IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コネクテッドロボティクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業システム 図1
  • 特許-作業システム 図2
  • 特許-作業システム 図3
  • 特許-作業システム 図4
  • 特許-作業システム 図5
  • 特許-作業システム 図6
  • 特許-作業システム 図7
  • 特許-作業システム 図8
  • 特許-作業システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-10
(54)【発明の名称】作業システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240430BHJP
   A47J 37/12 20060101ALI20240430BHJP
   A47J 44/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
A47J37/12 321
A47J44/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022099254
(22)【出願日】2022-06-20
(65)【公開番号】P2024000456
(43)【公開日】2024-01-05
【審査請求日】2023-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)2021年10月27日に自社Webサイト(https://connected-robotics.com/2021/10/27/potato-robot/,https://connected-robotics.com/2021/10/27/potato-robot/)にて発表。 (2)2021年10月28日に外食日報(第9033号),株式会社外食産業新聞社にて発表。 (3)2021年11月4日に毎日新聞・オンライン版(https://mainichi.jp/articles/20211104/k00/00m/020/165000c)にて発表。 (4)2021年11月8日に毎日新聞英語版「The Mainichi」・オンライン版(https://mainichi.jp/english/articles/20211106/p2a/00m/0na/011000c)にて発表。 (5)2021年11月4日に日経新聞・オンライン版(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC033AF0T01C21A1000000/)にて発表。 (6)2021年11月4日に南相馬ジャスモール催事ホールにて開催された「BEX BURGER(ベックスバーガー)ラボ店」オープンの記者会見にて発表。 (7)2021年11月5日に南相馬ジャスモール駐車場にて行ったBEX BURGER(ベックスバーガー)ラボ店の実証実験にて発表。 (8)2021年11月19日に日刊工業新聞・オンライン版(https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00619124)にて発表。 (9)2022年1月7日に自社YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/ConnectedRoboticsYoutube,https://www.youtube.com/watch?v=18oYQ5Sw1RI)にて発表。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (10)2022年1月19日に自社Webサイト(https://connected-robotics.com/2022/01/19/hcj2022/)にて発表。 (11)2022年1月19日にPRTIMESのオンライン記事(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000031342.html)にて発表。 (12)2022年1月24日にBSテレ東の番組「世界を変える起業家たち〔Earthshot/アースショット〕」にて発表。 (13)2022年2月2日にForbes JAPANのYouTubeチャネル(https://www.youtube.com/watch?v=ULdcScHW9Vo)にて発表。 (14)2022年2月15日に東京ビッグサイトで開催された「国際ホテル・レストラン・ショー2022」にて発表。 (15)2022年2月16日に京都新聞・オンライン版(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/amp/732574)にて発表。 (16)2022年2月17日に山陽新聞・オンライン版(https://www.sanyonews.jp/article/1230013)にて発表。 (17)2022年2月17日に岩手日報・オンライン版(https://www.iwate-np.co.jp/)にて発表。 (18)2022年2月17日に山口新聞・オンライン版(https://yama.minato-yamaguchi.co.jp/)にて発表。 (19)2022年2月17日に北日本新聞・オンライン版(https://webun.jp/item/7827744)にて発表。 (20)2022年2月17日に埼玉新聞・オンライン版(https://www.saitama-np.co.jp/)にて発表。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (21)2022年2月17日に山梨日日新聞・オンライン版(https://www.sannichi.co.jp/)にて発表。 (22)2022年2月17日に沖縄タイムス・オンライン版(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/912082)にて発表。 (23)2022年2月17日に福井新聞・オンライン版(https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1495411)にて発表。 (24)2022年2月17日に愛媛新聞・オンライン版(https://www.ehime-np.co.jp/article/ky2022021601000586)にて発表。 (25)2022年2月17日に神戸新聞・オンライン版(https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/primenews/202202/0015070040.shtml)にて発表。 (26)2022年2月17日に北國新聞・オンライン版(https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/662705)にて発表。 (27)2022年2月17日に東奥日報・オンライン版(https://www.toonippo.co.jp/articles/-/884557)にて発表。 (28)2022年2月17日に信濃毎日新聞・オンライン版(https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022021700214)にて発表。 (29)2022年2月17日に中國新聞・オンライン版(https://www.chugoku-np.co.jp/)にて発表。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (30)2022年2月17日に高知新聞・オンライン版(https://www.kochinews.co.jp/)にて発表。 (31)2022年2月28日に「ロボスタ」のオンライン記事(https://robotstart.info/2022/02/28/moriyama_mikata-no146.html)にて発表。 (32)2022年3月22日に自社YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/ConnectedRoboticsYoutube,https://www.youtube.com/watch?v=n2qFYK0DN4M)にて発表。 (33)2022年6月7日に東京ビッグサイトで開催された「FOOMA JAPAN 2022」にて発表。 (34)2022年1月7日に自社YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/c/ConnectedRoboticsYoutube,https://youtu.be/fBE6YStTrto)にて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】石川 英直
(72)【発明者】
【氏名】天津 悟
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 敬太
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-019390(JP,A)
【文献】特開2017-023340(JP,A)
【文献】特開平06-218478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0139554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ー 21/02
A47J 37/12
A47J 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を行うロボットと、
前記作業に用いられる設備と、
前記設備において前記ロボットの動作範囲の中で熱源となる部分と、前記ロボットにおける熱対策の対象部位となる弱熱部の位置との間に配置され、前記ロボット以外の構造物に設置された遮熱部材と、
を備え
前記遮熱部材は、前記設備において加熱を行う加熱装置の加熱対象部と前記設備の換気を行う排気装置との間に設置された第1の遮熱部材を含み、
前記第1の遮熱部材において、前記加熱対象部と前記排気装置との間に迫り出す部分は鉛直上方に延びる姿勢で設置されていることを特徴とする作業システム。
【請求項2】
作業を行うロボットと、
前記作業に用いられる設備と、
前記設備において前記ロボットの動作範囲の中で熱源となる部分と、前記ロボットにおける熱対策の対象部位となる弱熱部の位置との間に配置され、前記ロボット以外の構造物に設置された遮熱部材と、
を備え
前記遮熱部材は、前記設備において加熱を行う加熱装置から前記ロボットの動作範囲に加熱空気を排出する排気口の前面に設置された第2の遮熱部材を含むことを特徴とする作業システム。
【請求項3】
作業を行うロボットと、
前記作業に用いられる設備と、
前記設備において前記ロボットの動作範囲の中で熱源となる部分と、前記ロボットにおける熱対策の対象部位となる弱熱部の位置との間に配置され、前記ロボット以外の構造物に設置された遮熱部材と、
を備え
前記ロボットは、把持した物体における所定部分の高さが、前記遮熱部材の下端の高さよりも鉛直下方に位置する状態を維持して、前記作業を行うことを特徴とする作業システム。
【請求項4】
作業を行うロボットと、
前記作業に用いられる設備と、
前記設備において前記ロボットの動作範囲の中で熱源となる部分と、前記ロボットにおける熱対策の対象部位となる弱熱部の位置との間に配置され、前記ロボット以外の構造物の壁又は前記設備において加熱を行う加熱装置に固定された遮熱部材と、
を備えることを特徴とする作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、店舗の厨房やキッチンカー等の調理が行われる設備において、ロボットを用いて各種作業が行われるようになっている。
例えば、揚げ物調理が行われる厨房において、調理用のロボットが、加熱された食用油の貯留槽に食品を沈め、所定時間経過後に食品を引き揚げる等の作業が行われている。
ロボットが作業を行うことで、危険を伴う作業に人間が携わる頻度を軽減したり、高温環境での身体的負担が大きい作業をロボットに担当させたりすることができるため、調理等の作業が行われる現場において、ロボットの利用価値は極めて高いものとなりつつある。
なお、調理等の作業が行われる設備において、ロボットを用いる技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-254076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、調理等の作業が行われる設備においてロボットを用いる場合、輻射や対流等によって熱源からロボットに熱が伝わる場合がある。ロボットの温度が過度に上昇すると、ロボットが正常に動作しなくなる可能性がある。特に、ロボットの各部において、高温となる状況を避けることが望まれる部分(熱の影響を受け易い部分等)に熱が加えられると、ロボットの動作に支障が生じる可能性が高くなる。
このような状況に対し、従来の技術においては、ロボットに部材を装着することにより、熱源から生じた熱がロボットに伝達することを抑制しているものの、このような方法とした場合、装着した部材によってロボットの動作が阻害される可能性がある。
即ち、従来の技術においては、ロボットを用いて作業が行われる設備において、熱源からロボットに伝達される熱を抑制する適切な技術が実現されていなかった。
【0005】
本発明の課題は、ロボットを用いて作業が行われる設備において、熱源からロボットに伝達される熱を適切に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る作業システムは、
作業を行うロボットと、
前記作業に用いられる設備と、
前記設備において前記ロボットの動作範囲の中で熱源となる部分と、前記ロボットにおける熱対策の対象部位となる弱熱部の位置との間に配置され、前記ロボット以外の構造物に設置された遮熱部材と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボットを用いて作業が行われる設備において、熱源からロボットに伝達される熱をより適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る加熱調理システム1の構成を示す模式図(全体構成を示す概略図)である。
図2】本発明に係る加熱調理システム1の構成を示す模式図(加熱調理器10を前方から見た斜視図)である。
図3】加熱調理器10A,10Bに設置される遮熱板12,13の構成例を示す模式図である。
図4】遮熱板12,13の遮熱作用を示す模式図である。
図5】食材供給装置100の要部構成を示す模式図である。
図6】制御装置70のハードウェア構成を示す模式図である。
図7】制御装置70の機能的構成を示すブロック図である。
図8】加熱調理システム1が実行する加熱調理処理の流れを示すフローチャートである。
図9】遮熱板12の具体的構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
[構成]
図1及び図2は、本発明に係る加熱調理システム1の構成を示す模式図であり、図1は、加熱調理システム1の全体構成を示す概略図、図2は、加熱調理器10を前方から見た斜視図である。
図1及び図2に示すように、加熱調理システム1は、加熱調理器10と、排気ファン20と、多関節ロボット30と、安全窓40と、送風ファン50と、撮像装置60と、制御装置70と、を含んで構成される。また、加熱調理システム1が設置される場合、加熱調理システム1に隣接して、食材供給装置100、遮蔽部材200及びウォーマー300が設置される。なお、ウォーマー300に代えて、あるいは、ウォーマー300と共に、加熱調理システム1の周辺に、調理後の食材を処理するための作業台を適宜設置することが可能である。
【0010】
加熱調理器10は、食材を加熱して調理する調理装置であり、本実施形態においては、2つの加熱調理器10A,10Bが並べて設置されている。加熱調理器10A,10Bは、各種加熱調理を行う装置によって構成することが可能であり、本実施形態においては、加熱調理器10A,10Bが、食用油で揚げ物調理を行うフライヤーであるものとする。
【0011】
加熱調理器10A,10Bは、油槽の下面を例えばガスバーナー等の熱源によって加熱する。この時発生する排気(加熱された気体)は、油槽の背面側(後述する遮蔽部材200が設置される側)を通って、加熱調理器10A,10Bの筐体における背面側上部に形成された排気口11A,11Bから排気される。
加熱調理器10A,10Bには、熱源から発生する熱が多関節ロボット30に伝達されることを抑制するための遮熱板12,13が設置されている。
【0012】
図3は、加熱調理器10A,10Bに設置される遮熱板12,13の構成例を示す模式図である。また、図4は、遮熱板12,13の遮熱作用を示す模式図である。
図3及び図4に示すように、加熱調理器10A,10Bは隣接して並べて配置されており、加熱調理器10A,10Bの間に多関節ロボット30が設置されている。
本実施形態において、加熱調理器10A,10Bから発生する熱は、主として2種類存在している。1つは排気口11A,11Bからの排気による熱であり、他の1つは加熱調理器10A,10Bの油槽内における加熱油表面からの熱(放射熱及び油蒸気による対流熱)である。
【0013】
本実施形態においては、多関節ロボット30に部材を装着する等の方法ではなく、加熱調理器10A,10Bに多関節ロボット30への熱の伝達を抑制する遮熱板12,13が設置される。特に、遮熱板12,13は、多関節ロボット30において、高温となる状況を避けることが望まれる部分(熱の影響を受け易い部分等)に加熱調理器10A,10Bから熱が伝達されることを抑制する形態で設置される。多関節ロボット30において、高温となる状況を避けることが望まれる部分としては、例えば、関節を駆動するモータが設置されている部分、及び、多関節ロボット30の各関節機構が挙げられる。なお、多関節ロボット30において、高温となる状況を避けることが望まれる部分を、以下、弱熱部31と称する。
【0014】
遮熱板12,13は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属製の材料、あるいは、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂等の高耐熱性・耐油性を有する樹脂製材料、または、これらを用いた複合体で構成することができる。
【0015】
遮熱板12は、多関節ロボット30の第1関節J1(多関節ロボット30が設置された固定部に最も近い関節)と加熱調理器10Bの油槽(熱源)との間に設置され、多関節ロボット30から見て外方に凸となる曲面を有している。具体的には、遮熱板12は、多関節ロボット30の第1関節J1が回転した場合において、第1関節J1を構成する部材の動作範囲の外側となる位置に設置され、第1関節J1を構成する部材の回転動作に沿う曲面を有する構成とすることができる。また、遮熱板12は、加熱調理器10A,10Bの間の位置に近い側(下部)では、遮熱板12の曲面が水平に近い角度になると共に、加熱調理器10Bの油槽中央に近い側(上部)では、遮熱板12の曲面が垂直に近い角度になる取付け姿勢で設置されている。そのため、遮熱板12は、加熱調理器10Bの油槽内の加熱油から受ける熱を上方(排気ファン20の方向)に受け流すことができる。したがって、多関節ロボット30の弱熱部31となる第1関節J1のモータを、加熱調理器10Bの油槽内における加熱油表面からの放射熱及び油蒸気の対流熱等から保護することができる。
【0016】
なお、本実施形態において、加熱調理システム1は、多関節ロボット30の弱熱部31となる第1関節J1に対し、加熱調理器10Bの上方に位置する側に遮熱板12を設置し、加熱調理器10Aの上方に位置する側には遮熱板12が設置されない構成となっている。そのため、遮熱板12によって弱熱部31を保護する構成とした場合でも、多関節ロボット30の動きを実質的に制約することなく、高い自由度をもって多関節ロボット30を動作させることができる。多関節ロボット30の弱熱部31を挟む両側のうち、いずれに遮熱板12を設置するかについては、油槽上方への迫り出し部分の大きさ、多関節ロボット30に実行させる動作内容(例えば、プログラムされた動作中にいずれの油槽上方に位置している時間が長いか)等に応じて決定することができる。
【0017】
遮熱板13は、加熱調理器10Aの排気口11A正面に、所定の距離(排気口11Aからの排気を滞らせない程度の距離)を確保して設置され、排気口11A(熱源)から加熱調理器10Aの油槽上方の空間(多関節ロボット30が動作する空間)に向けて排気(加熱された気体)が吹き込むことを抑制する部材として設置される。遮熱板13は、例えば、略平板状の部材によって構成することができ、加熱調理器10Aの排気口11Aと対向する面は、上方に傾いている。即ち、遮熱板13は、加熱調理器10Aの排気口11Aと対向する面がやや上方に向く(面から延びる法線が水平方向よりもやや上方を向く)よう鉛直方向から傾けて設置されている。なお、加熱調理器10Aの排気口11Aと対向する面が上方に傾いた構成とするために、遮熱板13の加熱調理器10Aの排気口11Aと対向する面が傾斜を有する構成(即ち、長手方向と直交する断面が台形等の構成)としてもよい。
【0018】
遮熱板13が設置されていることにより、多関節ロボット30が加熱調理器10Aの油槽上方にアームを伸ばした際に、排気口11Aから排出される排気(加熱された気体)が多関節ロボット30の関節(弱熱部31)に吹き当てられ、関節を構成する部材が変形する等の事態を抑制することができる。
【0019】
図1及び図2の説明に戻り、排気ファン20は、加熱調理器10から発生した排気(加熱した気体)及び油蒸気を外部(屋外等)に排出する排気装置であり、本実施形態において、加熱調理器10A,10Bそれぞれの上方(地面からの高さがより高い位置)に、2つの排気ファン20A,20Bが設置されている。なお、排気ファン20A,20Bが設置される場合、排気(加熱した気体)及び油蒸気を集約するためのファンフードを適宜備えることが可能である。
【0020】
多関節ロボット30は、例えば、6軸の垂直多関節ロボット等によって構成され、ロボットアームの先端には、フライバスケットFを把持可能なハンドを備えている。本実施形態において、多関節ロボット30は、2つの加熱調理器10A,10Bの間に設置されている。したがって、多関節ロボット30に必要とされるリーチが比較的短いもので足り、多関節ロボット30の小型化及び低コスト化を図ることができる。また、加熱調理器10A,10Bの正面等に設置する場合に比べ、加熱調理器10A,10Bそれぞれから発生する熱を伝わり難くすることができると共に、加熱調理器10A,10Bから跳ねた食用油が到達する割合を抑制することができる。
【0021】
また、多関節ロボット30の一部は、高温となる状況を避けることが望まれる弱熱部31となっている。弱熱部31としては、上述したように、例えば、関節を駆動するモータが設置されている部分、及び、多関節ロボット30の各関節機構が該当する。
多関節ロボット30の弱熱部31のうち、第1関節J1近傍には遮熱板12が設置されており、加熱調理器10Bの油槽内における加熱油からの放射熱及び対流熱が第1関節J1に伝達することが抑制されている。
また、多関節ロボット30の弱熱部31のうち、各関節機構に対しては、加熱調理器10Aの排気口11A正面に遮熱板13が設置されており、加熱調理器10Aの排気口11Aからの排気による熱が各関節機構に伝達することが抑制されている。
【0022】
また、多関節ロボット30は、フライバスケットFを把持して食材供給装置100に移送し、食材供給装置100の食材排出口から排出された加熱調理される食材(冷凍ポテト等)をフライバスケットF内に収容する。そして、多関節ロボット30は、食材を収容したフライバスケットFを、加熱調理器10で適温に加熱された食用油に沈め、所定時間経過後にフライバスケットFを引き揚げる。これにより、多関節ロボット30を用いて揚げ物調理が行われる。この後、多関節ロボット30は、調理後の食材をフライバスケットFごとウォーマー300あるいは作業台に移動し、ウォーマー300あるいは作業台において、他のロボットまたは作業者等により、調味、分配が行われる。
【0023】
なお、多関節ロボット30のハンド付近は、天井等に固定して設置された撮像装置60または多関節ロボット30の先端に設置された撮像装置60によって撮影されており、フライバスケットFの把持から食材の供給、揚げ物調理、さらにウォーマー300あるいは作業台への移送の工程において、フライバスケットFの位置及び周辺物体の位置等が常時認識されている。
【0024】
安全窓40は、加熱調理システム1の加熱調理作業が行われる領域(以下、「加熱調理領域」と称する。)と、作業者等が作業あるいは往来する領域(以下、「作業者領域」と称する。)とを仕切る構造物であり、本実施形態においては、窓枠と、ガラスあるいは樹脂等の透明な材料で構成された板状の窓部材とによって構成されている。安全窓40の窓枠下端は、加熱調理器10における食用油の貯留槽の上面開口部よりやや低い位置またはほぼ同じ高さに配置されている。即ち、安全窓40の下部は開口部40aとなっており、この開口部40aに送風ファン50が設置される。なお、本実施形態においては、窓枠の上方及び左右の側方に拡張して、加熱調理領域を囲う遮蔽部材(透明の樹脂等で形成されたシート状または板状の部材)が設置されている。窓枠上方の遮蔽部材は、排気ファン20のファンフードまで延びることにより、窓枠上方の空間から排気(加熱した気体)及び油蒸気が作業者領域に流入することを抑制している。
【0025】
送風ファン50は、安全窓40の開口部40aに設置され、作業者領域の空気を加熱調理領域に向けて送風する。
【0026】
撮像装置60は、加熱調理システム1の稼動範囲を所定時間間隔(例えば、1秒毎)で撮影する撮像装置であり、例えば、デジタルカメラによって構成することができる。本実施形態において、撮像装置60は、必要な位置に複数設置することが可能であり、加熱調理システム1の稼働範囲全体を撮影して、この撮影結果を基にフライバスケットF等の各種物体の位置を認識したり、加熱調理器10付近を撮影して、この撮影結果を基に加熱調理器10における調理の状態を認識したりすることができる。
【0027】
制御装置70は、PC(Personal Computer)またはプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、加熱調理システム1全体を制御する。例えば、制御装置70は、多関節ロボット30の動作、食材供給装置100の動作、排気ファン20及び送風ファン50の動作等を制御する。
食材供給装置100は、加熱調理システム1において調理される食材を自動的に供給する。例えば、食材供給装置100は、制御装置70あるいは作業者の操作に応じて、揚げ物調理される冷凍ポテト等を食材排出口から所定量排出する。
【0028】
図5は、食材供給装置100の要部構成を示す模式図である。
図5に示すように、食材供給装置100は、冷凍庫(約-20℃に保持された貯蔵庫)に貯蔵された冷凍食材を食材排出口から落下させ、食材排出口の下方にセットされたフライバスケットFに供給する構成を備えている。フライバスケットFは、食材排出口の下方から加熱調理器10Aの側部に延びる水平レールHRに沿って水平方向に移動可能であると共に、加熱調理器10Aの側部位置から鉛直上方に延びる鉛直レールVRに沿って上下方向に移動可能となっている。フライバスケットFは、鉛直レールVRの最上部に設定された「フライバスケット受渡位置」において、多関節ロボット30と食材供給装置100との間で受け渡される。フライバスケットFの鉛直方向及び水平方向への移動は、種々の駆動手段によって実現することが可能であるが、例えば、それぞれの方向にフライバスケットFを移動させるために設置された電動モータ(不図示)を用いることができる。
なお、本実施形態において、食材供給装置100の食材排出口は、加熱調理器10A,10Bの油槽の開口部よりも鉛直方向下方に位置している。そのため、加熱調理器10A,10Bの油槽内における加熱油表面から生じた油蒸気が食材供給装置100内に入り込み難い構成となっている。
【0029】
遮蔽部材200は、加熱調理器10から排気ファン20への排気(加熱した気体)及び油蒸気の流路の一部を囲う部材であり、本実施形態においては、加熱調理システム1を壁に接して設置することにより、壁を遮蔽部材200として機能させている。ただし、加熱調理システム1を壁から離れた位置等に設置する場合には、板状の遮蔽部材200を別途設置することとしてもよい。遮蔽部材200が設置されていることで、送風ファン50からの送風を遮蔽部材200が受け止め、外部に気流が漏れることを抑制して、効率的に排気ファン20から排気を行うことができる。
ウォーマー300は、加熱調理システム1による調理後の食材の余分な油を切ると共に、保温して貯蔵するための装置である。
【0030】
[制御装置70のハードウェア構成]
図6は、制御装置70のハードウェア構成を示す模式図である。
図6に示すように、制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0031】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、または、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0032】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0033】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置70に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0034】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置70の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0035】
[機能的構成]
次に、制御装置70の機能的構成について説明する。
図7は、制御装置70の機能的構成を示すブロック図である。
図7に示すように、加熱調理システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置70のCPU711においては、食材供給制御部151と、加熱調理制御部152と、排気制御部153と、送風制御部154と、多関節ロボット制御部155と、撮像制御部156と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0036】
パラメータ記憶部171には、加熱調理システム1が動作する際に用いられる各種パラメータ(例えば、調理に応じた加熱調理器10の加熱温度等)が記憶されている。
履歴DB172には、加熱調理システム1で各種調理が行われた際のパラメータあるいは食品の調理結果のデータが記憶される。
【0037】
食材供給制御部151は、食材供給装置100を制御し、フライバスケットFを水平レールHRに沿って移動させたり、鉛直レールVRに沿って移動させたりする。また、食材供給制御部151は、フライバスケットFが食材の供給を受ける待機状態(フライバスケットFを食材排出口下方の位置で待機させた状態)となった場合に、所定量の食材を食材排出口から排出させる。
加熱調理制御部152は、加熱調理器10を制御し、加熱調理システム1において調理が行われる場合に、加熱調理器10における加熱温度を調整する。
【0038】
排気制御部153は、排気ファン20A,20Bをそれぞれ制御し、加熱調理システム1において調理が行われる場合に、排気ファン20A,20Bそれぞれの回転数を制御する。
送風制御部154は、送風ファン50を制御し、加熱調理システム1において調理が行われる場合に、送風ファン50の回転数を制御する。
多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30の動作を制御し、加熱調理システム1において実行される調理の種類に応じて、予め定義されている一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30のハンドによってフライバスケットFを把持させたり、フライバスケットFを移送させたり、フライバスケットFを所定時間、加熱された食用油に沈めたりする動作を多関節ロボット30に実行させる。本実施形態において、多関節ロボット制御部155は、フライバスケットFを多関節ロボット30が把持して移動させる際に、フライバスケットFが遮熱板12と干渉しない動作となるようプログラミングされている。具体的には、多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30のハンドがフライバスケットFを把持した状態で、手首を回転させ、フライバスケットFが内向きとなる姿勢(ハンドよりも多関節ロボット30のアーム側にフライバスケットFを位置させた姿勢)でフライバスケットFをハンドリングする。また、このとき、多関節ロボット制御部155は、フライバスケットFに設定された基準点(例えば、かご部分の上枠)が遮熱板12の下端の高さよりも鉛直下方に位置する状態を維持してフライ、油切り、移送等の動作を行う。これにより、遮熱板12を設置した場合であっても、多関節ロボット30及びフライバスケットFが遮熱板12と干渉しない動作を行わせることができる。
【0039】
撮像制御部156は、撮像装置60を制御し、加熱調理システム1の稼動範囲全体の画像や多関節ロボット30のハンド付近の画像を所定時間間隔で撮影させる。
【0040】
[動作]
次に、加熱調理システム1の動作を説明する。
図8は、加熱調理システム1が実行する加熱調理処理の流れを示すフローチャートである。
加熱調理処理が開始されると、ステップS1において、制御装置70は、加熱調理器10、排気ファン20、多関節ロボット30及び送風ファン50のスイッチをONとする。なお、食材供給装置100は、食材を冷凍保存等することから、電源が常時ONの状態となっている。
【0041】
ステップS2において、加熱調理制御部152は、加熱調理器10において食用油が調理に適する温度(例えば、180[℃])に上昇したことを確認する。食用油の温度は、加熱調理器10に設置されている温度計によって常時測定される。
加熱調理器10において食用油が加熱されることにより、加熱調理器10A,10Bの排気口11A,11Bから排気(加熱された気体)が排出されると共に、加熱油表面から放射熱及び油蒸気が発生する。本実施形態における加熱調理システム1では、多関節ロボット30の第1関節J1と加熱調理器10Bの油槽との間に遮熱板12が設置されているため、多関節ロボット30の弱熱部31(第1関節J1のモータ)に熱が伝達されることが抑制される。
【0042】
ステップS3において、多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30に空のフライバスケットFを把持させ、食材供給装置100の食材排出口の位置に移送させる。
本実施形態において、多関節ロボット30がフライバスケットFを食材供給装置100に受け渡す動作を行う場合、図1に示すように、多関節ロボット30の各関節が伸展し、加熱調理器10Aの排気口11Aの前部に位置することとなる。したがって、排気口11Aからの排気が多関節ロボット30の各関節機構に吹き当てられ、各関節機構に熱が伝達される状況になり得るところ、本実施形態における加熱調理システム1では、遮熱板13が排気口11Aの前面側に設置されているため、排気口11Aから排出された排気は、遮熱板13によって風向を変化され、上方の排気ファン20Aの方向に進行する。この結果、多関節ロボット30が食材供給装置100との間でフライバスケットFの受け渡しを行う場合にも、多関節ロボット30が排気口11Aからの排気によって加熱されることを抑制できる。排気口11Aからの排気は、ガスを燃焼させて油槽を加熱した排気等であることから、高温の状態で排気される場合があり、遮熱板13によって排気口11Aからの排気が多関節ロボット30に吹き当てられないことによる遮熱効果は極めて高いものとなる。
【0043】
ステップS4において、食材供給制御部151は、所定量の食材を食材排出口から排出させる。排出された食材は、多関節ロボット30が保持しているフライバスケットFに収容される。
【0044】
ステップS5において、多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30を制御し、食材を収容したフライバスケットFを加熱調理器10の食用油に沈め、揚げ物調理を実行する。
ステップS6において、多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30を制御し、所定時間(例えば、3分)の経過を待って、フライバスケットFを加熱調理器10の食用油から引き揚げる。
ステップS7において、多関節ロボット制御部155は、多関節ロボット30を制御し、調理後の食材が収容されたフライバスケットFを後段の作業が行われる所定領域(ウォーマー300等)へ移送する。揚げ物調理された食材は、所定領域で後段の作業に受け渡される。
【0045】
ステップS8において、多関節ロボット制御部155は、調理の終了が指示されているか否かの判定を行う。
調理の終了が指示されていない場合、ステップS8においてNOと判定されて、処理はステップS2に移行する。
一方、調理の終了が指示されている場合、ステップS8においてYESと判定されて、処理はステップS9に移行する。
【0046】
ステップS9において、多関節ロボット制御部155は、加熱調理処理における一連の動作を示す履歴のデータを履歴DB172に記憶する。このとき、加熱調理された食品の調理結果のデータを作業者の手動入力により、または、撮像装置60で撮影された画像を解析した結果から自動的に、履歴DB172に併せて記憶することとしてもよい。
ステップS9の後、加熱調理処理は終了する。
加熱調理処理の終了に伴い、多関節ロボット30は標準姿勢に戻ると共に、加熱調理器10、排気ファン20、多関節ロボット30及び送風ファン50のスイッチはOFFとされる。
【0047】
なお、本実施形態においては、加熱調理器10として、加熱調理器10A,10Bの2つが備えられていることから、加熱調理器10A,10Bにおける上記動作を並列的に実行させることができる。この場合、調理の終了を判定する際には、加熱調理器10A,10Bにおける調理が共に終了を指示されていることを条件に、加熱調理システム1の動作が終了する。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る加熱調理システム1は、作業を行う多関節ロボット30の弱熱部31に対し、多関節ロボット30以外の構造物(壁あるいは据え付けられた装置等)に遮熱板12,13が設置され、熱源によって発生される熱から多関節ロボット30の弱熱部31を保護する。また、遮熱板12,13は、多関節ロボット30が動作する際に、多関節ロボット30と干渉しないと共に、弱熱部31に対する熱の伝達を抑制可能な位置及び形状で設置される。
そのため、本実施形態に係る加熱調理システム1は、多関節ロボット30の動作を阻害することなく、多関節ロボット30の弱熱部31を熱から保護することができる。
即ち、本発明によれば、ロボットを用いて作業が行われる設備において、熱源からロボットに伝達される熱をより適切に抑制することができる。
【0049】
[変形例1]
上述の実施形態において、遮熱板12の構成は、加熱調理器10Bの油槽上方に迫り出した部分が垂直に近い角度となれば、種々の形状とすることができる。
図9は、遮熱板12の具体的構成例を示す模式図である。
図9において、構成例(a)として示すように、遮熱板12は、中央部を円筒の一部とし、上部及び下部を平板として構成することが可能である。このような構成とする場合、平板を中央で屈曲させる等の簡単な方法で遮熱板12を作成することができる。
また、図9において、構成例(b)として示すように、遮熱板12は、全体を円筒の一部として構成することが可能である。このような構成とする場合、円筒部分の中心(円筒の中心軸)を多関節ロボット30における第1関節J1の回転中心と一致させ、円筒部分の半径を回転中心からの距離と一致させることで、多関節ロボット30の動作を妨げることなく、多関節ロボット30に対して、より近い位置に遮熱板12を設置することができる。
さらに、図9において、構成例(c)として示すように、遮熱板12は、平板が屈曲して連結した構成とすることが可能である。このような構成とする場合、平板を複数箇所で屈曲させる等の簡単な方法で遮熱板12を作成することができる。
【0050】
[変形例2]
上述の実施形態において、遮熱板12,13は、それぞれ異なる材料で構成することができる。
上述したように、遮熱板12,13は、アルミニウムやステンレス等の金属製の材料、あるいは、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂等の高耐熱性・耐油性を有する樹脂製材料、または、これらを用いた複合体で構成することができ、遮熱板12と遮熱板13とで、異なる材料を用いることができる。また、遮熱板12及び遮熱板13それぞれの一方の面と他方の面とを異なる材料で構成することも可能である。
例えば、遮熱板12の外面(油槽側の面)は、耐油性がより高い樹脂製材料で構成し、遮熱板12の内面(多関節ロボット30側の面)は、金属製の材料で構成することができる。この場合、金属製の基材を加工して形状を整えた後、外面に樹脂層を形成することで、油蒸気に晒される外面が耐油性の高い構成の遮熱板12とすることができる。
また、例えば、遮熱板13において、加熱調理器10Aの排気口11Aと対向する面(背面)は、耐熱性がより高い樹脂製材料または金属材料で構成し、加熱調理器10Aの油槽側の面(前面)は耐油性がより高い樹脂製材料で構成することができる。この場合、より高温の加熱空気に晒される裏面は耐熱性が高く、油蒸気に晒される前面は耐油性が高い遮熱板13とすることができる。
【0051】
[変形例3]
上述の実施形態において、遮熱板12を多関節ロボット30の弱熱部31を挟む両側のうち、一方に固定して設置する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。
例えば、遮熱板12を多関節ロボット30の弱熱部31(第1関節J1等)の周りで移動可能な構成とし、多関節ロボット30に実行させる動作内容等に応じて、多関節ロボット30の弱熱部31に対して遮熱板12を適切な側に設置することが可能である。
このような構成により、多関節ロボット30が種々の作業を行う場合に、それぞれの作業に応じて、弱熱部31を適切に熱から保護することができる。
【0052】
なお、上述の実施形態において、2つの加熱調理器10A,10Bを備える加熱調理システム1の構成について説明したが、これに限られない。
例えば、1つの加熱調理器10を備える加熱調理システム1にも、本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態及び変形例において、加熱調理システム1が、揚げ物調理を行う加熱調理器10を備える例について説明したが、これに限られない。
即ち、加熱調理器10が茹でる調理または焼き物調理を行う場合にも、本発明を適用することが可能である。
また、上述の実施形態及び変形例において、加熱調理システム1の稼動範囲を撮影する撮像装置60を備え、制御装置70が撮像装置60による撮影を制御する構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。
即ち、加熱調理システム1の稼動範囲を撮像装置で撮影することなく、多関節ロボット30の位置制御によって所定動作を実行させる構成としてもよい。この場合、加熱調理システム1は、撮像装置60及び撮像制御部156を備えない構成となる。
また、上述の実施形態及び変形例において、制御装置70が加熱調理器10、送風ファン50及び排気ファン20を制御する構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。
即ち、加熱調理器10、送風ファン50及び排気ファン20は、加熱調理システム1の設置目的等に応じて、適宜、作業者が操作を行う構成に変更することが可能である。この場合、加熱調理システム1は、加熱調理制御部152、排気制御部153あるいは送風制御部154を備えない構成となる。また、加熱調理処理のステップS1において、加熱調理器10、排気ファン20及び送風ファン50を制御する処理、あるいは、ステップS2において、食用油の温度を計測する処理は実行されないものとなる。
また、上述の実施形態及び変形例において、調理作業を行うシステムに本発明を適用する例について説明したが、これに限られない。
例えば、切削、溶接あるいは切断等の加工作業や、物品や材料等の移送作業、機械や構造物等の組み立て作業等に本発明を適用することも可能である。
【0053】
以上のように、本実施形態における加熱調理システム1は、加熱調理器10と、遮熱板12,13と、多関節ロボット30と、を備える。
多関節ロボット30は作業を行う。
加熱調理器10は、作業に用いられる設備を構成する。
遮熱板12,13は、設備において多関節ロボット30の動作範囲の中で熱源となる部分と、多関節ロボット30における熱対策の対象部位となる弱熱部31の位置との間に配置され、多関節ロボット30以外の構造物に設置される。
これにより、多関節ロボット30の動作を阻害することなく、多関節ロボット30の弱熱部31を熱から保護することができる。
したがって、ロボットを用いて作業が行われる設備において、熱源からロボットに伝達される熱をより適切に抑制することができる。
【0054】
遮熱板12は、設備において加熱を行う加熱調理器10Bの加熱対象部(油槽)と設備の換気を行う排気ファン20Bとの間に設置される。
遮熱板12において、加熱対象部と排気ファン20Bとの間に迫り出す部分は鉛直上方に延びる姿勢で設置されている。
これにより、遮熱板12を設置した場合でも、加熱対象部から生じた熱が排気ファン20Bから排出される流れを妨げない構成とすることができる。
【0055】
遮熱板12において、加熱対象部と排気ファン20Bとの間に迫り出す部分は、加熱調理器10Bから多関節ロボット30の動作範囲に排出される加熱空気及び加熱対象部から生じる熱を鉛直上方に延びる部分に沿って受け流す。
これにより、多関節ロボット30の弱熱部31を、加熱調理器10Bの油槽内における加熱油表面からの放射熱及び油蒸気による対流熱から保護することができる。
【0056】
多関節ロボット30は、加熱調理器10A,10Bに隣接して設置される。
遮熱板12は、多関節ロボット30が有する複数の関節のうち、多関節ロボット30が設置されている部分に最も近い第1関節J1の近傍に設置されている。
これにより、多関節ロボット30の弱熱部31である第1関節J1のモータを、加熱調理器10Bの油槽内における加熱油表面からの放射熱及び油蒸気による対流熱から保護することができる。
【0057】
遮熱板13は、設備において加熱を行う加熱調理器10Aから多関節ロボット30の動作範囲に加熱空気を排出する排気口の前面に設置される。
これにより、排気口から排出される加熱空気が多関節ロボット30の弱熱部31である関節に吹き当てられることを抑制することができる。
【0058】
遮熱板13は、排気口と対向する面から延びる法線が水平方向よりも上方を向いている。
これにより、遮熱板13を設置した場合でも、排気口から排出される加熱空気の流れを妨げない構成とすることができる。
【0059】
多関節ロボット30は、作業対象物の受け渡しのためにアームを伸長した場合にアームの少なくとも一部が排気口の前面に停止する姿勢で保持される。
第2の遮熱部材は、停止したアームの方向に排気口から排出された加熱空気が流れる方向を、排気口と対向する傾斜した面によって上方に変化させる。
これにより、多関節ロボット30が比較的長い時間停止し、継続して熱に晒され得る工程においても、排気口から排出される加熱空気が多関節ロボット30の弱熱部31である関節に吹き当てられ、関節を構成する部材に熱の影響が生じることを抑制できる。
【0060】
多関節ロボット30は、把持した物体における所定部分の高さが、遮熱板12の下端の高さよりも鉛直下方に位置する状態を維持して、作業を行う。
これにより、遮熱板12を設置した場合であっても、多関節ロボット30及びフライバスケットFが遮熱板12と干渉しない動作を行わせることができる。
【0061】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図7の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が加熱調理システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図7の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0062】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0063】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0064】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0065】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。即ち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 加熱調理システム、10,10A,10B 加熱調理器、11A,11B 排気口、12,13 遮熱板、20,20A,20B 排気ファン、30 多関節ロボット、31 弱熱部、J1 第1関節、40 安全窓、40a 開口部、50 送風ファン、60 撮像装置、70 制御装置、100 食材供給装置、HR 水平レール、VR 鉛直レール、200 遮蔽部材、300 ウォーマー、F フライバスケット、151 食材供給制御部、152 加熱調理制御部、153 排気制御部、154 送風制御部、155 多関節ロボット制御部、156 撮像制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9