(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】歯車加工装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23F 17/00 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B23F17/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176007
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2022-01-18
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】511194809
【氏名又は名称】国立中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】呉 育仁
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-335061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車加工装置であり、歯車の歯面に対して表面加工を実行し、前記歯車加工装置は台座、駆動ユニット、ベアリングユニット、研削部品、コントロールユニットを含み、
前記駆動ユニットは前記台座に設置され、
前記ベアリングユニットは前記台座に設置され、前記ベアリングユニットは前記歯車を受けるのに用いられ、前記ベアリングユニットは前記駆動ユニットによって動かされ、前記台座に相対して複数の第一対応軸方向の運動を実行することができ、前記複数の第一対応軸方向は、前記ベアリングユニットが前記台座に対応する、6つの自由度(6DoF)の3個の移動軸および3個の回転軸であり、
前記複数の第一対応軸方向は、前記3個の移動軸を合成した後の1個の第一移動軸方向および前記3個の回転軸を合成した後の1個の第一回転軸方向であり、
前記研削部品は前記台座に設置され、前記研削部品は研削パーツを含み、前記研削部品は前記駆動ユニットによって動かされ、前記ベアリングユニットに相対して複数の第二対応軸方向の運動を実行することができ、
それにより、前記研削パーツ
の研削過程における接線方向を前記歯車の歯溝と平行にし、前記研削パーツを前記歯車の歯面に接触させ、前記複数の第二対応軸方向は、前記研削部品が前記ベアリングユニットに対応する、6つの自由度の3個の移動軸および3個の回転軸であり、
前記複数の第二対応軸方向は、前記3個の移動軸を合成した後の1個の第二移動軸方向および前記3個の回転軸を合成した後の1個の第二回転軸方向であり、
前記コントロールユニットは前記駆動ユニットに電気接続しており、前記コントロールユニットは前記駆動ユニットを制御するのに用いられ、研削過程において、
前記第一移動軸方向および第一回転軸方向のうち少なくとも一つ
、或いは/及び
、前記第二移動軸方向および第二回転軸方向のうち少なくとも一つ
、に対して、付加運動を課し、
前記付加運動は、前記研削パーツの研削過程における接線方向を前記歯車の歯溝と平行ではないようにし、前記研削パーツによって前記歯車の歯面に生成される研磨紋方向を変化させ、
その中で、前記付加運動は、1回限りの運動であり、前記1回限りの運動による前記歯車の追加の取り付け角度の調整
をし、
前記追加の取り付け角度は前記1回限りの運動の後と前記1回限りの運動の前における前記研削パーツと前記歯車の軸交差角との差であり、前記1回限りの運動は継続的な運動に相対して定義され、前記継続的な運動は前記歯車に空間位置の変化を継続的に発生させる、ことを特徴とする歯車加工装置。
【請求項2】
前記付加運動は
前記継続的な運動であること、をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項3】
前記継続的な運動は波動運動である、ことを特徴とする請求項2に記載の歯車加工装置。
【請求項4】
前記波動運動は正弦波運動、方形波運動、三角波運動或いはのこぎり波運動の中の少なくとも一つ或いは其の組み合わせである、ことを特徴とする請求項3に記載の歯車加工装置。
【請求項5】
前記コントロールユニットは前記駆動ユニットを制御し、研削過程において、少なくとも二つの前記複数の第二対応軸方向に対して、其々異なる前記波動運動を課すことができる、ことを特徴とする請求項4に記載の歯車加工装置。
【請求項6】
前記コントロールユニットは前記駆動ユニットを制御し、研削過程において、少なくとも二つの前記複数の第二対応軸方向に対して、其々同じ前記波動運動であるが、異なる振幅或いは周波数の前記波動運動を課すことができる、ことを特徴とする請求項4に記載の歯車加工装置。
【請求項7】
前記研削パーツは砥石である、ことを特徴とする請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項8】
前記複数の第一対応軸方向或いは前記複数の第二対応軸方向は、6つの自由度に対応する3個の移動軸及び3個の回転軸、の中の少なくとも二つから成る、ことを特徴とする請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項9】
歯車加工方法であり、歯車の歯面に対して表面加工を実行し、前記歯車加工方法は歯車加工装置の提供、及び駆動ユニットの利用を含み、
前記歯車加工装置は、台座、前記駆動ユニット、前記歯車を受けるベアリングユニット、及び研削部品を含み、前記研削部品は研削パーツを含み、
前記駆動ユニットを利用して前記ベアリングユニットを動かし、前記台座に相対して複数の第一対応軸方向の運動を実行し、或いは/及び前記駆動ユニットを利用して前記研削部品を動かし、前記ベアリングユニットに相対して複数の第二対応軸方向の運動を実行し、
それにより、前記研削パーツ
の接線方向を前記歯車の歯溝と平行にし、前記研削パーツを前記歯車の歯面に接触させ、前記複数の第一対応軸方向は、前記ベアリングユニットが前記台座に対応する、6つの自由度(6DoF)の3個の移動軸および3個の回転軸であり、
前記複数の第一対応軸方向は、前記3個の移動軸を合成した後の1個の第一移動軸方向および前記3個の回転軸を合成した後の1個の第一回転軸方向であり、前記複数の第二対応軸方向は、前記研削部品が前記ベアリングユニットに対応する、6つの自由度の3個の移動軸および3個の回転軸であり、
前記複数の第二対応軸方向は、前記3個の移動軸を合成した後の1個の第二移動軸方向および前記3個の回転軸を合成した後の1個の第二回転軸方向であり、
その中で、前記駆動ユニットは研削過程において、
前記第一移動軸方向および第一回転軸方向のうち少なくとも一つ
、或いは/及び
、前記第二移動軸方向および第二回転軸方向のうち少なくとも一つ
、に対して、付加運動を課し、
前記付加運動は、前記研削パーツの研削過程における接線方向を前記歯車の歯溝と平行ではないようにし、前記研削パーツによって前記歯車の歯面に生成される研磨紋方向を変化させ、
かつその中で、前記付加運動は、1回限りの運動であり、前記1回限りの運動による前記歯車の追加の取り付け角度の調整
をし、
前記追加の取り付け角度は前記1回限りの運動の後と前記1回限りの運動の前における前記研削パーツと前記歯車の軸交差角との差であり、前記1回限りの運動は継続的な運動に相対して定義され、前記継続的な運動は前記歯車に空間位置の変化を継続的に発生させる、ことを特徴とする歯車加工方法。
【請求項10】
前記付加運動は
前記継続的な運動であること、をさらに含む、ことを特徴とする請求項9に記載の歯車加工方法。
【請求項11】
前記継続的な運動は波動運動である、ことを特徴とする請求項9に記載の歯車加工方法。
【請求項12】
前記波動運動は正弦波運動、方形波運動、三角波運動或いはのこぎり波運動の中の少なくとも一つ或いは其の組み合わせである、ことを特徴とする請求項11に記載の歯車加工方法。
【請求項13】
前記駆動ユニットは、研削過程において、少なくとも二つの前記複数の第二対応軸方向に対して、其々異なる前記波動運動を課す、ことを特徴とする請求項12に記載の歯車加工方法。
【請求項14】
前記駆動ユニットは、研削過程において、少なくとも二つの前記複数の第二対応軸方向に対して、其々同じ前記波動運動であるが、異なる振幅或いは周波数の前記波動運動を課す、ことを特徴とする請求項12に記載の歯車加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯車加工技術に関するものであり、特に、歯車の歯面研磨紋及び粗さを変化させることができる、歯車加工装置及び方法である。
【背景技術】
【0002】
歯車はよくみられる伝達パーツであり、異なる需要に基づき、異なる材料を採用して歯車を製作することができる。例を挙げると、交通手段の部品或いは高精度測定設備に歯車を応用する際、これらの歯車の殆どは、作動の安定性及び耐久性を維持するために、硬質金属或いはその合金で製作される。一般的にこのような歯車の歯面に対して、歯車の歯面を成形する際は、砥石を利用して研削加工が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、砥石加工の過程で、歯車の歯面には肉眼では見えない微細な研磨紋が多く残る。砥石は常に歯面を一方向且つ規則的に研削するため、研磨紋は歯長方向に沿って互いに平行に対応して形成される。これらの研磨紋により、歯車の回転中に特定の周波数でノイズが発生し易くなり、噛み合い領域での潤滑オイル膜の形成に支障をきたし、歯車の作動効率及び品質に影響を与える。従って、歯車の歯面に形成される微細な研磨紋による悪影響の改善、ノイズ生成低減の可能性は、研究に値する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、歯車の歯面研磨紋及び粗さを変化させることができる、歯車加工装置を提供するものである。
【0005】
上記の目的を達成する為、本発明の歯車加工装置は台座、駆動ユニット、ベアリングユニット、研削部品及びコントロールユニットを含む。駆動ユニット、ベアリングユニット及び研削部品は台座に設置されている。ベアリングユニットは歯車を受けるのに用いられ、且つ駆動ユニットによって動かされ、台座に相対して複数の第一対応軸方向運動を実行することができ、研削部品は研削パーツを含み、研削部品は駆動ユニットによって動かされ、ベアリングユニットに相対して複数の第二対応軸方向運動を実行することができ、研削パーツを歯車の歯面に接触させる。コントロールユニットは駆動ユニットに電気接続しており、コントロールユニットは駆動ユニットを制御するのに用いられ、研削過程において、少なくとも一つの複数の第一対応軸方向或いは/及び少なくとも一つの複数の第二対応軸方向に対して、付加運動を課し、研削パーツによって歯車の歯面に生成される研磨紋方向を変化させる。
【0006】
本発明の一つの実施例では、付加運動は1回限りの運動或いは継続的な運動である。
【0007】
本発明の一つの実施例では、1回限りの運動による歯車の追加の取り付け角度の調整により、研削パーツと歯車の歯面の接触領域の中心は、研削パーツの軸中心と1回限りの運動を課された回転軸にある平面上に、位置しない。
【0008】
本発明の一つの実施例では、継続的な運動は波動運動である。
【0009】
本発明の一つの実施例では、波動運動は正弦波運動、方形波運動、三角波運動或いはのこぎり波運動の中の少なくとも一つ或いは其の組み合わせである。
【0010】
本発明の一つの実施例では、コントロールユニットは駆動ユニットを制御し、研削過程において、少なくとも二つの複数の第二対応軸方向に対して、其々異なる波動運動を課すことができる。
【0011】
本発明の一つの実施例では、コントロールユニットは駆動ユニットを制御し、研削過程において、少なくとも二つの複数の第二対応軸方向に対して、其々同じ波動運動であるが、異なる振幅或いは周波数の波動運動を課すことができる。
【0012】
本発明の一つの実施例では、研削パーツは砥石である。
【0013】
本発明の一つの実施例では、複数の第一対応軸方向或いは複数の第二対応軸方向は、6つの自由度(6DoF)に対応する3個の移動軸及び3個の回転軸、の中の少なくとも二つから成る。
【0014】
本発明は更に歯車加工方法を含み、前記歯車加工方法は、歯車加工装置の提供、及び駆動ユニットの利用を含む。歯車加工装置は駆動ユニット、歯車を受けるベアリングユニット、及び研削部品を含み、研削部品は研削パーツを含む。駆動ユニットを利用してベアリングユニットを動かし、台座に相対して複数の第一対応軸方向運動を実行し、或いは/及び駆動ユニットを利用して研削部品を動かし、ベアリングユニットに相対して複数の第二対応軸方向運動を実行し、研削パーツを歯車の歯面に接触させる。その中で、駆動ユニットは研削過程において、少なくとも一つの複数の第一対応軸方向或いは/及び少なくとも一つの複数の第二対応軸方向に対して、付加運動を課し、研削パーツによって歯車の歯面に生成される研磨紋方向を変化させる。
【0015】
これに基づき、本発明の歯車加工装置は、歯車の歯面に形成する複数の研磨紋を変化させることができ、クロスして平行でない研磨紋経路を生成させ、表面の粗さ具合も制御でき、歯車の噛み合い時に発する特定の周波数ノイズを防ぎ、ノイズ減少の効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】本発明の歯車加工装置における、ベアリングユニットが対応している回転軸が、実行する付加運動を示す図である。
【
図4】
図3が示す付加運動を実行する前後の、研削パーツと歯車の歯面の接触領域の変化を示す図である。
【
図5】本発明の歯車加工装置における、対照グループA1と実験グループB1の歯車の歯面研磨紋結果比較図である。
【
図6】本発明の歯車加工装置の研削ユニットが実行する付加運動を示す図である。
【
図7】本発明の歯車加工装置における、対照グループA2と実験グループB2~E2の歯車の歯面研磨紋結果比較図である。
【
図8】本発明の歯車加工方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各種の態様及び実施例は例示的かつ非限定的であるため、本明細書を読んだ後、通常の知識を有するものは、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様及び実施例も有することができる。以下の詳細な説明と特許請求の範囲に基づき、これらの実施例の特徴及び利点はより顕著になるであろう。
【0018】
本明細書では、「一」或いは「一個」を使用して、ここで説明するパーツと部品を説明する。 これは、説明の便宜のためだけであり、本発明の範囲に一般的な意味を提供する。 従って、特に明記しない限り、この説明は一個或いは少なくとも一個を含むと理解されるべきであり、単数には複数も含まれる。
【0019】
本明細書では、「第一」或いは「第二」等の序数に類似する用語は、主に同じ或いは類似のパーツ或いは構造を区別或いは参照するために使用され、これらのパーツ或いは構造の空間的或いは時間上の順序を必ずしも意味するものではない。特定の状況或いは構成では、序数は交換して使用することができ、本創作の実施に影響しないことに留意されたい。
【0020】
本明細書では、「含む」、「備える」、或いはその他の類似の用語は、非排他的な包含物を含んでいることを指す。例えば、複数の要素を含むパーツ或いは構造は、本明細書に列挙された要素に限定されず、明示的に列挙されていないが、通常はパーツ或いは構造に固有するはずである他の要素を含み得る。
【0021】
本発明の歯車加工装置は歯車の歯面に対して表面研削加工を実行し、歯車の歯面の表面の粗さを減らす。
図1及び
図2を参照、其の中で、
図1は本発明の歯車加工装置のブロック図であり、
図2は本発明の歯車加工装置の概略図である。
図1及び
図2が示すとおり、本発明の歯車加工装置1は台座10、駆動ユニット60、ベアリングユニット20、研削部品30及びコントロールユニット40を含む。台座10は本発明の歯車加工装置1の基礎構造パーツであり、各機能ユニット或いは各コンポーネントを設置するためのものである。
【0022】
駆動ユニット60は台座10に設置されている。駆動ユニット60はベアリングユニット20及び研削部品30に接続しており、且つ駆動ユニット60はベアリングユニット20或いは/及び研削部品30を動かして、複数の軸方向運動を実行し、研削部品30の歯車に対する加工を容易にするのに用いられる。駆動ユニット60はモーター、電気モーター、或いは物体を動かし、移動或いは/及び回転させることができる他の装置であってもよい。
【0023】
ベアリングユニット20は台座10に設置されている。ベアリングユニット20は加工待ちの歯車を受けるのに用いられる。ベアリングユニット20はベアリング部位22を含む。駆動ユニット60はベアリング部位22を動かし、台座10に相対して複数の第一対応軸方向運動を実行して、研削部品30の歯車に対する加工に合わせることができ、ベアリング部位22は加工待ちの歯車を放置並びに固定するのに用いられる。本発明の一つの実施例では、駆動ユニット60はベアリング部位22を動かし、一個或いは多数個の軸方向運動を実行することができ、例えば、
図2のX軸、Y軸に沿った直線移動或いはA軸に沿った回転を実行して、相対して歯車の加工位置を変化させる。駆動ユニット60はベアリング部位22を動かし、Z軸に沿った直線移動を実行することもでき、駆動ユニット60は更にベアリング部位22を動かし、一個の回転軸Cに沿った回転運動を実行して、歯車を動かして回転の同期をすることもできる。即ち、本実施例では、前述の複数の第一対応軸方向は、6つの自由度に対応する3個の移動軸及び3個の回転軸、の中の少なくとも一つ或いは其の組み合わせから成るが、本発明はこれに限定されない。
具体的には、前述の複数の第一対応軸方向は、ベアリングユニット20が台座10に対応する、6つの自由度に対応する3個の移動軸及び3個の回転軸である。
【0024】
研削部品30は台座10に設置されている。研削部品30は加工待ちの歯車に対して研削操作を実行するのに用いられる。駆動ユニット60は、歯車に対して研削加工を行うため、研削部品30を動かして、ベアリングユニット20に相対して複数の第二対応軸方向運動を実行することができる。本発明では、研削部品30は砂補修ユニット31及び研削ユニット32を含み、その中で砂補修ユニット31は砂補修パーツ311を含み、研削ユニット32は研削パーツ321を含む。砂補修ユニット31は、研削ユニット32の研削パーツ321に対して砂補修加工操作を実行するのに用いられる。研削ユニット32は研削パーツ321を利用して歯車の歯面に接触して、加工待ちの歯車を研削する。即ち、本実施例では、前述の複数の第二対応軸方向は、6つの自由度に対応する3個の移動軸及び3個の回転軸、の中の少なくとも一つ或いは其の組み合わせから成るが、本発明はこれに限定されない。
【0025】
例を挙げると、駆動ユニット60は砂補修ユニット31を動かし、一個或いは多数個の軸方向運動を実行することができ、例えば、
図2のX1軸、Y1軸に沿った直線移動或いはA1軸に沿った回転を実行して、相対して研削パーツ321の加工位置を変化させ、駆動ユニット60は砂補修パーツ311を動かし、回転軸B1に沿った回転運動を実行して、砂補修パーツ311を動かして回転の同期をすることもできる。駆動ユニット60は研削パーツ321を動かして、回転軸Bに沿った回転運動を実行して、研削パーツ321を動かして回転の同期をすることができる。
図2が示す本発明歯車加工装置の各軸の運動方程式は下記の通りである。
【数1】
【0026】
其の中で、ψは回転軸回転角、Fは軸スライドの移動量を表し、ψとFの下部小文字表記は
図2の対応軸のコード名であり、γ
dwは砂補修パーツ311と研削パーツ321の理論上の軸角度、γ
wgは研削パーツ321と歯車の理論上の軸角度、r
d、r
w及びr
gは其々砂補修パーツ311、研削パーツ321及び歯車のピッチ半径、p
wはホイールリード、xはインデックス係数、m
nは法線モジュール 、b
wは研削パーツ321の長さ、b
gは歯車の歯幅、T
w及びT
gは其々研削パーツ321及び歯車の歯数、β
gは歯車ピッチ円ねじれ角を表している。
【0027】
本発明の一つの実施例では、研削パーツ321は砥石であってもよく、以下の説明ではウォームホイールを以て例とする。しかし、本発明はこれに限定されない。ウォームホイールと歯車の軸角度は、ホイールリード角と歯車のねじれ角を足し合わせた角度であり、正負符号はそれぞれの回転方向によって定まり、研削過程におけるウォームホイールの研削構造と歯車の歯面が互いに噛み合い、研削作業を容易にさせる。しかし、異なる需要に応じて、ウォームホイールと歯車の軸角度を変更することもできる。
【0028】
コントロールユニット40は駆動ユニット60に電気接続している。本発明の一つの実施例では、コントロールユニット40は同じく台座10に設置されており、本発明の歯車加工装置1を纏まった全体的構造設計にすることができるが、本発明はこれに限定されない。例えば、コントロールユニット40は構造設計上では台座10と分離して、電気コードだけで駆動ユニット60と電気接続することができる。コントロールユニット40はコントロールチップ、プロセッサー或いはコンピューター等であってもよく、研削パーツ321を駆動して加工待ちの歯車に対して研削作業を実行するために、駆動ユニット60にベアリングユニット20或いは/及び研削部品30を動かす指令を駆動ユニット60に伝送するのに用いられる。
【0029】
その他に、本発明の一つの実施例では、本発明の歯車加工装置1は更に電源ユニット50を含み、電源ユニット50は駆動ユニット60、ベアリングユニット20、研削部品30及びコントロールユニット40に電気接続している。電源ユニット50が外部電源に接続することができるので、前述の各ユニットへ必要とする電力を供給することができる。
【0030】
駆動ユニット60の利用によって、前述のベアリング部位22及び研削パーツ321を動かし、互いに相対する移動から位置決めに至る過程、且つ研削パーツ321及び加工待ちの歯車の各回転運動以外にも、研削過程において、本発明の歯車加工装置1は主にコントロールユニット40を利用して駆動ユニット60を制御し、少なくとも一つの複数の第一対応軸方向(ベアリングユニット20に対応)或いは/及び、少なくとも一つの複数の第二対応軸方向(研削部品30に対応)に対して付加運動を課し、ベアリング部位22或いは/及び、研削パーツ321が駆動ユニット60に動かされて、前述の付加運動実行の状況下或いは前述の付加運動実行後に研削作業を行う。
【0031】
本発明の一つの実施例では、駆動ユニット60が任意の対応軸方向に対して課す付加運動は1回限りの運動或いは継続的な運動であってもよい。ここで言及する1回限りの運動は継続的な運動に相対して定義される。1回限りの運動を、物体を第一位置から第二位置まで移動させて前記物体に1回限りの空間位置の変化を生成させる、と定義する。継続的な運動は、物体を異なる位置の間で反復移動させて前記物体に継続的な空間位置の変化を生成させる、と定義する。
【0032】
図1乃至
図4を併せて参照。
図3は本発明の歯車加工装置における、ベアリングユニットが対応している回転軸が、実行する付加運動を示す図であり、
図4は
図3が示す付加運動を実行する前後の、研削パーツと歯車の歯面の接触領域の変化を示す図である。本発明の一つの実施例では、前述の付加運動は1回限りの軸方向偏り運動であり、ベアリングユニット20の複数の第一対応軸方向の回転軸にしか課されない。
図2及び
図3が示すとおり、本実施例では、ベアリングユニット20は更に可動部位21を含む。可動部位21の一端はベアリング部位22に接続しており、可動部位21は駆動ユニット60に動かされ、回転軸Aに基づき、台座10に相対して回転することができる。ここで、回転軸Aは一つの水平軸方向であり、同時に研削パーツ321と歯車Gの回転軸を通過しており、可動部位21が回転軸Aに基づいて回転した後に、ベアリング部位22を動かすことができ、放置後の歯車Gの軸方向Rの回転も生成させることができ、そして歯車Gの取り付け角度の変化を形成する。標準的な運動では、取り付け角度は研削パーツ321と歯車Gの軸角度に相当し、本発明では前述の操作により追加の取り付け角度を追加し、両者の本来の関係を変化させることができる。
【0033】
図3及び
図4が示すとおり、一般の研削過程において、研削パーツ321と歯車Gの歯面の接触領域(
図4の濃い斜線域が示す)の中心O1は、研削パーツ321の軸中心と回転軸Aにある平面Pに維持されており、このときの歯車Gの追加の取り付け角度γ
aを0と定義する。しかしながら、
図3及び
図4が示すとおり、回転軸Aに対して1回限りの運動を課することにより、歯車Gの追加の取り付け角度γ
aを増加させることができる。このとき、歯車Gに回転軸方向の偏りが生成されることにより、研削パーツ321と歯車Gの歯面の接触領域の位置が変化する。前述の1回限りの運動が歯車Gの追加の取り付け角度γ
aを調整することによって、研削パーツ321と歯車G片側の歯面の接触領域が下方に向かって位置移動し(
図4の浅い斜線域が示すように、若し研削パーツ321と歯車G他方の片側の歯面の接触領域の場合は上方に向かって位置移動する)、接触領域の中心O2は、研削パーツ321の軸中心と1回限りの運動を課された回転軸Aにある平面P上に、位置しない。これにより、研削パーツ321の研削過程の接線方向は歯車Gの歯溝方向と平行でなくなり、研削パーツ321と歯車Gの歯面が生成する研磨紋方向を変化させる。
【0034】
以下、
図1及び
図5を併せて参照。其の中で
図5は本発明の歯車加工装置における、対照グループA1と実験グループB1の歯車の歯面研磨紋結果比較図である。以下実験において、本発明の歯車加工装置1による同じ仕様の歯車の歯面に対する1回の研削作業を利用して、前述の回転軸Aに対して全く付加運動を課していない設定条件を対照グループA1、前述の回転軸Aに対して1回限りの運動を課して歯車Gの追加の取り付け角度γ
aを1.5°増加させた設定条件を実験グループB1とし、歯車歯面の研削作業後の歯形方向及び歯車の軸方向に沿った研磨紋結果の画像をシミュレーションして、取得した。其の中で、ウォームホイールの回転速度は6000rpm、ワークギアの軸方向送り速度は500mm/min、ねじれ角は25°、ウォームホイールのホイール半径は200mmである。
【0035】
図5が示すように、実験シミュレーション結果を分析した後に分かるとおり、対照グループA1の研磨紋形状はほぼ直線研磨紋であり、実験グループB1の研磨紋形状はほぼ斜線研磨紋である。研磨紋形状が斜線研磨紋の際、歯車噛み合い時に引き起こす単一周波数ノイズを効率的に減少させることができ、これにより、1回限りの運動を課した実験グループB1は対照グループA1より好ましいノイズ減少効果を実現できる。
【0036】
その他、歯車Gに対する追加の取り付け角度γ
aの増加により、歯車Gの歯面に幾何偏差が生成され、ウォームホイールによる修正、及び歯車の研磨過程に他の各軸方向に対して運動を課してモーション補正パラメータを生成して、この偏差を補正しなければならない。このモーション補正パラメータは、常数、時間或いは他の軸運動量の関数であってもよい。上述の各モーション補正パラメータを、本発明の歯車加工装置の各軸本来の運動方程式に組み合わせると、各軸が対応する研削制御方程式が得られ、歯車の歯面研磨紋形状を算出することができる。各軸が対応する研削制御方程式は下記の通りである。
【数2】
其の中で、fはモーション補正パラメータ、γ
aは追加の取り付け角度である。
【0037】
図1及び
図6を併せて参照。
図6は本発明の歯車加工装置の研削ユニットが実行する付加運動を示す図である。
図6が示すとおり、本発明の一つの実施例では、前述の付加運動は継続的な且つ微量な波動運動であり、波動運動は正弦波運動、方形波運動、三角波運動或いはのこぎり波運動の中の少なくとも一つ或いは其の組み合わせである。各波動運動は対応する振幅及び周波数を備えており、異なる需要に応じて、波動の振幅或いは周波数を適宜調整してもよい。
【0038】
本発明の一つの実施例では、コントロールユニット40は駆動ユニット60を制御して、研削過程に研削部品の少なくとも二つの複数の第二対応軸方向に対して、其々異なる波動運動を課することができる。例を挙げる。前述の複数の第二対応軸方向がX軸及びY軸を含むと仮定すると、コントロールユニット40は駆動ユニット60を制御して、X軸に対して方形波運動を、Y軸に対して正弦波運動を課することができ、又、前述の複数の第二対応軸方向がX軸、Y軸及びZ軸を含むと仮定すると、コントロールユニット40は駆動ユニット60を制御して、X軸に対して方形波運動を、Y軸に対して正弦波運動を、Z軸に対して三角波運動を課することができる。具体的には、前述の複数の第二対応軸方向は、研削部品30がベアリングユニット20に対応する、6つの自由度に対応する3個の移動軸及び3個の回転軸である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、異なる需要に応じて変更を加えることができる。
【0039】
本発明の一つの実施例では、コントロールユニット40は駆動ユニット60を制御して、研削過程に研削ユニットの少なくとも二つの複数の第二対応軸方向に対して、其々同じ波形運動であるが、異なる振幅或いは周波数の波形運動を課すことができる。例を挙げる。前述の複数の第二対応軸方向がX軸及びY軸を含むと仮定すると、コントロールユニット40は駆動ユニット60を制御して、X軸及びY軸に対して共に正弦波運動を課することができるが、X軸に対して課した正弦波運動の振幅は3.6μm、周波数は30Hzであり、Y軸に対して課した正弦波運動の振幅は5.0μm、周波数は30Hzである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、異なる需要に応じて変更を加えることができる。
【0040】
本発明の一つの実施例では、異なる波動運動が任意の軸方向上に課した際の対応する波動運動方程式は以下の通りである、
【数3】
上述の方程式のv、a、b、nの下部小文字表記1乃至4は其々、正弦波、方形波、三角波及びのこぎり波を表し、即ち式(1)は正弦波運動を課した方程式、式(2)は方形波運動を課した方程式、式(3)は三角波運動を課した方程式、式(4)はのこぎり波運動を課した方程式を表す。其の中で、a、bは其々波動を制御する振幅と周波数、ωは回転速度、tは時間、fは周波数を表す。其の中で、nの数値が大きいほど、波動は実際の形状に近くなる。
【0041】
上述の対応する波動運動方程式を、本発明歯車加工装置の各軸本来の運動方程式に組み合わせると、各軸が対応する研削制御方程式が得られ、歯車の歯面の粗さ、及び歯面研磨紋形状を算出することができる。
【0042】
以下、
図1及び
図7を併せて参照。
図7は本発明の歯車加工装置における、対照グループA2と実験グループB2~E2の歯車の歯面研磨紋結果比較図である。以下実験において、本発明の歯車加工装置1による同じ仕様の歯車の歯面に対する1回の研削作業を利用して、X軸、Y軸及びZ軸に対して波動運動を課していない設定条件を対照グループA2、X軸、Y軸及びZ軸に対して共に正弦波運動を課した設定条件を実験グループB2、X軸、Y軸及びZ軸に対して共に方形波運動を課した設定条件を実験グループC2、X軸、Y軸及びZ軸に対して共に三角波運動を課した設定条件を実験グループD2、X軸、Y軸及びZ軸に対して共にのこぎり波運動を課した設定条件を実験グループE2とし、歯車歯面の研削作業後の歯形方向及び歯車の軸方向に沿った研磨紋結果の画像、最大歯面研磨紋深度、及び歯面粗さの値をシミュレーションして、取得した。其の中で、課された全ての波動運動の周波数は共に30Hz、X軸に対して課した全ての波動運動の振幅は共に3.6μm、Y軸に対して課した全ての波動運動の振幅は共に5.0μm、Z軸に対して課した全ての波動運動の振幅は共に4.0μm、ウォームホイールの軸方向送り速度は20mm/s、ねじれ角は0°、ウォームホイールのホイール半径は200mm、ウォームホイールの砥粒サイズは470μmである。
【0043】
図7が示すとおり、実験シミュレーション結果を分析した後に分かるとおり、対照グループA2の研磨紋形状はほぼ直線研磨紋であり、実験グループB2及びD2の研磨紋形状はほぼ交錯斜線研磨紋であり、実験グループC2及びE2の研磨紋形状は対照グループA2と同じくほぼ直線研磨紋である。研磨紋形状が斜線研磨紋の際、歯車噛み合い時に引き起こす単一周波数ノイズを効率的に減少させることができ、これにより、正弦波運動を課した実験グループB2及びD2は対照グループA2より好ましいノイズ減少効果を実現できる。方形波運動を課した実験グループC2及びE2では、歯面研磨紋形状において、大きな改善は見られなかった。
【0044】
続いて、最大研磨紋深度hmaxにおいて、対照グループA2の最大研磨紋深度は約1.60μm、実験グループB2の最大研磨紋深度は約1.44μm、実験グループC2の最大研磨紋深度は約1.62μm、実験グループD2の最大研磨紋深度は約1.34μm、実験グループE2の最大研磨紋深度は約1.57μmである。対照グループA2と比較すると、実験グループB2及びD2の最大研磨紋深度は約16%低下しており、実験グループC2及びE2では最大研磨紋深度に対する改善は限られている。
【0045】
又、歯面の粗さRaにおいて、対照グループA2の歯面の粗さは約0.422μm、実験グループB2の歯面の粗さは約0.473μm、実験グループC2の歯面の粗さは約0.246μm、実験グループD2の歯面の粗さは約0.430μm、実験グループE2の歯面の粗さは約0.387μmである。対照グループA2と比較すると、実験グループC2の表面の粗さの値の改善効果は明らかに実験グループB2,D2及びE2より優れている。
【0046】
図8を参照。
図8は本発明の歯車加工方法のフローチャートである。
図8が示すとおり、本発明は更に歯車加工方法を含み、この方法は本発明歯車加工装置或いは類似の機能特性を備える他の装置に応用することができる。本発明歯車加工方法は以下のステップを含む。
【0047】
ステップ1は、歯車加工装置の提供である。歯車加工装置は駆動ユニット、歯車を受けるベアリングユニット及び研削部品を含み、研削部品は研削パーツを含む。
【0048】
ステップ2は、駆動ユニットを利用してベアリングユニットを動かし、台座に相対して複数の第一対応軸方向運動を実行し、且つ駆動ユニットを利用して研削部品を動かし、ベアリングユニットに相対して複数の第二対応軸方向運動を実行し、研削パーツを歯車の歯面に接触させる。その中で、駆動ユニットは研削過程において、少なくとも一つの複数の第一対応軸方向或いは/及び、少なくとも一つの複数の第二対応軸方向に対して、付加運動を課し、前記研削パーツにより前記歯車の歯面に生成する研磨紋方向を変化させる。
【0049】
上記をまとめると、本発明の歯車加工装置及び方法は、ベアリングユニット或いは/及び研削部品が複数の軸方向運動を実行する際、少なくとも一つの前記複数の軸方向に対して微量の付加運動を課すことにより、研削パーツによる歯車の歯面研磨紋形状、角度及び深度を変化させ、異なる歯面の粗さを形成し、歯車噛み合い時に振動により生成されるノイズを減少させ、加工後の歯車の品質及び効能を上昇させることができる。
【0050】
上記の実施方式は、本質的に補足的な説明に過ぎず、出願対象の実施例或いはその実施例の応用或いは使用用途を限定することを意図するものではない。その他、少なくとも1つの例示的な実施例が前述の実施方式で提示されてきたが、本発明は依然として多数の変更を有することができることを理解されたい。本明細書に記載の実施例は、請求した出願対象の範囲、使用用途、或いは構成をいかなる方法でも制限することを意図するものではないことも理解されたい。それどころか、前述の実施方式は、当業者が1つ或いは複数の実施例を実施できるための、簡潔的な指針となるであろう。更に、特許請求の範囲によって定義された範囲から逸脱することなく、パーツの機能と配置に様々な変更を加えることができ、特許請求の範囲には、既知の同等物及び特許出願時点での全ての予見可能な同等物が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 歯車加工装置
10 台座
20 ベアリングユニット
21 可動部位
22 ベアリング部位
30 研削部品
31 砂補修ユニット
311 砂補修パーツ
32 研削ユニット
321 研削パーツ
40 コントロールユニット
50 電源ユニット
60 駆動ユニット
G 歯車
A、B、B1、C 回転軸
P 平面
γa 追加の取り付け角度
O1、O2 接触領域の中心
S1、S2 ステップ