(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】センサ装置、故障診断システム、及びセンサ装置の施工方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240430BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240430BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2022098099
(22)【出願日】2022-06-17
【審査請求日】2023-08-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)講演会での公開 集会名、開催場所 第61回航空原動機・宇宙推進講演会 米子コンベンションセンター BIGSHIP(鳥取県米子市末広町294) 開催日 令和4年3月9日 (2)第61回航空原動機・宇宙推進講演会講演集 ウェブサイト ウェブサイトのアドレス https://www.sanwa-s.com/checkupsite/61st_0304/ ウェブサイトの掲載日 令和4年3月9日 (3)刊行物への発表 刊行物 第61回航空原動機・宇宙推進講演会講演集 CD-ROM(JP番号:23683473)、日本航空宇宙学会 国立国会図書館の受入年月日 令和4年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】富永 晃司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 剛
(72)【発明者】
【氏名】長田 泰一
(72)【発明者】
【氏名】和田 大地
(72)【発明者】
【氏名】久田 深作
(72)【発明者】
【氏名】河津 要
(72)【発明者】
【氏名】葛西 時雄
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0003499(US,A1)
【文献】特開2005-257289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0302348(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0285705(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0094798(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0292384(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のFBGセンサが形成された光ファイバと、
前記光ファイバに光を入射させるとともに、前記複数のFBGセンサの少なくとも1つで反射された前記光である反射光を検出する検出部と、を備え、
前記光ファイバにおける前記複数のFBGセンサが形成された部分は、配管に、前記光ファイバにおける前記FBGセンサが形成された部分側から見た前記配管の側面視において、前記配管の軸線に対して垂直又は鋭角である巻き付け角度をなすようにそれぞれ巻き付けら
れ、
前記巻き付け角度は、前記配管の外径が小さくなるに従い小さくされている、センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記複数のFBGセンサの周波数応答関数である複数の取得周波数応答関数を算出する算出部と、
前記配管内を流体が正常に流れる状態を模擬した解析結果、又は前記配管内を前記流体が正常に流れる実験結果により得られる、前記複数のFBGセンサが配置された前記配管の複数の部分における周波数応答関数である複数の正常周波数応答関数を記憶する記憶部と、
前記複数の取得周波数応答関数と前記複数の正常周波数応答関数とを比較し、前記配管内の前記流体の流れにおける異常の有無を判定する判定部と、
を備える、故障診断システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記配管において異常が生じた部分又は範囲を特定する、
請求項2に記載の故障診断システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記配管の所定の前記部分に対応する前記取得周波数応答関数と前記正常周波数応答関数との関係性に着目した処理結果が、予め定められた閾値以上であるときに、前記所定の部分に異常が生じていると判定する、
請求項3に記載の故障診断システム。
【請求項5】
複数のFBGセンサが形成された光ファイバと、前記光ファイバに光を入射させるとともに、前記複数のFBGセンサの少なくとも1つで反射された前記光である反射光を検出する検出部と、を備えるセンサ装置を配管に巻き付けるセンサ装置の施工方法であって、
前記光ファイバにおける前記複数のFBGセンサが形成された部分を、前記配管に、前記光ファイバにおける前記FBGセンサが形成された部分側から見た前記配管の側面視において、前記配管の軸線に対して垂直又は鋭角である巻き付け角度をなすようにそれぞれ巻き付
け、
前記巻き付け角度を、前記配管の外径が小さくなるに従い小さくする、センサ装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、故障診断システム、及びセンサ装置の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉格納容器の内側に設置された配管の圧力変動を、監視システムにより監視することが行われている(例えば、特許文献1参照)。監視システムは、ひずみ測定部と、光ファイバと、変換器と、監視装置と、から構成されている。
ひずみ測定部は、配管の周方向に貼り付けられている。光ファイバは、ひずみ測定部で測定した光信号を導く。変換器は、光信号を電圧信号に変換する。監視装置は、変換器からの出力信号を観測する。
【0003】
一方で、宇宙機液体推進システムにおける機器故障を診断する、故障診断システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。宇宙機液体推進システムにおける推進制御モジュールは、3個のスラスタと、燃料タンクと、酸化剤タンクと、第1供給管(配管)と、第2供給管と、圧力センサと、制御部と、を備えている。
第1供給管は、主配管と、主配管から3つのスラスタに向けて分岐する第1分岐管と、を備えている。第2供給管は、主配管と、主配管から3つのスラスタに向けて分岐する第2分岐管と、を備えている。
各スラスタには、燃料タンクから第1供給管を介して燃料が供給されるとともに、酸化剤タンクから第2供給管を介して酸化剤が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-256681号公報
【文献】特開2021-124045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の監視システム及び特許文献2の故障診断システムでは、配管における複数の部分を同時に測定しようとすると、光ファイバの本数、圧力センサ及び圧力センサに接続されたケーブルの本数が増えて、装置の構成が大きくなる。
また、特許文献1の監視システムのように、光信号を導く光ファイバを用いる場合がある。この場合、光ファイバを配管に巻き付け、その配管の外径が比較的細いときには、巻き付けられる光ファイバの曲率半径が小さくなり、光信号の光損失が大きくなる虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、装置の構成が大きくなるのを抑えつつ配管における複数の部分を同時に測定するとともに、配管の外径が比較的細い場合であっても光損失を抑えて測定可能なセンサ装置、このセンサ装置を備える故障診断システム、このセンサ装置の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、複数のFBGセンサが形成された光ファイバと、前記光ファイバに光を入射させるとともに、前記複数のFBGセンサの少なくとも1つで反射された前記光である反射光を検出する検出部と、を備え、前記光ファイバにおける前記複数のFBGセンサが形成された部分は、配管に、前記光ファイバにおける前記FBGセンサが形成された部分側から見た前記配管の側面視において、前記配管の軸線に対して垂直又は鋭角である巻き付け角度をなすようにそれぞれ巻き付けられ、前記巻き付け角度は、前記配管の外径が小さくなるに従い小さくされている、センサ装置である。
【0008】
この発明では、複数のFBGセンサが形成された光ファイバが配管に巻き付けられているため、例えば、配管内を流れる流体により配管が周方向に歪(ひず)むと、配管と一体になって、光ファイバにおける複数のFBGセンサが形成された部分も歪む。
検出部から光ファイバに入射した光の一部は、流体の流れに応じて歪んだ複数のFBGセンサにより反射され、反射光となる。複数のFBGセンサが歪み、例えば反射光における波長に対する強度の分布の変化を検出部が検出することにより、配管において複数のFBGセンサが設けられた部分を、1本の光ファイバにより同時に測定することができる。複数の部分を測定する際に、光ファイバを1本のみ用いるため、センサ装置の構成が大きくなるのを抑えることができる。
また、光ファイバにおける複数のFBGセンサが形成された部分は、配管に、光ファイバにおけるFBGセンサが形成された部分側から見た配管の側面視において、配管の軸線に対して垂直又は鋭角である巻き付け角度をなすようにそれぞれ巻き付けられている。従って、配管の外径が比較的細い場合であっても、配管に巻き付けらえる光ファイバの曲率半径が小さくなるのが抑制される。これにより、光ファイバにより送られる光の光損失を抑えて、測定することができる。
【0010】
(2)本発明の態様2は、前記(1)に記載のセンサ装置と、前記検出部の検出結果に基づいて前記複数のFBGセンサの周波数応答関数である複数の取得周波数応答関数を算出する算出部と、前記配管内を流体が正常に流れる状態を模擬した解析結果、又は前記配管内を前記流体が正常に流れる実験結果により得られる、前記複数のFBGセンサが配置された前記配管の複数の部分における周波数応答関数である複数の正常周波数応答関数を記憶する記憶部と、前記複数の取得周波数応答関数と前記複数の正常周波数応答関数とを比較し、前記配管内の前記流体の流れにおける異常の有無を判定する判定部と、を備える、故障診断システムである。
【0011】
この発明では、記憶部には、予め、配管内を流体が正常に流れる状態を模擬した解析結果、又は配管内を流体が正常に流れる実験結果により得られる、複数のFBGセンサが配置された配管の複数の部分における複数の正常周波数応答関数が記憶されている。
この状態で、算出部は、検出部の検出結果に基づいて複数のFBGセンサの複数の取得周波数応答関数を算出する。判定部が複数の取得周波数応答関数と複数の正常周波数応答関数とを比較し、配管内の流体の流れにおける異常の有無を判定することにより、周波数応答関数に基づいて複数のFBGセンサが配置された配管の複数の部分における異常の有無を判定することができる。
【0012】
(3)本発明の態様3は、前記判定部は、前記配管において異常が生じた部分又は範囲を特定する、前記(2)に記載の故障診断システムであってもよい。
この発明では、配管における異常がある、所定の部分を又は所定の範囲を特定することができる。
【0013】
(4)本発明の態様4は、前記判定部は、前記配管の所定の前記部分に対応する前記取得周波数応答関数と前記正常周波数応答関数との関係性に着目した処理結果が、予め定められた閾値以上であるときに、前記所定の部分に異常が生じていると判定する、前記(3)に記載の故障診断システムであってもよい。
この発明では、閾値という予め定められた数値に基づき、この閾値と処理結果とを比較することにより、異常が生じている所定の部分を、判定部が公平かつ迅速に判定することができる。
【0014】
(5)本発明の態様5は、複数のFBGセンサが形成された光ファイバと、前記光ファイバに光を入射させるとともに、前記複数のFBGセンサの少なくとも1つで反射された前記光である反射光を検出する検出部と、を備えるセンサ装置を配管に巻き付けるセンサ装置の施工方法であって、前記光ファイバにおける前記複数のFBGセンサが形成された部分を、前記配管に配管径に応じて適切な巻き付け角度を決定し、前記光ファイバにおける前記FBGセンサが形成された部分側から見た前記配管の側面視において、前記配管の軸線に対して垂直又は鋭角である巻き付け角度をなすようにそれぞれ巻き付け、前記巻き付け角度を、前記配管の外径が小さくなるに従い小さくする、センサ装置の施工方法である。
【0015】
この発明では、複数のFBGセンサが形成された光ファイバが配管に巻き付けられるため、例えば、配管内を流れる流体により配管が周方向に歪むと、配管と一体になって、光ファイバにおける複数のFBGセンサが形成された部分も歪む。
検出部から光ファイバに入射した光の一部は、流体の流れに応じて歪んだ複数のFBGセンサにより反射され、反射光となる。複数のFBGセンサが歪み、例えば反射光における波長に対する強度の分布の変化を検出部が検出することにより、配管において複数のFBGセンサが設けられた部分を、1本の光ファイバにより同時に測定することができる。複数の部分を測定する際に、光ファイバを1本のみ用いるため、センサ装置の構成が大きくなるのを抑えることができる。
また、光ファイバにおける複数のFBGセンサが形成された部分は、配管に、光ファイバにおけるFBGセンサが形成された部分側から見た配管の側面視において、配管の軸線に対して垂直又は鋭角である巻き付け角度をなすようにそれぞれ巻き付けられる。従って、配管の外径が比較的細い場合であっても、配管に巻き付けらえる光ファイバの曲率半径が小さくなるのが抑制される。これにより、光ファイバにより送られる光の光損失を抑えて、測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセンサ装置、故障診断システム、及びセンサ装置の施工方法では、装置の構成が大きくなるのを抑えつつ配管における複数の部分を同時に測定するとともに、配管の外径が比較的細い場合であっても光損失を抑えて測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の故障診断システムによる診断の対象となる配管系の概要を示す図である。
【
図2】同故障診断システムの概要構成を示す図である。
【
図3】同故障診断システムの光ファイバが、配管系の第1配管に巻き付けられた状態を示す側面図である。
【
図4】同故障診断システムの光ファイバが、配管系の第2配管に巻き付けられた状態を示す側面図である。
【
図5】鋭角に基づいた補正を行う前の、時間に対する圧力の変化を表す図である。
【
図6】鋭角に基づいた補正を行った後の、時間に対する圧力の変化を表す図である。
【
図7】周波数に対する周波数応答関数のゲインの変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るセンサ装置、故障診断システム、及びセンサ装置の施工方法の一実施形態を、
図1から
図7を参照しながら説明する。
まず、
図1を用いて、故障診断システムによる診断の対象となる配管系100について説明する。
配管系100の構成は、配管系が後述する配管を備えていれば、限定されない。例えば、配管系100は、タンク101と、第1接続管102と、第1配管(配管)103と、複数の第2配管(配管)104A,104Bと、第2接続管105A,105Bと、バルブ106A~106Eと、電磁弁107A,107Bと、圧力センサ108A~108Fと、を有する。なお、
図1中には、第1配管103及び第2配管104A,104Bの外径の大きさのイメージを、二点鎖線で示す。以下では、第1配管103及び第2配管104A,104Bをまとめて、配管112と言う。
なお、配管系100にバルブ、電磁弁、圧力センサが配置される位置、これらを備える数等は、これに限定されない。
【0019】
例えば、タンク101には、水(流体)Wが収容されている。タンク101内は、ガス等により加圧されていることが好ましい。なお、タンク101に収容される流体は水Wに限定されず、燃料、酸化剤等でもよい。
第1接続管102は、第1片102aと、第2片102bと、を有する。第1片102a及び第2片102bは、それぞれ管状である。第1片102aの第1端部は、タンク101内におけるタンク101の底部近傍に配置されている。第1片102aは、上下方向に沿って延び、第1片102aにおける第1端部とは反対側の第2端部は、タンク101よりも上方に突出している。
第2片102bは、第1片102aの上端部から水平面に沿って延びている。
【0020】
第1配管103は、第1接続管102の第2片102bにおける第1片102aが接続されていない端部から、水平面に沿って延びている。
第2配管104A,104Bの外径は、第1配管103の外径よりも小さい。第2配管104Aは、第1配管103が延びる先端部から、水平面に沿って延びている。
第2配管104Bは、第1片104aBと、第2片104bBと、を有する。第1片104aB及び第2片104bBは、それぞれ管状である。
第1片104aBは、第1配管103が延びる先端部から、下方に向かって延びている。第2片104bBは、第1片104aBの下端部から、水平面に沿うとともに第2配管104Aに対して上下方向に対向するように延びている。
【0021】
第2接続管105Aは、第2配管104Aが延びる先端部から、水平面に沿って延びている。第2接続管105Bは、第2配管104Bの第2片104bBが延びる先端部から、水平面に沿って延びている。
なお、タンク101に排出管111が接続されている。
【0022】
バルブ106A~106Eは、配管112等を、水Wが流れる開状態と、水Wが流れない閉状態と、に切り替えることができる。バルブ106Aは、第1接続管102の第1片102aに設けられている。バルブ106Bは、第1接続管102の第2片102bに設けられている。
バルブ106Cは、第2接続管105Aに設けられている。バルブ106Dは、第2接続管105Bに設けられている。バルブ106C,106Dは、第2接続管105A,105B内を流れる水Wの流量を調整することができる。バルブ106Eは、排出管111に設けられている。
電磁弁107A,107Bは、第2接続管105A,105Bを、水Wが流れる開状態と、水Wが流れない閉状態と、に切り替えることができる。
電磁弁107Aは、第2接続管105Aにおける第2配管104Aに接続された端部に設けられている。電磁弁107Bは、第2接続管105Bにおける第2配管104Bに接続された端部に設けられている。
【0023】
圧力センサ108Aは、タンク101内の圧力を測定する。圧力センサ108Bは、第1接続管102の第2片102bと第1配管103との接続部分内の圧力を測定する。
圧力センサ108Cは、第2配管104Aと第2接続管105Aとの接続部分内の圧力を測定する。圧力センサ108Dは、第2接続管105Aにおけるバルブ106C及び電磁弁107Aが設けられた部分の間の圧力を測定する。
圧力センサ108Eは、第2配管104Bと第2接続管105Bとの接続部分内の圧力を測定する。圧力センサ108Fは、第2接続管105Bにおけるバルブ106D及び電磁弁107Bが設けられた部分の間の圧力を測定する。
【0024】
以上のように構成された配管系100では、操作者が、バルブ106A,106B,106Eを適宜開閉するとともに、バルブ106C,106Dの開度を適宜調整し、電磁弁107A,107Bを適宜開閉する。これにより、第2接続管105A,105Bから配管系100の外部に流れ出る水Wの流量を調整することができる。
その際に圧力センサ108A~108Fにより、配管系100における各部分の圧力を測定することができる。
【0025】
次に、
図2を用いて、故障診断システム1について説明する。
故障診断システム1は、本実施形態のセンサ装置10と、算出部20と、記憶部22と、判定部24と、を備える。
センサ装置10は、光ファイバ11と、検出部12と、を有する。
例えば、光ファイバ11は、図示はしないが、コア、及びコアの外周面を覆うクラッドを有する。光ファイバ11のコアには、複数のFBG(Fiber Bragg Grating:屈折率変調回折格子)センサ14が形成されている。なお、
図2以下において、複数のFBGセンサ14をハッチングで示す。
【0026】
図3及び
図4に示すように、光ファイバ11における複数のFBGセンサ14が形成された部分(以下では、センサ形成部11aと言う)は、第1配管103及び第2配管104Aにそれぞれ巻き付けられている。
ここで、
図3に示すように、第1配管103の軸線(中心軸線)を、軸線O1と言う。
図4に示すように、第2配管104Aの軸線を、軸線O2と言う。
より詳しく説明すると、
図3に示すように、センサ形成部11aは、第1配管103に、センサ形成部11a側から見た第1配管103の側面視において(第1配管103をセンサ形成部11aに対向するように見たときに)、軸線O1に対して傾斜して鋭角である巻き付け角度θ1をなすように巻き付けられている。言い換えれば、センサ形成部11aは、リード角が巻き付け角度θ1となるように、第1配管103に巻き付けられている。
【0027】
同様に、
図4に示すように、センサ形成部11aは、第2配管104Aに、センサ形成部11a側から見た第2配管104Aの側面視において(第2配管104Aをセンサ形成部11aに対向するように見たときに)、軸線O1に対して傾斜して鋭角である巻き付け角度θ2をなすように巻き付けられている。言い換えれば、センサ形成部11aは、リード角が巻き付け角度θ2となるように、第2配管104Aに巻き付けられている。
なお、巻き付け角度θ1,θ2は、垂直(直角)でもよい。
【0028】
巻き付け角度θ1,θ2は、配管103,104A,104Bの径(外径)に応じて適切に決定される。具体的には、第2配管104Aに対する巻き付け角度θ2は、第1配管103に対する巻き付け角度θ1よりも小さいことが好ましい。巻き付け角度θ1,θ2は、配管112の外径、配管112の材質等により適宜調節される。
配管112とセンサ形成部11aとは、接着剤やテープ30(
図3参照)等により互いに固定されている。配管112が周方向に歪むと、配管112と一体になってセンサ形成部11aが歪む。
【0029】
複数のFBGセンサ14が配置される配管112の部分は、特に限定されない。
図1に示すように、以下では、複数のFBGセンサ14が配置された第1配管103の複数の部分を、センサ設置部分103a,103bと言う。
例えば、センサ設置部分103aは、第1配管103における第1接続管102に接続された側の端部である。センサ設置部分103bは、第1配管103における第2配管104Aに接続された側の端部である。
以下では、複数のFBGセンサ14が配置された第2配管104A,104Bの複数の部分を、センサ設置部分104aA,104bA,104cB~104fBと言う。
センサ設置部分104aAは、第2配管104Aにおける第1配管103に接続された側の端部である。センサ設置部分104bAは、第2接続管105Aにおける第2配管104Aに接続された側の端部である。
【0030】
センサ設置部分104cBは、第2配管104Bの第1片104aBにおける第1配管103に接続された側の端部である。センサ設置部分104dBは、第1片104aBにおける第2片104bBに接続された側の端部である。センサ設置部分104eBは、第2片104bBにおける第1片104aBに接続された側の端部である。センサ設置部分104fBは、第2接続管105Bにおける第2配管104Bに接続された側の端部である。
以下では、センサ設置部分103a,103b,104aA,104bA,104cB~104fBを、センサ設置部分103a等と言う。
【0031】
図2に示すように、検出部12は、光ファイバ11に光を入射させるとともに、複数のFBGセンサ14の少なくとも1つで反射された光である反射光を検出する。
算出部20、記憶部22、及び判定部24は、互いにバス26により接続されている。バス26は、検出部12に接続されている。
算出部20は、検出部12の検出結果に基づいて、例えば反射光における波長に対する強度の分布の変化を検出する。そして、算出部20は、この関係から複数のセンサ形成部11aの歪を検出する。算出部20は、複数のセンサ形成部11aの歪から、センサ設置部分103a等における配管112の圧力を算出する。
【0032】
算出部20は、算出した圧力を周波数解析し、複数のFBGセンサ14の周波数応答関数(Frequency Response Function)である複数の取得周波数応答関数を算出する。例えば、取得周波数応答関数は、算出した圧力の、周波数に対する周波数応答関数である。
より詳しく説明すると、算出部20は、センサ設置部分103aに対応する取得周波数応答関数、センサ設置部分103bに対応する取得周波数応答関数、‥、センサ設置部分104fBに対応する取得周波数応答関数をそれぞれ算出する。
【0033】
記憶部22は、複数の正常周波数応答関数、周波数応答関数閾値(閾値)等を記憶する。複数の正常周波数応答関数は、センサ設置部分103a等における周波数応答関数である。
より詳しく説明すると、複数の正常周波数応答関数は、センサ設置部分103aに対応する正常周波数応答関数、センサ設置部分103bに対応する正常周波数応答関数、‥、センサ設置部分104fBに対応する正常周波数応答関数である。
平均二乗誤差の閾値は、異常及び正常を判定するために予め定められた値である。
【0034】
複数の正常周波数応答関数は、配管112内を水Wが正常に流れる状態を模擬した解析結果により得られる。また、複数の正常周波数応答関数は、配管112内を水Wが正常に流れる実験結果によっても得られる。
ここで言う水Wが正常に流れるとは、配管112内が水Wで満たされて、空気等の水W以外の流体が配管112内に入らず、バルブ106A~106E及び電磁弁107A,107Bの開度不良による水Wの流量異常が無いことを意味する。
【0035】
複数の正常周波数応答関数は、配管系100に対する固有の周波数応答関数である。複数の正常周波数応答関数は、所定の配管系に対して解析又は実験を行うことにより得られる。例えば、正常周波数応答関数は、周波数に対応してゲインが変化する。
故障診断システム1で配管系100の診断を行う前に、記憶部22には、複数の正常周波数応答関数及び平均二乗誤差の閾値が予め記憶されていることが好ましい。
【0036】
判定部24は、複数の取得周波数応答関数と複数の正常周波数応答関数とを比較し、配管112内の水Wの流れにおける異常の有無を判定する。例えば、判定部24は、配管112の所定の部分に対応する取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との関係性に着目した処理結果(分析結果)が、予め定められた閾値以上であるときに、前記所定の部分に異常が生じていると判定する。例えば、取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との関係性に着目した処理結果は、取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との平均二乗誤差(Mean Squared Error)であり、閾値は平均二乗誤差の閾値である。
より詳しく説明すると、判定部24は、センサ設置部分103aに対応する取得周波数応答関数と正常周波数応答関数とを比較し、これらの周波数応答関数からセンサ設置部分103aに対応する平均二乗誤差を算出する。同様に、判定部24は、センサ設置部分103b,104aA,104bA,104cB~104fBに対応する平均二乗誤差をそれぞれ算出する。
【0037】
例えば、センサ設置部分103aに対応する平均二乗誤差が予め定めた閾値(平均二乗誤差の閾値)以上であり、センサ設置部分103b,104aA,104bA,104cB~104fBに対応する平均二乗誤差が予め定めた閾値未満である場合には、判定部24は、センサ設置部分103aに異常が生じていると判定し、センサ設置部分103b,104aA,104bA,104cB~104fBは正常であると判定する。
例えば、配管112に沿って隣り合うセンサ設置部分103a,103bに対応する平均二乗誤差が予め定めた閾値以上であり、センサ設置部分104aA,104bA,104cB~104fBに対応する平均二乗誤差が予め定めた閾値未満である場合には、判定部24は、センサ設置部分103aとセンサ設置部分103bとの間に対応する第1配管103の範囲に異常が生じていると判定する。
以上のように、判定部24は、配管112において異常が生じた部分(センサ設置部分)又は範囲を特定する。
【0038】
ここで、判定部24が平均二乗誤差を求める方法について説明する。
周波数応答関数H(f)は,入力信号aのフーリエスペクトルA(f)と出力信号bのフーリエスペクトルB(f)を用いて(1)式で表される。
【0039】
【0040】
(1)式の右辺における分子及び分母に、入力信号aのフーリエスペクトルA(f)の複素共役A*(f)をそれぞれかけると、H(f)は入力信号aのパワースペクトルGaa(f)及び入力信号aと出力信号bのクロススペクトルGba(f)を用いて(2)式のように表される。
【0041】
【0042】
(2)式の周波数応答関数H(f)は、出力信号bのフーリエスペクトルB(f)にノイズが多い場合に用いられ、平均化によりランダムエラーが最小化される。
【0043】
本実施形態のセンサ装置の施工方法(以下では、単に施工方法とも言う)は、センサ装置10を配管112に巻き付ける方法である。
施工方法は、センサ形成部11aを、配管112に、センサ形成部11a側から見た配管112の側面視において、配管112の軸線O1,O2に対して傾斜して鋭角である巻き付け角度θ1,θ2をなすようにそれぞれ巻き付ける。
【0044】
(センサ装置を用いた配管の圧力の測定結果)
ここで、配管系100における配管112の圧力(歪)をセンサ装置10により測定した結果について説明する。
なお、配管112におけるセンサ設置部分103a等では、図示しない圧力センサにより圧力が測定される。圧力センサにより測定した圧力と、センサ装置10のFBGセンサ14で測定した圧力と、を比較した。センサ装置10のセンサ形成部11aは、配管112に、軸線に対して傾斜して鋭角θをなすように巻き付けられている。
比較した結果を、
図5に示す。
図5において、横軸は時間(ms(ミリ秒))を表し、縦軸は圧力(MPa(メガパスカル))を表す。
この場合、圧力センサによる圧力に対するセンサ装置10による最大ピーク圧力の誤差は、12%であった。
【0045】
一方で、センサ装置10により測定した歪εに対して、鋭角θに基づいた補正を行い、圧力を算出した。鋭角θに基づいた補正は、式(3)により行われる。式(3)は、配管の内径Ri、外径Ro、ヤング率E、ポアソン比ν、及び鋭角θを用いて、歪εを圧力Pに換算する。
【0046】
【0047】
比較した結果を、
図6に示す。この場合、圧力センサによる圧力に対するセンサ装置10による最大ピーク圧力の誤差は、3.4%であった。鋭角θに基づいた補正を行うことにより、センサ装置10により測定される圧力(歪)の精度が向上することが分かった。
【0048】
(周波数応答関数の一例)
次に、正常周波数応答関数及び取得周波数応答関数の一例ついて説明する。
図7に、周波数に対する正常周波数応答関数及び取得周波数応答関数のゲインの変化を示す。
図7において、横軸は周波数(Hz(ヘルツ))を表し、縦軸は周波数応答関数のゲイン(dB(デシベル))を表す。正常周波数応答関数のゲインは、(4)式により与えられる。一方で、取得周波数応答関数のゲインは、(5)式により与えられる。
【0049】
【0050】
判定部24は、取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との平均二乗誤差が周波数応答関数閾値以上であるときに、異常が生じていると判定する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のセンサ装置10では、複数のFBGセンサ14が形成された光ファイバ11が配管112に巻き付けられているため、例えば、配管112内を流れる水Wにより配管112が周方向に歪むと、配管112と一体になって、光ファイバ11における複数のFBGセンサ14が形成された部分も歪む。
検出部12から光ファイバ11に入射した光の一部は、水Wの流れに応じて歪んだ複数のFBGセンサ14により反射され、反射光となる。複数のFBGセンサ14が歪み、例えば反射光における波長に対する強度の分布の変化を検出部12が検出することにより、センサ設置部分103a等を、1本の光ファイバ11により同時に測定することができる。複数の部分を測定する際に、光ファイバ11を1本のみ用いるため、センサ装置10の構成が大きくなるのを抑えることができる。
【0052】
また、センサ形成部11aは、配管112に、センサ形成部11a側から見た配管112の側面視において、配管112の軸線O1,O2に対して傾斜して鋭角である巻き付け角度θ1,θ2をなすようにそれぞれ巻き付けられている。従って、配管112の外径が比較的細い場合であっても、配管112に巻き付けらえる光ファイバ11の曲率半径が小さくなるのが抑制される。これにより、光ファイバ11により送られる光の光損失を抑えて、測定することができる。
【0053】
巻き付け角度θ1,θ2は、配管103,104Aの径に応じて適切に決定される。これにより、巻き付け角度θ1,θ2を配管103,104Aの径に応じて適切に決定することができる。
第2配管104Aに対する巻き付け角度θ2は、第1配管103に対する巻き付け角度θ1よりも小さい場合がある。この場合には、外径が第1配管103よりも小さい第2配管104Aの歪を測定する際に、第2配管104Aに巻き付けらえる光ファイバ11の曲率半径が小さくなるのを、より確実に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の故障診断システム1では、記憶部22には、予め、配管112内を水Wが正常に流れる状態を模擬した解析結果、又は配管112内を水Wが正常に流れる実験結果により得られる、センサ設置部分103a等における複数の正常周波数応答関数が記憶されている。
この状態で、算出部20は、検出部12の検出結果に基づいて複数のFBGセンサ14の複数の取得周波数応答関数を算出する。判定部24が複数の取得周波数応答関数と複数の正常周波数応答関数とを比較し、配管112内の水Wの流れにおける異常の有無を判定することにより、周波数応答関数に基づいてセンサ設置部分103a等における異常の有無を判定することができる。
【0055】
判定部24は、配管112において異常が生じた部分又は範囲を特定する。従って、配管112における異常がある、所定の部分を又は所定の範囲を特定することができる。
判定部24は、配管112の所定の部分に対応する取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との関係性に着目した処理結果が、予め定められた閾値以上であるときに、前記所定の前記部分に異常が生じていると判定する。このため、閾値という予め定められた数値に基づき、この閾値と処理結果とを比較することにより、異常が生じている所定の部分を、判定部24が公平かつ迅速に判定することができる。
取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との関係性に着目した処理結果が、取得周波数応答関数と正常周波数応答関数との平均二乗誤差である場合には、閾値という予め定められた数値に基づき、この閾値と平均二乗誤差とを比較することにより、異常が生じている所定の部分を、判定部24が公平かつ、より迅速に判定することができる。
【0056】
また、本実施形態の施工方法では、複数のFBGセンサ14が形成された光ファイバ11が配管112に巻き付けられるため、例えば、配管112内を流れる水Wにより配管112が周方向に歪むと、配管112と一体になって、光ファイバ11における複数のFBGセンサ14が形成された部分も歪む。
検出部12から光ファイバ11に入射した光の一部は、水Wの流れに応じて歪んだ複数のFBGセンサ14により反射され、反射光となる。複数のFBGセンサ14が歪み、例えば反射光における波長に対する強度の分布の変化を検出部12が検出することにより、センサ設置部分103a等を、1本の光ファイバ11により同時に測定することができる。複数の部分を測定する際に、光ファイバ11を1本のみ用いるため、センサ装置10の構成が大きくなるのを抑えることができる。
また、センサ形成部11aは、配管112に、センサ形成部11a側から見た配管112の側面視において、配管112の軸線O1,O2に対して傾斜して鋭角である巻き付け角度θ1,θ2をなすようにそれぞれ巻き付けられる。従って、配管112の外径が比較的細い場合であっても、配管112に巻き付けらえる光ファイバ11の曲率半径が小さくなるのが抑制される。これにより、光ファイバ11により送られる光の損失を抑えて、測定することができる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、判定部24が配管112の異常を判定する際に、平均二乗誤差とは異なる値を用いてもよい。
故障診断システムでは、周波数応答関数に代えて、周波数スペクトルデータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 故障診断システム
10 センサ装置
11 光ファイバ
12 検出部
14 FBGセンサ
20 算出部
22 記憶部
24 判定部
103 第1配管(配管)
104A,104B 第2配管(配管)
112 配管
O1,O2 軸線
W 水(流体)
θ1,θ2 巻き付け角度