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特許7479691燃料電池システム及び燃料電池の発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池の発電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04303 20160101AFI20240430BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240430BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240430BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240430BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240430BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240430BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20240430BHJP
【FI】
H01M8/04303
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/04228
H01M8/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020208053
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022094991
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輝
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-105533(JP,A)
【文献】特開2013-105534(JP,A)
【文献】特開2005-339845(JP,A)
【文献】特開2007-109569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる燃料電池と、
前記燃料電池の後段に設けられるDCDCコンバータと、
前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を調整するインジェクタと、
前記燃料電池への前記酸化剤ガスの供給量を調整するモータを有するエアコンプレッサと、
前記DCDCコンバータ、前記インジェクタ、及び前記エアコンプレッサの前記モータの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記モータを最低回転数で駆動させている場合における前記燃料電池に供給される単位時間あたりの酸素の量である単位時間酸素供給量と、前記燃料電池の電解質膜を透過する単位時間あたりの水素の量と反応する酸素の量である単位時間反応酸素量と、から比を求め、
前記比から前記単位時間のうちの第1の期間と、前記単位時間のうちの前記第1の期間以外の第2の期間を取得し、
前記DCDCコンバータを停止させている場合における前記燃料電池の発電停止時、前記燃料電池内の前記燃料ガスの圧力が一定になるように、前記インジェクタの動作を制御するとともに、前記第1の期間において前記モータを最低回転数で駆動させる処理と、前記第2の期間において前記モータを停止させる処理とを交互に繰り返し行う
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記DCDCコンバータを停止させている場合における前記燃料電池の発電停止時、前記第2の期間において前記燃料電池に前記燃料ガスが供給されないように前記インジェクタの動作を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記DCDCコンバータの後段に設けられる蓄電装置を備え、
前記DCDCコンバータは、
インダクタと、
スイッチと、
アノード端子が前記インダクタを介して前記燃料電池の正極端子に接続されるとともに前記スイッチを介して前記燃料電池の負極端子に接続され、カソード端子が前記蓄電装置の正極端子に接続されるダイオードと、
一方端子が前記ダイオードのカソード端子及び前記蓄電装置の正極端子に接続され、他方端子が前記燃料電池の負極端子及び前記蓄電装置の負極端子に接続されるコンデンサと、
を備える
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記DCDCコンバータを駆動させている場合における前記燃料電池の発電時、前記蓄電装置の電圧または充電率に応じて、前記燃料電池の出力電力が段階的に変化するように、前記エアコンプレッサのモータの動作を制御する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる燃料電池と、前記燃料電池の後段に設けられるDCDCコンバータと、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を調整するインジェクタと、前記燃料電池への前記酸化剤ガスの供給量を調整するモータを有するエアコンプレッサと、前記DCDCコンバータ、前記インジェクタ、及び前記エアコンプレッサの前記モータの動作を制御する制御部とを備える燃料電池システムにおける前記燃料電池の発電方法であって、
前記制御部は、
前記モータを最低回転数で駆動させている場合における前記燃料電池に供給される単位時間あたりの酸素の量である単位時間酸素供給量と、前記燃料電池の電解質膜を透過する単位時間あたりの水素の量と反応する酸素の量である単位時間反応酸素量と、から比を求め、
前記比から前記単位時間のうちの第1の期間と、前記単位時間のうちの前記第1の期間以外の第2の期間を取得し、
前記DCDCコンバータを停止させている場合における前記燃料電池の発電停止時、前記燃料電池内の前記燃料ガスの圧力が一定になるように、前記インジェクタの動作を制御するとともに、前記第1の期間において前記モータを最低回転数で駆動させる処理と、前記第2の期間において前記モータを停止させる処理とを交互に繰り返し行う
ことを特徴とする燃料電池の発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、燃料電池の発電停止時、図4に示すように、燃料電池の電圧が上限値以上になると、燃料電池への燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を停止し、燃料電池の電圧が下限値以下になると、燃料電池への燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を再開するものがある。なお、図4に示す燃料電池の電圧の変動例では、燃料電池の電圧が上限値を超えないように、一時的に、燃料電池から負荷に電流を流しているものとする。関連する技術として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-048517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記燃料電池システムでは、上限値と下限値との差が比較的大きい場合、燃料電池の電圧の変動幅の増加による燃料電池の劣化が懸念される。
【0005】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、燃料電池の発電停止時に、燃料電池の電圧の変動幅を抑えることが可能な燃料電池システム及び燃料電池の発電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる燃料電池と、前記燃料電池の後段に設けられるDCDCコンバータと、前記燃料電池への前記燃料ガスの供給量を調整するインジェクタと、前記燃料電池への前記酸化剤ガスの供給量を調整するモータを有するエアコンプレッサと、前記DCDCコンバータ、前記インジェクタ、及び前記エアコンプレッサの前記モータの動作を制御する制御部とを備える。
【0007】
前記制御部は、前記モータを最低回転数で駆動させている場合における前記燃料電池に供給される単位時間あたりの酸素の量である単位時間酸素供給量と、前記燃料電池の電解質膜を透過する単位時間あたりの水素の量と反応する酸素の量である単位時間反応酸素量と、から比を求め、前記比から前記単位時間のうちの第1の期間と、前記単位時間のうちの前記第1の期間以外の第2の期間を取得し、前記DCDCコンバータを停止させている場合における前記燃料電池の発電停止時、前記燃料電池内の前記燃料ガスの圧力が一定になるように、前記インジェクタの動作を制御するとともに、前記第1の期間において前記モータを最低回転数で駆動させる処理と、前記第2の期間において前記モータを停止させる処理とを交互に繰り返し行う。
【0008】
これにより、燃料電池の電解質膜を透過する単位時間あたりの水素の量が比較的少ない場合、第1の期間を比較的短くすることで、第1の期間における燃料電池の電圧の上昇を抑えることができる。また、第2の期間において電解質膜を介して水素極に透過する酸素の燃料を抑えることができるため、第2の期間における燃料電池の電圧の低下を抑えることができる。そのため、DCDCコンバータを停止させている場合における燃料電池の発電停止時に、燃料電池の電圧の変動幅を抑えることができる。
【0009】
また、前記制御部は、前記DCDCコンバータを停止させている場合における前記燃料電池の発電停止時、前記第2の期間において前記燃料電池に前記燃料ガスが供給されないように前記インジェクタの動作を制御するように構成してもよい。
【0010】
これにより、燃料ガスの消費量を抑えることができるため、燃料電池システムから供給される電力により走行する車両の燃費を向上させることができる。
【0011】
また、上記燃料電池システムは、前記DCDCコンバータの後段に設けられる蓄電装置を備え、前記DCDCコンバータは、インダクタと、スイッチと、アノード端子が前記インダクタを介して前記燃料電池の正極端子に接続されるとともに前記スイッチを介して前記燃料電池の負極端子に接続され、カソード端子が前記蓄電装置の正極端子に接続されるダイオードと、一方端子が前記ダイオードのカソード端子及び前記蓄電装置の正極端子に接続され、他方端子が前記燃料電池の負極端子及び前記蓄電装置の負極端子に接続されるコンデンサとを備えるように構成してもよい。
【0012】
これにより、スイッチが停止しているときで、かつ、燃料電池の電圧が蓄電装置の電圧より高い場合、燃料電池からダイオードを介して蓄電装置に電流が流れて燃料電池の電圧が低下するため、燃料電池の電圧が比較的高くなることで燃料電池が劣化することを抑制することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記DCDCコンバータを駆動させている場合における前記燃料電池の発電時、前記蓄電装置の電圧または充電率に応じて、前記燃料電池の出力電力が段階的に変化するように、前記エアコンプレッサのモータの動作を制御するように構成してもよい。
【0014】
また、本発明に係る一つの形態である燃料電池の発電方法は、上記燃料電池システムにおける前記燃料電池の発電方法であって、前記制御部は、前記モータを最低回転数で駆動させている場合における前記燃料電池に供給される単位時間あたりの酸素の量である単位時間酸素供給量と、前記燃料電池の電解質膜を透過する単位時間あたりの水素の量と反応する酸素の量である単位時間反応酸素量と、から比を求め、前記比から前記単位時間のうちの第1の期間と、前記単位時間のうちの前記第1の期間以外の第2の期間を取得し、前記DCDCコンバータを停止させている場合における前記燃料電池の発電停止時、前記燃料電池内の前記燃料ガスの圧力が一定になるように、前記インジェクタの動作を制御するとともに、前記第1の期間において前記モータを最低回転数で駆動させる処理と、前記第2の期間において前記モータを停止させる処理とを交互に繰り返し行う。
【0015】
これにより、第1の期間における燃料電池の電圧の上昇を抑えることができ、第2の期間における燃料電池の電圧の低下を抑えることができるため、燃料電池から負荷に電流が流れていない場合における燃料電池の発電停止時、燃料電池の電圧の変動幅を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃料電池の発電停止時において、燃料電池の電圧の変動幅を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
図2】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】実施形態の燃料電池システムにおける燃料電池の電圧の変動例を示す図である。
図4】既存の燃料電池システムにおける燃料電池の電圧の変動例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0019】
図1は、実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0020】
図1に示す燃料電池システム1は、フォークリフトなどの産業車両や自動車などの車両Veに搭載され、負荷Loなどに電力を供給する。なお、負荷Loは、車両Veに搭載される走行用モータを駆動するインバータや電装部品などである。
【0021】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、水素タンクHTと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、電圧計SV1、SV2と、電流計SIと、記憶部2と、制御部3とを備える。
【0022】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガス)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0023】
水素タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。水素タンクHTに貯蔵された燃料ガスはインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0024】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される単位時間Tあたりの燃料ガスの量(流量)を調整する。
【0025】
エアコンプレッサACPは、酸化剤ガスをエア調圧弁ARVを介して燃料電池FCに供給する。例えば、エアコンプレッサACPのモータを駆動するための電圧が大きくなるほど、モータの回転数が大きくなり、エアコンプレッサACPから出力される単位時間Tあたりの酸化剤ガスの量(流量)が大きくなるものとする。また、エアコンプレッサACPのモータを駆動するための電圧が小さくなるほど、モータの回転数が小さくなり、エアコンプレッサACPから出力される単位時間Tあたりの酸化剤ガスの量が小さくなるものとする。
【0026】
エア調圧弁ARVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力を調整する。
【0027】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCと蓄電装置Bとの間に設けられ、燃料電池FCの電圧を上昇させるとともに燃料電池FCから出力される電力を蓄電装置Bに供給する。
【0028】
また、DCDCコンバータCNVは、インダクタLと、スイッチSW(MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)など)と、ダイオードDと、コンデンサCとを備える。すなわち、ダイオードDのアノード端子はインダクタLを介して燃料電池FCの正極端子に接続されているとともにスイッチSWを介して燃料電池FCの負極端子に接続されている。また、ダイオードDのカソード端子は蓄電装置Bの正極端子に接続されている。また、コンデンサCの一方端子はダイオードDのカソード端子及び蓄電装置Bの正極端子に接続され、コンデンサCの他方端子は燃料電池FCの負極端子及び蓄電装置Bの負極端子に接続されている。なお、スイッチSWがオフ(開状態)である場合で、かつ、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Bの電圧より高い場合、燃料電池FCからダイオードDを介して蓄電装置Bに電流が流れるものとする。
【0029】
蓄電装置Bは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVの後段に設けられる。また、蓄電装置Bは、負荷Loに電力を供給する。
【0030】
電圧計SV1は、燃料電池FCの電圧を計測し、その計測した電圧を制御部3に送る。
【0031】
電圧計SV2は、蓄電装置Bの電圧を計測し、その計測した電圧を制御部3に送る。
【0032】
電流計SIは、蓄電装置Bに流れる電流を計測し、その計測した電流を制御部3に送る。
【0033】
記憶部2は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などのメモリにより構成される。
【0034】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成され、インジェクタINJ、エア調圧弁ARV、DCDCコンバータCNV、及びエアコンプレッサACPのモータの動作を制御する。
【0035】
<インジェクタINJの動作制御>
制御部3は、燃料電池FCの発電時、燃料電池FC内の燃料ガスの圧力が一定になるように、インジェクタINJの動作を制御する。
【0036】
例えば、制御部3は、燃料電池FCの発電時、燃料電池FCの水素極(アノード)の圧力が所定圧力以上になると、水素タンクHTから燃料電池FCへの燃料ガスの供給が停止するようにインジェクタINJの動作を制御し、燃料電池FCの水素極の圧力が所定圧力より低くなると、水素タンクHTから燃料電池FCへの燃料ガスの供給が再開するようにインジェクタINJの動作を制御する。
【0037】
<エア調圧弁ARVの動作制御>
制御部3は、燃料電池FCの発電時、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力が一定になるようにエア調圧弁ARVの動作を制御する。これにより、エアコンプレッサACPから燃料電池FCの酸素極に供給される酸化剤ガスの流量の変動を抑制することができる。
【0038】
<蓄電装置Bの満充電状態判断>
制御部3は、蓄電装置Bの電圧(電圧計SV2により計測される電圧)が電圧閾値以上である場合、または、蓄電装置Bの充電率が充電率閾値以上である場合、蓄電装置Bが満充電状態であると判断し、蓄電装置Bの電圧が電圧閾値より小さい場合、または、蓄電装置Bの充電率が充電率閾値より小さい場合、蓄電装置Bが満充電状態でないと判断する。なお、制御部3は、電圧計SV2により計測される電圧や電流計SIにより計測される電流の積算値により蓄電装置Bの充電率を求めるものとする。
【0039】
<蓄電装置Bが満充電状態ではない場合のDCDCコンバータCNVの動作制御>
制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態ではないと判断する場合、蓄電装置Bの電圧または充電率(蓄電装置Bの満充電容量に対する現在の充電容量の割合)に応じて、DCDCコンバータCNVを駆動させる。
【0040】
例えば、制御部3は、蓄電装置Bの電圧または充電率が大きくなるほど、DCDCコンバータCNVに送る目標出力電圧を大きくし、蓄電装置Bの電圧または充電率が小さくなるほど、DCDCコンバータCNVに送る目標出力電圧を小さくする。DCDCコンバータCNVは、目標出力電圧が大きくなるほど、スイッチSWのオン、オフを制御する制御信号のデューティ比を大きくすることでDCDCコンバータCNVの出力電圧を大きくする。また、DCDCコンバータCNVは、目標出力電圧が小さくなるほど、制御信号のデューティ比を小さくすることでDCDCコンバータCNVの出力電圧を小さくする。
【0041】
なお、制御部3は、燃料電池FCの電圧が比較的高い場合に燃料電池FCから蓄電装置Bに電流を引くことで燃料電池FCの電圧を低下させる高電位回避処理を行う。具体的には、制御部3は、燃料電池FCの電圧が上限値以上になると、燃料電池FCからDCDCコンバータCNVを介して蓄電装置Bに流れる電流が増加するようにDCDCコンバータCNVの動作を制御し、燃料電池FCの電圧を上限値より小さい電圧に変化させる。これにより、燃料電池FCの電圧が上限値を超える状態を低減することができるため、燃料電池FCの電圧が比較的高くなることで燃料電池FCが劣化することを抑制することができる。
【0042】
<蓄電装置Bが満充電状態ではない場合のエアコンプレッサACPのモータの動作制御>
制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態ではないと判断する場合、蓄電装置Bを充電するために必要な電力が燃料電池FCから出力されるように、エアコンプレッサACPのモータの動作を制御する。
【0043】
例えば、制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態ではないと判断する場合、すなわち、DCDCコンバータCNVを駆動させている場合における燃料電池FCの発電時、蓄電装置Bの電圧または充電率に応じて、燃料電池FCから出力される電力が段階的に変化するように、エアコンプレッサACPのモータの動作を制御する。すなわち、制御部3は、蓄電装置Bの電圧または充電率が閾値th1以下である場合、燃料電池FCから電力P3が出力されるように、エアコンプレッサACPのモータの動作を制御する。また、制御部3は、蓄電装置Bの電圧または充電率が閾値th1より大きく、閾値th2以下である場合、燃料電池FCから電力P2が出力されるように、エアコンプレッサACPのモータの動作を制御する。また、制御部3は、蓄電装置Bの電圧または充電率が閾値th2より大きい場合、燃料電池FCから電力P1が出力されるように、エアコンプレッサACPのモータの動作を制御する。なお、閾値th1<閾値th2とする。また、電力P1<電力P2<電力P3とする。
【0044】
<蓄電装置Bが満充電状態である場合のDCDCコンバータCNVの動作制御>
制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態であると判断する場合、DCDCコンバータCNVを停止させる。すなわち、制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態であると判断する場合、DCDCコンバータCNVのスイッチSWを常時オフさせる。DCDCコンバータCNVが停止している場合で、かつ、蓄電装置Bの電圧が燃料電池FCの電圧より大きい場合では、燃料電池FCからDCDCコンバータCNVのダイオードを介して蓄電装置Bに電流が流れない。
【0045】
<蓄電装置Bが満充電状態である場合のエアコンプレッサACPのモータの動作制御>
制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態であると判断する場合、燃料電池FCの電圧(電圧計SV1により計測される電圧)が上限値と下限値との間で一定になるようにエアコンプレッサACPのモータの動作を制御することで、燃料電池FCを発電させる。
【0046】
例えば、制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態であると判断する場合、すなわち、DCDCコンバータCNVを停止させている場合において、燃料電池FCの発電を停止する。なお、燃料電池FCによる発電を停止とは、燃料電池FCの発電量が完全にゼロになる場合だけでなく、燃料電池FCによる発電を抑制し、燃料電池FCの発電量が限りなくゼロに近くなる場合も含まれる。その時、期間T1(第1の期間)においてエアコンプレッサACPのモータを最低回転数により動作させる処理と、期間T2(第2の期間)においてエアコンプレッサACPのモータを停止させる処理とを交互に繰り返し行う。なお、最低回転数とは、エアコンプレッサACPから最も小さい流量の酸化ガスが出力されるときのエアコンプレッサACPのモータの回転数とする。
【0047】
なお、制御部3は、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、期間T1において水素タンクHTから燃料電池FCへ燃料ガスが供給され、期間T2において水素タンクHTから燃料電池FCへ燃料ガスが供給されないようにインジェクタINJの動作を制御するように構成してもよい。このように構成する場合は、燃料電池FC内の燃料ガスの圧力が一定になるように、インジェクタINJの動作を制御する場合に比べて、燃料ガスの消費量を低減することができるため、車両Veの燃費を向上させることができる。
【0048】
<期間T1、T2の取得例>
制御部3は、エアコンプレッサACPのモータを最低回転数で駆動させている場合において、エアコンプレッサACPから燃料電池FCに供給される単位時間Tあたりの酸素の量Vo1(すなわち、単位時間酸素供給量)と、燃料電池FCにおいて水素極から電解質膜を介して酸素極に透過(クロスリーク)する単位時間Tあたりの水素の量と反応する酸素の量Vo2(すなわち、単位時間反応酸素量)との比を求め、その比から単位時間Tのうちの期間T1と単位時間Tのうちの期間T1以外の期間T2を取得する。
【0049】
すなわち、まず、制御部3は、下記式1を計算することにより、酸素の量Vo1を求める。なお、エアコンプレッサACPから燃料電池FCに供給される単位時間Tあたりの酸化剤ガスの量[mol]:その酸化剤ガスに含まれる酸素の量[mol]=5:1とする。
【0050】
酸素の量Vo1=エアコンプレッサACPから燃料電池FCに供給される単位時間Tあたりの酸化剤ガスの量/5 ・・・式1
【0051】
次に、制御部3は、下記式2を計算することにより、酸素の量Vo2を求める。なお、燃料電池FCにおいて水素極から電解質膜を介して酸素極に透過する単位時間Tあたりの水素の量[mol]:その水素の量に反応する酸素の量[mol]=2:1とする。
【0052】
酸素の量Vo2=燃料電池FCにおいて水素極から電解質膜を介して酸素極に透過する単位時間Tあたりの水素の量/2 ・・・式2
【0053】
次に、制御部3は、下記式3を計算することにより、期間T1を求める。
【0054】
期間T1=(酸素の量Vo2/酸素の量Vo1)×単位時間T ・・・式3
【0055】
そして、制御部3は、下記式4を計算することにより、期間T2を求める。
【0056】
期間T2=単位時間T-期間T1 ・・・式4
【0057】
なお、制御部3は、記憶部2から期間T1及び期間T2を読み出すことにより、期間T1及び期間T2を取得するように構成してもよい。この場合、期間T1及び期間T2は、実験やシミュレーションなどにより予め求め、記憶部2に記憶させておくものとする。
【0058】
図2は、制御部3の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図2に示すフローチャートは、制御部3の動作周期毎に行われるものとする。
【0059】
まず、制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態ではないと判断する場合、すなわち、DCDCコンバータCNVを駆動させている場合における燃料電池FCの発電時(ステップS1:No)、蓄電装置Bの電圧または充電率に応じて、インジェクタINJ、エア調圧弁ARV、及びエアコンプレッサACPのモータの動作を制御することで燃料電池FCを発電させるとともに、DCDCコンバータCNVの動作を制御することで燃料電池FCの電圧を上昇させて、蓄電装置Bを充電させる(ステップS2)。なお、制御部3は、ステップS2において、負荷Loから要求される電力も考慮して、インジェクタINJ、エア調圧弁ARV、エアコンプレッサACPのモータ、及びDCDCコンバータCNVの動作を制御するように構成してもよい。
【0060】
一方、制御部3は、蓄電装置Bが満充電状態であると判断する場合、すなわち、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時(ステップS1:Yes)、期間T1、T2を取得する(ステップS3)。
【0061】
次に、制御部3は、期間T1が経過するまで、エアコンプレッサACPのモータを最低回転数で駆動させる(ステップS4、ステップS5:No)。
【0062】
次に、制御部3は、期間T1が経過すると(ステップS5:Yes)、期間T2が経過するまで、エアコンプレッサACPのモータを停止させる(ステップS6、ステップS7:No)。
【0063】
そして、制御部3は、期間T2が経過すると(ステップS7:Yes)、次回の動作周期まで待機する。
【0064】
ここで、図3(a)は、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時の燃料電池FCの電圧の変動例を示す図である。なお、図3(a)に示す二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCの電圧を示している。また、燃料電池FCの電圧の上限値及び下限値は、燃料電池FCの耐電圧や定格電圧により設定されるものとする。
【0065】
上述のように、制御部3は、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、期間T1においてエアコンプレッサACPのモータを最低回転数により駆動させる処理と、期間T2においてエアコンプレッサACPのモータを停止させる処理とを交互に繰り返し行う。
【0066】
一般に、燃料電池FCの電解質膜を透過する単位時間Tあたりの水素の量は比較的少ないため、図3(a)に示すように、期間T1を比較的短くすることで、期間T1における燃料電池FCの電圧の上昇を抑えることができる。また、期間T1が比較的短くなり、燃料電池FCに供給される酸素の量が比較的少なくなると、酸素極から電解質膜を介して水素極に透過する酸素の量も比較的少なくなるため、水素極における水素と酸素の燃焼を抑えることができる。そのため、図3(a)に示すように、期間T2における燃料電池FCの電圧の低下を抑えることができる。これにより、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、燃料電池FCの電圧の変動幅を抑えることができる。そして、燃料電池FCの電圧の変動幅を抑えることができるため、燃料電池FCの劣化を抑制することができる。
【0067】
また、実施形態の燃料電池システム1によれば、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、微小な量の酸化剤ガスを燃料電池FCに供給することが可能なエアコンプレッサを用意する必要がないため、燃料電池システム1の製造コストの増大を抑制することができる。
【0068】
また、実施形態の燃料電池システム1によれば、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、燃料電池FCの電圧が上限値を超えることを抑えることができるため、DCDCコンバータCNVの駆動回数を低減することができ、蓄電装置Bの電圧が不必要に上昇することを抑制することができる。
【0069】
また、実施形態の燃料電池システム1によれば、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、燃料ガスの消費量を低減することができるため、車両Veの燃費を向上させることができる。また、燃料ガスの消費量を低減することができるため、燃料電池FCへの燃料ガスの供給回数が低減され、水つまりを抑制することができる。そのため、水つまりを解消するための複雑な制御を行う必要がなく、制御部3にかかる負荷を低減することができる。
【0070】
また、実施形態の燃料電池システム1によれば、スイッチSWが停止しているときで、かつ、燃料電池FCの電圧が蓄電装置Bの電圧より高い場合、燃料電池FCからダイオードDを介して蓄電装置Bに電流が流れて燃料電池FCの電圧が低下するため、燃料電池FCの電圧が比較的高くなることで燃料電池FCが劣化することを抑制することができる。
【0071】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0072】
<変形例>
上記実施形態では、制御部3は、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、単位時間Tを期間T1及び期間T2により構成しているが、期間T1を複数の期間T1´に等分するとともに期間T2を複数の期間T2´に等分し、単位時間Tを複数の期間T1´及び複数の期間T2´により構成してもよい。
【0073】
例えば、制御部3は、図3(b)に示すように、期間T1を期間T11と期間T12とに分割するとともに期間T2を期間T21と期間T22とに分割し、単位時間Tを期間T11、期間T21、期間T12、及び期間T22により構成する。なお、期間T11=期間T12とする。また、期間T21=期間T22とする。
【0074】
変形例の燃料電池システム1によれば、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、燃料電池FCに酸素が供給される期間T11、T12をそれぞれさらに短くすることができるため、燃料電池FCの電圧の上昇及び低下をより抑えることができる。これにより、DCDCコンバータCNVを停止させている場合における燃料電池FCの発電停止時、燃料電池FCの電圧の変動幅をさらに抑えることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 燃料電池システム
2 記憶部
3 制御部
Ve 車両
HT 水素タンク
INJ インジェクタ
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
FC 燃料電池
CNV DCDCコンバータ
L インダクタ
SW スイッチ
D ダイオード
C コンデンサ
B 蓄電装置
SV1、SV2 電圧計
SI 電流計
Lo 負荷
図1
図2
図3
図4