(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 5/16 20060101AFI20240430BHJP
G02C 5/22 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
G02C5/16
G02C5/22
(21)【出願番号】P 2022003667
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521064325
【氏名又は名称】株式会社エスケイワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】大森 雅希
(72)【発明者】
【氏名】松下 智之
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-081628(JP,A)
【文献】特開2014-081408(JP,A)
【文献】登録実用新案第3079244(JP,U)
【文献】特開2010-231119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0132911(US,A1)
【文献】中国実用新案第214704204(CN,U)
【文献】国際公開第2023/134382(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 5/16
G02C 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムレスタイプのものであり、
開いた状態において、
左右一対のレンズと、
前記各レンズの左右方向における外側端部に接続されたヨロイ部材と、
ヒンジ構造を介して前記ヨロイ部材に回動可能にその前方側端部が接続され、後方に向かって延びるテンプル部材とを備え、
前記ヨロイ部材と前記テンプル部材とが、それぞれ1本の金属線材を曲げ加工して形成された別々の部品であり、
前記ヒンジ構造が、
前記ヨロイ部材を構成する金属線材の後方側端部と、
前記テンプル部材を構成する金属線材の前方側端部と、
前記ヨロイ部材の後方側端部及び前記テンプル部材の前方側端部が接続され、前記テンプル部材の開閉時に回転軸となる軸芯部材とを備えるものであり、
前記テンプル部材において、前記軸芯部材よりも左右方向の外側であって、かつ前記軸芯部材より後方には、
上下方向から視て、左右方向の外側にオフセットさせるように少なくとも2つの屈曲点を介して段曲げ加工して形成した第1段曲げ部と、
左右方向から視て、上下方向の下方にオフセットさせるように少なくとも2つの屈曲点を介して段曲げ加工して形成した第2段曲げ部と
、
前記第1段曲げ部及び前記第2段曲げ部よりも前記ヒンジ構造側において、左右方向から視て前方に向かって突き出すように折り曲げられた前方突出部と、が形成されて
おり、
上下方向から視て、前記テンプル部材の前方側端部が、前記第1段曲げ部及び前記第2段曲げ部よりも前記ヒンジ構造側において、左右方向の内向きに前記ヒンジ構造から突出した後、複数回折れ曲がって左右方向の外向きに延伸するU字形状を成している眼鏡。
【請求項2】
前記前方突出部が、前記ヒンジ構造よりも左右方向に沿った外側に位置するように形成されている請求項
1に記載の眼鏡。
【請求項3】
上下方向から視て、前記テンプル部材における前記第1段曲げ部及び前記第2段曲げ部よりも後方側に、一定の曲率半径で左右方向の内向きに湾曲する内向き湾曲部が形成されている請求項1
又は2に記載の眼鏡。
【請求項4】
前記テンプル部材が、前後方向から視てその後方側端部が内側下方を向くように癖付けられている請求項1~
3のいずれか一項に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、テンプル部材等のフレー構成部品をチタン合金などの金属線材により形成することで、フィット感やホールド感を向上するようにした軽量性に優れた眼鏡が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したようなテンプル部材を金属線材により形成した眼鏡は、その軽量性の利点から、スポーツ等の激しい運動をする際に好んで使用されることが多い。このような場面において、テンプル部材に対して開く方向やねじる方向に過度な力が加わると、その力はテンプル部材に連結するヒンジ構造に最も負荷がかかり破損の原因となってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、金属線材からなるテンプル部材を備える眼鏡においてヒンジ構造にかかる負荷を小さくすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る眼鏡は、左右一対のレンズと、前記各レンズの外側端部に接続されたヨロイ部材と、ヒンジ構造を介して前記ヨロイ部材に回動可能にその基端部が接続されたテンプル部材とを備え、前記テンプル部材が金属線材からなるものであり、開いた状態において、上下方向から視て左右方向に変位するように段状に屈曲した第1段曲げ部と、左右方向から視て上下方向に変位するように段状に屈曲した第2段曲げ部とが形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、金属線材からなるテンプル部材に、左右方向に変位する第1段曲げ部と上下方向に変位する第2段曲げ部とが形成されているので、テンプル部材が過度に開かれたり、上下方向にねじりの力が加わった際に、ヒンジ構造にかかる負荷を小さくできる。すなわち、テンプル部材が過度に開かれる場合には、テンプル部材が第1段曲げ部において弾性的に変形することでその力を吸収し、ヒンジ構造にかかる負荷を小さくできる。一方で左右のテンプル部材に上下方向にねじりの力が加わった際には、テンプル部材が第2段曲げ部において弾性的に変形することでその力を吸収し、ヒンジ構造にかかる負荷を小さくできる。このように、第1段曲げ部と第2段曲げ部が、テンプル部材に加わる力を吸収するクッションのような機能を果たすことにより、テンプル部材に無理な力が加わった際にヒンジ構造にかかる負荷を小さくすることができる。
【0008】
前記眼鏡の態様としては、前記第1段曲げ部が、左右方向において前記ヒンジ構造よりも外側に形成されているものが挙げられる。
このようにすれば、テンプル部材が無理に開かれた際にヒンジ構造にかかる負荷をより小さくすることができる。
【0009】
また前記眼鏡は、前記テンプル部材が、前方に向かって突き出すように折り曲げられた前方突出部を前記基端部近傍に有するのが好ましい。
このようにすれば、この前方突出部もまたテンプル部材に加わる力を吸収するクッションとしての機能を果たすため、テンプル部材に無理な力が加わった際にヒンジ構造にかかる負荷を小さくすることができる。
【0010】
この場合、前記前方突出部が、前記ヒンジ構造よりも左右方向に沿った外側に位置するように形成されているのが好ましい。
このようにすれば、テンプル部材が無理に開かれた際にヒンジ構造にかかる負荷をより小さくすることができる。
【0011】
前記眼鏡の具体的態様としては、前記前方突出部が、前記第1段曲げ部及び前記第2段曲げ部よりも前記基端側に形成されているものが挙げられる。
【0012】
また前記眼鏡は、上下方向から視て、前記テンプル部材の基端側の線端部が、左右方向の内向きに前記ヒンジ構造から突出した後、複数回折れ曲がって左右方向の外向きに延伸するU字形状を成しているのが好ましい。
このようにすれば、このU字形状を成す部分もまた、テンプル部材が過度に開かれた際に加わる力を吸収するクッションとしての機能を果たすため、ヒンジ構造にかかる負荷をより一層小さくすることができる。
【0013】
また前記眼鏡は、上下方向から視て、前記テンプル部材における前記第1段曲げ部及び前記第2段曲げ部よりも先端側に、一定の曲率半径で左右方向の内向きに湾曲する内向き湾曲部が形成されているのが好ましい。また前記テンプル部材が、前後方向から視てその先端が内側下方を向くように癖付けられているのが好ましい。
このようにすれば、このようにすれば、装着者の頭部の形によりテンプル部材が横に開かれてもテンプル部材の先端を装着者の耳裏の側頭部に導けるのでフィット感を向上することができる。
【0014】
本発明の効果をより顕著に奏する態様としては、前記眼鏡がリムレスタイプのものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、金属線材からなるテンプル部材を備える眼鏡においてヒンジ構造にかかる負荷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】同実施形態の眼鏡の全体を上方から視た平面図。
【
図3】同実施形態の眼鏡の全体を左方向ら視た平面図。
【
図4】同実施形態の眼鏡の全体を後方から視た平面図。
【
図5】同実施形態のブリッジ部材の構成を示す斜視図。
【
図6】同実施形態のブリッジ部材近傍を上方から視た平面図。
【
図7】同実施形態のブリッジ部材を左方向から視た平面図。
【
図8】同実施形態の左側のテンプル部材のヒンジ構造近傍の構成を上方から視た平面図。
【
図9】同実施形態の左側のテンプル部材のヒンジ構造近傍の構成を左方向から視た平面図。
【
図10】同実施形態の右側のヒンジ構造を左方向から視た示す平面図。
【
図11】同実施形態の右側のヒンジ構造を分解して示す平面図。
【
図12】同実施形態のヒンジ構造の軸芯部材の構成を示す斜視図。
【
図13】同実施形態の右側のヒンジ構造の動作を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<全体構成>
以下に、本発明に係る眼鏡100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の眼鏡100は、レンズ1の外周を支えるリムを有しない、所謂リムレスタイプ(ツーポイントタイプ)のものである。具体的にこの眼鏡100は、
図1~
図4に示すように、左右一対のレンズ1と、一対のレンズ1を連結するブリッジ部材2と、各レンズ1の外側端部に設けられた左右一対のヨロイ部材3と、各ヨロイ部材3から前後方向に延びて装着者の側頭部をホールドする一対のテンプル部材4と、各ヨロイ部材3と各テンプル部材4とを回動可能に接続する一対のヒンジ構造5とを有する。
【0019】
この眼鏡100は、ブリッジ部材2とヨロイ部材3とテンプル部材4が、いずれも金属製の線材からなるものである。具体的にはブリッジ部材2、ヨロイ部材3及びテンプル部材4の各々は、一本の線材を複数個所で曲げ加工することにより形成されたものである。ブリッジ部材2、ヨロイ部材3及びテンプル部材4の各々を構成する線材は、ここでは同じ金属材料からなるものであり、例えば純チタン又はチタン合金等からなるものが挙げられるがこれに限らない。なお、ブリッジ部材2、ヨロイ部材3及びテンプル部材4が互いに異なる金属材料から成る線材により構成されていてもよい。
【0020】
(1)レンズ1
本実施形態の眼鏡100のレンズ1は、種類及び形状は特に限定されず任意のものであってよい。レンズ1は例えば、焦点レンズや、遠近両用レンズ、中近レンズ又は近々レンズ等の累進レンズであってよく、球面レンズ、非球面レンズ又は両面非球面レンズ等であってもよい。またレンズ1の材質はプラスチックでもガラスでもよく、その表面に各種のコーティング加工(例えばUVカット、傷防止、反射防止等)が施されていてもよい。
【0021】
各レンズ1には、ブリッジ部材2及びヨロイ部材3を接続するための接続孔がその厚み方向に貫通して形成されている。具体的には、各レンズ1における内側(ブリッジ側)端部近傍にはブリッジ部材2を接続するためのブリッジ接続孔11が形成され、各レンズ1における外側(ヨロイ側)端部近傍にはヨロイ部材3を接続するためのヨロイ接続孔12が形成されている。
【0022】
(2)ブリッジ部材2
ブリッジ部材2は、一本の線材から形成されてなるものであり、線材の長手方向に沿った複数箇所(ここでは約20か所)で曲げ加工を施して形成されたものである。このブリッジ部材2は、
図5~
図7に示すように、中央に設けられて左右のレンズ1間に架け渡されるブリッジ部21と、ブリッジ部21を各レンズ1に接続するためのレンズ接続部22と、鼻当て6(クリングス)を保持するための鼻当て保持部23とを有する。
【0023】
ブリッジ部21は前方に向かって凸となるアーチ形状を成すアーチ部分21aをその中央に有している。このアーチ部分21aは、線材に対して長手方向に沿って略一定の間隔を空けて複数個所で曲げ加工を施すことにより形成された、左右対称形状をなすものである。このように、複数個所で曲げ加工を行いアーチ部分21aを形成することで、加工硬化によりブリッジ部21の強度を向上させることができる。ブリッジ部21の強度を向上させる観点から、アーチ部分21aにおける曲げ加工の間隔は短いほど好ましく、例えば2mm以下が好ましく、約1mm程度が好ましい。そして、線材の長手方向に沿ったアーチ部分21aの両端部は、曲げ加工を施すことにより、屈曲点21bを介して前方に向かって折れ曲がるように形成されている。アーチ部分21aの両端部をこのように折り曲げることで、ブリッジ部21の変形強度をより向上させることができる。
【0024】
レンズ接続部22はブリッジ部21の両端部に形成されている。このレンズ接続部22は、前方に向かって突き出すヘアピン形状となるように線材を曲げ加工して形成したものである。レンズ接続部22における前方に突き出す先端部22aは、レンズ1に形成されたブリッジ接続孔11に差し込まれて保持されており、これによりブリッジ部材2と各レンズ1とが接続されている。なおブリッジ接続孔11に差し込まれたレンズ接続部22の先端部22aは、接着剤等を用いてレンズ1に接着させるようにしてもよい。
【0025】
鼻当て保持部23は、ブリッジ部材2における線材の長手方向に沿った両端部に形成されている。具体的にこの鼻当て保持部23は、線材の両端部に曲げ加工を施して形成した輪状を成すものであり、この輪状部分に鼻当て6が差し込まれて保持される。
【0026】
(3)ヨロイ部材3
ヨロイ部材3は、一本の線材から形成されてなるものであり、線材の長手方向に沿った複数箇所(ここでは約10か所)で曲げ加工を施して形成されたものである。ヨロイ部材3は、
図8~
図10に示すように、前方に向かって突き出すヘアピン形状となるように形成されたレンズ接続部31を有している。ブリッジ部材2と同様に、このヨロイ部材3は、レンズ接続部31における前方に突き出す先端部が、レンズ1に形成されたヨロイ接続孔12に差し込まれて保持されている。ヨロイ部材3を構成する線材の両端部(2つの線端部53,54)は、レンズ接続部31から後方に向かって延伸しており、ヒンジ構造5を介してテンプル部材4に接続されている。
【0027】
(4)テンプル部材4
次に
図2~
図4、
図8及び
図9を参照してテンプル部材4の構成を説明する。テンプル部材4は、一本の線材から形成されてなるものであり、線材の長手方向に沿った複数箇所(ここでは約40か所)で曲げ加工を施すとともに、長手方向に沿ってローラ加工を部分的に施すことにより形成されたものである。テンプル部材4は、その基端部4aがヒンジ構造5を介してヨロイ部材3に接続されており、上下方向に直交する平面内においてヒンジ構造5を軸中心に回転して開閉するように構成されている。開いた状態においてテンプル部材4は、基端部4aから後方に向かって延伸し、その先端部4bが装着者の耳裏の側頭部に接触する形状を成している。以下、眼鏡100を開いた状態におけるテンプル部材4の形状を、基端側から先端側に向かって順に説明する。
【0028】
ヒンジ構造5に接続するテンプル部材4の基端側線端部41は、上下方向から視て、左右方向の内向きにヒンジ構造5から飛び出した後、複数回折れ曲がって左右方向の外向きに延伸する略U字形状を成している。この線端部41は、ヒンジ構造5よりも外側まで延伸して、以下に説明する前方突出部42に接続するようにされている。
【0029】
テンプル部材4における基端側線端部41よりも先端側には、前方に向かって突き出すように折り曲げられた前方突出部42が形成されている。この前方突出部42は、左右方向から視てヘアピン形状を成すように線材を曲げ加工して形成されたものであり、前方に向かって延伸した後、折れ曲がって後方に向かって延伸する形状を成している。
【0030】
この前方突出部42はヒンジ構造5の近傍に形成されており、具体的には左右方向においてヒンジ構造5よりも外側に位置するように形成されている。またここでは、前方突出部42はヒンジ構造5よりも前方に突出しないように形成されており、前方突出部42の突出端42aが前後方向においてヒンジ構造5の軸中心と同じ位置になるように形成されている。
【0031】
そしてテンプル部材4における前方突出部42よりも先端側には、上下方向から視て左右方向に変位するように段状に屈曲した第1段曲げ部43と、左右方向から視て上下方向に変位するように段状に屈曲した第2段曲げ部44とが形成されている。
【0032】
第1段曲げ部43は、上下方向から視て、線材を複数回(ここでは2回)屈曲させる(段曲げ加工、Z曲げ加工ともいう))ことにより形成されている。この第1段曲げ部43には、テンプル部材4の基端側から先端側に向かって順に、第1屈曲点431と第2屈曲点432が設けられている。前方突出部42から後方に向かって延伸する線材は、第1屈曲点431において左右方向の外側に向かって(ここでは、後方斜め外向きに)屈曲した後、第2屈曲点432において後方に向かって屈曲する形状をなしている。この第1段曲げ部43において、線材は左右方向の外側にオフセットされるとも言える。またこの第1段曲げ部43は、左右方向においてヒンジ構造5よりも外側に形成されており、より具体的には第1屈曲点431と第2屈曲点432の両方がヒンジ構造5よりも外側に形成されている。
【0033】
第2段曲げ部44は、左右方向から視て、線材を複数回(ここでは2回)屈曲させる(段曲げ加工、Z曲げ加工ともいう))ことにより形成されている。この第2段曲げ部44には、テンプル部材4の基端側から先端側に向かって順に、第3屈曲点441と第4屈曲点442が設けられている。前方突出部42から後方(具体的には後方斜め下向き)に向かって延伸する線材は、第3屈曲点441において上方に向かって(ここでは、後方斜め上向きに)屈曲した後、第4屈曲点442において後方に向かって屈曲する形状をなしている。この第2段曲げ部44において、線材は上方にオフセットされるとも言える。ここでは、第4屈曲点442は、上下方向においてヒンジ構造5を超えないようにその位置が設定されている。
【0034】
そしてここでは、第1段曲げ部43と第2段曲げ部44は、テンプル部材4を構成する線材における共通の線材部分に形成されており、第1屈曲点431と第2屈曲点432の間に、第3屈曲点441と第4屈曲点442が位置するように形成されている。つまり、テンプル部材4を構成する線材は、第1段曲げ部43において外側に変位している間に、第2段曲げ部44により上下方向に変位するように形成されている。
【0035】
そしてテンプル部材4における第1段曲げ部43と第2段曲げ部44よりも先端側には、左右方向の内向きに湾曲する内向き湾曲部45が形成されている。この内向き湾曲部45は、線材をロール曲げ加工(送り曲げ加工)することにより、一定の曲率半径で内向きになだらかに湾曲して装着者の側頭部の形状にフィットするように形成されたものである。
【0036】
そしてテンプル部材4における内向き湾曲部45よりも先端側には、装着者の耳裏の側頭部を左右から挟んで保持するためのホールド部46が形成されている。このホールド部46は、前後方向から視てテンプル部材4の先端が内側下方を向くように、曲げ加工により癖付けられている。
【0037】
具体的にこのホールド部46は、内向き湾曲部45の端から内向き下方向に向かって弧を描くように曲げられた曲線部461と、その後テンプル部材4の先端まで真っすぐ延伸する直線部462とを有する。この曲線部461は、線材に対して、長手方向に沿って複数個所で曲げ加工を施すことにより形成されている。ここでは、線材に対して、略一定の間隔(例えば0.5mm以上2mm以下であり、約1mmが好ましい)を空けて28か所で曲げ加工を施すことにより曲線部461が形成されている。
【0038】
(5)ヒンジ構造5
ヒンジ構造5は、
図10~
図12に示すように、側周面51cに穴51h(線材係止穴51hともいう)が形成された胴部511と、該胴部511よりも径が大きく、軸方向に沿ったネジ穴51sがその頂面51aに形成された頭部512とを有する軸芯部材51と、軸芯部材51のネジ穴51sに螺合する胴部521と、該胴部521よりも径が大きい頭部522とを有するネジ部材52と、ヨロイ部材3が有する2つの線端部53,54と、テンプル部材4が有する1つの線端部55(基端側線端部41)とを備えて構成されている。そしてこのヒンジ構造5では、ヨロイ部材3の一方の線端部53が軸芯部材51の線材係止穴51hに差し込まれるとともに、他方の線端部54が軸芯部材51の頭部512の頂面51aとネジ部材52の頭部522の座面52aとの間に挟まれており、ネジ部材52を軸芯部材51に締結することにより当該2つの線端部53,54が固定されている。そしてテンプル部材4の線端部55は、軸芯部材51の胴部511の側周面51cにおいて線材係止穴51hよりも頭部512側(上側)に設定された領域(巻き付け領域51rともいう)に巻き付けられており、これにより、軸芯部材51を軸中心としてテンプル部材4を開閉できるようになっている。
【0039】
線材係止穴51hは、胴部511の側周面51cにおいて、軸芯部材51の軸方向に直交する方向に沿って形成された止まり穴(非貫通穴)であり、ヨロイ部材3を構成する線材がガタつきなく嵌まり込む程度の穴径を有している。より具体的にこの線材係止穴51hは、左右方向の内側を向いて開口するように、軸芯部材51の胴部511に形成されている。これにより、線材係止穴51hにヨロイ部材3の一方の線端部53を左右方向の内側から差し込むようにしているので、テンプル部材4をたたむ際における軸芯部材51の回転を制限できるようになっている。
【0040】
またヨロイ部材3の他方の線端部54は、軸芯部材51の頂面51aとネジ部材52の座面52aとの間において、軸芯部材51のネジ穴51sを取り囲む輪状を成すように形成された輪状部分を有している。この輪状部分はその中心位置がネジ穴51sの中心位置と一致するようにして軸芯部材51の頂面51aとネジ部材52の座面52aとの間に挟んで固定されている。
【0041】
軸芯部材51の胴部511の巻き付け領域51rには、側周面51cを螺旋状に周回する螺旋溝51gが形成されている。テンプル部材4の線端部55は螺旋形状に形成されており、胴部511に形成された螺旋溝51gに螺合するように巻き付けられている。このためテンプル部材4を開閉すると、テンプル部材4の線端部55が軸芯部材51の螺旋溝51gに沿って回転することで、その軸方向に沿って上下に移動するようになっている。本実施形態の眼鏡100では、右側のヒンジ構造5と左側のヒンジ構造5は、軸芯部材51に形成した螺旋溝51gの向きが互いに逆向きになっており、左右のテンプル部材4を開閉させるとこれらは同じ方向に上下移動するようになっている。なおこの実施形態では軸芯部材51はその頭部512が上向きになるように設けられている。
【0042】
またこの軸芯部材51では、胴部511の側周面51cに形成された螺旋溝51gの向きと、頭部512に形成されたネジ穴51sのネジ溝の向きとが互いに同じになるようにしており、テンプル部材4を開く際に、ネジ部材52に対して軸芯部材51が緩む方向への回転を制限できるようになっている。
【0043】
さらに軸芯部材51の螺旋溝51gは、これに螺合するテンプル部材4の線端部55との嵌合公差が、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下となるように形成されており、また螺旋溝51gの表面には固体潤滑処理が施されている。
【0044】
そしてこのヒンジ構造5では、テンプル部材4を回動させて畳んだ状態から開いていくと、テンプル部材4の線端部55が上方向に移動していき、最終的に軸芯部材51の頭部512の座面51bに接触することによってテンプル部材4の回動動作が制限されて全開状態となるようにしている。つまりテンプル部材4の線端部55は、全開状態でのみ軸芯部材51の頭部512の座面51bに接触するようになっている。また螺旋形状に形成されたテンプル部材4の線端部55は、畳んだ状態から全開状態までの間は、軸芯部材51の胴部511の側周面51cにのみ接触しており、他の要素(具体的には、ヨロイ部材3の線端部53,54、軸芯部材51の頭部512)には接触しないように構成されている。
【0045】
またこのヒンジ構造5は、ヨロイ部材3の他方の線端部54が、軸芯部材51の頂面51aとネジ部材52の座面52aとの間から外部に突出する突出部分54aを有しており、
図13に示すように、全開状態において、テンプル部材4の線端部55とヨロイ部材3の線端部54の突出部分54aとが接触して干渉するように構成されている。
【0046】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の眼鏡100によれば、金属線材からなるテンプル部材4に、左右方向に変位する第1段曲げ部43と上下方向に変位する第2段曲げ部44とが形成されているので、テンプル部材4が過度に開かれたり、上下方向にねじりの力が加わった際に、ヒンジ構造5にかかる負荷を小さくできる。すなわち、テンプル部材4が過度に開かれる場合には、テンプル部材4が第1段曲げ部43において弾性的に変形することでその力を吸収し、ヒンジ構造5にかかる負荷を小さくできる。一方で左右のテンプル部材4に上下方向にねじりの力が加わった際には、テンプル部材4が第2段曲げ部44において弾性的に変形することでその力を吸収し、ヒンジ構造5にかかる負荷を小さくできる。このように、第1段曲げ部43と第2段曲げ部44が、テンプル部材4に加わる力を吸収するクッションのような機能を果たすことにより、テンプル部材4に無理な力が加わった際にヒンジ構造5にかかる負荷を小さくすることができる。
【0047】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0048】
例えば前記実施形態のテンプル部材4は、ヒンジ構造5の近傍に前方突出部42が形成され、また基端側線端部41はU字形状を成すように形成されていたが、これに限らない。他の実施形態のテンプル部材4は、前方突出部42が形成されてなくてもよく、また基端側線端部41はU字形状を成すように形成されていなくてもよい。また他の実施形態のテンプル部材4は、内向き湾曲部45を有していてなくてもよい。
【0049】
また前記実施形態のテンプル部材4は、第1屈曲点431と第2屈曲点432の間に、第3屈曲点441と第4屈曲点442が位置するように形成されており、第1段曲げ部43において外側に変位している間に、第2段曲げ部44により上下方向に変位するように形成されていたがこれに限らない。他の実施形態では、第3屈曲点441と第4屈曲点442の間に、第1屈曲点431と第2屈曲点432が位置するように形成され、第2段曲げ部44において上下方向に変位している間に、第1段曲げ部43により外側に変位するように形成されていてもよい。
【0050】
また前記実施形態の眼鏡100は所謂リムレスタイプのものであったがこれに限らない。他の実施形態の眼鏡100はリムを有するタイプのものであってもよい。また前記実施形態の眼鏡100は、装着者の視力を矯正することを目的とするものに限らず、紫外線から眼を守ることを目的とするサングラスであってもよい。
【0051】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100・・・眼鏡
1 ・・・レンズ
3 ・・・ヨロイ部材
4 ・・・テンプル部材
4a ・・・基端部
4b ・・・先端部
43 ・・・第1段曲げ部
44 ・・・第2段曲げ部
5 ・・・ヒンジ構造