(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20240430BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04G21/12 105E
(21)【出願番号】P 2020184393
(22)【出願日】2020-11-04
(62)【分割の表示】P 2019239922の分割
【原出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-032011(JP,A)
【文献】特開平07-034663(JP,A)
【文献】特開2017-025506(JP,A)
【文献】特開2009-002076(JP,A)
【文献】特開2014-020025(JP,A)
【文献】特開2011-001764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0195681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/03,5/18
E04G 21/12
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鉄筋と、鉄筋継手とを具え、上記鉄筋継手の両端にそれぞれ鉄筋を挿入し、鉄筋継手に所定動作を施すことで、一対の鉄筋同士を接合させる接合構造であって、
上記
鉄筋継手は、鉄筋を挿通可能に両端が開口した略筒形状を有し、
内周に、軸からの半径が漸次縮径して軸方向に列設される係合凸部が成す係合凸面と、
軸方向に向かって上記係合凸部に交番して凹設される係合凹部の底面が成す係合凹面と、
比較的大径で
上記係合凸面及び上記係合凹面に対して周方向に連設される大径面と、を有し、
上記係合凸部は、周方向に連続的又は断続的に延在し、
周方向に対して所定角度で傾斜した第一傾斜面又は上記所定角度に対して相異なる角度で傾斜した第二傾斜面を有し、
上記第一傾斜面を有する上記係合凸部と、上記第二傾斜面を有する上記係合凸部とを軸方向に交互に配し、上記係合凸部間に、係止部を配設することを特徴とする
接合構造。
【請求項2】
前記係合凸面、前記係合凹面及び前記大径面を周方向に複数配し、
周方向に離間している各前記係合凸面は、周方向に離間している他の前記係合凸面に対して軸方向に段違いに配設されることを特徴とする
請求項1記載の
接合構造。
【請求項3】
軸から前記大径面までの半径が、上記軸から前記係合凹面までの半径以上であることを特徴とする
請求項1又は2記載の
接合構造。
【請求項4】
軸から前記大径面までの半径が、上記軸から前記係合凸面までの半径より大きいことを特徴とする
請求項1乃至3の何れかに記載の
接合構造。
【請求項5】
一対の鉄筋と、鉄筋継手とを具え、上記鉄筋継手の両端にそれぞれ鉄筋を挿入し、鉄筋継手に所定動作を施すことで、一対の鉄筋同士を接合させる接合構造であって、
上記鉄筋継手は、鉄筋を挿通可能に両端が開口した略筒形状を有し、
内周に、軸からの半径が漸次縮径して軸方向に列設される係合凸部が成す係合凸面と、
軸方向に向かって上記係合凸部に交番して凹設される係合凹部の底面が成す係合凹面と、
比較的大径で上記係合凸面及び上記係合凹面に対して周方向に連設される大径面と、を有し、
上記係合凸部は、周方向に連続的又は断続的に延在し、周方向に対して所定角度で傾斜した第一傾斜面又は上記所定角度に対して相異なる角度で傾斜した第二傾斜面を有し、
周方向及び軸方向に沿って外周面を開口させた開口部を有し、上記第一傾斜面を有する上記係合凸部を内周面に配した略筒形状の本体部と、
上記開口部に嵌って上記本体部に固定され得、上記内周に向けた面に前記第二傾斜面を有する前記係合凸部を設けた閉塞部とを有することを特徴とする接合構造。
【請求項6】
前記係合凸面、前記係合凹面及び前記大径面を周方向に複数配し、
周方向に離間している各前記係合凸面は、周方向に離間している他の前記係合凸面に対して軸方向に段違いに配設されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の接合構造。
【請求項7】
前記鉄筋は、軸からの半径が漸次縮径して成る縮径面と、比較的大径で軸方向に列設される凸部の外周が成す拡径面と、軸方向に向かって上記凸部に交番して凹設される凹部の底面が成す凹径面と、を有し、
上記縮径面に対し、周方向に沿って上記拡径面と上記凹径面が連設され、
上記凸部は、周方向に向かって連続的又は断続的に略弧状に延在し、上記拡径面側から上記縮径面側に向かって縮幅する縮幅部を有して構成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の接合構造。
【請求項8】
前記鉄筋は、前記凸部が周方向に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項7記載の接合構造。
【請求項9】
前記鉄筋は、前記凸部が三角形状、台形状又はくさび状であることを特徴とする請求項8記載の接合構造。
【請求項10】
前記鉄筋は、前記凸部が菱形状であって、該菱形の対角線の内、一方の対角線が前記軸方向に平行な向きに配され、
前記凹部は、前記凹径面の周方向中央部から周方向端部にかけて徐々に幅が広がることを特徴とする請求項8記載の接合構造。
【請求項11】
前記鉄筋は、前記凸部が前記軸からの半径方向における突出量が周方向の中央部で最も大きく、周方向外方に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の接合構造。
【請求項12】
前記鉄筋は、軸から前記縮径面までの長さが、軸から前記凸部までの長さ未満であることを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の接合構造。
【請求項13】
前記鉄筋は、軸から前記縮径面までの長さが、軸から前記凹径面までの長さ以下であることを特徴とする請求項7乃至12の何れかに記載の接合構造。
【請求項14】
前記鉄筋は、前記拡径面を周方向に複数配し、
周方向に離間する各上記拡径面は、他の上記拡径面に対して上記凸部の軸方向位置を段違いに配設することを特徴とする請求項7乃至13の何れかに記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋及びその鉄筋継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート製の構造物を構築する際には、コンクリートに埋設する鉄筋を長尺にする必要が生じるが、鉄筋の長さは輸送上の制約等から制限があり、長尺化するために現場で接合していた。鉄筋の接合には継手が用いられ、継手の両端開口に鉄筋を挿入しており、一端部に鉄筋と螺合可能な雌ねじが形成された鉄筋保持部を有し、他端部に鉄筋の外径よりも大きい内径を有する鉄筋収容部を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された継手は、鉄筋を遊嵌している鉄筋収容部の内部にグラウトの充填を行う必要があるので、工事現場でのグラウト運搬や混錬等の作業が発生して作業負担が大きくなってしまう。また、鉄筋収容部に鉄筋を遊嵌した状態で継手の長手方向の中央部に設けられた注入孔からグラウトの充填を行っているが、充填時に継手の長手方向の両端の開口からグラウトが漏出して満充させることが出来ないことから、継手の両端にはナットを締め付けて継手の両端開口を閉塞する必要がある。これらの事柄から従来の継手を用いた鉄筋同士の接合作業には、所要部品数や作業の手間が増えてしまうという課題や、継手に挿入される両鉄筋同士の軸心を揃えることに手間が掛かってしまうことなど、多くの課題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、少ない作業負担で鉄筋同士の接合を行う手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接合構造は、一対の鉄筋と、鉄筋継手とを具え、上記鉄筋継手の両端にそれぞれ鉄筋を挿入し、鉄筋継手に所定動作を施すことで、一対の鉄筋同士を接合させる接合構造であって、上記鉄筋継手は、鉄筋を挿通可能に両端が開口した略筒形状を有し、内周に、軸からの半径が漸次縮径して軸方向に列設される係合凸部が成す係合凸面と、軸方向に向かって上記係合凸部に交番して凹設される係合凹部の底面が成す係合凹面と、比較的大径で上記係合凸面及び上記係合凹面に対して周方向に連設される大径面と、を有し、上記係合凸部は、周方向に連続的又は断続的に延在し、周方向に対して所定角度で傾斜した第一傾斜面又は上記所定角度に対して相異なる角度で傾斜した第二傾斜面を有し、上記第一傾斜面を有する上記係合凸部と、上記第二傾斜面を有する上記係合凸部とを軸方向に交互に配し、上記係合凸部間に、係止部を配設することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の接合構造は、前記係合凸面、前記係合凹面及び前記大径面を周方向に複数配し、周方向に離間している各前記係合凸面は、周方向に離間している他の前記係合凸面に対して軸方向に段違いに配設されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の接合構造は、軸から前記大径面までの半径が、上記軸から前記係合凹面までの半径以上であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の接合構造は、軸から前記大径面までの半径が、上記軸から前記係合凸面までの半径より大きいことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の接合構造は、一対の鉄筋の端部同士を連結させる鉄筋継手であって、鉄筋を挿通可能に両端が開口した略筒形状を有し、内周に、軸からの半径が漸次縮径して軸方向に列設される係合凸部が成す係合凸面と、軸方向に向かって上記係合凸部に交番して凹設される係合凹部の底面が成す係合凹面と、比較的大径で上記係合凸面及び上記係合凹面に対して周方向に連設される大径面と、を有し、上記係合凸部は、周方向に連続的又は断続的に延在し、周方向に対して所定角度で傾斜した第一傾斜面又は上記所定角度に対して相異なる角度で傾斜した第二傾斜面を有し、周方向及び軸方向に沿って外周面を開口させた開口部を有し、上記第一傾斜面を有する上記係合凸部を内周面に配した略筒形状の本体部と、上記開口部に嵌って上記本体部に固定され得、上記内周に向けた面に前記第二傾斜面を有する前記係合凸部を設けた閉塞部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の接合構造は、前記係合凸面、前記係合凹面及び前記大径面を周方向に複数配し、周方向に離間している各前記係合凸面は、周方向に離間している他の前記係合凸面に対して軸方向に段違いに配設されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が軸からの半径が漸次縮径して成る縮径面と、比較的大径で軸方向に列設される凸部の外周が成す拡径面と、軸方向に向かって上記凸部に交番して凹設される凹部の底面が成す凹径面と、を有し、上記縮径面に対し、周方向に沿って上記拡径面と上記凹径面が連設され、上記凸部は、周方向に向かって連続的又は断続的に略弧状に延在し、上記拡径面側から上記縮径面側に向かって縮幅する縮幅部を有して構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が前記凸部が周方向に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が前記凸部が三角形状、台形状又はくさび状であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が前記凸部が菱形状であって、該菱形の対角線の内、一方の対角線が前記軸方向に平行な向きに配され、前記凹部は、前記凹径面の周方向中央部から周方向端部にかけて徐々に幅が広がることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が前記凸部が前記軸からの半径方向における突出量が周方向の中央部で最も大きく、周方向外方に向かって徐々に小さくなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が軸から前記縮径面までの長さが、軸から前記凸部までの長さ未満であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が軸から前記縮径面までの長さが、軸から前記凹径面までの長さ以下であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の接合構造は、前記鉄筋が前記拡径面を周方向に複数配し、周方向に離間する各上記拡径面は、他の上記拡径面に対して上記凸部の軸方向位置を段違いに配設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡易な構造によって、少ない作業負担で鉄筋同士の連結を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】鉄筋継手を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】第一の実施形態の鉄筋継手の径方向に対向する係合凸面を示す断面図である。
【
図5】鉄筋を示す図であって、(a)は平面図、(b)は平坦面側を示す正面図、(c)は凸部を示す側面図である。
【
図6】鉄筋継手に挿入するときの鉄筋の向きを示す図である。
【
図7】鉄筋継手に挿入されている鉄筋を示す平面図である。
【
図8】鉄筋継手に挿入されている鉄筋を示す図である。
【
図9】第二の実施形態の鉄筋継手を示す断面図である。
【
図10】第二の実施形態の鉄筋継手に対する鉄筋の配置例を示す図である。
【
図11】第三の実施形態の鉄筋継手を示し、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【
図12】継手本体部を示し、(a)は開口部を示す図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(b)のB-B断面図である。
【
図14】第三の実施形態の継手本体部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の鉄筋継手の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第一の実施形態の鉄筋継手1を示す図である。鉄筋継手1は、端部同士を対向させた一対の鉄筋2、2を連結させる継手であって、鉄筋2を囲繞し得る内周面を有する略筒形状を有する。鉄筋2は、外周面に複数の凸部21が形成されて成る。
【0027】
次に、鉄筋継手1の具体的な形状について説明する。
図2は第一の実施形態の鉄筋継手1を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図3は
図2(a)のA-A断面図である。鉄筋継手1は、両端が開口した筒状体であって、鉄筋2を軸方向に挿入可能な貫通孔を有する。即ち、鉄筋継手1の貫通孔は、鉄筋2を挿入し得る内径が設定され、その最大内径dは、鉄筋2の最大外径D(
図5(a)参照)よりも長く設定される。
【0028】
また、鉄筋継手1の内周面には、軸心からの半径が漸次縮径して軸方向に列設された係合凸部が成す係合凸面10と、比較的大径で係合凸面10に対して周方向に連設される大径面8が配設される。また、軸方向に向かって係合凸面10に交番して凹設される係合凹部の底面が成す係合凹面11が配設される。
【0029】
係合凸面10は、鉄筋継手1の内周面において、係合凸部10a、10bの内周によって成る。係合凸面10は、鉄筋継手1の内周の軸心を挟んで対向する二箇所に配設される。即ち、
図2(a)における鉄筋継手1の一方側(
図2(a)の略左側)及び他方側(
図2(b)の略右側)に配される。
【0030】
大径面8は、略円弧形状を有し、係合凸面10と同様に軸心を挟んで対向する二箇所に配されている。大径面8の半径は、軸心から係合凸面10までの長さよりも長く設定される。従って軸心を挟んで対向する大径面8間の長さは、上記の最大内径dに相当する。
【0031】
係合凸部は、鉄筋継手1の内周側に突出する突条形状を有し軸直角方向に対して傾斜した傾斜面を有する。即ち、傾斜向きが設定されており、
図3に示すように右ねじの螺旋に沿った傾斜面を有するものを第一係合凸部10aとし、左ねじの螺旋に沿った傾斜面を有するものを第二係合凸部10bとする。
また、係合凸部の位置によって傾斜の向きを異ならせて配設する。即ち、
図3に示すように軸方向の一端部から中央部に亘る第一範囲12に第一係合凸部10aを配し、他端部から中央部に亘る第二範囲14に第二係合凸部10bを配する。
【0032】
係合凹面11は、軸心からの長さ(半径)が、軸心から大径面8までの長さ(半径)に略相当するように設定される。即ち、係合凹面11と大径面8とは、略連続面を成すように連設される。なお、大径面8の半径が係合凹面11の半径よりも大きくなるように設定してもよい。
【0033】
また、
図4に示すように、鉄筋継手1の軸心を挟んで径方向に対向する係合凸面10において、一方の係合凸面10は、他方の係合凸面10に対して、係合凸部10a、10bの軸方向位置を段違いに配設する。即ち、一方側の係合凹面11には他方の係合凸面10が対向し、一方の係合凸面10には他方の係合凹面11が対向するように配設する。
勿論、径方向に対向する係合凸面10間において、係合凹面11同士を対向させ、係合凸面10同士を対向させるようにしてもよい。
【0034】
次に、鉄筋2について説明する。
図5は第一の実施形態の鉄筋2を示し、(a)は平面図、(b)は縮径面20側を示す正面図、(c)は拡径面22側を示す側面図である。鉄筋2は、軸からの半径が漸次縮径して成る縮径面20と、比較的大径で軸方向に列設される凸部21の外周が成す拡径面22と、軸方向に向かって凸部21に交番して凹設される凹部23の底面を成す凹径面24とを有する。
従って、縮径面20と、拡径面22及び凹径面24とは、周方向に向かって連設される。
【0035】
縮径面20は、軸からの長さが、軸から凸部21までの長さ未満で、且つ軸から凹径面24までの長さ以下とする。縮径面20は、略平面形状を成すように、軸心からの半径が周方向の中心部から端部にかけて漸次縮径する形状を有する。また、縮径面20は、周方向に沿って離間した複数箇所に形成される。具体的には、
図5に示すように180°位相が異なる二箇所、即ち、鉄筋2の軸心を挟んで相対する二箇所に形成される。
なお、縮径面20は、平面形状以外の曲面状、湾曲面状、波面形状等、適宜設定し得る。
【0036】
また、縮径面20は、鉄筋2を鉄筋継手1に挿入する際に各係合凸部10a、10bに接触しない長さを有する。即ち、各係合凸部10a、10bよりも径方向内側に位置するように、径方向の長さ等が設定される。
【0037】
凸部21は、略弧状に延在し、拡径面側から縮径面側に向かって縮幅する縮幅部を有している。即ち、
図5(a)に示す軸方向視において、径方向に突出する突出量が、周方向中央部で最大となり、周方向外方に向かって徐々に小さくなって周方向端部で最小となる。
【0038】
また、凸部21は、周方向に沿って傾斜した傾斜面を有する形状を有するものとし、ここでは正面視(突出方向に沿って見たとき)で略菱形状を有する。当該菱形は、一対の対角線の内、一方が軸方向に沿い、他方が周方向に沿うように設定される。また、軸方向に沿った長さ(幅)が、拡径面22の周方向中央部において最大となって、中央部から周方向外方に向かって徐々に狭まり周方向端部で最小となる。なお周方向端部において、凸部21の半径は縮径面20の半径に相当する。
【0039】
拡径面22は、周方向に沿って二つの縮径面20の間に配される。従って周方向に180°位相が異なる二箇所、即ち、鉄筋2の外周における径方向に相対する二箇所に形成される。従って、凸部21は、周方向に沿って断続的に存する。
また、軸方向視において、鉄筋2の軸心を挟んで相対する拡径面22の中央部間の長さが鉄筋2の最大外径Dに相当する。
【0040】
凹部23は、周方向中央部で最も狭く、周方向外方に向かって徐々に拡がる幅形状を有する。
凹径面24は、軸からの半径が、縮径面20の周方向端部における半径に相当するように設定する。なお、凹径面24は、少なくとも、鉄筋継手1の係合凸部10a、10bに干渉しない半径を有していれば、縮径面20に対し凹設された形状であってもよく、また縮径面20に対し凸設された形状であってもよい。
【0041】
また、鉄筋2の軸心を挟んで径方向に対向する拡径面22において、一方の拡径面22は、他方の拡径面22に対して、凸部21の軸方向位置を段違いに配設する。即ち、
図5(b)に示すように一方の拡径面22の凸部21には他方側の凹部23が対向し、一方側の凹部23には他方の拡径面22の凸部21が対向するように配設される。
勿論、径方向に対向する拡径面22間において、凸部21の軸方向位置が一致するように配設してもよいことは言うまでもない。
【0042】
また、凸部21は、鉄筋継手1の第一係合凸部10a及び第二係合凸部10bに干渉し得る突出長さを有する。従って、凸部21間に、第一係合凸部10a、第二係合凸部10bが進入し得、鉄筋継手1と鉄筋2とが軸方向に係合可能となる。即ち、凸部21が略菱形状であるため、凹部23は、
図5(c)に示すように、右回りに旋回する第一螺旋溝23a及び左回りに旋回する第二螺旋溝23bの二種類の螺旋溝を重複させた形状となり、結果、凸部21間に右ねじに沿って傾斜した第一係合凸部10a及び左ねじに沿って傾斜した第二係合凸部10bの両係合凸部が係合し得る。
【0043】
鉄筋継手1による二本の鉄筋2、2の連結方法について説明する。まず、鉄筋2を鉄筋継手1の開口1aを通して両端にそれぞれ挿入する。その際、鉄筋継手1は、
図6に示すように鉄筋2の縮径面20に係合凸面10を対向させた向きとする。これにより鉄筋2が軸方向に沿って鉄筋継手1内に挿入可能となる。即ち、
図7に示す軸方向視において、各係合凸部10a、10bが鉄筋2の縮径面20に非接触且つ鉄筋継手1の最大内径dが鉄筋2の最大外径Dより大きいため、鉄筋2が鉄筋継手1に接触せずに挿入し得る。
【0044】
鉄筋継手1の両端から挿入された鉄筋2は、
図8に示すように、鉄筋継手1の一方側(
図8の上側)の開口1aを通して挿入された鉄筋2が第一範囲12に配置され、鉄筋継手1の他方側(
図8の下側)の開口1aを通して挿入された鉄筋2が第二範囲14に配置される。
【0045】
鉄筋2、2を挿入した後、鉄筋継手1の軸方向中央部に向かって鉄筋2が螺進するように、鉄筋継手1を回転させる。即ち、鉄筋継手1を鉄筋2に対して右方向に相対回転させる。これにより、鉄筋継手1を鉄筋2に対して軸方向の相対変位を規制した状態で固定し得る。
【0046】
具体的には、鉄筋継手1が回転すると、鉄筋継手1と第一領域12側に位置する鉄筋2との間で、係合凹面11に凸部21が進入すると共に、凹部23に第一係合凸部10aが進入する。また、鉄筋継手1と第二領域14側に位置する鉄筋2との間で、係合凹面11に凸部21が進入すると共に、凹部23に第二係合凸部10bが進入する。
【0047】
また、凸部21が周方向端部で幅が最小となっているので、凸部21と係合凹面11との軸方向位置がずれていても、係合凹面11に容易に進入可能となる。また、凸部21の端部が係合凹面11に進入することで、軸方向位置のずれを補正するように、鉄筋継手1が鉄筋2に対して軸方向に変位する。結果、凸部21全体が係合凹面11に進入する。
【0048】
そして、鉄筋継手1の回転に伴って、鉄筋2は、第一係合凸部10aの傾斜、或いは第二係合凸部10bの傾斜に沿うように、鉄筋継手1に対して軸方向に徐々に相対変位する。即ち、鉄筋継手1の右方向の回転によって、第一領域12内に位置する一方の鉄筋2は、他方側に向かって変位し、第二領域14側に位置する他方の鉄筋2は、一方側に向かって変位する。
【0049】
従って、二つの鉄筋2、2は、鉄筋継手1の回転によって互いに接近する向きに移動し、
図1に示すように鉄筋2、2同士が当接し得る。これにより鉄筋2、2の軸方向の移動が規制されて鉄筋継手1の相対回転が規制される。また、両鉄筋2の拡径面22が、係合凸面10に係合して鉄筋2と鉄筋継手1とは、軸方向の相対変位不可の状態となる。これによって、鉄筋継手1による二本の鉄筋2、2の連結が完了する。
【0050】
以上、説明したように、外周面にリード方向が異なる二種類の螺旋溝を重複形成した鉄筋と、内周面に第一係合凸部及び第二係合凸部を有する鉄筋継手を設け、鉄筋継手の両端にそれぞれ鉄筋を挿入して鉄筋継手を回転させるだけで二本の鉄筋を連結できるため、鉄筋同士の連結が容易となって作業負担を低減して作業効率を向上させることができる。
【0051】
また、鉄筋継手の回転だけで鉄筋同士の連結を行うことができるので、モルタル等の運搬や充填等の作業を省くことができ、作業時間が短縮して作業効率を向上させることができる。また、二本の鉄筋は、互いに鉄筋継手に螺合されるため、両鉄筋の軸心を略一致させた状態で連結され、この点においても鉄筋同士の位置合わせ作業が容易となって作業効率を向上させることができる。
【0052】
また、凸部21は、縮幅した形状を有するので、凸部21と係合凹面11との軸方向位置がずれていても、凸部21の前端が係合凹面11に進入し易くなって、結果、凸部21を係合凹面11に容易に進入させることができる。更に、凸部21の係合凹面11への進入に伴い、軸方向位置のずれを補正するように、鉄筋継手1が鉄筋2に対して軸方向の適当な位置に変位させることができる。
【0053】
次に第二の実施形態の鉄筋継手1について説明する。ここでは第一の実施形態に係る鉄筋継手1との相違点を説明し、同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。なお第二の実施形態の鉄筋継手1は、第一の実施形態の鉄筋継手1に対して、第一領域12及び第二領域14のそれぞれにおいて、第一係合凸部10a及び第二係合凸部10bを隣接させて配し、第一係合凸部10a及び第二係合凸部10bの間に係止部30を形成する点が第一の実施形態と相違する。
【0054】
図9は第二の実施形態の鉄筋継手1を示す断面図である。第二の実施形態に係る鉄筋継手1は、
図9に示すように、内周面に第一係合凸部10aと第二係合凸部10bを一つずつ交互に配する。また鉄筋2に対し、鉄筋継手1を右方向に相対回転させたときに凸部21が進入し且つ嵌合し得るように、第一係合凸部10aと第二係合凸部10bとの間の係止部30(間隙)の大きさを設定する。
具体的には、
図9に示すように、第一係合凸部10aと第二係合凸部10bとは、互いに傾斜角が異なるため、第一係合凸部10aと第二係合凸部10bとの間隙は、周方向に沿って漸次変化する。従って、鉄筋2の凸部21が、
図9の左側から右側に相対移動し得るように、第一係合凸部10aと第二係合凸部10bとの間隙を設定する。
【0055】
即ち、第一係合凸部10aと第二係合凸部10b間に形成される間隙の内、
図9において左側から右側に向かって狭まる間隙については、左側が凸部21を進入させ得る幅で且つ右側が凸部21の通過を規制する幅にして係止部30を形成する。なお、係止部30は、各領域12、14で少なくとも一つ以上あればよいが、複数設けることが好ましい。
【0056】
係止部30以外の間隙は、凸部21の相対移動を妨げない幅に設定する。即ち、
図9において左側から右側に向かって漸次広がる間隙は、凸部21が通過可能な間隔に設定する。
【0057】
このような鉄筋継手1によれば、鉄筋2を挿入させた後、鉄筋継手1を約四分の一回転(周方向に約90°回転)させて係止部30に凸部21を嵌合することにより、鉄筋継手1に対して鉄筋2を軸方向に相対変位不可に固定することができる。なお、係止部30に凸部21を嵌合させるための回転角は、係止部30を構成する第一係合凸部10aと第二係合凸部10bとのリード角に依るものであるため、約四分の一回転に限定されるものではなく、適宜設定し得るものである。
【0058】
以上、説明したように、鉄筋継手1の内周面の第一領域12及び第二領域14において、第一係合凸部10aと第二係合凸部10bとで係止部30を形成し、係止部30に嵌合した凸部21の周方向及び軸方向の位置を規制することで、鉄筋継手1と鉄筋2とを固定することができる。従って鉄筋継手1の両端それぞれに鉄筋2を挿入し、鉄筋継手1を回転させることで二本の鉄筋2を連結させることができる。
【0059】
また、係止部30が凸部21の通過を規制し、鉄筋2に対する鉄筋継手1の相対回転が規制されるため、係止部30に凸部21が嵌合した状態を容易に認識することができる。また、係止部30による許容される凸部21の進入方向が、鉄筋継手1に鉄筋2を連結させるための回転向きとなるので、回転操作を行うときの向きを容易に理解させることができる。
【0060】
また、凸部21が係止部30に嵌合することで、鉄筋継手1と鉄筋2とが連結されるので、第一領域12、第二領域14に係止部30を複数設ければ、鉄筋継手1に対する鉄筋2の固定位置を任意に設定することが出来る。即ち、
図10(a)に示すように鉄筋継手1に二本の鉄筋2を挿入しており、一方の鉄筋2を第一領域12の中間部で固定し、他方の鉄筋2を第二領域14から第一領域12まで挿入した位置で固定することが可能である。また、
図10(b)に示すように一方の鉄筋2を第一領域12の奥部で固定し、他方の鉄筋2を第二領域14の中間部で固定することも可能である。このように各鉄筋2の固定位置を適宜設定することができる。
【0061】
なお、第二の実施形態において、第一係合凸部10a、第二係合凸部10bの配置は、特に限定されるものではなく、例えば第一係合凸部10aを二つ連続させて並べ、また第二係合凸部10bを二つ連続させて並べて第一係合凸部10a及び第二係合凸部10bを二つずつ交互に配設してもよい。また、第一係合凸部10a、第二係合凸部10bを連続して並べる際の数は三つ以上でもよく適宜設定し得る。
【0062】
次に第三の実施形態の鉄筋継手について説明する。ここでは第一の実施形態の鉄筋継手1との相違点を説明し、同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。なお第三の実施形態においては、内周面略全域が雌ねじ部となっている筒形状の継手本体部62と、継手本体部62に対して別体であって鉄筋2の回転を規制する回転規制部64とで、鉄筋継手60を構成する点が第一の実施形態と相違する。
【0063】
図11は第三の実施形態の鉄筋継手60を示し、(a)は正面図、(b)は断面図である。
図12は第三の実施形態の継手本体部62を示し、(a)は開口部66を示す図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(b)のB-B断面図である。
【0064】
鉄筋継手60は、継手本体部62と回転規制部64とを有する。継手本体部62は、筒形状を有し、内周面に右ねじの雌ねじ螺旋条70を配している。なお、雌ねじ螺旋条70は、第一係合凸部10aを周方向に延伸させた場合の形状に相当する。
また継手本体部62には、外周を開口させた矩形状の開口部66が形成される。また継手本体部62の内周部において、軸方向の略中央部に径方向内側に突出し、固定規制部64を固定するための固定部68を有する。
【0065】
回転規制部64は、略矩形状を有し、開口部66塞ぐように継手本体部62に配置されるものである。ここで、
図13は回転規制部64を示す図であり、回転規制部64の内周面側(継手本体部62の内周面に対向する面)には、第二係合凸部10bを有する。
【0066】
開口部66は、軸方向の長さが継手本体部62の全長の半分程度、周方向の長さが継手本体部62の周長の1/4程度等として設定する。また開口部66は、継手本体部62の軸方向中央部に形成される。従って、開口部66を通して露出される継手本体部62の内部は、
図12(a)に示すように、中央の固定部68を跨いで各端部から挿入される鉄筋2を受容する部分が露出する。
【0067】
継手本体部62と回転規制部64との間には、回転規制部64を継手本体部62に固定するための締結手段を構成してもよい。具体的に継手本体部62には、固定部68において径方向にタップ穴72を形成し、回転規制部64には、タップ穴72に対抗する位置に貫通孔76を形成する。そして、継手本体部62と回転規制部64とを嵌合させタップ穴72と貫通孔76とを連通させ、ボルト78を貫通孔76に挿入してさらに奥側のタップ穴72に螺合させることで締結手段を構成してもよい。
【0068】
このような鉄筋継手60によれば、継手本体部62の両端に各々鉄筋2を螺合させ、最奥に位置させる。次に回転規制部64を継手本体部62に締結することで、鉄筋継手60に鉄筋2を固定させることができる。即ち、鉄筋2は、継手本体部62の雌ねじ螺旋条70に螺合すると共に、一部分で回転規制部64の第二係合凸部10bに螺合する。そのため、鉄筋2を回転させたとき、鉄筋2には、雌ねじ螺旋条70の右ねじの螺旋に沿って相対変位しようとする部分と、第二係合凸部10bの左ねじの螺旋に沿って相対変位しようとする部分とが同時に発生し、結果、鉄筋2の回転が規制される。従って鉄筋継手60に鉄筋2を螺合させるだけで、二つの鉄筋2を強固に連結することができる。
また開口部66を通して鉄筋の挿通位置を視認することができ、鉄筋継手に対して鉄筋が最奥部まで挿入したことを確認することができる。
【0069】
なお、第三の実施形態においては、継手本体部62の内周面に雌ねじ螺旋条70を設けたが、内周面の形状はこれに限定されるものではなく、第一の実施の形態の鉄筋継手1と同様にして、周方向に係合凸面10と平面とを交互に配した形状であってもよい。ここで、
図14は第三の実施形態の鉄筋継手60の継手本体部62の他の例を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図である。係合凸面10を設ける場合、例えば、係合凸面10には第一係合凸部10aを軸方向に沿って配列させてもよい。また係合凸面10は、鉄筋継手60の軸心を挟んで対向する二箇所に設けることができる。また、径方向に対向する係合凸面10の内、一方に開口部66を形成する。即ち、回転規制部64を固定したときに、第二係合凸部10bが係合凸面10の第一係合凸部10aと軸方向に並列するように開口部66の位置が設定される。このようにすれば、継手本体部62に鉄筋2を回転させることなく挿入できる。
【0070】
また、上述した各実施形態においては、鉄筋継手に第一係合凸部及び/又は第二係合凸部を設けているが、
図15に示すように凸部21と同様の略菱形状の係合凸部80を軸方向に配した係合凸面10を形成するようにしてもよい。その場合、隣り合う係合凸部80の間隔は、少なくとも凸部21の周方向中央部を通過できない大きさ、即ち周方向中央部において凸部21の最大幅よりも狭くなるように設定する。
【符号の説明】
【0071】
1…鉄筋継手、2…鉄筋、8…大径面、10…係合凸面、10a…第一係合凸部、10b…第二係合凸部、11…係合凹面、12…第一範囲、14…第二範囲、20…縮径面、21…凸部、22…拡径面、23…凹部、23a…第一螺旋溝、23b…第二螺旋溝、24…凹径面、30…係止部、60…鉄筋継手、62…継手本体部、64…回転規制部、66…開口部、68…固定部、70…雌ねじ螺旋条、72…タップ穴、76…貫通孔、78…ボルト。