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特許7479725化合物、アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤、医薬組成物、並びに治療及び/又は予防薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-26
(45)【発行日】2024-05-09
(54)【発明の名称】化合物、アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤、医薬組成物、並びに治療及び/又は予防薬
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/56 20060101AFI20240430BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20240430BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20240430BHJP
   C07F 9/58 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
C07D213/56 CSP
A61K31/4418
C07D231/12 E
A61K31/415
C07F9/58 Z
A61K31/675
A61P1/16
A61P1/18
A61P7/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P19/10
A61P25/04
A61P25/16
A61P25/28
A61P35/00
A61P43/00 123
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022559448
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2021040218
(87)【国際公開番号】W WO2022092310
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020183782
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519305627
【氏名又は名称】株式会社アークメディスン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100168893
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】二宮 智尚
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507147(JP,A)
【文献】特表2016-514154(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151241(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/076974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中、
Aは、複素環であり、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
3は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲンである]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項2】
Aが、環員原子として少なくとも1つの窒素原子を含む、請求項1に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項3】
Aが、5又は6員環である、請求項1又は2に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項4】
Aが、芳香族複素環である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項5】
式(1)で表される化合物が、下記式(2)又は(3):
【化2】
【化3】
[式中、R1、R2、R3、X1及びX2は、前記のとおりである]
で表される化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項6】
1が、水素又はアルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項7】
2が、水素又はアルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項8】
3が、ハロゲンで置換されているアルキル又は非置換のアルキルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項9】
1が、フッ素又は塩素である、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項10】
2が、フッ素である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項11】
式(1)で表される化合物が、下記化合物:
【化4】
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項12】
下記式(1):
【化5】
[式中、
Aは、複素環であり、
1 、-CH2-O-PO32であ
2 は、水素、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
3 は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
1 及びX 2 は、それぞれ独立して、ハロゲンである]
で表されるプロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項13】
下記式(1):
【化6】
[式中、
Aは、複素環であって、環員原子として少なくとも1つの窒素原子を含み、前記窒素原子の少なくとも1つが、-CH2-O-PO32で置換されており
1 及びR 2 は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
3 は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
1 及びX 2 は、それぞれ独立して、ハロゲンである]
で表されるプロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項14】
記化合物:
【化7】
からなる群から選択される、プロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物若しくはその医薬上許容可能な塩又は請求項12~14のいずれか一項に記載のプロドラッグ若しくはその医薬上許容可能な塩を含む、アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物若しくはその医薬上許容可能な塩又は請求項12~14のいずれか一項に記載のプロドラッグ若しくはその医薬上許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物若しくはその医薬上許容可能な塩又は請求項12~14のいずれか一項に記載のプロドラッグ若しくはその医薬上許容可能な塩を含む、ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛からなる群から選択される疾患の治療及び/又は予防薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤、医薬組成物、並びに治療及び/又は予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)は、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を分解する酵素であり、様々な疾患(例えば、ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛)との関係が報告されている。
【0003】
ファンコニ貧血(FA)は、遺伝性の骨髄不全疾患であり、再生不良性貧血、白血病、癌、奇形等の症状を伴うものである。骨髄において血液を作成する幹細胞では、アルデヒドを適切に分解し、損傷したゲノムを修復することが重要であるところ、FA患者ではアルデヒドによるゲノム障害を修復できず、貧血が進行すると報告されている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
骨粗鬆症との関係において、ALDH2遺伝子変異モデルマウスで骨粗鬆症の症状が呈され、骨密度が低下すること、前記モデルマウスの骨芽細胞の分化形成能が著しく低下すること、及びヒトにおいてもALDH2遺伝子変異を有する骨芽細胞の形成能が低下すること、が報告されている(例えば、非特許文献2)。
【0005】
NAFLD及びNASHは、代謝性疾患を背景に、肝臓に中性脂肪が蓄積することによって発症するものであり、ALDH2の低活性遺伝子型のヒトにおいて、NAFLDの発症率が高いことが報告されている(例えば、非特許文献3)。また、アルコール性肝障害及び膵炎は、過剰の飲酒によって引き起こされるものであり、エタノールが生体内で分解されて生じるアセトアルデヒドが主たる原因であると考えられている。さらに、NAFLD、NASH、アルコール性肝障害、及び膵炎の病態モデルにおいて、ALDH2活性化化合物又はALDH2遺伝子導入により病態が改善されることが報告されている(例えば、非特許文献4、5及び6)。
【0006】
虚血再灌流障害は、動脈の閉塞により臓器の虚血状態が続いた後、血液供給が再開されることによって生じる組織障害である。虚血再灌流障害に対する保護のために、ALDH2活性化化合物が有効であることが報告されている(例えば、特許文献1)。また、末梢動脈疾患とALDH2との関連も示唆されている(例えば、非特許文献7)。
【0007】
アルツハイマー病やパーキンソン病は原因不明の神経変性疾患であるが、飲酒やALDH2遺伝子変異が病態の発症や進行に寄与することが報告されている(例えば、非特許文献8及び9)。
【0008】
食道がんの危険因子は喫煙、飲酒、及び熱い飲み物や食べ物の過剰摂取と考えられており、国際がん研究機関(IARC)は2010年にアルコール飲料を食道扁平上皮がんの発がん物質として認定している。食道がん及び頭頚部がん患者の解析から禁酒により食道がんの進展を抑制する可能性が示唆されていることや、低活性変異型のヒトALDH2遺伝子をノックインしたマウスでは飲酒により食道におけるDNA障害をより強く受けることが報告されているなど、食道がんと飲酒及びALDH2との関連性が報告されている(例えば、非特許文献10及び11)。同様に頭頸部がんとALDH2との関連性が報告されている(例えば、非特許文献12)。
【0009】
疼痛としては大きく、炎症性(障害受容性)、神経障害性、及び原因不明の疼痛が知られているが、マウスを用いた炎症性疼痛モデルにおいて、ALDH2変異型導入マウスでは痛み刺激をより感じやすく、ALDH2活性化化合物により解除されることが報告されている(例えば、非特許文献13)。
【0010】
上述のように、ALDH2と様々な疾患との関係が報告されていることから、ALDH2を活性化することが各種疾患の治療及び/又は予防に有効であると期待されている。ALDH2の活性化作用を有する化合物としては、例えば、特許文献1~4に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2008/112164号公報
【文献】国際公開第2014/160185号公報
【文献】国際公開第2015/127137号公報
【文献】国際公開第2019/151241号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Blood (2013) 122 (18): 3206-3209
【文献】Journal of Bone and Mineral Research (2012) 27 (9): 2015-2023
【文献】Nutrition & Diabetes (2016) 6, e210
【文献】Redox Biology(2019)24: 101205
【文献】Journal of Hepatology(2015)62: 647-656
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications(2020)522: 518-524
【文献】Pharmacological Research (2017) 115: 96-106
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications(2000)273: 192-196
【文献】Neurology(2014)82: 419-426
【文献】Gastroenterology(2016)151: 860-869
【文献】Carcinogenesis(2020)41: 194-202
【文献】International Journal of Oncology (2008) 32: 945-973
【文献】Science Translational Medicine(2014)6: 251ra118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ALDH2活性化作用を有する化合物、又は前記化合物を含むALDH2活性化剤、医薬組成物、若しくは治療若しくは予防薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等が鋭意検討した結果、所定の構造を有する化合物がALDH2活性化作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
下記式(1):
【化1】
[式中、
Aは、複素環であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲンである]
で表される化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[2]
Aが、環員原子として少なくとも1つの窒素原子を含む、[1]に記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[3]
Aが、5又は6員環である、[1]又は[2]に記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[4]
Aが、芳香族複素環である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[5]
式(1)で表される化合物が、下記式(2)又は(3):
【化2】
【化3】
[式中、R、R、R、X及びXは、前記のとおりである]
で表される化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[6]
が、水素又はアルキルである、[1]~[5]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[6-1]
が、水素又はメチルである、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[6-2]
が、水素である、[1]~[6-1]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[7]
が、水素又はアルキルである、[1]~[6-2]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[7-1]
が、水素又はメチルである、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[7-2]
が、水素である、[1]~[7-1]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[8]
が、ハロゲンで置換されているアルキル又は非置換のアルキルである、[1]~[7-2]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[8-1]
が、フッ素で置換されているメチル又は非置換のメチルである、[1]~[8]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[8-2]
が、非置換のメチルである、[1]~[8-1]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[9]
が、フッ素又は塩素である、[1]~[8-2]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[10]
が、フッ素である、[1]~[9]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[11]
式(1)で表される化合物が、下記化合物:
【化4】
からなる群から選択される、[1]~[10]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[12]
が、-CH-O-POである、[1]~[11]のいずれかに記載のプロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩。
[13]
Aが、環員原子として少なくとも1つの窒素原子を含み、前記窒素原子の少なくとも1つが、-CH-O-POで置換されている、[1]~[11]のいずれかに記載のプロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩。
[14]
プロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩が、下記化合物:
【化5】
からなる群から選択される、[1]~[13]のいずれかに記載のプロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩。
[15]
[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを含む、アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤。
[16]
[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを含む、医薬組成物。
[17]
[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを含む、ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛からなる群から選択される疾患の治療及び/又は予防薬。
【0016】
[A1]
アルデヒドデヒドロゲナーゼ2を活性化する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを投与することを含む方法。
[A2]
ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛からなる群から選択される疾患を治療及び/又は予防する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを投与することを含む方法。
[B1]
アルデヒドデヒドロゲナーゼ2の活性化に使用するための、[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[B2]
ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛からなる群から選択される疾患の治療及び/又は予防に使用するための、[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグ。
[C1]
アルデヒドデヒドロゲナーゼ2を活性化するための、[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグの使用。
[C2]
ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛からなる群から選択される疾患を治療及び/又は予防するための、[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグの使用。
[D1]
アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤の製造における、[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグの使用。
[D2]
ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛からなる群から選択される疾患の治療及び/又は予防薬の製造における、[1]~[14]のいずれかに記載の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグの使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ALDH2活性化作用を有する化合物、又は前記化合物を含むALDH2活性化剤、医薬組成物、若しくは治療若しくは予防薬を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0019】
<化合物>
本発明の一実施形態は、下記式(1):
【化6】
[式中、
Aは、複素環であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲンである]
で表される化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグに関する。
【0020】
式(1)において、Aは、環員原子として少なくとも1つの窒素原子を含むことが好ましい。Aは、5又は6員環であることが好ましい。Aは、芳香族複素環であることが好ましい。特に限定するものではないが、Aは、ピリジン環又はピラゾール環であることが好ましい。
【0021】
式(1)において、R~Rのアルキル、アルケニル、及びアルキニルは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。R~Rのアルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換基で置換されていてもよいし、非置換であってもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素)を挙げることができる。置換基を有する場合、置換基の数としては、例えば、1個、2個又は3個を挙げることができる。
【0022】
式(1)において、R~Rのアルキルは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキルであることが好ましく、炭素数1~3のアルキルであることがより好ましく、メチルであることが更に好ましい。R~Rのアルケニルは、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルケニルであることが好ましく、炭素数2~4のアルケニルであることがより好ましい。R~Rのアルキニルは、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキニルであることが好ましく、炭素数2~4のアルキニルであることがより好ましい。
【0023】
式(1)において、Rは、ALDH2活性及び代謝安定性の観点から、水素又はアルキルであることが好ましく、水素又はメチルであることがより好ましく、水素であることが更に好ましい。
【0024】
式(1)において、Rは、ALDH2活性及び代謝安定性の観点から、水素又はアルキルであることが好ましく、水素又はメチルであることがより好ましく、水素であることが更に好ましい。
【0025】
式(1)において、Rは、代謝安定性の観点から、ハロゲンで置換されているアルキル又は非置換のアルキルであることが好ましく、フッ素で置換されているメチル又は非置換のメチルであることがより好ましく、非置換のメチルであることが更に好ましい。
【0026】
式(1)において、Xは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることが好ましく、フッ素又は塩素であることがより好ましく、フッ素であることが更に好ましい。
【0027】
式(1)において、Xは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であることが好ましく、フッ素又は塩素であることがより好ましく、フッ素であることが更に好ましい。
【0028】
式(1)で表される化合物は、特に限定するものではないが、下記式(2)又は(3):
【化7】
【化8】
[式中、R、R、R、X及びXは、前記のとおりである]
で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
式(1)で表される化合物は、特に限定するものではないが、下記の化合物であることが好ましい。
【化9】
【0030】
上記の化合物のプロドラッグとしては、例えば、リン酸化プロドラッグ、より具体的には、Rが-CH-O-POであるもの、及びAの環員原子である窒素原子の少なくとも1つが-CH-O-POで置換されているものを挙げることができる。
【0031】
プロドラッグ又はその医薬上許容可能な塩は、特に限定するものではないが、下記の化合物であることが好ましい。
【化10】
【0032】
上記の化合物又はプロドラッグの医薬上許容可能な塩は、医薬として使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、パルミチン酸塩等の有機酸塩;アルカリ金属塩;及びアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0033】
上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグは、水和物等の溶媒和物を形成していてもよい。本明細書において、溶媒和物は、上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグに包含されるものとする。
【0034】
上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグに立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー)が存在する場合、個々の立体異性体及びこれらの混合物(例えば、ラセミ体)は、上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグに包含されるものとする。
【0035】
<アルデヒドデヒドロゲナーゼ2活性化剤>
本発明の一実施形態は、上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを含む、ALDH2活性化剤に関する。本実施形態のALDH2活性化剤は、ALDH2活性化作用に優れているだけでなく、更に優れた性質(例えば、優れた代謝安定性、反応性代謝物の生成抑制、hERGの阻害回避)を有している。
【0036】
本実施形態のALDH2活性化剤を使用することにより、ALDH2が関連する疾患を治療及び/又は予防することができる。
【0037】
<医薬組成物並びに治療及び/又は予防薬>
本発明の一実施形態は、上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを含む、医薬組成物に関する。また、本発明の一実施形態は、上記の化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグを含む、治療及び/又は予防薬に関する。
【0038】
本実施形態の医薬組成物並びに治療及び/又は予防薬が対象とする疾患としては、例えば、ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の医薬組成物並びに治療及び/又は予防薬は、経口的又は非経口的に投与することができる。経口投与用の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、及び懸濁剤が挙げられる。非経口投与用の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、点眼剤及び坐剤が挙げられる。
【0040】
本実施形態の医薬組成物並びに治療及び/又は予防薬は、必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等を含んでいてもよい。
【0041】
本実施形態の医薬組成物並びに治療及び/又は予防薬の投与量(有効成分基準)は、患者の状態や体重、化合物の種類、疾患の種類、投与経路等によって異なるが、適切な量を医師が決定することができる。一例として、ファンコニ貧血、骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害、膵炎、虚血再灌流障害、末梢動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、食道がん、頭頸部がん、及び疼痛等を治療する場合、成人(体重約60kg)に対して、経口投与の場合には1~2000(mg)、非経口投与の場合には0.01~200(mg)投与してもよい。
【0042】
<化合物の製造方法>
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩は、公知の方法を適宜利用して合成することができる。合成方法の一例として、下記のスキームAを挙げることができる。
【化11】
[R、R、X及びXは上記のとおりであり、X及びXはそれぞれ独立してハロゲンである。]
【0043】
工程A1では、化合物(A1)をヨードメタンを用いてエステル化し、化合物(A2)を得る。
工程A2では、化合物(A2)を還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)と反応させて、化合物(A3)を得る。
工程A3では、化合物(A3)を強塩基(例えば、水素化ナトリウム)と反応させた後、Rを与えるハロゲン化物(例えば、ヨードメタン)と反応させて、化合物(A4)を得る。
工程A4では、化合物(A4)をシアノ化剤(例えば、シアン化亜鉛)を用いてシアノ化し、化合物(A5)を得る。
工程A5では、化合物(A5)を還元剤(例えば、ボランジメチルスルフィド錯体)と反応させて、化合物(A6)を得る。
【0044】
工程A6では、化合物(A6)を化合物(A7)と反応させて、化合物(A8)を得る。
工程A7では、化合物(A8)をビス(ピナコラート)ジボロンと反応させて、化合物(A9)を得る。
工程A8では、化合物(A9)を2-ハロゲン化ピリジン3-カルバルデヒドと反応させて、化合物(A10)を得る。
工程A9では、化合物(A10)を還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)又はRを与えるグリニャール試薬と反応させて、化合物(A11)を得る。
【0045】
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩の別の合成方法として、下記のスキームBを挙げることもできる。
【化12】

[R、R、X及びXは上記のとおりであり、Xはハロゲンである。]
【0046】
工程B1では、化合物(B1)を化合物(B2)と反応させて、化合物(B3)を得る。
工程B2では、化合物(B3)を化合物(A6)と反応させて、化合物(B4)を得る。
工程B3では、化合物(B4)を還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)と反応させて、化合物(B5)を得る。
【0047】
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩の別の合成方法として、下記のスキームCを挙げることもできる。
【化13】
[R~R、X及びXは上記のとおりであり、Xはハロゲンである。]
【0048】
工程C1では、化合物(C1)を化合物(A9)と反応させて、化合物(C2)を得る。
【0049】
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩の合成方法は、上記スキームA~Cに限定されるものではなく、最終化合物の構造に応じて、適切な合成ルート及び反応条件を当業者が適宜設定することができる。例えば、最終化合物がピリジン環以外の複素環(例えばピラゾール環)を有する場合、スキームCにおける化合物(C1)の代わりに、対応する複素環を有する化合物を使用すればよい。
【0050】
上記の化合物又はその医薬上許容可能な塩のプロドラッグは、例えばリン酸基を公知の方法で導入して合成すればよい。
【0051】
式(1)で表される化合物、その医薬上許容可能な塩又はそれらのプロドラッグに立体異性体が存在する場合、各異性体を公知の方法で分割することができる。公知の方法としては、例えば、クロマトグラフィー法、酵素法、及び結晶化法を挙げることができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0053】
[製造例1-1]
メチル 4-ブロモ-2-フルオロベンゾエート
【化14】
4-ブロモ-2-フルオロベンゾイック アシド(30g、0.14mol)、炭酸カリウム(38g、0.27mol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(300mL)の混合物に、室温でヨードメタン(16mL、0.27mol)を加え、同温で16時間攪拌した。反応混合物に水(200mL)を加え、酢酸エチル(300mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去し、標記化合物(30g)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3) δ(ppm): 3.94 (3H, s), 7.81 (1H, s, J=16Hz), 7.32 (2H, m).
【0054】
[製造例1-2]
(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)メタノール
【化15】
製造例1-1で得たメチル 4-ブロモ-2-フルオロベンゾエート(30g、0.13mol)とメタノール(300mL)の混合物に、0℃で水素化ホウ素ナトリウム(0.38g、10mmol)を30分間かけて加え、60℃で16時間攪拌した。反応混合物に水(20mL)を加え、反応混合物中のメタノールを減圧下留去した。反応混合物に水(250mL)を加え、ジクロロメタン(200mL、2回)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去し、標記化合物(25g)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3) ?(ppm): 4.72 (2H, s), 7.25 (1H, m), 7.34 (2H, m).
【0055】
[製造例1-3]
4-ブロモ-2-フルオロ-1-(メトキシメチル)ベンゼン
【化16】
60%水素化ナトリウム(7.3g、0.18mol)とDMF(150mL)の混合物に、製造例1-2で得た(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)メタノール(25g、0.12mol)とDMF(50mL)の混合物を0℃で20分間かけて加えた。反応混合物に室温でヨードメタン(15mL、0.24mol)を加え、同温で16時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、氷冷水(500mL)を加え、酢酸エチル(250mL、次いで150mL)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去し、標記化合物(20g)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3) δ(ppm): 3.40 (3H, s), 4.47 (2H, s), 7.23 (1H, m), 7.28 (2H, m).
【0056】
[製造例1-4]
3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンゾニトリル
【化17】
製造例1-3で得た4-ブロモ-2-フルオロ-1-(メトキシメチル)ベンゼン(20g、91mmol)、ジンク ダスト(0.29g、4.6mmol)、シアン化亜鉛(16g、0.14mol)、及びDMF(250mL)の混合物を、アルゴンガスを用いて脱気置換した。反応混合物に、同温でトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(4.2g、4.6mmol)及び1、1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(5.1g、9.1mmol)を加え、再度アルゴンガスを用いて脱気置換した。反応混合物を100℃で16時間攪拌した。反応混合物に水(500mL)を加え、酢酸エチル(500mL、次いで200mL)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15~20%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(10g)を得た。
1H-NMR Spectrum (CDCl3) δ(ppm): 3.45 (3H, s), 4.56 (2H, s), 7.35 (1H, d, J=9.2Hz), 7.48 (1H, d, J=8Hz), 7.58 (1H, t, J=14Hz).
【0057】
[製造例1-5]
(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル)メタナミン 塩酸塩
【化18】
製造例1-4で得た3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンゾニトリル(10g、61mmol)とテトラヒドロフラン(THF)(100mL)の混合物に、0℃で20分間かけてボラン-ジメチルスルフィド コンプレックス(18mL、0.24mol)を滴下し、80℃で16時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、同温でメタノール(25~30mL)を加え、減圧下溶媒留去した。残渣にジクロロメタン(100mL)を加え、塩の形成に十分な量の4M塩酸-1,4-ジオキサン溶液を加え、室温で30分間攪拌した。減圧下溶媒留去し、残渣をジエチルエーテルで洗い、標記化合物(5.0g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 3.37 (3H, s), 4.00 (2H, s), 4.54 (2H, s), 7.31 (1H, d, J=7.6Hz), 7.39 (1H, d, J=11Hz), 7.46 (1H, t, J=7.6Hz), 8.19 (3H, s).
【0058】
[製造例1-6]
5-ブロモ-2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)ベンズアミド
【化19】
5-ブロモ-2-フルオロベンゾイック アシド(5.0g、23mmol)、製造例1-5で得た(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル)メタナミン 塩酸塩(5.6g、27mmol)、及びDMF(50mL)の混合物に、0℃でジイソプロピルエチルアミン(13mL、46mmol)とプロパンホスホニック アシッド 無水物(15mL、46mmol)を順次加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物に水(200mL)を加え、30分間攪拌した。生成した固体をろ取し、水(100mL、2回)で洗浄した。固体を減圧下で乾燥させ、標記化合物(5.2g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 3.28 (3H, s), 4.46 (4H, m), 7.16 (2H, m), 7.40 (2H, m), 7.78 (2H, m), 9.03 (1H, m)
【0059】
[製造例1-7]
2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド
【化20】
製造例1-6で得た5-ブロモ-2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)ベンズアミド(4.0g、19mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(6.8g、10mmol)、酢酸カリウム(3.5g、9.1mmol)、及びDMF(50mL)の混合物を、アルゴンガスを用いて脱気置換した。反応混合物に、同温でジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(0.16g、0.23mmol)を加え、再度アルゴンガスを用いて脱気置換した。反応混合物を100℃で16時間攪拌した。反応混合物に水(100mL)を加え、酢酸エチル(100mL、2回)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15~20%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(4g)を粗体として得た。これ以上の精製をすることなく次の反応に用いた。
【0060】
[製造例1-8]
2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-ホルミルピリジン-2-イル)ベンズアミド
【化21】
製造例1-7で得た2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド(2.0g)、2-ブロモピリジン 3-カルバルデヒド(0.98g、4.7mmol)、炭酸カリウム(1.3g、9.5mmol)、1,4-ジオキサン(20mL)、及び水(2mL)の混合物を、窒素ガスを用いて脱気置換した。反応混合物に、同温でジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(0.39g、0.25mmol)を加え、窒素雰囲気下で110℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、酢酸エチル(50mL)を加え、セライトを用いてろ過した。セライトを酢酸エチル(20mL)で洗浄した。ろ液を減圧下溶媒留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15~20%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(1.1g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 3.28 (3H, s), 4.42 (2H, s), 4.50 (2H, s), 7.18 (2H, m), 7.40 (1H, t, J=15.4Hz), 7.51 (1H, t, J=18Hz), 7.66 (1H, m), 7.83 (1H, m), 7.91 (1H, m), 8.30 (1H, d, J=7.5Hz), 8.92 (1H, m), 9.06 (1H, bs), 9.98 (1H, s).
【0061】
[実施例1]
2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-(ヒドロキシメチル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド
【化22】
製造例1-8で得た2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-ホルミルピリジン-2-イル)ベンズアミド(1.0g、2.5mmol)とメタノール(10mL)の混合物に0℃で水素化ホウ素ナトリウム(0.38g、10mmol)をゆっくり加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物に水を加え、ジクロロメタン(25mL、次いで15mL)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去し、標記化合物(0.90g)を得た。
ESI-MS: m/z 399.50 [M+1]+
【0062】
[実施例2]
ラセミック 2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-(1-ヒドロキシエチル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド
【化23】
製造例1-8に記載の2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-ホルミルピリジン-2-イル)ベンズアミド(1.3g、3.7mmol)とTHF(15ml)の混合物に、0℃でメチルマグネシウムブロミド(3M in diethyl ether、2.7mL、9.2mmol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、同温で飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)を加えた。反応混合物を酢酸エチル(25mL、次いで15mL)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(70%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(0.23g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 1.23 (3H, d, J=6.4Hz), 3.28 (3H, s), 4.42 (2H, s), 4.48 (2H, d, J=6Hz), 4.77-4.81 (1H, m), 5.30 (1H, d, J=4Hz), 7.13-7.18 (2H, m), 7.36-7.46 (3H, m), 7.64-7.67 (1H, m), 7.72-7.75 (1H, m), 8.03-8.04 (1H, d, J=6.4Hz), 8.52-8.54 (1H, m), 9.03 (1H, t, J=6Hz).
【0063】
[実施例3及び4]
キラル 2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-(1-ヒドロキシエチル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド
【化24】
実施例2で得たラセミック 2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-(1-ヒドロキシエチル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド(0.80g)を超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いて鏡像異性体を分離した(Chiralpak-IG、0.2%トリエチルアミン含有の20%メタノール-二酸化炭素)。早く溶出される鏡像異性体(0.26g、実施例3)と遅く溶出される鏡像異性体(0.32g、実施例4)を得た。
【0064】
[製造例5-1]
4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロベンゾニトリル
【化25】
4-(ヒドロキシメチル)-3-フルオロベンゾニトリル(1.0g、6.6mmol)とジクロロメタン(5mL)の混合物に、室温で2N水酸化ナトリウム水溶液(0.53g、13mmol)と(ブロモジフルオロメチル)トリメチルシラン(1.6mL、9.9mmol)を順次加え、同温で48時間攪拌した。反応混合物に水を加え、ジクロロメタン(50mL、2回)で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(0.25g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 5.05 (2H, s), 6.82 (1H, t, J=75Hz), 7.69-7.76 (2H, m), 7.91 (1H, d, J=9.2Hz).
【0065】
[製造例5-2]
(4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロフェニル)メタンアミン
【化26】
製造例5-1で得た4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロベンゾニトリル(0.30g、1.5mmol)とメタノール(5mL)の混合物に0℃でニッケル(II)クロライド ヘキサハイドレート(39mg、0.30mmol)と水素化ホウ素ナトリウム(0.17g、4.5mmol)をゆっくり加え、同温で1時間攪拌した。反応混合物に氷水を加え、ジクロロメタン(25mL、2回)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(8%メタノール-ジクロロメタン溶液)により精製し、標記化合物(200mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 3.72 (2H, s), 4.91 (2H, s), 6.77 (1H, t, J= 75Hz), 7.15-7.23 (2H, m), 7.37-7.41 (1H, m).
【0066】
[製造例5-3]
5-(3-アセチルピリジン-2-イル)-2-フルオロベンゾイック アシド
【化27】
3-カルボキシ-4-フルオロフェニルボロニック アシド(3.0g、16mmol)、3-アセチル-2-ブロモピリジン(3.3g、16mmol)、1,4-ジオキサン(30mL)、及び水(10mL)の混合物に、炭酸カリウム(4.5g、33mmol)を室温で加え、窒素ガスを用いて脱気置換した。反応混合物に、同温でジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム ジクロロメタンコンプレックス(0.67g、0.82mmol)を加え、100℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、減圧下溶媒留去した。残渣にジクロロメタン(75mL)を加え、ろ過し、残渣をジクロロメタン(75mL)で洗浄した。ろ液を減圧下溶媒留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10%~12%メタノール-ジクロロメタン溶液)により精製し、標記化合物(2.1g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 2.37 (3H, s), 7.28-7.31 (1H, m),7.37-7.42 (1H, m), 7.70-7.72 (1H, m), 7.98-8.00 (1H, m), 8.10-8.12 (1H, m), 8.76-8.77 (1H, m), 13.34 (1H, bs).
【0067】
[製造例5-4]
5-(3-アセチルピリジン-2-イル)-N-(4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロベンジル)-2-フルオロベンズアミド
【化28】
製造例5-3で得た5-(3-アセチルピリジン-2-イル)-2-フルオロベンゾイック アシド(0.10g、0.39mmol)とDMF(3mL)の混合物に、窒素雰囲気下、0℃でジイソプロピルエチルアミン(0.21mL、1.2mmol)とプロパンホスホニック アシッド 無水物(50%酢酸エチル溶液)(0.24mL、0.78mmol)を順次加え、同温で15分間攪拌した。反応混合物に、同温で製造例5-2で得た(4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロフェニル)メタンアミン(79mg、0.39mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル(20mL、2回)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(55%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(60mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 2.38 (3H, s), 4.02 (2H, d, J=5.6Hz), 4.93 (2H, s), 6.71 (1H, t, J=74Hz), 7.18-7.21 (1H, m), 7.44-7.79 (4H, m), 7.78-7.79 (1H, m), 8.11 (1H, d, J=7.6Hz), 8.76-8.77 (1H, m), 9.05-9.06 (1H, m).
【0068】
[実施例5]
N-(4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロベンジル)-2-フルオロ-5-(3-(1-ヒドロキシエチル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド
【化29】
製造例5-4で得た5-(3-アセチルピリジン-2-イル)-N-(4-((ジフルオロメトキシ)メチル)-3-フルオロベンジル)-2-フルオロベンズアミド(0.15g、0.34mmol)とメタノール(3mL)の混合物に0℃で水素化ホウ素ナトリウム(26mg、0.69mmol)をゆっくり加え、室温で6時間攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチル(30mL、2回)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(55%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(30mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 1.27 (3H, d, J=6.4Hz), 4.49 (2H, d, J=5.6Hz), 4.77-4.81 (1H, m), 4.93 (2H, s), 5.30 (1H, J=4Hz), 6.78 (1H, t, J=75Hz), 7.18-7.21 (2H, m), 7.39-7.47 (3H, m), 7.64-7.68 (1H, m), 7.73-7.75 (1H, m), 8.03 (1H, d, J=8Hz), 8.53 (1H, d, J=4.8Hz), 9.05 (1H, t, J=5.6Hz).
【0069】
[製造例6-1]
2-ブロモ-3-(メトキシメチル)ピリジン
【化30】
60%水素化ナトリウム(0.057g、2.4mmol)とTHF(3mL)の混合物に、(2-ブロモピリジン-3-イル)メタノール(0.30g、1.6mmol)とTHF(3mL)の混合物を0℃で加えた。反応混合物に室温でヨードメタン(0.15mL、2.4mmol)を加え、同温で16時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、氷冷水を加え、酢酸エチル(15mL、次いで5mL)で抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去し、標記化合物(0.15g)を粗体として得た。これ以上の精製をすることなく、次の反応に用いた。
【0070】
[実施例6]
2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(3-(メトキシメチル)ピリジン-2-イル)ベンズアミド
【化31】
製造例6-1で得た2-ブロモ-3-(メトキシメチル)ピリジン(49mg)、製造例1-7で得た2-フルオロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド(0.10g)、炭酸ナトリウム(0.050g、0.47mmol)、1,4-ジオキサン(3mL)、及び水(0.5mL)の混合物を、アルゴンガスを用いて脱気置換した。反応混合物に、同温でジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム ジクロロメタンコンプレックス(8.0mg、0.0098mmol)を加え、再度アルゴンガスを用いて脱気置換し、反応混合物を80℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、水(5mL)を加え、酢酸エチル(10mL、次いで5mL)を用いて抽出した。2つの有機層を合わせて、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル-n-ヘキサン溶液)により精製し、標記化合物(0.080g)を得た。
1H-NMR Spectrum (DMSO-d6) δ(ppm): 3.28 (3H, s), 3.29 (3H, s), 4.36 (2H, s), 4.42 (2H, s), 4.48 (2H, d, J=6Hz), 7.13-7.18 (2H, m), 7.36-7.45 (3H, m), 7.75-7.79 (1H, m), 7.87-7.89 (1H, m), 7.91-7.93 (1H, m), 8.61-8.63 (1H, m), 9.01 (1H, t, J=11Hz).
【0071】
[製造例7-1]
(5-ヨード-1H-ピラゾール-4-イル)メタノール
【化32】
5-ヨード-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(4.0g、15mmol)とTHF(4mL)の混合物に0℃でボラン-THF溶液(1M THF溶液、30mL)を滴下した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物に同温でメタノール(20mL)を滴下し、30分間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒留去した。残渣を高速液体クロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(1.5g)を得た。
ESI-MS: m/z 224.9 [M+1]+
【0072】
[製造例7-2]
(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル)メタナミン
【化33】
製造例1-4に記載の3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンゾニトリル(8.0g、48mmol)とメタノール(50mL)の混合物に、ラネーニッケル(20g)を加え、水素雰囲気下で室温で終夜攪拌した。反応混合物を窒素により脱気置換し、セライトを用いてろ過した。ろ液を減圧下溶媒留去し、標記化合物(7.5g)を粗体として得た。粗体としてそのまま次の反応に用いた。
【0073】
[製造例7-3]
5-ブロモ-2-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)ベンズアミド
【化34】
5-ブロモ-2-クロロベンゾイック アシド(1.9g、8.1mmol)と塩化チオニル(15mL)の混合物を1.5時間加熱還流した。反応混合物を室温とし、減圧下溶媒留去した。残渣とジクロロメタン(30mL)の混合物に、製造例7-2で得た粗体の(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)フェニル)メタナミン(1.4g)、トリエチルアミン(1.2g、12mmol)及びジクロロメタン(15mL)の混合物を0℃で滴下した。反応混合物を室温で終夜攪拌した。反応混合物に室温で水を加え、ジクロロメタンで抽出した(50mLで3回)。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=2/1)により精製し、標記化合物(1.1g)を得た。
ESI-MS: m/z 386.0 [M+1]+
【0074】
[製造例7-4]
2-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド
【化35】
製造例7-3で得た5-ブロモ-2-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)ベンズアミド(1.1g、2.8mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(0.87g、3.4mmol)、1,4-ジオキサン(20mL)の混合物に酢酸カリウム(0.84g、8.5mmol)と(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(0.21g、0.28mmol)を室温で加えた。反応混合物を95℃で3時間攪拌した。反応混合物を室温とし、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した(50mLで3回)。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去し、標記化合物(0.80g)を得た。
ESI-MS: m/z 434.1 [M+1]+
【0075】
[実施例7]
2-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(4-(ヒドロキシメチル)-1H-ピラゾール-3-イル)ベンズアミド
【化36】
製造例7-4で得た2-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(メトキシメチル)ベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアミド(0.40g、0.92mmol)、製造例7-1で得た(5-ヨード-1H-ピラゾール-4-イル)メタノール(310mg、1.4mmol)、n-プロパノール(9mL)、及び水(6mL)の混合物に、炭酸ナトリウム(750mg、2.3mmol)と[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(70mg、0.090mmol)を室温で加え、95℃で終夜攪拌した。反応混合物を室温とし、減圧下溶媒留去した。残渣を高速液体クロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(57mg)を得た。
1H-NMR Spectrum (CD3OD) δ (ppm): 3.40 (3H, s), 4.53 (2H, s), 4.61 (4H, d, J=9.0 Hz), 7.20 (1H, d, J=10.9 Hz), 7.26 (1H, d, J=7.9 Hz), 7.43 (1H, t, J=7.6 Hz), 7.58 (1H, s), 7.70-7.99 (3H, m).
【0076】
[比較例1]
市販品である下記化合物を比較例1として使用した。なお、下記化合物は、国際公開第2008/112164号公報に記載の化合物である。
【化37】
【0077】
[比較例2]
国際公開第2015/127137号公報に記載の方法に従って下記化合物を合成し、比較例2として使用した。
【化38】
【0078】
[比較例3]
国際公開第2019/151241号公報に記載の方法に従って下記化合物を合成し、比較例3として使用した。
【化39】
【0079】
[比較例4]
国際公開第2019/151241号公報に記載の方法に従って下記化合物を合成し、比較例4として使用した。
【化40】
【0080】
[比較例5]
国際公開第2019/151241号公報に記載の方法に従って下記化合物を合成し、比較例5として使用した。
【化41】
【0081】
[比較例6]
国際公開第2019/151241号公報に記載の方法に従って下記化合物を合成し、比較例6として使用した。
【化42】
【0082】
[試験例1:ALDH2活性化作用]
ALDH2によるアセトアルデヒドの酸化速度に対する試験化合物の活性化作用を、以下の方法により測定した。市販のPicoProbeTM Aldehyde dehydrogenase Activity Assay Kit(BioVision Inc.製)を用い、商品の取扱説明書を参考にして以下の条件にて試験を実施した。384-ウェルプレートの各ウェルに、以下(1)から(3)を順次ピペットにより添加した。
【0083】
(1)ヒトリコンビナントALDH2酵素(BioVision Inc.製)を3μg/mLになるようにALDH assay Bufferにて溶解、希釈した溶液10μL。
(2)ALDH assay Bufferを用いて調製した30μM又は90μMの試験化合物溶液10μL(3%DMSOを含む)。
(3)ALDH assay Buffer 8.6μL、PicoProbe 0.6μL、Substrate Mix 0.3μL、及びAcetaldehyde 1.5μLの比率で構成されるReaction mix10μL。
【0084】
上記(3)の添加の前に、5分間室温でインキュベーションした。また、(3)を添加後にEnSight(PerkinElmer Inc.製)を用いて、室温で180分間、蛍光強度を2.5分毎に測定した。蛍光強度は、excitationが535nm、emissionが587nmの波長を用いた。
【0085】
試験化合物を添加しない場合のアセトアルデヒドの酸化速度を100%とした際の、試験化合物を添加した場合の酸化速度を表1に示す。表1の結果から、実施例1~7の化合物がALDH2活性化作用を有することが確認された。
【表1】
【0086】
[試験例2:マウス肝ミクロソームを用いた代謝安定性]
マウス肝ミクロソームにおける代謝安定性を以下の方法により評価した。
1.材料
(1)マウス肝ミクロソーム:20mg/mL
(2)試験化合物:1.1mM DMSO溶液
(3)リン酸カリウム緩衝液:66.7mM(pH7.4)
(4)NADPH溶液:10mM in リン酸カリウム緩衝液
(5)クエンチング溶液:内部標準物質としてワルファリン入りの0.5%ギ酸-アセトニトリル溶液
【0087】
2.方法
プロピレンチューブ中に、971.5μLのリン酸カリウム緩衝液と27.5μLのマウス肝ミクロソームを入れ、懸濁させた。ここに、1μLの試験化合物を加え、この混合物のうち180μLを別のチューブに移した。混合物を37℃で5分間プレインキュベーションし、その後、20μLのNADPH溶液(インキュベーション時間30分の場合)又は20μLのリン酸カリウム緩衝液(インキュベーション時間0分の場合)を加えた。インキュベーション後に、200μLのクエンチング溶液を加え、反応を停止させた。続いて、3220×gで20分間遠心分離し、200μLの上清中の試験化合物の未変化体濃度をLC-MS/MSで測定した。得られた未変化体のピーク面積に基づき、インキュベーション時間0分を100%として未変化体の残存率(%)を算出した。
【0088】
3.結果
30分後の未変化体の残存率(%)を表2に示す。実施例1~7の化合物が、従来のALDH2活性化剤と比較して、マウス肝ミクロソームにおける代謝安定性に優れることが確認された。
【表2】
【0089】
[試験例3:ヒト肝ミクロソームを用いた代謝安定性]
マウス肝ミクロソーム試験で安定性が確認された実施例1、2、5及び6の化合物について、ヒト肝ミクロソームを用いた代謝安定性を測定した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0090】
2.方法
(1)β-NADPH溶液で希釈した0.2μmol/L試験化合物を50μLずつ分取した。
(2)0.2mg protein/mLヒト肝ミクロソーム溶液を50μLずつ添加した(反応時間0分の試料を除く)。
(3)37℃で30分、振とうしながらインキュベーションした。(反応試料中濃度:0.1μmol/L試験化合物、0.1mg protein/mLヒト肝ミクロソーム)
(4)インキュベーション後、メタノール400μLを添加し反応を停止させた。
(5)反応時間0分の試料に0.2mg protein/mL肝ミクロソーム溶液50μLを添加した。
(6)上記(4)及び(5)の試料を-20℃で30分以上静置した後、4℃、3,000rpmで約10分間遠心分離した。
(7)上清をLC/MS/MSにて測定し、得られた未変化体のピーク面積に基づき、インキュベーション時間0分を100%として未変化体の残存率(%)を算出した。
30分後の未変化体の残存率(%)を表3に示す。
【表3】
【0091】
[試験例4:反応性代謝物]
ヒト肝ミクロソーム存在下でグルタチオン結合体の産生をLC-MS/MSにより測定することで、試験化合物の反応性代謝物産生リスクを検討した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0092】
1.方法
(1)ポリプロピレンチューブに、20 mg/mLのヒト肝ミクロソームを55uL、66.7mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)を395uL、10mMのグルタチオン水溶液を550uL添加した。
(2)20mMの試験化合物又は陽性コントロール(Clozapine、Reloxifen、Dicrofenac)を0.55uL添加した。
(3)180uLずつ4本のチューブに小分けし、2本にT0、2本にT60とラベルし、37±1℃で5分間プレインキュベートした。
(4)10mMのNADPH溶液20uLをT60チューブに、リン酸カリウム緩衝液20uLをT0チューブに加えた。
(5)60分後、10%トリクロロ酢酸アセトニトリル溶液を200uLずつ加え、反応を停止させた。
(6)遠心分離装置(5810-R、Eppendorf)で3220×g、20分間遠心分離し、上清200uLをLC-MS/MS(LC:SIL-HTc、Shimazu、Mass:API-4000 Qtrap、MDS sciex)にてGSH結合体を測定した。
(7)試験化合物で認められたGSH結合体のエリア/クロザピンで認められたGSH結合体のエリアの比(%)を算出した。
【0093】
2.結果
結果を表4に示す。これらの結果から、実施例の化合物はクロザピンと比べて反応性代謝物の生成量が小さいことが確認された。
【表4】
【0094】
[試験例5:hERGチャネル阻害作用]
試験化合物のhERG(human Ether-a-go-go Related Gene)チャネル阻害作用を以下のパッチクランプ法で検討した。
1.方法
電位固定下で細胞膜全体を通過したhERG電流を、ホールセルパッチクランプ法で記録した。
hERG電流を確認するため、保持電位を-80mVに設定し、-50mV、110msec及び20mV、4secの脱分極パルスに続く-50mV、2secの再分極パルスを15秒に1回の頻度で与えた。得られたhERG tail電流の安定が確認された後、適用を開始した。適用中も継続してパルスを与えた。
サンプリング周波数は5kHzとし、Lowpass Filterは2kHzとした。
測定中のチャンバー内における細胞外液の温度は22~25℃とした。
【0095】
<細胞外液の組成>
NaCl: 137 mmol/L,KCl: 4 mmol/L,CaCl2: 1.8 mmol/L,MgCl2: 1 mmol/L,D(+)-glucose: 10 mmol/L,HEPES: 10 mmol/L (1 mol/L NaOH でpH 7.4に調整)。
【0096】
<電極内液の組成>
KCl: 130 mmol/L, MgCl2: 1 mmol/L, EGTA: 5 mmol/L, MgATP: 5 mmol/L, HEPES: 10 mmol/L (1 mol/L KOHでpH 7.2に調整)。
【0097】
<ガラス電極の作製>
ガラス細管(G-1.5、株式会社 成茂科学器械研究所)をプラー(P-97、Sutter Instrument Company)を用いて加工し、電極内液を満たした時の抵抗値が2~5MΩの範囲のものを測定に使用した。
【0098】
<測定及び解析>
hERG電流はパッチクランプ用アンプ(Axopatch 200B、Molecular Devices、 LLC)を用いて測定し、得られた電気信号はパッチクランプ用記録解析ソフト(pCLAMP 10、Molecular Devices、LLC) を介してコンピュータ上に記録した。
-50mV、110msecの脱分極パルスにおける電流値を基準に最大tail電流値を求め、試験化合物適用前の最大tail電流値に対する適用開始5分後の変化率(抑制率)を算出した。
【0099】
2.結果
結果を表5に示す。これらの結果から、実施例の化合物はhERGチャネル阻害作用を示さないことが確認された。
【表5】
【0100】
[試験例6:カラゲニンにより誘発される疼痛の抑制効果]
本実験は、Science Translational Medicine 6, 2 51ra118 (2014).を参考にして実施した。動物は雄C57BL/6Jマウス(日本チャ一ルス・リバ一)、7週齢を使用した。足底部に機械刺激アロディニアを誘発するため、カラゲニンをマウスの左後肢足底に皮下投与した。誘発180分後の機械的刺激に対する逃避反応を、左後肢の足底面への上行曲げ力(0.16グラム)のvon Freyフィラメントを用いて測定した。フィラメントが曲がるまで垂直に6秒間マウスを刺激し、マウスの逃避反応を3段階スコア化(0:無反応または驚愕反応(足を引きあげずにずらす)、1:足を引き挙げる、2:足を舐めるまたは振る)した。刺激は10回行い、10回のスコアの合計値(逃避スコア)を算出した。
【0101】
化合物(実施例1)をDMSO/PEG400(1:1の体積比)に溶解し、2、6または20mg/kgの化合物を(Vehicle群は化合物含まない)5mL/kgの投与液量でカラゲニンを注入する15分前、カラゲニンを注入してから30分および150分後の計3回同量を頸背部皮下に投与した。カラゲニンは、生理食塩液を用いて1.5%溶液を調製し、左後肢足底に7μL/bodyで皮下投与した。
【0102】
有意差検定は、Vehicle群と実施例1群の比較をSteelの多重比較検定を行い、有意水準は5%として算出した。有意差検定には、市販の統計プログラムSAS SYSTEM(SAS Software Release 9.1.3;SAS Institute Japan Ltd)を使用した。
【0103】
表6に示す通り、実施例の化合物が、カラゲニンにより誘発される 疼痛を抑制することが示された。
【0104】
【表6】