合わせで生成される。例えば、異なるセンサ340の位置で得られたボリュームデータを、指定された関心領域24に限定して順次再構成して、各画像を重畳して表示する。このようにして得られた関心領域画像40としてのボリュームデータは、例えば、MIPによる2次元画像に変換して、表示部720の画面上に表示される。あるいは、例えば、ヘッドマウントディスプレイまたは直視型立体ディスプレイを用いて、3次元ボリュームデータとして関心領域画像40を表示してもよい。当該ボリュームデータは、S420~S460を含むサイクルを順次繰り返しながら再構成され、関心領域画像40が音速パラメータの変更に応じて更新される。なお、音速パラメータなどの画像形成のためのパラメータに変更が無い場合には、関心領域画像40の再構成処理を停止してもよい。
【0117】
また、このとき用いられる画像生成プログラムは、例えば、
図7で示すような音速パラメータを変更するための音速変更GUI30を有する。
図7における音速変更GUI30では、例えば、数値ボタンの上に、矢印カーソルを乗せると、カーソルの形状が矢印から楕円に変化する。以下、当該変化後のカーソルを「楕円カーソル31」と呼ぶ。通常の矢印カーソルを数値ボタンの上に乗せると、数値が見づらくなる。これに対し、矢印カーソルを楕円カーソル31に変化させることで、数値の視認性を向上させることができる。
【0118】
図7において、楕円カーソル31は数値ボタンの下に表示されているが、楕円カーソル31の指示位置(hotspot)は数値ボタンの中央となる。楕円カーソル31は、マウスのホイールを模したものである。数値ボタン上で、ホイールを回転させることにより、音速パラメータを増減させることができる。
【0119】
なお、音速パラメータは、例えば、マウスクリックにより変更可能であってもよい。例えば、マウスの左クリックで音速パラメータを-1減少させることができ、右クリックで音速パラメータを+1増加させることができる。
【0120】
さらに、音速パラメータは、例えば、マウスのドラッグにより変更可能であってもよい。例えば、楕円カーソル31の左側のマイナス(-)は、音速パラメータの減少に対応するボタンおよびドラッグ方向を示している。一方で、楕円カーソル31の右側のプラス(+)は、音速パラメータの増加に対応するボタンおよびドラッグ方向を示している。音速パラメータの数値を大きく変えたいときには、マウスの左ボタンで楕円カーソル31を左方向または右方向にドラッグすることで、音速パラメータを大幅に増減させることができる。
【0121】
なお、音速変更GUI30は、
図7の例に限られない。その他、音速変更GUI30による方法としては、例えば、テキストボックス内に音速パラメータの数値を直接入力する方法、上述の例以外のプラス(+)キーまたはマイナス(-)キーをクリックすることで音速パラメータを増減させる方法、上述の例以外のスライダバーをクリックしたままドラッグすることで音速パラメータを変更する方法、上述の例以外の態様でマウスホイールを回転させて音速パラメータを変更する方法などが挙げられる。なお、ここで挙げた方法に限られるものではなく、音速パラメータを変化させることができるのであれば、いずれの方法を用いてもよい。
【0122】
上述のように音速パラメータの変更を受け付けると、変更された音速パラメータに基づいて、即座に画像再構成処理が行われ、MIP表示処理を施したのちに画像が表示される。GPGPUによる高速画像再構成により、ユーザは、音速パラメータを変えることによる画像の先鋭度(フォーカス)をリアルタイムで調整することが可能となる。
【0123】
なお、このとき、異なるセンサ340の位置のボリュームデータを順次再構成しているため、音速パラメータを変えた直後の関心領域画像40は、異なる音速パラメータに基づいて再構成された画像同士の加算画像となる。1ショット当たり数百ミリ秒以内で画像が再構成されている場合には、視認性にはほぼ問題がない。一方で、関心領域24が大きいと、関心領域画像40全体の更新に時間がかかる。このため、コンピュータ709のスペックが低い場合には、関心領域24の境界をマウスクリックで変更可能状態とし、関心領域24を任意のサイズまで狭くすることで、画像再構成におけるリアルタイム性および操作性を確保することが好ましい。関心領域24のサイズは、コンピュータ709のスペックによるが、1秒以内で関心領域画像40全体が更新される程度の大きさに設定することが好ましい。
【0124】
上述のように、音速パラメータを変化させることで、被検体100の画像再構成結果のフォーカス状態をリアルタイムに変えることができる。これにより、ユーザが慣れ親しんだカメラのフォーカス合わせのような使用感で所望のフォーカスとなるように設定することが可能となる。
【0125】
さらに、このとき、本実施形態では、複数の関心領域24において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像40を再構成する。例えば、音速変更GUI30を用いて、音速パラメータの変更をユーザから受け付け、当該変更された音速パラメータを複数の関心領域24において共通する音速パラメータとして設定する。その後、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像40を再構成する。このような方法により、複数の関心領域24において共通する音速パラメータの適切な値を早く見出すことができる。
【0126】
また、このとき、例えば、実空間での位置関係と等しい位置関係で画像再構成したときの複数の関心領域24同士の間隔よりも近づけて、複数の関心領域画像40を所定の画面上に表示させる。すなわち、本実施形態では、仮の測定画像20における複数の関心領域24同士の間隔よりも近づけて、複数の関心領域画像40を表示部720の所定の画面上に表示させる。複数の関心領域画像40同士の間隔は、等しい間隔であってもよいし、それぞれ異なる間隔であってもよい。また、少なくとも2つの関心領域画像40の一部が重なり合っていてもよい。一方で、複数の関心領域画像40のうちで、近づけられていない2つ以上の関心領域画像40があってもよい。上述のように、複数の関心領域画像40を近づけることで、複数の関心領域画像40同士を容易に比較しながら、音速パラメータを容易に調整することができる。
【0127】
(S480:適切値決定工程)
上述の関心領域画像40をユーザが確認し、関心領域画像40の画質がOKである場合には(S440でOK)、当該関心領域画像40に基づいて音速パラメータの適切な値を決定する。
【0128】
音速パラメータの適切な値を決定するときの、関心領域画像40の画質がOKである場合としては、例えば、所定の血管などの注目部位のコントラストが高い場合、関心領域画像40の全体として各部位の視認性が一様に向上している場合(複数の血管の視認性が同一画像内で向上している場合)などが挙げられる。
【0129】
また、このとき、本実施形態では、共通に設定された音速パラメータに基づいて再構成された複数の関心領域画像40の画質を判断することで、複数の関心領域24において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する。これにより、全ての関心領域24で許容可能な音速パラメータの適切な値を早く決定することができる。
【0130】
上述のように音速パラメータの適切な値を決定したら、当該音速パラメータの適切な値を記憶装置704に保存する(S480)。
【0131】
(S540:広域画像再構成工程)
次に、
図8に示すように、上述の音速パラメータの適切な値に基づいて、関心領域24よりも広い領域の広域画像50を再構成する。
【0132】
具体的には、記憶装置704から音速パラメータの適切な値および信号データを読み出し、音速パラメータの適切な値および信号データに基づいて広域画像50を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる。
【0133】
このとき、広域画像50として再構成される領域を、例えば、関心領域24よりも広く、かつ、関心領域24を含む領域とすることが好ましい。例えば、
図8に示すように、撮影領域の全体に亘って、広域画像50を再構成することが好ましい。
【0134】
このとき、信号データを減少させることなく、高画質の広域画像50を再構成する。例えば、センサユニット300の位置を移動させながら撮影領域全体に亘って所定の測定間隔で取得したそのままの全信号データに基づいて、すなわち、信号データを減少させることなく、広域画像50を再構成する。
【0135】
上述のように、関心領域24の音速パラメータの適切な値が決まれば、当該音速パラメータの適切な値に基づいて被検部位110全体を再構成することによって、高画質な全体の再構成画像を得ることが可能となる。
【0136】
なお、広域画像50として再構成される領域が関心領域24よりも広ければ、必ずしも撮影領域の全体に亘って広域画像50を再構成しなくてもよく、撮影領域の一部に基づいて広域画像50を再構成してもよい。この場合、広域画像50の境界をマウスクリックで変更可能状態とし、広域画像50のサイズおよび形状を変更可能にすることが好ましい。
【0137】
以上により、本実施形態の画像生成工程を終了する。
【0138】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0139】
(a)本実施形態では、関心領域24の指定を受け付けるために、仮の測定画像20を再構成する。仮の測定画像20においては、関心領域24の位置を把握できればよいため、画質を低くして(粗くして)仮の測定画像20を再構成することができる。すなわち、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの計算量を、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくすることができる。これにより、仮の測定画像20を早く再構成することができる。
【0140】
その後、関心領域24において、単位面積当たりの計算量を多くして、関心領域画像40を再構成する。このとき、仮の測定画像20の領域よりも小さい領域を有する関心領域画像40を再構成することで、音速パラメータを変更しながらであっても、高画質の関心領域画像40を順次再構成することができる。これにより、関心領域画像40の画質に基づいて、音速パラメータの適切な値を効率よく決定することができる。
【0141】
これらの結果、上述のようにして決定された音速パラメータの適切な値に基づいて、広い範囲に亘って画質が良好な広域画像50を早く再構成することが可能となる。
【0142】
(b)仮の測定画像再構成工程S220~S240では、仮の測定画像20の同一画素22の再構成に用いる信号データの重畳数を少なくする。これにより、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの信号データ量を少なくすることができる。その結果、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの計算量を、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくすることができる。
【0143】
また、信号データの重畳数を少なくすることで、アーチファクトの程度は悪化するものの、仮の測定画像20の解像度(画素22の密度)を高く維持することができる。これにより、仮の測定画像20における関心領域24の位置の視認性低下を抑制することができる。
【0144】
(c)関心領域指定受付工程S320では、仮の測定画像20内で、複数の関心領域24の指定を受け付ける。これにより、ユーザが注目する複数の部位が互いに離れた位置にあっても、これらの部位で画質が良好となるように音速パラメータを調整することができる。また、互いに離れた位置にある複数の部位を含む大きな関心領域24を指定する必要が無いので、関心領域画像40の再構成を早く行うことができる。
【0145】
また、複数の関心領域24の一部を重ね合わせることができる。これにより、結合された複数の関心領域24全体として、任意の形状に関心領域24を調整することができる。例えば、血管などの複雑な形状に合わせて関心領域24の形状を調整することができる。
【0146】
このように、複数の関心領域24の指定を受け付けることで、ユーザが優先する条件(位置または形状など)を満たす複数の関心領域画像40を容易に得ることが可能となる。さらに、上述のようにして得られた複数の関心領域画像40に基づいて音速パラメータを調整することで、ユーザの関心を充分に満たし、広い範囲に亘って画質が良好な広域画像50を、早く再構成することが可能となる。
【0147】
(d)本実施形態では、複数の関心領域24において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像40を再構成し、当該複数の関心領域24において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する。
【0148】
ここで、後述の第2実施形態のように、各場所に適切な値を探して、様々な場所での音速パラメータを適切な値に調整することは、画質の観点では理想的ではあるものの、処理部700の計算負荷が大きくなるのが課題である。
【0149】
これに対し、本実施形態では、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像40を再構成することにより、複数の場所の全てで、ベストではないかもしれないが許容可能な画質が得られるように、音速パラメータの適切な値を決定することが可能である。すなわち、一つの音速パラメータの適切な値に基づいて、あらゆる場所で画質が許容可能な広域画像50を容易に得ることができる。その結果、処理部700の計算負荷を軽減することが可能となる。
【0150】
(5)本実施形態の変形例
上述の実施形態の仮の測定画像再構成工程S220~S240では、仮の測定画像20の同一画素の再構成に用いる信号データの重畳数を少なくする場合について説明したが、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0151】
以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、以下の第2実施形態~第4実施形態などについても、本変形例と同様に説明を省略する。
【0152】
<変形例1>
変形例1の仮の測定画像再構成工程S220~S240では、例えば、仮の測定画像20の画素サイズを大きくする。具体的には、仮の測定画像20の画素サイズを、例えば、被検部位110内の複数の単位空間領域に相当するサイズに大きくする。このように仮の測定画像20の画素サイズを大きくすることで、仮の測定画像20の解像度は低くなる。また、仮の測定画像20では、大きくした1つの画素22を、代表的な1つの単位領域に相当する信号のみに基づいて再構成する。
【0153】
変形例1によれば、仮の測定画像20の画素サイズを大きくすることで、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの信号データ量を少なくすることができる。例えば、XYZ方向にそれぞれに画素サイズ(ボクセルサイズ)を大きくすることで、単位面積当たりの信号データ量を容易に少なくすることができる。これにより、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの計算量を少なくすることができる。その結果、仮の測定画像20の再構成速度を向上させることができる。
【0154】
具体的には、例えば、画素22としてのボクセルの一辺の長さを0.1mmから0.4mmに変更した場合であっても、表示部720の画面上の視認性をあまり変化させることなく、仮の測定画像20の再構成速度を大幅に向上させることが可能となる。
【0155】
<変形例2>
変形例2の仮の測定画像再構成工程S220~S240では、例えば、被検部位110の深さ方向(すなわちZ方向)における信号データの範囲を狭くする。例えば、被検部位110において血管が集中する表面に近い部分に、信号データの範囲を限定する。なお、このとき、画素サイズは変化させない。
【0156】
変形例2によれば、Z方向における信号データの範囲を狭くすることで、XY面の単位面積当たりでZ方向の範囲全体を積算した総信号データ量を少なくすることができる。すなわち、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの信号データ量を少なくすることができる。これにより、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの計算量を少なくすることができる。その結果、仮の測定画像20の再構成速度を向上させることができる。
【0157】
また、限られたZ方向の範囲内では、解像度を高く維持することができる。これにより、高解像な断面像(に近い像)としての仮の測定画像20を再構成することができる。その結果、仮の測定画像20内で関心領域24を指定する際の位置視認精度を向上させることができる。
【0158】
<変形例3>
変形例3の仮の測定画像再構成工程S220~S240では、例えば、複数のセンサ340により受信した複数の信号のうちの一部に基づいて、仮の測定画像20を再構成する。なお、このとき、画素サイズは変化させない。
【0159】
このとき、仮の測定画像20を再構成するための信号が選択される一部のセンサ340は、例えば、半球状の素子保持部360の一か所に集中しているよりは、素子保持部360の全体に亘って分散していることが好ましく、素子保持部360の全体に亘って所定の等しい間隔で互いに離れて配置されていることがより好ましい。例えば、センサ340の数を1/2にする場合に、半球状の素子保持部360の底面付近のみを選択し、素子保持部360の側面のセンサ340を選択しない場合、素子保持部360を半球状にした効果が得られ難くなる。これに対し、選択される一部のセンサ340を、素子保持部360の全体に亘って分散させることで、素子保持部360を半球状にした効果を得ることができる。
【0160】
変形例3によれば、複数のセンサ340により受信した複数の信号のうちの一部に信号データを限定することで、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの信号データ量を少なくすることができる。これにより、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの計算量を少なくすることができる。
【0161】
また、変形例3によれば、仮の測定画像20を再構成するための信号が選択される一部のセンサ340を素子保持部360の全体に亘って分散させることで、上述のように、素子保持部360を半球状にした効果を得ることができる。すなわち、広い立体角で受信した信号に基づいて、仮の測定画像20を再構成することができる。その結果、アーチファクトの程度は悪化するものの、仮の測定画像20の解像度(画素22の密度)を高く維持することが可能となる。
【0162】
<変形例4>
変形例4の仮の測定画像再構成工程S220~S240では、例えば、以下のように、仮の測定画像20を再構成するための計算量が少ない方法、すなわち簡易的な処理方法を採用する。
【0163】
例えば、ノイズ除去のためのフィルタリングを実空間のフィルタで行う。ここで、通常の画像再構成処理、即ち、関心領域画像再構成工程S420および広域画像再構成工程S540では、ノイズ除去のためのフィルタリングを周波数空間で行っている。しかしながら、周波数空間でのフィルタリングでは、フーリエ変換およびフーリエ逆変換が必要となる。このため、画像再構成のための計算量が多くなる傾向がある。これに対し、本変形例では、仮の測定画像20の再構成処理のノイズ除去のためのフィルタリングを実空間のフィルタで行うことで、フーリエ変換およびフーリエ逆変換を不要とすることができる。このような実空間のフィルタリングにより、信号データ量を減らさずとも、計算量の増加を抑制することができる。また、このような手法であっても、関心領域24の指定を受け付けるための仮の測定画像20の画質を、充分に確保することができる。これらの結果、所望の仮の測定画像20を高速に得ることができる。
【0164】
変形例4によれば、ノイズ除去のためのフィルタリングを実空間のフィルタで行うことで仮の測定画像20を再構成する。これにより、仮の測定画像20を再構成するときの単位面積当たりの計算量を少なくすることができる。その結果、高速で仮の測定画像20を得ることが可能となる。
【0165】
なお、仮の測定画像20を高速に得る方法は、以上述べた実施形態、変形例1から4に限らず、例えば、データサンプリングの周波数を下げたり、上位ビットのみを用いたりしても良い。また、これらの実施形態、変形例1から4などを組合せても構わない。
【0166】
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0167】
(1)画像生成方法
[本実施形態の概略]
本実施形態では、例えば、複数の関心領域24において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像40を再構成する。
【0168】
[本実施形態の具体的な画像生成方法]
図9を用い、本実施形態の具体的な画像生成方法について説明する。
【0169】
(S320:関心領域指定受付工程)
仮の測定画像20を再構成したら、仮の測定画像20内で、部分的な関心領域24の指定を受け付ける。本実施形態では、当該工程の1回において、複数の関心領域24の指定を受け付けてもよいし、1つの関心領域24のみの指定を受け付けてもよい。
【0170】
(S420~S460:関心領域画像再構成工程)
次に、関心領域24において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像40を順次再構成する。
【0171】
このとき、本実施形態では、上述の関心領域24において、個別に設定された音速パラメータに基づいて、関心領域画像40を再構成する。
【0172】
具体的には、例えば、個別に設定された音速パラメータに基づいて、1つの関心領域画像40を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる(S420)。次に、再構成された1つの関心領域画像40の画質をユーザにより判断する(S440)。当該関心領域画像40の画質がNGである場合には(S440でNG)、1つの関心領域画像40に個別に設定する音速パラメータの任意の変更をユーザから受け付ける(S460)。
【0173】
(S480:適切値決定工程)
上述の関心領域画像40をユーザが確認し、関心領域画像40の画質がOKである場合には(S440でOK)、1つの関心領域画像40に対して個別に音速パラメータの適切な値を決定し、記憶装置704に記憶する。
【0174】
(S490:全関心領域終了判断工程)
次に、全ての関心領域24において、それぞれ個別に音速パラメータの適切な値を決定したか否かを判断する。
【0175】
(S340:別の関心領域指定受付工程)
全ての関心領域24において、それぞれ個別に音速パラメータの適切な値を決定していない場合(すなわち、適切な値が決定していない関心領域24が残っている場合)には(S490でNo)、仮の測定画像20内で、別の関心領域24の指定を受け付ける。
【0176】
別の関心領域24の指定を受け付けたら、当該別の関心領域24について、関心領域画像再構成工程S420~S460を行う。
【0177】
(S520:データ読み出し工程)
上述のS420~S490を含むサイクルを繰り返した後に、全ての関心領域24において、それぞれ個別に音速パラメータの適切な値を決定した場合には(S490でYes)、広域画像50の再構成のために、信号データと、全ての関心領域24にそれぞれ個別に決定された音速パラメータの適切な値と、を記憶装置704から読み出す。
【0178】
(S540:広域画像再構成工程)
次に、上述の音速パラメータの適切な値に基づいて、広域画像50を再構成する。本実施形態では、上述のように音速パラメータの適切な値が関心領域24ごとに決定されているため、広域画像50の再構成方法としては、例えば、以下の2つの方法が考えられる。
【0179】
例えば、まず、複数の関心領域24をそれぞれ含む複数の領域に広域画像50を区画する。広域画像50を区画したら、区画された複数の領域においてそれぞれ個別に決定された音速パラメータの適切な値を適用し、区画された各領域の画像を再構成する。その後、区画された各領域の画像を結合し、全体としての広域画像50を生成する。
【0180】
或いは、例えば、全ての関心領域24にそれぞれ個別に決定された音速パラメータの適切な値に基づいて、音速パラメータの1つの選択値を決定してもよい。1つの選択値としては、例えば、複数の音速パラメータのうちの代表値、複数の音速パラメータの最小値以上最大値以下の範囲内の1つの値、複数の音速パラメータの平均値などが挙げられる。このように決定された音速パラメータの選択値に基づいて、広域画像50を再構成してもよい。
【0181】
(S560:広域画像再構成工程)
次に、必要に応じて、広域画像50内に、音速パラメータの適切な値の分布を表示させる。音速パラメータの適切な値の分布を表示させる方法としては、例えば、音速パラメータの所定範囲ごとに色を異ならせる方法、音速パラメータの所定範囲ごとに色の濃さを異ならせる方法などが挙げられる。
【0182】
(2)本実施形態により得られる効果
本実施形態では、複数の関心領域24において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像40を再構成する。これにより、複数の関心領域24においてそれぞれ個別に音速パラメータの適切な値を決定することができる。その結果、被検部位110の場所によって音速パラメータのばらつきが生じていたとしても、それぞれの場所に応じた音速パラメータの適切な値に基づいて、全体に亘って画質が良好な広域画像50を再構成することが可能となる。
【0183】
更に、それぞれの場所ごとに個別に音速パラメータを変更しながら、関心領域画像40を順次再構成することで、被検部位110の面内方向による違いだけでなく、被検部位110の奥行き方向の違いも、画像再構成中にリアルタイムに把握することが可能となる。
【0184】
また、画像生成プログラム中に、それぞれの場所ごとに個別に決定した音速パラメータの適切な値を記録する機能を付与することによって、被検体100の音速パラメータ分布を求めて、画像として提示することも可能となる。例えば、軟組織中に癌が発生した状態を想定すると、軟組織中の音速は遅いが、組織が硬い癌の中の音速は速い。こうした軟組織中の癌に起因する音速の違いを描出することも可能となる。
【0185】
<本発明の第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0186】
(1)画像生成方法
[本実施形態の概略]
本実施形態では、例えば、音速パラメータの変更範囲および変更幅のうち少なくともいずれかの変更条件を受け付け、その後、当該変更条件下で音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、関心領域画像40を順次再構成する。
【0187】
[本実施形態の具体的な画像生成方法]
図10を用い、本実施形態の具体的な画像生成方法について説明する。
【0188】
(S412~S440:関心領域画像再構成工程)
仮の測定画像20内で関心領域24の指定を受け付けたら、後述の関心領域画像40の再構成の際に用いる音速パラメータの変更範囲および変更幅のうち少なくともいずれかの変更条件を受け付ける(S412)。
【0189】
すなわち、本実施形態では、音速パラメータを変更するための音速変更GUI30を用いて、ユーザが音速パラメータを変えるのではなく、音速パラメータの変更範囲と変更幅をあらかじめ決めておいて、その後、自動的に音速パラメータを変化させる。ここでいう「変更範囲」とは、音速パラメータを変化させるときの最小値以上最大値以下の範囲のことを意味し、「変更幅」とは、音速パラメータを自動でインクリメントさせる際の刻み幅のことを意味する。
【0190】
音速パラメータの変更条件を受け付ける方法としては、例えば、第1実施形態での音速変更GUI30による方法と同様に、テキストボックス内に数値を直接入力する方法、数値を増減するボタンをクリックする方法、スライダバーをクリックしたままドラッグすることで条件を変更する方法、マウスホイールを回転させて条件を変更する方法などが挙げられる。なお、上記方法に限られるものではなく、変更条件に係る数値を変化させることができるのであれば、いずれの方法を用いてもよい。あるいは、GUIによる方法ではなく、設定ファイルを別途用意してその設定情報ファイルを読み込む方法を用いてもよい。
【0191】
音速パラメータの変更条件を受け付けたら、当該変更条件下で音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、関心領域画像40を順次再構成する。
【0192】
具体的には、音速パラメータの変更条件の受け付け後、ユーザが表示部720の画面上でスタートボタンを押すなどの操作をトリガーとして、自動的に音速パラメータを変更し、所定の音速パラメータを設定する(S416)。自動で変更された音速パラメータに基づいて関心領域画像40を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる(S420)。次に、再構成された関心領域画像40の画質をユーザにより判断する(S440)。関心領域画像40の画質がNGである場合には(S440でNG)、音速パラメータの自動変更および設定を再度行い(S410)、それ以降のサイクルを繰り返す。
【0193】
(S470:適切値決定工程)
ユーザは、連続的に変化する関心領域画像40を見ながら、関心領域画像40の画質がOKな状態となったタイミングで(S440でOK)、表示部720の画面上でストップボタンを押す。ユーザによる当該操作をトリガーとして、音速パラメータの自動変更と、関心領域画像40の順次再構成と、を停止させる。このように自動で変更される音速パラメータを停止させたときの当該音速パラメータを、音速パラメータの適切な値として決定する。
【0194】
(2)本実施形態により得られる効果
本実施形態では、ユーザによって指定された変更条件下で音速パラメータを自動で変更しながら、関心領域画像40を順次再構成する。ユーザは、最初に変更条件を指定するだけでよく、関心領域画像40の再構成の際に、第1実施形態のような音速変更GUI30を入力または操作する必要がない。つまり、音速パラメータの変更におけるユーザの操作負担を軽減することが可能となる。
【0195】
また、本実施形態では、ユーザが関心領域画像40の画質に基づいて音速パラメータの自動変更を停止するだけで、音速パラメータの適切な値を決定することができる。つまり、音速パラメータの適切な値の決定においても、ユーザの負担を軽減することが可能となる。
【0196】
(3)本実施形態の変形例
上述の実施形態の関心領域画像再構成工程S412~S440では、自動で変更された音速パラメータに基づいて関心領域画像40を順次再構成して所定の画面上に表示させる場合について説明したが、この場合に限られない。
【0197】
例えば、ユーザが表示部720の画面上でスタートボタンを押すと、それぞれの音速パラメータに基づいて得られた関心領域24のボリュームデータのMIP画像が。静止画像として記憶装置704に保存される。この静止画は、汎用の画像ビューワを用いて閲覧することが可能である。この機能によって、第3実施形態で決定した音速パラメータを事後に検証することが可能となる。
【0198】
なお、本変形例で述べた音速パラメータごとにMIP画像が記憶装置704に保存される機能は、他の実施形態においても追加機能として採用することが可能である。
【0199】
<本発明の第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0200】
(1)画像生成方法
[本実施形態の概略]
本実施形態では、例えば、ユーザがスタートボタンを押すと、それぞれの音速パラメータで得られた関心領域24について、自動的に音速パラメータの適切な値を決定できるオートフォーカス機能を搭載する。このオートフォーカスは、RAM703上の画像を用いてリアルタイムに解析することが好ましい。ただし、MIP画像を静止画像として記憶装置704に保存し、一連の静止画像の保存が完了したのち、画像解析によって自動的にフォーカスを決定する(すなわち音速パラメータの適切な値を決定する)方法を採用してもよい。このオートフォーカスを実現するために、ユーザは関心領域24を指定するとともに、関心領域24内のどの画像(部位)に注目すべきか(対象が血管の場合、どの血管に注目してオートフォーカス処理を行うか)を指定する。
【0201】
[本実施形態の具体的な画像生成方法]
図11を用い、本実施形態の具体的な画像生成方法について説明する。
【0202】
(S412~S454:関心領域画像再構成工程)
仮の測定画像20内で関心領域24の指定を受け付けたら、関心領域画像40の再構成の際に用いる音速パラメータの変更範囲および変更幅のうち少なくともいずれかの変更条件を受け付ける(S412)。
【0203】
音速パラメータの変更条件を受け付けたら、関心領域24内で被検部位110の注目部位の指定を受け付ける(S414)。ここでいう「注目部位」とは、例えば、所定の血管およびその周辺部位などのことを意味する。注目部位の指定受付方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ユーザが注目部位をポインタでクリックする方法などが挙げられる。
【0204】
注目部位の指定を受け付けたら、上述のオートフォーカスを行う。すなわち、音速パラメータの変更条件下で音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、関心領域画像40を順次再構成する。このように関心領域画像40を順次再構成しながら、関心領域画像40の解像度を除く画質に基づいて、音速パラメータの適切な値を自動で決定する。例えば、関心領域画像40における注目部位の解像度を除く画質に基づいて、音速パラメータの適切な値を自動で決定する。
【0205】
具体的には、音速パラメータの変更条件の受け付け後、ユーザが表示部720の画面上でスタートボタンを押すなどの操作をトリガーとして、自動的に音速パラメータを変更し、所定の音速パラメータを設定する(S416)。自動で変更された音速パラメータに基づいて関心領域画像40を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる(S420)。次に、順次再構成される関心領域画像40において、注目部位の解像度を除く画質を自動で解析し、当該自動解析結果が良好か否かを判断する(S452)。
【0206】
オートフォーカスにおける自動解析処理の一例としては、以下の処理が考えられる。まず、指定された複数の血管とその周辺の部位に関して、初期値の音速パラメータで再構成された関心領域画像40でのコントラストを求める。次に、コントラストの総和値を求めて、RAM703に記憶させる。次に、音速パラメータを自動で変更し、関心領域画像40の再構成を行い、再度コントラストの総和値を求める。最新のコントラストの総和値として、前回処理のコントラストの総和値よりも高い値が得られれば、そのときの音速パラメータをより好ましい音速パラメータとして記憶する。当該サイクルを繰り返すことにより、コントラストの総和値が最大となったときの音速パラメータを音速パラメータの適切な値として決定し、その値を記憶装置704に記憶させる。また、音速パラメータの適切な値に基づいて関心領域画像40を再構成し、表示部720の所定の画面上に表示させる。以上のようにして、例えば、注目部位と背景とのコントラストが高く、エッジがシャープになるなどの関心領域画像40の特徴を利用して、画像処理によって最適フォーカス位置(すなわち、音速パラメータの適切な値)を検出することができる。
【0207】
しかしながら、オートフォーカスにおける自動解析処理では、画質の自動判定がしばしばローカルミニマムに落ち込んで真の最適条件に到達しないことがある。このため、オートフォーカス後に誤った数値が出力されたときに修正して再計算させる機能を付与しておくことが好ましい。
【0208】
具体的には、注目部位の画質の自動解析結果がNGであった場合には(S452でNG)、音速パラメータの自動変更および設定を再度行い(S416)、それ以降のサイクルを繰り返す。
【0209】
一方で、注目部位の画質の自動解析結果がOKであった場合には(S452でNG)、ユーザが関心領域画像40を確認する。関心領域画像40がNGであったとユーザが判断した場合には(S454でNG)、音速パラメータの変更条件を再度受け付け(S412)、それ以降のサイクルを繰り返す。
【0210】
(S540:広域画像再構成工程)
関心領域画像40がOKであったとユーザが判断した場合には(S454でOK)、上述のオートフォーカスによって決定された音速パラメータの適切な値に基づいて、広域画像50を再構成する。
【0211】
(2)本実施形態により得られる効果
本実施形態では、オートフォーカス機能により、関心領域画像40において注目部位の解像度を除く画質に基づいて、音速パラメータの適切な値を自動で決定する。これにより、音速パラメータの適切な値の決定におけるユーザの負担を軽減することが可能となる。
【0212】
また、注目部位の画質に基づいて音速パラメータの適切な値を自動で決定することで、ユーザが目視確認することなく、注目部位の視認性を向上させた広域画像50を容易に再構成することができる。
【0213】
また、注目部位の画質を自動で解析するときの基準を数値化しておけば、被検体100が代わった場合であっても、複数の被検体100を撮影した広域画像50同士を、共通する画質条件下で比較することが可能となる。
【0214】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。なお、以下において、特に限定せずにいう「上述の実施形態」とは、全ての実施形態を含んでいる。
【0215】
上述の実施形態では、一つの音速パラメータで媒体中を音波が伝搬することを仮定した再構成処理を述べてきたが、この場合に限られない。従来の超音波装置で報告がなされているように、多層構成の場合にそれぞれの音速パラメータを用いて画像再構成を行ってもよい。
【0216】
上述の実施形態では、光音響イメージング装置10がPAT装置として構成されている場合について説明したが、光音響イメージング装置10は、音響波を測定可能であれば、PAT装置以外の装置として構成されていてもよい。例えば、光音響イメージング装置10は、被検体100の所定の被検部位110に対して音響波(超音波)を照射し、照射された部分から反射または散乱された音響波(反射波)を受信する超音波エコーイメージング装置として構成されていてもよい。
【0217】
上述の実施形態では、光音響イメージング装置10が音響波を測定する機能と画像生成を行う機能との両方を有する場合について説明したが、上述した画像生成処理を実行する画像生成装置は、音響波測定装置と別に設けられていてもよい。言い換えれば、上述の画像生成処理は、音響波測定装置に接続されているコンピュータを用いてもよいし、別のコンピュータを用いてもよい。
【0218】
上述の第3実施形態および第4実施形態では、ユーザから受け付けた音速パラメータの変更条件下で音速パラメータを自動で変更しながら、関心領域画像40を順次再構成する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、予め設定された変更範囲および変更幅で音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、関心領域画像40を順次再構成してもよい。これにより、ユーザの負担をさらに軽減することができる。
【0219】
上述の実施形態では、仮の測定画像20内で、複数の関心領域24の指定を受け付ける場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、仮の測定画像20を再構成する際に、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの計算量を、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくするだけでも、画質が良好な広域画像50を早く再構成することが可能となる。したがって、この場合では、仮の測定画像20内で、1つの関心領域24だけの指定を受け付けてもよい。
【0220】
上述の実施形態では、仮の測定画像20を再構成する際に、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの計算量を、関心領域画像40を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、被検部位110の撮影領域内で、複数の関心領域24の指定を受け付け、複数の関心領域画像40を再構成するだけでも、画質が良好な広域画像50を早く再構成することが可能となる。したがって、この場合では、仮の測定画像20を再構成するための単位面積当たりの計算量を少なくせずに、仮の測定画像20を再構成してもよい。また、この場合では、複数の関心領域24の指定を受け付ける際には、領域指定のための信号データと最終的な画像再構成のための信号データとが一致する必要は無い。このため、必ずしも、上述の実施形態で説明した仮の測定画像20内で、複数の関心領域24の指定を受け付けなくてもよい。
【0221】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0222】
(付記1)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する工程と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成方法。
【0223】
(付記2)
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記仮の測定画像の画素サイズを大きくする
付記1に記載の画像生成方法。
【0224】
(付記3)
前記信号データとして、同一の画素に再構成される位置に複数の信号が重畳されたデータを準備する工程をさらに有し、
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記仮の測定画像の同一画素の再構成に用いる前記信号データの重畳数を少なくする
付記1に記載の画像生成方法。
【0225】
(付記4)
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記被検部位の深さ方向における前記信号データの範囲を狭くする
付記1に記載の画像生成方法。
【0226】
(付記5)
前記信号データとして、複数のセンサにより受信した複数の信号を含むデータを準備する工程をさらに有し、
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
前記複数の信号のうちの一部に基づいて前記仮の測定画像を再構成する
付記1に記載の画像生成方法。
【0227】
(付記6)
前記仮の測定画像を再構成する工程では、
ノイズ除去のためのフィルタリングを実空間のフィルタで行うことにより、前記仮の測定画像を再構成する
付記1に記載の画像生成方法。
【0228】
(付記7)
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
複数の関心領域の指定を受け付ける
付記1~6のいずれか1つに記載の画像生成方法。
【0229】
(付記8)
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
付記7に記載の画像生成方法。
【0230】
(付記9)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
画像生成方法。
【0231】
(付記10)
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
付記7に記載の画像生成方法。
【0232】
(付記11)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成方法であって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける工程と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する工程と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する工程と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する工程と、
を有し、
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
画像生成方法。
【0233】
(付記12)
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する工程をさらに有し、
前記関心領域の指定を受け付ける工程では、
前記仮の測定画像内で前記関心領域の指定を受け付ける
付記9又は11に記載の画像生成方法。
【0234】
(付記13)
前記関心領域画像を再構成する工程では、
実空間での位置関係と等しい位置関係で画像再構成したときの前記複数の関心領域同士の間隔よりも近づけて、前記複数の関心領域画像を所定の画面上に表示させる
付記7~12のいずれか1つに記載の画像生成方法。
【0235】
(付記14)
前記関心領域画像を再構成する工程では、
前記音速パラメータの任意の変更を受け付けながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、前記関心領域画像を順次再構成する
付記1~13のいずれか1つに記載の画像生成方法。
【0236】
(付記15)
前記関心領域画像を再構成する工程は、
前記音速パラメータの変更範囲および変更幅のうち少なくともいずれかの変更条件を受け付ける工程と、
前記変更条件下で前記音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、前記関心領域画像を順次再構成する工程と、
を有する
付記1~13のいずれか1つに記載の画像生成方法。
【0237】
(付記16)
前記関心領域画像を再構成する工程では、
予め設定された変更範囲および変更幅で前記音速パラメータを自動で変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、前記関心領域画像を順次再構成する
付記1~13のいずれか1つに記載の画像生成方法。
【0238】
(付記17)
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
自動で変更される前記音速パラメータを停止させたときの当該音速パラメータを、前記適切な値として決定する
付記15又は16に記載の画像生成方法。
【0239】
(付記18)
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
前記関心領域画像の解像度を除く画質に基づいて、前記音速パラメータの前記適切な値を自動で決定する
付記15又は16に記載の画像生成方法。
【0240】
(付記19)
前記関心領域内で前記被検部位の注目部位の指定を受け付ける工程をさらに有し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する工程では、
前記注目部位の解像度を除く画質に基づいて、前記音速パラメータの前記適切な値を自動で決定する
付記18に記載の画像生成方法。
【0241】
(付記20)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する手順と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記仮の測定画像を再構成する手順では、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成プログラム、
または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0242】
(付記21)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記関心領域の指定を受け付ける手順では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する手順では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する手順では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
画像生成プログラム、
または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0243】
(付記22)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する画像生成プログラムであって、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける手順と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する手順と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記関心領域の指定を受け付ける手順では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する手順では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
画像生成プログラム、
または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0244】
(付記23)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記信号データに基づいて、音響画像からなる仮の測定画像を再構成する処理と、
前記仮の測定画像内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する処理と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記仮の測定画像を再構成する処理では、
前記仮の測定画像を再構成するための単位面積当たりの計算量を、前記関心領域画像を再構成するための単位面積当たりの計算量よりも少なくする
画像生成装置。
【0245】
(付記24)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する処理と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記関心領域の指定を受け付ける処理では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する処理では、
前記複数の関心領域において、共通に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成し、
前記音速パラメータの前記適切な値を決定する処理では、
前記複数の関心領域において、共通する音速パラメータの適切な値を決定する
画像生成装置。
【0246】
(付記25)
所定の被検部位を測定した音響波の信号データに基づいて、音響画像を生成する処理部を備え、
前記処理部は、
前記被検部位の撮影領域内で部分的な関心領域の指定を受け付ける処理と、
前記関心領域において、音速パラメータを変更しながら、当該変更された音速パラメータに基づいて、音響画像からなる関心領域画像を順次再構成する処理と、
前記関心領域画像に基づいて前記音速パラメータの適切な値を決定する手順と、
前記音速パラメータの前記適切な値に基づいて、前記関心領域よりも広い領域の音響画像を再構成する処理と、
を実行し、
前記関心領域の指定を受け付ける処理では、
複数の関心領域の指定を受け付け、
前記関心領域画像を再構成する処理では、
前記複数の関心領域において、それぞれ個別に設定された音速パラメータに基づいて、複数の関心領域画像を再構成する
画像生成装置。
【符号の説明】
【0247】
10 光音響イメージング装置
20 測定画像
22 画素
24 関心領域
40 関心領域画像
50 広域画像
100 被検体
110 被検部位
120 音源
200 支持台
210 支持面
220 開口
300 センサユニット
310 音響整合材
320 容器
340(340i) センサ
360 素子保持部
380 走査機構
400 分離部
410 音響整合材
420 分離フィルム
620 光源
640 光学系
660 光出射口
700 処理部
701 CPU
703 RAM
704 記憶装置
705 I/Oポート
709 コンピュータ
710 信号処理部
720 表示部
740 入力部